(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072538
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 49/665 20060101AFI20220510BHJP
C07D 209/34 20060101ALI20220510BHJP
C07D 333/64 20060101ALI20220510BHJP
C07D 498/22 20060101ALI20220510BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20220510BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220510BHJP
C09K 11/06 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
C07C49/665
C07D209/34
C07D333/64 CSP
C07D498/22
C07F7/08 W
G02B5/20
C09K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182028
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠治
(72)【発明者】
【氏名】小松 英司
【テーマコード(参考)】
2H148
4C072
4C204
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
2H148AA05
4C072AA01
4C072AA07
4C072BB04
4C072CC04
4C072CC12
4C072EE07
4C072FF03
4C072GG01
4C072HH02
4C072HH06
4C072UU05
4C204BB05
4C204CB03
4C204DB16
4C204DB30
4C204EB03
4C204FB01
4C204GB07
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
4H049VN01
4H049VP04
4H049VQ24
4H049VR24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光学特性を活かして波長変換材料、インジケーター、センサー材料等の部材として好適に用いることができる新規化合物を提供する。
【解決手段】例えば下記式(化合物1)で表される化合物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
[式(1)において、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立に下記式(2)又は(3)を表し、
連結基Q
1及びQ
2は、それぞれ独立に下記式(4A)~(4D)のいずれかで表される連結基である。
なお、下記式中の*は結合位置を表す。]
【化2】
[式(2)において、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【化3】
[式(4B)において、
R
3及びR
3´は、それぞれ独立に、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4C)において、R
4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4D)において、X
1は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【請求項2】
下記式(5)又は(6)で表される化合物。
【化4】
[式(5)及び(6)において、
R
20、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R
30及びR
31は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
X
20、X
21、X
22及びX
23は、それぞれ独立に、O原子、S原子又は-NR
26-を表し、
Y
20、Y
21、Y
22及びY
23は、それぞれ独立に、O原子、置換基を有してもよいアミノ基又は=CR
24R
25を表し、
R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(5)及び(6)に複数含まれるR
24、R
25及びR
26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
下記式(7)で表される化合物。
【化5】
[式(7)において、
環A
40及び環A
41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、
R
40及びR
41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物に関するものである。本発明の化合物は、光学特性を活かして波長変換材料、インジケーター、センサー材料等の部材として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
塗料、印刷インキ、化粧品、着色プラスチック、繊維などに使用されている染料や顔料の多くは、耐候性の優れたものが多く、新たな機能性材料への展開が期待されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、OPV、OTFT等の有機エレクトロニクス用材料への適用を目指し、Vat Orange 3を出発原料として種々の誘導体を合成し、物性評価を実施している。
【0004】
また、特許文献1には、光電変換材料への適用を目指し、インジゴやチオインジゴを出発原料として種々の誘導体を合成し、物性評価を実施している。
【0005】
非特許文献2には、トリフェノジオキサジンの光学特性について報告されている。また、OTFT用材料への適用を目指し、トリフェノジオキサジン誘導体が半導体特性を示すことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Orthogonal 4,10 and 6,12 substitution of dibenzo[def,mno]chrysene polycyclic aromatic small molecules, Unsal Koldemir, Jonathan S. Tinkham,a Robert Johnson, Bogyu Lim, Henok A. Yemam, Kevin J. Gagnon, Sean Parkin and Alan Sellinger, J. Mater. Chem. C, 2017, 5, 8723-8733
【非特許文献2】Fluorescence Spectroscopy and Kinetics of Triphenodioxazines 、Kirk W. Butz, Brian L. Justus, and Gary W. Scott、The Journal of Physical Chemistry, Vol. 87, No. 14, 1983 2579
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1及び2に記載された誘導体は、共役系が拡張された凝集しやすい構造となっており、濃度消光などの要因により、発光色素への展開が困難であった。また、溶剤に対する溶解性が低いため、改良検討が容易に出来ないことも発光色素への展開が困難な要因の一つとなっていた。
【0009】
特許文献1に記載された誘導体もまた共役系が拡張された凝集しやすい構造となっており、塗布などの成膜が難しく、また、発光色素への応用する場合には、濃度消光が懸念されていた。また、溶剤に対する溶解性が低いため、化学修飾が困難とされていた。
【0010】
本発明は、このような従来技術のもと、光学特性を活かして波長変換材料、インジケーター、センサー材料等の部材として好適に用いることができる新規化合物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、光学特性を有する新規誘導体の開発に成功した。本発明は、このような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0012】
[1] 下記式(1)で表される化合物。
【0013】
【0014】
[式(1)において、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に下記式(2)又は(3)を表し、
連結基Q1及びQ2は、それぞれ独立に下記式(4A)~(4D)のいずれかで表される連結基である。
なお、下記式中の*は結合位置を表す。]
【0015】
【0016】
[式(2)において、
R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【0017】
【0018】
[式(4B)において、
R3及びR3´は、それぞれ独立に、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4C)において、R4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4D)において、X1は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【0019】
[2] 下記式(5)又は(6)で表される化合物。
【0020】
【0021】
[式(5)及び(6)において、
R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R30及びR31は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
X20、X21、X22及びX23は、それぞれ独立に、O原子、S原子又は-NR26-を表し、
Y20、Y21、Y22及びY23は、それぞれ独立に、O原子、置換基を有してもよいアミノ基又は=CR24R25を表し、
R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(5)及び(6)に複数含まれるR24、R25及びR26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0022】
[3] 下記式(7)で表される化合物。
【0023】
【0024】
[式(7)において、
環A40及び環A41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、
R40及びR41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【発明の効果】
【0025】
本発明の化合物は、光学特性を活かし、波長変換材料、インジケーター、センサー材料等の部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1で得られた化合物1の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図2】実施例2で得られた化合物2の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図3】実施例3で得られた化合物3の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図4】実施例4で得られた化合物5の吸収スペクトルを示すチャートである。
【
図5】実施例5で得られた化合物6の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図6】実施例6で得られた化合物7の吸収スペクトルを示すチャートである。
【
図7】実施例7で得られた化合物8の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図8】実施例8で得られた化合物9の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【
図9】実施例9で得られた化合物10の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
【0028】
[式(1)で表される化合物]
本発明の第1態様の化合物は、下記式(1)で表される新規化合物である。
【0029】
【0030】
[式(1)において、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に下記式(2)又は(3)を表し、
連結基Q1及びQ2は、それぞれ独立に下記式(4A)~(4D)のいずれかで表される連結基である。
なお、下記式中の*は結合位置を表す。]
【0031】
【0032】
[式(2)において、
R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【0033】
【0034】
[式(4B)において、
R3及びR3´は、それぞれ独立に、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4C)において、R4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4D)において、X1は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【0035】
式(1)で表される化合物が、発光性能を有する理由としては、化合物間の凝集が抑制される、つまり、エキシマーの形成が抑制され、熱失活による消光を抑制することができることが挙げられる。
【0036】
<Ar1及びAr2>
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に前記式(2)又は(3)を表す。Ar1及びAr2は同一でも異なっていてもよいが、合成容易性の観点から同一である方が好ましい。
Ar1及びAr2は、式(2)であることが溶剤溶解性向上の観点から好ましく、式(3)であることが長波長化の観点から好ましい。
【0037】
<R1及びR2>
R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。式(1)中に複数存在する、R1及びR2は、同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
R1及びR2のアルキル基の炭素数は、それぞれ独立に、1以上12以下であることが好ましく10以下であることがより好ましい。これらの範囲であることで脂溶性を付与できる傾向にある。また、アルキル基は直鎖でも分岐していてもよい。以下のアシル基、アルコキシル基、シリル基、アルキルカルボニル基、アミノ基におけるアルキル部分や置換基としてのアルキル基についても同様である。
【0039】
R1及びR2のアルキニル基及びアルケニル基の炭素数は、それぞれ独立に、2以上12以下であることが好ましく10以下であることがより好ましい。これらの範囲であることで脂溶性を付与できる傾向にある。また、アルキニル基及びアルケニル基は直鎖でも分岐していてもよい。
【0040】
R1及びR2のアシル基の炭素数は1以上12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。これらの範囲であることで脂溶性を付与できる傾向にある。
【0041】
R1及びR2のアルコキシル基の炭素数は1以上12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。これらの範囲であることで脂溶性を付与できる傾向にある。
【0042】
R1及びR2のシリル基は、-SiRR´R´´で表され、R、R´及びR´´は、それぞれ独立に、炭素数は1以上12以下のアルキル基を表す。該アルキル基の炭素数は10以下であることがより好ましく、置換基を有していてもよい。これらの範囲であることで脂溶性を付与できる傾向にある。
【0043】
R1及びR2のアミノ基は、-NRaRa´で表され、Ra及びRa´は、それぞれ独立に水素原子または炭素数は1以上12以下のアルキル基を表し、環を形成しても良い。該アルキル基の炭素数は10以下であることがより好ましく、置換基を有していてもよい。これらの範囲であることで脂溶性を付与できる傾向にある。
【0044】
R1及びR2のアリールカルボニル基を構成するアリール基は、後述するR1及びR2の芳香族炭化水素基と同義である。
【0045】
R1及びR2の芳香族炭化水素基は、単環基であってもよく、縮合環基であってもよく、特に限定されない。該芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素環としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環(フェニル基)が、凝集しにくい傾向にあるため好ましい。
【0046】
R1及びR2の芳香族複素環基は、単環基であってもよく、縮合環基であってもよく、特に限定されない。芳香族複素環基の芳香族複素環としては、具体的には、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、イミダゾール環、カルバゾール環等が挙げられる。これらの中でも、ピリジン環、カルバゾール環がネットワーク構造を形成しやすい傾向にあるため好ましい。
【0047】
R1及びR2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アルコキシル基、シリル基、アミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。これらの基が有していてもよい置換基としては、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基等の置換基を有していてもよいシリル基、シロール基、アルキル基等の置換基を有していてもよいアミノ基、アルキル基等の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0048】
<Q1及びQ2>
連結基Q1及びQ2は、それぞれ独立に、前記式(4A)~(4D)で表される連結基である。
式(4A)~(4D)で表される連結基の中でも、発光特性、合成容易性の観点から、式(4A)、(4B)、(4D)で表される連結基が好ましい。
【0049】
式(4B)中のR3及びR3´は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4C)中のR4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(4D)中のX1は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
R3及びR3´、R4及びX1の各基は、前述の式(1)のR1及びR2で示した各基と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基も同義である。
X1のハロゲン原子としては臭素原子、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0050】
<Q1、Q2、Ar1及びAr2の好ましい組み合わせ>
Q1、Q2、Ar1及びAr2の好ましい組み合わせとしては、上述した範囲で適宜組み合わせることができる。
【0051】
<具体例>
式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。以下において、「Me」は「メチル基」を、「Bu」は「ブチル基」を、「Ph」は「フェニル基」を表す。
【0052】
【0053】
[式(1)で表される化合物の製造方法]
式(1)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、上述した非特許文献1やOrthogonal 4,10 and 6,12 substitution of dibenzo[def,mno]chrysene polycyclic aromatic small molecules, Unsal Koldemir, Jonathan S. Tinkham,a Robert Johnson, Bogyu Lim, Henok A. Yemam, Kevin J. Gagnon, Sean Parkin and Alan Sellinger, J. Mater. Chem. C, 2017, 5, 8723-8733等を参考に製造することができる。例えば、以下に示すスキームが挙げられる。なお、下記スキームにおいて、Arは芳香族炭化水素基を表す。
【0054】
【0055】
また、原料化合物を金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、溶媒等の存在下に加熱してクロスカップリング反応させて製造する方法も挙げられる。金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、溶媒等は、従来のクロスカップリング反応等に用いられたものを適宜適用することができる。加熱温度、加熱時雰囲気、加熱装置等も特に限定されず、クロスカップリング反応が進行する条件を適宜調整することができる。本方法を用いることで、実質的に有機溶媒を不使用とすることができ、簡便な手段により、短時間に高収率で反応生成物を得ることができる傾向にある。
【0056】
<金属触媒>
前記クロスカップリング反応方法で用いられる金属触媒は、クロスカップリング反応に使用されてきた金属触媒であって、目的の化合物を得るためのクロスカップリング反応を触媒(促進)し得るものであれば、特に制限されない。
【0057】
金属触媒を構成する金属(元素)は、遷移金属(元素)であっても典型金属(元素)であってもよく、特に制限されない。
遷移金属(元素)としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネシウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
典型金属(元素)としては、例えば、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマスからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0058】
本発明においては、触媒活性等の観点から、好ましくは第4周期から第6周期に属する遷移金属(元素)が挙げられる。例えば、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、パラジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、白金、ロジウム、イリジウム、コバルトからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、パラジウム、ニッケル、鉄及び銅からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましい。
【0059】
金属触媒は、種々の形態のものを用いることができ、例えば以下(1)~(4)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
(1)粉状又は多孔質形状の金属単体
(2)アルミナ、炭素、シリカ、ゼオライト等の担体に金属単体又は金属化合物を担持したもの
(3)金属の塩(塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酸化物等)
(4)金属と錯体(オレフィン錯体、ホスフィン錯体、アミン錯体、アンミン錯体又はアセチルアセトナート錯体等)との錯化合物
【0060】
上記の中でも、金属触媒として、パラジウム触媒が特に好ましく用いられる。
パラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0061】
金属触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、金属触媒は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0062】
(配位性化合物)
高選択的にクロスカップリング反応を進行させる観点から、金属触媒とともに、更にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させて用いることができる。
【0063】
配位性化合物は、クロスカップリング反応に使用し得るものであれば、特に制限されない。
配位性化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン等のアリールホスフィン;トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン等のアルキルホスフィン;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル(DavePhos)、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(tBuBrettPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル等のBuchwaldホスフィン配位子;1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のニ座ホスフィン;1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリウムクロライド等のN-ヘテロカルベン配位子;等が挙げられる。上記配位性化合物は複数組み合わせて用いてもよい。
配位性化合物としては、ホスフィン化合物が好ましく用いられる。該ホスフィン化合物は、アルキルホスフィンを含むことが好ましい。
【0064】
パラジウム触媒にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させる場合、上記パラジウム化合物とホスフィン化合物又はN-ヘテロカルベン化合物を事前に混合、調製したものを用いて反応させてもよい。例えば、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル) [2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸(SPhos Pd G3)を用いることができる。
【0065】
金属触媒の使用量又は金属触媒とホスフィン化合物との共存物における金属触媒の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、クロスカップリング反応に供する化合物(クロスカップリング反応をさせる原料化合物(例えば、上記スキームの化合物1-1と化合物1-2)。以下、「クロスカップリング反応に供する化合物」と表すことがある。)、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
【0066】
金属触媒の使用量は、例えば、上記スキームの化合物1-1のモル量に価数を掛けて得たモル数を基準(100%)として、0.5モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、さらに好ましくは1.0モル%以上とすることができ、上限値は特に限定されないが、25モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下とすることができる。
【0067】
ホスフィン化合物を金属触媒と共存させる場合、ホスフィン化合物の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
【0068】
ホスフィン化合物の使用量は、例えば、ホスフィン化合物とパラジウム触媒のモル比(ホスフィン化合物/パラジウム触媒)として10/1~1/10、好ましくは5/1~1/5、より好ましくは3/1~1/3、さらに好ましくは2/1~1/2とすることができる。
【0069】
<塩基>
本発明で用いられる塩基は、クロスカップリング反応に使用されてきた公知の塩基であって、目的の化合物を得るためのクロスカップリング反応を促進し得るものであれば、特に制限されない。
【0070】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の無機塩基;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、ジアザビシクロノネン(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン等の第3級アミン塩基等の有機塩基;等が挙げられる。また、上記の各塩基は、複数を組み合わせて用いてもよい。
塩基は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0071】
塩基の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
【0072】
塩基の使用量は、例えば、上記スキームの化合物1-1の当量を基準として、0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1.0当量以上、さらに好ましくは1.2当量以上、最も好ましくは1.4当量以上とすることができる。塩基の使用量の上限は特に限定されないが、例えば10.0当量以下、好ましくは5.0当量以下、より好ましくは4.0当量以下、さらに好ましくは3.0当量以下とすることができる。
【0073】
<不飽和炭化水素化合物>
不飽和炭化水素化合物は、分子中に少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合又は少なくとも1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する、鎖状及び/又は環状の化合物である。
不飽和炭化水素化合物は、目的とする化合物を得るためのクロスカップリング反応を促進し得るものであれば、特に制限されることはない。
本発明で用いられる不飽和炭化水素化合物には、例えばベンゼンやナフタレン等の芳香族化合物が含まれず、前記金属触媒、前記配位性化合物に相当する化合物を含まないものとする。
【0074】
不飽和炭化水素化合物の炭素数は特に限定されないが、例えば5~24、好ましくは5~18、より好ましくは5~12、さらに好ましくは6~10、最も好ましくは6~8である。
1つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する鎖状不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
1つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する環状不飽和炭化水素化合物としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
2つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する鎖状不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
2つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する環状不飽和炭化水素化合物としては、例えば、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、シクロデカジエン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する鎖状不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン等が挙げられる。
1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する環状不飽和炭化水素化合物として、例えば、シクロオクチン、シクロデシン等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素化合物は、複数を組み合わせて用いてもよい。また、不飽和炭化水素化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0075】
不飽和炭化水素化合物の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
【0076】
不飽和炭化水素化合物の使用量は、例えば、クロスカップリング反応を行うために加えた全ての化合物(例えば、上記スキームの化合物1-1、化合物1-2~1-4、金属触媒(及びホスフィン化合物)、塩基、後述の反応促進剤等)の質量の総和を基準として、0.01~3.0μL/mg、好ましくは0.05~1.0μL/mg、より好ましくは0.10~0.50μL/mgとすることができる。
【0077】
本発明におけるクロスカップリング反応方法において、不飽和炭化水素化合物を用いることで、金属触媒の凝集を抑制することができ、使用しない場合と比較して、顕著に反応性を向上できる傾向にある。
【0078】
<溶媒>
本発明におけるクロスカップリング反応方法は、有機溶媒の存在量が、クロスカップリング反応に供する化合物の合計1mmol当り0.7mL以下となる条件で行うことが好ましい。このような条件は、実質的に有機溶媒を使用しない条件であるといえる。なお、本発明において、実質的に有機溶媒を使用しない条件とは、有機溶媒を全く使用しない態様、積極的に溶媒を用いない態様、及び有機溶媒を使用するものの溶媒効果が発揮されないほどに微量しか使用しない態様を表す。
【0079】
本発明において、有機溶媒の存在量は、クロスカップリング反応に供する化合物の合計1mmol当り0.7mL以下が好ましく、より好ましくは0.5mL以下、さらに好ましくは0.2mL以下、特に好ましくは0.1mL以下、とりわけ好ましくは0.05mL以下、最も好ましくは0.02mL以下、最大限好ましくは0mL(有機溶媒不使用)である。上記のように有機溶媒の使用量が少ないことから、反応原料は、通常、反応開始時に少なくとも一部が有機溶媒等に溶解していない。場合によっては全てが有機溶媒等に溶解することなく、固体状態で存在し得る。
【0080】
本発明において、有機溶媒としては、クロスカップリング反応で使用される有機溶媒が挙げられる。
例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンデュレン、デカリン等の芳香族系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノ-ル、イソプロパノール、1-ブタノール、1,1-ジメチルエタノール、tert-ブタノール、2-メトキシエタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、等の極性溶媒等;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ピリジン、酢酸等が挙げられる。上記溶媒は複数を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
<その他の成分>
本発明におけるクロスカップリング反応方法は、前述の、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、及び溶媒以外に、従来既知のクロスカップリング反応の促進剤等のその他の成分を用いることができる。
反応促進剤としては、例えば水等が挙げられる。
反応促進剤の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。反応促進剤の使用量は、例えば、化合物1-1の当量を基準として、20.0当量以下、好ましくは10.0当量以下、より好ましくは9.0当量以下とすることができる。反応促進剤の使用量の下限は特にないが、例えば0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1.0当量以上、さらに好ましくは1.2当量以上、最も好ましくは1.4当量以上とすることができる。
【0082】
<反応条件>
本発明におけるクロスカップリング反応方法は、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物等の存在下、有機溶媒の存在量を上記の範囲とし、反応させることで実施される。
【0083】
(各成分の混合)
本発明においては、クロスカップリング反応を行う際に、各成分を混合することが好ましい。
【0084】
混合する方法は、振とう、擦り合わせ、押圧、分散、混練、解砕等の混合可能ないずれの方法を用いてもよい。混合に際しては、機械的に混合処理を行う装置を用いることが好ましい。
そのような装置として、例えば、
ボールミル、ロッドミル、ジェットミル、SAGミル等の粉砕機;
回転式石臼、擂潰機(らいかいき)等の磨砕機;
水平円筒型、V型、二重円錐型、正方立方体型、S型及び連続V型等の(水平軸回転)容器回転型混合装置;
水平円筒型、V型、二重円錐型及びボール・ミル型等の(邪魔板羽根付き)容器回転型混合装置;
ロッキング型及びクロスロータリー型等の(回転振動)容器回転型混合装置;
リボン型、パドル型、単軸ロータ型及びバグ・ミル型等の(水平軸回転)固定容器型混合装置;
リボン型、スクリュー型、遊星型、タービン型、高速流動型、回転円盤型及びマーラー型等の(垂直軸回転)固定容器型混合装置;
振動ミル型及びふるい等の(振動)固定容器型混合装置;
不均一流動層、旋回流動層、上昇管付き型及びジョットポンプ型等の(流動化)流体運動型混合装置;
重力型及びスタティックミキサー等の(重力)流体運動型混合装置;
等が挙げられる。
【0085】
本発明においては、クロスカップリング反応が進行する限り、その方法及び使用される装置は、特に制限されることはなく、上記の装置などを複数組み合わせて用いてもよい。
例えば、混合装置について、坂下「粉体混合プロセス技術」色材、77(2)、75-85(2004)の表5及び
図9等記載の粉体混合装置を参照することができる。
【0086】
本発明におけるクロスカップリング反応方法において、混合を行う際の混合速度は、特に限定されず、クロスカップリング反応に共する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
例えば、各成分の混合をボールミルを用いて行う際には、振とう数の設定(デジタル)を5Hz以上、好ましくは10Hz以上、より好ましくは20Hz以上の条件下で行うことができる。
【0087】
(反応温度)
本発明におけるクロスカップリング反応方法において、反応温度(混合時の反応容器内温度)は特に限定されないが、60~500℃とすることが、反応の効率化の点で好ましい。
反応温度を60~500℃に制御する方法は特に限定されないが、化学反応を行う際に用いられる温度制御方法を用いることができる。例えば、温風を用いて反応容器内の温度を制御する方法、反応容器を所定の温度の熱媒体で覆い反応容器内の温度を制御する方法、発熱体を設けて反応容器内温度を制御する方法等が挙げられる。
例えば、ヒートガンにより発生させた温風を反応容器に当て反応容器内の温度を制御する方法が、安全性や温度制御操作の容易性の観点等から好ましい。
【0088】
(反応雰囲気)
本発明におけるクロスカップリング反応方法において、反応雰囲気(混合時の反応容器内の雰囲気)は、特に限定されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
例えば、特に雰囲気調整を行わず、大気雰囲気で行うことができる。また、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物等や反応生成物に応じて、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行うことができる。
【0089】
(反応時間)
本発明におけるクロスカップリング反応方法において、反応時間(混合時間;機械的手段による処理を行う時間)は、特に限定されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物等の種類や量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
例えば、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上とすることができる。反応時間の上限は特に限定されないが、例えば、10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下とすることができる。
【0090】
(反応後の処理等)
本発明におけるクロスカップリング反応方法においては、得られた反応生成物を、必要に応じて精製することができる。反応生成物の精製方法は、特に制限されず、例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー、溶媒による洗浄等の方法を用いることができる。
【0091】
<反応装置>
本発明におけるクロスカップリング反応に用いる反応装置の反応容器は、化合物の反応装置に通常設けられている各種の反応容器であれば特に限定されず、クロスカップリング反応に供する化合物、金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、反応生成物等の種類や量、反応温度、雰囲気、反応圧力等を考慮して、適宜定めることができる。例えば、本発明において、機械的に混合処理を行う装置(例えば、ボールミル等)を用いる場合には、ボールミルジャー等を反応容器として用いることができる。
該反応容器内の収容物を撹拌する手段は、化合物の反応装置に備えることができる各種の撹拌手段であれば特に限定されない。本発明においては、前記<反応条件>の(各成分の混合)に記載した、機械的に混合処理を行う装置による手段を用いることができる。機械的に混合処理を行う装置としては、例えば、ボールミルが好ましく用いられる。
【0092】
該反応容器内の温度調整手段は特に限定されない。具体的には、前記<反応条件>の(反応温度)に記載した温度調整手段を用いることができる。例えば、ヒートガンを用いて反応容器を加熱する方法が好ましく用いられる。
本発明で用いる反応装置は、さらに、計量手段、減圧又は加圧手段、雰囲気調整手段(気体導入又は排出手段)、各種成分の投入手段、各種成分・反応生成物の取出手段、精製手段、分析手段等の、化合物の反応装置に備えることができる各種の手段を備えていてもよい。
【0093】
[式(5)又は(6)で表される化合物]
本発明の第2態様の化合物は、下記式(5)又は(6)で表される新規化合物である。
【0094】
【化11】
[式(5)及び(6)において、
R
20、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R
30及びR
31は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
X
20、X
21、X
22及びX
23は、それぞれ独立に、O原子、S原子又は-NR
26-を表し、
Y
20、Y
21、Y
22及びY
23は、それぞれ独立に、O原子、置換基を有してもよいアミノ基又は=CR
24R
25を表し、
R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(5)及び(6)に複数含まれるR
24、R
25及びR
26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0095】
式(5)及び(6)で表される化合物が発光性能を有する理由は定かではないが、化合物間の凝集を抑制し、熱失活による消光を抑制することが挙げられる。
【0096】
<X20、X21、X22及びX23>
X20、X21、X22及びX23は、それぞれ独立に、O原子、S原子又は-NR26-を表す。X20とX21、X22とX23は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが合成容易性の観点より好ましい。また、X20、X21、X22及びX23の中でも、-NR26-が合成容易性の観点より好ましい。
【0097】
R26は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。置換基を有していてもよいアルキル基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基は、前述の式(1)のR1及びR2で示した各基と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基も同義である。
【0098】
<Y20、Y21、Y22及びY23>
Y20、Y21、Y22及びY23は、それぞれ独立に、O原子、置換基を有してもよいアミノ基又は=CR24R25を表す。式(5)及び(6)に複数含まれるR24及びR25は同一でも異なっていてもよい。
R24及びR25は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。置換基を有していてもよいアルキル基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基は、前述の式(1)のR1及びR2で示した各基と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基も同義である。
【0099】
<R20、R21、R22及びR23>
R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
特に限定はされないが、これらの中でも置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいアミノ基が発光の長波長化の観点から好ましい。
R20、R21、R22及びR23の各基は、前述の式(1)のR1及びR2で示した各基と同義であり、好ましい範囲及び有していてもよい置換基も同義である。
【0100】
<R30及びR31>
R30及びR31は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくはメチル基である。
【0101】
<X20、X21、Y20、Y21、R20、R21及びR30、X22、X23、Y22、Y23、R22、R23及びR31の好ましい組み合わせ>
X20、X21、Y20、Y21、R20、R21及びR30、X22、X23、Y22、Y23、R22、R23及びR31の好ましい組み合わせとしては、上述した範囲で適宜組み合わせることができる。
【0102】
<具体例>
式(5)又は(6)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0103】
【0104】
[式(5)又は(6)で表される化合物の製造方法]
式(5)又は(6)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが、上述した化合物(1)の製造方法で例示したものと同様の手法等を参考に製造することができる。例えば、以下に示すスキームが挙げられる。なお、下記スキームにおいて、Arは芳香族炭化水素基を表し、Pd触媒はPd(PPh3)4などの0価の触媒やPdCl2(PPh3)4等の2価の触媒を表す。
【0105】
【0106】
また、原料化合物を金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、溶媒等の存在下に加熱してクロスカップリング反応させて製造する方法も挙げられる。金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、溶媒等は、従来のクロスカップリング反応等に用いられたものを適宜適用することができる。加熱温度、加熱時雰囲気、加熱装置等も特に限定されず、クロスカップリング反応が進行する条件を適宜調整することができる。具体的には、式(1)で表される化合物の製造方法で述べた方法が挙げられる。
【0107】
[式(7)で表される化合物]
本発明の第3態様の化合物は、下記式(7)で表される新規化合物である。
【0108】
【0109】
[式(7)において、
環A40及び環A41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、
R40及びR41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。]
【0110】
式(7)で表される化合物が発光性能を有する理由は定かではないが、化合物間の凝集を抑制し、熱失活による消光を抑制することが挙げられる。
【0111】
<環A40及び環A41>
環A40及び環A41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。該環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。環A40及び環A41は同一でも異なっていてもよいが、同一であることが、合成容易性の観点から好ましい。
芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の中でも、芳香族複素環が好ましく、さらにインドール環が合成容易性の観点から好ましい。
該芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が有していてもよい置換基は、前述の式(1)のR1及びR2の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基と同義である。
【0112】
<R40及びR41>
R40及びR41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
R40及びR41は同一でも異なっていてもよいが、同一であることが、合成容易性の観点から好ましい。
R40及びR41は、上記基の中でも置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基が、化合物間の凝集抑制の観点から好ましい。
R40及びR41の各基の具体的例、好ましい範囲及び有していてもよい置換基は、前述の式(1)のR1及びR2の各基と同義である。
【0113】
<環A40、環A41、R40及びR41の好ましい組み合わせ>
環A40、環A41、R40及びR41の好ましい組み合わせとしては、上述した範囲で適宜組み合わせることができる。
【0114】
<具体例>
式(7)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0115】
【0116】
[式(7)で表される化合物の製造方法]
式(7)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが挙げられる、上述した化合物(1)の製造方法で例示したものと同様の手法等を参考に製造することができる。例えば、以下に示すスキームが挙げられる。なお、下記スキームにおいて、Arは芳香族炭化水素基を表し、Pd触媒はPd(PPh3)4などの0価の触媒やPdCl2(PPh3)4等の2価の触媒を表す。
【0117】
【0118】
また、原料化合物を金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、溶媒等の存在下に加熱してクロスカップリング反応させて製造する方法も挙げられる。金属触媒、塩基、不飽和炭化水素化合物、溶媒等は、従来のクロスカップリング反応等に用いられたものを適宜適用することができる。加熱温度、加熱時雰囲気、加熱装置等も特に限定されず、クロスカップリング反応が進行する条件を適宜調整することができる。具体的には、式(1)で表される化合物の製造方法で述べた方法が挙げられる。
【実施例0119】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例及び合成化合物に限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい範囲と同様に、本発明の好ましい範囲を示すものであり、本発明の好ましい範囲は前記した実施態様における好ましい範囲と下記実施例の値又は実施例同士の値の組合せにより示される範囲を勘案して決めることができる。
【0120】
<測定方法>
励起スペクトル:日本分光株式会社の紫外可視近赤外分光光度計FP-8700を用い、10-5mol/Lの脱気した塩化メチレン溶液を調液し、蛍光固定波長を設定し測定した。
吸収スペクトル:株式会社日立製作所の分光光度計U3900を用い、10-5mol/Lの脱気した塩化メチレン溶液を調液し測定した
発光スペクトル:日本分光株式会社の紫外可視近赤外分光光度計FP-8700を用い、10-5mol/Lの脱気した塩化メチレン溶液を調液し、固定波長を設定し測定した。
【0121】
〔式(1)で表される化合物の実施例〕
[実施例1]
【化17】
【0122】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム1に示す化合物Aを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Bを0.36mmol(化合物Aに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Aに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Aに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物1に対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Aに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物1を単離した。単離収率(Isolated yield)は72%であった。
【0123】
得られた化合物1について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図1(a)及び
図1(b)に示す。化合物1は発光性を有することが示された。
【0124】
【0125】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム2に示す化合物Aを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Cを0.36mmol(化合物Aに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Aに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Aに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Aに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Aに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物2を単離した。単離収率(Isolated yield)は70%であった。
【0126】
得られた化合物2について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図2(a)及び
図2(b)に示す。化合物2は発光性を有することが示された。
【0127】
【0128】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム3に示す化合物Aを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Dを0.36mmol(化合物Aに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Aに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Aに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Aに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Aに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物3を単離した。単離収率(Isolated yield)は71%であった。
【0129】
得られた化合物3について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図3(a)及び
図3(b)に示す。化合物3は発光性を有することが示された。
【0130】
〔式(5)又は(6)で表される化合物の実施例〕
[実施例4]
【化20】
【0131】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム5に示す化合物Eを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Bを0.36mmol(化合物Eに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Eに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Eに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Eに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Eに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物5を単離した。単離収率(Isolated yield)は40%であった。
【0132】
得られた化合物5について、各蛍光固定波長における吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図4(a)に示す。
【0133】
【0134】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム6に示す化合物Fを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Bを0.36mmol(化合物Fに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Fに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Fに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Fに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Fに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物6を単離した。単離収率(Isolated yield)は48%であった。
【0135】
得られた化合物6について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図5(a)及び
図5(b)に示す。化合物6は発光性を有することが示された。
【0136】
【0137】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム7に示す化合物Fを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Gを0.36mmol(化合物Fに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Fに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Fに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Fに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Fに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物7を単離した。単離収率(Isolated yield)は88%であった。
【0138】
得られた化合物7について、各蛍光固定波長における吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図6(a)に示す。
【0139】
〔式(7)で表される化合物の実施例〕
[実施例7]
【化23】
【0140】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム8に示す化合物Hを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Bを0.36mmol(化合物Hに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Hに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Hに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Hに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Hに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで化合物8を単離した。単離収率(Isolated yield)は88%であった。
【0141】
得られた化合物8について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図7(a)及び
図7(b)に示す。化合物8は発光性を有することが示された。
【0142】
【0143】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム9に示す化合物Hを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Gを0.36mmol(化合物Hに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Hに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Hに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物Hに対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Hに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物9を単離した。単離収率(Isolated yield)は39%であった。
【0144】
得られた化合物9について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図8(a)及び
図8(b)に示す。化合物9は発光性を有することが示された。
【0145】
【0146】
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、スキーム10に示す化合物Hを0.15mmol(1.0eqiv)、化合物Iを0.36mmol(化合物Hに対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)2を0.015mmol(化合物Hに対して10mol%)、ホスフィン化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物Hに対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物10に対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物Hに対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋を閉め、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とう(30Hz)撹拌してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、エバポレーターでジクロロメタンを除いた後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的の化合物10を単離した。単離収率(Isolated yield)は11%であった。
【0147】
得られた化合物10について、各蛍光固定波長における発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を
図9(a)及び
図9(b)に示す。化合物10は発光性を有することが示された。