(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054589
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】双方向無線通信トランシーバのキャリブレーション装置およびキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/19 20150101AFI20220331BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20220331BHJP
H03D 7/14 20060101ALI20220331BHJP
H03D 7/12 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H04B17/19
H04B17/29 400
H03D7/14 C
H03D7/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161718
(22)【出願日】2020-09-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発「集積電子デバイスによる大容量映像の非圧縮低電力無線伝送技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(72)【発明者】
【氏名】李 尚曄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 毅
(72)【発明者】
【氏名】原 紳介
(72)【発明者】
【氏名】高野 恭弥
(57)【要約】
【課題】双方向無線通信トランシーバにおける電力結合器に接続された周波数逓倍ミキサ対の出力バランスを取る。
【解決手段】双方向無線通信トランシーバ10のキャリブレーション装置20は、トランシーバ10における電力結合器15を構成する環状伝送線路151上の第1のRF信号の接続点および第2の信号の接続点から等距離の点における信号強度を検出する信号強度検出部21と、ベースバンド信号を無信号にしてトランシーバ10を送信動作させた状態でトランシーバ10の各回路要素の制御値を変化させ、上記信号強度が最大となるときの制御値を特定してトランシーバ10のメモリ17に記録するプロセッサ24とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡RF信号を送受信する双方向無線通信トランシーバのキャリブレーション装置であって、
前記双方向無線通信トランシーバは、
LO信号を生成するLO回路と、
ベースバンド信号および前記LO信号が入力され、前記ベースバンド信号の正相信号と前記LO信号とを混合して得られた信号に前記LO信号を重ね合わせた信号、および前記ベースバンド信号の逆相信号と前記LO信号とを混合して得られた信号に前記LO信号を重ね合わせた信号を出力する第1のミキサと、
前記第1のミキサの二つの出力信号を増幅するアンプと、
前記アンプの二つの出力信号を周波数逓倍して得られた第1のRF信号および第2のRF信号を出力する第2のミキサと、
環状伝送線路を有し、前記環状伝送線路上に前記第1のRF信号および前記第2のRF信号がλ/2(ただし、λはRF信号波長である。)の間隔で接続され、前記環状伝送線路上で前記第1のRF信号の接続点からの距離と前記第2のRF信号の接続点からの距離との差がλ/2である点に平衡アンテナが接続される電力結合器と、
前記LO回路、前記第1のミキサ、前記アンプ、および前記第2のミキサの少なくとも一つの回路要素に対する制御値を記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された制御値に従って前記回路要素の動作を制御するコントローラとを備えたものであり、
前記キャリブレーション装置は、
前記環状伝送線路上の前記第1のRF信号の接続点および前記第2の信号の接続点から等距離の点における信号強度を検出する第1の信号強度検出部と、
前記ベースバンド信号を無信号にして前記双方向無線通信トランシーバを送信動作させた状態で前記制御値を変化させ、前記信号強度が最大となるときの前記制御値を特定して前記メモリに記録するプロセッサとを備えた
ことを特徴とするキャリブレーション装置。
【請求項2】
前記第2のミキサが、前記第1のRF信号をダウンコンバートして得られた第1のダウンコンバート信号および前記第2のRF信号をダウンコンバートして得られた第2のダウンコンバート信号を出力するものであり、
前記キャリブレーション装置は、
前記第1のダウンコンバート信号の信号強度を検出する第2の信号強度検出部と、
前記第2のダウンコンバート信号の信号強度を検出する第3の信号強度検出部と、
前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の位相差を検出する位相差検出部とを備え、
前記プロセッサが、前記第1のミキサに前記ベースバンド信号の正相信号および逆相信号に代えて同相のテスト信号を入力して前記双方向無線通信トランシーバを送信動作させた状態で前記制御値を変化させ、前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の信号強度が互いに等しくなり、かつ、前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の位相差がゼロになるときの前記制御値を特定して前記メモリに記録する、請求項2に記載のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記ベースバンド信号がI信号およびQ信号からなる直交信号であり、
前記第1のミキサがIQミキサであり、
前記プロセッサが、前記第1のミキサに前記テスト信号のI信号およびQ信号を入力した状態で前記制御値を一通り変化させた後、前記I信号および前記Q信号を入れ替えて前記第1のミキサに入力した状態で前記制御値を変化させる、請求項2に記載のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記制御値がバイアス電圧、前記ベースバンド信号の位相、および前記LO信号の位相の少なくとも一つを含む、請求項1ないし3のいずれかに記載のキャリブレーション装置。
【請求項5】
平衡RF信号を送受信する双方向無線通信トランシーバのキャリブレーション方法であって、
前記双方向無線通信トランシーバは、
LO信号を生成するLO回路と、
ベースバンド信号および前記LO信号が入力され、前記ベースバンド信号の正相信号と前記LO信号とを混合して得られた信号に前記LO信号を重ね合わせた信号、および前記ベースバンド信号の逆相信号と前記LO信号とを混合して得られた信号に前記LO信号を重ね合わせた信号を出力する第1のミキサと、
前記第1のミキサの二つの出力信号を増幅するアンプと、
前記アンプの二つの出力信号を周波数逓倍して得られた第1のRF信号および第2のRF信号を出力する第2のミキサと、
環状伝送線路を有し、前記環状伝送線路上に前記第1のRF信号および前記第2のRF信号がλ/2(ただし、λはRF信号波長である。)の間隔で接続され、前記環状伝送線路上で前記第1のRF信号の接続点からの距離と前記第2のRF信号の接続点からの距離との差がλ/2である点に平衡アンテナが接続される電力結合器と、
前記LO回路、前記第1のミキサ、前記アンプ、および前記第2のミキサの少なくとも一つの回路要素に対する制御値を記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された制御値に従って前記回路要素の動作を制御するコントローラとを備えたものであり、
前記バランスキャリブレーション方法は、
前記ベースバンド信号を無信号にして前記双方向無線通信トランシーバを送信動作させた状態で前記制御値を変化させたときの、前記環状伝送線路上の前記第1のRF信号の接続点および前記第2の信号の接続点から等距離の点における信号強度を検出する第1のステップと、
前記信号強度が最大となるときの前記制御値を特定して前記メモリに記録する第2のステップとを備えた
ことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項6】
前記第2のミキサが、前記第1のRF信号をダウンコンバートして得られた第1のダウンコンバート信号および前記第2のRF信号をダウンコンバートして得られた第2のダウンコンバート信号を出力するものであり、
前記キャリブレーション方法は、
前記第1のミキサに前記ベースバンド信号の正相信号および逆相信号に代えて同相のテスト信号を入力して前記双方向無線通信トランシーバを送信動作させた状態で前記制御値を変化させたときの、前記第1のダウンコンバート信号の信号強度、前記第2のダウンコンバート信号の信号強度、および前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の位相差を検出する第3のステップと、
前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の信号強度が互いに等しくなり、かつ、前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の位相差がゼロになるときの前記制御値を特定して前記メモリに記録する第4のステップとを備えた、請求項5に記載のキャリブレーション方法。
【請求項7】
前記ベースバンド信号がI信号およびQ信号からなる直交信号であり、
前記第1のミキサがIQミキサであり、
前記第3のステップにおいて、前記第1のミキサに前記テスト信号のI信号およびQ信号を入力した状態で前記制御値を一通り変化させた後、前記I信号および前記Q信号を入れ替えて前記第1のミキサに入力した状態で前記制御値を変化させる、請求項6に記載のキャリブレーション方法。
【請求項8】
前記制御値がバイアス電圧、前記ベースバンド信号の位相、および前記LO信号の位相の少なくとも一つを含む、請求項5ないし7のいずれかに記載のキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡RF信号を送受信する双方向無線通信トランシーバにおけるインバランスキャリブレーション技術、特に、300GHz帯送受信を行う双方向無線通信トランシーバに好適なキャリブレーション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ帯、特に300GHz帯は数十GHz以上の広い周波数帯域が利用できることから、より大容量のデータの高速伝送ができる次世帯通信の一つとの候補として注目されている。ところが、CMOSプロセスでの最大周波数は高々200GHz台前半であることから、300GHz帯のトランシーバをCMOSプロセスで実現するのは困難である。そこで、CMOSトランシーバでは、送信機(以下、TXという。)は、ダブラやトリプラなどの周波数逓倍ミキサを最終段に配置し、ベースバンド信号をLO(Local Oscillation)信号でアップコンバートして得られたIF(Intermediate Frequency)信号を最終段のミキサで周波数逓倍してRF(Radio Frequency)信号にして出力するといったミキサラスト構成にされ、受信機(以下、RXという。)は、初段に配置したダウンコンバージョンミキサを配置し、受信したRF信号をLO信号でダウンコンバートして得られたIF信号を低雑音アンプで増幅するといったミキサファースト構成にされる。
【0003】
これまでTXおよびRXはそれぞれ大きな回路面積を占有するため別々のチップに実装されていたが、本発明者は、TXとRXでLO回路を時分割共有してトランシーバ全体の回路面積および消費電力を削減することでTXとRXを単一チップに実装可能にした双方向無線通信トランシーバを開発している(例えば、下記特許文献1および非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Lee et al., “An 80-Gb/s 300-GHz-Band Single-Chip CMOS Transceiver,” IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL.54, NO. 12, DECEMBER 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記双方向無線通信トランシーバでは、TXの最終段の周波数逓倍ミキサ対において、IF信号にLO信号が重ね合わされた信号を周波数逓倍した(LO+IF)2信号と、IF信号の逆相信号にLO信号が重ね合わされた信号を周波数逓倍した(LO-IF)2信号とが生成され、これら信号は電力結合器に入力されて差動成分LO・IFがTXの送信RF信号として、同相成分LO2がRXのダウンコンバージョンミキサに入力されるLO信号としてそれぞれ取り出される。このようなタイプのトランシーバでは周波数逓倍ミキサ対の出力バランスがずれていると電力結合器から十分なパワーの差動成分LO・IFを取り出すことができないため、周波数逓倍ミキサ対の出力バランスを取る必要がある。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、双方向無線通信トランシーバにおける電力結合器に接続された周波数逓倍ミキサ対の出力バランスを取るためのキャリブレーション装置およびキャリブレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従ったキャリブレーション装置が対象とする双方向無線通信トランシーバは、LO信号を生成するLO回路と、ベースバンド信号および前記LO信号が入力され、前記ベースバンド信号の正相信号と前記LO信号とを混合して得られた信号に前記LO信号を重ね合わせた信号、および前記ベースバンド信号の逆相信号と前記LO信号とを混合して得られた信号に前記LO信号を重ね合わせた信号を出力する第1のミキサと、前記第1のミキサの二つの出力信号を増幅するアンプと、前記アンプの二つの出力信号を周波数逓倍して得られた第1のRF信号および第2のRF信号を出力する第2のミキサと、環状伝送線路を有し、前記環状伝送線路上に前記第1のRF信号および前記第2のRF信号がλ/2(ただし、λはRF信号波長である。)の間隔で接続され、前記環状伝送線路上で前記第1のRF信号の接続点からの距離と前記第2のRF信号の接続点からの距離との差がλ/2である点に平衡アンテナが接続される電力結合器と、前記LO回路、前記第1のミキサ、前記アンプ、および前記第2のミキサの少なくとも一つの回路要素に対する制御値を記憶するメモリと、前記メモリに記憶された制御値に従って前記回路要素の動作を制御するコントローラとを備えたものであり、本発明の一局面に従ったキャリブレーション装置は、前記環状伝送線路上の前記第1のRF信号の接続点および前記第2の信号の接続点から等距離の点における信号強度を検出する第1の信号強度検出部と、前記ベースバンド信号を無信号にして前記双方向無線通信トランシーバを送信動作させた状態で前記制御値を変化させ、前記信号強度が最大となるときの前記制御値を特定して前記メモリに記録するプロセッサとを備えたものである。
【0009】
前記第2のミキサが、前記第1のRF信号をダウンコンバートして得られた第1のダウンコンバート信号および前記第2のRF信号をダウンコンバートして得られた第2のダウンコンバート信号を出力するものであってもよく、前記キャリブレーション装置は、前記第1のダウンコンバート信号の信号強度を検出する第2の信号強度検出部と、前記第2のダウンコンバート信号の信号強度を検出する第3の信号強度検出部と、前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の位相差を検出する位相差検出部とを備えていてもよく、前記プロセッサが、前記第1のミキサに前記ベースバンド信号の正相信号および逆相信号に代えて同相のテスト信号を入力して前記双方向無線通信トランシーバを送信動作させた状態で前記制御値を変化させ、前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の信号強度が互いに等しくなり、かつ、前記第1のダウンコンバート信号および前記第2のダウンコンバート信号の位相差がゼロになるときの前記制御値を特定して前記メモリに記録するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、双方向無線通信トランシーバにおける電力結合器に接続された周波数逓倍ミキサ対の出力バランスを取るようなキャリブレーションを行なってトランシーバの出力パワーを最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャリブレーション装置および一例に係るキャリブレーション対象の双方向無線通信トランシーバの構成図
【
図3】TXモードでの双方向無線通信トランシーバの回路状態の一例を示す図
【
図4】RXモードでの双方向無線通信トランシーバの回路状態の一例を示す図
【
図5】RFミキサ対のダウンコンバート信号強度および位相差に基づくキャリブレーション中の双方向無線通信トランシーバの回路状態の一例を示す図
【
図6】RFミキサ対のダウンコンバート信号強度および位相差に基づくキャリブレーション中の双方向無線通信トランシーバの回路状態の別例を示す図
【
図7】電力結合器のΣポート信号強度に基づくキャリブレーション中の双方向無線通信トランシーバの回路状態の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、図面に描かれた各部材の寸法、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
【0013】
≪キャリブレーション装置の構成例≫
本発明の一実施形態に係るキャリブレーション装置は、双方向無線通信トランシーバ(以下、単に「トランシーバ」と称する。)の送信RF信号のパワーを最大化するような制御値を特定するものである。キャリブレーション対象となるトランシーバは周波数逓倍ミキサ対が接続された電力結合器から差動成分のRF信号を取り出して送信するタイプのトランシーバである。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係るキャリブレーション装置および一例に係る双方向無線通信トランシーバ(以下、単に「トランシーバ」と称することがある。)10の構成図である。先にトランシーバの構成例を説明し、その後、キャリブレーション装置の構成例を説明する。
【0015】
トランシーバ10は、CMOSプロセスによりシリコン基板上に実装されるオンチップトランシーバであり、概して、LO回路11、IFミキサ12、ドライブアンプ13、RFミキサ14、電力結合器15、低雑音アンプ16、メモリ17、およびコントローラ18を備え、送受信で共用されるアンテナ100が接続される。トランシーバ10は時間分割してTXまたはRXとして動作するようになっており、一例として、TXとして動作するTXモードではベースバンド信号(以下、BB信号と称する。)をアップコンバートしてアンテナ100からRF信号を送信し、RXとして動作するRXモードではアンテナ100が受信したRF信号をダウンコンバートしてIF信号を生成する。一例として、BB信号の周波数は5GHz以下、送受信されるRF信号の周波数は300GHz帯、受信したRF信号をダウンコンバートして得られるIF信号の周波数は18GHz帯以下である。
【0016】
LO回路11はLO信号を生成する回路要素である。一例として、LO回路11は、後述のIFミキサ12pで使用されるLO信号を生成するLO回路11pと、IFミキサ12nで使用されるLO信号を生成するLO回路11nとからなる。LO回路11pおよび11nはいずれも、バラン111、プリアンプ112、トリプラ113、ドライブアンプ114、および二つの直交ハイブリッド回路(ブランチラインカプラ)115を備えている。バラン111は図略の発振器から入力される不平衡のLO原信号(便宜的にこの信号をLOINと参照する。)平衡信号に変換する。一例として、LOINの周波数は、TXモードでは45GHzに、RXモードでは42GHzに切り替えられる。プリアンプ112はバラン111から出力される平衡信号を増幅する。トリプラ113はプリアンプ112の出力信号の周波数を3逓倍してTXモードでは135GHz、RXモードでは126GHzのLO信号を出力する。ドライブアンプ114はトリプラ113の出力信号を増幅する。二つの直交ハイブリッド回路115の一方にはトリプラ113の出力信号の正相信号が接続され、他方にはトリプラ113の出力信号の逆相信号が接続される。直交ハイブリッド回路115から0度、90度、180度、270度の各位相のLO信号が出力される。
【0017】
IFミキサ12は、BB信号およびLO信号が入力され、これら信号を混合して得られたIF信号にLO信号を重ね合わせた信号を出力する回路要素である。一例として、IFミキサ12は、BB信号の正相信号(便宜的にこの信号をBBTXと参照する。)が入力されるIFミキサ12pと、BB信号の逆相信号(便宜的にこの信号をバーBBTXと参照する。)が入力されるIFミキサ12nとからなる。より詳細には、BB信号はI信号およびQ信号からなる直交信号であり、IFミキサ12pにはBBTXIおよびBBTXQが入力され、IFミキサ12nにはバーBBTXIおよびバーBBTXQが入力される。IFミキサ12pは、BBTXIおよびBBTXQとLO回路11pから与えられる4相のLO信号とを混合して得られた信号にLO信号を重ね合わせた信号(便宜的にこの信号をLO+IFと参照する。)を出力する。IFミキサ12nは、バーBBTXIおよびバーBBTXQとLO回路11nから与えられる直交4相のLO信号とを混合して得られた信号にLO信号を重ね合わせた信号(便宜的にこの信号をLO-IFと参照する。)を出力する。LO+IFおよびLO-IFはいずれも平衡信号であり、LO+IFにおけるIF成分とLO-IFにおけるIF成分とは互いに逆相関係にある。なお、上記のような動作をするIFミキサ12pおよび12nとして、例えば、本発明者による特願2019-22518明細書に記載のSDBQM(Semi Double Balanced Quadrature Mixer)を利用することができる。
【0018】
ドライブアンプ13は、IFミキサ12の出力信号を増幅する回路要素である。一例として、ドライブアンプ13は、IFミキサ12pに接続されたドライブアンプ13pと、IFミキサ12nに接続されたドライブアンプ13nとからなる。ドライブアンプ13pおよび13nはいずれも、前段回路131および二つの後段回路132を備えている。前段回路131がIFミキサ12の出力信号を増幅してその増幅信号が二つの後段回路132に入力され、二つの後段回路132において前段回路131の出力信号が増幅される。このようにドライブアンプ13の出力は二重化されている。
【0019】
RFミキサ14は、TXモードではドライブアンプ13の出力信号を周波数逓倍して得られたRF信号を出力し、RXモードではドライブアンプ13によって増幅されたLO信号を周波数逓倍して得られたLO逓倍信号とアンテナ100が受信したRF信号とを混合してダウンコンバートして得られたIF信号を出力する回路要素である。一例として、RFミキサ14は、ドライブアンプ13pに接続されたRFミキサ14pと、ドライブアンプ13nに接続されたRFミキサ14nとからなる。RFミキサ14pおよび14nはいずれも二重化されており、ドライブアンプ13pおよび13nから二重化された出力信号を受け、二重化されたRF信号を出力する。
【0020】
図2は一例に係るRFミキサ14の要部回路図である。RFミキサ14は、ドレインどうしが接続された二つのnMOSFET(以下、トランジスタと称する。)141、RF信号を通過させるRFバンドパスフィルタ(以下、RFBPFと称する。)142、IF信号を通過させる二つのIFバンドパスフィルタ(以下、IFBPFと称する。)143、および二つのRF共振器144を備えている。二つのトランジスタ141のゲートは電圧V
Bでバイアスされ、ドライブアンプ13から出力される平衡信号がキャパシタ145を介して入力される。キャパシタ145においてドライブアンプ13の信号入力側の一端は所定の電圧でバイアスされており、トランジスタ141のゲートに入力される信号の振幅中心がプラス側にシフトされる。RFBPF142の一端は二つのトランジスタ141の共通ドレインに接続され、他端にRF信号が入出力される。より詳細には、RFBPF142はインダクタやキャパシタなどの受動素子で構成される。IFBPF143の一端はトランジスタ141のソースに接続され、他端からIF信号が出力される。より詳細には、IPBPF143はインダクタやキャパシタなどの受動素子で構成される。RF共振器144は、一端が接地された抵抗素子(ショートスタブ)およびキャパシタが並列接続されてなるLC回路であり、RF信号に共振するように特性調整されている。このようにRF共振器144がトランジスタ141のソースに接続されていることで、ソースから漏れ出るRF信号に対してソースが接地されているように働き、RF信号がIF信号の出力側に回り込まないようにしている。このように構成されたRFミキサ14は、TXモードではドライブアンプ13の出力信号の周波数を2逓倍したRF信号を出力する最終段のスクエアミキサとして動作し、RXモードではアンテナ100が受信したRF信号をダウンコンバートしてIF信号を出力する初段のダウンコンバージョンミキサとして動作する。
【0021】
図1へ戻り、電力結合器15は、全周長が7λ/2(ただし、λはRF信号波長である。)の環状伝送線路151で構成される回路要素であり、ラットレース回路とも呼ばれる。環状伝送線路151の半周上の2点にRFミキサ14pから出力されるRF信号(便宜的にこの信号を(LO+IF)
2と参照する。)がλ間隔で接続され、残りの半周上の2点にRFミキサ14nから出力されるRF信号(便宜的にこの信号を(LO-IF)
2と参照する。)がλ間隔で接続される。環状伝送線路151上で(LO+IF)
2の接続点からの距離と(LO-IF)
2の接続点から距離との差がλ/2である点にアンテナ100が接続され、隣接し合う(LO+IF)
2の接続点および(LO-IF)
2の接続点の間隔はλ/2である。より詳細には、アンテナ100は平衡アンテナであり、環状伝送線路151上で(LO+IF)
2の接続点からλ/4、かつ、(LO-IF)
2の接続点から3λ/4の位置と、(LO-IF)
2の接続点からλ/4、かつ、(LO+IF)
2の接続点から3λ/4の位置の2点(以下、これら点をΔポートと称する。)にアンテナ100が接続される。このように電力結合器15を構成する環状伝送線路151に同相のRF信号をλ間隔で接続することで、これらRF信号を電力結合した大きなパワーのRF信号をアンテナ100から放射することができ、また、RF信号に含まれる基本周波数の半分の不要な周波数成分、すなわち、RFミキサ14pから出力されるRF信号に含まれるLO+IF成分、およびRFミキサ14nから出力されるRF信号に含まれるLO-IF成分をキャンセルすることができる。
【0022】
低雑音アンプ(以下、LNAを称する。)16は、RXモードでRFミキサ14から出力されるIF信号を増幅する回路要素である。一例として、LNA16は、RFミキサ14pから出力されるIF信号の正相信号(便宜的にこの信号をIFRXと参照する。)を増幅するLNA16pと、RFミキサ14nから出力されるIF信号の逆相信号(便宜的にこの信号をバーIFRXと参照する。)を増幅するLNA16nとからなる。LNA16はRF信号の送信および受信の切り替えに連動して動作のオン/オフが切り替えられるようになっており、RXモードで動作し、TXモードで動作を停止する。
【0023】
LO回路11、IFミキサ12、ドライブアンプ13、およびRFミキサ14の各回路要素は動作状態が調整可能に構成されている。例えば、LO回路11pおよび10nは、入力されるLOINの位相を微調整可能になっている。IFミキサ12pおよび12nは、入力されるBB信号の位相およびI信号およびQ信号の位相差を微調整可能になっている。さらに、上記各回路要素のバイアス電圧が調整可能になっている。これら各回路要素に対する制御値は例えばルックアップテーブルの形で不揮発性のメモリ17に記憶されている。コントローラ18はメモリ17から各回路要素の制御値を読み出して各回路要素の動作を制御する。コントローラ18は例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。
【0024】
キャリブレーション装置20は、概して、信号強度検出部(以下、DTと称する)21、22pおよび22n、位相差検出部(以下、PDと称する。)23、およびプロセッサ24を備えている。キャリブレーション装置20は、トランシーバ10と同じチップに実装してもよいし、トランシーバ10と切り離して構成されキャリブレーション時にトランシーバ10に接続するものであってもよい。
【0025】
DT21は、トランシーバ10の電力結合器15の環状伝送線路151においてRFミキサ14pから出力されるRF信号の接続点およびRFミキサ14nから出力されるRF信号の接続点から等距離の点(以下、Σポートと称する。)における信号強度を検出する回路要素である。ΣポートではRFミキサ14pから出力されるRF信号およびRFミキサ14nから出力されるRF信号の同相成分が足され合う。すなわち、DT21はRFミキサ14pおよび14nから出力されるRF信号を足し合わせた信号の強度を検出する。DT22pおよび22nは、RFミキサ14pおよび14nにおいてRF信号をダウンコンバートして得られたダウンコンバート信号(便宜的にこれら信号をBBp、BBnと参照する。)の信号強度を検出する回路要素である。
【0026】
PD23は、BBpおよびBBnの位相差を検出する回路要素である。より詳細には、PD23は、図略の分周回路、位相比較器、およびTDC(Time to Digital Converter)を備えており、分周回路でBBpおよびBBnを分周し、位相比較器でこれら分周信号の位相差を比較し、TDCで位相差を数値変換して最終的にBBpおよびBBnの位相差を数値化して出力する。
【0027】
プロセッサ24は、トランシーバ10のメモリ17にアクセスしてルックアップテーブルを書き換えることができる。具体的に、トランシーバ10は、DT21、22pおよび22n、およびPD23の出力信号に基づいてトランシーバ10の各回路要素の最適な制御値を決定し、トランシーバ10のメモリ17に制御値を書き込む。プロセッサ24は例えばFPGAで構成される。
【0028】
≪双方向無線通信トランシーバの動作例≫
次に、トランシーバ10のTXモードおよびRXモードの一例を説明する。
図3はTXモードでのトランシーバ10の回路状態の一例を示す図である。TXモードでは、LO回路11に45GHzのLO
INが入力され、IFミキサ12pおよび12nにBB信号の正相信号および逆相信号がそれぞれ入力され、LNA16は動作を停止する。IFミキサ12pから135GHz帯のLO+IFが出力され、RFミキサ14pにおいて2逓倍されて二重化された270GHz帯の(LO+IF)
2が出力され、IFミキサ12nから135GHz帯のLO-IFが出力され、RFミキサ14nにおいて2逓倍されて二重化された270GHz帯の(LO-IF)
2が出力され、電力結合器15においてこれらRF信号が電力結合される。電力結合器15のΔポートにおいて、RFミキサ14pから出力されるRF信号およびRFミキサ14nから出力されるRF信号の同相成分は打ち消しあってキャンセルされ、逆相成分が足され合って残る。すなわち、電力結合器15のΔポートにおいて、(LO+IF)
2および(LO-IF)
2に含まれる同相成分LO
2およびIF
2はキャンセルされ、逆相成分LO・IFは足され合って残り、アンテナ100から270GHz帯のLO・IFが放射される。
【0029】
図4はRXモードでのトランシーバ10の回路状態の一例を示す図である。RXモードでは、LO回路11に42GHzのLO
INが入力され、BB信号が無信号(GND)にされ、LNA16が動作する。BB信号が無信号であることから、IFミキサ12pおよび12nから126GHzのLO信号が出力され、RFミキサ14pおよび14nにおいて2逓倍されて二重化された252GHzのLO逓倍信号(便宜的にこの信号をLO
2と参照する。)が出力される。RFミキサ14pおよび14nから出力されるLO
2は同相であるため電力結合器15のΔポートにおいてキャンセルされ、アンテナ100からLO
2は放射されない。逆に、アンテナ100が受信し、電力結合器15に入力された270GHz帯のRF信号がRFミキサ14pおよび14nに分配される。より詳細には、電力結合器15からRFミキサ14pにRF信号の正相信号が入力され、RFミキサ14nにRF信号の逆相信号が入力される。RFミキサ14pは、LO
2とアンテナ100が受信した270GHz帯のRF信号の正相信号とを混合してダウンコンバートして得られたIF
RXを出力する。RFミキサ4nは、LO
2とアンテナ100が受信した270GHz帯のRF信号の逆相信号とを混合してダウンコンバートして得られたバーIF
RXを出力する。RFミキサ14pおよび14nから出力されたIF
RXおよびバーIF
RXはLNA16で増幅される。
【0030】
≪キャリブレーション装置の動作例≫
次に、キャリブレーション装置20の動作例を説明する。
図5はRFミキサ14pおよび14nのダウンコンバート信号強度および位相差に基づくキャリブレーション中のトランシーバ10の回路状態の一例を示す図である。
図5においてキャリブレーション装置20のアクティブな回路要素および信号線は太線で描画している。プロセッサ24はIFミキサ12pおよび12nにBB信号の正相信号および逆相信号に代えて同相のテスト信号のI信号およびQ信号を入力してトランシーバ10をTXモードで動作させる。一例としてテスト信号は5GHz正弦波である。IFミキサ12pおよび12nに同相のテスト信号を入力することでRFミキサ14pおよび14nから出力される同相のRF信号は電力結合器15のΔポートにおいてキャンセルされる。したがって、トランシーバ10をTXモードが動作していてもキャリブレーション中はアンテナ100からRF信号が放射されることはない。一方、RFミキサ14pおよび14nにおいてRF信号がダウンコンバートされて5GHzの同相のBB
pおよびBB
nが出力される。DT22pおよび22nはRFミキサ14pおよび14nから出力されるBB
pおよびBB
nの信号強度を検出し、PD23はBB
pおよびBB
nの位相差を検出する。プロセッサ24は、DT22pおよび22nおよびPD23の出力を観測しながら、トランシーバ10の各回路要素の制御値、例えば、IFミキサ12pおよび12nにそれぞれ入力されるLO
INの位相、IFミキサ12pおよび12nにそれぞれ入力されるBB信号(キャリブレーション中はテスト信号)のIQ位相差などを変化させる。RFミキサ14pおよび14nの出力バランスがずれているとBB
pおよびBB
nの信号強度は一致せず、また、BB
pおよびBB
nの位相差はゼロならない。プロセッサ24は、BB
pおよびBB
nの信号強度が互いに等しくなり、かつ、それらの位相差がゼロになるとき、すなわち、RFミキサ14pおよび14nの出力バランスが取れたときの制御値を特定してトランシーバ10のメモリ17に記録する。
【0031】
図6はRFミキサ14pおよび14nのダウンコンバート信号強度および位相差に基づくキャリブレーション中のトランシーバ10の回路状態の別例を示す図である。
図6においてキャリブレーション装置20のアクティブな回路要素および信号線は太線で描画している。プロセッサ24は、上述したようにIFミキサ12pおよび12nにテスト信号のI信号およびQ信号を入力した状態でトランシーバ10の各回路要素の制御値を一通り変化させた後、テスト信号のI信号およびQ信号を入れ替えて再び上述のキャリブレーションを行う。このようにテスト信号のI信号とQ信号を入れ替えることで所望信号波をUSBからLSBへ移動させてキャリブレーションを行うことができ、幅広い帯域でRFミキサ14pおよび14nの出力バランスを取るようなキャリブレーションを行うことができる。
【0032】
図7は電力結合器15のΣポート信号強度に基づくキャリブレーション中のトランシーバ10の回路状態の一例を示す図である。
図7においてキャリブレーション装置20のアクティブな回路要素および信号線は太線で描画している。プロセッサ24はBB信号を無信号(GND)にしてトランシーバ10をTXモードで動作させる。BB信号を無信号にすることでRFミキサ14pおよび14nから出力されるLO逓倍信号(同相のLO
2)は電力結合器15のΔポートにおいてキャンセルされる。したがって、トランシーバ10をTXモードが動作していてもキャリブレーション中はアンテナ100からRF信号が放射されることはない。一方、環状伝送線路151のΣポートにおいてRFミキサ14pおよび14nから出力される同相のLO
2が足され合ったRF信号(便宜的にこの信号をRF
Σと参照する。)が観測される。DT21はΣポートにおける270GHzのRF
Σの信号強度を検出する。プロセッサ24は、DT21の出力を観測しながら、トランシーバ10の各回路要素の制御値、例えば、バイアス電圧などを変化させる。トランシーバ10の各回路要素の制御値を変化させることでRF
Σの信号強度も変化するが、RFミキサ14pおよび14nの出力バランスが取れているときにRF
Σの信号強度が最大化すると考えられる。プロセッサ24は、RF
Σの信号強度が最大となるとき、すなわち、RFミキサ14pおよび14nの出力バランスが取れたときの制御値を特定してトランシーバ10のメモリ17に記録する。
【0033】
≪効果≫
本実施形態に係るキャリブレーション装置20はトランシーバ10における電力結合器15に接続されたRFミキサ14pおよび14nの出力バランスを取るようなキャリブレーションを行うことができる。そして、キャリブレーション装置20によりキャリブレーションされたトランシーバ10において出力パワーを最大化することができる。
【0034】
≪変形例≫
キャリブレーション装置20のキャリブレーション対象となるトランシーバ10は上記構成に限られず下記のように変形してもよい。例えば、BB信号は直交信号でなくてもよく、IFミキサ12もIQミキサで構成しなくてもよい。すなわち、IFミキサ12pにBB
TXが入力され、IFミキサ12nにバーBB
TXが入力されるようにしてもよい。その場合、IFミキサ12pおよび12nとして、例えば、本発明者による特願2019-22518明細書に記載のSDBM(Semi Double Balanced Mixer)を利用することができる。また、
図6に示したキャリブレーション手順は不要である。
【0035】
RFミキサ14pおよび14nから出力されるRF信号は二重化されていなくてもよい。すなわち、環状伝送線路151の全周長を3λ/2にして、RFミキサ14pおよび14nから出力されるRF信号を互いにλ/2の間隔を空けて環状伝送線路151に接続してもよい。逆に、RFミキサ14pおよび14nから出力されるRF信号を三重化以上にしてもよい。RFミキサ14pおよび14nから出力されるRF信号をn重化(ただし、nは2以上の整数である。)する場合、環状伝送線路151の全周長を(4n-1)/2にして、環状伝送線路151の半周上のn点にλ間隔でミキサ14pから出力されるn重化されたRF信号を接続し、環状伝送線路151の残りの半周上のn点にλ間隔でRFミキサ14nから出力されるn重化されたRF信号を接続し、隣接し合うRFミキサ14pのRF信号の接続点およびRFミキサ14nのRF信号の接続点の間隔をλ/2空けるようにすればよい。
【0036】
RFミキサ14は入力されたIF信号の周波数を2逓倍するダブラに限られず、3逓倍するトリプラで構成してもよい。
【0037】
また、キャリブレーション装置20は、トランシーバ10およびその変形例に限られず、TXの最終段の周波数逓倍ミキサ対が電力結合器に接続されたタイプのトランシーバ、例えば、上記特許文献1に開示されたトランシーバにも広く適用可能である。周波数逓倍ミキサ対からダウンコンバートした信号が出力される構成になっていなければ
図5および
図6に示したキャリブレーション手順は不要であり、
図7に示したキャリブレーション手順を実行すればよい。
【0038】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
10 双方向無線通信トランシーバ
11 LO回路
12 IFミキサ(第1のミキサ)
13 ドライブアンプ
14 RFミキサ(第2のミキサ)
15 電力結合器
151 環状伝送線路
17 メモリ
18 コントローラ
100 アンテナ
20 キャリブレーション装置
21 信号強度検出部(第1の信号強度検出部)
22p 信号強度検出部(第2の信号強度検出部)
22n 信号強度検出部(第3の信号強度検出部)
23 位相差検出部
24 プロセッサ