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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006396
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】無線送信装置、及び無線送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20220105BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20220105BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
H03F3/24
H03F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108594
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸川 喜代彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
【テーマコード(参考)】
5J500
5K060
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC25
5J500AC33
5J500AC81
5J500AF10
5J500AK45
5J500AK53
5J500AK55
5J500AS14
5J500AT01
5J500AT02
5J500AT03
5J500AT07
5J500NG01
5K060CC04
5K060FF06
5K060HH01
5K060HH11
5K060HH14
5K060KK03
5K060KK04
(57)【要約】
【課題】スペクトラム信号を分割して周波数軸上で分散配置した上で無線信号を送信する無線送信装置において、分割数が変化したとしても、通信品質を劣化させずに無線信号の送信を行うこと。
【解決手段】所定の分割数に一致する数の複数のバンドパスフィルタであってバンドパスフィルタの帯域の一部が重複するバンドパスフィルタにより、スペクトラム信号をフィルタリングして複数のサブスペクトラム信号を生成し、生成したサブスペクトラム信号の各々の帯域が重複しないようにサブスペクトラム信号を周波数軸上で分散配置し、分散配置したサブスペクトラム信号を合成して時間領域に変換することによりスペクトラム分割合成変調信号を生成する。所定の分割数ごとのスペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比と、送信アンプ部の増幅特性とに基づいて得られる送信アンプ部の有効動作点で送信アンプ部を動作させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データが変調された変調信号を周波数領域に変換することで生成されるスペクトラム信号を、所定の分割数に一致する数の複数のバンドパスフィルタであってバンドパスフィルタの帯域の一部が重複するバンドパスフィルタによりフィルタリングして複数のサブスペクトラム信号を生成し、前記サブスペクトラム信号の各々の帯域が重複しないように各サブスペクトラム信号を周波数軸上で分散配置し、分散配置した各サブスペクトラム信号を合成して時間領域に変換することによりスペクトラム分割合成変調信号を生成する送信フィルタバンク部と、
前記スペクトラム分割合成変調信号を増幅する送信アンプ部と、
前記送信アンプ部が増幅した前記スペクトラム分割合成変調信号を無線信号として送信するアンテナと、
前記所定の分割数ごとの前記スペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比と、前記送信アンプ部の増幅特性とに基づいて得られる前記送信アンプ部の有効動作点で前記送信アンプ部を動作させる最適動作点検出部と、
を備える無線送信装置。
【請求項2】
前記送信アンプ部の有効動作点の位置は、前記送信アンプ部が線形領域で増幅を行う位置である、
請求項1に記載の無線送信装置。
【請求項3】
前記送信アンプ部の有効動作点の位置は、さらに前記送信アンプ部の入力電力値に対して最大の出力電力値が得られる位置である、
請求項2に記載の無線送信装置。
【請求項4】
前記所定の分割数は、時間とともに変化する、又は、任意のタイミングで変化する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線送信装置。
【請求項5】
送信データが変調された変調信号を周波数領域に変換することで生成されるスペクトラム信号を、所定の分割数に一致する数の複数のバンドパスフィルタであってバンドパスフィルタの帯域の一部が重複するバンドパスフィルタによりフィルタリングして複数のサブスペクトラム信号を生成し、前記サブスペクトラム信号の各々の帯域が重複しないように各サブスペクトラム信号を周波数軸上で分散配置し、分散配置した各サブスペクトラム信号を合成して時間領域に変換することによりスペクトラム分割合成変調信号を生成し、
所定の分割数ごとの前記スペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比と、送信アンプ部の増幅特性とに基づいて得られる前記送信アンプ部の有効動作点で前記送信アンプ部を動作させ、
前記スペクトラム分割合成変調信号を増幅し、
前記送信アンプ部が増幅した前記スペクトラム分割合成変調信号を無線信号として送信する、
無線送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信装置、及び無線送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速伝送への需要の増大に伴い、割り当てられた周波数帯域内に多数のスペクトラムを効率よく配置することで、周波数帯域を有効利用することが必要とされている。周波数帯域を有効利用することが必要とされているケースとして、例えば、衛星通信やセルラーシステムなどがある。
【0003】
例えば、図14及び図15は、衛星通信等の中継局101を介し、基地局100,100aと、端末局102-1,102-2との間で無線通信を行う無線通信システムの概略を示す図である。なお、図14及び図15において、実線の矢印は、通信回線を示しており、破線の矢印は、制御回線を示している。
【0004】
図14において、基地局100に設置される回線制御装置110は、周波数軸上の周波数帯域の使用状況を把握しており、制御回線を通じて、端末局102-1,102-2の各々に対して、周波数帯域の割り当てや解放を行う。なお、回線制御装置110は、図15に示すように、基地局100aとは別の独立した回線制御局103に設置されていてもよい。
【0005】
図16は、携帯電話などのセルラーシステムにおける無線通信システム120の概略図と、無線通信システム120に存在する、ある1つのセル120-1の拡大図である。端末局132-1,132-2は、セル120-1内において基地局(ノード局ともいう)130に設置される回線制御装置131から周波数帯域の割り当てを受ける。なお、無線通信システム120が、マクロセルとマイクロセルなど、セルが重畳する無線通信システムである場合、重畳しているセルの各々に設置されている回線制御装置131が連携動作をする場合もある。
【0006】
割り当てられた周波数帯域内に多数のスペクトラム信号を効率よく配置する無線通信システムとして、図17に示す無線送信装置140と、図18に示す無線受信装置160とを備える無線通信システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
図17に示す無線送信装置140において、4つの分割フィルタ部153-1~153-4は、図19(a)の破線で示す同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数f4-1,f4-2,f4-3,f4-4を有するバンドパスフィルタを備えている。分割フィルタ部153-1~153-4の各々は、図19(a)の実線で示される周波数変換部152が生成するスペクトラム信号に対して各々のバンドパスフィルタを適用して、図19(b)に示す4つのサブスペクトラム信号を生成する。以下、サブスペクトラム信号への分割をスペクトラム分割ともいう。
【0008】
周波数シフト部154-1~154-4は、図19(c)に示すように4つのサブスペクトラム信号の各々の帯域が周波数軸上で重ならないようにサブスペクトラム信号をシフトして分散配置する。加算部155は、分散配置されたサブスペクトラム信号を加算、すなわち合成してスペクトラム分割合成信号を生成する。逆周波数変換部156は、スペクトラム分割合成信号を時間領域に変換してスペクトラム分割合成変調信号を生成する。スペクトラム分割合成変調信号は、送信アンプ部143によって増幅された後、アンテナ144によって無線信号として空中に放射される。
【0009】
図18に示す無線受信装置160において、4つの抽出フィルタ部173-1~173-4は、図20(a)の破線で示す同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数fs4-1,fs4-2,fs4-3,fs4-4を有するバンドパスフィルタを備えている。ここで、中心周波数fs4-1,fs4-2,fs4-3,fs4-4は、無線送信装置140の周波数シフト部154-1~154-4によってシフトされた後のサブスペクトラム信号の各々の中心周波数である。抽出フィルタ部173-1~173-4のバンドパスフィルタの帯域幅は、図20(a)の実線で示される周波数変換部172が生成するスペクトラム分割合成信号の4つの成分の各々を抽出できる広さの帯域幅であればよく、互いの帯域幅が重ならないように予め定められる。
【0010】
抽出フィルタ部173-1~173-4は、図20(a)の実線で示されるスペクトラム分割合成信号に対して各々のバンドパスフィルタを適用して、4つのサブスペクトラム信号を抽出する。周波数シフト部174-1~174-4は、抽出されたサブスペクトラム信号の各々に対して、無線送信装置140の周波数シフト部154-1~154-4の各々が適用したシフト量を逆方向に適用する。これにより、サブスペクトラム信号の各々の中心周波数がf4-1,f4-2,f4-3,f4-4となり、スペクトラム信号の帯域幅内に収まることになる。
【0011】
周波数シフト部174-1~174-4によってシフトされたサブスペクトラム信号が、加算部175によって合成されることで、図20(c)に示すスペクトラム信号が生成される。スペクトラム信号が逆周波数変換部176によって時間領域に変換され、更に、復調部164によって復調されることにより受信データが得られることになる。これにより、不連続な空き周波数帯域を有効利用してデータの送信を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】阿部順一、中平勝也、杉山隆利、「帯域分散伝送におけるブラインド型位相補償方式の実験的検証」、信学技報、電子情報通信学会、2011年12月、vol. 111, no. 336, SAT2011-46, pp. 41-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、信号電力の指標値としてPAPR(Peak to Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)という指標値が知られている。例えば、図21は、送信アンプ部143の入力信号であるスペクトラム分割合成変調信号の電力の時間的変化を示したグラフであり、グラフの符号200で示す位置の電力値がピーク電力値であり、符号201で示す位置の電力値が平均電力値である。
【0014】
図22は、無線送信装置140の変調部141が行う変調方式としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)が適用され、時間窓処理部151が適用する時間窓関数のロールオフ率として「0.2」が適用された場合の分割数ごとのスペクトラム分割合成変調信号のPAPRの値を示したグラフである。分割数が「0」のスペクトラム分割合成変調信号とは、変調部141が出力する変調信号である。当該グラフに示されるように、分割数が「0」の場合のPAPRと比較すると、分割数を増やすごとに、PAPRが増大していることが分かる。
【0015】
図23及び図24は、無線送信装置140が備える送信アンプ部143の入力電力値と、増幅後の出力電力値との関係である増幅特性を示したグラフである。一般的な送信アンプ部143では、分割がない状態で入力電力値がピークになった場合に線形領域で動作するように、例えば、図23の符号300で示す位置にピーク電力動作点が定められている。分割数が増えるとPAPRが増大するため符号401の矢印で示すように入力電力値が増加し、ピーク電力動作点が符号301で示す位置に移動してしまう。符号301で示す動作点では、線形領域で増幅を行うことができなくなり、送信アンプ部143が出力する信号に非線形歪みが生じ、通信品質が劣化する。そのため、より大型の増幅器を送信アンプ部143に適用しなければならないという問題がある。
【0016】
これに対して、分割数が多い状態で入力電力値がピークになった場合に線形領域で動作するように図24の符号302で示す位置にピーク電力時の動作点を定めると、平均電力時の動作点は、符号304で示す位置となる。ここで、分割数が少ない状態で入力電力値がピークになった場合に線形領域で動作するように符号302で示す位置にピーク動作点を定めると、分割数が少ない方が、バックオフ値が小さくなるため、平均電力時の動作点は、符号303で示す位置となる。しかしながら、分割数が多い状態で入力電力値がピークになった場合に線形領域で動作するように符号302で示す位置にピーク電力時の動作点を定めていると、分割数が減少するとPAPRが減少するため、分割数が少ない場合であっても平均電力時の動作点は符号304で示す位置に移動してしまう。この場合、線形領域で増幅を行うことができるが、符号500の矢印で示すようにスペクトラム分割合成変調信号を増幅して得られる送信無線信号の電力が低下してしまうという問題がある。
【0017】
分割数を固定にして運用する場合には、当該分割数における適切な動作点に固定しておけば、上記のような問題は生じない。しかしながら、運用場面によっては、任意のタイミングで分割数を変えたり、また、分割数を時間の経過とともに変動させたりして運用したい場合もある。このような場合、従来の無線通信装置は、分割数に応じて動作点が適切になるように追随させることができないという問題を有している。
【0018】
上記事情に鑑み、本発明は、スペクトラム信号を分割して周波数軸上で分散配置した上で無線信号を送信する無線送信装置において、分割数が変化したとしても、通信品質を劣化させずに無線信号の送信を行うことができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、送信データが変調された変調信号を周波数領域に変換することで生成されるスペクトラム信号を、所定の分割数に一致する数の複数のバンドパスフィルタであってバンドパスフィルタの帯域の一部が重複するバンドパスフィルタによりフィルタリングして複数のサブスペクトラム信号を生成し、前記サブスペクトラム信号の各々の帯域が重複しないように各サブスペクトラム信号を周波数軸上で分散配置し、分散配置した各サブスペクトラム信号を合成して時間領域に変換することによりスペクトラム分割合成変調信号を生成する送信フィルタバンク部と、前記スペクトラム分割合成変調信号を増幅する送信アンプ部と、前記送信アンプ部が増幅した前記スペクトラム分割合成変調信号を無線信号として送信するアンテナと、前記所定の分割数ごとの前記スペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比と、前記送信アンプ部の増幅特性とに基づいて得られる前記送信アンプ部の有効動作点で前記送信アンプ部を動作させる最適動作点検出部と、を備える無線送信装置である。
【0020】
本発明の一態様は、送信データが変調された変調信号を周波数領域に変換することで生成されるスペクトラム信号を、所定の分割数に一致する数の複数のバンドパスフィルタであってバンドパスフィルタの帯域の一部が重複するバンドパスフィルタによりフィルタリングして複数のサブスペクトラム信号を生成し、前記サブスペクトラム信号の各々の帯域が重複しないように各サブスペクトラム信号を周波数軸上で分散配置し、分散配置した各サブスペクトラム信号を合成して時間領域に変換することによりスペクトラム分割合成変調信号を生成し、所定の分割数ごとの前記スペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比と、送信アンプ部の増幅特性とに基づいて得られる前記送信アンプ部の有効動作点で前記送信アンプ部を動作させ、前記スペクトラム分割合成変調信号を増幅し、前記送信アンプ部が増幅した前記スペクトラム分割合成変調信号を無線信号として送信する、無線送信方法である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、スペクトラム信号を分割して周波数軸上で分散配置した上で無線信号を送信する無線送信装置において、分割数が変化したとしても、通信品質を劣化させずに無線信号の送信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態による無線送信装置の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態による無線受信装置の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態における2分割の場合のスペクトラム分割合成信号の生成過程を示す図である。
図4】本実施形態における4分割の場合のスペクトラム分割合成信号の生成過程を示す図である。
図5】本実施形態における8分割の場合のスペクトラム分割合成信号の生成過程を示す図である。
図6】本実施形態の無線送信装置の記憶部が記憶するテーブルの構成を示す図である。
図7】本実施形態の無線送信装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本実施形態の無線受信装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本実施形態の効果を説明するためのグラフ(その1)である。
図10】本実施形態の無線送信装置における動作点の調整の過程を示すグラフ(その1)である。
図11】本実施形態の効果を説明するためのグラフ(その2)である。
図12】本実施形態の無線送信装置における動作点の調整の過程を示すグラフ(その2)である。
図13】本実施形態の無線送信装置の他の構成例を示すブロック図である。
図14】衛星通信等に適用される無線通信システムの構成を示すブロック図(その1)である。
図15】衛星通信等に適用される無線通信システムの構成を示すブロック図(その2)である。
図16】セルラーシステムに適用される無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図17】スペクトラム分割合成信号を利用して送信を行う無線送信装置の構成を示すブロック図である。
図18図17に示す無線送信装置が送信する無線信号を受信する無線受信装置の構成を示すブロック図である。
図19図17に示す無線送信装置において行われるスペクトラム分割合成信号の生成過程を示す図である。
図20図18に示す無線受信装置において行われるスペクトラム信号の復元過程を示す図である。
図21】スペクトラム分割合成変調信号の電力の時間的変化を示すグラフである。
図22】スペクトラム分割合成変調信号における分割数とPAPRとの関係を示すグラフである。
図23図17の無線送信装置の送信アンプ部の増幅特性を示すグラフ(その1)である。
図24図17の無線送信装置の送信アンプ部の増幅特性を示すグラフ(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(無線送信装置の構成)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態による無線送信装置1の構成を示すブロック図である。無線送信装置1は、変調部11、送信フィルタバンク部12、送信アンプ部13、アンテナ14、最適動作点検出部15、及び記憶部16を備える。
【0024】
変調部11は、送信データを取り込み、取り込んだ送信データを、予め定められる変調方式で変調して変調信号を生成する。予め定められる変調方式としては、例えば、QPSKなどが適用される。
【0025】
送信フィルタバンク部12は、時間窓処理部20、周波数変換部21、分岐処理部22、計時部23、2つで1組の分割フィルタ部24-2-1,24-2-2、4つで1組の分割フィルタ部24-4-1~24-4-4、8つで1組の分割フィルタ部24-8-1~24-8-8、2つで1組の周波数シフト部25-2-1,25-2-2、4つで1組の周波数シフト部25-4-1~25-4-4、8つで1組の周波数シフト部25-8-1~25-8-8、加算部26-2,26-4,26-8、逆周波数変換部27を備える。
【0026】
なお、以下の説明において、分割フィルタ部24-2-1,24-2-2をまとめて示す場合、分割フィルタ部24-2として示し、分割フィルタ部24-4-1~24-4-4をまとめて示す場合、分割フィルタ部24-4として示し、分割フィルタ部24-8-1~24-8-8をまとめて示す場合、分割フィルタ部24-8として示す。同様に、周波数シフト部25-2-1,25-2-2をまとめて示す場合、周波数シフト部25-2として示し、周波数シフト部25-4-1~25-4-4をまとめて示す場合、周波数シフト部25-4として示し、周波数シフト部25-8-1~25-8-8をまとめて示す場合、周波数シフト部25-8として示す。
【0027】
時間窓処理部20は、変調部11が出力する変調信号に対して、予め定められるロールオフ率の時間窓関数を適用して変調信号の一部を切り出す。時間窓処理部20による変調信号の一部の切り出しは、位置をずらしながら繰り返し行われる。時間窓関数によって切り出される変調信号の長さは、周波数変換部21が行うFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)のサイズに一致するように予め定められている。
【0028】
周波数変換部21は、時間窓処理部20が切り出した変調信号を周波数領域に変換してスペクトラム信号を生成する。周波数領域への変換に適用される演算は、例えば、FFTが適用されるが、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)が適用されてもよい。
【0029】
計時部23は、例えば、時計であり、時刻を示す情報を継続して分岐処理部22に出力する。
【0030】
分岐処理部22は、内部の記憶領域に、時刻ごとに、スペクトラム信号を何個のサブスペクトラム信号に分割するかを示すスケジュール情報を予め記憶する。ここで、分割数は、2分割か、4分割か、8分割のいずれかであるものとし、スケジュール情報には、例えば、0:00~0:10までは、2分割、0:10~0:20までは、4分割、0:20~0:30までは、8分割にするというような情報が定義される。なお、分割数を変化させる時間間隔は、上記のように周期的でなくてもよい。
【0031】
分岐処理部22は、計時部23が出力する時刻を示す情報と、スケジュール情報とに基づいて、計時部23が出力する時刻における分割数を特定する。分岐処理部22は、特定した分割数にしたがって、スペクトラム信号を分岐して出力する。また、分岐処理部22は、特定した分割数を最適動作点検出部15に出力する。
【0032】
図3図5を参照しつつ、分割フィルタ部24-2,24-4,24-8の各々、及び周波数シフト部25-2,25-4,25-8の各々の構成について説明する。なお、図3(a)、図4(a)、図5(a)の実線は、周波数変換部21が生成するスペクトラム信号を示している。
【0033】
分割フィルタ部24-2-1,24-2-2の各々は、例えば、図3(a)の破線で示す同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数f2-1,f2-2を有するバンドパスフィルタを備えている。分割フィルタ部24-2-1,24-2-2の各々が備える2つのバンドパスフィルタによりスペクトラム信号の帯域幅を適切にカバーする必要がある。そのため、2つのバンドパスフィルタの帯域の一部を重複させるように各々の中心周波数f2-1,f2-2と帯域幅が予め定められる。分割フィルタ部24-2-1,24-2-2の各々は、スペクトラム信号に各々のバンドパスフィルタを適用して図3(b)に示す2つのサブスペクトラム信号を生成する。
【0034】
分割フィルタ部24-4-1~24-4-4の各々は、例えば、図4(a)の破線で示す同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数f4-1~f4-4を有するバンドパスフィルタを備えている。分割フィルタ部24-4-1~24-4-4の各々が備える4つのバンドパスフィルタによりスペクトラム信号の帯域幅を適切にカバーする必要がある。そのため、4つのバンドパスフィルタの中の隣接するバンドパスフィルタの帯域の一部を重複させるように各々の中心周波数f4-1~f4-4と帯域幅が予め定められる。分割フィルタ部24-4-1~24-4-4の各々は、スペクトラム信号に各々のバンドパスフィルタを適用して図4(b)に示す4つのサブスペクトラム信号を生成する。
【0035】
分割フィルタ部24-8-1~24-8-8の各々は、例えば、図5(a)の破線で示す同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数f8-1~f8-8を有するバンドパスフィルタを備えている。分割フィルタ部24-8-1~24-8-4の各々が備える8つのバンドパスフィルタによりスペクトラム信号の帯域幅を適切にカバーする必要がある。そのため、8つのバンドパスフィルタの中の隣接するバンドパスフィルタの帯域の一部を重複させるように各々の中心周波数f8-1~f8-8と帯域幅が予め定められる。分割フィルタ部24-8-1~24-8-8の各々は、スペクトラム信号に各々のバンドパスフィルタを適用して図5(b)に示す8つのサブスペクトラム信号を生成する。
【0036】
なお、バンドパスフィルタの帯域の一部を重複させる際のバンドパスフィルタの各々が交差する位置は、例えば、3dB減衰点である。
【0037】
周波数シフト部25-2-1,25-2-2の各々は、各々が接続する分割フィルタ部24-2-1,24-2-2が出力するサブスペクトラム信号を取り込み、図3(c)に示すようにサブスペクトラム信号の各々の帯域が周波数軸上で重ならないようにサブスペクトラム信号をシフトして分散配置する。図3(c)では、シフト後のサブスペクトラム信号の中心周波数をfs2-1,fs2-2として示している。
【0038】
周波数シフト部25-4-1~25-4-4の各々は、各々が接続する分割フィルタ部24-4-1~24-4-4が出力するサブスペクトラム信号を取り込み、図4(c)に示すようにサブスペクトラム信号の各々の帯域が周波数軸上で重ならないようにサブスペクトラム信号をシフトして分散配置する。図4(c)では、シフト後のサブスペクトラム信号の中心周波数をfs4-1~fs4-4として示している。
【0039】
周波数シフト部25-8-1~25-8-8の各々は、各々が接続する分割フィルタ部24-8-1~24-8-8が出力するサブスペクトラム信号を取り込み、図5(c)に示すようにサブスペクトラム信号の各々の帯域が周波数軸上で重ならないようにサブスペクトラム信号をシフトして分散配置する。図5(c)では、シフト後のサブスペクトラム信号の中心周波数をfs8-1~fs8-8として示している。
【0040】
周波数シフト部25-2-1,25-2-2,25-4-1~25-4-4,25-8-1~25-8-8の各々のシフト量は、シフト後のサブスペクトラム信号の各々の帯域が周波数軸上で重ならないよう、かつ無線通信に割り当てられた周波数帯域内に収まるように予め定められる。
【0041】
加算部26-2は、周波数シフト部25-2-1,25-2-2によってシフトされた2つのサブスペクトラム信号を加算、すなわち合成してスペクトラム分割合成信号を生成する。加算部26-4は、周波数シフト部25-4-1~25-4-4によってシフトされた4つのサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム分割合成信号を生成する。加算部26-8は、周波数シフト部25-8-1~25-8-8によってシフトされた8つのサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム分割合成信号を生成する。
【0042】
逆周波数変換部27は、加算部26-2,26-4,26-8が出力するスペクトラム分割合成信号を時間領域に変換してスペクトラム分割合成変調信号を生成する。時間領域への変換に適用される演算は、例えば、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)が適用されるが、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)が適用されてもよい。
【0043】
記憶部16は、例えば、図6に示すテーブルを記憶する。図6に示すテーブルは、「分割数」、「PAPR」の項目を有している。「分割数」には、分岐処理部22において特定する分割数に対応する「2」,「4」,「8」の数値が書き込まれる。「PAPR」の項目には、例えば、図22に示した事前に測定した分割数ごとのスペクトラム分割合成変調信号のPAPRの値が「dB(デシベル)」の単位で書き込まれる。なお、PAPRの値は、電力ディメンジョンである。
【0044】
最適動作点検出部15は、分岐処理部22が特定した分割数に対応する最適な送信アンプ部13の動作点(有効動作点)を検出し、検出した動作点で送信アンプ部13を動作させる。具体的には、最適動作点検出部15は、記憶部16が記憶するテーブルから分岐処理部22が特定した分割数に対応するPAPRの値を読み出す。最適動作点検出部15は、読み出したPAPRの値を送信アンプ部13に出力する。
【0045】
送信アンプ部13は、最適動作点検出部15が出力するPAPRの値に基づいて動作点を最適な位置にした上で、逆周波数変換部27が出力するスペクトラム分割合成変調信号を増幅する。アンテナ14は、増幅されたスペクトラム分割合成変調信号を無線信号として空中に放射して送信する。
【0046】
(無線受信装置の構成)
図2は、本発明の実施形態による無線受信装置2の構成を示すブロック図である。無線受信装置2は、アンテナ31、受信アンプ部32、受信フィルタバンク部33、及び復調部34を備える。アンテナ31は、無線送信装置1が送信する無線信号を受信することにより得られる受信信号を出力する。受信アンプ部32は、受信信号を増幅する。
【0047】
受信フィルタバンク部33は、時間窓処理部40、周波数変換部41、分岐処理部42、計時部43、2つで1組の抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2、4つで1組の抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4、8つで1組の抽出フィルタ部44-8-1~44-8-8、2つで1組の周波数シフト部45-2-1,45-2-2、4つで1組の周波数シフト部45-4-1~45-4-4、8つで1組の周波数シフト部45-8-1~45-8-8、加算部46-2,46-4,46-8、逆周波数変換部47を備える。
【0048】
なお、以下の説明において、抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2をまとめて示す場合、抽出フィルタ部44-2として示し、抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4をまとめて示す場合、抽出フィルタ部44-4として示し、抽出フィルタ部44-8-1~44-8-8をまとめて示す場合、抽出フィルタ部44-8として示す。同様に、周波数シフト部45-2-1,45-2-2をまとめて示す場合、周波数シフト部45-2として示し、周波数シフト部45-4-1~45-4-4をまとめて示す場合、周波数シフト部45-4として示し、周波数シフト部45-8-1~45-8-8をまとめて示す場合、周波数シフト部45-8として示す。
【0049】
時間窓処理部40は、受信アンプ部32によって増幅された受信信号に対して、予め定められるロールオフ率の時間窓関数を適用して受信信号の一部を切り出す。時間窓処理部40による受信信号の一部の切り出しは、位置をずらしながら繰り返し行われる。時間窓関数によって切り出される受信信号の長さは、周波数変換部41が行うFFTのサイズに一致するように予め定められている。
【0050】
周波数変換部41は、時間窓処理部40が切り出した受信信号を周波数領域に変換する。周波数領域に変換されることにより、無線送信装置1の逆周波数変換部27によって時間領域に変換される前のスペクトラム分割合成信号が得られることになる。なお、周波数領域への変換に適用される演算は、例えば、FFTが適用されるが、DFTが適用されてもよい。
【0051】
計時部43は、例えば、時計であり、無線送信装置1の計時部23の時刻に同期しており、時刻を示す情報を継続して分岐処理部42に出力する。
【0052】
分岐処理部42は、内部の記憶領域に、無線送信装置1の分岐処理部22が内部の記憶領域に記憶させているスケジュール情報と同一のスケジュール情報を予め記憶する。
【0053】
分岐処理部42は、計時部43が出力する時刻を示す情報と、スケジュール情報に基づいて、計時部43が出力する時刻における分割数を特定する。分岐処理部42は、特定した分割数にしたがって、スペクトラム分割合成信号を分岐して、2分割の場合は抽出フィルタ部44-2に、4分割の場合は抽出フィルタ部44-4に、8分割の場合は抽出フィルタ部44-8に出力する。
【0054】
抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2の各々は、同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数fs2-1,fs2-2を有するバンドパスフィルタを備えており、スペクトラム分割合成信号にバンドパスフィルタを適用して2つのサブスペクトラム信号を抽出する。抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2の各々が備えるバンドパスフィルタの形状と帯域幅は、図3(c)に示されるシフト後の2つのサブスペクトラム信号の各々を抽出できる形状及び帯域幅であればよく、互いの帯域幅が重ならないように形状及び帯域幅が予め定められる。
【0055】
抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4の各々は、同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数fs4-1~fs4-4を有するバンドパスフィルタを備えており、スペクトラム分割合成信号にバンドパスフィルタを適用して4つのサブスペクトラム信号を抽出する。抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4の各々が備えるバンドパスフィルタの形状と帯域幅は、図4(c)に示されるシフト後の4つのサブスペクトラム信号の各々を抽出できる形状及び帯域幅であればよく、互いの帯域幅が重ならないように形状及び帯域幅が予め定められる。
【0056】
抽出フィルタ部44-8-1~44-8-8の各々は、同一の帯域幅の形状であってそれぞれが異なる中心周波数fs8-1~fs8-8を有するバンドパスフィルタを備えており、スペクトラム分割合成信号にバンドパスフィルタを適用して8つのサブスペクトラム信号を抽出する。抽出フィルタ部44-8-1~44-8-8の各々が備えるバンドパスフィルタの形状と帯域幅は、図5(c)に示されるシフト後の8つのサブスペクトラム信号の各々を抽出できる形状及び帯域幅であればよく、互いの帯域幅が重ならないように形状及び帯域幅が予め定められる。
【0057】
周波数シフト部45-2-1,45-2-2の各々は、各々が接続する抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2が抽出したサブスペクトラム信号に対して、無線送信装置1の周波数シフト部25-2-1,25-2-2の各々が適用したシフト量を逆方向に適用して周波数軸上でシフトする。これにより、抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2の各々が抽出したサブスペクトラム信号の中心周波数の位置がそれぞれf2-1,f2-2となり、図3(b)に示す2つのサブスペクトラム信号が得られることになる。
【0058】
周波数シフト部45-4-1~45-4-4の各々は、各々が接続する抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4が抽出したサブスペクトラム信号に対して、無線送信装置1の周波数シフト部25-4-1~25-4-4の各々が適用したシフト量を逆方向に適用して周波数軸上でシフトする。これにより、抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4の各々が抽出したサブスペクトラム信号の中心周波数の位置がそれぞれf4-1~f4-4となり、図4(b)に示す4つのサブスペクトラム信号が得られることになる。
【0059】
周波数シフト部45-8-1~45-8-8の各々は、各々が接続する抽出フィルタ部44-8-1~44-8-8が抽出したサブスペクトラム信号に対して、無線送信装置1の周波数シフト部25-8-1~25-8-8の各々が適用したシフト量を逆方向に適用して周波数軸上でシフトする。これにより、抽出フィルタ部44-8-1~44-8-4の各々が抽出したサブスペクトラム信号の中心周波数の位置がそれぞれf8-1~f8-8となり、図5(b)に示す8つのサブスペクトラム信号が得られることになる。
【0060】
なお、周波数シフト部45-2,45-4,45-8の各々のシフト量は、無線送信装置1の周波数シフト部25-2,25-4,25-8の各々のシフト量が予め定められる際に、周波数シフト部25-2,25-4,25-8の各々のシフト量とは逆方向のシフト量になるように予め定められる。
【0061】
加算部46-2は、周波数シフト部45-2-1,45-2-2によってシフトされたサブスペクトラム信号を加算、すなわち合成してスペクトラム信号を生成する。加算部46-4は、周波数シフト部45-4-1~45-4-4によってシフトされたサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム信号を生成する。加算部46-8は、周波数シフト部45-8-1~45-8-8によってシフトされたサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム信号を生成する。
【0062】
逆周波数変換部47は、加算部46-2,46-4,46-8が出力するスペクトラム信号を時間領域に変換して変調信号を生成する。時間領域への変換に適用される演算は、例えば、IFFTが適用されるが、IDFTが適用されてもよい。
【0063】
復調部34は、無線送信装置1の変調部11が適用した変調方式に対応する復調方式を、逆周波数変換部47が生成した変調信号に対して適用して受信データを復調する。
【0064】
(無線送信装置の処理)
図7は、無線送信装置1による処理の流れを示すフローチャートである。変調部11は、送信データを取り込み、取り込んだ送信データを、予め定められる変調方式で変調して変調信号を生成して出力する(ステップSt1)。時間窓処理部20は、変調部11が出力する変調信号を取り込み、取り込んだ変調信号に対して、予め定められるロールオフ率の時間窓関数を適用して変調信号の一部を切り出して出力する(ステップSt2)。
【0065】
周波数変換部21は、時間窓処理部20が切り出した変調信号を取り込み、取り込んだ変調信号を周波数領域に変換してスペクトラム信号を生成し、生成したスペクトラム信号を出力する(ステップSt3)。分岐処理部22は、計時部23が出力する時刻を示す情報と、内部の記憶領域に記憶させているスケジュール情報とに基づいて、計時部23が出力する時刻における分割数を特定する。分岐処理部22は、特定した分割数を最適動作点検出部15に出力する(ステップSt4)。
【0066】
最適動作点検出部15は、分岐処理部22が出力する分割数を取り込むと、取り込んだ分割数に対応する記憶部16のテーブルの「PAPR」の項目に書き込まれているPAPRの値を読み出す。最適動作点検出部15は、読み出したPAPRの値を送信アンプ部13に出力する(ステップSt20)。
【0067】
分岐処理部22は、周波数変換部21が出力するスペクトラム信号を取り込み、取り込んだスペクトラム信号を特定した分割数にしたがって分岐する。分岐処理部22は、特定した分割数が「2」の場合、スペクトラム信号を2つに分岐し、分割フィルタ部24-2-1,24-2-2の各々に出力する。分岐処理部22は、特定した分割数が「4」の場合、スペクトラム信号を4つに分岐し、分割フィルタ部24-4-1~24-4-4の各々に出力する。分岐処理部22は、特定した分割数が「8」の場合、スペクトラム信号を8つに分岐し、分割フィルタ部24-8-1~24-8-8の各々に出力する(ステップSt5)。
【0068】
分割フィルタ部24-2,24-4,24-8の各々は、分岐処理部22が出力するスペクトラム信号に対して、各々が備えるバンドパスフィルタによりフィルタリングを行い、フィルタリングによって得られたサブスペクトラム信号を出力する(ステップSt6)。なお、分岐処理部22からスペクトラム信号が与えられない分割フィルタ部24-2,24-4,24-8については、フィルタリング対象のスペクトラム信号が存在しないため、出力する信号は存在しないことになる。
【0069】
周波数シフト部25-2,25-4,25-8の各々は、各々が接続する分割フィルタ部24-2,24-4,24-8が出力するサブスペクトラム信号を取り込み、取り込んだサブスペクトラム信号に対して、予め定められるシフト量に基づいて周波数軸上でシフトを行う(ステップSt7)。なお、分割フィルタ部24-2,24-4,24-8からサブスペクトラム信号が与えられない周波数シフト部25-2,25-4,25-8については、シフト対象のサブスペクトラム信号が存在しないため、出力する信号は存在しないことになる。
【0070】
加算部26-2,26-4,26-8の各々は、各々が接続する周波数シフト部25-2,25-4,25-8が出力するシフト後のサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム分割合成信号を生成し、生成したスペクトラム分割合成信号を逆周波数変換部27に出力する(ステップSt8)。なお、周波数シフト部25-2,25-4,25-8のいずれか1つがシフト後のサブスペクトラム信号を出力するため、加算部26-2,26-4,26-8のいずれか1つがスペクトラム分割合成信号を生成して逆周波数変換部27に出力することになる。
【0071】
逆周波数変換部27は、加算部26-2,26-4,26-8のいずれか1つが出力するスペクトラム分割合成信号を時間領域に変換してスペクトラム分割合成変調信号を生成する(ステップSt9)。
【0072】
送信アンプ部13は、最適動作点検出部15が出力するPAPRの値を取り込み、取り込んだPAPRの値に基づいて動作点の位置を調整した上で、逆周波数変換部27が出力するスペクトラム分割合成変調信号を増幅する(ステップSt10)。アンテナ14は、増幅されたスペクトラム分割合成変調信号を無線信号として空中に放射して送信する(ステップSt11)。送信アンプ部13は、最適動作点検出部15が出力するPAPRの値に基づいて動作点の位置を調整しているため、入力電力値がピークになった場合においても線形領域において増幅を行い、更に、全ての入力電力値に対して最大の出力電力値となるようにスペクトラム分割合成変調信号を増幅することになる。
【0073】
なお、最適動作点検出部15によるステップSt20の処理は、ステップSt5~St9の処理と並列に実行され、ステップSt10の処理を行う前に送信アンプ部13は、最適動作点検出部15から受けたPAPRの値に基づいて動作点の位置を調整する処理を完了する。
【0074】
(無線受信装置の処理)
図8は、無線受信装置2による処理の流れを示すフローチャートである。アンテナ31は、無線送信装置1が送信する無線信号を受信して受信信号を受信アンプ部32に出力する。受信アンプ部32は、受信信号を増幅して出力する(ステップSr1)。
【0075】
時間窓処理部40は、受信アンプ部32が出力する増幅後の受信信号を取り込み、取り込んだ増幅後の受信信号に対して、予め定められるロールオフ率の時間窓関数を適用して増幅後の受信信号の一部を切り出して出力する(ステップSr2)。
【0076】
周波数変換部41は、時間窓処理部40が切り出した増幅後の受信信号を取り込み、取り込んだ増幅後の受信信号を周波数領域に変換してスペクトラム分割合成信号を生成し、生成したスペクトラム分割合成信号を出力する(ステップSr3)。分岐処理部42は、計時部43が出力する時刻を示す情報と、内部の記憶領域に記憶させているスケジュール情報とに基づいて、計時部43が出力する時刻における分割数を特定する(ステップSr4)。
【0077】
分岐処理部42は、周波数変換部41が出力するスペクトラム分割合成信号を取り込み、取り込んだスペクトラム分割合成信号を特定した分割数にしたがって分岐する。分岐処理部42は、特定した分割数が「2」の場合、スペクトラム分割合成信号を2つに分岐し、抽出フィルタ部44-2-1,44-2-2の各々に出力する。分岐処理部42は、特定した分割数が「4」の場合、スペクトラム分割合成信号を4つに分岐し、抽出フィルタ部44-4-1~44-4-4の各々に出力する。分岐処理部42は、特定した分割数が「8」の場合、スペクトラム信号を8つに分岐し、抽出フィルタ部44-8-1~44-8-8の各々に出力する(ステップSr5)。
【0078】
抽出フィルタ部44-2,44-4,44-8の各々は、分岐処理部42が出力するスペクトラム分割合成信号に対して、各々が備えるバンドパスフィルタによりフィルタリングを行い、フィルタリングによって得られたサブスペクトラム信号を出力する(ステップSr6)。なお、分岐処理部42からスペクトラム信号が与えられない抽出フィルタ部44-2,44-4,44-8については、フィルタリング対象のスペクトラム分割合成信号が存在しないため、出力する信号は存在しないことになる。
【0079】
周波数シフト部45-2,45-4,45-8の各々は、各々が接続する抽出フィルタ部44-2,44-4,44-8が出力するサブスペクトラム信号を取り込み、取り込んだサブスペクトラム信号に対して、予め定められるシフト量に基づいて周波数軸上でシフトを行う(ステップSr7)。なお、抽出フィルタ部44-2,44-4,44-8からサブスペクトラム信号が与えられない周波数シフト部45-2,45-4,45-8については、シフト対象のサブスペクトラム信号が存在しないため、出力する信号は存在しないことになる。
【0080】
加算部46-2,46-4,46-8の各々は、各々が接続する周波数シフト部45-2,45-4,45-8が出力するシフト後のサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム信号を生成し、生成したスペクトラム信号を逆周波数変換部47に出力する(ステップSr8)。なお、周波数シフト部45-2,45-4,45-8のいずれか1つがシフト後のサブスペクトラム信号を出力するため、加算部46-2,46-4,46-8のいずれか1つがスペクトラム信号を逆周波数変換部47に出力することになる。
【0081】
逆周波数変換部47は、加算部46-2,46-4,46-8のいずれか1つが出力するスペクトラム信号を時間領域に変換して変調信号を生成し、生成した変調信号を出力する(ステップSr9)。復調部34は、逆周波数変換部47が出力する変調信号を取り込み、取り込んだ変調信号を復調する。復調部34は、復調により得られる受信データを出力する(ステップSr10)。
【0082】
(本実施形態の構成による効果)
次に、図9から図12を参照しつつ、本実施形態による効果について説明する。
図9のグラフの横軸は、時刻であり、縦軸は、送信アンプ部13の入力電力値である。なお、縦軸には、送信アンプ部13の増幅特性にしたがって、線形に増幅ができる線形領域と、増幅が非線形になる非線形領域とを示している。図9のグラフは、分岐処理部22が内部の記憶領域に記憶させているスケジュール情報において、時刻t0~t1が2分割、時刻t1~t2が4分割、時刻t2~t3が8分割、時刻t3~t4が2分割、時刻t4~t5が8分割という情報が定義されている場合の結果を示したグラフである。
【0083】
図9において、破線のグラフは、無線送信装置1において最適動作点検出部15を利用せずに、分割数2の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定した場合のピークの入力電力値を示している。図9では、分割数2の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定しているため、2分割の場合に入力電力値がピークになったときに動作点が線形領域と非線形領域の境界に位置することになる。分割数が増加するとPAPRが増加するため、4分割及び8分割の場合において、入力電力値がピークになった場合、動作点が非線形領域に存在してしまうことになる。なお、図9において、実線のグラフは、入力電力値の平均電力値を示すグラフである。入力電力値の平均電力値は、分割数2の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定しているため、分割数4、及び分割数8の場合においても入力電力値の平均電力値は、分割数2の場合と同一値になる。
【0084】
図10は、送信アンプ部13の入力電力値と、増幅後の出力電力値との関係を示す増幅特性を示したグラフである。分割数2の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定している場合、図10のグラフにおいて2分割の場合の動作点が、符号60で示される線形領域と非線形領域の境界の位置に存在することになる。符号61で示す位置は、4分割の場合の動作点の位置を示しており、符号62で示す位置は、8分割の場合の動作点の位置を示している。符号61及び符号62で示す位置は、いずれも非線形領域に位置している。
【0085】
本実施形態の無線送信装置1では、最適動作点検出部15が、記憶部16のテーブルから各々の分割数の対応するPAPRの値を読み出して送信アンプ部13に適用する。PAPRの値が適用されると送信アンプ部13は、自動的にPAPRの値に応じた最適な動作点を定めるので、分割数4の場合には符号71で示されるようにPAPRの値に基づいて入力電力値が減少し、分割数8の場合には符号72で示されるようにPAPRの値に基づいて入力電力値が減少することになる。したがって、分割数4、及び分割数8の場合において、動作点を図10に示す符号60で示される位置に変えることが可能になる。これを、図9において示すと、ピークになったときの入力電力値を点線で示すグラフの位置に変えることになり、線形領域での増幅が可能になる。
【0086】
図11のグラフの横軸は、時刻であり、縦軸は、送信アンプ部13の出力電力値である。なお、縦軸には、図9と同様に、送信アンプ部13の増幅特性にしたがって、線形に増幅ができる線形領域と、増幅が非線形になる非線形領域とを示している。図11のグラフは、図9のグラフと同様に、分岐処理部22が内部の記憶領域に記憶させているスケジュール情報において、時刻t0~t1が2分割、時刻t1~t2が4分割、時刻t2~t3が8分割、時刻t3~t4が2分割、時刻t4~t5が8分割という情報が定義されている場合の結果を示したグラフである。
【0087】
図11において、破線のグラフは、無線送信装置1において最適動作点検出部15を利用せずに、分割数8の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定した場合のピークの出力電力値を示している。分割数8の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定しているため、分割数2、分割数4、及び分割数8の全ての場合において、出力電力値がピークになったときに動作点が線形領域と非線形領域の境界に位置する。また、図11において、実線のグラフは、出力電力値の平均電力値を示すグラフである。分割数8の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定しているため、分割数2、及び分割数4の場合、分割数の減少によるPAPRの減少のため出力電力値の平均電力値は、分割数8の場合と同一値になる。図11において、一点鎖線のグラフは、分割数2、及び分割数4の各々の場合において最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定した場合の出力電力値の平均電力値を示している。すなわち、分割数8の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定すると、分割数2、及び分割数4の場合、破線の矢印で示すように出力電力値の平均電力値が減少することになる。
【0088】
図12は、図10と同様に、送信アンプ部13の入力電力値と、増幅後の出力電力値との関係を示す増幅特性を示したグラフである。分割数8の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定している場合、図12のグラフにおいて分割数8の場合のピーク電力時の場合の動作点が、符号60で示される線形領域と非線形領域の境界の位置に存在することになる。この場合の分割数8における平均電力時の場合の動作点は、符号65で示す位置となる。符号63で示す位置は、分割数2の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定している場合の平均電力時の動作点の位置を示しており、符号64で示す位置は、分割数4の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定している場合の平均電力時の動作点の位置を示している。分割数8の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定した場合、図11を参照して説明したように、分割数2、及び分割数4の場合にも出力電力値の平均電力値が符号65で示す位置となるため、本来得られる出力電力値よりも減少してしまうことになる。
【0089】
本実施形態の無線送信装置1では、最適動作点検出部15が、記憶部16のテーブルから各々の分割数の対応するPAPRの値を読み出して送信アンプ部13に適用する。PAPRの値が適用されると送信アンプ部13は、自動的にPAPRの値に応じた最適な動作点を定めるため、分割数4の場合には符号73で示されるようにPAPRの値に基づいて入力電力値が増加し、分割数8の場合には符号74で示されるようにPAPRの値に基づいて入力電力値が増加することになる。したがって、分割数4、及び分割数8の場合において、平均電力時の動作点を符号63で示される位置に変えることが可能になる。これにより、分割数4、及び分割数8の場合の出力電力値をそれぞれ符号83と符号84で示される量だけ増加させることができる。これを、図11において示すと、分割数2、分割数4、及び分割数8の全ての場合において、点線で示される分割数2の場合に最適な動作点となるように送信アンプ部13の動作点を固定している場合の出力電力値の平均電力値にすることができ、それに伴い無線信号の電力を増加させることが可能になる。
【0090】
(本実施形態の他の構成例)
図13は、本実施形態の他の構成例による無線送信装置1aの構成を示すブロック図である。図13の無線送信装置1aにおいて、図1の無線送信装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0091】
無線送信装置1aは、変調部11、送信フィルタバンク部12a、送信アンプ部13、アンテナ14、最適動作点検出部15、及び記憶部16を備える。
【0092】
図1に示した無線送信装置1の送信フィルタバンク部12では、2分割用の分割フィルタ部24-2と周波数シフト部25-2、4分割用の分割フィルタ部24-4と周波数シフト部25-4、及び8分割用の分割フィルタ部24-8と周波数シフト部25-8を備えていた。これに対して、図13に示す無線送信装置1aでは、分割数の上限を8個として、柔軟に分割数を変えることができる構成を備えている。
【0093】
図13において、送信フィルタバンク部12aは、時間窓処理部20、周波数変換部21、分岐処理部22a、計時部23、分割フィルタ部24a-1~24a-8、周波数シフト部25a-1~25a-8、加算部26、及び逆周波数変換部27を備える。
【0094】
分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々は、バンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を任意に変化させることが可能になっている。分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々は、分岐処理部22aから指定される中心周波数と帯域幅と形状を有するバンドパスフィルタを形成し、形成したバンドパスフィルタを、分岐処理部22aが出力するスペクトラム信号に適用してサブスペクトラム信号を生成する。
【0095】
周波数シフト部25a-1~25a-8の各々は、周波数軸上で信号をシフトする際のシフト量を変化させることが可能になっている。周波数シフト部25a-1~25a-8の各々は、分岐処理部22aから指定されるシフト量にしたがって、各々に接続する分割フィルタ部24a-1~24a-8が出力するサブスペクトラム信号を周波数軸上でシフトする。
【0096】
加算部26は、周波数シフト部25a-1~25a-8が出力するシフト後のサブスペクトラム信号を加算、すなわち合成してスペクトラム分割合成信号を生成し、生成したスペクトラム分割合成信号を逆周波数変換部27に出力する。
【0097】
分岐処理部22aは、分岐処理部22と同様に、内部の記憶領域に、時刻ごとに、スペクトラム信号を何個のサブスペクトラム信号に分割するかを示すスケジュール情報を予め記憶する。
【0098】
分岐処理部22aは、計時部23が出力する時刻を示す情報と、スケジュール情報とに基づいて、計時部23が出力する時刻における分割数を特定する。分岐処理部22aは、特定した分割数を最適動作点検出部15に出力する。
【0099】
また、分岐処理部22aは、内部の記憶領域に、分割数ごとに、使用する分割フィルタ部24a-1~24a-8と、周波数シフト部25a-1~25a-8との組み合わせを特定する情報と、使用する分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々に適用するバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報と、使用する周波数シフト部25a-1~25a-8の各々に適用するシフト量とを予め記憶させている。
【0100】
分岐処理部22aは、破線の接続線で示す制御用の回線を介して、分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々と、周波数シフト部25a―1~25a-8の各々とに接続している。分岐処理部22aは、分割数を特定すると、特定した分割数に対応するバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を、使用する分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々に出力する。また、分岐処理部22aは、特定した分割数に対応するシフト量を使用する周波数シフト部25a-1~25a-8の各々に出力する。
【0101】
例えば、分割数が「2」の場合、分岐処理部22aは、内部の記憶領域に以下のような情報を記憶させることになる。使用する組み合わせとして、分割フィルタ部24a-1,24a-2と、周波数シフト部25a-1,25a-2を記憶させておき、分割フィルタ部24a-1,24a-2の各々に適用するバンドパスフィルタに関する情報としては、無線送信装置1の分割フィルタ部24-2-1,24-2-2の各々のバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を記憶させる。また、周波数シフト部25a-1,25a-2の各々に適用するシフト量としては、無線送信装置1の周波数シフト部25-2-1,25-2-2の各々のシフト量を記憶させる。
【0102】
分割数が「4」の場合、分岐処理部22aは、内部の記憶領域に以下のような情報を記憶させることになる。使用する組み合わせとして、分割フィルタ部24a-1~24a-4と、周波数シフト部25a-1~25a-4を記憶させておき、分割フィルタ部24a-1~24a-4の各々に適用するバンドパスフィルタに関する情報としては、無線送信装置1の分割フィルタ部24-4-1~24-4-4の各々のバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を記憶させる。また、周波数シフト部25a-1~25a-4の各々に適用するシフト量としては、無線送信装置1の周波数シフト部25-4-1~25-4-4の各々のシフト量を記憶させる。
【0103】
分割数が「8」の場合、分岐処理部22aは、内部の記憶領域に以下のような情報を記憶させることになる。使用する組み合わせとして、分割フィルタ部24a-1~24a-8と、周波数シフト部25a-1~25a-8を記憶させておき、分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々に適用するバンドパスフィルタに関する情報としては、無線送信装置1の分割フィルタ部24-8-1~24-8-8の各々のバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を記憶させる。また、周波数シフト部25a-1~25a-8の各々に適用するシフト量としては、無線送信装置1の周波数シフト部25-8-1~25-8-8の各々のシフト量を記憶させる。
【0104】
なお、無線送信装置1aによる処理は、図7に示したフローチャートにおいて、ステップSt4の分割数を特定する処理を分岐処理部22aが行い、ステップSt5,St6,St7の処理において、以下に示す処理が行われることになる。
【0105】
分岐処理部22aは、特定した分割数が「2」の場合、内部の記憶領域から分割数「2」に関連付けられている分割フィルタ部24a-1,24a-2の各々に対応するバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報と、周波数フィルタ部25a-1,25a-2に対応するシフト量とを読み出す。分岐処理部22aは、読み出したバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を分割フィルタ部24a-1,24a-2の各々に出力し、読み出したシフト量を周波数フィルタ部25a-1,25a-2の各々に出力する。
【0106】
分岐処理部22aは、スペクトラム信号を2分岐して、分割フィルタ部24a-1,24a-2の各々に出力する。分割フィルタ部24a-1,24a-2及び周波数シフト部25a-1,25a-2は、図3に示した処理過程を経て2つのサブスペクトラム信号を生成する。
【0107】
分岐処理部22aは、特定した分割数が「4」の場合、内部の記憶領域から分割数「4」に関連付けられている分割フィルタ部24a-1~24a-4の各々に対応するバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報と、周波数フィルタ部25a-1~25a-4に対応するシフト量とを読み出す。分岐処理部22aは、読み出したバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を分割フィルタ部24a-1~24a-4の各々に出力し、読み出したシフト量を周波数フィルタ部25a-1~25a-4の各々に出力する。
【0108】
分岐処理部22aは、スペクトラム信号を4分岐して、分割フィルタ部24a-1~24a-4の各々に出力する。分割フィルタ部24a-1~24a-4及び周波数シフト部25a-1~25a-4は、図4に示した処理過程を経て4つのサブスペクトラム信号を生成する。
【0109】
分岐処理部22aは、特定した分割数が「8」の場合、内部の記憶領域から分割数「8」に関連付けられている分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々に対応するバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報と、周波数フィルタ部25a-1~25a-8に対応するシフト量とを読み出す。分岐処理部22aは、読み出したバンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅と形状を示す情報を分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々に出力し、読み出したシフト量を周波数フィルタ部25a-1~25a-8の各々に出力する。
【0110】
分岐処理部22aは、スペクトラム信号を8分岐して、分割フィルタ部24a-1~24a-8の各々に出力する。分割フィルタ部24a-1~24a-8及び周波数シフト部25a-1~25a-8は、図5に示した処理過程を経て8つのサブスペクトラム信号を生成する。
【0111】
ステップSt8において、加算部26は、周波数シフト部25a-1~25a-8が出力するシフト後のサブスペクトラム信号を合成してスペクトラム分割合成信号を生成し、生成したスペクトラム分割合成信号を逆周波数変換部27に出力する。それ以外のステップSt1~St3、St9~St11,St20については、無線送信装置1の場合と同一の処理が行われる。
【0112】
例えば、分割数を「2」、「4」、「8」とする場合、図1に示す無線送信装置1では、14個の分割フィルタ部24-2,24-4,24-8と、14個の周波数シフト部25-2,25-4,25-8が必要になる。これに対して、図13に示す無線送信装置1aでは、8個の分割フィルタ部24a-1~24a-8と、8個の周波数シフト部25a-1~25a-8とを備えていればよいことになる。
【0113】
上記のように、無線送信装置1aでは、より柔軟に分割数を変えることができ、無線送信装置1に比べて、部品の数を抑えることが可能になる。ただし、分割数の選択肢を増やす場合、それに伴って、記憶部16のテーブルに記憶させておく分割数ごとのレコードの数を増やす必要があり、無線受信装置2の構成も、無線送信装置1aのようにバンドパスフィルタを変えることができる抽出フィルタ部や、シフト量を変えることができる周波数シフト部を備えるような構成にする必要がある。
【0114】
また、上記の無線送信装置1の分割フィルタ部24-2,24-4,24-8、及び無線送信装置1aの分割フィルタ部24a-1~24a-8が備えるバンドパスフィルタの形状を図3図5に示すように曲線の形状として示しているが、中心周波数と帯域幅とで特定される矩形形状であってもよい。この場合、無線送信装置1aの分岐処理部22aは、バンドパスフィルタの中心周波数と帯域幅を示す情報を内部の記憶領域に記憶させておけばよいことになる。
【0115】
上記の実施形態、及び他の構成例の無線送信装置1,1aにおいて、送信フィルタバンク部12,12aは、送信データが変調された変調信号を周波数領域に変換してスペクトラム信号を生成し、所定の分割数に一致する数の複数のバンドパスフィルタであって周波数軸上で隣接するバンドパスフィルタの帯域の一部が重複するバンドパスフィルタにより、生成したスペクトラム信号をフィルタリングして所定の分割数のサブスペクトラム信号を生成し、生成したサブスペクトラム信号の各々の帯域が重複しないようにサブスペクトラム信号を周波数軸上で分散配置し、分散配置したサブスペクトラム信号を合成して時間領域に変換することによりスペクトラム分割合成変調信号を生成する。送信アンプ部13は、スペクトラム分割合成変調信号を増幅する。最適動作点検出部15は、所定の分割数ごとのスペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比と、送信アンプ部13の増幅特性とに基づいて得られる送信アンプ部13の有効動作点の位置で送信アンプ部13を動作させる。これにより、分割数に対応するスペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比を予め測定する等して定めておくことで、所定の分割数を、任意のタイミングで変化させたとしても、分割数とスペクトラム分割合成変調信号のピーク対平均電力比との関係性から、その時点での分割数における最適な入力バックオフで送信アンプ部13の動作点を適切な位置に調整することができる。そのため、スペクトラム信号を分割して周波数軸上で分散配置した上で無線信号を送信する無線送信装置1,1aにおいて、分割数が変化したとしても、通信品質を劣化させずに無線信号の送信を行うことができる。
【0116】
なお、上述した実施形態、及び他の構成例における送信フィルタバンク部12,12a及び受信フィルタバンク部33は、IC(Integrated Circuit)等の電子回路によって実現されていてもよい。
【0117】
また、上述した実施形態、及び他の構成例では、分岐処理部22,22aが、スケジュール情報にしたがって、分割数を時間変動させていたが、無線送信装置1,1aの利用者が、任意のタイミングで分割数を変えるようにしてもよい。
【0118】
また、上述した実施形態における無線送信装置1,1a、無線受信装置2をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0119】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0120】
1…無線送信装置、11…変調部、12…送信フィルタバンク送信部、13…送信アンプ部、14…アンテナ、15…最適動作点検出部、16…記憶部、20…時間窓処理部、21…周波数変換部、22…分岐処理部、23…計時部、24-2-1,24-2-2,24-4-1~24-4-4,24-8-1~24-8-8…分割フィルタ部、25-2-1,25-2-2,25-4-1~25-4-4,25-8-1~25-8-8…周波数シフト部、26-2,26-4,26-8…加算部、27…逆周波数変換部
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