(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126890
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】フルオロアルキル基含有化合物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/327 20060101AFI20220824BHJP
C07C 69/716 20060101ALI20220824BHJP
C07C 271/22 20060101ALI20220824BHJP
C07C 229/20 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C07C67/327
C07C69/716 Z CSP
C07C271/22
C07C229/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019124015
(22)【出願日】2019-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
(72)【発明者】
【氏名】石橋 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
(72)【発明者】
【氏名】三上 峻輝
(72)【発明者】
【氏名】野崎 京子
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC44
4H006AC80
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BR10
4H006BS10
4H006BT12
4H006BU32
4H006KA31
4H006KF10
(57)【要約】
【課題】フルオロアルキル基含有化合物を効率よく合成できる新規な製造方法等の提供。
【解決手段】一般式(3)(Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されているC
1-30アルキル基、R
1は、-C(R
4)(R
5)-R
3(R
3は置換されていてもよいC
6-14アリール基、R
4及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基)で表される化合物を製造する方法であって、一般式(2)で表される化合物とRf-R
6(R
6は、シリル保護基)で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、次いで脱水反応に付することを含む方法。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)
【化1】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化2】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
下記一般式(2)
【化3】
(式中、R
1は前記一般式(3)と同様である。)
で表される化合物と、下記一般式(8)
【化4】
(式中、Rfは前記一般式(3)と同様であり、R
6は、シリル保護基である)
で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、一般式(2-2)
【化5】
(式中、R
1及びRfは前記一般式(3)と同様である。)
で表される化合物を製造し、次いで、
前記一般式(2-2)で表される化合物を脱水反応に付して、前記一般式(3)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項2】
下記一般式(3)
【化6】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化7】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
下記一般式(2)
【化8】
(式中、R
1は前記一般式(3)と同様である)
で表される化合物と、下記一般式(8)
【化9】
(式中、Rfは前記一般式(3)と同様であり、R
6は、シリル保護基である)
で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、一般式(2-1)
【化10】
(式中、R
1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R
6は、シリル保護基である)
で表される化合物を製造し、次いで、
前記一般式(2-1)で表される化合物を脱水反応に付して、前記一般式(3)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項3】
前記R1が、ベンジル基である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記Rfが、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-10アルキル基(当該C1-10アルキル基がC2-10アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(8)で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、前記一般式(2-1)又は前記一般式(2-2)で表される化合物を製造する反応を、10℃以下の温度で行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(6-1)
【化11】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化12】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、下記一般式(9)又は(10)
【化13】
(式中、R
2は、アミノ基の保護基であり、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
6-14アリール基である)
で表される化合物と反応させて、下記一般式(4)
【化14】
(式中、R
1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R
2は、前記一般式(9)又は(10)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、下記一般式(5)
【化15】
(式中、R
1、Rf、及びR
2は、前記一般式(4)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(5)で表される化合物の保護基R
2を脱保護して、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項7】
前記R2が、tert-ブトキシカルボニル基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(7)
【化16】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)
で表される化合物を製造する方法であって、
請求項6又は7に記載の製造方法により、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-1)で表される化合物の保護基R
1を脱保護して、前記一般式(7)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項9】
下記一般式(6-2)
【化17】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、R
2は、アミノ基の保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、下記一般式(9)又は(10)
【化18】
(式中、R
2は、アミノ基の保護基であり、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
6-14アリール基である)
で表される化合物と反応させて、下記一般式(4)
【化19】
(式中、R
1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R
2は、前記一般式(9)又は(10)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、下記一般式(5)
【化20】
(式中、R
1、Rf、及びR
2は、前記一般式(4)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(5)で表される化合物の保護基R
2を脱保護して、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項10】
前記R2がtert-ブトキシカルボニル基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
下記一般式(7)
【化21】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、R
2は、アミノ基の保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
請求項9又は10に記載の製造方法により、前記一般式(6-2)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-2)で表される化合物の保護基R
2を脱保護して、前記一般式(7)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項12】
下記一般式(6-3)
【化22】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf及びR
1は、前記一般式(3)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、下記一般式(9)又は(10)
【化23】
(式中、R
2は、アミノ基の保護基であり、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
6-14アリール基である)
で表される化合物と反応させて、下記一般式(4)
【化24】
(式中、R
1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R
2は、前記一般式(9)又は(10)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、下記一般式(5-1)
【化25】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、R
1、Rf、及びR
2は、前記一般式(4)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(5-1)で表される化合物の保護基R
2を脱保護して、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項13】
下記一般式(6-3)
【化26】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf及びR
1は、前記一般式(6-1)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項6に記載の製造方法により、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-1)で表される化合物を光学分割して、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項14】
下記一般式(7-1)
【化27】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(6-3)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項12又は13に記載の製造方法により、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物の保護基R
1を脱保護して、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項15】
下記一般式(6-4)
【化28】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(3)と同様であり、R
2は、アミノ基の保護基である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、下記一般式(9)又は(10)
【化29】
(式中、R
2は、アミノ基の保護基であり、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、C
6-14アリール基である)
で表される化合物と反応させて、下記一般式(4)
【化30】
(式中、R
1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R
2は、前記一般式(6-4)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、下記一般式(5-1)
【化31】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、R
1、Rf、及びR
2は、前記一般式(4)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(5-1)で表される化合物の保護基R
1を脱保護して、前記一般式(6-4)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項16】
下記一般式(6-4)
【化32】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(6-2)と同様であり、R
2は、アミノ基の保護基である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項9に記載の製造方法により、前記一般式(6-2)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-2)で表される化合物を光学分割して、前記一般式(6-4)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項17】
下記一般式(7-1)
【化33】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(6-4)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項15又は16に記載の方法により、前記一般式(6-4)で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(6-4)で表される化合物の保護基R
2を脱保護して、前記一般式(7-1)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項18】
下記一般式(7-1)
【化34】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(7)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
請求項8又は11に記載の方法により、前記一般式(7)で表される化合物を製造し、
前記一般式(7)で表される化合物を光学分割して、前記(7-1)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
【請求項19】
下記一般式(3a)
【化35】
(式中、Rf
1は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-10アルキル基(当該C
1-10アルキル基がC
2-10アルキル基である場合には、は、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化36】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物。
【請求項20】
下記一般式(4a)
【化37】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-30アルキル基(当該C
1-30アルキル基がC
2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化38】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基であり、
R
2Aは、下記一般式(p-2)
【化39】
(式中、R
10は、置換されていてもよいC
1-6アルキル基又は置換されていてもよいC
6-14アリール-C
1-6アルキル基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表されるアミノ基の保護基である)
で表される化合物。
【請求項21】
下記一般式(5a)
【化40】
(式中、Rf
2は、-CF
3、-CF
2R
11又は-CFHR
11(式中、R
11は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-9アルキル基(当該C
1-9アルキル基がC
2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化41】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基であり、
R
2Aは、下記一般式(p-2)
【化42】
(式中、R
10は、置換されていてもよいC
1-6アルキル基又は置換されていてもよいC
6-14アリール-C
1-6アルキル基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表されるアミノ基の保護基である)
で表される化合物。
【請求項22】
下記一般式(5-1a)
【化43】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf
2は、前記一般式(5a)と同様である)
で表される化合物である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
下記一般式(6-1a)
【化44】
(式中、Rf
3は、-CF
2R
11又は-CFHR
11(式中、R
11は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-9アルキル基(当該C
1-9アルキル基がC
2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)であり、
R
1は、下記一般式(p-1)
【化45】
(式中、R
3は、置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC
6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物。
【請求項24】
下記一般式(6-3a)
【化46】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf
3及びR
1は、前記一般式(6-1a)と同様である)
で表される化合物である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
下記一般式(6-2a)
【化47】
(式中、Rf
3は、-CF
2R
11又は-CFHR
11(式中、R
11は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC
1-9アルキル基(当該C
1-9アルキル基がC
2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)であり、
R
2Aは、下記一般式(p-2)
【化48】
(式中、R
10は、置換されていてもよいC
1-6アルキル基又は置換されていてもよいC
6-14アリール-C
1-6アルキル基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表されるアミノ基の保護基である)
で表される化合物。
【請求項26】
下記一般式(6-4a)
【化49】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf
3及びR
2Aは、前記一般式(6-2a)と同様である)
で表される化合物である、請求項25に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルキル基が側鎖に導入されたアミノ酸であるフルオロアルキル基含有化合物の製造方法及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素アミノ酸は特異な生理活性を示すことが報告され、注目を集めている。例えば、3,3,3-トリフルオロアラニン及びその誘導体は、ピリドキサール酵素の自殺型阻害剤(suicide inhibitor)として作用することが報告されている(非特許文献1)。また、グラム陰性菌Salmonella typhimurium及びグラム陽性菌Bacillus stearothermophilusのアラニンラセマーゼが、3,3,3-トリフルオロアラニンで不活性化されることが報告されている(非特許文献2)。含フッ素アミノ酸及びそれを含有するペプチドは、生理活性物質として、医薬分野での利用が期待される。
【0003】
含フッ素アミノ酸の合成法としては、以下の方法が知られている。
(1)フッ素を含有する側鎖を導入する方法(非特許文献3、4)。
(2)光学活性アクリルアミドへペルフルオロアルキル基を導入して、光学活性なペルフルオロアルキルアラニンを合成する方法(非特許文献5)。
【0004】
【0005】
(3)オキサゾロンを経由して、ペルフルオロアルキルグリシンを合成する方法(非特許文献6)。
(4)オキサゾール環を経由して、ペルフルオロアルキルグリシンを合成する方法(非特許文献7)。
(5)イミドイルヨージドのカルボニル化を経由して不斉還元後、硝酸セリウムアンモニウム(CAN)で脱保護することにより、光学活性な含フッ素アミノ酸を得る方法(非特許文献1、8、9)。
【0006】
【0007】
従来の方法で、光学活性の種々の含フッ素アミノ酸を立体選択的に合成できる方法は、非特許文献5の方法と、非特許文献1、8、又は9の方法である。
【0008】
非特許文献5の方法は、光学活性のペルフルオロアルキルアラニンの合成法として有用である。しかし、光学活性体を得るためには、原理的に基質の光学活性部位が当量必要である。また、ペルフルオロアルキル基が長鎖の場合、立体選択性が高くない上、収率よく反応を行うためには、ペルフルオロアルキルヨージドが10当量という大過剰量必要である。
【0009】
非特許文献1、8、又は9の方法は、ペルフルオロアルキルグリシンの合成法として有用である。しかし、まず原料のイミドイルヨージドをペルフルオロアルキルヨージドとイソニトリルから合成しなければならず、煩雑である(非特許文献10)。報告されている方法(非特許文献9)による光学活性体の合成は、CANによる脱保護前までであり、光学活性を保持したまま脱保護できるかは不明である。
【0010】
したがって、フルオロアルキル置換グリシンとフルオロアルキル置換アラニンの両方に適用することができ、かつフルオロアルキル基として種々のものを合成でき、光学活性源が触媒量で高選択的に光学活性な含フッ素アミノ酸が得られる簡便な合成法は、報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sakai et al., Tetrahedron, 1996, vol.52(1), p.233-244.
【非特許文献2】Faraci and Walsh, Biochemistry, 1989, vol.28(2), p.431-437.
【非特許文献3】Yamazaki et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 1991, vol.1(5), p.271-276.
【非特許文献4】Hu and Hu, Chinese Journal of Chemistry, 1997, vol.15(3), p.286-288.
【非特許文献5】Yajima and Nagano, Organic Letters, 2007, vol.9(13), p.2513-2515.
【非特許文献6】Weygand et al., Chemische Berichte, 1970, vol.103(3), p.818-826.
【非特許文献7】Huang and Li, Chinese Journal of Chemistry, 1994, vol.12(5), p.477-480.
【非特許文献8】Amii, et al., Journal of Organic Chemistry, 2000, vol.65(11), p.3404-3408.
【非特許文献9】Abe et al., Organic Letters, 2001, vol.3(3), p.313-315.
【非特許文献10】Uneyama, Journal of Fluorine Chemistry, 1999, vol.97, p.11-25.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、フルオロアルキル基が側鎖に導入されたアミノ酸であるフルオロアルキル基含有化合物を効率よく合成できる新規な製造方法及びその中間体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、シュウ酸ジエステルを出発物質として使用し、簡便な方法でフルオロアルキル基含有化合物を合成する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記一般式(3)
【0015】
【0016】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R1は、下記一般式(p-1)
【0017】
【0018】
(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
下記一般式(2)
【0019】
【0020】
(式中、R1は前記一般式(3)と同様である。)
で表される化合物と、下記一般式(8)
【0021】
【0022】
(式中、Rfは前記一般式(3)と同様であり、R6は、シリル保護基である)
で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、一般式(2-2)
【0023】
【0024】
(式中、R1及びRfは前記一般式(3)と同様である。)
で表される化合物を製造し、次いで、
前記一般式(2-2)で表される化合物を脱水反応に付して、前記一般式(3)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[2] 前記一般式(3)
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R1は、前記一般式(p-1)(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記一般式(2)(式中、R1は前記一般式(3)と同様である)で表される化合物と、前記一般式(8)(式中、Rfは前記一般式(3)と同様であり、R6は、シリル保護基である)で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、一般式(2-1)
【0025】
【0026】
(式中、R1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R6は、シリル保護基である)
で表される化合物を製造し、次いで、
前記一般式(2-1)で表される化合物を脱水反応に付して、前記一般式(3)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[3] 前記R1が、ベンジル基である、前記[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記Rfが、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-10アルキル基(当該C1-10アルキル基がC2-10アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である、前記[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(8)で表される化合物を、金属フッ化物の存在下で反応させて、前記一般式(2-1)又は前記一般式(2-2)で表される化合物を製造する反応を、10℃以下の温度で行う、前記[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 下記一般式(6-1)
【0027】
【0028】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R1は、前記一般式(p-1)(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記[1]~[5]のいずれかの製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、下記一般式(9)又は(10)
【0029】
【0030】
(式中、R2は、アミノ基の保護基であり、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C6-14アリール基である)
で表される化合物と反応させて、下記一般式(4)
【0031】
【0032】
(式中、R1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R2は、前記一般式(9)又は(10)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、下記一般式(5)
【0033】
【0034】
(式中、R1、Rf、及びR2は、前記一般式(4)と同様である)
で表される化合物を製造し、
前記一般式(5)で表される化合物の保護基R2を脱保護して、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[7] 前記R2が、tert-ブトキシカルボニル基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基である、前記[6]の製造方法。
[8] 下記一般式(7)
【0035】
【0036】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記[6]又は[7]の製造方法により、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-1)で表される化合物の保護基R1を脱保護して、前記一般式(7)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[9] 下記一般式(6-2)
【0037】
【0038】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、R2は、アミノ基の保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記[1]~[5]のいずれかの製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、前記一般式(9)又は(10)(式中、R2は、アミノ基の保護基であり、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C6-14アリール基である)
で表される化合物と反応させて、前記一般式(4)(式中、R1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R2は、前記一般式(9)又は(10)と同様である)で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、前記一般式(5)(式中、R1、Rf、及びR2は、前記一般式(4)と同様である)で表される化合物を製造し、
前記一般式(5)で表される化合物の保護基R2を脱保護して、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[10] 前記R2がtert-ブトキシカルボニル基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基である、前記[9]の製造方法。
[11] 前記一般式(7)(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-30アルキル基(当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、R2は、アミノ基の保護基である)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記[9]又は[10]の製造方法により、前記一般式(6-2)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-2)で表される化合物の保護基R2を脱保護して、前記一般式(7)で表される化合物を製造することを含む、フルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[12] 下記一般式(6-3)
【0039】
【0040】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf及びR1は、前記一般式(3)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[1]~[5]のいずれかの製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、前記一般式(9)又は(10)(式中、R2は、アミノ基の保護基であり、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C6-14アリール基である)で表される化合物と反応させて、前記一般式(4)(式中、R1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R2は、前記一般式(9)又は(10)と同様である)で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、下記一般式(5-1)
【0041】
【0042】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、R1、Rf、及びR2は、前記一般式(4)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(5-1)で表される化合物の保護基R2を脱保護して、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[13] 前記一般式(6-3)(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf及びR1は、前記一般式(6-1)と同様である)で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[6]に記載の製造方法により、前記一般式(6-1)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-1)で表される化合物を光学分割して、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[14] 下記一般式(7-1)
【0043】
【0044】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(6-3)と同様である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[12]又は[13]の製造方法により、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物の保護基R1を脱保護して、前記一般式(6-3)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[15] 下記一般式(6-4)
【0045】
【0046】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(3)と同様であり、R2は、アミノ基の保護基である)
で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[1]~[5]のいずれかの製造方法により、前記一般式(3)で表される化合物を製造し、
前記一般式(3)で表される化合物を、前記一般式(9)又は(10)(式中、R2は、アミノ基の保護基であり、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C6-14アリール基である)で表される化合物と反応させて、前記一般式(4)(式中、R1及びRfは前記一般式(3)と同様であり、R2は、前記一般式(6-4)と同様である)で表される化合物を製造し、
前記一般式(4)で表される化合物を還元反応に付して、前記一般式(5-1)(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、R1、Rf、及びR2は、前記一般式(4)と同様である)で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(5-1)で表される化合物の保護基R1を脱保護して、前記一般式(6-4)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[16] 前記一般式(6-4)(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(6-2)と同様であり、R2は、アミノ基の保護基である)で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[9]の製造方法により、前記一般式(6-2)で表される化合物を製造し、
前記一般式(6-2)で表される化合物を光学分割して、前記一般式(6-4)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[17] 前記一般式(7-1)(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(6-4)と同様である)で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[15]又は[16]の方法により、前記一般式(6-4)で表される光学活性な化合物を製造し、
前記一般式(6-4)で表される化合物の保護基R2を脱保護して、前記一般式(7-1)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[18] 前記一般式(7-1)(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rfは、前記一般式(7)と同様である)で表される光学活性な化合物を製造する方法であって、
前記[8]又は[11]に記載の方法により、前記一般式(7)で表される化合物を製造し、
前記一般式(7)で表される化合物を光学分割して、前記一般式(7-1)で表される光学活性な化合物を製造することを含む、光学活性なフルオロアルキル基含有化合物の製造方法。
[19] 下記一般式(3a)
【0047】
【0048】
(式中、Rf1は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-10アルキル基(当該C1-10アルキル基がC2-10アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R1は、前記一般式(p-1)(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物。
[20] 下記一般式(4a)
【0049】
【0050】
(式中、Rfは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-10アルキル基(当該C1-10アルキル基は炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)であり、
R1は、前記一般式(p-1)(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基であり、
R2Aは、下記一般式(p-2)
【0051】
【0052】
(式中、R10は、置換されていてもよいC1-6アルキル基又は置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基であり、黒丸は結合手を意味する)
で表されるアミノ基の保護基である)
で表される化合物。
[21] 下記一般式(5a)
【0053】
【0054】
(式中、Rf2は、-CF3、-CF2R11又は-CFHR11(式中、R11は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-9アルキル基(当該C1-9アルキル基がC2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)であり、
R1は、前記一般式(p-1)(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基であり、
R2Aは、前記一般式(p-2)(式中、R10は、置換されていてもよいC1-6アルキル基又は置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基であり、黒丸は結合手を意味する)で表されるアミノ基の保護基である)
で表される化合物。
[22] 下記一般式(5-1a)
【0055】
【0056】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf2は、前記一般式(5a)と同様である)
で表される化合物である、前記[21]の化合物。
[23] 下記一般式(6-1a)
【0057】
【0058】
(式中、Rf3は、-CF2R11又は-CFHR11(式中、R11は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-9アルキル基(当該C1-9アルキル基がC2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)であり、
R1は、前記一般式(p-1)(式中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基であり、黒丸は結合手を意味する)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である)
で表される化合物。
[24] 下記一般式(6-3a)
【0059】
【0060】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf3及びR1は、前記一般式(6-1a)と同様である)
で表される化合物である、前記[23]の化合物。
[25] 下記一般式(6-2a)
【0061】
【0062】
(式中、Rf3は、-CF2R11又は-CFHR11(式中、R11は、少なくとも2個のフッ素原子で置換されており、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいC1-9アルキル基(当該C1-9アルキル基がC2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)である)であり、
R2Aは、前記一般式(p-2)(式中、R10は、置換されていてもよいC1-6アルキル基又は置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基であり、黒丸は結合手を意味する)で表されるアミノ基の保護基である)
で表される化合物。
[26] 下記一般式(6-4a)
【0063】
【0064】
(式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表し、Rf3及びR2Aは、前記一般式(6-2a)と同様である)
で表される化合物である、前記[25]の化合物。
【発明の効果】
【0065】
本発明に係る方法によれば、カルボキシル基の脱保護及びアミノ基の脱保護が容易に進行するため、フルオロアルキル基含有化合物を、効率よく合成できる。また、本発明によれば、上記方法で使用される新規な中間体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明及び本願明細書において、「Cp1-p2」(p1及びp2は、p1<p2を満たす正の整数である)は、炭素数がp1~p2の基であることを意味する。
【0067】
本発明及び本願明細書において、「C1-10アルキル基」は、炭素数1~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-10アルキル基」は、炭素数2~10のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-10アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0068】
本発明及び本願明細書において、「C1-30アルキル基」は、炭素数1~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「C2-30アルキル基」は、炭素数2~30のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-30アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0069】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルキル基」は、炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0070】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール基」は、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、C6-12アリール基が特に好ましい。C6-14アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0071】
本発明及び本願明細書において、「置換されていてもよいC6-14アリール基」は、C6-14アリール基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びメチレンジオキシ基(-O-CH2-O-)等が挙げられる。「置換されていてもよいC6-14アリール基」の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、4-ニトロフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3-クロロフェニル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基等が挙げられる。
【0072】
本発明及び本願明細書において、「C6-14アリール-C1-6アルキル基」は、C1-6アルキル基の炭素原子に結合している1個の水素原子がC6-14アリール基に置換された基である。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC6-14アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等を例示でき、フェニル基又は9-フルオレニル基が特に好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基におけるC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましい。C6-14アリール-C1-6アルキル基の例としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-フェニルエチル基、9-アントリルメチル基、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0073】
本発明及び本願明細書において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子をいう。「フッ素原子以外のハロゲン原子」とは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子をいう。「フッ素原子以外のハロゲン原子」の例としては、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0074】
本発明及び本願明細書において、「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1~6のC1-6アルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。C1-6アルコキシ基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0075】
本発明及び本願明細書において、「エーテル結合性の酸素原子」とは、炭素原子間を連結する酸素原子であり、酸素原子同士が直列に連結された酸素原子は含まれない。炭素数Nc(Ncは2以上の整数)のアルキル基が有し得るエーテル結合性の酸素原子は、最大Nc-1個である。
【0076】
また、以降において、「化合物n」は式(n)で表される化合物を意味する。
【0077】
<化合物2から化合物7の合成反応>
本発明に係るフルオロアルキル基含有化合物の製造方法は、アミノ酸の側鎖に、フルオロアルキル基が導入された化合物(含フッ素アミノ酸)の製造方法である。フルオロアルキル基含有化合物である化合物7の合成経路のうち、化合物2から合成する一態様を下記に示す。
【0078】
【0079】
Rfは、C1-30アルキル基のうち、炭素原子に結合している水素原子の少なくとも2個がフッ素原子で置換された基であり、炭素原子に結合している1個以上の水素原子が、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよい。ここで、RfのC1-30アルキル基としては、C1-20アルキル基が好ましく、C1-10アルキル基がより好ましく、C2-10アルキル基がさらに好ましく、C2-8アルキル基がよりさらに好ましい。当該C1-30アルキル基がC2-30アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。Rfにおいて、フッ素原子に置換されている水素原子の数は、2個以上であれば特に限定されるものではなく、例えば、3個以上が好ましく、6個以上がより好ましく、7個以上がさらに好ましい。
【0080】
Rfの例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、ジフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロヘキシル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロオクチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロデシル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロオクタデシル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロヘキサコシル基等が挙げられる。
【0081】
R1は、カルボキシル基の保護基であり、具体的には、下記一般式(p-1)で表される基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、及びフェナシル基から選ばれる保護基である。一般式(p-1)中、R3は、置換されていてもよいC6-14アリール基であり、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいC6-14アリール基である。また、黒丸は結合手を意味する。
【0082】
【0083】
R1で表されるカルボキシル基の保護基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、4-ニトロベンジル基、4-メトキシベンジル基、2,4-ジメトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、4-メチルベンジル基、2,6-ジメチルベンジル基、3-クロロベンジル基、9-アントリルメチル基、ピペロニル基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェナシル基等が挙げられる。穏やかな条件で脱保護できる点で、R1は、好ましくはベンジル基、トリフェニルメチル基であり、より好ましくはベンジル基である。
【0084】
当該製造方法は、カルボキシル基の保護基R1として、ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル保護基を使用することにより、穏やかな条件でR1を脱保護でき、アミノ酸の官能基を分解することなく、含フッ素アミノ酸の合成や含フッ素ペプチドの合成を行うことができる点で有利である。
【0085】
R6は、シリル保護基である。R6としては、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基等が挙げられる。好ましくは、R6は、トリメチルシリル(TMS)基である。
【0086】
R2は、アミノ基の保護基である。R2としては、ペプチド合成で使用されるアミノ基の保護基であれば、特に限定されない。アミノ基の保護基としては、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基等のカルバメート系保護基が挙げられる。穏やかな条件で脱保護できる点で、R2は、好ましくは、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基である。
【0087】
[工程1]
化合物2と化合物8を、金属フッ化物の存在下で反応させることにより、化合物2-2を得ることができる。一般式(8)であるRf-R6で表される化合物8は、入手容易なRf-I(フルオロアルキルヨージド)から1工程で合成できるため、導入できるRf基の範囲が広い。
【0088】
金属フッ化物としては、フッ化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属フッ化物を使用することができ、フッ化セシウムが好ましい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、テトラヒドロフランが好ましい。
【0089】
化合物8の量は、1モルの化合物2に対して、0.5~10モルが好ましい。金属フッ化物の量は、1モルの化合物2に対して、0.01~2モルが好ましい。工程1の反応は、10℃以下の温度で行うことが好ましい。10℃以下の温度で反応を行うことにより、高収率で化合物2-2を製造できる。反応温度は、好ましくは-78℃~10℃、より好ましくは-50℃~-10℃、特に好ましくは-40℃~-20℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0090】
化合物2は、シュウ酸を公知の方法でジエステル化することにより製造することができ、又は市販品を使用してもよい。
【0091】
[工程1-1]
工程1の反応において、化合物2-1(ヒドロキシ基の一方がR6で保護された化合物)、又は化合物2-2と化合物2-1の混合物が得られることがある。その場合、化合物2-1のシリル保護基R6を脱保護することにより、化合物2-2を得ることができる。
工程1-1の反応は、工程1と同様の方法で行うことができる。
【0092】
[工程1-2]
化合物2-1のシリル保護基R6を脱保護することにより、化合物2-2を得ることができる。
脱保護は、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化セシウム、フッ化水素酸塩等のフッ化物塩、又は塩酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸の存在下で行うことができる。
【0093】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、テトラヒドロフランが好ましい。酢酸を添加して行うことが好ましい。
【0094】
フッ化物塩の量は、1モルの化合物2-1(化合物2-2と化合物2-1の混合物の場合は、混合物1モル)に対して、0.1~10モルが好ましい。酸の量は、1モルの化合物2-1(化合物2-2と化合物2-1の混合物の場合は、混合物1モル)に対して、0.1~10モルが好ましい。工程1-2の反応は、50℃以下の温度で行うことが好ましい。50℃以下の温度で反応を行うことにより、高収率で化合物2-2を製造できる。反応温度は、好ましくは-80℃~50℃、より好ましくは-40℃~30℃、特に好ましくは-20℃~30℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0095】
[工程2]
化合物2-2を脱水反応に付すことにより、化合物3を得ることができる。
脱水反応は、五酸化二リン、濃硫酸、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、モレキュラーシーブ(合成ゼオライト)、シリカゲル等の脱水剤の存在下で、行うことができる。脱水剤としては、五酸化二リンが好ましい。脱水剤の量は、化合物2-2の100重量%に対して、10~100重量%が好ましい。脱水反応は、化合物2-2を、脱水剤の存在下で蒸留することにより行うことができる。蒸留は、30℃~150℃の温度で行うことが好ましい。蒸留温度が高すぎると、化合物3が分解する可能性がある。蒸留温度が低すぎると、化合物3を凝縮できず、回収率が低下する可能性がある。蒸留は、減圧、常圧、加圧のいずれの圧力でも実施でき、化合物3の沸点が上記の好ましい温度の範囲に入るように適宜決定できる。圧力は、好ましくは0.1mmHgから5気圧(3800mmHg)である。
【0096】
[工程3]
化合物3を、化合物9又は化合物10と反応させることにより、化合物4を得ることができる。
【0097】
一般式(9)中、R2は、前記の通り、アミノ基の保護基である。R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、C6-14アリール基である。R7、R8又はR9で表されるC6-14アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくは、R7、R8及びR9は、それぞれフェニル基である。
【0098】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、ジエチルエーテルが好ましい。
【0099】
化合物9又は化合物10の量は、1モルの化合物3に対して、0.5~10モルが好ましい。反応温度は、好ましくは-78℃~100℃、より好ましくは0℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは10分間~4時間である。
【0100】
好適な態様において、アミノ基の保護基R2として、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等のカルバメート系保護基を使用することにより、穏やかな条件でR2を脱保護でき、化合物の分解やラセミ化を抑制しながら含フッ素アミノ酸の合成を行うことができる。
【0101】
[工程4]
化合物4を還元反応に付すことにより、化合物5を得ることができる。
還元反応は、還元剤を使用する方法、又は金属触媒の存在下で還元する方法で行うことができる。
【0102】
(1)還元剤を使用する方法
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素試薬を使用できる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素亜鉛が好ましく、水素化ホウ素ナトリウムがより好ましい。還元剤の量は、1モルの化合物4に対して、0.5~10モルが好ましい。
【0103】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)(例、アサヒクリン(登録商標)AK-225(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンと1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンの混合物、AGC株式会社))、ジクロロメタン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、ジエチルエーテルが好ましい。
反応温度は、好ましくは-78℃~100℃、より好ましくは-10℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0104】
(2)金属触媒の存在下で還元する方法
金属触媒としては、パラジウム触媒(例、パラジウム炭素、水酸化パラジウム、パールマン触媒、リンドラー触媒、シリカゲル担持パラジウム触媒、アルミナ担持パラジウム触媒、酸化パラジウム)、ニッケル触媒(例、ラネーニッケル)、白金触媒(例、白金炭素、酸化白金、シリカゲル担持白金触媒、アルミナ担持白金触媒)、ロジウム触媒(例、ロジウム炭素、アルミナ担持ロジウム触媒、酸化ロジウム)、ルテニウム触媒(例、ルテニウム炭素、アルミナ担持ルテニウム触媒、酸化ルテニウム)、コバルト触媒(例、ラネーコバルト)等が挙げられ、パラジウム触媒が好ましい。金属触媒の量は、1モルの化合物4に対して、0.0001~0.1モルが好ましく、0.0005~0.02モルがより好ましい。
【0105】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。
【0106】
還元反応は、水素ガスの存在下で行われる。還元反応は常圧で行っても、加圧下で行ってもよい。水素ガスの圧力は、好ましくは0.5気圧~10気圧である。反応温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは10℃~50℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0107】
[工程5-1]
化合物5の保護基R2を脱保護することにより、化合物6-1を得ることができる。
脱保護は、保護基R2の種類に応じて行うことができる。
R2がBoc基の場合、酸性条件下で脱保護できる。使用する酸としては、トリフルオロ酢酸、塩酸等が挙げられる。酸の量は、1モルの化合物5に対して、1~1000モルが好ましい。
【0108】
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられ、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましい。酸を溶媒として使用することもできる。溶媒としては、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の無機酸、有機酸が挙げられ、トリフルオロ酢酸が好ましい。反応温度は、好ましくは-78℃~50℃、より好ましくは0℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0109】
R2がFmoc基の場合、塩基性条件下で脱保護できる。使用する塩基としては、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン等の二級アミンが挙げられる。塩基の量は、1モルの化合物5に対して、1~100モルが好ましい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。反応温度は、好ましくは-20℃~80℃、より好ましくは0℃~40℃である。反応時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは5分間~2時間である。
【0110】
[工程6-1]
化合物6-1の保護基R1を脱保護することにより、化合物7を得ることができる。
脱保護は、保護基R1の種類に応じて行うことができる。R1がベンジル基、トリフェニルメチル基、9-アントリルメチル基、ピペロニル基、2-(9,10-ジオキソ)アントリルメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェナシル基の場合、金属触媒の存在下で還元する方法により、脱保護できる。還元反応は、工程4の金属触媒の存在下で還元する方法と同様の方法で行うことができる。
【0111】
[工程5-2]
化合物5の保護基R1を脱保護することにより、化合物6-2を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0112】
[工程6-2]
化合物6-2の保護基R2を脱保護することにより、化合物7を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0113】
<化合物4から化合物7-1の合成反応>
一般式(4)で表されるイミン(化合物4)の不斉還元を行うことにより、光学活性な含フッ素アミノ酸(フルオロアルキル基含有化合物)を合成できる。下記反応式中、アスタリスク(*)は、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表す。また、Rf、R1、及びR2は、前記で定義した通りである。
【0114】
【0115】
当該製造方法においては、カルボキシル基の保護基R1として、ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアラルキル保護基を使用することにより、穏やかな条件でR1を脱保護でき、光学活性を保持したまま含フッ素アミノ酸の合成や含フッ素ペプチドの合成を行うことができる点で有利である。
【0116】
[工程7]
化合物4を不斉還元反応に付すことにより、化合物5-1を得ることができる。
不斉還元反応は、化合物4を不斉還元触媒の存在下で還元することにより、行うことができる。
【0117】
不斉還元触媒としては、遷移金属に不斉配位子が配位した遷移金属錯体を使用できる。遷移金属としては、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、白金、鉄等が挙げられる。遷移金属錯体としては、パラジウム錯体、ロジウム錯体、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、ニッケル錯体等が挙げられる。
【0118】
不斉配位子としては、dpen(1,2-ジフェニルエチレンジアミン)、daipen(1,1-ジ(4-アニシル)-2-イソプロピル-1,2-エチレンジアミン)、光学活性なホスフィン配位子が挙げられる。光学活性なホスフィン配位子としては、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-5,5’,6,6’,7,7’,8,8’-オクタヒドロ-1,1’-ビナフチル(H8-BINAP)、2,2’-ビス(ジ-p-トリルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(Tol-BINAP)、2,2’-ビス[ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチル(Xyl-BINAP)、2,2’-ビス[ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチル(DTBM-BINAP)、1,2-ビス(アニシルホスフィノ)エタン(DIPAMP)、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1-シクロヘキシル-1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(CYCPHOS)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)-5-ノルボルネン(NORPHOS)、2,3-O-イソプロピリデン-2,3-ジヒドロキシ-1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、1-[1’,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン(BPPFA)、1-[1’,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール(BPPFOH)、2,4-ビス-(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1,2-ビス(置換ホスホラノ)ベンゼン(DuPHOS)、5,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(SEGPHOS)、5,5’-ビス[ジ(3,5-キシリル)ホスフィノ]-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(DM-SEGPHOS)、5,5’-ビス[ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィノ]-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(DTBM-SEGPHOS)、1-[2-(2置換ホスフィノ)フェロセニル]エチル-2置換ホスフィン(Josiphos)、1-[2-(2’-2置換ホスフィノフェニル)フェロセニル]エチル-2置換ホスフィン(Walphos)等が挙げられる。
【0119】
不斉還元触媒の量は、1モルの化合物4に対して、0.0001~0.1モルが好ましく、0.0005~0.02モルがより好ましい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の不活性溶媒が挙げられる。
還元反応は、水素ガスの存在下で行われる。還元反応は常圧で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。水素ガスの圧力は、好ましくは0.5気圧~10気圧である。反応温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは10℃~50℃である。反応時間は、好ましくは1~48時間、より好ましくは6~36時間である。
【0120】
[工程8-1]
化合物5-1の保護基R2を脱保護することにより、化合物6-3を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0121】
[工程9-1]
化合物6-3の保護基R1を脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0122】
[工程8-2]
化合物5-1の保護基R1を脱保護することにより、化合物6-4を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0123】
[工程9-2]
化合物6-4の保護基R2を脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0124】
<化合物6-1又は化合物6-2から化合物7-1の合成反応>
光学活性な含フッ素アミノ酸(フルオロアルキル基含有化合物)の合成は、下記反応によっても行うことができる。下記反応式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表す。また、Rf、R1、及びR2は、前記で定義した通りである。
【0125】
【0126】
[工程10-1]
化合物6-1を光学分割することにより、化合物6-3を得ることができる。
光学分割は、公知の手法で行うことができる。例えば、キラルカラムを使用する方法、結晶化による方法、ジアステレオマー法等で行うことができる。
【0127】
(1)キラルカラムを使用する方法
キラルカラムを使用する液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)により、ラセミ体を光学活性体に分割できる。キラルカラムは、CHIRALPAK(登録商標)(株式会社ダイセル)、CHIRALCEL(登録商標)(株式会社ダイセル)等を使用できる。
【0128】
(2)結晶化による方法
ラセミ体と光学活性なアミン又は光学活性な酸との塩を形成させ、結晶性のジアステレマー塩に誘導して分別結晶する。再結晶を繰り返すことにより、単一のジアステレマー塩を得ることができる。必要に応じて、ジアステレオマー塩を中和して、遊離体の光学活性体を得る。光学活性なアミンとしては、ブルシン、シンコニジン、シンコニン、1-フェネチルアミン等が挙げられる。光学活性な酸としては、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸等が挙げられる。
【0129】
(3)ジアステレオマー法
ラセミ体に光学活性な試薬を反応させて、ジアステオマーの混合物を得て、これを分別結晶、クロマトグラフィーにより、単一のジアステオマーを分離する。得られた単一のジアステレオマーから光学活性な試薬部分を除去して、目的の光学異性体を得る。
【0130】
[工程11-1]
化合物6-3の保護基R1を脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程6-1と同様の方法で行うことができる。
【0131】
[工程10-2]
化合物6-2を光学分割することにより、化合物6-4を得ることができる。光学分割は、工程10-1と同様の方法で行うことができる。
【0132】
[工程11-2]
化合物6-4の保護基R2を脱保護することにより、化合物7-1を得ることができる。脱保護は、工程5-1と同様の方法で行うことができる。
【0133】
[工程12]
化合物7を光学分割することにより、化合物7-1を得ることができる。光学分割は、工程10-1と同様の方法で行うことができる。
【0134】
<新規中間体化合物>
本発明は、一般式(3a)、一般式(4a)、一般式(5a)、一般式(5-1a)、一般式(6-1a)、一般式(6-3a)、一般式(6-2a)、又は一般式(6-4a)で表される新規化合物を提供する。式中、アスタリスクは、アスタリスクを付した不斉炭素原子の絶対配置がS又はRであることを表す。これらの化合物は、前記フルオロアルキル基含有化合物の製造方法における中間体として有用である。また、一般式(6-1a)、一般式(6-3a)、一般式(6-2a)、又は一般式(6-4a)で表される化合物は、含フッ素アミノ酸を含有するペプチドを製造するために使用できる。
【0135】
【0136】
Rf1は、C1-10アルキル基のうち、炭素原子に結合している水素原子の少なくとも2個がフッ素原子で置換された基であり、炭素原子に結合している1個以上の水素原子が、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよい。当該C1-10アルキル基がC2-10アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。ここで、C1-10アルキル基としては、C2-10アルキル基が好ましく、C2-8アルキル基が好ましい。Rf1の例としては、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0137】
Rf2は、-CF3、-CF2R11、又は-CFHR11である。ここで、R11は、C1-9アルキル基のうち、炭素原子に結合している水素原子の少なくとも2個がフッ素原子で置換された基であり、炭素原子に結合している1個以上の水素原子が、フッ素原子以外のハロゲン原子でさらに置換されていてもよい。当該C1-9アルキル基がC2-9アルキル基である場合には、炭素原子間に1~5個のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。R11におけるC1-9アルキル基としては、C1-7アルキル基がより好ましい。Rf2の例としては、-CF3、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0138】
Rf3は、-CF2R11又は-CFHR11である。-CF2R11及び-CFHR11は、Rf2と同様であり、R11におけるC1-9アルキル基としては、C1-7アルキル基がより好ましい。Rf3の例としては、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0139】
R2Aは、下記一般式(p-2)で表されるアミノ基の保護基である。式中、R10は、置換されていてもよいC1-6アルキル基又は置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基である。黒丸は結合手を意味する。
【0140】
【0141】
R10で表される「置換されていてもよいC1-6アルキル基」は、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、及びC1-6アルコキシ基から選ばれる1~3個の置換基で置換されていてもよいC1-6アルキル基を意味する。R10で表される「置換されていてもよいC1-6アルキル基」としては、tert-ブチル基、2,2,2-トリクロロエチル基等が挙げられる。
【0142】
R10で表される「置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基」は、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びメチレンジオキシ基(-O-CH2-O-)から選ばれる1~3個の置換基で置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基を意味する。R10で表される「置換されていてもよいC6-14アリール-C1-6アルキル基」としては、9-フルオレニルメチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0143】
穏やかな条件で脱保護できる点で、R2Aで表されるアミノ保護基は、好ましくは、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基である。
【実施例0144】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0145】
実施例、比較例の分析に使用したNMR装置は日本電子製JNM-ECZ400S(400MHz)であり、1H NMRではテトラメチルシランを0PPM、19F NMRではC6F6を-162PPMの基準値とした。
【0146】
本明細書において、以下の略号を使用する。
Bn:ベンジル
Boc:t-ブトキシカルボニル
Et2O:ジエチルエーテル
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
THF:テトラヒドロフラン
TMS:トリメチルシリル
C4F9:1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル
【0147】
[実施例1]
トリメチル(ノナフルオロブチル)シランとシュウ酸ジベンジルから、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸を合成した。
【0148】
[工程1]
【0149】
【0150】
オーブンで乾燥した100mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、シュウ酸ジベンジル(5.41g,20.0mmol)、フッ化セシウム(255mg,1.68mmol)、及びTHF(54mL)を加えて撹拌し、-30℃に冷却してからトリメチル(ノナフルオロブチル)シラン(4.50mL,20.2mmol)を加えて-30℃で24時間撹拌を続けた。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加えて、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ別し、ろ液を減圧留去して2-(ベンジロキシ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-((トリメチルシリル)オキシ)ヘキサン酸ベンジルと3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2,2-ジヒドロキシヘキサン酸ベンジルの混合粗体を得た。得られた粗体は精製することなく次工程に用いた。
【0151】
[工程1-2]
【0152】
【0153】
オーブンで乾燥した100mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、工程1で得られた粗体全量とフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)1mol/L THF溶液(10.5mL,10.5mmol)、酢酸(1mL)、及びTHF(50mL)を加えて0℃で撹拌した。その後、室温に昇温して24時間撹拌後に飽和重曹水(30mL)を加えてクエンチし、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相を水(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄後に硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ別し、ろ液を減圧留去して3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2,2-ジヒドロキシヘキサン酸ベンジルの粗体を得た。得られた粗体は精製することなく次工程に用いた。
【0154】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ7.39(brs,5H),5.37(s,2H).
19F NMR(376MHz,CDCl3) δ-80.79(brs,3F),-121.09(brs,2F),-121.24-121.26(m,2F),-126.12-126.21(m,2F).
【0155】
[工程2]
【0156】
【0157】
オーブンで乾燥した20mL容フラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、工程2で得られた粗体全量と五酸化リン(粗体の22重量%)を加え、減圧蒸留を行った。2mmHg、77℃で得られた留分を集め、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-オキソヘキサン酸ベンジルを無色の液体として得た(工程1から工程3まで通して収率73%)。
【0158】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ7.41(brs,5H),5.40(s,2H).
19F NMR(376MHz,CDCl3) δ-80.79(brs,3F),-117.78-117.850(t,2F,JF-F=13Hz),-122.01(brs,2F),-125.58(brs,2F).
【0159】
工程1の温度を0℃に変更した以外は、工程1~工程2と同様にして、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-オキソヘキサン酸ベンジルを無色の液体として得た。工程1から工程2まで通しての収率は69%であった。
【0160】
[工程3]
【0161】
【0162】
オーブンで乾燥した30mL容のシュレンクフラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-2-オキソヘキサン酸ベンジル(1g,2.6mmol)、t-ブチル(トリフェニルホスファネイリデン)カルバメート(2.6mmol)、及びEt2O(10mL)を加えた。反応液を室温で1時間撹拌後に濾過し、ろ物をEt2O(2×2mL)で洗浄した。合わせた有機相を減圧留去して2-((t-ブトキシカルボニル)イミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルの粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(Et2O/ヘキサン=1/4)で精製し、2-((t-ブトキシカルボニル)イミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルを無色液体として得た(収率87%)。
【0163】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ7.410-7.352(m,5H),5.350(s,2H),1.504(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl3) δ-80.76-80.78(t,3F,JF-F=9Hz),-112.37(brs,2F),-121.0(brs,2F),-125.36(brs,2F).
【0164】
[工程4]
【0165】
【0166】
オーブンで乾燥した30mL容のシュレンクフラスコに撹拌子を入れ、窒素雰囲気下、2-((t-ブトキシカルボニル)イミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジル(0.2g,0.42mmol)をEt2O(15mL)に溶解して0℃で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(0.46mmol)を3回に分けて0℃で加え、その後、室温に昇温して24時間撹拌した。氷水を加えてクエンチし、1mol/Lの塩酸を加えてpHを7未満にした。水相をEt2O(2×10mL)で抽出し、合わせた有機相を減圧留去して2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルの粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で精製し、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジルを無色液体として得た(収率61%)。
【0167】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ7.40-7.33(m,5H),5.41-5.39(d,2H,JH-H=10Hz),5.28-5.20(m,3H),1.45(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl3) δ-80.86-80.89(t,3F,JF-F=9Hz),-115.36-118.55(m,2F),-121.50-123.17(m,2F),-125.00-126.77(m,2F).
【0168】
Et2O及び水素化ホウ素ナトリウムの代わりに、表1に記載の溶媒及び還元剤(当量)を使用して、前記工程4と同様の反応を行った。収率を表1に示す。表中、「AK225」は、「アサヒクリン(登録商標)AK-225」(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンと1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンの混合物、AGC株式会社)である。
【0169】
【0170】
[工程5-2]
【0171】
【0172】
オーブンで乾燥した25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸ベンジル(73.6mg,0.15mmol)、パラジウム/炭素(Pd5%、約55%水湿潤品、20mg)、酢酸エチル(1mL)、及びエタノール(7mL)を加え、常圧の水素雰囲気下、室温で撹拌した。室温で24時間撹拌後にセライト濾過を行い、ろ物をエタノール(3×5mL)で洗浄し、合わせた有機相を減圧留去して2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸の粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)で精製し、2-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサン酸を無色液体として得た(収率86%)。
【0173】
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ7.72(br,1H),5.49-5.47(d,2H,JH-H=10Hz),5.24-5.15(m,1H),1.45(s,9H).
19F NMR(376MHz,CDCl3) δ-80.30(brs,3F),-114.64-118.03(m,2F),-120.70-122.40(m,2F),-124.52-126.22(m,2F).
【0174】
[工程5-1]
【0175】
【0176】
オーブンで乾燥した25mL容の二口フラスコに撹拌子を入れ、Boc-RfAA-OBn(376mg,0.78mmol)、4M HCl、1,4-ジオキサン溶液(3mL)を0℃で加えた。室温で18時間撹拌後に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを7より大きくなるように調整し、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を濾過し、ろ液を減圧留去してH-RfAA-OBnの塩酸塩を白色固体として得た(収率78%)。
【0177】
1H NMR(400MHz,D2O) δ7.31(brs,2H),6.81-6.77(m,5H),5.27(m,1H),3.71-3.67(m、2H).
19F NMR(376MHz,D2O) δ-80.38(t,3F),-118.29-121.00(m,2F),-121.00-123.80(m,2F),-126.12-128.12(m,2F).
本発明は、含フッ素アミノ酸等のフルオロアルキル基含有化合物を効率よく合成できる新規な製造方法を提供する。本発明に係る製造方法によれば、カルボキシル基の脱保護及びアミノ基の脱保護が容易に進行するため、フルオロアルキル基含有化合物を効率よく合成できる。また、本発明によれば、前記製造方法で使用される新規な中間体が提供される。