IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ 公立大学法人大阪の特許一覧

特開2022-85974光学特性測定方法および光学特性測定装置
<>
  • 特開-光学特性測定方法および光学特性測定装置 図1
  • 特開-光学特性測定方法および光学特性測定装置 図2
  • 特開-光学特性測定方法および光学特性測定装置 図3
  • 特開-光学特性測定方法および光学特性測定装置 図4
  • 特開-光学特性測定方法および光学特性測定装置 図5
  • 特開-光学特性測定方法および光学特性測定装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085974
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】光学特性測定方法および光学特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
G01M11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197752
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】小田 友和
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正治
(57)【要約】
【課題】本開示では、双方向OTDRにより、結合型マルチコアファイバの光学特性を測定することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る光学特性測定方法は、互いのモードフィールド径(MFD)及び比屈折率差が異なり、かつ、既知である2本のシングルコアファイバ(SCF)を直列に接続し、そのうちの1つと結合型マルチコアファイバ(MCF)の1つのコアを直列に接続して形成した光ファイバ伝送路に対して双方向OTDRを行い、2つの後方散乱光の強度の分布を取得し、前記2本のSCFのそれぞれにおける任意の1点及び前記結合型MCFの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記2つの後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの前記相加平均強度と、前記2本のSCFのそれぞれのMFD及び比屈折率差とから、前記結合型MCFのMFD、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合型マルチコアファイバの光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
互いのモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、前記モードフィールド径及び前記比屈折率差が既知である第1シングルコアファイバと第2シングルコアファイバとを直列に接続し、前記第2シングルコアファイバの未接続の端に前記結合型マルチコアファイバの1つのコアを直列に接続し、光ファイバ伝送路を形成すること、
前記光ファイバ伝送路の一端から第1の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記光ファイバ伝送路の他端から第2の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記第1シングルコアファイバの任意の1点、前記第2シングルコアファイバの任意の1点及び前記結合型マルチコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の相加平均強度を算出すること、
3つの前記相加平均強度と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれの比屈折率差とから、前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出すること、
を行う光学特性測定方法。
【請求項2】
数C1を用いて前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C1】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径である。
【請求項3】
数C2を用いて前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C2】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
Δ(z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差であり、
kは定数である。
【請求項4】
前記結合型マルチコアファイバの波長分散を算出する際に、
数C3を用いて前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径を算出すること、
数C4を用いて前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差を算出すること、
前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差から材料分散を算出すること、
複数の波長λに関して取得した前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径から前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径の波長依存性を算出すること、
前記波長依存性から導波路分散を算出すること、
前記材料分散と前記導波路分散とを足して前記波長分散を算出すること
を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定方法。
【数C3】
【数C4】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径であり、
Δ(z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差であり、
kは定数である。
【請求項5】
試験光パルスを生成する試験光パルス生成器と、
互いにモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、前記モードフィールド径及び前記比屈折率差が既知であって、直列に接続された第1シングルコアファイバ及び第2シングルコアファイバと、前記第2シングルコアファイバに自身の有する1つのコアが直列に接続された結合型マルチコアファイバと、で構成される光ファイバ伝送路の一端に第1の試験光パルスを入力するとともに前記第1の試験光パルスによる後方散乱光を出力し、前記光ファイバ伝送路の他端に第2の試験光パルスを入力するとともに前記第2の試験光パルスによる後方散乱光を出力する入出力器と、
前記入出力器が出力した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、前記一端からの距離に関する分布を測定する測定器と、
前記第1シングルコアファイバの任意の1点、前記第2シングルコアファイバの任意の1点及び前記結合型マルチコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの前記相加平均強度と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれの比屈折率差とから、前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算器と、
を備える光学特性測定装置。
【請求項6】
前記演算器は、数C5を用いて前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の光学特性測定装置。
【数C5】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径である。
【請求項7】
前記演算器は、数C6を用いて前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の光学特性測定装置。
【数C6】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
Δ(z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差であり、
kは定数である。
【請求項8】
前記演算器は、前記結合型マルチコアファイバの波長分散を算出する際に、
数C7を用いて前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径を算出すること、
数C8を用いて前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差を算出すること、
前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差から材料分散を算出すること、
複数の波長λに関して取得した前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径から前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径の波長依存性を算出すること、
前記波長依存性から導波路分散を算出すること、
前記材料分散と前記導波路分散とを足して前記波長分散を算出すること
を行うことを特徴とする請求項5に記載の光学特性測定装置。
【数C7】
【数C8】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径であり、
Δ(z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差であり、
kは定数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信等に用いられる結合型マルチコアファイバの特性評価方法に関し、モードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様なインターネットサービスの普及により、光ファイバ1本を流れるトラフィック量が年々急速に増加している。一方、光ファイバで伝搬可能な伝送容量は有限であり、現在広く使われている単一モードファイバ(SMF:Single-Mode Fiber)では将来のトラフィック増大に対応できなくなることが予測されている。この状況を打破するために、1本の光ファイバに複数のコアを有する光ファイバ(以下、マルチコアファイバと称する)を用いた空間多重伝送システムが検討されている。
【0003】
近年、高密度空間多重と伝搬モード間の群遅延時間差低減を両立するために、光ファイバ長手方向のランダムな曲げやねじれによって、コア間のモードがランダムに結合するマルチコアファイバ(以下、結合型マルチコアファイバと称する。)が注目されている。結合型マルチコアファイバにおいても汎用的な単一モードファイバと同様に、モードフィールド径、比屈折率差及び波長分散は、重要な光学特性である。結合型マルチコアファイバ技術の発展や実用化のためには、これらの光学特性を簡単に評価できる技術が必要である。
【0004】
非特許文献1では、双方向OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)法により、SMFにおけるモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定する手法が開示されている。本手法は、光ファイバの光学特性を一端から非破壊で簡単に測定することができるため、SMFの光学特性を評価する技術として広く用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. Rossaro et al., “Spatially resolved chromatic dispersion measurement by a bidirectional OTDR technique,” Journal of Lightwave Technology, vol. 7, no. 3, pp. 475-483, 2001.
【非特許文献2】M. Ohashi et al., “Longitudinal fiber parameter measurements of multi-core fiber using OTDR,” Optics Express, vol. 22, no. 24, pp. 30137-30147, 2014.
【非特許文献3】M. Ohashi et al., “OTDR technique for measuring crosstalk and fiber parameters in multi-core fibers,” Proc. IEEE 6th International Conference on Photonics, 2016.
【非特許文献4】S. Kobayashi et al., “Characteristics of optical fibers in infrared wavelength region,” Review of the Electrical Communication Laboratories, vol. 26, no. 3-4, pp. 453-467, 1978.
【非特許文献5】K. Nakajima et al., “Chromatic dispersion distribution measurement along a single-mode optical fiber,” Journal of Lightwave Technology, vol. 15, no. 7, pp. 1905-1101, 1997.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、非特許文献2では、双方向OTDR法により、非結合型マルチコアファイバにおけるモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定する方法が開示されている。この方法では、コア間のクロストークが無視できるほど小さいとみなすことにより、モードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を取得している。しかし、結合型マルチコアファイバにおいては、コア間のクロストークは通常無視できないほど大きいため、関連技術は適用できず、双方向OTDR法による光学特性を取得するための方法および装置構成が不明であるという課題があった。
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、双方向OTDRにより、結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定することができる光学特性測定方法および光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の光学特性測定方法および光学特性測定装置は、互いの光学特性が異なり、かつ、光学特性が既知である2本のシングルコアファイバと、光学特性が未知の結合型マルチコアファイバとが直列に接続された光ファイバ伝送路を使用する。光ファイバ伝送路の一端及び他端のそれぞれで取得した後方散乱光強度の分布と既知の光学特性とを用いて、結合型マルチコアファイバの未知の光学特性を算出する。
【0009】
具体的には、本開示に係る光学特性測定方法は、
結合型マルチコアファイバの光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
互いのモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、前記モードフィールド径及び前記比屈折率差が既知である第1シングルコアファイバと第2シングルコアファイバとを直列に接続し、前記第2シングルコアファイバの未接続の端に前記結合型マルチコアファイバの1つのコアを直列に接続し、光ファイバ伝送路を形成すること、
前記光ファイバ伝送路の一端から第1の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記光ファイバ伝送路の他端から第2の試験光パルスを入力すること、
前記一端からの距離に関して、前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること、
前記第1シングルコアファイバの任意の1点、前記第2シングルコアファイバの任意の1点及び前記結合型マルチコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の相加平均強度を算出すること、
3つの前記相加平均強度と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれの比屈折率差とから、前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出すること、
を行う。
【0010】
具体的には、本開示に係る光学特性測定装置は、
試験光パルスを生成する試験光パルス生成器と、
互いにモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、前記モードフィールド径及び前記比屈折率差が既知であって、直列に接続された第1シングルコアファイバ及び第2シングルコアファイバと、前記第2シングルコアファイバに自身の有する1つのコアが直列に接続された結合型マルチコアファイバと、で構成される光ファイバ伝送路の一端に第1の試験光パルスを入力するとともに前記第1の試験光パルスによる後方散乱光を出力し、前記光ファイバ伝送路の他端に第2の試験光パルスを入力するとともに前記第2の試験光パルスによる後方散乱光を出力する入出力器と、
前記入出力器が出力した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、前記一端からの距離に関する分布を測定する測定器と、
前記第1シングルコアファイバの任意の1点、前記第2シングルコアファイバの任意の1点及び前記結合型マルチコアファイバの所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した前記第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び前記第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの前記相加平均強度と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれのモードフィールド径と、前記第1シングルコアファイバ及び前記第2シングルコアファイバのそれぞれの比屈折率差とから、前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算器と、
を備える。
【0011】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法および光学特性測定装置では、
数C1を用いて前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径を算出してもよい。
【数C1】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径である。
【0012】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法および光学特性測定装置では、
数C2を用いて前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差を算出してもよい。
【数C2】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
Δ(z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差であり、
kは定数である。
【0013】
例えば、本開示に係る光学特性測定方法および光学特性測定装置では、
前記結合型マルチコアファイバの波長分散を算出する際に、
数C3を用いて前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径を算出すること、
数C4を用いて前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差を算出すること、
前記結合型マルチコアファイバの比屈折率差から材料分散を算出すること、
複数の波長λに関して取得した前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径から前記結合型マルチコアファイバのモードフィールド径の波長依存性を算出すること、
前記波長依存性から導波路分散を算出すること、
前記材料分散と前記導波路分散とを足して前記波長分散を算出してもよい。
【数C3】
【数C4】
ただし、zは前記一端から前記所望の1点までの距離、z1は前記一端から前記第1シングルコアファイバの任意の1点までの距離、z2は前記一端から前記第2シングルコアファイバの任意の1点までの距離であり、
I(z)は前記所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は前記所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関してのモードフィールド径であり、
Δ(z)は前記所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は前記第1シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は前記第2シングルコアファイバの任意の1点に関しての比屈折率差であり、
kは定数である。
【0014】
本開示の光学特性測定方法および光学特性測定装置は、互いの光学特性が異なり、かつ、既知である2本のシングルコアファイバと、光学特性が未知の結合型マルチコアファイバとが直列に接続された光ファイバ伝送路の一端及び他端のそれぞれで取得した後方散乱光強度の分布と既知の光学特性とを用いることで、双方向OTDRにより、結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定することができる。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、双方向OTDRにより、結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定することができる光学特性測定方法および光学特性測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
図2】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
図3】本発明に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を示す。
図4】本発明に係る光学特性測定方法の手順の一例を示す。
図5】本発明に係る光学特性測定方法の手順の一例を示す。
図6】本発明に係る光学特性測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態に係る光学特性測定装置の概略構成の一例を図1に示す。
本開示に係る光学特性測定装置は、
試験光パルスを生成する試験光パルス生成器11と、
互いにモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、モードフィールド径及び比屈折率差が既知であって、直列に接続された第1シングルコアファイバ10-1及び第2シングルコアファイバ10-2と、第2シングルコアファイバ10-2に自身の有する1つのコアが直列に接続された結合型マルチコアファイバ10-3と、で構成される光ファイバ伝送路10の一端Aに第1の試験光パルスを入力するとともに第1の試験光パルスによる後方散乱光を出力し、光ファイバ伝送路10の他端Bに第2の試験光パルスを入力するとともに第2の試験光パルスによる後方散乱光を出力する入出力器12と、
入出力器12が出力した第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、一端Aからの距離に関する分布を測定する測定器13と、
第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点、第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点及び結合型マルチコアファイバ10-3の所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度の相加平均強度を算出し、3つの相加平均強度と、第1シングルコアファイバ10-1及び第2シングルコアファイバ10-2のそれぞれのモードフィールド径と、第1シングルコアファイバ10-1及び第2シングルコアファイバ10-2のそれぞれの比屈折率差とから、結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出する演算器14と、を備える。
【0020】
本実施形態に係る光学特性測定装置の構成の一例について図2および図3を用いて具体的に説明する。
【0021】
試験光パルス生成器11の一例を図2に示す。試験光パルス生成器11は、光源11-1と、光強度変調器11-2と、パルス発生器11-3とを備える。
【0022】
光源11-1は、試験光として使用する波長の連続光を出力する。
【0023】
パルス発生器11-3は、パルス信号を光強度変調器11-2に送る。また、パルス発生器11-3は、測定器13に対して、後方散乱光強度分布の測定を開始するタイミングを決めるためのトリガ信号を出力しても良い。
【0024】
光強度変調器11-2は、光源11-1より出力される連続光をパルス発生器11-3の信号に従ってパルス化して、試験光パルスにする。光強度変調器11-2は、例えば、音響光学素子をパルス駆動するようにした音響光学スイッチを備える音響光学変調器でもよい。
【0025】
入出力器12は、例えば、光サーキュレータを備える。光サーキュレータは、光の伝搬方向を制御する。
【0026】
測定器13の一例を図3に示す。測定器13は、受光器13-1と、A/D(アナログ/デジタル)変換器13-2と、信号処理部13-3とを備える。
【0027】
受光器13-1は、入出力器12と単一コアファイバで接続しており、光伝送路10内で発生した後方散乱光を、入出力器12を介して受光する。
【0028】
A/D変換器13-2は、受光器13-1からの電気信号をデジタルデータに変換する。A/D変換器13-2は、デジタルデータを信号処理部13-3に入力する。
【0029】
信号処理部13-3は、入力されたデジタルデータから後方散乱光の強度分布を取得する。
【0030】
演算器14は、信号処理部13-3で取得した後方散乱光強度の分布からモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を算出する演算処理を行う。本演算処理の詳細については後述するステップS07で説明する。
【0031】
なお、信号処理部13-3および演算器14はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0032】
本実施形態に係る光学特性測定方法の手順の一例を図4及び図5に示す。
本実施形態に係る光学特性測定方法は、
結合型マルチコアファイバ10-3の光学特性を測定する光学特性測定方法であって、
互いのモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、モードフィールド径及び比屈折率差が既知である第1シングルコアファイバ10-1と第2シングルコアファイバ10-2とを直列に接続し、第2シングルコアファイバ10-2の未接続の端に結合型マルチコアファイバ10-3の1つのコアを直列に接続し、光ファイバ伝送路10を形成すること(ステップS00)、
光ファイバ伝送路10の一端Aから第1の試験光パルスを入力すること(ステップS01)、
一端Aからの距離に関して、第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること(ステップS02及びS03)、
光ファイバ伝送路10の他端Bから第2の試験光パルスを入力すること(ステップS04)、
一端Aからの距離に関して、第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定すること(ステップS05及びS06)、
第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点、第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点及び結合型マルチコアファイバ10-3の所望の1点のそれぞれについて、対数スケールで表示した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の相加平均強度を算出すること(サブステップS07-1)、
3つの相加平均強度と、第1シングルコアファイバ10-1及び第2シングルコアファイバ10-2のそれぞれのモードフィールド径と、第1シングルコアファイバ10-1及び第2シングルコアファイバ10-2のそれぞれの比屈折率差とから、結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散の少なくとも1つを算出すること(サブステップS07-2からS07-7)、を行う。
以下、ステップS00からステップS07まで詳細に説明する。
【0033】
(ステップS00)
図1に示すように、互いのモードフィールド径及び比屈折率差が異なり、かつ、モードフィールド径及び比屈折率差が既知である第1シングルコアファイバ10-1と第2シングルコアファイバ10-2とを直列に接続し、第2シングルコアファイバ10-2の未接続の端に結合型マルチコアファイバ10-3の1つのコアを直列に接続し、光ファイバ伝送路10を形成する。
【0034】
(ステップS01)
試験光パルス生成器11は、前述したように、光源11-1から出力された連続光を試験光パルスに変え、入出力器12を介して第1の試験光パルスを光ファイバ伝送路10の一端Aから入力する。
【0035】
(ステップS02)
測定器13は、ステップS01で入力した第1の試験光パルスにより光ファイバ伝送路10内で発生した後方散乱光を、前述したように、一端Aに接続された入出力器12を介して受光する。
【0036】
(ステップS03)
測定器13は、ステップS02で受光した第1の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、光ファイバ伝送路10の一端Aからの距離に関する分布を測定する。
【0037】
(ステップS04)
試験光パルス生成器11は、前述したように、光源11-1から出力された連続光を試験光パルスに変え、入出力器12を介して第2の試験光パルスを光ファイバ伝送路10の他端Bから入力する。
【0038】
(ステップS05)
測定器13は、ステップS04で入力した第2の試験光パルスにより光ファイバ伝送路10内で発生した後方散乱光を、前述したように、他端Bに接続された入出力器12を介して受光する。
【0039】
(ステップS06)
測定器13は、ステップS05で受光した第2の試験光パルスによる後方散乱光の強度について、光ファイバ伝送路10の一端Aからの距離に関する分布を測定する。
【0040】
なお、ステップS04からS06までを先に行い、第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定した後に、ステップS01からS03までを行い、第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を測定してもよい。
【0041】
(ステップS07)
演算器14は、ステップS03およびステップS06において、信号処理部13-3で測定した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布を用いて、結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差および波長分散を算出する。本ステップは、図5に示すサブステップS07-1からサブステップS07-7をさらに備えてもよい。以下、サブステップS07-1からS07-7について説明する。
【0042】
(サブステップS07-1)
演算器14は、ステップS03およびステップS06において、信号処理部13-3で測定した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布から、結合型マルチコアファイバ10-3の所望の1点における第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度を抽出し、対数スケールで表示する。対数スケールで表示した第1の試験光パルスによる後方散乱光強度及び第2の試験光パルスによる後方散乱光強度を足して2で割ることで、相加平均強度を求める。同様に、第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点及び第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点のそれぞれについても相加平均強度を求める。
【0043】
なお、測定した後方散乱光強度から直接算出する相加平均強度は、後方散乱光強度の分布の数式がわかれば、数式を用いて表現することができる。2つのコアを有する結合型マルチコアファイバを例にとって、相加平均強度を表現する数式について説明する。ここでは、光ファイバ伝送路10の一端Aからの距離をzで表す。結合型マルチコアファイバは、2つのコアを有し、それぞれコア1およびコア2と称するとする。コア1及びコア2の損失係数α、レイリー散乱係数αsおよび後方散乱光捕獲率Bの距離zに関する性質は等しく、電力結合係数hは長手方向に均一とみなせるとする。ここでは、コア1に第2シングルコアファイバ10-2が直列に接続されたとして説明するが、コア2の場合も同様である。
【0044】
ステップS01で光ファイバ伝送路10の一端Aから入力する第1の試験光パルスの強度をP0とする。ステップS04で光ファイバ伝送路10の他端Bから入力する第2の試験光パルスの強度をP1とする。
【0045】
上記設定において、ステップS03で得られるコア1の第1の試験光パルスによる後方散乱光強度の分布は、数1で表すことができる。
【数1】
なお、Pbs1(z)は光ファイバ伝送路10の一端Aから第1の試験光パルスを入力した際の後方散乱光の強度分布を表す。Lは第1シングルコアファイバ10-1及び第2シングルコアファイバ10-2の合計の長さを表す。Lは結合型マルチコアファイバ10-3の長さを表す。
【0046】
ステップS06で得られるコア1の第2の試験光パルスによる後方散乱光強度分布は、数2で表すことができる。
【数2】
なお、Pbs2(z)は光ファイバ伝送路10の他端Bから第2の試験光パルスによる試験光パルスを入力した際の後方散乱光の強度分布を表す。数1および数2では、損失係数αが距離zによらないとしている。
【0047】
ここで、結合型マルチコアファイバにおける電力結合係数hは、通常、数1ではz=Lとなる点を除いて、数2ではz=L+Lとなる点を除いて、数1および数2における電力結合係数hを含む指数関数項をほぼゼロとみなすことができるほど大きい。したがって、数1および数2はそれぞれ、以下の数3および数4のように近似することができる。
【数3】
【数4】
【0048】
相加平均強度は数3および数4を用いて、数5で表すことができる。
【数5】
上記では、光ファイバ伝送路10の各コアの損失係数αが一様な場合を示したが、各コアの損失係数αが一様でない場合は、損失係数αは数6で表すことができる。
【数6】
よって、各コアの損失係数αが一様でない場合には、相加平均強度は数5aのように表すことができる。
【数5a】
従って、相加平均強度は、数5又は数5aによる数式で表現することができる。
【0049】
(サブステップS07-2)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1シングルコアファイバ10-1のモードフィールド径と、第2シングルコアファイバ10-2のモードフィールド径とを、数7(非特許文献3参照。)に用いて結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径を算出する。
【数7】
なお、zは一端Aから所望の1点までの距離、z1は一端Aから第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点までの距離、z2は一端Aから第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点までの距離であり、
I(z)は所望の1点に関しての相加平均強度、I(z1)は第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関しての相加平均強度、I(z2)は第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関しての相加平均強度であり、
λは波長であり、
w(λ、z)は所望の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z1)は第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関してのモードフィールド径、w(λ、z2)は第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関してのモードフィールド径である。
【0050】
(サブステップS07-3)
サブステップS07-1で取得した3つの相加平均強度と、第1シングルコアファイバ10-1の比屈折率差と、第2シングルコアファイバ10-2の比屈折率差とを、数8(非特許文献3を参照。)に用いて結合型マルチコアファイバ10-3の比屈折率差を算出する。
【数8】
なお、Δ(z)は所望の1点に関しての比屈折率差、Δ(z1)は第1シングルコアファイバ10-1の任意の1点に関しての比屈折率差、Δ(z2)は第2シングルコアファイバ10-2の任意の1点に関しての比屈折率差である。また、kは結合型マルチコアファイバ10-3のコアに添加される材料に依存する定数であり、例えば、コアへの添加材料がGeOの場合は0.62である。
【0051】
(サブステップS07-4)
サブステップS07-3で算出した比屈折率差Δ(z)と、屈折率nの波長依存性を記述するセルマイヤの分散関係式を表す数9(非特許文献4を参照。)と、を用いて結合型マルチコアファイバ10-3のコアの屈折率波長依存性を算出する。
【数9】
数9のAおよびBはファイバ材料に依存する定数であり、結合型マルチコアファイバ10-3の比屈折率差から決定できる。例えば、Aを求める場合には、図6に示すように、非特許文献4に記載されている、ドーパント量が特定の値であるコアの比屈折率差に対応する定数(A)と、純石英の比屈折率差に対応する定数(A)との間で線形補間を行ってもよい。そして、その結果得られた直線を比屈折率差Δを変数とする一次関数A(Δ)として求め、A(Δ)のΔに数8で得た比屈折率差Δ(z)を代入することにより所望の定数(A)を求めてもよい。Bを求める場合も同様にしてもよい。
【0052】
数9で算出したコアの屈折率波長依存性を数10(非特許文献3を参照。)に用いて材料分散Dを求める。cは光速を表す。
【数10】
【0053】
(サブステップS07-5)
試験光パルスの波長を変えてステップS01からステップ06を複数回行い、複数の波長についての後方散乱光強度の分布を測定し、サブステップS07-1及びサブステップS07-2により、複数波長についての結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径を算出する。
【0054】
複数波長における結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径と、モードフィールド半径の波長依存性を表す近似式を表す数11(非特許文献5を参照。)と、を用いて結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径の波長依存性を算出する。
【数11】
ここで、3波長以上のモードフィールド径の測定結果から、係数a、b、cを決定することにより、結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径の波長依存性を算出することが望ましい。
【0055】
(サブステップS07-6)
サブステップS07-5で算出した結合型マルチコアファイバ10-3のモードフィールド径の波長依存性を導波路分散の近似式である数12(非特許文献3を参照。)に用いて導波路分散を算出する。
【数12】
なお、Dは導波路分散を、cは光速を、nはコアの屈折率を表す。また、数11のw(λ、z)を数12のwに代入することにより、導波路分散Dは数13で表すこともできる。
【数13】
【0056】
(サブステップS07-7)
数14に示すように、サブステップS07-4で算出した材料分散Dmと、サブステップS07-6で算出した導波路分散Dとを足して波長分散を算出する。
【数14】
【0057】
以上説明したように、本開示の光学特性測定方法および光学特性測定装置は、互いの光学特性が異なり、かつ、光学特性が既知である2本のシングルコアファイバと、光学特性が未知の結合型マルチコアファイバとが直列に接続された光ファイバ伝送路の一端及び他端のそれぞれで取得した後方散乱光強度の分布と既知の光学特性とを用いることで、双方向OTDRにより、結合型マルチコアファイバのモードフィールド径、比屈折率差及び波長分散を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示に係る光学特性測定方法および光学特性測定装置は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10:光ファイバ伝送路
10-1:第1シングルコアファイバ
10-2:第2シングルコアファイバ
10-3:結合型マルチコアファイバ
11:試験光パルス生成器
11-1:光源
11-2:光強度変調器
11-3:パルス発生器
12:入出力器
13:測定器
13-1:受光器
13-2:A/D変換機
13-3:信号処理部
14:演算器
101:光学特性測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6