(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164395
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】波長利得補償器及び光増幅システム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20221020BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20221020BHJP
H04B 10/294 20130101ALI20221020BHJP
H01S 3/10 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
G02B6/12 341
G02F1/01 C
H04B10/294
H01S3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069859
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】森 崇嘉
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】今田 諒太
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝憲
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
5F172
5K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB03
2H147AB18
2H147AB28
2H147AC05
2H147BA02
2H147BB01
2H147BE01
2H147BE17
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA13A
2H147EA14A
2H147EA14B
2H147EA16A
2H147EA16B
2K102AA28
2K102BA14
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC10
2K102BD01
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2K102DB04
2K102EB01
2K102EB20
5F172AE12
5F172AF03
5F172AM04
5F172AM08
5F172NR12
5K102AA15
5K102AA55
5K102AD01
5K102PH13
5K102PH42
(57)【要約】
【課題】本開示は、波長利得差の補償を、小型のデバイスで実現することを目的とする。
【解決手段】本開示は、第1の導波路と第2の導波路を結合する3以上の結合部と、前記結合部の間に配置され、前記第1の導波路と前記第2の導波路が結合せずかつ前記第1の導波路と前記第2の導波路の間で導波路長差を生じさせる複数の遅延部と、を備え、前記結合部における結合長の比率、前記遅延部における導波路長差、及び前記結合長の総和が、設定されたスペクトル形状と整合するように設定されている、波長利得補償器である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導波路と第2の導波路を結合する3以上の結合部と、
前記結合部の間に配置され、前記第1の導波路と前記第2の導波路が結合せずかつ前記第1の導波路と前記第2の導波路の間で導波路長差を生じさせる複数の遅延部と、
を備え、
前記結合部における結合長の比率、前記遅延部における導波路長差、及び前記結合長の総和が、設定されたスペクトル形状と整合するように設定されている、
波長利得補償器。
【請求項2】
前記設定されたスペクトル形状は、光増幅器の利得スペクトルを反転させたスペクトル形状を有する、
請求項1に記載の波長利得補償器。
【請求項3】
前記結合部における結合長の比率は、前記結合部のうちの2つが同じ長さであり、前記結合部のうちの1つは異なる長さであり、
前記遅延部における導波路長差は、2つの前記遅延部の導波路長差が等しい、
請求項1又は2に記載の波長利得補償器。
【請求項4】
複数のモードを有する波長多重信号を増幅するマルチモード光増幅器と、
増幅後の波長多重信号をモードごとに分波するモード分波器と、
前記モード分波器で分波された波長多重信号ごとに波長間での利得差を補償する、請求項1から3のいずれかに記載の波長利得補償器と、
前記波長利得補償器からの波長多重信号間の利得差を補償するモード間利得補償器と、
前記モード間利得補償器からの波長多重信号を、前記モード分波器で分波前のモードに変換し、合波する、モード合波器と、
を備える光増幅システム。
【請求項5】
マルチコアファイバに備わる各コアで伝搬された波長多重信号を増幅するマルチコア光増幅器と、
前記マルチコア光増幅器で増幅された波長多重信号を、マルチコアファイバに備わるコアごとに分波するファンアウトデバイスと、
前記ファンアウトデバイスで分波された波長多重信号ごとに波長間の利得差を補償する、請求項1から3のいずれかに記載の波長利得補償器と、
前記波長利得補償器からの波長多重信号間の利得差を補償するコア間利得補償器と、
前記コア間利得補償器からの波長多重信号を、前記ファンアウトデバイスで分波前のコアに合波する、ファンインデバイスと、
を備える光増幅システム。
【請求項6】
マルチコアファイバに備わる各コアで伝搬された波長多重信号を、コアごとに分波するファンアウトデバイスと、
前記ファンアウトデバイスで分波された波長多重信号ごとに増幅する光増幅器と、
前記光増幅器で増幅された波長多重信号ごとに波長間の利得差を補償する、請求項1から3のいずれかに記載の波長利得補償器と、
前記波長利得補償器からの波長多重信号間の利得差を補償するコア間利得補償器と、
前記コア間利得補償器からの波長多重信号を、前記ファンアウトデバイスで分波前のコアに合波する、ファンインデバイスと、
を備える光増幅システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長利得差を補償する波長利得補償器及びこれを用いた光増幅システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコア又はマルチモードなどの空間多重を用いた空間多重伝送においては、光増幅器内の空間チャンネル間利得差や各空間チャンネルの利得の波長依存性が大きな問題となる。そのため、空間チャンネル(コア、モード)ごとに、波長利得差を補償する空間光学系による利得等化器が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】R. A. Betts et al., “Split-beam Fourier filter and its application in a gain-flattened EDFA,” OFC’95 Technical Digest, pp.80-81, 1995.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1は、空間チャンネル(コア、モード)ごとに空間光学系が必要となるため、大型化が生じるという課題がある。そこで、本開示は、波長利得差の補償を、小型のデバイスで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の波長利得補償器は、
第1の導波路と第2の導波路を結合する3以上の結合部と、
前記結合部の間に配置され、前記第1の導波路と前記第2の導波路が結合せずかつ前記第1の導波路と前記第2の導波路の間で導波路長差を生じさせる複数の遅延部と、
を備え、
前記結合部における結合長の比率、前記遅延部における導波路長差、及び前記結合長の総和が、設定されたスペクトル形状と整合するように設定されている。
【0006】
本開示の光増幅システムは、
複数のモードを有する波長多重信号を増幅するマルチモード光増幅器と、
増幅後の波長多重信号をモードごとに分波するモード分波器と、
前記モード分波器で分波された波長多重信号ごとに波長間での利得差を補償する、本開示の波長利得補償器と、
前記波長利得補償器からの波長多重信号間の利得差を補償するモード間利得補償器と、
前記モード間利得補償器からの波長多重信号を、前記モード分波器で分波前のモードに変換し、合波する、モード合波器と、
を備えるマルチモード光増幅システムである。
【0007】
本開示の光増幅システムは、
マルチコアファイバに備わる各コアで伝搬された波長多重信号を増幅するマルチコア光増幅器と、
前記マルチコア光増幅器で増幅された波長多重信号を、マルチコアファイバに備わるコアごとに分波するファンアウトデバイスと、
前記ファンアウトデバイスで分波された波長多重信号ごとに波長間の利得差を補償する、本開示の波長利得補償器と、
前記波長利得補償器からの波長多重信号間の利得差を補償するコア間利得補償器と、
前記コア間利得補償器からの波長多重信号を、前記ファンアウトデバイスで分波前のコアに合波する、ファンインデバイスと、
を備えるマルチコア光増幅システムである。
【0008】
本開示の光増幅システムは、
マルチコアファイバに備わる各コアで伝搬された波長多重信号を、コアごとに分波するファンアウトデバイスと、
前記ファンアウトデバイスで分波された波長多重信号ごとに増幅する光増幅器と、
前記光増幅器で増幅された波長多重信号ごとに波長間の利得差を補償する、本開示の波長利得補償器と、
前記波長利得補償器からの波長多重信号間の利得差を補償するコア間利得補償器と、
前記コア間利得補償器からの波長多重信号を、前記ファンアウトデバイスで分波前のコアに合波する、ファンインデバイスと、
を備えるマルチコア光増幅システムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、2つの導波路を用いて波長利得差の補償を行うことができるため、波長利得差の補償を小型のデバイスで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】EDFA及び利得補償器の利得スペクトルの一例を示す。
【
図4】透過スペクトル特性の一例であり、(a)は結合長の比率がL
1:L
2:L
3=1:1:4である場合、(b)はL
1:L
2:L
3=1:2:3である場合、(c)はL
1:L
2:L
3=1:3:2である場合を示す。
【
図5】透過スペクトル特性の一例であり、(a)はΔL
dが20μmの場合、(b)はΔL
dが30μmの場合、(c)はΔL
dが40μmの場合を示す。
【
図7】EDFAの利得スペクトルT
e(λ)、EDFAの利得スペクトルの反転スペクトル-T
e(λ)、波長利得補償で求めたいスペクトルT
e’(λ)、設計した波長利得補償器の透過スペクトルT
w(λ)の一例を示す。
【
図8】4LPモードEDFAの利得スペクトルの一例を示す。
【
図9】各モードの最大偏差の一例であり、(a)はLP
01モードを示し、(b)はLP
11モードを示し、(c)はLP
21モードを示し、(d)はLP
02モードを示す。
【
図10】4LPモードEDFAに対する各モードの最適パラメータの一例である。
【
図11】最適パラメータを用いた場合に各モードに対して得られる透過スペクトルの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0012】
(実施形態例1)
図1に、本開示の利得補償の構成概要図を示す。2モード(LP01モード、LP11モード)を想定した場合、マルチモード光増幅器(MM-EDFA:Multi-mode Erbium-Doped Fiber Amplifier)81の後段のモード分波器(DEMUX:demultiplexer)82により各モードを分波した後、利得補償器83により各モードの利得を補償した後、モード合波器(MUX:multiplexer)84により合波する。ここでは2LPモードとしたときの実施形態例を示すが、モード数が増加した場合も同様に考えることができる。
【0013】
図2に示すように、EDFAの利得スペクトルG
81は波長に対し利得差が生じる。そこで、本実施形態の利得補償器83は、利得スペクトルG
81と逆の利得スペクトルG
83を有する波長利得補償器によりこの波長に関する利得差を補償する。本開示では波長利得補償器を導波路構造により実現する。
【0014】
本開示の波長利得補償器の導波路構造概要を
図3に示す。波長利得補償器は、導波路111及び導波路112が導波路間隔gで平行に配置され、一方の導波路112から他方の導波路111へ光パワーが移行する結合部を備える。本構造では、2つの導波路(導波路111及び導波路112)の構造は同一である。ここで、結合部において一方の導波路112から他方の導波路111へ光パワーが完全に移行するために必要な平行導波路長に関しては、導波路コア部からクラッド部への電界の染みだし量によって決まる。
【0015】
本開示では、N個(N≧3)以上の結合部を有し、結合部間の区間で、導波路111及び導波路112を伝搬する遅延量が異なるよう、N-1個以下の複数の遅延部を有している。ここで、遅延部によって生じる導波路111及び導波路112間の遅延量に相当する導波路長差をΔLdとする。本実施形態では、遅延部における導波路111の長さが2Ldであり、遅延部における導波路112の長さが2Ld+ΔLdと表すことができ、各結合部間の区間に備わる遅延部の導波路長差がΔLdで等しい場合について検討する。
【0016】
例えば、導波路111及び112の屈折率差Δが1.0%、導波路111及び112の導波路幅wが4.0μm、導波路111及び112の導波路高さhが5.0μm、導波路111及び112の導波路間隔gが5.0μm、
図3に示すL
dが3710μmであり、結合部が3箇所ある構造を考える。それぞれの結合長をL
1、L
2、L
3とする。この結合長の組合せを調節することにより、さらに導波路長差ΔL
dを調節することにより、透過スペクトル特性の形状を調整可能である。
【0017】
図4に、結合長の比率がL
1:L
2:L
3=1:1:4である場合、L
1:L
2:L
3=1:2:3である場合、L
1:L
2:L
3=1:3:2である場合の、透過スペクトル特性の一例を示す。ここで、ΔL
d=500μm、(L
1+L
2+L
3)=8400μmとした。例えば、
図2に示す利得スペクトルG
81の波長利得補償(例えば波長帯域1530nm~1565nm)をする場合、L
1:L
2:L
3=1:1:4のとき、
図4(a)中の破線の枠内で示すように、目的の利得スペクトルG
83に近い振動をもつ透過スペクトル特性が得られることがわかる。
【0018】
次に、ΔL
dを調節し、透過スペクトル特性の形状をさらに調整する。
図5に、L
1:L
2:L
3=1:1:4とし、ΔL
dを20μm、30μm、40μmとした場合の透過スペクトル特性の一例を示す。ΔL
dが30μmの場合、
図5(b)中の破線の枠内で示すように、
図2に示す利得スペクトルG
83のような目的に近いスペクトル形状が得られることがわかる。
【0019】
次に、結合長の総和(L
1+L
2+L
3)の調節を行う。
図6に、(L
1+L
2+L
3)が7800μm、8100μmの場合の透過スペクトル特性の一例を示す。(L
1+L
2+L
3)を調節することにより、スペクトルのピーク位置やピークの大きさを調整することが可能であることが分かる。
【0020】
以上により、提案する導波路構造の構造パラメータを調節することにより、EDFAの利得特性に応じた透過スペクトル特性の調節が可能である。なお、利得補償器83に備わる結合部が3箇所である必要はなく、4箇所以上であってもよい。この場合、より透過スペクトル特性の微調整が可能となる。
【0021】
(実施形態例2)
図7に、EDFAの利得スペクトルT
e(λ)、EDFAの利得スペクトルの反転スペクトル-T
e(λ)、波長利得補償で求めたい理想スペクトルT
e’(λ)、設計した波長利得補償器の透過スペクトルT
w(λ)の一例を示す。波長λが1.55μmのとき、T
e(λ)、-T
e(λ)、T
e’(λ)、T
w(λ)は次式で表すことができる。
【数1】
【0022】
理想スペクトルT
e’(λ)に近い(L
1+L
2+L
3)及びΔL
dを求めることで、理想スペクトルT
e’(λ)に近いスペクトル形状が得られる。そこで、下式のように、T
w(λ)とT
e’(λ)の差の最大偏差を求め、式(2)が最小となるL
1+L
2+L
3及びΔL
dを求める。
【数2】
【0023】
C帯(波長帯域1530nm~1565nm)での利用を想定し、
図8に記載の4LPモードEDFAの利得スペクトルをT
e(λ)とした場合の、L
1+L
2+L
3及びΔL
dの組み合わせによる式(2)の最大偏差の一例を
図9に示す。このときの最適パラメータを
図10に示す。
図9の最大偏差の算出にあたっては、導波路の屈折率差Δを1.0%、導波路幅wを4.0μm、導波路高さhを5.0μm、導波路間隔gを5.0μmとしている。
【0024】
図11に、
図10に示す最適パラメータを用いた場合に得られる透過スペクトル特性の一例を示す。破線は
図8に示す利得スペクトルを反転させた理想スペクトルT
e’(λ)を示す。Δw=0.0μm、+0.1μm、-0.1μmのいずれの透過スペクトル特性も、理想スペクトルの形状に整合させることができている。このため、結合長の比率L
1:L
2:L
3、導波路長差ΔL
d、結合長の総和(L
1+L
2+L
3)を調整することで、最適パラメータを導出した1.55μmだけでなく、C帯(波長帯域1530nm~1565nm)全体での波長利得補償が可能であることが分かる。したがって、本開示は、各モードに対して構造パラメータを最適化することにより、波長利得差を精度よく補償可能である。
【0025】
なお、本明細書においてはガラス系材料を用いた平面光波回路に関する実施形態例を記載したが、その材料は当然ほかのものであってもかまわない。たとえば、SiやInGaAsPなどの半導体、またポリマーなどの有機物を用いた平面光波回路であっても、本明細書記載の実施形態例と同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、使用する波長帯域に関しても、本明細書記載の実施形態例では1.5~1.6μm程度としているが、より波長の長い中赤外領域(2μm以上)や可視光帯であっても構わない。
【0027】
(実施形態例3)
図12に、本開示の光増幅システムの構成例を示す。
図12では、6モード(LP01,LP11a,LP11b,LP21a,LP21b,LP02モード)の利得補償の構成例を示す。6モード対応のマルチモードEDFA81が、6モードを有する波長多重信号を増幅する。その後段のモード分波器82が、増幅後の波長多重信号をモードごとに分波し、各モードを基本モードであるLP01モードに変換する。その後段の波長利得補償器31が、各波長多重信号における波長間の利得差を補償する。ここで、波長利得補償器31は本開示の波長利得補償器であり、波長利得補償器31の透過スペクトル特性は、マルチモードEDFA81におけるモードごとの利得スペクトルを反転させたスペクトル形状を有する。これにより、モードごとに波長利得差の補償(DWG補償)が行われる。その後段の可変光減衰器32は、波長利得補償器31からの波長多重信号間の利得差を補償するモード間利得補償器として機能し、モード間の利得差を補償する。その後段のモード合波器84が、モード分波器82で分波前の6モードに変換し、合波する。なお、マルチモードEDFA81は、マルチモードの光を増幅可能な任意のマルチモード光増幅器を用いることができる。
【0028】
可変光減衰器32は、光強度を調整可能な任意の構成を採用することができ、例えば、
図13に示すような、ヒーター調節部323を有するマッハツェンダー型の導波路321及び322により実現可能である。また、モード分波器82は、LP01モードに変換しない、モードごとに分波する機能のみであってもよい。この場合、モード合波器84は、LP01モードをモード分波器82で分波前の6モードに変換しない、各モードを合波する機能のみであってもよい。
【0029】
また、
図14のように、本開示の光増幅システムはマルチモードではなくマルチコア増幅器91にも適用可能である。マルチコア光増幅器91の後段のファンアウトデバイス92によりコアごとに分離し、それぞれの利得差を利得補償器93により補償する。利得補償器93では、波長利得補償器41で波長間の利得差を補償し、その後可変光減衰器42でコア間の利得差を補償する。ここで、波長利得補償器41は本開示の波長利得補償器であり、波長利得補償器41の透過スペクトル特性は、マルチコア光増幅器91におけるコアごとの利得スペクトルを反転させたスペクトル形状を有する。また可変光減衰器42は、波長利得補償器41からの波長多重信号間の利得差を補償するコア間利得補償器として機能する。利得補償器93での補償の後、ファンインデバイス94によりマルチコアファイバに合波する。ファンインデバイス94では、利得補償器93からの波長多重信号を、ファンアウトデバイス92で分波前のコアに合波する。
【0030】
また、本開示の光増幅システムは、
図14に示す構成に代えて、
図15のように、4コアファイバの後段のファンアウトデバイス92により信号を分波した後にEDFA43を配置し、それぞれの信号が波長利得補償器(DWG補償)41を通り、その後コア間の利得差を補償するための可変光減衰器42を通り、その後、ファンインデバイス94により合波しても良い。ここで、波長利得補償器41の透過スペクトル特性は、EDFA43ごとの利得スペクトルを反転させたスペクトル形状を有する。
【0031】
以上説明したように、本開示は、第1の光導波路(111)と、第1の光導波路(111)にそれぞれ近接するN個(N≧3)以上の結合部および各結合部間に配置されたN-1個以下の遅延部を有する第2の光導波路(112)とを備え、第1の光導波路(111)と第2の光導波路(112)との間の波長に対する光透過特性が所望の特性となるように各結合部および各遅延部の長さが設定されている。
【0032】
(本開示の効果)
平行導波路構造を用いた波長利得補償デバイスにおいて、光増幅器の利得スペクトルの逆特性を有する透過スペクトル特性が柔軟に設定可能にあり、デバイスの小型化を可能とする。
【0033】
(本開示のポイント)
2つの導波路を有する結合長の比率を調整した導波路により、デバイスの小型化をした上で波長利得差補償を実現できる。特に空間多重伝送において空間チャネルが増えた場合に、デバイスの集積化によりさらなる小型化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
31、41:波長利得補償器
32、42:可変光減衰器
323:ヒーター調節部
43:EDFA
81:マルチモードEDFA
82:モード分波器
83、93:利得補償器
84:モード合波器
91:マルチコア光増幅器
92:ファンアウトデバイス
94:ファンインデバイス
111、112、321、322:導波路