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特開2022-119414検出方法、検出基板、及び検出キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119414
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】検出方法、検出基板、及び検出キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220809BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20220809BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N33/543 515D
G01N33/543 515M
G01N33/569 L
G01N21/41 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016505
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 慶三
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 敬和
(72)【発明者】
【氏名】入江 崇
(72)【発明者】
【氏名】和田 啓
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE04
2G059HH02
(57)【要約】
【課題】 試料中の検出対象物を容易に且つ効率良く検出できる検出方法を提供する。
【解決手段】試料中の検出対象物を検出する検出方法であって、下記の工程(A)から工程(F)を含む。(A)検出表面、及び、前記検出表面に固定されており、且つ前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体を含む検出基板を準備する検出基板準備工程。(B)前記検出基板の前記検出表面に前記試料を供給する試料供給工程。(C)前記検出基板の前記検出表面に、前記検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含む第2の結合体を供給する第2の結合体供給工程。(D)前記検出基板から、非固定化の前記第2の結合体を除去する除去工程。(E)前記検出基板の前記検出表面に、前記重合開始剤により重合するモノマーを供給するモノマー供給工程。(F)前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の変化を確認する変化確認工程。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の検出対象物を検出する検出方法であって、
下記の工程(A)から工程(F)を含む、検出方法。
(A)検出表面、及び、前記検出表面に固定されており、且つ前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体を含む検出基板を準備する検出基板準備工程。
(B)前記検出基板の前記検出表面に前記試料を供給する試料供給工程。
(C)前記検出基板の前記検出表面に、前記検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含む第2の結合体を供給する第2の結合体供給工程。
(D)前記検出基板から、非固定化の前記第2の結合体を除去する除去工程。
(E)前記検出基板の前記検出表面に、前記重合開始剤により重合するモノマーを供給するモノマー供給工程。
(F)前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の変化を確認する変化確認工程。
【請求項2】
前記検出表面は、微細な凹凸加工が施されているホログラム表面であり、
前記工程(F)の色調変化確認工程において、前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の色調変化を確認する、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記(E)モノマー供給工程は、さらに、重合反応促進剤を供給する、請求項1又は2記載の検出方法。
【請求項4】
前記検出表面は、複数の区画を含み、
前記複数の区画は、コントロール区を含み、
前記コントロール区には、前記第1の結合体が固定されておらず、
前記コントロール区以外のその他の区画には、第1の結合体が固定されており、
前記工程(F)の変化確認工程において、前記モノマー供給工程の前後における前記コントロール区及び前記その他の区画における変化を確認する、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記第1の結合体が、ACE2(Angiotensin-converting enzyme2)受容体またはその一部であり、
前記第2の結合体が、重合開始剤を含むACE2受容体またはその一部である、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
前記検出対象物が、SARS-CoV-2である、請求項5記載の検出方法。
【請求項7】
試料中の検出対象物を検出可能な検出基板であって、
基層及び保護フィルム層を含み、
前記基層の少なくとも一方の面は、検出表面であり、
前記検出表面は、前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体を固定しており、
前記保護フィルム層は、前記検出表面上に、剥離可能に積層している、検出基板。
【請求項8】
前記検出表面は、微細な凹凸加工が施されているホログラム表面である、請求項7記載の検出基板。
【請求項9】
前記検出表面は、複数の区画を含み、
前記複数の区画毎に、それぞれ異なる第1の結合体が固定されており、
前記第1の結合体は、それぞれ異なる検出対象物と特異的に結合する結合体である、請求項7又は8記載の検出基板。
【請求項10】
前記検出表面は、複数の区画を含み、
前記複数の区画は、コントロール区を含み、
前記コントロール区には、前記第1の結合体が固定されていない、請求項7から9のいずれか一項に記載の検出基板。
【請求項11】
前記保護フィルム層を剥離した前記検出基板が、請求項1から6のいずれか一項に記載の検出方法に用いられる検出基板である、請求項7から10のいずれか一項に記載の検出基板。
【請求項12】
前記基層が、フィルム、シート、又はカードのいずれか一方である、請求項7から11のいずれか一項に記載の検出基板。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項に記載の検出基板と、第2の結合体を含む結合体含有溶液と、モノマーを含むモノマー含有溶液と、を含み、
前記第2の結合体は、検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含む結合体であり、
前記モノマーは、前記重合開始剤により重合するモノマーである、検出対象物の検出キット。
【請求項14】
モノマー含有溶液は、さらに、重合反応促進剤を含む、請求項13記載の検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出方法、検出基板、及び検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒト及び鳥のインフルエンザ及び重症急性呼吸器症候群(SARS)等のウイルス性の感染症が起きており、最近では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)が世界的に広がり(パンデミック)、人類にとって極めて深刻な問題となっている。このため、ウイルス性感染症の拡大防止のために、ウイルス検出の重要性が増している。特許文献1には、酸化還元重合によって被験物質を検出及び定量する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-259567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の検出対象物(ウイルス等)の検出方法では、ピペットマン等を用いた定量的操作技術が求められたり、酵素等の取扱いの難しい試薬を使用したりする。そのため、検出対象物の検出には特定の技術者が必要となり、検出の効率が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、試料中の検出対象物を容易に且つ効率良く検出できる検出方法、検出基板、及び検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の検出方法は、
試料中の検出対象物を検出する検出方法であって、
下記の工程(A)から工程(F)を含む、方法である。
(A)検出表面、及び、前記検出表面に固定されており、且つ前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体を含む検出基板を準備する検出基板準備工程。
(B)前記検出基板の前記検出表面に前記試料を供給する試料供給工程。
(C)前記検出基板の前記検出表面に、前記検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含む第2の結合体を供給する第2の結合体供給工程。
(D)前記検出基板から、非固定化の前記第2の結合体を除去する除去工程。
(E)前記検出基板の前記検出表面に、前記重合開始剤により重合するモノマーを供給するモノマー供給工程。
(F)前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の変化を確認する変化確認工程。
【0007】
本発明の検出基板は、
試料中の検出対象物を検出可能な検出基板であって、
基層及び保護フィルム層を含み、
前記基層の少なくとも一方の面は、検出表面であり、
前記検出表面は、前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体を固定しており、
前記保護フィルム層は、前記検出表面上に、剥離可能に積層している。
【0008】
本発明の検出キットは、
本発明の検出基板と、第2の結合体を含む結合体含有溶液と、モノマーを含むモノマー含有溶液と、を含み、
前記第2の結合体は、検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含む結合体であり、
前記モノマーは、前記重合開始剤により重合するモノマーである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定量的操作等の高度な技術や、酵素等の試薬を必要としないため、試料中の検出対象物を容易に且つ効率良く検出することが可能となる。特に、酵素を使用しないことで、化学反応工程を容易に行うことができる。また、本発明によれば、サーマルサイクラー等の高価な装置も必要としないため、低コストで前記検出対象物を検出できる。さらに、本発明の検出基板によれば、携帯性に優れるため、場所を問わず、前記検出対象物の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の検出方法の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の検出方法を用いた検出対象物の検出の一例を示す説明図である。
図3図3は、本発明の検出基板の一例の構成を示す図である。
図4図4は、本発明の検出キットの使用方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の検出方法において、例えば、
前記検出表面は、微細な凹凸加工が施されているホログラム表面であり、
前記工程(F)の色調変化確認工程において、前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の色調変化を確認する、という態様であってもよい。
【0012】
本発明の検出方法において、例えば、
前記(E)モノマー供給工程は、さらに、重合反応促進剤を供給する、という態様であってもよい。
【0013】
本発明の検出方法において、例えば、
前記検出表面は、複数の区画を含み、
前記複数の区画は、コントロール区を含み、
前記コントロール区には、前記第1の結合体が固定されておらず、
前記コントロール区以外のその他の区画には、第1の結合体が固定されており、
前記工程(F)の変化確認工程において、前記モノマー供給工程の前後における前記コントロール区及び前記その他の区画における変化を確認する、という態様であってもよい。
【0014】
本発明の検出方法において、例えば、
前記第1の結合体が、ACE2(Angiotensin-converting enzyme 2)受容体またはその一部であり、
前記第2の結合体が、重合開始剤を含むACE2受容体またはその一部である、という態様であってもよい。
前記態様において、例えば、前記検出対象物が、SARS-CoV-2であってもよい。
【0015】
本発明の検出基板において、例えば、
前記検出表面は、微細な凹凸加工が施されているホログラム表面である、という態様であってもよい。
【0016】
本発明の検出基板において、例えば、
前記検出表面は、複数の区画を含み、
前記複数の区画毎に、それぞれ異なる第1の結合体が固定されており、
前記第1の結合体は、それぞれ異なる検出対象物と特異的に結合する結合体である、という態様であってもよい。
【0017】
本発明の検出基板において、例えば、
前記検出表面は、複数の区画を含み、
前記複数の区画は、コントロール区を含み、
前記コントロール区には、前記第1の結合体が固定されていない、という態様であってもよい。
【0018】
本発明の検出基板において、例えば、
前記保護フィルム層を剥離した前記検出基板が、本発明の検出方法に用いられる検出基板である、という態様であってもよい。
【0019】
本発明の検出基板において、例えば、
前記基層が、フィルム又はシートのいずれか一方である、という態様であってもよい。
【0020】
本発明の検出キットにおいて、例えば、
モノマー含有溶液は、さらに、重合反応促進剤を含む、という態様であってもよい。
【0021】
本発明において、「試料」は、特に制限されず、例えば、液体等の形態であってもよい。前記試料は、例えば、ヒトを含む動物、及び植物等の生命体、大気、海水、土等の環境、清掃後の廃水、下水、下水処理水等から得られる。具体的に、前記試料としては、例えば、唾液、鼻汁、血液、糞便懸濁液、下水、及び下水処理水等、並びにそれらの希釈液がある。
【0022】
本発明において、「検出対象物」は、特に制限されず、例えば、ウイルス、タンパク質、細菌、菌類、微生物、及びこれらの産出された産出物等が挙げられる。具体的に、前記検出対象物としては、例えば、;コロナウイルス(例えば、SARSの原因ウイルスであるSARS-CoV、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2、MERSの原因ウイルスであるMERS-CoVを含む)、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、ESBL産生菌、淋菌、結核菌、溶血性レンサ球菌、クロストリジウム・ディフィシル、腸内細菌、腸球菌、アシネトバクター、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター、カンジタ、非チフス性サルモネラ菌、チフス菌、赤痢菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、非結核性抗酸菌、スピロヘータ、真菌類、及びそれらの産出物等;試料中のB細胞、T細胞、及び抗体等のタンパク質;等がある。
【0023】
以下、本発明について、例を用いて具体的に説明する。
【0024】
(検出方法)
本発明の検出方法の一例を、図1のフローチャートに基づき、説明する。本発明の検出方法は、下記(A)~(F)を実施した後に、終了する(END)。
【0025】
(A)検出基板準備工程
まず、検出表面、及び、前記検出表面に固定されており、且つ前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体を含む検出基板を準備する(S11)。前記検出基板は、前記検出表面、及び、前記第1の結合体を含むものであれば、特に制限されない。前記検出基板は、例えば、後述の本発明の検出基板であり、本発明の検出基板の記載を援用できる。前記第1の結合体は、前記検出対象物と特異的に結合するものであればよく、特に制限されず、例えば、抗体等である。具体的に、前記検出対象物が、SARS-CoV-2である場合、前記第1の結合体として、ACE2(Angiotensin-converting enzyme2)受容体またはその一部が挙げられる。また、前記検出対象物が、センダイウイルス(Sendai virus:SeV)である場合は、前記第1の結合体として、抗SeV抗体が挙げられ、前記検出対象物が、ノロウイルス(Norovirus:NoV)である場合は、前記第1の結合体として、抗NoV抗体が挙げられ、前記検出対象物が、インフルエンザウイルス(Influenza virus:IFV)である場合は、前記第1の結合体として、抗IFV抗体が挙げられる。
【0026】
(B)試料供給工程
次に、前記検出基板の前記検出表面に前記試料を供給する(S12)。具体的に、試料供給工程は、例えば、前記検出表面に前記試料を直接接触させる工程である。供給する前記試料の量は特に制限されず、例えば、0.5ml、1ml、1.5ml、3ml等である。また、前記試料を前記検出表面に供給し続ける時間(接触時間)は、前記試薬及び前記第1の結合体によって適宜調整可能であり、具体的には、例えば、1.5分、3分、5分等である。本発明の検出方法は、例えば、試料供給工程の終了後であり、後述の第2の結合体供給工程の開始前までに、前記検出基板の前記検出表面を洗浄液(例えば、水、等)で洗浄してもよい。
【0027】
(C)第2の結合体供給工程
次に、前記検出基板の前記検出表面に、前記検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含む第2の結合体を供給する(S13)。具体的に、第2の結合体供給工程は、例えば、前記検出表面に前記第2の結合体を接触させる工程である。前記第2の結合体は、1種類でもよいし、2種類以上であってもよい。供給する前記第2の結合体の量は特に制限されず、例えば、0.5ml、1ml、1.5ml、3ml等である。また、前記第2の結合体を前記検出表面に供給し続ける時間(接触時間)は、前記検出対象物及び前記第2の結合体によって適宜調整可能であり、具体的には、例えば、1.5分、3分、5分等である。第2の結合体供給工程(C)は、例えば、前記試料供給工程(B)の後に実施してもよいし、前記試料供給工程(B)と並行して実施してもよい。前記第2の結合体は、前記検出対象物と特異的に結合し、かつ、重合開始剤を含むものであればよく、特に制限されず、例えば、重合開始剤を含む抗体等である。前記重合開始剤を含む第2の結合体は、例えば、溶媒中に存在していてもよい。具体的に、前記検出対象物が、SARS-CoV-2である場合、前記第2の結合体として、重合開始剤を含むACE2(Angiotensin-converting enzyme2)受容体またはその一部が挙げられる。また、前記検出対象物が、センダイウイルス(Sendai virus:SeV)である場合は、前記第2の結合体として、重合開始剤を含む抗SeV抗体が挙げられ、前記検出対象物が、ノロウイルス(Norovirus:NoV)である場合は、前記第2の結合体として、重合開始剤を含む抗NoV抗体が挙げられ、前記検出対象物が、インフルエンザウイルス(Influenza virus:IFV)である場合は、前記第2の結合体として、重合開始剤を含む抗IFV抗体が挙げられる。前記重合開始剤は、特に制限されず、例えば、光重、熱、酸化還元(レドックス)などによってラジカルを発生させる開始剤(ラジカル重合開始剤)等がある。ラジカル重合開始剤の種類としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化開始剤、アルキルフェノン系ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系ラジカル重合開始剤過硫酸開始剤等がある。
【0028】
具体的に、前記重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチルニトリル(Azobis(isobutyronitrile) (AIBN))、過硫酸アンモニウム(APS)、過酸化ベンゾイル、ベンゼンスルホン酸エステル、アルキルスルホニウム塩、ジシアンジアミド、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-ジメトキシ‐1,2-ジフェニルエタン‐1-オン、2-ヒドロキシ‐2-メチル‐1-フェニルプロパン‐1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ‐2-メチル‐1-プロパン‐1-オン、2-ヒドロキシ‐1-{4-[4-(2-ヒドロキシ‐2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン‐1-オン、2-メチル‐1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン‐1-オン、2-ベンジルメチル2-ジメチルアミノ‐1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル‐ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、(2E)-2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン‐1-オン、および、これらの誘導体類等が挙げられる。ただし、前記重合開始剤は、これらに限定されるものではない。前記重合開始剤は、例えば、タンパク質に反応可能な官能基(例えば、4,4’-Azobis-4-cyanovaleric acid等)を有していてもよい。
【0029】
なお、本発明において、酸化還元(レドックス)は、特に制限されず、水系のレドックス及び非水系のレドックス等であってもよい。水系のレドックスとしては、例えば、過硫酸塩、過酸化水素、及びヒドロペルオキシド等の過酸化物と、二価の鉄塩、一価の銅塩、及びアミン等の還元剤との組合せがある。非水系のレドックスとしては、例えば、ヒドロペルオキシド、過酸化ジアルキル、及び過酸化ジアシル等の酸化剤と、第三級アミン、ナフテン酸塩、チオール類、及び有機金属化合物等の還元剤との組合せがある。
【0030】
(D)除去工程
次に、前記検出基板から、非固定化の前記第2の結合体を除去する(S14)。具体的には、例えば、洗浄液(例えば、水等)を用いた洗浄によって、非固定化の前記第2の結合体を除去する。ここで、本発明において、「非固定化の第2の結合体」とは、例えば、前記検出対象物及び前記第1の結合体を介して、前記検出表面に固定されていない状態の第2の結合体を意味する。一方で、本発明において、例えば、水素結合等により、前記検出対象物及び前記第1の結合体を介して、前記検出表面に固定された状態の第2の結合体を「固定化された第2の結合体」ともいう。
【0031】
(E)モノマー供給工程
次に、前記検出基板の前記検出表面に、前記重合開始剤により重合するモノマーを供給する(S15)。前記モノマーは、前記重合開始剤により重合するものであれば、特に制限されず、例えば、水溶性の化合物等である。具体的には、例えば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)等があるが、これに限定されない。前記モノマーは、1種類でもよいし、2種類以上であってもよい。具体的に、モノマー供給工程は、例えば、前記検出表面に前記モノマーを接触させる工程である。供給する前記モノマーの量は特に制限されず、例えば、高分子重合時に一般的に用いられる濃度(例えば、0.5mol/L等)等である。また、前記モノマーを前記検出表面に供給し続ける時間(接触時間)は、前記第2の結合体及び前記モノマーによって適宜調整可能である。モノマー供給工程は、例えば、さらに、重合反応促進剤を供給してもよい。前記重合反応促進剤は、特に制限されず、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、ヒドロパーオキサイド、金属塩等がある。ただし、これらに限定されるものではない。前記モノマー及び前記重合反応促進剤は、例えば、溶媒中に存在していてもよい。
【0032】
具体的に、前記アミン類としては、例えば、脂肪族アミン、及び芳香族アミン等が挙げられる。前記脂肪族アミンとしては、例えば、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルジエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N-メチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン等が挙げられる。
【0033】
前記芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸-n-ブトキシエチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸-2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、N,N,N’,N’-テトラ(TEMED)メチルエチルジアミン等が挙げられる。
【0034】
前記スルフィン酸及びその塩としては、例えば、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
【0035】
前記ボレート化合物としては、例えば、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p-クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p-フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5-ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p-クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p-フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5-ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p-クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p-フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5-ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p-クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p-フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5-ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、等が挙げられる。
【0036】
前記バビツール酸誘導体としては、例えば、バルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3-ジフェニルバルビツール酸、1,5-ジメチルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、5-エチルバルビツール酸、5-イソプロピルバルビツール酸、5-シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-n-ブチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-イソブチルバルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-シクロペンチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-シクロヘキシルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-1-エチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、5-メチルバルビツール酸、5-プロピルバルビツール酸、1,5-ジエチルバルビツール酸,1-エチル-5-メチルバルビツール酸、1-エチル-5-イソブチルバルビツール酸、1,3-ジエチル-5-ブチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-メチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-オクチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-ヘキシルバルビツール酸、5-ブチル-1-シクロヘキシルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられる。
【0037】
前記トリアジン化合物としては、例えば、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メチルチオフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2,4-ジクロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブロモフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-n-プロピル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(α,α,β-トリクロロエチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(p-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(o-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(p-ブトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(1-ナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-ビフェニリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-{N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-{N-ヒドロキシエチル-N-エチルアミノ}エトキシ]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-{N-ヒドロキシエチル-N-メチルアミノ}エトキシ]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-{N,N-ジアリルアミノ}エトキシ]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0038】
前記銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が挙げられる。
【0039】
前記スズ化合物としては、例えば、ジ-n-ブチル錫ジマレート、ジ-n-オクチル錫ジマレート、ジ-n-オクチル錫ジラウレート、ジ-n-ブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
【0040】
前記バナジウム化合物としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等が挙げられる。
【0041】
前記ハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0042】
前記アルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-メチルオキシベンズアルデヒド、p-エチルオキシベンズアルデヒド、p-n-オクチルオキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0043】
前記チオール化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0044】
前記ヒドロパーオキサイドとしては、例えば、t-ブチルヒドロパーオキサイド(TBH)、クミルヒドロパーオキサイド、p-イソプロピルクミルヒドロパーオキサイド、メチルエチルケトンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、シクロヘキサンヒドロパーオキサイドおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0045】
前記金属塩としては、ナフテン酸コバルト、オクタン酸(カプロン酸2-エチル)コバルト、コバルトアセトアセトネート、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉄、オクタン酸(カプロン酸2-エチル)鉄およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0046】
(F)変化確認工程
前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の変化を確認する(S16)。前記検出表面が前記ホログラム表面である場合、変化確認工程は、例えば、前記モノマー供給工程の前後における前記検出表面の色調変化を確認する。また、前記検出表面が複数の区画を含む場合、変化確認工程は、例えば、前記モノマー供給工程の前後における前記コントロール区及び前記その他の区画における変化を確認する。変化確認工程は、例えば、前記検出表面を肉眼で直接見ることで、前記変化を確認する。前記検出表面の変化を確認することで、前記試料中の前記検出対象物を検出することができる。
【0047】
本発明の検出方法は、例えば、後述の(E)モノマー供給工程の後、且つ(F)変化確認工程の前に、前記検出表面上に、圧着によりフィルム(例えば、本発明の検出基板における保護フィルム層12)を積層することで、前記検出表面上に供給される前記試料等が少量(1ml等)であっても、前記検出表面(もしくは、後述の区画)の広範囲に前記試料等を供給することができる。
【0048】
以下、図2を用いて、前記検出対象物がSARS-CoV-2である場合を例に挙げて説明する。図2は、検出対象物の検出の一例を示す。図2において、前記検出表面はホログラム表面として示す。まず、前記検出基板準備工程(A)により、前記ホログラム表面にACE2受容体またはその一部(第1の結合体)を固定した検出基板を準備する(図2(A))。前記検出基板は、例えば、BSA(Bovine serum albumin)等により、ACE2受容体またはその一部が固定されている箇所以外がブロッキングされていてもよい。次に、前記試料中にSARS-CoV-2が存在している場合、前記試料供給工程(B)により、前記ホログラム表面上に固定されているACE2受容体またはその一部(第1の結合体)とSARS-CoV-2のスパイクタンパク質との間で水素結合等が生じる(図2(B))。次に、前記第2の結合体供給工程(C)により、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質と、重合開始剤が結合した重合開始剤結合ACE2受容体またはその一部(第2の結合体)との間で水素結合等が生じる(図2(C))。その後、前記モノマー供給工程(E)により、固定化された重合開始剤結合ACE2受容体またはその一部(第2の結合体)とモノマーとの重合反応が起き、図2(D)に示すように、前記ホログラム表面上に重合体が形成される。そして、前記変化確認工程(F)では、前記重合体により生じた前記ホログラム表面の視覚的変化を確認する。具体的に、前記重合体が形成された部分だけ、ホログラム表面が発する色が変化するため、前記変化確認工程(F)では、この色の変化を確認する。SARS-CoV-2は、他のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV等)とは異なるスパイクタンパク質を有する。そのため、本発明において、前記第1の結合体及び前記第2の結合体を前記スパイクタンパク質と特異的に結合する結合体とすることで、SARS-CoV-2の検出の精度が向上する。なお、これは例示であって、本発明の検出方法は、SARS-CoV-2の検出に限定されない。
【0049】
(検出基板)
図3(A)に、本発明の検出基板の断面図の一例を示す。本発明の検出基板10は、図3に示すように、基層11及び保護フィルム層12を含む。
【0050】
検出基板10の大きさは、特に制限されず、例えば、携帯可能な大きさである。
【0051】
検出基板10は、例えば、図3に示すように、フィルム、シート、カード等の平面型の態様であってもよいが、例えば、スティック型の態様であってもよい。前記スティック型の場合、例えば、前記重合開始剤を含む第2の結合体、前記重合開始剤により重合するモノマー、及び洗浄液等をシリンジに入れて、前記シリンジごと検出基板10内に内蔵可能である。前記シリンジの先端は、例えば、後述の基層11の検出表面上に向けて配置されている。このように、検出基板10がスティック型であることで、例えば、手間をかけずに、基層11上での反応を進めることができる。
【0052】
基層11の少なくとも一方の面は、検出表面であり、前記検出対象物と特異的に結合する第1の結合体が固定されている。前記第1の結合体は、前述と同様である。前記第1の結合体を固定する手法は、特に制限されず、例えば、水素結合等によって固定される。前記検出表面は、例えば、色を呈し、その色を変化可能な形態であってもよく、具体的には、図示するように、微細な凹凸加工が施されているホログラム表面であってもよい。基層11は、例えば、フィルム、シート、カード等の形態であってもよい。前記検出基板は、例えば、BSA(Bovine serum albumin)等により、前記第1の結合体が固定されている箇所以外がブロッキングされていてもよい。
【0053】
図3(B)に、本発明の検出基板を前記検出表面側から見た一例を示す。前記検出表面は、例えば、複数の区画を含んでもよい。図中において、前記区画を、「+」、「-」、「A」~「D」と示す。前記複数の区画を含む場合、例えば、前記複数の区画毎に、それぞれ異なる第1の結合体が固定されていてもよい。ここでいう、それぞれ異なる第1の結合体とは、それぞれ異なる検出対象物と特異的に結合する結合体である点を除き、前述と同様である。また、前記複数の区画を含む場合、前記第1の結合体が固定されていないコントロール区を含んでもよい。前記コントロール区以外のその他の区画には、第1の結合体が固定されている。前記コントロール区としては、例えば、前記他の区画における反応(後述の重合反応)のポジティブコントロールとなるポジティブコントロール区(図中の「+」)や、ネガティブコントロールとなるネガティブコントロール区(図中の「―」)等がある。前記他の区画では、例えば、それぞれ異なる第1の結合体が前記検出表面に固定されており、前記第1の結合体は、それぞれ異なる検出対象物と特異的に結合する結合体であってもよい。さらに、前記検出表面は、図3(B)に示すように、前記区画毎に、異なる模様が施されていてもよい。このように、前記検出表面が複数の区画を含む場合、1つの検出基板10を用いて、複数種類の検出対象物を一度に検出可能である。
【0054】
保護フィルム層12は、前記検出表面上に、剥離可能に積層している。基層11上への保護フィルム層12の積層手法は、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。保護フィルム層12は、例えば、透明であって、積層している保護フィルム層12側から検出基板10を見たときに、前記検出表面を視認可能なものであってもよい。保護フィルム層12を剥離した検出基板10は、例えば、前述の本発明の検出方法に用いられる検出基板である。
【0055】
(検出キット)
本発明の検出キットは、前述の本発明の検出基板10と、第2の結合体を含む結合体含有溶液と、モノマーを含むモノマー含有溶液と、を含む。本発明のキットは、例えば、これらが1つにパッケージ化されていてもよい。前記第2の結合体及び前記モノマーは、前述と同様である。前記モノマー含有溶液は、例えば、さらに、重合反応促進剤を含んでもよい。前記重合反応促進剤は、前述と同様である。
【0056】
(検出キットの使用方法)
本発明の検出キットの使用方法について図4を用いて、説明する。図4に示す検出基板10(基層11)の検出表面は、複数の区画を含み、前記区画毎に異なる模様(図中の「+」、「-」、「A」~「D」)が施されている。以下、前記区画を文字面ともいう。そして、図4において、前記文字面には、例えば、下記に示すように、検出対象物と特異的に結合する前記第1の結合体は固定されているとする。
A:A型インフルエンザウイルス
B:B型インフルエンザウイルス
C:ライノウイルス
D:ヒト風邪コロナウイルス
E:SARS-CoV-2 S型
F:SARS-CoV-2 K型
G:SARS-CoV-2 G型
H:SARS-CoV-2 スペイン変異型
また、文字面「+」は、ポジティブコントロール区であり、前記第1の結合体に代えて、前記重合開始剤結合を含む第2の結合体が前記検出表面上に固定されている区であるとする。さらに、文字面「-」は、ネガティブコントロール区であり、前記第1の結合体及び前記第2の結合体のいずれも前記検出表面上に固定しておらず、且つ、非特異的な前記1の結合体及び前記第2の結合体の結合が生じないようマスキング処理された区であるとする。
【0057】
まず、検出基板10において、基層11からフィルム層12を剥離する。次に、検出基板10(基層11)の検出表面、特に、前記文字面に試料を触れさせる。次に、検出基板10(基層11)を水道水等で洗浄し、水気を切る。次に、、検出基板10(基層11)の検出表面に、特に、前記文字面に前記結合体含有溶液を触れさせる。次に、検出基板10(基層11)を水道水等で洗浄し、水気を切り、検出基板10(基層11)の検出表面に、特に、前記文字面に前記モノマー含有溶液を触れさせる。そして、前記文字面の色の変化から、前記試料中に存在する検出対象物を検出及び判定する。図4に示す前記文字面では、「+」と「D」の色が変化しているとする。この場合、ヒト風邪コロナウイルスに陽性であり、他のウイルスに対しては陰性であると判定することができる。
【0058】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、試料中の検出対象物を容易に且つ効率良く検出でき、例えば、感染症の予防や対策に有用である。
【符号の説明】
【0060】
10 検出基板
11 基層
12 フィルム層
図1
図2
図3
図4