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特開2022-117471シンナー組成物およびそれを用いた半導体基板の表面処理方法
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  • 特開-シンナー組成物およびそれを用いた半導体基板の表面処理方法 図1
  • 特開-シンナー組成物およびそれを用いた半導体基板の表面処理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117471
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】シンナー組成物およびそれを用いた半導体基板の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20220803BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220803BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220803BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220803BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20220803BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/30 564D
B05D7/00 C
B05D7/24 301T
B05D3/10 H
B05D3/10 N
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010139
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0012724
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】310024033
【氏名又は名称】エスケーハイニックス株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK hynix Inc.
【住所又は居所原語表記】2091, Gyeongchung-daero,Bubal-eub,Icheon-si,Gyeonggi-do,Korea
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ キョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュンキョン
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 智弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元樹
【テーマコード(参考)】
2H196
4D075
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196DA04
2H196EA05
2H196EA07
4D075AC64
4D075BB20Z
4D075BB24Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB63Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB14
4D075DC21
4D075DC22
4D075EA45
4D075EC07
4D075EC30
4D075EC51
4D075EC54
5F146CA04
5F146GA21
5F146JA09
5F146JA15
5F146MA02
5F157AA12
5F157AA14
5F157AA64
5F157BC03
5F157BC13
5F157BF32
5F157BF33
5F157BF34
5F157BF46
5F157BF54
5F157BF55
5F157BF56
5F157BF59
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】レジスト除去用シンナー組成物および前記シンナー組成物を用いた半導体基板の表面処理方法を提供する。
【解決手段】前記シンナー組成物は、(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルと、(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートと、(c)シクロヘキサノンと、(d)シクロペンタノンと、含む。また、前記半導体基板の表面処理方法は、半導体基板にレジスト組成物を塗布するステップと、前記塗布されたレジスト組成物を本発明のシンナー組成物を用いて除去するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルと、
(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートと、
(c)シクロヘキサノンと、
(d)シクロペンタノンと、を含む、レジスト除去用シンナー組成物。
【請求項2】
前記(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、およびプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つ以上である、請求項1に記載のレジスト除去用シンナー組成物。
【請求項3】
前記(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、レジスト除去用シンナー組成物の全重量を基準として1重量%~35重量%含まれる、請求項1に記載のレジスト除去用シンナー組成物。
【請求項4】
前記(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1つ以上である、請求項1に記載のレジスト除去用シンナー組成物。
【請求項5】
前記(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートは、レジスト除去用シンナー組成物の全重量を基準として40重量%~70重量%含まれる、請求項1に記載のレジスト除去用シンナー組成物。
【請求項6】
前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの全含量は、シンナー組成物の全重量を基準として25重量%~59重量%含まれる、請求項1に記載のレジスト除去用シンナー組成物。
【請求項7】
前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの重量比は1:0.1~1:10である、請求項1に記載のレジスト除去用シンナー組成物。
【請求項8】
半導体基板上にフォトレジストを塗布するステップと、
請求項1に記載のシンナー組成物を噴射して基板のエッジおよび/または裏面に形成されたフォトレジストを除去するEBR工程を行うステップと、を含む、半導体基板の表面処理方法。
【請求項9】
前記フォトレジストは、EUV用フォトレジスト、KrF用フォトレジスト、またはArF用フォトレジストである、請求項8に記載の半導体基板の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジビード除去(edge bead removing、以下、「EBR」と略する)効果が向上したシンナー組成物、およびそれを用いた半導体基板の表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路のような微細回路パターンは、基板上に形成された導電性金属膜または酸化膜などに、フォトレジスト化合物および溶媒を含むフォトレジストを回転塗布法により均一に塗布した後、露光、現像、エッチング、および剥離工程を順に行って製造される。
【0003】
前記フォトレジストは、塗布後に、後続工程である露光工程が、紫外線領域の短波長の光を用いて塗布膜に所望のパターンを微細に露光する方式により実現されるため、外部および内部の汚染に非常に敏感である。基板のエッジ部または後面部に塗布された不要なフォトレジスト残渣およびその他の汚染物が残留すると、後続の露光工程で致命的な汚染源になる恐れがある。したがって、露光工程を行う前に、基板のエッジ部または後面部に塗布された不要なフォトレジスト残渣および汚染物などを除去するためのエッジビード除去工程(edge bead removing、以下、「EBR」と略する)またはバックリンス(Back rinse)工程が提案されている。
【0004】
前記エッジビード除去工程またはバックリンス工程は、フォトレジスト除去用シンナー組成物を用いて行われる。
【0005】
従来、フォトレジスト除去用シンナー組成物としては、KrFおよびArF(ArF immersionを含む)用フォトレジストの除去が容易な、エチルセロソルブアセテート(ECA:ethylcellosolve acetate)、メチルメトキシプロピオネート(MMP:methylmethoxy propionate)、およびエチルラクテート(EL:ethyl lactate)などの単一溶剤が用いられている。
【0006】
しかし、半導体素子の集積度を改善するために、微細パターンの形成がより容易なEUV用フォトレジストの使用が台頭しており、これに伴い、それに適したシンナー組成物の開発が求められている。例えば、EUV用フォトレジストの除去のために、前記KrFおよびArF用フォトレジスト除去用単一溶剤のシンナー組成物を適用する場合、フォトレジストが残存したり、EBR断面が不良な形態に形成されたりする欠点がある。このような問題は、結局、微細パターンの形成が求められる次世代半導体プロセスを満足に実現することができないという問題をもたらす。
【0007】
したがって、EBR工程を安定に行うために、KrFおよびArF用フォトレジストだけでなく、EUV用フォトレジストも容易に除去可能なシンナー組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開2011-0127816号公報
【特許文献2】特開平7-160008号公報
【特許文献3】米国特許登録第4,886,728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、EBR効果が向上したシンナー組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記シンナー組成物を用いた半導体基板の表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実現例によると、本発明は、(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルと、(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートと、(c)シクロヘキサノンと、(d)シクロペンタノンと、を含む、レジスト除去用シンナー組成物を提供する。
【0012】
他の実現例によると、本発明は、本発明のシンナー組成物を用いた半導体基板の表面処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、特定の組成の4成分系シンナー組成物を提供することで、半導体素子および薄膜トランジスターの製造時に基板のエッジ部位と後面部位に不要に付着したレジストを短時間で効率的に除去し、EBR断面プロファイルを改善することができる。また、基板にフォトレジストを塗布する前に前記シンナー組成物を用いて基板を表面処理すると、少量のフォトレジストを用いても、基板の全面に均一にフォトレジストを塗布することができ、さらには、塗布速度を著しく改善することができるため、フォトレジストの使用量を低減するとともに、工程効率および生産性を増大する効果を奏することができる。特に、本発明は、前記シンナー組成物を用いることで、半導体の製造工程において発生し得るパーティクルの生成を最小化することにより、不良率を著しく低め、工程効率を高めることができる。したがって、半導体製造収率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に添付の次の図面は、本発明の好ましい実施例を例示するものであって、上述の発明の内容とともに、本発明の技術思想をより理解させる役割をするものであるため、本発明は、この図面に記載の事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【0015】
図1】実施例2のシンナー組成物を用いたEBR工程後におけるレジスト膜の電子顕微鏡写真である。
図2】比較例3のシンナー組成物を用いたEBR工程後におけるレジスト膜の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0017】
レジスト除去用シンナー組成物
本発明に係るレジスト除去用シンナー組成物は、(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルと、(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートと、(c)シクロヘキサノンと、(d)シクロペンタノンと、を含む。
【0018】
(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテル
前記(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、メタクリレート系のArF用フォトレジストを始めとする種々のレジストに対して優れた溶解度を有する物質であり、これをレジスト除去用シンナー組成物の主成分として用いる場合、レジストに対する溶解度を向上させることができる。但し、前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルは揮発度が高いため、組成物中における含量が増加する場合にはレジストの溶解度が増加しすぎ、レジストの厚さばらつきが発生したり、リフティングが発生する恐れがある。
【0019】
一方、前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、前記「アルキル基」は、炭素数1~10のものが好ましい。具体的に、前記(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、およびプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つ以上であってもよく、具体的に、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはプロピレングリコールモノエチルエーテルであってもよい。
【0020】
前記(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、レジスト除去用シンナー組成物の全重量を基準として、1重量%~35重量%、具体的に1重量%~30重量%、より具体的に2重量%~25重量%含まれてもよい。
【0021】
前記(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルの含量が上記の範囲を満たす場合、エッジビード特性を確保し、EBR断面プロファイルの改善効果を実現することができる。(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルの含量が1重量%未満である場合には、シンナー組成物のレジストに対する溶解度が低下し、EBR断面プロファイルの改善効果が微小であり、欠陥の発生によるリワーク(Rework)工程時にフォトレジスト膜が容易に除去されないことがある。(a)プロピレングリコールモノアルキルエーテルの含量が30重量%を超える場合には、シンナー組成物の揮発度が増加し、プレウェッティング後に形成されるレジストの厚さばらつきが大きく、不均一に塗布される恐れがある。
【0022】
(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート
前記(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートは、相対的に低い極性を有するのに対し、全てのフォトレジストに対して優れた溶解性を有し、適当な表面張力を実現してフォトレジストを均一に塗布可能であるという効果を奏することができる。したがって、EBR工程特性およびRRC効果を著しく向上させることができる。
【0023】
前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートにおいて、前記「アルキル基」は、炭素数1~10のものが好ましい。具体的に、前記(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1つ以上であってもよい。
【0024】
また、前記(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートは、レジスト除去用シンナー組成物の全重量を基準として、40重量%~70重量%、具体的に40重量%~60重量%、より具体的に45重量%~55重量%含まれてもよい。
【0025】
前記(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートの含量が上記の範囲を満たす場合、適当な表面張力が実現されてフォトレジストのコーティング均一度を高く維持することができ、エッジ部位のEBR工程でテーリング(Tailing)現象が発生することなく、除去工程が効果的に行われることができる。
【0026】
(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートの含量が40重量%未満である場合には、ハンプ(hump)が激しくなったり、エッジに残留物が生じる恐れがあり、(b)プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートの含量が70重量%を超える場合には、表面張力が高くなってフォトレジストの塗布時に均一に広がらず、ウエハ上の微細なパターン段差を克服できず、エッジが割れる現象が発生する恐れがある。
【0027】
(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノン
前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンは、全てのフォトレジストに対して優れた溶解能を有し、適当な表面張力を実現し、EBR特性に優れた物質であり、レジスト除去用組成物の成分に用いられてレジスト溶解度の向上を図ることができる。
【0028】
前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの全含量は、シンナー組成物の全重量を基準として、25重量%~59重量%、具体的に25重量%~50重量%、より具体的に25重量%~45重量%含まれてもよい。さらに、(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの全含量中、前記(c)シクロヘキサノンの含量は好ましくは40~60重量%、または45~55重量%であり、前記(d)シクロペンタノンの含量は好ましくは40~60重量%、または45~55重量%である。
【0029】
前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの全含量が上記の範囲を満たす場合、フォトレジストに対する優れた溶解能および適当な表面張力を確保することができ、優れたEBR特性を実現することができるとともに、プロセス条件が微細に変わっても安定なEBR工程を行うことができる。これに対し、前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの全含量が上記の範囲を外れた場合、EBR工程へ適用した時に、テーリングによる不良が発生する恐れがあり、フォトレジストの塗布時に、フィルムの厚さばらつきによる変色(Discolor)などが発生する恐れがある。
【0030】
特に、本発明において、前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンは、1:0.1~1:10の重量比、具体的に1:0.2~1:8の重量比、好ましくは1:0.8~1:1.2で含まれてもよい。他の実施形態として(c)シクロヘキサノン対(d)シクロペンタノンの比は、例えば、3:1であってもよい。
【0031】
前記(c)シクロヘキサノンおよび(d)シクロペンタノンの重量比が上述の範囲を満たす場合、フォトレジストに対する優れた溶解能および適当な表面張力を確保することができる。前記(c)シクロヘキサノンに対する(d)シクロペンタノンの重量比が上記の範囲を外れた場合、エッジに残留物が増加し得る。
【0032】
一方、本発明のシンナー組成物は、効果をより良好にするために、前述の成分の他に、通常の添加剤、例えば、(e)界面活性剤などをさらに含んでもよい。前記(e)界面活性剤としては、フッ素系、ノニオン系、またはイオン系の界面活性剤が使用可能であるが、必ずしもこれに制限されるものではない。前記添加剤は、本発明のシンナー組成物に対して約10~500重量ppmで含まれてもよい。上述の範囲で含まれることが、EBR特性の改善において好ましい。
【0033】
上述のような本発明のシンナー組成物は、人体に対する毒性がなく、臭いによる不快感がないことから、作業安定性が高く、腐食性が低い特徴を有している。また、半導体素子の製造に用いられる基板の大口径化により発生する基板のエッジ部位や後面部位での不要なフォトレジストを均一かつ短時間で効果的に除去することができる。また、本発明のシンナー組成物は、様々なフォトレジストおよび下部反射防止膜(BARC)に対して優れた溶解度を有するため、EBR特性、リワーク(Rework)特性、およびフォトレジストの塗布性能を向上させることができる。したがって、EBR工程、リワーク(Rework)工程、およびウエハ下部面洗浄工程などでも用いられることができる。
【0034】
一方、集積回路の製造時に、基板(ウエハ)の口径の拡大に伴い、原価低減のためにフォトレジストの使用量を減少させるための研究が続けられており、その解決方法として、フォトレジストを塗布する前に基板を前処理組成物で先に表面処理し、少量のフォトレジストを基板の全面に均一に塗布可能なRRC(フォトレジスト低減、reducing resist consumption、以下、「RRC」と称する)工程が適用されている。かかるRRC工程で本発明に係るシンナー組成物を用いる場合、半導体の製造工程において発生し得るパーティクルの生成を最小化することで、不良率を著しく減少させ、RRC工程効率を向上させることができる。
【0035】
本発明のシンナー組成物は、500nm以下の高エネルギー線、X線、および電子線などを光源として用いるフォトレジスト樹脂に好適に適用可能であるが、具体的に、EUVフォトレジストに適用でき、その他にも、i-ライン、KrF、ArF用フォトレジストなどにも適用可能である。
【0036】
一般に、i-ライン、KrF、ARF、またはEUV用フォトレジストは、構成するフォトレジスト樹脂の基本構造が互いに異なるため、溶解性および塗布性を向上させるためには、使用されるフォトレジストの種類に応じてシンナー組成物の組成を適宜組み合わせることが求められている。しかし、本発明のシンナー組成物は溶解能に優れるため、極性の高い構造を有する殆どのフォトレジストおよび反射防止膜の主成分に対する溶解度を充足させることができる。したがって、EUV用フォトレジストの他にも、KrFまたはArF用フォトレジストを用いたEBR工程、ウエハ下部洗浄工程、およびフォトレジスト塗布前のウエハ上部の前処理工程が終わった後、コータのカップホルダーなどの生産設備の汚染や排出口の詰まりなどが発生することがなく、生産性の向上を図ることができる。
【0037】
半導体基板の表面処理方法
他の実現例によると、本発明は、シンナー組成物を用いた半導体基板の表面処理方法を提供する。
【0038】
かかる本発明の方法は、フォトレジスト組成物が塗布された基板のエッジ部位および後面部位に噴射して不要なフォトレジスト膜を除去する、半導体素子または薄膜トランジスター製造工程に適用することができる。
【0039】
具体的に、本発明の方法は、基板上にフォトレジストを塗布するステップと、
本発明のシンナー組成物を噴射しながら、基板のエッジおよび/または裏面に形成されたフォトレジストを除去するEBR工程を行うステップと、を含む。
【0040】
この際、前記フォトレジストは、EUV用フォトレジストの他にも、KrFまたはArF用フォトレジストを用いることができる。
【0041】
また、前記EBR工程は、基板を回転させながら、基板のエッジおよび/または裏面に前記シンナー組成物を接触させるか、前記シンナー組成物を5~50cc/minの速度で噴射して行うことができる。
【0042】
かかるEBR方法によると、フォトレジストによる基板の汚染を効果的に防止することができる。
【0043】
また、本発明の半導体基板の表面処理方法は、前記EBR工程の後、半導体素子および薄膜トランジスターの製造に関連した当技術分野において公知の一般的な後続工程をさらに行うことができる。
【0044】
例えば、約100℃~150℃、具体的に、約100℃~120℃の温度範囲でソフトベーク工程を行い、フォトレジスト膜内の水分などを除去した後、露光マスクを用いて前記フォトレジスト膜の一部領域のみを選択的に露光する露光ステップをさらに行うことができる。
【0045】
次に、フォトレジスト膜を水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide:TMAH)またはn-ブチルアセテート(n-butyl acetate:n-BA)などの現像液で現像してフォトレジストパターンを完成する。この際、ポジ型フォトレジストを用いる場合、露光されたフォトレジスト膜部分が除去され、ネガ型フォトレジストを用いる場合、露出したフォトレジスト層が残留することになる。
【0046】
上述の過程を経て完成されたフォトレジストパターンは、半導体素子の各種微細パターンを形成するのに用いられることができる。しかし、完成されたフォトレジストパターンに不良がある場合には、形成されたフォトレジストパターンを除去して基板を再使用することが経済的な観点などから有利である。
【0047】
すなわち、基板上に形成されたフォトレジストパターンに不良が生じた場合、本発明のシンナー組成物を用いて前記フォトレジストのパターンを除去するリワーク(rework)工程を行うステップをさらに含んでもよい。
【0048】
次いで、前記シンナー組成物を用いてフォトレジストパターンを除去した後、前記基板に残留した前記シンナー組成物を乾燥させる過程を追加することができる。
【0049】
したがって、前記方法によりフォトレジストの除去が行われる場合、前記基板は再使用が可能である。
【0050】
また、本発明の半導体基板の表面処理方法は、基板上にハードマスク膜または反射防止膜を塗布するステップと、本発明のシンナー組成物を噴射するステップと、フォトレジストを塗布するステップと、を含んでもよい。
【0051】
前記シンナー組成物を噴射するステップは、通常のスピンコーティングを用いる方法、例えば、基板上に前記シンナー組成物を適用した後、基板を回転させて基板の後面および/または前面にシンナー組成物をコーティングする方法、または、回転する基板上に前記シンナー組成物を加圧または噴射して基板の後面および/または前面にシンナー組成物をコーティングする方法などにより行うことができる。
【0052】
上記の方法のように、フォトレジストの塗布前にシンナー組成物を噴射すると、後続する基板エッジ部位の不要なフォトレジスト膜の除去工程(EBR)でテーリング現象が発生することなく除去工程を効果的に行うことができ、優れたコーティング均一度を維持することができる。また、前記フォトレジストの塗布前にシンナー組成物を噴射することで、フォトレジストを塗布する前に前記基板の濡れ性を改善し、少量のフォトレジストでも薄くかつ均一な厚さのフォトレジスト膜を形成することができる。また、基板のエッジ部におけるフォトレジスト膜のコーティング不良を最小化することができ、基板に存在し得る段差を容易に克服し、フォトレジスト膜の厚さばらつきを減少させることができる。
【0053】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は、本発明を例示するものにすぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇および技術思想の範囲内で、実施例の多様な変更および修正が可能であることは当業者において明白であって、このような変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することは言うまでもない。
【0054】
実施例
実施例1.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを15:55:15:15重量比(重量%)の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0055】
実施例2.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを5:55:20:20重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0056】
実施例3.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを5:45:25:25重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0057】
実施例4.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを37:55:4:4重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0058】
実施例5.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを9:75:8:8重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0059】
実施例6.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを1:39:30:30重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0060】
実施例7.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを10:70:10:10重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0061】
実施例8.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを5:55:2:38重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0062】
実施例9.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを15:65:15:5重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0063】
比較例1.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを15:55:30重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0064】
比較例2.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを5:55:40重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0065】
比較例3.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを25:55:20重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0066】
比較例4.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを15:55:30重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0067】
比較例5.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを5:55:40重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0068】
比較例6.
容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、およびシクロペンタノンを25:55:20重量比の含量で混合し、レジスト除去用シンナー組成物を製造した(下記表1参照)。
【0069】
【表1】
【0070】
実験例
実験例1.EBR性能評価
直径300mmのシリコンウエハ上に、EUV用レジスト(東京応化工業株式会社製(以下、「TOK」という)、製品名:TOEL-0140)を40nmの膜厚で塗布した。
【0071】
次いで、レジスト塗布されたシリコンウエハを回転させながら、ウエハのエッジに実施例1~9および比較例1~6のシンナー組成物約7mlをそれぞれ吐出し、EBR工程を実施した。(吐出速度:20ml/分、吐出時間20秒)。
【0072】
その後、110℃でソフトベークを行ってウエハを乾燥した後、電子顕微鏡(750倍)を用いてシリコンウエハのレジスト膜の「ハンプ(Hump)」、「エッジ残留物(Edge Residue)」、および「Cut position Shift」部分に対する評価を行い、その結果を下記表2に示した。この際、実施例2のシンナー組成物と比較例3のシンナー組成物を用いたレジスト膜の電子顕微鏡写真をそれぞれ図1および図2に示した。
【0073】
<<評価基準>>
-ハンプおよびエッジ残留物の評価(Hump/edge residue):
A:EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が一定である
B:EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が75%以上ほぼ一定である
C:EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が均一ではない
D:EBR後に、レジストエッジ部分の形状がシンナー組成物の溶解作用を受けて歪んだり、レジスト溶解不良によりエッジ部位の膜にテーリング(Tailing)現象が発生する
-Cut Position Shift:
O:レジスト断面のEBRライン幅が2.0mm(±0.3mm)未満である場合
×:レジスト断面のEBRライン幅が2.0mm(±0.3mm)以上である場合
【0074】
【表2】
【0075】
前記表2を参照すると、本発明の実施例1~9のシンナー組成物は、比較例1~6のシンナー組成物に比べてレジストに対して優れたEBR性能を示す。これに対し、比較例1~6のシンナー組成物は、レジスト除去性が著しく低下することが確認できる。
【0076】
特に、図1を参照すると、実施例2のシンナー組成物を用いた場合、EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が一定であることが確認できる。これに対し、図2を参照すると、比較例3のシンナー組成物を用いた場合、EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が均一ではないだけでなく、レジスト溶解不良によりエッジ部位の膜にテーリング(Tailing)現象が発生することが確認できる。
【0077】
一方、シンナー組成物を構成する4成分のうち1つ以上の成分が過量または微量で含まれた実施例4~9のシンナー組成物は、実施例1~3のシンナー組成物に比べてレジスト除去性が相対的に低くなることが分かる。
【0078】
実験例2.EBR評価(2)
直径300mmのシリコンウエハ上に、ArF用レジスト(TOK製、製品名:ATONH-8390)を90nmの膜厚で塗布した。
【0079】
次いで、レジスト塗布されたシリコンウエハを回転させながら、ウエハのエッジに実施例1~3のシンナー組成物および比較例1~6のシンナー組成物をそれぞれ約7mlずつ吐出し、EBR工程を実施した。(吐出速度:20ml/分、吐出時間20秒)。
【0080】
その後、110℃でソフトベークを行ってウエハを乾燥した後、電子顕微鏡(750倍)を用いてシリコンウエハのレジスト膜の「ハンプ(Hump)」、「エッジ残留物(Edge Residue)」、および「Cut position Shift」部分に対する評価を行い、その結果を下記表3に示した。
【0081】
<<評価基準>>
-ハンプおよびエッジ残留物の評価(Hump/edge residue):
A:EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が一定である
B:EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が75%以上ほぼ一定である
C:EBR後に、レジスト上のEBRライン均一性が均一ではない
D:EBR後に、レジストエッジ部分の形状がシンナー組成物の溶解作用を受けて歪んだり、レジスト溶解不良によりエッジ部位の膜にテーリング(Tailing)現象が発生する
-Cut Position Shift:
O:レジスト断面のEBRライン幅が2.0mm(±0.3mm)未満である場合
×:レジスト断面のEBRライン幅が2.0mm(±0.3mm)以上である場合
【0082】
【表3】
【0083】
前記表3を参照すると、本発明の実施例1~3のシンナー組成物は、比較例1~6のシンナー組成物に比べてArF用レジストに対して優れたEBR性能を示すことが確認できる。これに対し、比較例1~6のシンナー組成物は、レジスト除去性に劣っていることが分かる。
図1
図2