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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021175
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】CO2分離膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/70 20060101AFI20220126BHJP
   C08G 77/48 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B01D71/70 500
C08G77/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124629
(22)【出願日】2020-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・刊行物名 「3rd International Symposium on Silsesquioxanes-based Materials Abstract(和訳:第3回シルセスキオキサンベース材料国際シンポジウム要約)」 頒布日 令和1年7月25日 ・研究集会名 3rd International Symposium on Silsesquioxanes-based Materials(SFM 19、和訳:第3回シルセスキオキサンベース材料国際シンポジウム) 開催場所 桐生市市民文化会館 開催日 令和1年7月25日 ・刊行物名 「第23回ケイ素化学協会シンポジウム要旨集」 発行日 令和1年11月1日 発行所 九州大学先導物質化学研究所 第23回ケイ素化学協会シンポジウム事務局 ・研究集会名 第23回ケイ素化学協会シンポジウム 開催場所 フェニックス・シーガイア・リゾート 開催日 令和1年11月2日 ・ウェブサイトのアドレス https://nenkai.csj.jp/proceeding/pdf?lecture=4F2-12&year=2020 掲載日 令和2年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大下 浄治
(72)【発明者】
【氏名】都留 稔了
(72)【発明者】
【氏名】金指 正言
(72)【発明者】
【氏名】東 正信
【テーマコード(参考)】
4D006
4J246
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA02
4D006MA09
4D006MA21
4D006MC03
4D006MC66X
4D006NA39
4D006NA46
4D006PB63
4D006PB64
4J246AA11
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB141
4J246BB14X
4J246BB161
4J246BB16X
4J246BB321
4J246BB32X
4J246CA76X
4J246FA061
4J246FA131
4J246FA441
4J246GB07
4J246GD08
4J246HA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安価で入手容易なモノマーを使用して製造できるCO分離膜の提供。
【解決手段】少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する化合物(A)ならびに少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(B)を含む前駆体、または少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(C)を含む前駆体を重合させてなる分離層を備えるCO分離膜。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する化合物(A)ならびに少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(B)を含む前駆体、または
少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(C)を含む前駆体
を重合させてなる分離層を備えるCO分離膜。
【請求項2】
前記化合物(A)は、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、Rは、アミノ基で置換されていてもよい炭素数4以下の炭化水素基、炭素数4以下のアルコキシシリル基で置換された炭素数16以下の炭化水素基または水素であり、Xは、炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される、請求項1に記載のCO分離膜。
【請求項3】
前記化合物(A)は、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される、請求項1に記載のCO分離膜。
【請求項4】
前記化合物(B)は、下記一般式(3):
【化3】
(式中、R~R13は、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、Xは、炭素数1以上4以下の炭化水素鎖である)で表される、請求項1から3のいずれか1項に記載のCO分離膜。
【請求項5】
前記一般式(3)中、Xはアセチレン鎖である、請求項4に記載のCO分離膜。
【請求項6】
前記分離層中、前記化合物(B)に由来する骨格に対する前記化合物(A)に由来する骨格の質量比率は、1/5以上5/1以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載のCO分離膜。
【請求項7】
前記化合物(C)は、下記一般式(4):
【化4】
(式中、R14~R19は、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される、請求項1に記載のCO分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を抑制するため、COの回収および貯留技術に対する注目が高まっている。非特許文献1には、シリカネットワークを有する有機-無機ハイブリッド材料から構成されるCO分離膜が開示されている。このCO分離膜は、モノマーであるビス(トリエトキシシリルメチル)オキサリルウレアを重合することにより製造されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T. Mizuno et. al., Appl. Organometal. Chem. 2015, 29, 433-438.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術では、モノマーであるビス(トリエトキシシリルメチル)オキサリルウレアが、ウレア基を含む複雑な構造を有するため、モノマーの合成時の収率が低く高価な原料が必要であるという問題がある。本発明の一態様は、安価で入手容易なモノマーを使用して製造できるCO分離膜を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るCO分離膜は、少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する化合物(A)ならびに少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(B)を含む前駆体、または少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(C)を含む前駆体を重合させてなる分離層を備える。
【0006】
上記の構成によれば、化合物(A)または化合物(C)のアミノ基とCOとの親和性が高いので、CO透過選択性を向上させることができる。また、化合物(A)または化合物(C)のアミノ基は、ウレア基の一部として含むものが除かれるため、化合物(A)または化合物(C)は単純な化学構造を有し、安価で入手容易である。したがって、安価で入手容易なモノマーを使用して製造できるCO分離膜を実現することができる。
【0007】
また、本発明の一態様に係るCO分離膜は、前記化合物(A)は、下記一般式(1):
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、Rは、アミノ基で置換されていてもよい炭素数4以下の炭化水素基、炭素数4以下のアルコキシシリル基で置換された炭素数16以下の炭化水素基または水素であり、Xは、炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される化合物であってもよい。
【0010】
また、本発明の一態様に係るCO分離膜は、前記化合物(A)は、下記一般式(2):
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される化合物であってもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係るCO分離膜は、前記化合物(B)は、下記一般式(3):
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、R~R13は、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、Xは、炭素数1以上4以下の炭化水素鎖である)で表される化合物であってもよい。
【0016】
また、本発明の一態様に係るCO分離膜は、前記一般式(3)中、Xはアセチレン鎖であってもよい。
【0017】
また、本発明の一態様に係るCO分離膜は、前記分離層中、前記化合物(B)に由来する骨格に対する前記化合物(A)に由来する骨格の質量比率は、1/5以上5/1以下であってもよい。
【0018】
また、本発明の一態様に係るCO分離膜は、前記化合物(C)は、下記一般式(4):
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、R14~R19は、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される化合物であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、安価で入手容易なモノマーを使用して製造できるCO分離膜を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るCO分離膜の製造方法を示すフローチャートである。
図2】実施例1の個数基準によるDLS測定結果を示すグラフである。
図3】実施例3の個数基準によるDLS測定結果を示すグラフである。
図4】実施例1のTGA測定結果を示すグラフである。
図5】実施例3のTGA測定結果を示すグラフである。
図6】実施例1の各焼成温度でのFT-IR測定結果を示すグラフである。
図7】実施例3の各焼成温度でのFT-IR測定結果を示すグラフである。
図8】実施例1の組成で、粒子径:2~3nmのコロイドゾルを使用して作製した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SFの透過選択性との関係を示すグラフである。
図9】実施例1の組成で、塗布回数1~5回目まで粒子径:約9nm、塗布回数6~8回目まで粒子径:2~3nmのコロイドゾルを使用して作製した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SFの透過選択性との関係を示すグラフである。
図10】実施例3の組成で、粒子径:2~3nmのコロイドゾルを使用して作製した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SFの透過選択性との関係を示すグラフである。
図11】測定ガス種の動的分子径と200℃での透過率との関係を示すグラフである。
図12】実施例1-AのCO分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。
図13】実施例1-BのCO分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。
図14】実施例3のCO分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。
図15】Nの透過率とHe/Nの透過選択性との関係を示すグラフである。
図16】Nの透過率とCO/Nの透過選択性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「a~b」は、「a以上b以下」を意味する。本発明の一実施形態に係るCO分離膜は、少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する化合物(A)ならびに少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(B)を含む前駆体、または少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する化合物(C)を含む前駆体を重合させてなる分離層を備える。
【0024】
〔化合物(A)〕
化合物(A)は、少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する。ここで、上記アミノ基は、アミノ基(-NH)およびイミノ基(>NH)の総称をいう。また、上記アミノ基は、化合物(A)が収率良く安価に入手しやすい観点から、ウレア基の一部として含むものは除かれる。また、化合物(A)がより収率良くより安価に入手しやすい観点から、上記アミノ基は、カルボキサミド基の一部として含むものは除かれることが好ましい。ここで、カルボキサミド基とは、-C(=O)-N<で表される3価の官能基を意味し、炭素原子および窒素原子は、他の官能基で置換されていてもよく、または水素原子が結合していてもよい。カルボキサミド基の例には、ウレア基およびウレタン基が含まれるほか、アミノ基(-NH)部分に置換基のついている、N-置換アミド基も含む。化合物(A)は、下記一般式(1):
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、Rは、アミノ基もしくはアルコキシシリル基で置換されていてもよい炭素数4以下の炭化水素基または水素であり、Xは、炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される化合物であってもよい。
【0027】
炭素数4以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基またはtert-ブトキシ基が挙げられる。化合物(A)および化合物(B)の重合を促進する観点から、R~Rのうちの少なくとも1つは、炭素数2のアルコキシ基、すなわちエトキシ基であることが好ましい。
【0028】
アミノ基で置換されていてもよい炭素数4以下の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミノメチル基、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基、1-アミノ-1-メチルエチル基、2-アミノ-1-メチルエチル基、2-アミノ-1,1-ジメチルエチル基、1-アミノプロピル基、2-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、1-アミノ-2-メチルプロピル基、2-アミノメチルプロピル基、2-アミノ-2-メチルプロピル基、3-アミノ-2-メチルプロピル基、1-アミノメチルプロピル基、1-アミノ-1-メチルプロピル基、2-アミノ-1-メチルプロピル基、3-アミノ-1-メチルプロピル基、2-アミノ-1,1-ジメチルプロピル基、1-アミノブチル基、2-アミノブチル基、3-アミノブチル基および4-アミノブチル基が挙げられる。
【0029】
炭素数4以下のアルコキシシリル基で置換された炭素数16以下の炭化水素基の例としては、トリメトキシシリルメチル基、2-(トリメトキシシリル)エチル基、3-(トリメトキシシリル)プロピル基、4-(トリメトキシシリル)ブチル基、トリエトキシシリルメチル基、2-(トリエトキシシリル)エチル基、3-(トリエトキシシリル)プロピル基、4-(トリエトキシシリル)ブチル基、トリプロポキシシリルメチル基、2-(トリプロポキシシリル)エチル基、3-(トリプロポキシシリル)プロピル基および4-(トリプロポキシシリル)ブチル基が挙げられる。
【0030】
炭素数1以上4以下のアルキル鎖の例としては、メチル鎖、エチル鎖、プロピル鎖、イソプロピル鎖、ブチル鎖、1-メチルプロピル鎖、2-メチルプロピル鎖、3-メチルプロピル鎖、1-エチルエチル鎖、2-エチルエチル鎖および1,2-ジメチルエチル鎖が挙げられる。分離層において、COを透過させ、かつNを透過させない適切な大きさの細孔を形成し、CO透過選択性を向上するために、一般式(1)中、Xは、炭素数2以上4以下のアルキル鎖であることが好ましく、プロピル鎖であることが特に好ましい。
【0031】
化合物(A)は、下記一般式(2):
【0032】
【化6】
【0033】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される化合物であってもよい。分離層において、COを透過させ、かつNを透過させない適切な大きさの細孔を形成し、CO透過選択性を向上するために、一般式(2)中、Xは、炭素数2以上4以下のアルキル鎖であることが好ましく、プロピル鎖であることが特に好ましい。同様に、分離層において、COを透過させ、かつNを透過させない適切な大きさの細孔を形成し、CO透過選択性を向上するために、Xは、炭素数1以上3以下のアルキル鎖であることが好ましく、エチル鎖であることが特に好ましい。
【0034】
化合物(A)におけるアルコキシシリル基1個当たりのアミノ基の数は、0.5個以上であることが好ましく、1個以上であることがより好ましく、2個以上であることが更に好ましい。この場合、アミノ基によりCO分離膜とCOとの親和性を向上し、CO/Nの透過選択性を向上することができる。
【0035】
化合物(A)の例としては、ビス[(トリメトキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリメトキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリメトキシシリル)ブチル]アミン、ビス[(トリエトキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリエトキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリエトキシシリル)ブチル]アミン、ビス[(トリプロポキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリプロポキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリプロポキシシリル)ブチル]アミン、ビス[(トリイソプロポキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリイソプロポキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリイソプロポキシシリル)ブチル]アミン;(アミノメチル)トリエトキシシラン、(2-アミノエチル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン;N-[(アミノメチル)アミノメチル]トリエトキシシラン、N-[(アミノメチル)-2-アミノエチル]トリエトキシシラン、N-[(アミノメチル)-3-アミノプロピル]トリエトキシシラン、N-[(アミノメチル)-4-アミノブチル]トリエトキシシラン、N-[(2-アミノエチル)アミノメチル]トリエトキシシラン、N-[(2-アミノエチル)-2-アミノエチル]トリエトキシシラン、N-[(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル]トリエトキシシラン、N-[(2-アミノエチル)-4-アミノブチル]トリエトキシシラン、N-[(3-アミノプロピル)アミノメチル]トリエトキシシラン、N-[(3-アミノプロピル)-2-アミノエチル]トリエトキシシラン、N-[(3-アミノプロピル)-3-アミノプロピル]トリエトキシシラン、N-[(3-アミノプロピル)-4-アミノブチル]トリエトキシシラン、N-[(4-アミノブチル)アミノメチル]トリエトキシシラン、N-[(4-アミノブチル)-2-アミノエチル]トリエトキシシラン、N-[(4-アミノブチル)-3-アミノプロピル]トリエトキシシランおよびN-[(4-アミノブチル)-4-アミノブチル]トリエトキシシランが挙げられる。
【0036】
化合物(A)および化合物(B)の重合を促進するとともに、CO透過選択性を向上する観点から、化合物(A)は、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン(BTESPA)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)または[N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル]トリエトキシシラン(AEAPTES)であることが好ましい。
【0037】
〔化合物(B)〕
化合物(B)は、少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する。化合物(B)は、下記一般式(3):
【0038】
【化7】
【0039】
(式中、R~R13は、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、Xは、炭素数1以上4以下の炭化水素鎖である)で表される化合物であってもよい。炭素数1以上4以下の炭化水素鎖は、飽和または不飽和の炭化水素鎖であってよい。
【0040】
炭素数1以上4以下の炭化水素鎖の例としては、メチル鎖、エチル鎖、プロピル鎖、イソプロピル鎖、ブチル鎖、1-メチルプロピル鎖、2-メチルプロピル鎖、3-メチルプロピル鎖、1-エチルエチル鎖、2-エチルエチル鎖、1,2-ジメチルエチル鎖、エテニル鎖(ビニレン基)、エチニル鎖、プロペニル鎖、プロピニル鎖、イソプロペニル鎖、イソプロピニル鎖、ブテニル鎖およびブチニル鎖等が挙げられる。分離層において、COを透過させ、かつNを透過させない適切な大きさの細孔を形成し、CO透過選択性を向上するために、Xは、炭素数1以上3以下の炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数2の炭化水素鎖であることがより好ましい。また、分離層の剛直性を向上し、CO分離膜のCO透過率を向上するために、Xは三重結合を有することが好ましく、アセチレン鎖であることが特に好ましい。
【0041】
化合物(B)の例としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)エテン、ビス(トリメトキシシリル)アセチレン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)プロペン、ビス(トリメトキシシリル)プロペン、ビス(トリメトキシシリル)プロピン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ブテン、ビス(トリメトキシシリル)ブチン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エテン、ビス(トリエトキシシリル)アセチレン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロペン、ビス(トリエトキシシリル)プロペン、ビス(トリエトキシシリル)プロピン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブテンおよびビス(トリエトキシシリル)ブチン等が挙げられる。化合物(A)および化合物(B)の重合を促進するとともに、CO透過選択性およびCO透過性を向上する観点から、化合物(B)は、ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)またはビス(トリエトキシシリル)アセチレン(BTESA)であることが好ましい。
【0042】
〔化合物(C)〕
化合物(C)は、少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも2つのアルコキシシリル基を有する。化合物(A)と同様に、上記アミノ基は、化合物(C)が収率良く安価に入手しやすい観点から、ウレア基の一部として含むものは除かれる。また、化合物(C)がより収率良くより安価に入手しやすい観点から、上記アミノ基は、カルボキサミド基の一部として含むものは除かれることが好ましい。化合物(C)は、下記一般式(4):
【0043】
【化8】
【0044】
(式中、R14~R19は、それぞれ独立して炭素数4以下のアルコキシ基であり、XおよびXは、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル鎖である)で表される化合物であってもよい。分離層において、COを透過させ、かつNを透過させない適切な大きさの細孔を形成し、CO透過選択性を向上するために、一般式(4)中、XおよびXは、炭素数2以上4以下のアルキル鎖であることが好ましく、プロピル鎖であることが特に好ましい。
【0045】
化合物(C)は、少なくとも1つのアミノ基(ウレア基の一部として含むものを除く)および少なくとも2つのアルコキシシリル基を有するので、化合物(A)の下位概念であり、かつ化合物(B)の下位概念であると言うことができる。したがって、CO分離膜は、化合物(C)および化合物(B)を含む前駆体を重合させてなる分離層を備えてもよい。あるいは、CO分離膜は、化合物(A)および化合物(C)を含む前駆体を重合させてなる分離層を備えてもよい。
【0046】
化合物(C)の例としては、ビス[(トリメトキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリメトキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリメトキシシリル)ブチル]アミン、ビス[(トリエトキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリエトキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリエトキシシリル)ブチル]アミン、ビス[(トリプロポキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリプロポキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]アミン、ビス[4-(トリプロポキシシリル)ブチル]アミン、ビス[(トリイソプロポキシシリル)メチル]アミン、ビス[2-(トリイソプロポキシシリル)エチル]アミン、ビス[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピル]アミンおよびビス[4-(トリイソプロポキシシリル)ブチル]アミンが挙げられる。
【0047】
化合物(C)の重合を促進するとともに、CO透過選択性を向上する観点から、化合物(C)は、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン(BTESPA)であることが好ましい。
【0048】
〔分離層〕
化合物(A)および化合物(B)は、重合により分離層を形成する。また、化合物(C)は、重合により分離層を形成する。化合物(A)および化合物(B)を重合する場合、分離層では、化合物(A)に由来する骨格と、化合物(B)に由来する骨格とが、シロキサン結合によって網目状に結合したネットワーク構造(以下、「シリカネットワーク」と称する)を形成していることが好ましい。また、化合物(C)を重合する場合、分離層では、化合物(C)に由来する骨格が、シリカネットワークを形成していることが好ましい。このようなシリカネットワークが形成された分離層には、COを選択的に透過可能な細孔が多数形成されているため、良好なCO透過選択性を有したCO分離膜を得ることができる。
【0049】
分離層中、化合物(B)に由来する骨格に対する化合物(A)に由来する骨格の質量比率は、1/5以上5/1以下であることが好ましく、1/2以上2/1以下であることがより好ましく、3/4以上4/3以下であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。この場合、CO分離膜のCO/Nの透過選択性を向上することができる。
【0050】
分離層の厚さは、例えば200nm以上800nm以下であることが好ましい。分離層が800nmよりも厚い場合、COの透過率が低下するので、CO分離のために長時間または高圧力が必要となり、CO分離の効率性が低下する虞がある。また、分離層が200nmよりも薄い場合、CO以外の気体の透過率が上がり、COの透過選択性が低下する虞がある。
【0051】
〔支持体〕
CO分離膜は、支持体の表面に分離層が形成されているものであってよい。このように、支持体により分離層を支持する構成によれば、CO分離膜の物理的強度および形状安定性を容易に確保できる。この場合、CO分離膜は、例えば支持体の表面に、化合物(A)と化合物(B)とを重合させてなる分離層を形成することにより、作製することができる。
【0052】
支持体は、分離層の支持機能および通液性を兼ね備えていることが好ましい。このような支持体の例としては、多孔性支持体を挙げることができる。支持体の形状は、例えば管状または板状であってもよい。支持体の材料の例としては、α-アルミナ、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO)等が挙げられる。
【0053】
本発明の一実施形態で使用される多孔性支持体の平均細孔径は、例えば約1μm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましく、3nm以下であることが一層好ましい。また、多孔性支持体の平均細孔径は、例えば約0.1nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましい。このような平均細孔径を有する多孔性支持体であれば、分離層の支持機能および通液性を良好に兼ね備え、かつ分離層のCO透過選択性に影響を及ぼさない。なお、本明細書において、多孔性支持体の平均細孔径は、ナノパームポロメータにより測定した値を示している。
【0054】
上記平均細孔径を有する多孔性支持体は、例えば、市販のα-アルミナ多孔質管に、α-アルミナ粒子、SiOもしくはZrOまたはこれらの混合物を含むコロイドゾルを適宜塗布し、焼成して中間層を形成することにより、作製することができる。中間層は1層であってもよく、または2層以上であってもよい。このような中間層を設けることにより、多孔性支持体の表面を均質化するとともに、多孔性支持体と分離層との間の熱膨張係数を緩和することができる。
【0055】
〔CO分離膜の製造方法〕
図1は、本実施形態に係るCO分離膜の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本発明の一実施形態に係るCO分離膜の製造方法は、化合物(A)および化合物(B)を含む前駆体、または化合物(C)を含む前駆体を調製する前駆体調製工程S1と、前駆体を焼成する焼成工程S3と、を含む。また、CO分離膜の製造方法は、前駆体調製工程S1と焼成工程S3との間に、前駆体を支持体に担持させる担持工程S2を更に含んでもよい。
【0056】
<前駆体調製工程S1>
前駆体調製工程S1では、化合物(A)および化合物(B)を溶媒に溶解または分散させてよく、または化合物(C)を溶媒に溶解または分散させてよい。使用できる溶媒の例として、アルコール類、炭化水素類、ケトン類、エステル類および水(HO)等を挙げることができる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールおよびシクロヘキサノールが挙げられる。炭化水素類としては、例えばヘキサン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。エステル類としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチルおよび乳酸メチルが挙げられる。化合物(A)および化合物(B)を溶解させ、または化合物(C)を溶解させるとともに、焼成工程において、溶媒を速やかに揮発させる観点から、溶媒はアルコール類であることが好ましく、なかでもエタノールであることが好ましい。
【0057】
前駆体調製工程S1では、化合物(A)および化合物(B)の加水分解または化合物(C)の加水分解を促進し、-Si-O-Si-鎖(以下、「シロキサン結合」と称する)の生成を促進するために、HOを更に混合することが好ましい。シロキサン結合の生成を促進するために、更に混合するHOのモル数は、化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)の合計モル数の20倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましく、50倍以上であることが更に好ましい。また、HOのモル数は、化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)の合計モル数の280倍以下であることが好ましく、200倍以下であることがより好ましい。
【0058】
前駆体調製工程S1では、化合物(A)、化合物(B)および溶媒を含む混合物または化合物(C)および溶媒を含む混合物を撹拌し、ゾル化させることにより、前駆体としてのコロイドゾルを調製してもよい。調製されるコロイドゾルの個数基準モード径は、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましい。コロイドゾルの個数基準モード径が小さすぎると、コロイドゾルが支持体に急速に浸透してしまい、支持体上にコロイドゾルを担持することが難しい。
【0059】
また、コロイドゾルの個数基準モード径は、5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。コロイドゾルの個数基準モード径が大きすぎると、コロイドゾルの粒子同士の間の空隙である粒界細孔が大きくなる虞がある。この場合、粒界細孔を通ってCO以外の気体がCO分離膜を透過してしまうので、シリカネットワークによる分離能の制御が難しくなり、COの透過選択性が低下してしまう虞がある。
【0060】
各化合物および溶媒を含む混合物を撹拌し、ゾル化させるとき、混合物の質量に対する化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)の合計質量の比率は、例えば1wt%以上10wt%以下であることが好ましい。この場合、適切な個数基準モード径を有するコロイドゾルを容易に調製することができる。
【0061】
また、各化合物および溶媒を含む混合物を撹拌し、ゾル化させる場合、撹拌温度は室温であってもよく、加熱して行ってもよい。混合物を室温でゾル化させる場合、撹拌時間は例えば1時間以上24時間以下であってもよい。
【0062】
前駆体調製工程S1において、化合物(A)および化合物(B)を含む前駆体を調製する場合、化合物(B)に対する化合物(A)の混合比率は、質量比率で1/5以上5/1以下であることが好ましく、1/2以上2/1以下であることがより好ましく、3/4以上4/3以下であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。このような構成によれば、CO分離膜のCO/Nの透過選択性を向上することができる。
【0063】
<担持工程S2>
担持工程S2では、化合物(A)および化合物(B)を含む前駆体、または化合物(C)を含む前駆体を、上述の支持体に担持させてもよい。前駆体を支持体に担持させるために、例えば、支持体に対して前駆体の塗布または噴霧を行ってもよい。前駆体は、溶液の状態であってもよく、または分散体、例えばコロイドゾルの状態であってもよい。
【0064】
担持工程S2において、溶液または分散体の質量に対する化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)の合計質量の比率(以下、「化合物濃度」と称する)は、分離層を効率的に作製する観点から、0.1wt%以上であることが好ましく、0.2wt%以上であることがより好ましい。また、薄く均一な分離層を作製する観点から、化合物濃度は1wt%以下であることが好ましく、0.5wt%以下であることがより好ましく、0.3wt%以下であることが更に好ましい。
【0065】
担持工程S2では、室温の支持体に前駆体を塗布するコールドコーティングを行ってもよく、または25℃以上200℃以下に加熱した支持体に前駆体を塗布するホットコーティングを行ってもよい。ホットコーティングの場合、塗布直後からコロイドゾルが支持体上でゲル化するため、コロイドゾルの支持体内部への浸透を低減することができる。そのため、分離層を薄膜化し、COの透過率を向上することができる。一方、コールドコーティングの場合、コロイドゾルが支持体内部に浸透しやすくなるため、膜厚は厚くなるが、シャープな細孔径分布が得られると考えられる。
【0066】
<焼成工程S3>
焼成工程S3では、前駆体調製工程S1で調製した前駆体を焼成する。焼成により、前駆体内でシリカネットワークが形成され、CO透過選択性を有する分離層が得られる。焼成温度は、300℃以上400℃以下であることが好ましい。この場合、COの透過選択性および熱的安定性の高いCO分離膜を製造することができる。
【0067】
また、化合物(A)に由来する骨格および化合物(B)に由来する骨格を含むシリカネットワークまたは化合物(C)に由来する骨格を含むシリカネットワークを形成するために、焼成時間は、10分以上60分以下であることが好ましい。また、焼成は、化合物(A)に由来する骨格、化合物(B)に由来する骨格および化合物(C)に由来する骨格の分解を防ぐために、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0069】
本発明の一実施例について以下に説明する。表1に示す実施例1~9の各組成について、一連の評価を行った。
【0070】
【表1】
【0071】
〔コロイドゾルの調製およびゲルの評価〕
各実施例の組成について、コロイドゾルを調製した。また、実施例1および3の組成について、コロイドゾルおよびゲル材料の物性を評価した。
【0072】
<コロイドゾルの調製および動的光散乱(DLS)測定>
実施例1および3の組成のコロイドゾルを調製するため、まず、50mLのスクリュー管に撹拌子を入れ、エタノールを秤量して加えた。次に、スターラーで撹拌しながら、秤量したBTESPAを加え、または秤量したBTESPAおよびBTESEをこの順に加えた。その後、水を1滴ずつゆっくりと滴下した。そして、スクリュー管のふたを閉め、スターラーで撹拌し、ゾル化時間:1h、3h、5hおよび24hでサンプリングした。各サンプルについて、Malvern製・Zetasizer Nano ZSを使用して、動的光散乱(DLS)測定を行った。
【0073】
また、実施例2および4~9の組成のコロイドゾルを調製するため、まず、50mLのスクリュー管に撹拌子を入れ、スターラーで撹拌しながら、秤量した化合物(B)および化合物(A)をこの順に加えた。次に、エタノールを秤量して加えた後、水を1滴ずつゆっくりと滴下した。そして、スクリュー管のふたを閉め、スターラーで1時間撹拌した(ゾル化時間:1h)。
【0074】
図2および図3はそれぞれ、実施例1および3の個数基準によるDLS測定結果を示すグラフである。図2および図3に示すように、時間経過とともに重合が進むことがわかった。前述の通り、コロイドゾルの個数基準モード径は、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましいとともに、5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。そのため、後述するCO分離膜の製造では、実施例1-Bを除く実施例1-A~実施例9のいずれでも、ゾル化時間:1hのサンプルを使用した。実施例1-Bでは、塗布回数1~5回目まではゾル化時間:1hのサンプルを0.25wt%に希釈して4℃に設定された冷蔵庫内で1か月保管したもの(粒子径:約9nm)を使用し、塗布回数6~8回目まではゾル化時間:1hのサンプル(粒子径:約2~3nm)を使用した。なお、更なるゾル化を低減するため、コロイドゾルをエタノールで5wt%から0.25wt%へと希釈し、CO分離膜の製造まで、4℃に設定された冷蔵庫内で保管した。また、後述するフーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定用サンプルは、ゾル化時間:24hのコロイドゾルを、測定に使用するまで、4℃に設定された冷蔵庫内で保管して使用した。
【0075】
<熱重量分析(TGA)測定>
ゾル化時間:24hのサンプルについて、一晩以上60℃の炉で加熱することにより(slow dry法)、ゲル化させた。ゲル化させたサンプルについて、SHIMADZU製TGAを使用して、熱重量分析(TGA)測定を行った。測定は、Nまたは空気雰囲気下で、流量を100mL/minに設定して行った。また、ゲルに含まれていた水およびエタノール等を蒸発させるために、100℃まで加熱を行い、重量が安定するまで1時間程度保持した後で測定を開始した。
【0076】
図4および図5はそれぞれ、実施例1および3のTGA測定結果を示すグラフである。図4に示すように、実施例1では、空気雰囲気下では約100~300℃、N雰囲気下では約100~400℃までの重量減少はわずかであり、ほぼ一定であった。この温度範囲では、分子内のSiOH基が縮合し、Si-O-Si鎖の形成が進んでいると推測される。また、空気雰囲気下では約300℃、N雰囲気下では約400℃を超える温度範囲において、大幅に重量が減少した。この重量減少は、主鎖の熱分解に由来すると考えられる。
【0077】
図5に示すように、実施例3では、空気雰囲気下において、約100~200℃まで急激に重量が減少し、約200~275℃では、緩やかに重量が減少した。また、N雰囲気下では、約100~200℃まで若干急激に重量が減少し、約200~350℃では、緩やかに重量が減少した。これらの温度範囲では、未反応のアルコキシ基の消失、SiOH基の縮合およびSi-O-Si鎖の形成が進んでいると推測される。また、空気雰囲気下では約275℃、N雰囲気下では約350℃を超える温度範囲において、大幅に重量が減少した。この重量減少は、主鎖の熱分解に由来すると考えられる。
【0078】
<フーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定>
ゾル化時間:24hのサンプルを、約1.5cm角の清浄なシリコンウェハ上に滴下し、50℃に設定した乾燥機を使用して、空気中で24時間乾燥させた。乾燥後のサンプルについて、JASCO製FT-IR-4100を使用して、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定を行った。
【0079】
FT-IR測定後のサンプルを、窒素雰囲気下、100℃で10分間焼成し、約10分間室温で放冷した後、再度FT-IR測定を行った。更に、焼成温度200℃、300℃、400℃および500℃でも、焼成、放冷およびFT-IR測定を繰り返して行った。
【0080】
図6および図7はそれぞれ、実施例1および実施例3の各焼成温度でのFT-IR測定結果を示すグラフである。図6および図7に示すように、実施例1および実施例3のいずれでも、温度が上昇するにつれて、3000~3700cm-1付近のHOおよびSiOH基が減少することがわかる。また、960cm-1付近のSiOH基が減少し1065cm-1付近のSi-O-Si結合が増加していることから、縮合反応が進んでいることがわかる。このことは、図4および図5に示したTGA測定結果とも一致する。
【0081】
後述する気体透過実験では、最高温度200℃で測定を行うため、N雰囲気下250℃以下の焼成により作製したCO分離膜は、測定中に縮合反応が進行し、安定性が低下する可能性がある。以上より、縮合反応を十分に進行させ、シロキサン結合の生成を促進するため、後述するCO分離膜の製造では、焼成条件は、N雰囲気下、350℃で30分間とした。
【0082】
〔CO分離膜の製造〕
<多孔性支持体の作製>
以下の手順により、非対称構造を有する多孔質管が2本の無孔質管で接続された多孔性支持体を作製した。まず、長さL=100mm、外径Φ=10mm、肉厚1mm、公称平均細孔径1μm、空孔率50%、膨張係数β=63×10-7/℃のα-アルミナ多孔質管の両端に、外径Φ=8mmの無孔アルミナ管(無孔質管)を接合し、接合体を作製した。接合は、アルミナペースト(ノリタケカンパニーリミテド)を使用して、950℃での焼成を2~3回繰り返すことにより行った。接合後、アルミナ管をエタノール中に浸漬した状態で、アルミナ管内部から窒素で25kPaの圧力を掛け、接合部分から気泡が出ないことを確認した(バブルポイント法)。
【0083】
次に、SiO-ZrOゾル(1.0~2.0wt%)をバインダーとし10wt%程度にイオン交換水で希釈したアルミナ微粒子(住友化学工業(株)製、個数平均粒子径:1.9μm)を旭化成(株)製のベンコットM-1に少量とり、接合体の多孔質管部分にコールドコーティングした。自然乾燥させたのち、乾いたベンコットM-1で余分な粒子を拭き取り、200℃の乾燥機で余熱した後、いすゞ製作所電気管状炉EKR-29で空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。バブルポイント法で60kPaの圧力を掛けても気泡が出ないようになるまで、アルミナ微粒子の塗布、乾燥および焼成を繰り返し、第1中間層を形成した。
【0084】
次に、SiO-ZrOゾル(1.0~2.0wt%)をバインダーとし10wt%程度にイオン交換水で希釈したアルミナ微粒子(住友化学工業(株)製、個数平均粒子径:0.2μm)を、接合体の多孔質管部分にコールドコーティングした。自然乾燥させたのち、乾いたベンコットM-1で余分な粒子を拭き取り、200℃の乾燥機で余熱した後、空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。バブルポイント法で100kPaの圧力を掛けても気泡が出ないようになるまで、アルミナ微粒子の塗布、乾燥および焼成を繰り返し、第2中間層を形成した。
【0085】
次に、SiO-ZrOゾル(個数平均粒子径:20~30nm、0.5~1.0wt%)を、200℃で10分間加熱した接合体の多孔質管部分にホットコーティングし、空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。更に、SiO-ZrOゾル(個数平均粒子径:約10nm、0.5wt%)を、200℃で10分間加熱した接合体の多孔質管部分にホットコーティングし、空気雰囲気下において550℃で10分間焼成した。シンプルナノパームポロメータにより測定される平均細孔径が1nm以上2nm以下になるまで、SiO-ZrOゾル(個数平均粒子径:約10nm、0.5wt%)の塗布および焼成を繰り返すことにより、第3中間層を形成し、多孔性支持体を作製した。
【0086】
<分離層の形成>
多孔性支持体の多孔質管部分の表面に、エタノールで0.25wt%に希釈した各実施例のコロイドゾルを、ベンコットを用いてコーティングし、コロイドゾルを多孔性支持体の表面に担持させた。コーティングは、多孔性支持体を200℃の乾燥機で10分間加熱した後、室温の大気中で15秒程度放冷した後に行った。コーティング後、多孔性支持体を窒素雰囲気下、350℃で30分間焼成した。10分間で室温まで冷却した後、炉から取り出し、すぐに透過実験装置の中に取り付け、He、NおよびSFについて、後述する気体透過実験を行った。気体透過実験の後、必要に応じてコロイドゾルの塗布および焼成を繰り返した。
【0087】
図8は、実施例1の組成で、粒子径:2~3nmのコロイドゾルを使用して作製した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SFの透過選択性との関係を示すグラフである。
【0088】
図9は、実施例1の組成で、塗布回数1~5回目まで粒子径:約9nm、塗布回数6~8回目まで粒子径:2~3nmのコロイドゾルを使用して作製した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SFの透過選択性との関係を示すグラフである。
【0089】
図10は、実施例3の組成で、粒子径:2~3nmのコロイドゾルを使用して作製した分離層について、塗布回数と透過率およびHe/SFの透過選択性との関係を示すグラフである。
【0090】
図8図10に示すように、コーティングを繰り返すことにより、He/SFの透過選択性は上昇し、各測定ガス種の透過率は低下した。この理由は、塗布を繰り返すことにより、分離層の膜厚が増加したためと推測される。
【0091】
図8に示す例では、5回以上塗布を繰り返しても、He/SFの透過選択性の増加の見込みが低く、透過率が減少してしまうだけであると予想されたため、5回の塗布をもってCO分離膜の完成とした。以下の説明では、このCO分離膜を実施例1-Aと称する。
【0092】
同様に、図9に示す例では、8回以上塗布を繰り返しても、He/SFの透過選択性の増加の見込みが低く、透過率が減少してしまうだけであると予想されたため、8回の塗布をもってCO分離膜の完成とした。以下の説明では、このCO分離膜を実施例1-Bと称する。なお、図10に示す例(実施例3)では、3回の塗布をもってCO分離膜の完成とした。実施例2および4~9のコロイドゾルの塗布回数については、後述する表3に示す。
【0093】
〔気体透過実験〕
CO分離膜の透過率は、各測定ガス種について、下記式(4)で算出することができる。
【0094】
Q=V/(22.4×A×ΔP) (4)
式(4)中、Qは透過率[mol/m s Pa]であり、Vは単位時間当たりの体積流量[L/s]であり、AはCO分離膜の表面積であり、ΔPは、CO分離膜の上流側と下流側との圧力差[Pa]である。なお、本実施例では、多孔質管の外部をCO分離膜の上流側とし、多孔質管の内部をCO分離膜の下流側とした。また、本実施例では、CO分離膜の上流側の圧力を約100kPaに設定した。
【0095】
体積流量Vは、その流量に応じて、(株)堀場エステックソープフィルムメータ(VP-1(0.2~10mL/min)、VP-2(2~100mL/min)、VP-3(20~1000mL/min))で測定した。本実施例に用いる測定ガス種は、He、H、CO、N、CH、CFおよびSFである。各測定ガス種の物性値を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
〔CO分離膜の気体分離特性〕
作成したCO分離膜を用いて、気体透過実験を行った。測定する気体の順番はHe、H、N、CO、CH、CF、SFとし、測定温度は200℃、150℃、100℃および50℃とした。吸着性のない無機ガスであるHe、H、Nは、各温度で全てのガスの測定が終了後、次の温度での測定を行った。吸着性のあるガスであるCO、CH、CF、SFは全ての温度での測定が終了後、次のガスの測定を開始した。測定ガスを変更するときは、CO分離膜の上流側および下流側を十分に置換し、特に吸着性ガスの後はNの透過率が測定前の透過率と同程度まで回復したのを確認し、温度が安定した後で測定を行った。
【0098】
図11は、測定ガス種の動的分子径と200℃での透過率との関係を示すグラフである。なお、図11には、実施例1-Aおよび実施例1-Bの測定結果と併せて、実施例1-AのHeの透過率に基づいて、Knudsen状態を仮定して算出した透過率も示す。ここで、Knudsen状態とは、気体分子相互の衝突がほとんど起こらず、細孔内の壁から壁へ分子が衝突を繰り返しながら拡散透過していく状態を意味する。Knudsen状態では分子分離性は発現するが、分子ふるいに比べて透過選択性が低いため、分子分離膜としての有用性は低い。
【0099】
図11に示すように、実施例1-A、実施例1-Bおよび実施例3はいずれも、N、CH、CFおよびSFの透過率が、Knudsen状態よりも低かった。したがって、実施例1-A、実施例1-Bおよび実施例3はいずれも、Knudsen状態よりも良好な透過選択性を有することが示唆された。
【0100】
また、実施例1-Aおよび実施例1-Bを比較すると、HeおよびHのような小さい分子においては、実施例1-Bの方が透過率が低かった。この理由は、実施例1-Bでは分離層形成時の塗布回数が多く、膜厚が大きいため、測定ガスが透過する抵抗が実施例1-Aより大きいためであると考えられる。一方、CFおよびSFのような大きい分子では、実施例1-Bの方が透過率が高かった。これは、実施例1-Bでは、塗布回数1~5回目において、粒子径の大きなコロイドゾルにより、シリカネットワークよりも大きな粒界細孔が形成されたためと推測される。この粒界細孔が、塗布回数6~8回目における粒子径の小さなコロイドゾルの分離層形成では埋めることができず、ピンホールのように作用したため、透過選択性が低下したのではないかと考えられる。
【0101】
実施例1-Aおよび実施例3を比較すると、実施例3の方が全体的に透過率が向上した。したがって、BTESPA単独重合体と比較して、BTESPAとBTESEとの共重合体では、細孔径が拡張していると推測される。
【0102】
図12は、実施例1-AのCO分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。図13は、実施例1-BのCO分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。図14は、実施例3のCO分離膜について、測定温度Tの逆数と透過率の対数との関係を示すアレニウスプロットである。
【0103】
図12図14に示すように、CO以外の測定ガス種(He、H、N、CH、CFおよびSF)については、測定温度Tが高い、すなわち測定温度Tの逆数(1/T)が低い程、透過率が上昇した。これは、(1)CO分離膜のシリカネットワークが熱によって振動することにより、CO分離膜の細孔サイズが大きくなること、および(2)測定ガス種の分子が持つ運動エネルギーが増大することにより、測定ガス種の分子の拡散が促進されるためと推測される。このように、測定温度Tが高い程、透過率が上昇するガス透過機構は、「活性化拡散」と称される。
【0104】
一方、COについて、200℃~100℃の間では、測定温度Tが高い、すなわち測定温度Tの逆数(1/T)が低い程、透過率が低下した。これは、「表面拡散」と称されるガス透過機構により、CO分子がCO分離膜を透過しているためと推測される。表面拡散では、CO分子がCO分離膜の表面に吸着することにより、CO分離膜の上流側から下流側に向かってCO濃度の勾配が生じ、この濃度勾配に沿って二次元的に分子が移動する。測定温度Tが低い程、CO分子の持つエネルギーが低くなり、CO分子がCO分離膜の表面に吸着されやすくなるので、その濃度勾配に従って起こる拡散移動は促進される。したがって、表面拡散では、測定温度Tが高い程、透過率が低下する。また、100℃~50℃の間では、測定温度Tが高い程、透過率が上昇した。そのため、この温度範囲におけるCOのガス透過機構は、「活性化拡散」によると推測される。
【0105】
図15は、実施例1-A、実施例1-Bおよび実施例3のCO分離膜について、N透過率とHe/Nの透過選択性との関係を示すグラフである。図16は、実施例1-A、実施例1-Bおよび実施例3のCO分離膜について、N透過率とCO/Nの透過選択性との関係を示すグラフである。
【0106】
図15および図16に示すように、50~200℃において、He/NおよびCO/Nの透過選択性は、低温ほど高くなった。また、図15に示すように、He/Nの透過選択性は温度が変化してもそれほど変化していなかった。これはHeおよびNのガス透過機構がいずれも活性化拡散であるためと考えられる。一方、図16に示すように、CO/Nの透過選択性は、高温から低温になるにつれて大きく向上した。これは、Nのガス透過機構が活性化拡散であり、低温になるほど透過率が減少していくのに対し、COのガス透過機構は表面拡散の寄与が大きく、低温になっても透過率がNに比べあまり減少しないためであると考えられる。
【0107】
透過ガスが細孔を通るときに必要となるエネルギーである活性化エネルギー(ΔE)は、図12図14における直線の傾きから、下記式(5)を用いて算出することができる。
【0108】
ln Q=ln Q-ΔE/RT (5)
上記式(5)中、Qは透過率であり、Rは気体定数である。このように算出したCO分離膜の活性化エネルギーを、透過率および透過選択性とともに、表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
表3に示すように、実施例1-Bにおいて、実施例1-AよりもH/SFおよびHe/Nの透過選択性が低下し、活性化エネルギーが減少するとともに、CO透過率が上昇した。この理由は、実施例1-Bでは、粒子径の大きなコロイドゾルの塗布により、シリカネットワークよりも大きな粒界細孔、またはピンホールができてしまったためと推測される。ただし、実施例1-Aおよび実施例1-Bにおいて、CO/Nの透過選択性に関しては大きな差はなかった。
【0111】
次に、実施例1-Aおよび実施例3を比較すると、実施例3では、実施例1-Aと比較して、H/SFの透過選択性が大幅に向上した。この理由は、実施例3では、Hが透過できるような細孔が大幅に増加した一方で、SFが透過できるほどの大きな細孔は増加しなかったためと推測される。また、実施例3では、実施例1-Aと比較して、CO/Nの透過選択性も向上したが、H/SFの透過選択性と比較して、増加幅は小さかった。この要因の一つとして、COおよびNの動的分子径が同程度であるため、COとNとを分子ふるい的に分離することは難しく、CO透過率の上昇と同時に、N透過率も同様に上昇してしまったことが考えられる。また、実施例3では、実施例1-Aと比較して、活性化エネルギーが低下していることから、無孔質的な膜から多孔質的な膜へと性質が変化していると推測される。
【0112】
以上の結果から、実施例1-Aでは、シリカネットワークを形成するプロピル鎖が柔軟で折れ曲がるため、細孔を狭め、または塞いでしまい、細孔が緻密で無孔質に近い膜となっていると推測される。そのため、表面拡散的な透過機構よりも活性化拡散的な透過機構が優勢であると考えられるため、COの活性化エネルギーが正の値をとっていると考えられる。しかし、実施例1-Bのように実施例1-Aのシリカネットワークよりも大きな粒界細孔を存在させること、または実施例3のようにBTESPAをBTESEと共重合させて細孔径を拡張させることにより、活性化エネルギーの値が小さくなり、負の値となった。この結果から、BTESPAのシリカネットワークを拡張することで、COがより表面拡散的に透過し、CO/Nの透過選択性を向上するとともに、CO透過率を向上できると推測される。
【0113】
実施例2~4を比較すると、実施例3のCO/Nの透過選択性が最も高かった。また、実施例5~7を比較すると、実施例6のCO/Nの透過選択性が最も高かった。したがって、分離層中、化合物(B)に由来する骨格に対する化合物(A)に由来する骨格の質量比率が1/1に近い程、CO分離膜のCO/Nの透過選択性が向上することが示された。この理由は、化合物(B)に由来する骨格に対する化合物(A)に由来する骨格の質量比率を1/1に近付けることにより、COを透過させ、かつNを透過させない適切な大きさの細孔を形成することができたためと推測される。
【0114】
実施例3および9を比較すると、CO/Nの透過選択性には大きな差がなかったが、COの透過率については、実施例9では実施例3の約3.7倍の値に向上した。これは、BTESAの三重結合により、分離層の剛直性が向上し、細孔径が安定したためと推測される。
【0115】
実施例3、6および8を比較すると、実施例3、6および8の順に、CO/Nの透過選択性が向上した。ここで、実施例3で化合物(A)として使用したBTESPAは、アルコキシシリル基1個当たり、0.5個のアミノ基を有している。また、実施例6で化合物(A)として使用したAPTESは、アルコキシシリル基1個当たり、1個のアミノ基を有している。また、実施例8で化合物(A)として使用したAEAPTESは、アルコキシシリル基1個当たり、2個のアミノ基を有している。したがって、化合物(A)について、アルコキシシリル基1個当たりのアミノ基の数が多い程、CO/Nの透過選択性が向上すると推測される。この理由は、アミノ基とCOとの親和性が高いので、COのガス透過機構における表面拡散の寄与が大きくなるためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、CO分離膜に利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
S1 前駆体調製工程
S2 担持工程
S3 焼成工程
図1
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