(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049796
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/16 20060101AFI20220323BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G01V8/16
G01J1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156016
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤畑 貴史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴和
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 弘行
【テーマコード(参考)】
2G065
2G105
【Fターム(参考)】
2G065AA20
2G065AB04
2G065AB14
2G065BA09
2G065BB02
2G065DA15
2G105AA01
2G105BB17
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG01
2G105HH04
(57)【要約】
【課題】例えば、改善された新規な物体検出装置を得る。
【解決手段】物体検出装置は、例えば、0.3[dB/m]以上の損失で光を伝送するセンサ光ファイバを少なくとも部分的に含む光ファイバと、センサ光ファイバで受光された光を光ファイバから受光する受光部と、を備え、受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する。センサ光ファイバは、外周の少なくとも一部が露出したコアを有してもよい。コアの外周には、受光部で受光される光の波長の1/100以上かつ1/10以下の大きさの凹凸構造が設けられてもよい。また、センサ光ファイバの長さは、受光部で受光される光の波長の10倍以上であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3[dB/m]以上の損失で光を伝送するセンサ光ファイバを少なくとも部分的に含む光ファイバと、
前記センサ光ファイバで受光された光を前記光ファイバから受光する受光部と、
を備え、
前記受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する物体検出装置。
【請求項2】
前記センサ光ファイバは、外周の少なくとも一部が露出したコアを有した、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記外周に、前記受光部で受光される光の波長の1/100以上かつ1/10以下の大きさの凹凸構造が設けられた、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記センサ光ファイバの長さが、前記受光部で受光される光の波長の10倍以上である、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記センサ光ファイバは、湾曲部を有した、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記センサ光ファイバは、前記湾曲部として複数の湾曲部を有した、請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記センサ光ファイバのコアは、長手方向と交差した露出端面を有した、請求項1~6のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記センサ光ファイバは、それぞれ前記センサ光ファイバの長手方向に垂直な断面における断面直径が100[nm]以下である複数のナノ構造を含む、請求項1~7のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記ナノ構造は、微粒子、チューブ、または空隙である、請求項8に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記センサ光ファイバは、プラスチックファイバである、請求項1~9のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記光ファイバに試験光を入力する光源を備え、
前記受光部は、前記光ファイバの他端から出力された試験光を受光する、請求項1~10のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項12】
前記光ファイバは、前記センサ光ファイバと、当該センサ光ファイバと接続され当該センサ光ファイバより伝送損失が小さいデリバリ光ファイバと、を有する、請求項1~11のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項13】
前記デリバリ光ファイバの実効的な比屈折率差は、前記センサ光ファイバの実効的な比屈折率差より大きい、請求項12に記載の物体検出装置。
【請求項14】
前記光ファイバに試験光を入力する光源を備え、
前記受光部で受光される光の波長において、前記センサ光ファイバはシングルモード光ファイバであり、前記光源と前記センサ光ファイバとの間に介在する前記デリバリ光ファイバはマルチモード光ファイバである、請求項12または13に記載の物体検出装置。
【請求項15】
前記受光部により受光された光の強度に基づいて前記センサ光ファイバに作用した外力を検出する、請求項1~14のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項16】
外周から光が入力されるセンサ部を含む光ファイバと、
前記センサ部に入力された光を前記光ファイバから受光する受光部と、
を備え、
前記受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する物体検出装置。
【請求項17】
前記センサ部では、少なくとも部分的にコアの外周が露出した、請求項16に記載の物体検出装置。
【請求項18】
前記光ファイバは、前記センサ部より伝送損失が低い区間を有した、請求項16または17に記載の物体検出装置。
【請求項19】
前記光ファイバは、実効的な比屈折率差が前記センサ部より大きい区間を有した、請求項16~18のうちいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項20】
部分的にコアの外周が露出した光ファイバと、
前記外周から入力された光を前記光ファイバから受光する受光部と、
を備え、
前記受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを有した物体検出装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の物体検出装置では、試験光は光ファイバの長手方向の端面に結合する。しかしながら、当該端面は狭い。このため、より広い検出範囲からの光が当該光ファイバの端面に結合するよう、集光レンズが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の物体検出装置では、例えば、より簡素な構成によってより広い検出範囲を設定することが可能となるような、改善された新規な物体検出装置が得られれば、有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、より改善された新規な物体検出装置を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の物体検出装置は、例えば、0.3[dB/m]以上の損失で光を伝送するセンサ光ファイバを少なくとも部分的に含む光ファイバと、前記センサ光ファイバで受光された光を前記光ファイバから受光する受光部と、を備え、前記受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する。
【0007】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバは、外周の少なくとも一部が露出したコアを有してもよい。
【0008】
前記物体検出装置にあっては、前記外周に、前記受光部で受光される光の波長の1/100以上かつ1/10以下の大きさの凹凸構造が設けられてもよい。
【0009】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバの長さが、前記受光部で受光される光の波長の10倍以上であってもよい。
【0010】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバは、湾曲部を有してもよい。
【0011】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバは、前記湾曲部として複数の湾曲部を有してもよい。
【0012】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバのコアは、長手方向と交差した露出端面を有してもよい。
【0013】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバは、それぞれ前記センサ光ファイバの長手方向に垂直な断面における断面直径が100[nm]以下である複数のナノ構造を含んでもよい。
【0014】
前記物体検出装置にあっては、前記ナノ構造は、微粒子、チューブ、または空隙であってもよい。
【0015】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ光ファイバは、プラスチックファイバであってもよい。
【0016】
前記物体検出装置は、前記光ファイバの一端に試験光を入力する光源を備え、前記受光部は、前記光ファイバの他端から出力された試験光を受光してもよい。
【0017】
前記物体検出装置にあっては、前記光ファイバは、前記センサ光ファイバと、当該センサ光ファイバと接続され当該センサ光ファイバより伝送損失が小さいデリバリ光ファイバと、を有してもよい。
【0018】
前記物体検出装置にあっては、前記デリバリ光ファイバの実効的な比屈折率差は、前記センサ光ファイバの実効的な比屈折率差より大きくてもよい。
【0019】
前記物体検出装置は、前記光ファイバに試験光を入力する光源を備え、前記受光部で受光される光の波長において、前記センサ光ファイバはシングルモード光ファイバであり、前記光源と前記センサ光ファイバとの間に介在する前記デリバリ光ファイバはマルチモード光ファイバであってもよい。
【0020】
前記物体検出装置にあっては、前記受光部により受光された光の強度に基づいて前記センサ光ファイバに作用した圧力を検出してもよい。
【0021】
また、本発明の物体検出装置は、例えば、外周から光が入力されるセンサ部を含む光ファイバと、前記センサ部に入力された光を前記光ファイバから受光する受光部と、を備え、前記受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する。
【0022】
前記物体検出装置にあっては、前記センサ部では、少なくとも部分的にコアの外周が露出してもよい。
【0023】
前記物体検出装置にあっては、前記光ファイバは、前記センサ部より伝送損失が低い区間を有してもよい。
【0024】
前記物体検出装置にあっては、前記光ファイバは、実効的な比屈折率差が前記センサ部より大きい区間を有してもよい。
【0025】
また、本発明の物体検出装置は、例えば、部分的にコアの外周が露出した光ファイバと、前記外周から入力された光を前記光ファイバから受光する受光部と、を備え、前記受光部により受光された光の強度に基づいて物体を検出する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、例えば、改善された新規な物体検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、第1実施形態の物体検出装置の例示的な概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態の光ファイバの例示的な概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態のセンサ部の一部の長手方向に沿った例示的かつ模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のセンサ部の長手方向と垂直な例示的かつ模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の物体検出装置のセンサ部の例示的な概略構成図であって、検出対象となる物体が存在していない状態を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の物体検出装置のセンサ部の例示的な概略構成図であって、検出対象となる物体が存在している状態を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の物体検出装置の受光部における受光強度の経時変化を示す例示的なグラフであって、センサ部に対する検出対象が存在している状態から存在していない状態に切り替わった場合を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第1実施形態の物体検出装置のセンサ部の例示的な概略構成図であって、検出対象となる物体がセンサ部から
図6より離れた位置に存在している状態を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の物体検出装置の例示的な概略構成図である。
【
図10】
図10は、第1変形例の光ファイバの一部の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、第2変形例の光ファイバの一部の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、第3変形例の光ファイバの一部の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、第4変形例の光ファイバの一部の例示的な概略構成図である。
【
図14】
図14は、第5変形例の光ファイバの一部の例示的かつ模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0029】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態および変形例の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0030】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0031】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の物体検出装置10Aの概略構成図である。物体検出装置10Aは、試験光を出力し、当該出力した試験光の受光状態によって物体を検出する能動型の検出装置である。
【0032】
図1に示されるように、物体検出装置10Aは、光ファイバ11Aと、光源21と、受光部22と、制御部30と、を備えている。
【0033】
光ファイバ11Aの長手方向の端部11e1は、光源21と光学的に接続され、光ファイバ11Aの長手方向の端部11e2は、受光部22と光学的に接続されている。光源21から出力された試験光は、端部11e1から光ファイバ11A内へ入力され、センサ部11aを含む光ファイバ11A内を伝送され、端部11e2から光ファイバ11A外へ出力され、受光部22で受光される。端部11e1は、一端の一例であり、端部11e2は、他端の一例である。
【0034】
光源21は、例えば、レーザダイオードを有し、例えば、波長が400[nm]以上でありかつ500[nm]以下である光を、出力する。また、光源21は、所定の時間間隔で断続的にパルス光を出力してもよい。
【0035】
受光部22は、例えば、フォトダイオードを有し、光ファイバ11Aから入力された光の強度、すなわち、センサ部11aを通過した光の強度を検出する。受光部22は、検出部とも称されうる。
【0036】
制御部30は、受光部22における受光強度を取得することができる。また、制御部30は、光源21における試験光の出力および出力停止を切り替えたり、試験光の出力状態を変更したりすることができる。制御部30は、演算処理部とも称されうる。
【0037】
図2は、光ファイバ11Aの概略構成図である。
図2に示されるように、光ファイバ11Aは、センサ部11aと、二つのデリバリ光ファイバ11dと、を有している。センサ部11aは、二つのデリバリ光ファイバ11dの間に介在した光ファイバである。言い換えると、一のデリバリ光ファイバ11dと、光ファイバであるセンサ部11aと、他のデリバリ光ファイバ11dとが、直列に機械的かつ光学的に接続されている。デリバリ光ファイバ11dの伝送損失は、センサ部11aの伝送損失より低い。デリバリ光ファイバ11dの実効的な比屈折率差は、センサ部11aの実効的な比屈折率差より大きい。実質的な比屈折率差は、径方向における屈折率分布に依存して定まる。また、センサ部11aとデリバリ光ファイバ11dとの境界11fにおいて、当該センサ部11aとデリバリ光ファイバ11dとは、融着接続されている。センサ部11aは、センサ光ファイバの一例である。また、デリバリ光ファイバ11dは、光ファイバ11Aのうち、他の区間(この場合はセンサ部11a)よりも伝送損失が低くかつ実効的な比屈折率差が大きい区間の一例である。言い換えると、センサ部11aは、光ファイバ11Aのうち、他の区間(この場合はデリバリ光ファイバ11d)よりも伝送損失が高くかつ実効的な比屈折率差が小さい区間である。
【0038】
センサ部11aにおいて、光(本実施形態では反射光Lr)は、その外周から入力される。
【0039】
また、センサ部11aは、U字状に折り返した湾曲部11a1を有している。湾曲部11a1は、曲がり部や、折り返し部とも称されうる。
【0040】
図3は、センサ部11aの一部の長手方向に沿った断面図であり、
図4は、センサ部11aの長手方向と垂直な断面図である。
【0041】
図3,4から明らかとなるように、センサ部11aは、コア11bと、当該コア11bを取り囲みコア11bより屈折率が低いクラッド11cと、を有している。
【0042】
コア11bの直径や、当該コア11bのクラッド11cに対する比屈折率差は、センサ部11aが試験光をシングルモードで伝送することができるよう設定される。また、クラッド11cは、被覆(不図示)で取り囲まれてもよい。この場合の被覆は、試験光に対する透過性を有している。
【0043】
また、一例として、センサ部11aとデリバリ光ファイバ11dとで、クラッドの直径、すなわち芯線の外径は、同じである。また、センサ部11aとデリバリ光ファイバ11dとで、コアの直径(外径)は同じであってもよいし、異なってもよい。一例として、デリバリ光ファイバ11dのコアの直径は、センサ部11aのコア11bの直径より大きくてもよい。また、デリバリ光ファイバ11dは、試験光をマルチモードで伝送するマルチモード光ファイバであってもよい。
【0044】
センサ部11aおよびデリバリ光ファイバ11dは、例えば、メタクリル樹脂やフッ素樹脂のような試験光に対して透明な合成樹脂材料で作られた、いわゆるプラスチックファイバである。ただし、これには限定されず、センサ部11aおよびデリバリ光ファイバ11dは、石英系ガラス材料で作られたガラス光ファイバであってもよい。また、センサ部11aおよびデリバリ光ファイバ11dは、相異なる材料で作られてもよい。
【0045】
また、
図3,4に示されるように、センサ部11aは、コア11bとクラッド11cのとの界面付近に、複数のナノ構造11pを含んでもよい。ただし、このようなナノ構造11pの分布は一例であって、ナノ構造11pは、センサ部11a内で、クラッド11cの径方向の全体にわたって存在してもよい。ナノ構造11pは、それぞれ、フィラー(例えば、微粒子や筒状のチューブのようなパーティクル)や、ボイド(例えば、チューブ、微粒子以外の空気の微少空間)が含まれてもよく、これら例示のうちの少なくとも2種が含まれてもよい。ナノ構造11pは、例えば、センサ部11aの長手方向と垂直な断面における断面直径が100[nm]以下である。この場合、フィラーやボイドが含まれない場合に比べて、センサ部11aの損失が増大しやすい。なお、フィラーやボイドは、センサ部11aのコア11bよりクラッド11cにより多く含まれてもよい。
【0046】
発明者らの鋭意研究により、このような構成のセンサ部11aにあっては、試験光がナノ構造11pによって散乱される分、当該ナノ構造11pが存在しない構成より、コア11b中に試験光が閉じ込められ難い、言い換えるとコア11bから試験光が漏洩しやすい、という知見が得られた。コア11bから試験光が漏洩しやすいということは、外からコア11b内に光が入力されやすいことを意味する。一例として、センサ部11aにおける試験光に対する伝送損失が、0.3[dB/m]以上であると、このような特性が顕著となることが判明した。
【0047】
また、
図2に示されるように、センサ部11aは、U字状に折り返した湾曲部11a1を有している。湾曲部11a1は、曲がり部や、折り返し部とも称されうる。
【0048】
このような構成の物体検出装置10Aにあっては、
図1に示されるように、センサ部11aから試験光の一部が漏洩して出射光Leとなる。また、出射光Leの少なくとも一部が検出対象としての物体Aで反射した反射光Lrが、センサ部11a内へ入力される。
【0049】
図5は、センサ部11aと面した物体Aが存在しない場合におけるセンサ部11aの側面図である。この場合、センサ部11aから出力された出射光Leは物体Aでは反射されない。したがって、出射光Leの物体Aでの反射光Lrは、センサ部11aには入力されない。
【0050】
図6は、センサ部11aと面した物体Aが存在した場合におけるセンサ部11aの側面図である。この場合、センサ部11aから出力された出射光Leは物体Aで反射される。出射光Leの物体Aでの反射光Lrの少なくとも一部は、センサ部11aに入力される。
【0051】
図7は、受光部22における受光強度の経時変化を示すグラフであって、太い実線は、時刻t1において、
図6の状態から
図5の状態に遷移した場合を示している。
図7から、時刻t1以前の
図6の状態では、受光部22における受光強度が大きく、時刻t1以降の
図5の状態では、受光部22における受光強度が小さくなることが、明らかである。なお、
図7中の太い破線は、
図6の状態のまま維持された場合の受光強度の経時変化を示している。
【0052】
よって、制御部30は、受光部22における受光強度に基づいて、物体Aの有無を検出することができる。一例として、制御部30は、受光強度が所定値Th(閾値)以上である場合には物体Aが存在すると判定し、受光強度が所定値Th未満である場合には、物体Aが存在しないと判定することができる。
【0053】
また、
図8は、センサ部11aと面した物体Aが当該センサ部11aから
図6よりも離れて位置した場合におけるセンサ部11aの側面図である。この場合も、センサ部11aから出力された出射光Leは物体Aで反射され、当該出射光Leの物体Aでの反射光Lrの少なくとも一部は、センサ部11aに入力される。ただし、センサ部11aにおける反射光Lrの強度は
図6の場合より小さくなる。したがって、受光部22における試験光の受光強度も、
図6の場合より小さくなる。
【0054】
よって、制御部30は、受光部22における受光強度に基づいて、物体Aがセンサ部11aに対して遠いか近いかを判定することができる。一例として、制御部30は、受光強度に基づいて、受光強度が大きいほど物体Aがセンサ部11aの近くに位置し、受光強度が小さいほど物体Aがセンサ部11aから離れて位置していると、判定することができる。また、制御部30は、物体Aのセンサ部11aからの距離を検出することができる。一例として、対象となる物体Aの位置と受光強度との相関関係が予め取得されているような場合には、制御部30は、当該相関関係から、受光部22における受光強度に対応した物体Aの位置を推定することができる。さらに、制御部30は、推定した物体Aの位置の経時変化から、物体Aの移動速度を推定することもできる。
【0055】
また、発明者らの鋭意研究により、このような構成においては、センサ部11aに作用する外力が大きいほど、当該センサ部11aから試験光の漏洩が増える、言い換えると、当該センサ部11aにおける伝送損失が増大することが、判明した。さらに、このようなコア11bから試験光が漏洩しやすいセンサ部11aにあっては、外力が作用した場合、当該外力に応じて伝送損失がより敏感に変化するという知見も得られた。
【0056】
センサ部11aのこのような特性から、制御部30は、予め実験的に取得された受光部22における受光強度とセンサ部11aに作用した外力との相関関係に基づいて、受光部22における受光強度に対応したセンサ部11aに作用した外力を、算出することができる。なお、外力は、力であってもよいし、圧力であってもよい。
【0057】
また、発明者らの鋭意研究により、センサ部11aについては、センサ部11aの長さL(
図2参照)は、検出範囲の大きさ(長さ)の観点から、試験光(受光部22で受光される光)の波長の10倍以上であるのが好適であり、具体的には、0.01[cm]以上100[cm]以下であるのが好適であることが判明した。また、湾曲部11a1の曲率半径R(
図2参照、センサ部11aの中心軸の半径)は、伝送損失の観点から、50[μm]以上200[μm]以下であるのが好適であることが判明した。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態では、受光部22は、センサ部11aにおいて、その外周から入力された光を、光ファイバ11Aを介して受光する。制御部30は、受光部22における受光強度に基づいて、物体Aを検出する。
【0059】
このような構成によれば、例えば、物体検出装置10Aを、光ファイバをベースとした、よりコンパクトであるとともにより簡素な構成によって実現することができる。また、センサ部11aにおいて、光は、当該センサ部11aの外周からセンサ部11a内へ入力する。よって、光ファイバの端面に光が入力される構成に比べて、より簡素な構成によってより広い検出範囲を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態のように、センサ部11aの長さLは、受光部22で受光される光の波長の10倍以上であってもよい。
【0061】
このような構成によれば、例えば、センサ部11aによる検出範囲をより大きく設定することができる。
【0062】
また、本実施形態のように、センサ部11aは、試験光を0.3[dB/m]以上の損失で伝送する光ファイバであってもよい。
【0063】
また、本実施形態のように、センサ部11aは、湾曲部11a1を有してもよい。
【0064】
また、本実施形態のように、センサ部11aは、複数のナノ構造11pを含んでもよい。
【0065】
また、本実施形態のように、センサ部11aは、プラスチックファイバであってもよい。
【0066】
また、本実施形態では、センサ部11aと光源21との間のデリバリ光ファイバ11dは、マルチモード光ファイバであり、センサ部11aは、シングルモード光ファイバであってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、センサ部11aは、デリバリ光ファイバ11dより伝送損失が高い区間であってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、センサ部11aは、デリバリ光ファイバ11dより実効的な比屈折率差が小さい区間であってもよい。
【0069】
このような構成によれば、例えば、センサ部11aにおける伝送損失がより高くなる。これにより、センサ部11aには外部からの光が入力されやすくなり、センサ部11aによる検出感度がより高くなる。
【0070】
また、本実施形態のように、デリバリ光ファイバ11dの伝送損失は、センサ部11aの伝送損失より小さくてもよい。
【0071】
また、本実施形態のように、デリバリ光ファイバ11dの実効的な比屈折率差は、センサ部11aの実効的な比屈折率差より大きくてもよい。
【0072】
このような構成によれば、例えば、デリバリ光ファイバ11dは光を閉じ込めて伝送し、センサ部11aは光を漏洩または受光して検出を行うというそれぞれの機能を発揮することができる。
【0073】
また、本実施形態のように、受光部22は、光源21から端部11e1(一端)を介して光ファイバ11Aに入力されセンサ部11aを経由し端部11e2(他端)から出力された試験光を、受光してもよい。
【0074】
このような構成によれば、例えば、比較的簡素な構成によって、能動型の物体検出装置10Aを実現することができる。また、光ファイバ11Aとは別の位置に光源21を設けずに済むため、物体検出装置10Aを全体的にコンパクトに構成しやすくなる。さらに、センサ部11aが湾曲部11a1を有している構成にあっては、湾曲部11a1の径方向外方に向けて出射光Leが出射されやすくなるため、当該湾曲の径方向外方において物体Aを検出しやすくなる。
【0075】
また、本実施形態のように、制御部30は、受光部22における受光強度に基づいて、センサ部11aに作用した外力を検出してもよい。
【0076】
このような構成によれば、例えば、別途外力を検出する装置を設けた場合に比べて、構成をより簡素化することができる。
【0077】
なお、本実施形態の物体検出装置10Aは、光源21を有しない受動型の検出装置であってもよい。
【0078】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の物体検出装置10Bの側面図である。本実施形態でも、物体検出装置10Bは、能動型の検出装置である。
【0079】
図9に示されるように、センサ部11aは湾曲部を有せず、直線状に延びていてもよい。また、センサ部11aは、上記第1実施形態と同様に、複数のナノ構造11pを含んでもよい。
【0080】
また、
図9に示されるように、光源21は、光ファイバ11Bとは離れた位置に設けられてもよい。この場合、光源21およびセンサ部11aは、光源21から出力された出射光Leが試験光としてセンサ部11aにその外周から入力されるよう、配置される。
【0081】
また、
図9に示されるように、光ファイバ11Bの長手方向の端部のそれぞれに、受光部22が設けられてもよい。この場合、制御部30は、二つの受光部22における受光強度の合計や平均に基づいて物体Aを検出してもよい。また、制御部30は、二つの受光部22における受光強度の差分から、物体Aの、光ファイバ11Bの長手方向に沿う方向(
図9の左右方向)における位置を、推定してもよい。
【0082】
なお、二つの受光部22のうちの一の受光部22に替えて、反射部やフィルタが設けられてもよい。反射部は、光を光ファイバ11B内に留める。また、フィルタは、光ファイバ11B外へ光が出るのを許容するとともに光ファイバ11B内へ光が入るのを抑制する。
【0083】
本実施形態によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。なお、本実施形態でも、物体検出装置10Bは、光源21を有しない受動型の検出装置であってもよい。
【0084】
[光ファイバの第1変形例]
図10は、第1変形例の光ファイバ11Cの一部の側面図である。光ファイバ11Cは、上記実施形態の光ファイバに替えて物体検出装置に組み込まれうる。
【0085】
図10に示されるように、センサ部11aは、クラッドを有せず、コア11bのみを有してもよい。言い換えると、センサ部11aでは、クラッドが除去されてもよい。このような構成により、センサ部11aでは、コア11bの外周11b1が露出している。これにより、センサ部11aには外部からの光が入力されやすくなり、センサ部11aによる検出感度がより高くなる。なお、センサ部11aの全区間においてコア11bが露出している必要はなく、センサ部11aの少なくとも一部においてコア11bの外周11b1が露出していればよい。外周11b1は、外周面とも称されうる。
【0086】
また、この場合、外周11b1には、凹部または凸部を含む凹凸構造(不図示)が設けられてもよい。当該凹凸構造の大きさ、例えば、長手方向における長さや間隔、径方向での高低差等が、外部から外周11b1を介してコア11b内に入る光の波長の1/10以下であれば、界面となる外周11b1においてレイリー散乱が生じ、当該外部からの光がコア11b内に入りやすくなる。また、当該凹凸構造の大きさは、光の波長の1/100より小さいと、外周11b1が平滑化されるため、当該外周11b1においてレイリー散乱は生じにくくなる。よって、当該凹凸構造の大きさは、外部から外周11b1を介してコア11b内に入る光、すなわち受光部22で受光される光の波長の、1/100以上かつ1/10以下であるのが好適である。
【0087】
デリバリ光ファイバ11dは、コア11d1と当該コア11d1の周囲を取り囲むクラッド11d2とを有している。センサ部11aのコア11bは、デリバリ光ファイバ11dのコア11d1と光学的に接続されている。具体的に、コア11bとコア11d1とは、例えば融着接続されている。
【0088】
[光ファイバの第2変形例]
図11は、第2変形例の光ファイバ11Dの一部の側面図である。光ファイバ11Dは、上記実施形態の光ファイバに替えて物体検出装置に組み込まれうる。
【0089】
図11に示されるように、少なくとも部分的にコア11bの外周11b1が露出したセンサ部11aは、湾曲部11a1を有してもよい。このような構成によれば、コア11bが湾曲していることにより、外部からの光がコア11b内により一層入りやすくなり、センサ部11aによる検出感度がより高くなる。
【0090】
[光ファイバの第3変形例]
図12は、第3変形例の光ファイバ11Eの一部の側面図である。光ファイバ11Eは、上記実施形態の光ファイバに替えて物体検出装置に組み込まれうる。
【0091】
図12に示されるように、少なくとも部分的にコア11bの外周11b1が露出したセンサ部11aは、途中で分断され、長手方向(光軸方向)の端面11b2が露出してもよい。端面11b2は、長手方向と交差した面であり、露出端面の一例である。二つのコア11bの端面11b2同士は、互いに面している。二つのコア11bは、それらの間における伝送損失は高いものの、光学的に接続されている。このような構成によれば、コア11b内には、外周11b1に加えて端面11b2からも光が入ることができる。よって、外部からの光がコア11b内により一層入りやすくなり、センサ部11aによる検出感度がより高くなる。なお、本変形例のセンサ部11aは、コア11bを切断することによって作られてもよいし、別途作られた二つの部位によって構成されてもよい。また、二つの端面11b2は、互いに接してもよい。また、コア11bが部分的に接続されるとともに部分的に分離され、部分的に端面11b2が露出してもよい。
【0092】
[光ファイバの第4変形例]
図13は、第4変形例の光ファイバ11Fの一部の側面図である。光ファイバ11Fは、上記実施形態の光ファイバに替えて物体検出装置に組み込まれうる。
【0093】
図13に示されるように、センサ部11aは、複数の湾曲部11a1を有してもよい。このような構成によれば、湾曲部11a1の数が増える分、外部からの光がコア11b内により一層入りやすくなり、センサ部11aによる検出感度がより高くなる。
【0094】
[光ファイバの第5変形例]
図14は、第5変形例の光ファイバ11Gの一部の側面図である。光ファイバ11Gは、上記実施形態の光ファイバに替えて物体検出装置に組み込まれうる。
【0095】
図14に示されるように、センサ部11aは、コイル状に構成されてもよい。当該コイルは、コイルの巻回軸方向に見た場合に、楕円状や長円状であってもよい。また、コイルは、芯部材(不図示)に巻き付けられることにより構成されてもよい。その場合の芯部材は、丸められた縁を有した帯板状部材であってもよい。本変形例でも、センサ部11aは、複数の湾曲部11a1を有している。よって、このような構成によれば、湾曲部11a1の数が増える分、外部からの光がコア11b内により一層入りやすくなり、センサ部11aによる検出感度がより高くなる。
【0096】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0097】
例えば、上記実施形態および変形例では、センサ部(センサ光ファイバ)とデリバリ光ファイバとが互いに接続されることにより光ファイバが構成されたが、これには限定されず、光ファイバにおいて局所的に処理が施されることにより、光ファイバの一部にセンサ部が作られてもよい。
【0098】
また、例えば、センサ部(センサ光ファイバ)と、当該センサ部と光源との間のデリバリ光ファイバと、の接続箇所(境界)においてモード変換が生じるよう、当該センサ部およびデリバリ光ファイバに対して、モード伝送状態が互いに異なる光ファイバを適用してもよい。
【符号の説明】
【0099】
10A,10B…物体検出装置
11A~11G…光ファイバ
11a…センサ部(センサ光ファイバ)
11a1…湾曲部
11b…コア
11b1…外周
11b2…端面(露出端面)
11c…クラッド
11d…デリバリ光ファイバ
11d1…コア
11d2…クラッド
11e1…端部(一端)
11e2…端部(他端)
11f…境界
11p…ナノ構造
21…光源
22…受光部
30…制御部(演算処理部)
A…物体
L…長さ
Le…出射光
Lr…反射光
R…曲率半径
Th…所定値(閾値)
t1…時刻