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特開2022-179534封止用液状樹脂組成物及び電子部品装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179534
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】封止用液状樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/02 20060101AFI20221125BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221125BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20221125BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221125BHJP
   C08K 3/013 20180101ALN20221125BHJP
   C08K 3/011 20180101ALN20221125BHJP
【FI】
C08G59/02
C08L63/00
C09K3/10 L
H01L23/30 R
C08K3/013
C08K3/011
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151724
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2019521313の分割
【原出願日】2018-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2017108715
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 英俊
(72)【発明者】
【氏名】松崎 隆行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
(72)【発明者】
【氏名】上村 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉井 東之
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハーの反りの発生を抑制可能な封止用液状樹脂組成物の提供。
【解決手段】封止用液状樹脂組成物は、(A)脂肪族エポキシ化合物、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物、(C)含窒素複素環化合物及び(D)無機充填剤を含み、前記(D)無機充填剤の含有率が、77質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族エポキシ化合物、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物、(C)含窒素複素環化合物及び(D)無機充填剤を含み、前記(D)無機充填剤の含有率が、77質量%以上である封止用液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)脂肪族エポキシ化合物が、下記一般式(I)で示される化合物を含む請求項1に記載の封止用液状樹脂組成物。
【化1】

[式中、nは、1~15の整数である。]
【請求項3】
前記(A)脂肪族エポキシ化合物の数平均分子量が、200~10000である請求項1又は請求項2に記載の封止用液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物が、N,N-ジグリシジルオルトトルイジン及びN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンの少なくとも一方を含む請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の封止用液状樹脂組成物。
【請求項5】
(E)カップリング剤を含む請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の封止用液状樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の封止用液状樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用液状樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品装置の低コスト化、小型化、薄型化、軽量化、高性能化及び高機能化を図るために、素子の配線の微細化、多層化、多ピン化及びパッケージの小型薄型化による高密度実装化が進んでいる。これに伴い、IC(Integrated Circuit)等の素子とほぼ同じサイズの電子部品装置、すなわち、CSP(Chip Size Package)が広く用いられている。
【0003】
その中で、ウエハー段階で樹脂封止を行うウエハーレベルチップサイズパッケージが注目されている。このウエハーレベルチップサイズパッケージでは、ウエハー段階で、固形のエポキシ樹脂組成物を用いたコンプレッション成型(圧縮成型)又は液状のエポキシ樹脂組成物を用いた印刷成形により、多数の素子を一度に封止し個片化する。そのため、素子を個片化してから封止する方法に比べ大幅な生産性の向上が可能となる。しかしながら、封止したシリコンウエハーが反りやすく、この反りがその後の搬送、研削、検査及び個片化の各工程で問題となっており、デバイスによっては素子特性に変動が生じる問題が起こることがある。
【0004】
一方、従来から、電子部品装置の素子封止の分野では、生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。シリコンウエハーの反りは、このエポキシ樹脂組成物の硬化収縮、シリコンウエハーとエポキシ樹脂組成物の熱膨張係数のミスマッチ等によって発生する応力に由来するものであると考えられる。シリコンウエハーの反りは、パッケージの信頼性を低下させる恐れがある。そのため、このような用途に用いるエポキシ樹脂組成物には低応力化が要求される。エポキシ樹脂組成物を低応力化するためには、無機充填剤を高充填し熱膨張係数を小さくし、かつ、可撓化剤、可撓性樹脂等を用い弾性率を小さくすることが有効とされている。
【0005】
例えば、特許文献1では、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、シリコーンゴム微粒子、シリコーン変性エポキシ樹脂、芳香族アミン硬化剤、無機充填剤及び有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2では、液状エポキシ樹脂、芳香族アミン硬化剤、固形シリコーン重合体のコアと有機重合体のシェルからなるコアシェルシリコーン重合体の微粒子、無機充填剤及び有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物が記載されている。
このように、従来技術には、封止したシリコンウエハーの反りを低減するための圧縮成型用液状樹脂組成物として、少なくとも液状エポキシ樹脂、硬化剤、ゴム微粒子及び無機充填剤を含む液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献3では、エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤及び無機フィラーを含む液状モールド剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-23272号公報
【特許文献2】特開2008-150555号公報
【特許文献3】特開2014-152314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコーンゴム微粒子及びシリコーン変性エポキシ樹脂を使用した特許文献1又はコアシェルシリコーン重合体の微粒子を使用した特許文献2の場合は、エポキシ樹脂硬化物の弾性率を下げ、低応力化を図ることができる。しかしながら、より一層薄いシリコンウエハー又は12インチサイズ若しくはそれよりも大型のシリコンウエハーの反りを十分に小さくすることができない問題が生じる場合がある。また、酸無水物硬化剤を使用した特許文献3の場合、組成物の粘度を低く抑えることができ、無機フィラーを多量に充填することによりエポキシ樹脂硬化物の線膨張係数を下げることができる。しかしながら、エポキシ樹脂硬化物の弾性率が高く、大型のシリコンウエハーの反りを十分に小さくすることができない場合がある。更なるコストダウン及びパッケージの薄型化を図るため、シリコンウエハーは今後益々径が大きく、厚みは薄くなる傾向があり、これらのシリコンウエハーの反りを小さくすることが必要である。
シリコンウエハーの反りの問題は、SiC(シリコンカーバイド)ウエハー、サファイアウエハー、GaAs(ヒ化ガリウム)ウエハー等の化合物半導体ウエハーなどの半導体ウエハー全般に生じうる問題であると考えられる。
【0008】
本発明の一形態は、かかる状況に鑑みなされたものであり、半導体ウエハーの反りの発生を抑制可能な封止用液状樹脂組成物及びこれを用いた電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、以下に関する。
<1> (A)脂肪族エポキシ化合物、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物、(C)含窒素複素環化合物及び(D)無機充填剤を含み、前記(D)無機充填剤の含有率が、77質量%以上である封止用液状樹脂組成物。
<2> 前記(A)脂肪族エポキシ化合物が、下記一般式(I)で示される化合物を含む<1>に記載の封止用液状樹脂組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、nは、1~15の整数である。]
<3> 前記(A)脂肪族エポキシ化合物の数平均分子量が、200~10000である<1>又は<2>に記載の封止用液状樹脂組成物。
<4> 前記(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物が、N,N-ジグリシジルオルトトルイジン及びN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンの少なくとも一方を含む<1>~<3>のいずれか一項に記載の封止用液状樹脂組成物。
<5> (E)カップリング剤を含む<1>~<4>のいずれか一項に記載の封止用液状樹脂組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか一項に記載の封止用液状樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一形態によれば、半導体ウエハーの反りの発生を抑制可能な封止用液状樹脂組成物及びこれを用いた電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0014】
<封止用液状樹脂組成物>
本開示の封止用液状樹脂組成物は、(A)脂肪族エポキシ化合物、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物、(C)含窒素複素環化合物及び(D)無機充填剤を含み、前記(D)無機充填剤の含有率が、77質量%以上である。本開示の封止用液状樹脂組成物は、必要に応じて上記成分以外のその他の成分を含んでもよい。本開示の封止用液状樹脂組成物によれば、半導体ウエハーの反りの発生が抑制可能となる。
以下、封止用液状樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
-(A)脂肪族エポキシ化合物-
封止用液状樹脂組成物は、(A)脂肪族エポキシ化合物を含む。
本開示において、(A)脂肪族エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を少なくとも1個有し、なおかつエポキシ基以外の環状構造を分子中に有しない脂肪族化合物をいう。封止用液状樹脂組成物が(A)脂肪族エポキシ化合物を含むことで、封止用液状樹脂組成物を半導体ウエハーへ塗布し硬化させる態様で使用しても、半導体ウエハーの反りの発生がより効率的に抑制される傾向がある。
【0016】
(A)脂肪族エポキシ化合物としては、公知乃至慣用の脂肪族エポキシ化合物を使用することができ、特に限定されない。
(A)脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、アルキルアルコールグリシジルエーテル[ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等]、アルケニルアルコールグリシジルエーテル[ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等]などの分子内にエポキシ基を1つ有する単官能脂肪族エポキシ化合物;アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(アルキレングリコール)ジグリシジルエーテル、アルケニレングリコールジグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を2つ有する二官能脂肪族エポキシ化合物;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の三官能以上のアルコールのポリグリシジルエーテル[トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(トリ又はテトラ)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトール(トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ)グリシジルエーテル等]などの分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能脂肪族エポキシ化合物などが挙げられる。
【0017】
中でも、(A)脂肪族エポキシ化合物としては、半導体ウエハー上に硬化物を形成した場合の半導体ウエハーの反りがいっそう効率的に抑制される点で、二官能脂肪族エポキシ化合物が好ましい。
二官能脂肪族エポキシ化合物としては、より具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、2-メチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、3-メチル-2,4-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、2,4-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル(ペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル)、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、3,5-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、2-メチル-1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテル(アルカンジオールジグリシジルエーテル);ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ジテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(オリゴアルキレングリコールジグリシジルエーテルも含まれる)などが挙げられる。
【0018】
特に半導体ウエハーの反りが高度に抑制される点で、ある態様では、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが好ましく、アルキレングリコール(アルキレンオキシ)単位の数が1~20のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(特に、アルキレングリコール単位の数が1~20でアルキレングリコール単位中の炭素原子の数が2~4のアルキレングリコールジグリシジルエーテル)がより好ましい。
また、その他の態様としては、アルキレングリコール(アルキレンオキシ)単位の数が2~20のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(特に、アルキレングリコール単位の数が2~20でアルキレングリコール単位中の炭素原子の数が2~4のアルキレングリコールジグリシジルエーテル)であってもよい。
【0019】
(A)脂肪族エポキシ化合物の分子量(重合体の場合は、溶出溶媒にテトラヒドロフランを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の数平均分子量)は特に限定されず、200~10000であることが好ましく、より好ましくは200~1200であり、さらに好ましくは200~1000であり、特に好ましくは300~900である。(A)脂肪族エポキシ化合物の分子量(又は数平均分子量)を上記範囲とすることにより、半導体ウエハーの反りがより効率的に抑制される傾向がある。
【0020】
より具体的には、(A)脂肪族エポキシ化合物として、下記一般式(I)で示される化合物(テトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル又はポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル)が好ましく例示される。このような化合物を使用することにより、半導体ウエハーの反りがより効率的に抑制される傾向がある。
【0021】
【化2】
【0022】
式中、nは、1~15の整数である。
【0023】
封止用液状樹脂組成物において(A)脂肪族エポキシ化合物は、一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、一般式(I)で示される化合物としては、商品名「エポゴーセーPT(一般グレード)」(四日市合成株式会社、ポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル、数平均分子量700~800)等の市販品を使用することもできる。
【0024】
封止用液状樹脂組成物に含まれる(A)脂肪族エポキシ化合物の含有率は特に限定されるものではなく、封止用液状樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物;100質量%)に対して、3質量%~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5質量%~35質量%であり、さらに好ましくは10質量%~30質量%である。(A)脂肪族エポキシ化合物の含有量を3質量%以上とすることにより、半導体ウエハーの反りがより抑制される傾向がある。一方、(A)脂肪族エポキシ化合物の含有量を40質量%以下とすることにより、封止用液状樹脂組成物の硬化性がより向上し、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。
【0025】
-(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物-
封止用液状樹脂組成物は、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物を含む。
(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物としては、公知乃至慣用の芳香族エポキシ化合物を使用することができ、特に限定されない。
(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、カテコール、レゾルシノール等のフェノール類のグリシジルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸のグリシジルエーテルエステル、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸のモノグリシジルエステル又はポリグリシジルエステル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン等のグリシジルアミン型エポキシ化合物、ナフトールのグリシジルエステル、β-ヒドロキシナフトエ酸等のグリシジルエーテルエステルなどのナフタレン骨格を有するエポキシ化合物などが挙げられる。また、フェノール、カテコール、レゾルシノール等のフェノール類をノボラック化したノボラック化合物を用いてもよい。
これらの中でも、グリシジルアミン型エポキシ化合物が好ましい。
【0026】
封止用液状樹脂組成物に含まれる(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物としては、25℃において30mPa・s~5000mPa・sの粘度を示すものが好ましく、30mPa・s~1000mPa・sの粘度を示すものがより好ましい。(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物の粘度がこの範囲であると、(D)無機充填剤の含有率が77質量%以上であっても、液状封止剤に適した組成物を得ることができる。
本開示において、25℃における粘度は、コーンプレート(直径48mm、コーン角1°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、10回転/分のせん断速度で測定される値をいう。
【0027】
より具体的には、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物として、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン及びN,N-ジグリシジルオルトトルイジンが好ましく例示される。このようなエポキシ化合物を用いることにより、封止用液状樹脂組成物の硬化性がより向上し、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。
(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物として、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン及びN,N-ジグリシジルオルトトルイジンが併用される場合、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン及びN,N-ジグリシジルオルトトルイジンの質量基準の含有比率(N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン/N,N-ジグリシジルオルトトルイジン)としては、0.5~13.0であることが好ましく、0.7~8.0であることがより好ましく、1.0~3.5であることがさらに好ましい。
【0028】
封止用液状樹脂組成物に含まれる(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物の含有率は特に限定されるものではなく、封止用液状樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物;100質量%)に対して、45質量%~95質量%であることが好ましく、より好ましくは55質量%~90質量%であり、さらに好ましくは65質量%~85質量%である。(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物の含有量を45質量%以上とすることにより、硬化性が向上する傾向がある。一方、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物の含有量を95質量%以下とすることにより、半導体ウエハーの反りが抑制される傾向がある。
封止用液状樹脂組成物に含まれる(A)脂肪族エポキシ化合物と(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物との質量基準の含有比率((A)脂肪族エポキシ化合物/(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物)としては、0.05~1.22であることが好ましく、0.11~0.82であることがより好ましく、0.17~0.54であることがさらに好ましい。
【0029】
-(C)含窒素複素環化合物-
封止用液状樹脂組成物は、(C)含窒素複素環化合物を含む。
(C)含窒素複素環化合物としては、(A)脂肪族エポキシ化合物及び(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物の重合を進行させるものであれば公知乃至慣用の含窒素複素環化合物を使用することができ、特に限定されない。
(C)含窒素複素環化合物の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-オルソフタル酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩、DBU系テトラフェニルボレート塩、ジアザビシクロノネン(DBN)、DBN-フェノールノボラック樹脂塩、ジアザビシクロオクタン、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジンなどが挙げられる。(C)含窒素複素環化合物は、エポキシ樹脂若しくはイソシアネート樹脂とアダクト化又はマイクロカプセル化されたものを使用することができる。これらのうち、反応性及び保存安定性の観点から2-フェニル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
【0030】
(C)含窒素複素環化合物の配合量は、(A)脂肪族エポキシ化合物と(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物と必要に応じて用いられるその他のエポキシ化合物との合計100質量部に対して2質量部~20質量部であることが好ましく、3質量部~12質量部であることがより好ましい。(C)含窒素複素環化合物の配合量が2質量部以上であれば、封止用液状樹脂組成物の硬化時間が長くなりすぎることがなく、電子部品装置の生産性が向上する傾向がある。(C)含窒素複素環化合物の配合量が20質量部以下であれば、封止用液状樹脂組成物の保存安定性が向上する傾向がある。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、液状酸無水物、液状フェノール、芳香族アミン等の硬化剤を併用することができる。この場合、封止用液状樹脂組成物中のエポキシ化合物1当量に対して、(C)含窒素複素環化合物以外の硬化剤が0.1当量未満であることが好ましい。
【0031】
-(D)無機充填剤-
封止用液状樹脂組成物は、(D)無機充填剤を含む。
(D)無機充填剤としては、公知乃至慣用の無機充填剤を使用することができ、特に限定されない。
(D)無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、これらを球状化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの(D)無機充填剤は、一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも線膨張係数の低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。(D)無機充填剤の形状は、(D)無機充填剤の高充填化並びに封止用液状樹脂組成物の微細間隙への流動性及び浸透性の観点から球状が好ましい。
【0032】
(D)無機充填剤の平均粒径は、特に球状シリカの場合、1μm~20μmであることが好ましく、1.5μm~15μmであることがより好ましく、2μm~10μmであることがさらに好ましい。ここで平均粒径は、レーザー回折法を用いて測定される体積累積粒度分布が50%となる粒子径をいう。(D)無機充填剤の平均粒径が1μm以上であれば、(D)無機充填剤を封止用液状樹脂組成物へ高濃度に分散することが容易になる傾向がある。(D)無機充填剤の平均粒径が20μm以下であれば、(D)無機充填剤の粗粒成分が少なくなり、封止用液状樹脂組成物の微細間隙への充填不足又は印刷時のスジ状の不良が抑えられ、表面平滑性が向上する傾向がある。
【0033】
(D)無機充填剤の含有率は、封止用液状樹脂組成物の合計量に対して、77質量%以上である。無機充填剤の含有率が77質量%以上であれば、半導体ウエハーの反りの発生が抑制可能となる。その理由は明確ではないが、無機充填剤の含有率が77質量%以上であれば、封止用液状樹脂組成物の熱膨張係数が、半導体ウエハーの反りの発生を抑制可能な程度まで小さくなるためと推察される。
(D)無機充填剤の含有率は、封止用液状樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは77質量%~93質量%の範囲に、より好ましくは77質量%~91質量%の範囲に設定される。
【0034】
-(E)カップリング剤-
封止用液状樹脂組成物は、樹脂と無機充填剤又は樹脂と電子部品の構成部材との接着性を強固にするために、必要に応じて(E)カップリング剤を含んでもよい。(E)カップリング剤としては、公知乃至慣用の(E)カップリング剤を使用することができ、特に限定されない。
(E)カップリング剤としては、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一つを有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。
(E)カップリング剤を例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられる。これらの(E)カップリング剤は、一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
封止用液状樹脂組成物が(E)カップリング剤を含む場合、(E)カップリング剤の含有率は、(D)無機充填剤及び(E)カップリング剤の合計量に対して0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることがより好ましい。(E)カップリング剤の含有率が0.1質量%以上であれば、(E)カップリング剤による(D)無機充填剤の分散性を向上する効果が得られやすい傾向がある。(E)カップリング剤の含有率が2.0質量%以下であれば、封止用液状樹脂組成物の硬化物中にボイドが発生しにくい傾向がある。
【0036】
-(F)有機溶剤-
封止用液状樹脂組成物は、必要に応じて(F)有機溶剤を含んでもよい。(F)有機溶剤としては、公知乃至慣用の(F)有機溶剤を使用することができ、特に限定されない。
封止用液状樹脂組成物が(F)有機溶剤を含む場合、(F)有機溶剤の含有率は、(A)成分~(F)成分の合計量に対して5質量%未満であることが好ましい。(F)有機溶剤の含有率が5質量%未満であれば、硬化後における膜減りの発生が抑制される傾向がある。
【0037】
-その他の成分-
封止用液状樹脂組成物は必要に応じて、(A)成分~(F)成分以外のその他の成分を含んでもよい。
封止用液状樹脂組成物には、(A)脂肪族エポキシ化合物及び(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物以外のその他のエポキシ化合物を含んでもよい。その他のエポキシ化合物としては、(A)脂肪族エポキシ化合物及び(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物以外の公知乃至慣用のエポキシ化合物を使用することができ、特に限定されない。封止用液状樹脂組成物がその他のエポキシ化合物を含む場合、その他のエポキシ化合物の含有率は、封止用液状樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物;100質量%)に対して、0質量%を超え40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%を超え30質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%を超え20質量%以下である。
【0038】
IC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点からは、封止用液状樹脂組成物は、その他の成分としてイオントラップ剤を含むことが好ましい。イオントラップ剤としては特に制限はなく、公知乃至慣用のものを用いることができる。イオントラップ剤としては、ハイドロタルサイト類、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス等の元素の含水酸化物などが挙げられる。これらのイオントラップ剤は、一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、DHT-4A(協和化学工業株式会社、商品名)、IXE500(東亜合成株式会社、商品名)等が挙げられる。封止用液状樹脂組成物へのイオントラップ剤の含有率は、ハロゲンイオン等の陰イオン及びナトリウム等の陽イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はなく、エポキシ化合物全量に対して1質量%~10質量%であることが好ましい。
【0039】
封止用液状樹脂組成物は、その他の成分として、硬化促進剤;染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤;シリコーンオイル;界面活性剤;酸化防止剤;リン酸エステル;メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物;シクロホスファゼン等の燐窒素含有化合物;酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物;三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、ブロム化エポキシ樹脂等の従来公知の難燃剤などを必要に応じて含むことが好ましい。
【0040】
封止用液状樹脂組成物は、上記各種成分を均一に分散し混合できるのであれば、いかなる手法を用いて調製してもよい。封止用液状樹脂組成物を調製するための一般的な手法としては、所定の配合量の成分を秤量し、三本ロール、らい潰機、プラネタリーミキサー、ハードミキサー、ホモミキサー等によって分散し混練を行う方法を挙げることができる。また、各配合成分を予備分散及び予備加熱させたマスターバッチを用いる手法が、均一分散性及び流動性の点から好ましい。
【0041】
本開示の封止用液状樹脂組成物の硬化条件は特に限定されない。熱処理の温度としては、120℃~200℃であることが好ましく、130℃~180℃であることがより好ましく、140℃~170℃であることがさらに好ましい。熱処理時間としては、15分~3時間であることが好ましく、30分~2時間であることがより好ましい。
【0042】
本開示の封止用液状樹脂組成物の硬化物についてのDMA法により測定されるガラス転移温度は、125℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
本開示の封止用液状樹脂組成物の硬化物についてのDMA法により測定されるガラス転移温度未満の温度での弾性率は、20GPa以下であることが好ましく、16GPa以下であることがより好ましい。
本開示の封止用液状樹脂組成物の硬化物についてのガラス転移温度未満の温度での線膨張係数は、15ppm/℃以下であることが好ましく、12ppm/℃以下であることがより好ましい。
本開示の封止用液状樹脂組成物の25℃における粘度は、1000Pa・s未満であることが好ましく、800Pa・s以下であることがより好ましく、500Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0043】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、本開示の封止用液状樹脂組成物により封止された素子を備えたものである。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハー等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載し、必要な部分を本開示の封止用液状樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置が挙げられる。
中でも、本開示の封止用液状樹脂組成物は低反り性及び高信頼性を要求される電子部品装置に有効であり、特にウエハーレベルチップサイズパッケージに好適である。本開示の封止用液状樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられ、特に印刷方式が好適である。
【実施例0044】
本発明について、実施例により説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部及び%はことわりのない限り、質量部及び質量%を示す。
【0045】
(実施例1、2及び比較例1)
表1に示す各材料を、プラネタリーミキサーを用いて2時間混合し、さらにハードミキサーを用いて真空度が80Pa~90Paで1時間撹拌脱泡して封止用液状樹脂組成物を製造した。表1において(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分は、各々、(A)脂肪族エポキシ化合物、(B)分子中に芳香環を有するエポキシ化合物、(C)含窒素複素環化合物及び(D)無機充填剤を意味する。また、表1に記載の各成分の組成の単位は質量部である。
【0046】
製造した封止用液状樹脂組成物を、次の各試験により評価した。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0047】
(粘度及び揺変指数)
Brookfield社のHB型粘度計を用いて、製造した封止用液状樹脂組成物について25℃、10回転/分の条件で粘度を測定した。25℃における粘度が1000Pa・s未満であると、通常のコンプレッションモールド装置を使用して高い生産性を得ることができる。また、封止用液状樹脂組成物を25℃、1回転/分の条件で測定した粘度の測定値を25℃、10回転/分の条件で測定した粘度の測定値で除した値を揺変指数とした。
【0048】
(線膨張係数)
封止用液状樹脂組成物を150℃、60分間加熱硬化させた硬化物についてブルカーASX社のTMA4000SAシリーズを用いてTMA(Thermomechanical Analysis、熱機械分析)法により、50℃~70℃と180℃~200℃においてそれぞれ線膨張係数を測定した。Tg未満の温度での線膨張係数が12ppm/℃以下であると、半導体ウエハーの反りを十分に小さくすることができる。
【0049】
(ガラス転移温度(Tg)及び弾性率)
封止用液状樹脂組成物を150℃、60分間加熱硬化させた硬化物についてSII社のDMS6100を用いてDMA(Dynamic Mechanical Analysis、動的粘弾性測定)法によりガラス転移温度及び弾性率を測定した。ガラス転移温度が140℃以上であると、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。また、Tg未満の温度での弾性率が20GPa以下であると、反りの小さな半導体ウエハーを得るのに好適である。
【0050】
(反り)
直径300mm、厚み300μmのシリコンウエハーに、金型を用いて、直径292mm、厚み300μmの封止用液状樹脂組成物層を形成し、150℃で60分間加熱硬化させて試料とした。硬化後、定規を用いて、シリコンウエハー中心部と端部の高低差を反りとして測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1において、(1)~(12)の各材料の詳細は、以下の通りである。また、表1において「-」は、該当する材料を使用しなかったことを意味する。
(1) 四日市合成株式会社、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(品名:エポゴーセーPT(一般グレード)、エポキシ当量440g/eq、平均分子量880)
(2) 三菱ケミカル株式会社、アミノフェノール型エポキシ化合物(品名:jER 630、エポキシ当量95g/eq、平均分子量285、25℃の粘度:700mPa・s、化合物名:N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン)
(3) 株式会社ADEKA、トルイジン型エポキシ化合物(品名:EP3980S、エポキシ当量135g/eq、平均分子量270、25℃の粘度:50mPa・s、化合物名:N,N-ジグリシジルオルトトルイジン)
(4) DIC株式会社、ナフタレン型エポキシ化合物(品名:HP4032D、エポキシ当量140g/eq、平均分子量280)
(5) 四国化成株式会社、イミダゾール化合物(品名:キュアゾール2P4MZ)
(6) 日立化成株式会社、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(品名:HN2200)
(7) 新日鉄住金マテリアル株式会社、球状シリカ(品名:STW7010-20、平均粒径10μm)
(8) 株式会社アドマテックス、球状シリカ(品名:SE2300、平均粒径0.6μm)
(9) 株式会社アドマテックス、球状シリカ(品名:2umSM-E4、平均粒径2μm)
(10) 信越化学工業株式会社、シランカップリング剤(品名:KBM403、化合物名:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(11) オリオン エンジニアドカーボンズ株式会社、カーボンブラック(品名:Special Black 4)
(12) 東レ・ダウコーニング株式会社、シリコーンオイル(品名:SF8421)
【0053】
なお、実施例2及び比較例1に含まれる全シリカフィラーの平均粒径は、8μmであった。
【0054】
表1からわかるように、実施例1及び2では粘度、ガラス転移温度、線膨張係数及び弾性率が実用的な範囲でありながらシリコンウエハーの反りが0mmであった。これに対して、従来の酸無水物硬化剤を用いた比較例1では、反りが8mmと大きかった。
【0055】
上記のように、本開示の封止用液状樹脂組成物を用いることにより、より一層薄いシリコンウエハー又は12インチサイズ若しくはそれよりも大型のシリコンウエハーに対しても多数の素子を一括して封止することができる。さらには、SiC(シリコンカーバイド)ウエハー、サファイアウエハー、GaAs(ヒ化ガリウム)ウエハー等の化合物半導体ウエハーなどに本開示の封止用液状樹脂組成物を適用した場合にも、半導体ウエハーの反りの発生を抑制することができると考えられる。
【0056】
2017年5月31日に出願された日本国特許出願2017-108715号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。