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特開2022-148003DCRガス用吸光分析装置、DCRガス用吸光分析方法、及び、DCRガス用吸光分析プログラム
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  • 特開-DCRガス用吸光分析装置、DCRガス用吸光分析方法、及び、DCRガス用吸光分析プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148003
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】DCRガス用吸光分析装置、DCRガス用吸光分析方法、及び、DCRガス用吸光分析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20220929BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049513
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】古屋 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 有平
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE11
2G059HH01
2G059HH06
2G059JJ03
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】吸収スペクトルが重複するDCRガスとCOガスからなる混合ガスであっても、DCRガスの吸光度のみを分離してその濃度を算出できるDCR用吸光分析装置を提供する。
【解決手段】DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するDCR用フィルタ31と、COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するCO用フィルタ32と、前記DCR用フィルタ31を透過した光により測定された第1吸光度A1と、前記CO用フィルタ32を透過した光により測定された第2吸光度AC2と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出するDCRガス量算出器4と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCR(Ru3(CO)12)ガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するDCRガス用吸光分析装置であって、
前記DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するDCR用フィルタと、
前記COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するCO用フィルタと、
前記DCR用フィルタを透過した光により測定された第1吸光度と、前記CO用フィルタを透過した光により測定された第2吸光度と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出するDCRガス量算出器と、を備え、
前記DCRガス量算出器が、
前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を推定する干渉影響推定部と、
前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引いて、前記DCRガスの吸光度に補正する吸光度補正部と、
前記吸光度補正部で補正された前記DCRガスの吸光度に基づいて、混合ガス中に含まれる前記DCRガスの量に換算する換算部と、を備えたことを特徴とするDCRガス用吸光分析装置。
【請求項2】
前記第1波数域が、2067/cmを含むとともに、前記第2波数域が、2165/cmを含む請求項1記載のDCRガス用吸光分析装置。
【請求項3】
前記吸光度補正部が、前記第2吸光度に所定の係数を乗じて前記干渉影響吸光度を算出する請求項1又は2記載のDCRガス用吸光分析装置。
【請求項4】
キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCR(Ru3(CO)12)ガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するDCRガス用吸光分析方法であって、
前記DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するようにDCR用フィルタを設けることと、
前記COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するようにCO用フィルタを設けることと、
前記DCR用フィルタを透過した光により測定された第1吸光度と、前記CO用フィルタを透過した光により測定された第2吸光度と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出することと、を備え、
前記DCRガスの量の算出において、
前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を推定することと、
前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引いて、前記DCRガスの吸光度に補正することと、
前記吸光度補正部で補正された前記DCRガスの吸光度に基づいて、混合ガス中に含まれる前記DCRガスの量に換算することと、を含むことを特徴とするDCRガス用吸光分析方法。
【請求項5】
キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCR(Ru3(CO)12)ガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するものであり、前記DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するDCR用フィルタと、前記COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するCO用フィルタと、を備えたDCRガス用吸光分析装置に用いられるDCRガス用吸光分析プログラムであって、
前記DCRガス用吸光分析プログラムが、
前記DCR用フィルタを透過した光により測定された第1吸光度と、前記CO用フィルタを透過した光により測定された第2吸光度と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出するDCRガス量算出器としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、
前記DCRガス量算出器が、
前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を推定する干渉影響推定部と、
前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引いて、前記DCRガスの吸光度に補正する吸光度補正部と、
前記吸光度補正部で補正された前記DCRガスの吸光度に基づいて、混合ガス中に含まれる前記DCRガスの量に換算する換算部と、を備えたことを特徴とするDCRガス用吸光分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCRガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するDCRガス用吸光分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CVD法やALD法等の化学蒸着法によりルテニウム薄膜やルテニウム化合物薄膜を形成するためにDCR(Dodecacarbonyl Triruthenium: (Ru3(CO)12))ガスを使用することが検討されている。DCRガスは例えばCOガスをキャリアガスとして真空チャンバ内に所定の濃度や流量で供給される。
【0003】
DCRガスとCOガスからなる混合ガス中におけるDCRガスの濃度の測定には、NDIR(Non Dispersive infrared)法を用いることが考えられる。
【0004】
ところで、DCRの吸収スペクトルのほぼ全体は、COの吸収スペクトルの一部に重複しているため、DCRの吸収波長で分析を行うと、DCR及びCOの双方の吸収の影響が発生してしまう。このため、DCRだけの吸光度を切り分けられず、正確なDCRガスの濃度や流量を算出できない。
【0005】
例えば排ガスの成分を測定するためにNDIRを用いる場合には、特許文献1の各ガスの吸収波長域の赤外線をほぼ全域で透過する光学フィルタをそれぞれ用いて、排ガス中の測定対象ガスであるCO濃度又はCO濃度を測定するとともに、測定対象ガスと吸収波長域が重複する干渉成分である水分の濃度を測定する。そして、ゼロ点干渉補正として測定された測定対象ガスの濃度から水分の濃度を差し引く事が行われている。
【0006】
しかしながら、上記のような方法をDCRとCOの混合ガスに単純に適用してもDCRの濃度を正確に測定することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-172700号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、吸収スペクトルが重複するDCRガスとCOガスからなる混合ガスであっても、DCRガスの吸光度のみを分離してその濃度を算出できるDCR用吸光分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCR(Ru3(CO)12)ガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するDCRガス用吸光分析装置であって、前記DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するDCR用フィルタと、前記COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するCO用フィルタと、前記DCR用フィルタを透過した光により測定された第1吸光度と、前記CO用フィルタを透過した光により測定された第2吸光度と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出するDCRガス量算出器と、を備え、前記DCRガス量算出器が、前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を推定する干渉影響推定部と、前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引いて、前記DCRガスの吸光度に補正する吸光度補正部と、前記吸光度補正部で補正された前記DCRガスの吸光度に基づいて、混合ガス中に含まれる前記DCRガスの量に換算する換算部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCR(Ru3(CO)12)ガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するDCRガス用吸光分析方法であって、前記DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するようにDCR用フィルタを設けることと、前記COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するようにCO用フィルタを設けることと、前記DCR用フィルタを透過した光により測定された第1吸光度と、前記CO用フィルタを透過した光により測定された第2吸光度と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出することと、を備え、前記DCRガスの量の算出において、前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を推定することと、前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引いて、前記DCRガスの吸光度に補正することと、前記吸光度補正部で補正された前記DCRガスの吸光度に基づいて、混合ガス中に含まれる前記DCRガスの量に換算することと、を含む。
【0011】
このようなものであれば、前記DCR用フィルタの作用によって前記DCRガスと前記COガスの各吸収の影響を受けた前記第1吸光度と、前記CO用フィルタの作用によってDCRガスの吸収の影響をほぼ受けておらず、COガスの濃度が正確に反映されている第2吸光度を得ることができる。
【0012】
すなわち、前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を正確に推定できる。さらに前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引くことで前記第1吸光度を前記DCRガスの吸光度に補正しているので、正確なDCRガスの吸光度を得ることができる。
【0013】
前記第1吸光度にはDCRガスの吸収ピークによる吸収の影響が最もよく現れるようにするとともに、前記第2吸光度にはCOガスの吸収ピークによる吸収の影響が最も表れるようにして、より正確なDCRガスの量が得られるようにするには、前記第1波数域が、2067/cmを含むとともに、前記第2波数域が、2165/cmを含むものであればよい。
【0014】
複雑な演算を行う必要をなくし、例えば濃度制御に必要となる制御周期で逐次前記DCRガスの濃度を正確に算出できるようにするには、前記吸光度補正部が、前記第2吸光度に所定の係数を乗じて前記干渉影響吸光度を算出するものであればよい。
【0015】
既存の吸光分析装置のプログラムを更新することにより、本発明に係るDCR用吸光分析装置とほぼ同様の効果を享受できるようにするには、キャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCR(Ru3(CO)12)ガスからなる混合ガス中のDCRガスの量を測定するものであり、前記DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するDCR用フィルタと、前記COガスの吸収波数域であり、かつ、前記第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するCO用フィルタと、を備えたDCRガス用吸光分析装置に用いられるDCRガス用吸光分析プログラムであって、前記DCRガス用吸光分析プログラムが、前記DCR用フィルタを透過した光により測定された第1吸光度と、前記CO用フィルタを透過した光により測定された第2吸光度と、に基づいて、前記DCRガスの量を算出するDCRガス量算出器としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、前記DCRガス量算出器が、前記第2吸光度に基づいて、前記第1波数域における前記COガスの吸光度である干渉影響吸光度を推定する干渉影響推定部と、前記第1吸光度から前記干渉影響吸光度を差し引いて、前記DCRガスの吸光度に補正する吸光度補正部と、前記吸光度補正部で補正された前記DCRガスの吸光度に基づいて、混合ガス中に含まれる前記DCRガスの量に換算する換算部と、を備えたことを特徴とするDCRガス用吸光分析プログラムを用いればよい。
【0016】
なお、DCRガス用吸光分析プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明に係るDCRガス用吸光分析装置によれば、COガスの濃度を反映した第2吸光度から第1吸光度に含まれるCOガスの吸収による干渉影響吸光度を正確に推定し、当該干渉影響吸光度に基づいて第1吸光度を補正することで、DCRガスのみの吸収による吸光度を得ることができる。したがって、DCRガスの濃度、分圧といった量を正確に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るDCRガス用吸光分析装置を示す模式図。
図2】同実施形態におけるDCRガスとCOガスの吸収スペクトル、及び、各フィルタの透過設定を示すグラフ。
図3】同実施形態におけるDCRガス量算出器の構成を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係るDCRガス用吸光分析装置100について各図を参照しながら説明する。
【0020】
このDCRガス用吸光分析装置100は、例えばCVD法やALD法等の化学的蒸着法による半導体製造プロセスにおいて、チャンバ内に供給されるDCRガスの濃度をNDIR法により測定するものである。チャンバ内へはキャリアガスであるCOガスと成分ガスであるDCRガスの混合ガスが供給される。これはDCRのCO基がチャンバに供給されるまでの間に分離し、DCRの分解が生じるのを防ぐためである。
【0021】
図1に示すようにDCRガス用吸光分析装置100は、混合ガスが流れる流路に対して取り付けられる透光性を有した概略円筒状のセル2と、セル2の一端面側からセル2内に所定のスペクトルを有する赤外線を入射させる光源1と、セル2の他端面側から射出される赤外光を検出する光検出機構3と、光検出機構3の出力に基づいてDCRガスの濃度を算出するDCRガス量算出器4と、を備えている。
【0022】
各部について詳述する。
【0023】
光源1は、少なくともDCRガスの吸収ピークとCOガスの吸収ピークの波数を含む波数域の赤外光を射出するように構成されている。
【0024】
セル2は、光源1側の側面部に開口する混合ガス入口と、検出機構側の側面部に開口する混合ガス出口とを備えており、セル2内に混合ガスが流通するように構成されたいわゆるフローセルである。
【0025】
光検出機構3は、セル2の他端面側と対向するように設けられた、3組のフィルタ及び検出器とを備えている。この実施形態では、3組のフィルタ及び検出器は、DCRガスとCOガスの吸収による第1吸光度A1を測定するためのDCR用フィルタ31及びDCR用検出器31Dと、COガス単独の吸収による第2吸光度AC2を測定するためのCO用フィルタ32及びCO用検出器32Dと、比較信号を出力する基準フィルタ33及び基準検出器33Dである。各フィルタはバンドパスフィルタであって、それぞれ透過させる光の波数域が異ならせてある。各検出機については例えば焦電型の赤外線センサであっても同型のものを用いている。
【0026】
各フィルタの詳細について説明する。
【0027】
DCR用フィルタ31は、DCRガスの吸収ピークを含む第1波数域の光を透過するように構成されている。DCRガスの吸収スペクトルのピークは、2067/cmにあるため、第1波数域は吸収ピーク及びその近傍の波数を含むように構成されている。
【0028】
一方、CO用フィルタ32は、COガスの吸収波数域であり、かつ、第1波数域とは別の第2波数域の光を透過するように構成されている。本実施形態は第2波数域にはDCRガスの吸収スペクトルが実質的に存在しない、あるいは、COガスの吸収に対してDCRガスの吸収がほぼ無視できる波数域となるように構成されている。より具体的にはCOガスの吸収ピークであり、DCRガスの吸光がほぼ無視できる2165/cm及びその近傍の波数を含むように第2波数域は設定してある。
【0029】
基準フィルタ33については、DCRガス及びCOガスの吸収がほぼ存在しない波数域の赤外光を透過するように構成されている。すなわち、比較信号は吸収が実質的に存在しない場合の赤外線の強度が反映される。
【0030】
ここで、図2に混合ガスを流した場合と、COガスのみを流した場合の吸収スペクトルの測定結果を示す。いずれの測定結果でもCOガスの流量は同じ値に設定してある。図2の測定結果から分かるように2165/cmの近傍では混合ガスを流した場合とCOガスを単独で流した場合で吸光度に変化はほとんど生じていない事がわかる。すなわち、COフィルタを用いて第2波長域の吸光度を測定することにより、混合ガスを流している場合でもCO検出器の出力から混合ガス中のCOガス単独の影響が現れた吸光度を得られることがわかる。一方、2067/cmの近傍ではCOガス単独でも吸収が生じているため、混合ガスを流した場合に第1波長域で測定される吸光度はDCRガスの吸光度だけでなく、COガスの吸光度の影響が発生していることが分かる。
【0031】
次にDCRガス量算出器4の構成について図3の機能ブロック図を参照しながら説明する。
【0032】
DCRガス量算出器4は、光検出機構3から得られる第1波数域での測定結果である第1吸光度A1と、第2波数域での測定結果である第2吸光度AC2に基づいて、混合ガス中におけるDCRガスの濃度を算出するものである。このDCRガス量算出器4は例えばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたいわゆるコンピュータにおいて、メモリに格納されているDCRガス用吸光分析プログラムが実行されることにより、その機能が実現される。具体的にはDCRガス量算出器4は、少なくとも第1吸光度算出部41、第2吸光度算出部42、干渉影響推定部43、関係データ記憶部44、吸光度補正部44、換算部45としての機能が各機器の協業により実現される。
【0033】
第1吸光度算出部41は、DCR用検出器31Dから出力されるDCR+CO信号(第1出力信号)と、基準検出器33Dから出力される比較信号とが入力され、それらの信号の示す値に基づき、第1波数域におけるDCRガスの吸光度AD1とCOガスの吸光度AC1の和である第1吸光度A1を算出する。すなわち、A1=AD1+AC1と表すことができる。なお、吸光度の算出方法については既存の方法を用いることができる。
【0034】
第2吸光度算出部42は、CO用検出器32Dから出力されるCO信号(第2出力信号)と、基準検出器33Dから出力される比較信号とが入力され、それらの信号の示す値に基づき、第2波数域におけるCOガスの吸光度AC2である第2吸光度AC2を算出する。
【0035】
干渉影響推定部43は、第2吸光度に基づいて、第1波数域におけるCOガスの吸光度である干渉影響吸光度AC1を推定するものである。干渉影響推定部43は、例えば第2吸光度AC2に適当な係数Kを乗算してAC1を算出する。なおAC1はAC2を入力変数、AC1を出力変数とする関係式により求めても良い。
【0036】
吸光度補正部44は、第1吸光度A1から干渉影響吸光度AC1を差し引いて、DCRガスの吸光度AD1に補正する。すなわち、AD1=A1-AC1=A1-K×AC2と表すことができる。
【0037】
換算部45は、吸光度補正部44で補正されたDCRガスの吸光度AD1とランベルト・ベールの法則に基づいて、混合ガス中に含まれるDCRガスの濃度に換算する。この換算されたDCRガスの濃度が外部に出力されて表示されたり、濃度制御のために用いられたりする。
【0038】
このように構成された本実施形態のDCRガス用吸光分析装置100によれば、CO用フィルタ32を用いて混合ガスが流れている場合でもCOガス単独の吸収が発生している第2吸光度AC2を得られるので、その値から第1吸光度A1内に含まれているCOガスの吸収の影響である干渉影響吸光度AC1を推定できる。
【0039】
また、第1吸光度A1から干渉影響吸光度AC1を差し引くことでDCRガスのみの吸収の吸収による吸光度AD1を算出できるので、混合ガス中におけるDCRガスの濃度を換算部45において正確に算出できる。
【0040】
その他の実施形態について説明する。
【0041】
DCR用フィルタ及びCO用フィルタについては、前記実施形態に示した物に限られず、透過する波数域については適宜設定してもよい。
【0042】
光検出機構については前記実施形態に示した物に限られず、既存のNDIR分析計などの構成を利用してもよい。例えば検出器については複数用意するのではなく、1つだけ用意し、セルと検出器との間に配置されるフィルタが高速で切り替えられるようにしてもよい。
【0043】
換算部が出力するのはDCRガスの濃度ではなく、分圧や流量であってもよい。分圧については濃度の定義式から換算できる。
【0044】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士を組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・DCRガス用吸光分析装置
1 ・・・光源
2 ・・・セル
3 ・・・光検出機構
31 ・・・DCR用フィルタ
31D・・・DCR用検出器
32 ・・・CO用フィルタ
32D・・・CO用検出器
33 ・・・基準フィルタ
33D・・・基準検出器
4 ・・・DCRガス量算出器
41 ・・・第1吸光度算出部
42 ・・・第2吸光度算出部
43 ・・・干渉影響推定部
44 ・・・吸光度補正部
45 ・・・換算部
図1
図2
図3