(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001084
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】分離回収装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/10 20060101AFI20221222BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20221222BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08J11/10
B29B17/04 ZAB
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097670
(22)【出願日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2021101555
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 [NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクル技術の開発]委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393012046
【氏名又は名称】恵和興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593204650
【氏名又は名称】東西化学産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢
(72)【発明者】
【氏名】山口 有朋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修
(72)【発明者】
【氏名】入佐 勇摩
(72)【発明者】
【氏名】高間 昭
(72)【発明者】
【氏名】西村 昂亮
(72)【発明者】
【氏名】鯨岡 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】秋元 啓太
(72)【発明者】
【氏名】高畑 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】釘本 大資
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】羽村 敏
(72)【発明者】
【氏名】今井 孝博
(72)【発明者】
【氏名】大森 友美子
(72)【発明者】
【氏名】加和 学
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA07
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA17
4F401AA18
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA25
4F401AD01
4F401BA06
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA21
4F401CA48
4F401CA51
4F401CA58
4F401CA60
4F401CA72
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB32
4F401EA46
(57)【要約】
【課題】加水分解性ポリマーを含有する樹脂と非加水分解性ポリマーを含有する樹脂とを含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーをその原料化合物として、また非加水分解性ポリマーを加水分解性ポリマーの混入を抑制した高純度のポリマーとして、連続的に、分離、回収可能な装置を提供する。
【解決手段】上記樹脂混合体から、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に分離回収する装置であって、樹脂混合体を破砕する破砕ユニットと、破砕ユニットで得られた破砕物を溶融させて流体とし、高圧で吐出する溶融吐出ユニットと、溶融吐出ユニットから吐出された流体を連続的に水熱反応処理する水熱反応処理ユニットとを備え、水熱反応処理ユニットにおいて、加水分解性ポリマーAを加水分解してその加水分解成分aを焼結合金製の隔膜に浸透した水に溶解、移行することにより、非加水分解性ポリマーBを分離させる、分離回収装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性ポリマーAを主成分とする樹脂1と非加水分解性ポリマーBを主成分とする樹脂2とを少なくとも含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に分離回収する装置であって、
前記樹脂混合体を破砕する破砕ユニットと、
前記破砕ユニットで得られた破砕物を溶融させて流体とし、高圧で吐出する溶融吐出ユニットと、
前記溶融吐出ユニットから吐出された流体を連続的に水熱反応処理する水熱反応処理ユニットとを備え、
前記水熱反応処理ユニットにおいて、前記加水分解性ポリマーAを加水分解して、その加水分解成分aを焼結合金製の隔膜に浸透した水に溶解、移行することにより、前記非加水分解性ポリマーBを分離させる、分離回収装置。
【請求項2】
前記溶融吐出ユニットが前記破砕物を溶融して吐出する、請求項1に記載の分離回収装置。
【請求項3】
前記溶融吐出ユニットと前記水熱反応処理ユニットの間に、前記溶融吐出ユニットから吐出された流体に含まれる不溶成分を除去する分離ユニットを備え、
前記分離ユニットが、
前記溶融吐出ユニットから吐出された流体を流入させる流入口と、
前記流入口に接続され、前記流入口から流入した流体を高圧で流通させる第1流路と、
前記第1流路に沿って配置され、前記流体中の不溶成分を流体から分離する分離膜と、
前記分離膜に対して前記第1流路と反対側に配置され、前記分離膜により不溶成分が除去された流体が流通する第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記不溶成分が除去された流体が流出する流体流出口と、
前記第1流路から延設され、前記分離された不溶成分を排出する不溶成分排出口と、
を有している、請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【請求項4】
前記水熱反応処理ユニットの前段に、非加水分解性ポリマーBを分離して、前記水熱反応処理ユニットに移送する流体中の非加水分解性ポリマーBの含有量を高める濃縮ユニットを備え、
前記濃縮ユニットが、移送されてきた流体を冷却することによって一部のポリマーを析出固化させる冷却サブユニットと、前記冷却サブユニットに接続され、析出固化した前記ポリマー成分を除去する除去サブユニットとを備え、
前記除去サブユニットが、
前記冷却サブユニットから移送され、前記析出固化したポリマーを含む流体を流入させる流入口と、
前記流入口に接続され、前記流入口から流入した流体を流通させる第1流路と、
前記第1流路に沿って配置され、前記流体に含まれる析出固化したポリマーを流体から分離する分離膜と、
前記分離膜に対して前記第1流路と反対側に配置され、前記分離膜により析出固化したポリマーが除去された流体が流通する第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記析出固化したポリマーが除去された流体が流出する流体流出口と、
前記第1流路から延設され、前記分離された析出固化したポリマーを排出する排出口と、
を有している、請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【請求項5】
前記水熱反応処理ユニットが、
加水分解性ポリマーAを含む流体が流入する流入口と、
前記流入口に接続され、前記流入口から流入した流体を流通させる第1流路と、
前記第1流路から延設され、水熱反応処理された流体の残留物を流出させる残留物流出口と、
前記第1流路に沿って配置され、水の浸透が可能でかつ溶融ポリマーの通過を阻止する隔膜と、
前記隔膜に対して前記第1流路と反対側に前記隔膜を介して前記第1流路と隣接配置され、水を流通させる第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路に水を流入させる水流入口と、
前記第2流路に設けられ、前記水流入口から流入して第2流路を流通しながら前記隔膜を通過してきた加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを含有する水混合物を前記第2流路から流出させる水混合物流出口と、
を有している、請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【請求項6】
前記水熱反応処理ユニットを、1基、又は直列若しくは並列に配置接続された2基以上備えている、請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【請求項7】
前記水熱反応処理ユニットの後段に、前記水混合物から加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを回収する加水分解成分回収ユニットを備え、
前記加水分解成分回収ユニットが、
前記加水分解成分aを含む水混合物が流入する流入口と、前記流入口に接続され、前記流入口から流入した水混合物を流通させる流路Aと、前記流路Aに接続され、前記加水分解成分aを水とともに流出する流出口とを有する冷却析出サブユニットと、
前記冷却析出サブユニットの前記流出口に接続され、前記水混合物から加水分解成分aを分離する固液分離サブユニットと、
を有している、請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【請求項8】
前記水熱反応処理ユニットの後段に、前記残留物から非加水分解性ポリマーBを回収するポリマーB回収ユニットを備え、
前記ポリマーB回収ユニットが、
前記残留物が流残留物入する残留物流入口と、
前記残留物流入口に接続され、前記残留物流入口から流入した残留物を流通させる流路Pと、
前記流路Pに沿って設けられ、前記残留物中に残存する水及び加水分解成分aを通過させて除去する除去膜と、
前記流路Pの、前記除去膜よりも下流側に接続され、残存する水及び加水分解成分aから分離されたポリマーBを流出させる流出口と、
を有している、請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性ポリマーAを含有する樹脂1と非加水分解性ポリマーBを含有する樹脂2とを少なくとも含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に分離回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー又はその加水分解成分のリサイクルは単一の成分で構成されている樹脂廃棄物が対象となることが多い。これは、ポリマーをそのままリサイクル(マテリアルリサイクルともいう)する場合、ポリマーの溶融温度や再成形条件等の安定性を損なわずに回収するためである。一方、ポリマーをその原料化合物にリサイクル(ケミカルリサイクルともいう)する場合、最大の収率で原料化合物を回収するための分解条件を一義的かつ簡便に決定しやすくなるためである。
これに対し、実際の樹脂廃棄物は、複数種の樹脂(ポリマー)が混在し、更に、樹脂自体の機能性や加飾性を担保するための、金属やセラミック等の蒸着層、印刷層等が設けられている。また、廃棄物であるため、汚れが付着していることもある。こういった樹脂廃棄物は、PETボトルや、樹脂成形工場等から排出される高純度樹脂等の一部の例外を除き、一般家庭からはプラスチックゴミ、事業所からは産業廃棄物として排出されている。これらは、一般ユーザーが樹脂種を判別して廃棄すること自体が難しいことが、実際の樹脂廃棄物が複数種の樹脂混在物等であること等の最大の理由となっている。そのため、樹脂廃棄物のほとんどは燃焼によるサーマルリサイクルに供されるこが多くなっている。
かかる状況下において、特許文献1は、縮合重合体フィルム層と付加重合体フィルム層からなるプラスチック多層成形品等の廃棄物をまとめて水とを高温で処理することで、縮合重合体をモノマーまで分解・回収し、残留する付加重合体の混合物を分解油化する方法を提案している。この方法は、上記現状に一石を投じるものではあるものの、単純な回分式装置によって試験されたものであり、また限られた条件でのみ適用可能であることから、上述のような実際の樹脂廃棄物のリサイクルにおいては、実現性及び汎用性が低いものに留まっており、更なる検討が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、樹脂廃棄物が単一のポリマー成分を含むものであれば多様なリサイクル手法が存在するものの、複数種のポリマーが混在する樹脂廃棄物は従来のリサイクル法を適用できないことが多い。そのため、ほとんどの樹脂廃棄物は、サーマルリサイクルに供されるか、又は混合物のまま多量のフィラーを混入して純度が要求されない分野に再利用するカスケード的な利用方法に供されることになる。このような複数種のポリマーが混在する樹脂廃棄物のリサイクル法、特に工業的に有利な連続的リサイクル法、更にこれらリサイクル法を実施可能なリサイクル装置等は、未だ確立されていない。
例えば、上述の特許文献1に記載の方法においても、付加重合体は、マテリアルリサイクルが難しく、まとめて分解油化し、重油相当の燃料として利用せざるを得ない。付加重合体は、水熱反応処理によって分解されないから、残留する縮合重合体由来のモノマーや分解しきれない縮合重合体の残留(混入)により、リサイクル可能な純度が担保できないためである。
また、複数のポリマーを組み合わせて樹脂成形品等(例えば樹脂製部品、樹脂製品)を製造する場合、通常、基材に付加重合体であるポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)を使用し、ここに機能性を与えるための多様なポリマーを含む樹脂を積層する手法が汎用される。この場合、対象となる樹脂成形品の半分以上がPPやPE等の付加重合体で形成されるため、これら樹脂成形品を特許文献1に記載の方法に適用しても、回収物の半分以上を占める付加重合体は油化、すなわちサーマルリサイクルに供されてしまい、汎用性の高いリサイクル法とはならない。
【0005】
本発明は、加水分解性ポリマーを含有する樹脂と非加水分解性ポリマーを含有する樹脂とを含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーをその原料化合物として、また非加水分解性ポリマーを加水分解性ポリマーの混入を抑制した高純度のポリマーとして、連続的に、分離、回収可能な装置を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>加水分解性ポリマーAを主成分とする樹脂1と非加水分解性ポリマーBを主成分とする樹脂2とを少なくとも含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に分離回収する装置であって、
前記樹脂混合体を破砕する破砕ユニットと、
前記破砕ユニットで得られた破砕物を溶融させて流体とし、高圧で吐出する溶融吐出ユニットと、
前記溶融吐出ユニットから吐出された流体を連続的に水熱反応処理する水熱反応処理ユニットとを備え、
前記水熱反応処理ユニットにおいて、前記加水分解性ポリマーAを加水分解して、その加水分解成分aを焼結合金製の隔膜に浸透した水に溶解、移行することにより、前記非加水分解性ポリマーBを分離させる、分離回収装置。
<2>前記溶融吐出ユニットが前記破砕物を溶融して吐出する、<1>に記載の分離回収装置。
<3>前記溶融吐出ユニットと前記水熱反応処理ユニットの間に、前記溶融吐出ユニットから吐出された流体に含まれる不溶成分を除去する分離ユニットを備え、
前記分離ユニットが、
前記溶融吐出ユニットから吐出された流体を流入させる流入口と、
前記流入口に接続され、前記流入口から流入した流体を高圧で流通させる第1流路と、
前記第1流路に沿って配置され、前記流体中の不溶成分を流体から分離する分離膜と、
前記分離膜に対して前記第1流路と反対側に配置され、前記分離膜により不溶成分が除去された流体が流通する第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記不溶成分が除去された流体が流出する流体流出口と、
前記第1流路から延設され、前記分離された不溶成分を排出する不溶成分排出口と、
を有している、<1>又は<2>に記載の分離回収装置。
<4>前記水熱反応処理ユニットの前段に、非加水分解性ポリマーBを分離して、前記水熱反応処理ユニットに移送する流体中の非加水分解性ポリマーBの含有量を高める濃縮ユニットを備え、
前記濃縮ユニットが、移送されてきた流体を冷却することによって一部のポリマーを析出固化させる冷却サブユニットと、前記冷却サブユニットに接続され、析出固化した前記ポリマー成分を除去する除去サブユニットとを備え、
前記除去サブユニットが、
前記冷却サブユニットから移送され、前記析出固化したポリマーを含む流体を流入させる流入口と、
前記流入口に接続され、前記流入口から流入した流体を流通させる第1流路と、
前記第1流路に沿って配置され、前記流体に含まれる析出固化したポリマーを流体から分離する分離膜と、
前記分離膜に対して前記第1流路と反対側に配置され、前記分離膜により析出固化したポリマーが除去された流体が流通する第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記析出固化したポリマーが除去された流体が流出する流体流出口と、
前記第1流路から延設され、前記分離された析出固化したポリマーを排出する排出口と、
を有している、<1>~<3>のいずれか1項に記載の分離回収装置。
<5>前記水熱反応処理ユニットが、
加水分解性ポリマーAを含む流体が流入する流入口と、
前記流入口に接続され、前記流入口から流入した流体を流通させる第1流路と、
前記第1流路から延設され、水熱反応処理された流体の残留物を流出させる残留物流出口と、
前記第1流路に沿って配置され、水の浸透が可能でかつ溶融ポリマーの通過を阻止する隔膜と、
前記隔膜に対して前記第1流路と反対側に前記隔膜を介して前記第1流路と隣接配置され、水を流通させる第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路に水を流入させる水流入口と、
前記第2流路に設けられ、前記水流入口から流入して第2流路を流通しながら前記隔膜を通過してきた加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを含有する水混合物を前記第2流路から流出させる水混合物流出口と、
を有している、<1>~<4>のいずれか1項に記載の分離回収装置。
<6>前記水熱反応処理ユニットを、1基、又は直列若しくは並列に配置接続された2基以上備えている、<1>~<5>のいずれか1項に記載の分離回収装置。
<7>前記水熱反応処理ユニットの後段に、前記水混合物から加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを回収する加水分解成分回収ユニットを備え、
前記加水分解成分回収ユニットが、
前記加水分解成分aを含む水混合物が流入する流入口と、前記流入口に接続され、前記流入口から流入した水混合物を流通させる流路Aと、前記流路Aに接続され、前記加水分解成分aを水とともに流出する流出口とを有する冷却析出サブユニットと、
前記冷却析出サブユニットの記流出口に接続され、前記水混合物から加水分解成分aを分離する固液分離サブユニットを有している、<1>~<6>のいずれか1項に記載の分離回収装置。
<8>前記水熱反応処理ユニットの後段に、前記残留物から非加水分解性ポリマーBを回収するポリマーB回収ユニットを備え、
前記ポリマーB回収ユニットが、
前記残留物が流残留物入する残留物流入口と、
前記残留物流入口に接続され、前記残留物流入口から流入した残留物を流通させる流路Pと、
前記流路Pに沿って設けられ、前記残留物中に残存する水及び加水分解成分aを通過させて除去する除去膜と、
前記流路Pの、前記除去膜よりも下流側に接続され、残存する水及び加水分解成分aから分離されたポリマーBを流出させる流出口と、
を有している、<1>~<7>のいずれか1項に記載の分離回収装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の分離回収装置は、加水分解性ポリマーを含有する樹脂と非加水分解性ポリマーを含有する樹脂とを含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーをその原料化合物(加水分解成分)として、また非加水分解性ポリマーを高純度のポリマーとして、連続的プロセスにより、分離、回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい形態である分離回収装置1の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい形態である分離回収装置1における一連の処理プロセス及び各ユニットで得られる被処理物を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の分離回収装置に好適な分離ユニット30の概略を示す一部切欠図である。
【
図4】
図4は、本発明の分離回収装置に好適な水熱反応処理ユニット50Aの概略を示す一部切欠図である。
【
図5】
図5は、本発明の分離回収装置に好適な水熱反応処理ユニット50Bの概略を示す一部切欠図である。
【
図6】
図6は、本発明の分離回収装置に好適な水熱反応処理ユニット50Cの概略を示す一部切欠図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の分離回収装置に好適な加水分解成分回収ユニットの概略を示す一部切欠図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の分離回収装置に別の好適な加水分解成分回収ユニットの概略を示す一部切欠図である。
【
図8】
図8は、本発明の分離回収装置に好適なポリマーB回収ユニット80の概略を示す一部切欠図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の好ましい形態である分離回収装置2の概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の別の好ましい形態である分離回収装置2における一連の処理プロセス及び各ユニットで得られる被処理物を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の分離回収装置に好適な濃縮ユニット40の概略を示す一部切欠図である。
【
図12】
図12は、本発明のまた別の好ましい形態である分離回収装置3の概略図である。
【
図13】
図13は、本発明のまた別の好ましい形態である分離回収装置3における一連の処理プロセス及び各ユニットで得られる被処理物を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の更に別の好ましい形態である分離回収装置4の概略図である。
【
図15】
図15は、本発明の更に別の好ましい形態である分離回収装置4における一連の処理プロセス及び各ユニットで得られる被処理物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、加水分解性ポリマーとは、ポリマーを構成する構成原料化合物の結合が加水分解可能な結合を介して構成されたポリマー(ポリマーの主鎖が加水分解可能)であり、本発明の分離回収装置における水熱反応処理ユニットにおいて、(例えば後述する特定の水熱反応処理条件下で)ポリマーがその構成原料化合物の化学的性質に起因して加水分解を受けるポリマーをいう。一方、非加水分解性ポリマーとは、ポリマーを構成する構成原料化合物の結合が加水分解されない若しくは加水分解されにくい結合を介して構成されたポリマーであり、本発明の分離回収装置における水熱反応処理ユニットにおいて、(例えば後述する特定の水熱反応処理条件下で)ポリマーがその構成原料化合物に加水分解されない若しくは加水分解されにくいポリマー、具体的な代表例としては高分子主鎖(連結鎖)の化学構造が実質的に炭素原子だけで構成されているポリマーをいう。
本発明において、特定のポリマーを主成分とする樹脂とはポリマー成分のうち特定のポリマーを最大含有量成分として含有する樹脂をいう。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
まず、本発明の分離回収装置に用いる処理対象物である樹脂混合体について、説明する。
[樹脂混合体]
本発明の分離回収装置に用いる処理対象物は、加水分解性ポリマーAを主成分とする樹脂1と、非加水分解性ポリマーBを主成分とする樹脂2とを少なくとも含む混合体である。樹脂1及び樹脂2は、例えば成形体又は製膜体として混合体の一部を構成していればよく、例えば成形基材や樹脂層(樹脂膜)等の形態で混合体を構成することができる。この混合体は、少なくとも、加水分解性ポリマーAを含む樹脂1と非加水分解性ポリマーBを含む樹脂2とを含むため、樹脂混合体又は異種樹脂混合体ともいう。
混合体は、樹脂1と樹脂2とを含む混合物であればよく、例えば、互いに積層されていない樹脂1及び樹脂2同士の単純混合物、樹脂1と樹脂2との積層体、更には単純混合物と積層体との混合物等が挙げられる。混合体としては、積層体(積層フィルム)を用いることができ、この場合、廃プラスチックとして大量に廃棄される、多層構造からなるプラスチック成形品(多層プラスチックフィルムともいう)、特に異種材料で構成したもの(異種多層フィルムともいう)を適用できる。混合体の形態(形状)は、特に制限されず、上記混合物や積層体のまま用いることができる。混合体、特に積層体における樹脂1及び樹脂2の樹脂層は、それぞれ、単層でも2層以上でもよい。
混合体における、樹脂1と樹脂2との混合割合(質量比)は、特に制限されず、加水分解性ポリマーAの分解生成物の生成量、非加水分解性ポリマーBの使用量、更には装置の運転コスト等を考慮して、適宜に設定できる。例えば、樹脂1:樹脂2=1:0.1~1:10(質量比)とすることができる。
【0011】
混合体における樹脂1は、主成分として加水分解性ポリマーAを1種又は2種以上含有している。加水分解性ポリマーとしては、縮合系ポリマーが挙げられる。縮合系ポリマーとは、重合反応原料となるモノマーから水分子やアルコール分子等の低分子量分子が脱離する重縮合により生成するポリマーである。例えば、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド(本発明ではPAと略記する場合がある)類(本発明では、便宜上、重縮合ではなくε-カプロラクタムの開環重合で生成するナイロン6等の開環重合ポリアミド類をここに包含する。)、ポリアセタール類、ポリエーテル類が挙げられる。なお、本発明においては、重縮合ではない反応様式(例えば開環重合)で生成する場合であっても、上記例示のポリマー類であれば、便宜的に、ここに包含する。更に具体的に以下例示する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ビスフェノールAを主原料とするポリカーボネート(PC)等のエステル結合(-COO-)を高分子主鎖の繰り返し単位に有する高分子;ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン6/66(PA6/66)、ナイロン12(PA12)、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとフタル酸類(テレフタル酸やイソフタル酸)等の芳香族ジカルボン酸を主原料とするポリアミド、更には、メタキシレンジアミン(MXD)等の芳香族ジアミンとアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を主原料とするポリアミド(代表例:PAMXD6)等のポリアミドポリマー;ポリオキシメチレンポリマー(POM、別称はポリアセタールポリマー)、ポリフェニレンエーテルポリマー(PPE)及びそのポリマーアロイ変性品(変性PPE;代表例はPPEとポリスチレンのポリマーアロイ)等が挙げられる。中でも、汎用性と工業的な使用数量の点で、PET及びPA6は多層フィルムの構成ポリマーとして重要であり、5大汎用エンジニアリングプラスチックであるPC、PBT、POM、PPE及び各種PAは耐熱性や機械的強度の点で自動車部品、電気機器(例:家電、パソコン)や携帯通信端末のプラスチック部品等において重要であるので、これらのポリマーが使用された熱可塑性樹脂成形体に対して本発明は好適に適用される。
【0012】
混合体における樹脂2は、主成分として非加水分解性ポリマーBを1種又は2種以上含有している。非加水分解性ポリマーBとしては、非縮合系ポリマーが挙げられる。非縮合系ポリマーとは、付加重合、配位重合、メタセシス重合等により合成される高分子主鎖骨格が炭素原子のみで構成されるポリマーをいい、ビニル系ポリマーやシクロオレフィンポリマーと呼ばれるものを包含する。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンポリマー(PO);ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS又はSAN)等のスチレン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリルポリマー;汎用のアクリルモノマー(例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート等の(メタ)アクリル化合物)と任意のラジカル重合性モノマーとの共重合体等のアクリル系ポリマーが挙げられる。中でも、PE、PP及びPSは多層フィルムの構成ポリマーとして重要であり、ABS及びASは汎用ポリオレフィンとエンジニアリングプラスチックの間に位置する重要な構造材料として、PMMAは透明ポリマーとして、それぞれ産業上幅広く利用されているので、これらのポリマーが使用された熱可塑性樹脂成形体に対して本発明は好適に適用される。
【0013】
混合体に含有される加水分解性ポリマーAと非加水分解性ポリマーBとの組み合わせは、上記の各ポリマーの適宜の組み合わせが挙げられ、好ましいポリマー同士の組み合わせが好ましく、特に好ましくは、ポリアミド又はポリエステルと、ポリエチレン又はポリプロピレンとの組み合わせである。
本発明においては、水熱反応処理条件を変更することにより、加水分解性ポリマーAの加水分解反応の生起を調整できる。このため、加水分解性ポリマーAを2種以上含有している樹脂1を有する樹脂混合体を用いることができる。例えば、加水分解性ポリマーAとしてポリエチレンテレフタレート(PET)とナイロン6(PA6)とが積層された樹脂1を有する樹脂混合体や、PETとPA6が独立して(非積層状態で)混在している樹脂混合体の場合は、PETとPA6それぞれに好適な加水分解条件が重なり合う水熱反応処理条件を選ぶことにより、それらを予め分別する手間をかけることなく、一括してそれらの加水分解生成物を回収することが可能となる。
【0014】
樹脂1及び樹脂2は、それぞれ、上記ポリマー以外の成分を含有していてもよい。ポリマー以外の成分としては、例えば、ガラス、炭素繊維、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム(タルク)、カオリン、雲母、有機又は無機からなる顔料等の粒子及びファイバー、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、ステアリン酸エステル等の長鎖脂肪酸エステル類等の可塑剤、ヒンダードフェノール系等の熱安定剤、アミン系等の紫外線吸収剤、グリセリン等多価アルコールの長鎖脂肪酸エステル等の滑剤、安息香酸ナトリウム塩、フタル酸ナトリウム塩、サリチル酸ナトリウム塩、4-ヒドロキシ安息香酸ナトリウム塩、ステアリン酸ナトリウム塩等のカルボン酸塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トルエンスルホン酸ナトリウム塩、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩等の有機スルホン酸塩等の結晶核剤、テフロン(登録商標)等のフッ素原子をポリマーの化学構造の繰り返し単位に含有するフッ素樹脂(滑り性や摺動性の付与)やエラストマー類(柔軟性や靭性の付与)等の特殊機能付与を目的とするポリマー、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、色材、難燃剤、強化材(例:ガラス繊維やガラスフレーク)といった添加剤等が挙げられる。各樹脂におけるポリマー以外の成分の含有量は、特に制限されないが、加熱溶融によって全体が流動化し、溶融吐出ユニットによって吐出できる範囲で適宜設定することができる。
また、樹脂1は、ポリマー成分として、加水分解性ポリマーAに加えて非加水分解性ポリマーBを含有していてもよい。同様に、樹脂2は、ポリマー成分として、非加水分解性ポリマーBに加えて加水分解性ポリマーAを含有していてもよいが、通常、加水分解性ポリマーAを含有していない。
【0015】
混合体、特に積層体は、樹脂1及び樹脂2以外に、樹脂1若しくは樹脂2を被覆する被覆層C、樹脂層同士を接着させる接着層D等を含んでいてもよい。被覆層C及び接着層Dとしては、例えば、無機化合物からなる無機膜(金属膜を含む。)、有機化合物からなる有機膜(樹脂膜を含む)が挙げられ、これらを形成する材料は1種でも2種以上でもよい。
上記材料としては、例えば、金属(スパッタや蒸着等の真空プロセス、メッキ(例えば、アルミニウム、ケイ素、銅-ニッケル-クロムの組み合わせ、金、パラジウム、スズ、ルテニウム、黒色三価クロム、錫コバルト合金等の遷移金属、これら金属の酸化物及び/又は窒化物等の無機物が挙げられる。例えば、塚田理研工業社のホームページ「https://www.tukada-riken.co.jp/products/index.html#wc_anc00001」が参考となる。))、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物を主体とするセラミクス(耐擦傷性を付与するハードコート、更に遷移金属酸化物組成を加えた紫外線吸収コートや反射防止コート等に利用される。)、インキ(例えば、有機顔料、無機顔料、染料、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂)等が挙げられる。被覆層C及び接着層Dは、複数種が任意の組み合わせと積層構造で使用されていてもよい。
【0016】
ポリマーA若しくはBと被覆層C若しくは接着層Dを形成している材料との組み合わせは、上記の各ポリマー及び材料の適宜の組み合わせが挙げられ、本発明が好ましく適用されるのは、産業上の使用数量の大きなもの、例えば、(1)異種多層フィルムとして基材としてPE、PP又はPS等のポリマーBにポリマーA(代表例はPET及びPA6)が積層されたものに被覆層C及び接着層Dとして印刷層、酸素および水を遮断するバリア層(アルミ層やシリカ層、アルミナ層、塩化ビニリデン層など)、帯電防止層、異種フィルムを接着させる接着剤層、ブロッキング防止層等が積層されたもの、(2)上記5大汎用エンジニアリングプラスチック(PC、PBT、POM、PPE及び各種PA)の成形品(好ましくは射出成型や押出成形により製造される。)に上記金属やセラミクスのコーティングを施したもの、(3)PPやABS等のポリマーBの大型成形品(例:自動車部品、家電筐体)に上記インキやセラミクスのコーティングを施したものである。
ポリマーと被覆層C及び接着層Dとの割合(質量比)は、特に制限されず、適宜に設定できるが、通常、例えば、ポリマー:被覆層C及び接着層D=100:10~100:0.001(質量比)とすることができる。
【0017】
樹脂混合体としては、未使用の樹脂混合物の他に、廃プラスチック(使用済み成形品、成形不良品若しくは成形カス等の廃棄物若しくは回収物)等を用いることができ、特に廃プラスチックを用いることにより、炭素資源の循環と地球環境の保全との実現に資する。廃プラスチックとしては、特に制限されないが、例えば、プラスチック製自動車部品(車台、内装、外層、窓ガラス部、ヘッドランプカバーや反射板等の照明部、サイドミラー、ディスプレイ部、安全ベルト・エアバッグ・エアバッグカバー等の安全機構、タンク・配管・ポンプ等の燃料系機構、コネクター等の電気配線機構、歯車等の機械的機構等)、電気機器(例:家電、パソコン)や携帯通信端末のプラスチック部品(筐体、ディスプレイ部品、電気回路基板、アンテナ等)、各種光ディスク、医療・健康器具のプラスチック部品(人工透析、輸液バッグ、使い捨てシリンジ、体力トレーニング器具等)、容器、包装用トレー、文具、玩具、家具、日用品、家電筐体等の各種成形品、更に、包装用フィルム(含:錠剤・粉体・液体等の医薬品の包装)、レジ袋等が挙げられ、中でも、数量の大きな自動車部品、電気機器や携帯通信端末、各種光ディスク、包装用フィルム等に由来する廃棄物に対して本発明を好適に用いると、大量に廃棄される多層プラスチックフィルム(多層プラスチック積層体)のリサイクルを促進できる。
【0018】
本発明の分離回収装置に用いる樹脂混合体は、上述の樹脂混合体に、熱可塑性ポリマーを含む樹脂の成形体、非熱可塑性ポリマーを含む樹脂の成形体が混在していてもよい。特に、廃プラスチックに由来する樹脂混合体を用いる場合、上述の樹脂混合体以外の成形体の混在は予め廃プラスチックの分別が不要となる点で好都合である。また、廃プラスチックに由来する樹脂混合体を用いる場合、例えば、紙若しくはプラスチック製のラベル、キャップの内蓋等が混在した樹脂混合体を用いることもできる。
【0019】
[本発明の分離回収装置]
本発明の分離回収装置は、樹脂混合体を破砕する破砕ユニットと、この破砕ユニットで得られた破砕物を溶融させて流体とし、高圧で吐出する溶融吐出ユニットと、この溶融吐出ユニットから吐出された流体(溶融物)を連続的に水熱反応処理する水熱反応処理ユニットとを備えている。
各ユニットは、隣接するユニット同士を接続する移送管により、当該ユニットで処理した被処理物を次ユニットに移送可能に構成されている。本発明の分離回収装置においては、上流側に配置されるユニット(通常、溶融吐出ユニット)から最下流に配置されるユニットまで移送管で一体的に接続されており、上流に配置されるユニットから下流に配置されるユニットに向かって徐々に圧力が低下していくように設定されている。これにより、流体の移送に際して溶融吐出ユニット以外に流体を加圧するユニットを設けることなく、運転することができる。なお、装置の設計において、ユニットの耐圧限界の都合によっては、高温に対応したラインポンプ等の圧力の増幅機構を用いることもできる。移送管は、通常用いられる冷却手段や加熱手段を備えていてもよく、流量や移送時期を調整可能なバルブ等を備えていてもよい。
【0020】
上記各ユニットを上記の順で備えている本発明の分離回収装置は、水熱反応処理ユニットにおいて樹脂混合体の各ユニットで処理して得られる流体(被処理物)を水熱反応処理することにより、樹脂混合体の樹脂1に含まれる加水分解性ポリマーAを加水分解して加水分解成分aとして、その加水分解成分aを焼結合金製の隔膜に浸透した水に溶解、移行することにより、樹脂混合体の樹脂2に含まれ、隔膜を浸透(通過)しない非加水分解性ポリマーBから、連続的に、分離、回収することができる。また、本発明の分離回収装置は、加水分解性ポリマー及び非加水分解性ポリマーの種類、組み合わせ等によらずに、加水分解性ポリマーAの加水分解成分及び非加水分解性ポリマーを連続的に回収することができる。そのため、本発明の分離回収装置は、加水分解性ポリマーAのケミカルリサイクル及び非加水分解性ポリマーの高純度マテリアルリサイクルを汎用的に可能としたケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルを同時に可能とする、樹脂廃棄物の連続的かつ工業的なハイブリッドリサイクルを実現できる。本発明において、「同時に」とは、分離回収装置において水熱反応処理の実施(粉砕ユニットから水熱反応処理ユニットまでの各ユニット、適宜に備えていてもよい後述するユニットで行われる一連の処理)により、加水分解性ポリマー(加水分解成分)と非加水分解性ポリマーBとを互いに分離して両者を回収すること(ハイブリッドリサイクルを可能とすること)を意味し、時間的に両者を同時に取り上げることを意味するものではない。
【0021】
本発明の分離回収装置は、破砕ユニット、溶融吐出ユニット及び水熱反応処理ユニットに加えて、後述する、分離ユニット、濃縮ユニット、加水分解成分回収ユニット、ポリマーB回収ユニット、循環水再加熱ユニット等の各ユニットの少なくとも1つ又は複数を任意ユニットとして適宜に備えていてもよく、複数の任意ユニットを備えている場合、各任意ユニットを任意の組み合わせで併設することができる。
本発明の分離回収装置及び各ユニットの作用等の詳細は後述するが、本発明の分離回収装置の好ましい形態を例に挙げて図面を参照して説明する。
【0022】
<本発明の好ましい分離回収装置>
本発明の好ましい形態である分離回収装置1は、
図1に示されるように、破砕ユニット10と、溶融吐出ユニット20と、分離ユニット30と、水熱反応処理ユニット50Aと、冷却析出サブユニット60Aと、固液分離サブユニット60Bと、循環水再加熱ユニット60Cと、ポリマーB回収ユニット80とを備えている。分離回収装置1において、破砕ユニット10と、溶融吐出ユニット20と、分離ユニット30と、水熱反応処理ユニット50Aとは、この順で直列的に配置されており、溶融吐出ユニット20から水熱反応処理ユニット50Aまでは移送管により接続されている。冷却析出サブユニット60A及びポリマーB回収ユニット80は水熱反応処理ユニット50Aに対して並列に(水熱反応処理ユニット50Aからそれぞれ分岐して)接続配置されている。冷却析出サブユニット60Aの下流側には1基の固液分離サブユニット60Bが接続配置され、水熱反応処理ユニット50Aの流入口52には循環水再加熱ユニット60Cが接続配置されている。分離回収装置1において、加水分解成分回収ユニット60は、上流側の冷却析出サブユニット60A及び下流側の固液分離サブユニット60Bを有している。
【0023】
分離回収装置1において、溶融吐出ユニット20以降の各ユニットは、溶融吐出ユニット20の吐出圧力及び流体(溶融成分)の溶融状態を維持しつつ移送する移送管で連結されており、溶融吐出ユニット20から固液分離サブユニット60B及びポリマーB回収ユニット80に向かって徐々に圧力が低下していくように設定されている。
分離回収装置1には、冷却析出サブユニット60A及び固液分離サブユニット60Bを接続する移送管、固液分離サブユニット60Bから延設される移送管、更には各ユニットの流出口等には、それぞれ、開閉バルブが設けられている。また、分離ユニット30及び水熱反応処理ユニット50Aを接続する移送管、冷却析出サブユニット60A及び循環水再加熱ユニット60Cを接続する移送管、更には各ユニットの流入口等には、ポンプが設けられている。
【0024】
この分離回収装置1は、固液分離サブユニット60Bを、1基備えているが、
図1に破線で示されるように、並列に接続配置された複数基(
図1においては3基)を備えていてもよい。
【0025】
この分離回収装置1は、
図2に示す一連の処理プロセスを実行でき、同図に示される、各ユニットで得られる被処理物を得ることができる。水熱反応処理ユニット50は、水の浸透が可能でかつ溶融ポリマーの通過を阻止する隔膜を備えている。水熱反応処理ユニット50、具体的には隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aにおいて、分離ユニット30から移送された流体(分離ユニット30で不溶成分が除去若しくは分離された流体)に含まれる加水分解性ポリマーAの加水分解により生じる加水分解成分aを焼結合金製の隔膜に浸透した水に溶解、移行することにより、上記流体に含まれる非加水分解性ポリマーBを溶融状態で流体(加水分解成分a)から高純度で分離することができ、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に回収することができる。こうして、樹脂混合体を連続的にハイブリッドリサイクルすることができる。
分離回収装置1に用いる樹脂混合体は、上述の通りであるが、例えば、加水分解性ポリマーA及び非加水分解性ポリマーBをそれぞれ1種含有し、加水分解性ポリマーAの融点MTAが非加水分解性ポリマーBの融点MTBよりも高いものが好ましい。
【0026】
以下、各ユニットについて具体的に説明する。
なお、処理対象物(樹脂混合体)の処理順(移送方向)において最初に処理する破砕ユニット側を上流側又は前段といい、回収ユニット側を下流側又は後段という。
【0027】
(破砕ユニット)
破砕ユニット10は、分離回収装置1の最上流側に配置され、樹脂混合体を破砕するユニットである。破砕ユニットは、樹脂混合体を破砕することができればその機械的構成は特に制限されないが、物理的に破砕するユニットであることが好ましい。
破砕ユニットは、樹脂混合体を破砕することができればよいが、溶融吐出ユニット20に適用できるサイズ(例えば速やかに溶融可能なサイズ)にまで破砕可能なものが好ましい。破砕ユニット10で得られる破砕物のサイズ及び破砕物の形状は特に制限されない。
本発明の分離回収装置1に適用可能な破砕ユニット10としては、具体的には、ジョークラッシャ、ボールミル、カッターミル、裁断機、摩砕機等の破砕機が挙げられる。これらに加え、破砕処理中の発熱によって樹脂混合体の軟化が起こり、破砕が難しくなる場合がある。この場合、液体窒素等を使用した冷凍粉砕を組み合わせることもできる。
更に、表面にめっきやコーティング等が施されている樹脂混合体を破砕する場合、破砕処理中にめっきやコーティング層が剥離することもある。これを利用して、樹脂混合体に含まれる不溶成分のうち溶融吐出ユニット20及び分離ユニット30に流れ込む不溶成分の絶対量を減らすことができる。その結果、分離ユニット30において、不溶成分を排出する際に、不溶成分に混合して全体として流体足らしめるための流体(例えば非加水分解性ポリマーB)量を最小限することができ、リサイクル率を向上させることができる。
【0028】
(溶融吐出ユニット)
溶融吐出ユニット20は、上記破砕ユニットの下流側(例えば破砕ユニット10の破砕物排出口)に、直接又は他の処理ユニット(例えばベルトコンベア等の移送装置)を介して(間接的に)配置されている。この溶融吐出ユニット20は、破砕物を加熱溶融することで流動性を付与して高圧で吐出するユニットであり、好ましくは破砕物を溶融して吐出するものである。ここで、「破砕物を溶融する」とは、溶融吐出ユニット20に移送された破砕物を加熱して、粉砕物に含まれるポリマーを溶融、混錬することで、溶融状態(流動状態)に相変化させることを意味する。
溶融吐出ユニット20は、破砕物を加熱溶融して流動状態にしてから吐出するため、吐出に際して従来の方法のように流動状態とするための水等を不要とし、従来の方法に比べて大幅なエネルギー削減が可能となる。すなわち、この溶融吐出ユニット20は、水等の溶媒を混合しなくても、樹脂混合体の破砕物自体を溶融状態で吐出できる。従来の方法としては、例えば、水熱反応処理を行う場合、破砕物と水等を混合してスラリーを形成させ、高圧スラリーポンプ等を使用して吐出し、その後、外部から加熱することによって水熱反応処理状態を作り出すのが一般的である。しかし、この方法では、あくまでもスラリーを形成させる必要があることから、破砕物(固形分)と水等の比率は1:9程度が限界であり、溶融させる際に混合した過剰な水等をも加熱するためにエネルギーを浪費するという問題がある。
溶融吐出ユニット20から吐出される吐出物は、溶融状態を維持したまま(流体として)、次ユニット、本形態においては分離ユニット30に高圧で移送される。
【0029】
溶融吐出ユニット20としては、特に制限されず、例えば、単軸若しくは複数軸を有するエクストルーダーや、ギアポンプ等を適用することができる。
溶融吐出ユニット20内で溶融されて吐出される吐出物(流体)の吐出圧(次ユニット等への移送圧)は、分離ユニット30において、分離膜35の両面における差圧を確保できる圧力であることが好ましく、例えば、101kPa(1atm)を越える高圧とすることができる。なお、溶融吐出ユニット20が上記差圧を確保できる圧力で流体を吐出できない場合には、溶融吐出ユニットと分離ユニットを連結する移送管にギアポンプ等の増圧設備を設けて加圧することにより、上記差圧を確保できる圧力まで加圧することもできる。
溶融吐出ユニット20で調製される「流体」とは、樹脂混合体の破砕物を単に溶融した溶融物を意味し、不純物して含まれる固形分の含有量が極端に多く、加熱溶融しても流動性を持たないものは除外する。
【0030】
溶融吐出ユニット20において、破砕物を溶融させる条件は、加水分解性ポリマーA及び非加水分解性ポリマーBの種類等に応じて一義的に決定できず、適宜に設定される。例えば、加熱温度としては、特に制限されないが、通常、樹脂混合体に含まれるポリマーの最も高い融点以上で最も低い分解温度未満の温度に設定され、その温度範囲は一般的に100~350℃である。最も高い融点を持つポリマーの融点以上、融点+50℃以下が好ましく、融点+10℃以上、融点+30℃以下がより好ましい。具体的には、最も高い融点を持つポリマーがPA6の場合は230~280℃が好ましく、240~260℃がより好ましく、最も高い融点を持つポリマーがPA6/66の場合は200~250℃が好ましく、210~230℃がより好ましく、最も高い融点を持つポリマーがPA66またはPETの場合は250~300℃が好ましく、260~280がより好ましい。また、加熱時間(処理時間)としては、特に制限されないが、加熱時間を長く取ることで、ポリマーの熱分解が進行する可能性が高くなる。これを踏まえ、装置的に実現できる範囲において極力短時間とすることが望ましい。
【0031】
(分離ユニット)
本発明の分離回収装置1は、溶融吐出ユニット20と水熱反応処理ユニット50Aとの間に分離ユニット30を備えている。分離ユニット30は、上記溶融吐出ユニット20から吐出された吐出物(流体)に含まれる夾雑物等の不溶成分を除去するユニットである。この分離ユニットは本発明の分離回収装置に適宜に適用されるユニットである。分離ユニットを備えない場合、不溶成分は分離回収装置1において、非加水分解ポリマーBとともに、最終的な出口まで残留する。この間、加水分解性ポリマーAの除去等により、相対的に不溶成分濃度が高まり、結果として流動性の低下や、ユニット内・移送管等における閉塞の原因となるため、極力上流側において取り除くことが好ましく、これが装置の安定運転に寄与することができる。
上述のように、実際の樹脂廃棄物は、めっきやコーティング層、更にラベル等の不溶成分が多分に含まれている。この成分は回収物の単なる不純物となるため、樹脂混合体からリサイクルする前に予め除去しておくことが好ましい。不溶成分は、溶融吐出ユニット20で溶融せずに吐出物に固体として混在している成分であり、例えば、ラベル等の紙、めっきやコーティング層を形成する各種無機物等が挙げられる。分離ユニットにおいて、不溶成分を除去する方法は、特に限定されず、次の方法を好適に挙げることができる。例えば、樹脂混合体に含まれるポリマーがすべて溶融する温度まで加熱し、ポリマーをすべて流動状態にした流体を、濾過等の固液分離することで、不溶成分を除去できる。ただし、不溶成分が分離ユニット30中に蓄積すると、吐出物は流動性を失い、分離ユニット内に滞留することになるため、吐出物が分離ユニット中を移送可能(分離処理可能)な流動性を維持する程度に溶融したポリマー量を調整することが好ましい。分離ユニットとしては、上記不溶成分の除去若しくは分離が可能な機器を特に限定されることなく適用することができ、例えば、耐熱及び耐圧性能に優れた焼結合金フィルターを用いて大きな差圧でろ過可能な連続固液分離器等が挙げられる。このときの「差圧」は、分離膜(焼結合金フィルター)の両面において吐出物から不溶成分を除去となる圧力差であればよく、吐出物の含有成分の種類若しくは含有量、吐出物の粘度等を考慮して、適宜に設定できる。
【0032】
分離回収装置1に適用可能な好ましい分離ユニット30は次の構成を有する固液分離器である。この分離ユニット30は、
図3に示されるように、断面が略円形の管状本体31を有している。そして、管状本体31の一方の端部に、溶融吐出ユニット20から吐出された流体(吐出物)を管状本体31内に流入させる流入口32と、流入口32に接続され、管状本体31の長手方向に延設された第1流路であって、流入口32から流入した流体を高圧で流通させる第1流路33と、第1流路33の下流側端部から延設(管状本体31の他方の端部に接続)され、流体から分離された不溶成分を排出する不溶成分排出口34とを有している。すなわち、流入口32と不溶成分排出口34は、管状本体31(第1流路33)の端部にそれぞれ連設されている。
分離ユニット30は、更に、第1流路33に沿って、第1流路33の外周面を包囲するように、管状本体31の内部に配置され、第1流路33内を流通する流体に混在している不溶成分を流体から分離する管状の分離膜35と、分離膜35の外周側(分離膜35に対して第1流路33と反対側)に管状本体31の長手方向に延在する管状に画成(配置)され、分離膜35を通過して不溶成分が除去、分離された流体が流通する第2流路36と、第2流路36に接続され、不溶成分が除去された流体が流出する流体流出口37とを備えている。すなわち、管状本体31は、内部空間が分離膜35によって、分離膜35の内側に画成された第1流路(内側流路)33と、分離膜35の外側に画成された第2流路(外側流路)36とを有する二重管構造を有している。
【0033】
分離ユニット30は、第1流路33を内側流路とし、第2流路36を外側流路とする二重管構造であるが、本発明においては、第1流路33を外側流路とし、第2流路36を内側流路とする二重管構造とすることもできる。すなわち、本発明の分離回収装置において、分離ユニットの分離膜は第1流路の内部若しくは外部に沿って配置(沿接)することができる。なお、第1流路33を外側流路とする場合、流入口、流体流出口及び不溶成分排出口は、各機能を奏する位置に設けられる。
分離膜35は、第1流路33内を流通する流体のうち溶融成分、通常ポリマー等を第2流路36に分離通過させる膜であって、例えば、多孔質の焼結合金パイプ、セラミックパイプ等を用いることができる。
分離ユニット30は、管状本体31の外周に、吐出物の溶融状態を維持するための加熱機構を有していてもよい。管状本体31の加熱温度は、特に制限されず、溶融吐出ユニット20での加熱温度に設定できる。また、分離ユニット30は、第1流路33内の流体を撹拌することができるミキサー(スタティックミキサー)等を第1流路33内に設置することもできる。
【0034】
上記分離ユニット30の作用について説明する。
流入口32から溶融状態を維持しつつ高圧で流入する流体(吐出物)は、溶融吐出ユニット20での溶融状態及び吐出圧を維持しながら第1流路33内を不溶成分排出口34に向かって流動する。このとき、第1流路33内は上記吐出圧が作用しており、一方、流体流出口37は第1流路よりも低い圧力になるよう、流出口37に設けられたバルブにより制御される。これにより第1流路33と第2流路36との圧力差が生じている。この圧力差によって、吐出物を構成する溶融成分は分離膜35を通過して第2流路36に流入し、不溶成分は分離膜35を通過できず第1流路33内に残留して、不溶成分排出口34に向かって流動する。第2流路36に流入した溶融成分は流体流出口37から排出され、次ユニット、本形態では水熱反応処理ユニット50に移送される。一方、第1流路33内を流動する不溶成分は不溶成分排出口34から排出される。ここで、不溶成分は、通常、第1流路33内に固体状態で存在するため速やかに移動しにくい。そのため、溶融成分の一部を、分離膜35を通過させずに第1流路33内に残存させて、この溶融成分とともに不溶成分を移送して不溶成分排出口34から排出することが好ましい。溶融成分の一部を残存させるには、例えば、第1流路33と第2流路36の差圧、分離膜35の孔径若しくは厚さ、不溶成分排出口34及び流体流出口37にバルブが取り付けられている場合、このバルブの開度バランス等により、適宜に設定できる。なお、残存させる溶融成分量は、リサイクル効率の大幅な低下を抑制する点で、不溶成分を不溶成分排出口34に移送するのに最低限必要な量とすることが好ましい。
こうして、分離ユニット30に移送された流体のうち、ポリマーA及びBを含む溶融成分と、不溶成分とを分離でき、不溶成分を除去した溶融成分を次ユニットに移送できる。これにより、不溶成分に由来する不純物を含まない、高純度の加水分解成分a及び非加水分解性ポリマーBを、より高いリサイクル効率で、分離回収できる。
【0035】
(水熱反応処理ユニット)
分離回収装置1において、水熱反応処理ユニット50は、溶融吐出ユニット20から吐出された流体を分離ユニット30で分離処理をした後、すなわち分離ユニット30で得られた不溶成分を除去した溶融成分を、水熱反応処理するユニットである。流体を溶融成分として水熱反応処理ユニット50に供給することにより、加水分解性ポリマーAの加水分解反応、更には反応系(加水分解成分a)から非加水分解性ポリマーBの分離を速やかに進行させて、高いリサイクル効率を実現できる。
この水熱反応処理ユニット50は、分離ユニット30から移送される溶融成分に含まれるポリマーのうち加水分解性ポリマーAを高温高圧条件下で水と接触させることにより、加水分解性ポリマーAを加水分解してその加水分解成分aを隔膜55に浸透した水に溶解、移行させて、上記溶融成分に含まれる非加水分解性ポリマーBを分離させることができる。
水熱反応処理ユニット50は、上記流体(溶融成分)を後述する水熱反応処理条件で水熱反応処理できるユニットであればよく、適宜の処理装置、例えば、オートクレーブや反応管等の密閉型反応容器が選択される。本発明においては、連続的な水熱反応処理が可能となる装置が好ましく、具体的には、水の浸透が可能でかつ溶融ポリマーの通過を阻止する隔膜(多孔質膜等の分離膜)を備えたユニットが好ましい。隔膜は、高粘度な樹脂が浸透せず、かつ水が容易に浸透する適切なメディアを選定することができる。これにより溶融成分(ポリマー)の流速と水の流速を個別に制御できるため、隔膜を通過した加水分解成分aが長時間高温に曝されることによる純度低下等のデメリットを防ぐことができる。このような好ましい水熱反応処理ユニットとしては、隔壁接触型水熱反応処理ユニット(二重管構造を有するもの、二層壁構造を有するもの等)、更に向流接触型水熱反応処理ユニット等が挙げられる。
水熱反応処理ユニット50は加水分解性ポリマーを加水分解するため、水熱反応処理ユニット50に流入する流体は、上流側に配置されたユニットで得られる流体のうち、加水分解性ポリマーAの含有量が多い流体である。例えば、後述する濃縮ユニット40が上流側に配置されている場合、非加水分解性ポリマーBを主成分とする流体ではなく、加水分解性ポリマーAを主成分とする流体である。
【0036】
分離回収装置1に適用可能な水熱反応処理ユニットの好ましい形態の1つとして、次の構成を有する、二重管構造を有する隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aが挙げられる。このユニット50Aは、
図4に示されるように、断面が略円形の管状本体51を有している。そして、管状本体51の一方の端部に、分離ユニット30から吐出された流体(溶融成分)であって加水分解性ポリマーAを含む流体(好ましくは溶融状態を維持した流体)を管状本体51内に流入させる流入口52と、流入口52に接続され、管状本体51の長手方向に延設された第1流路であって流入口52から流入した流体を流通させる第1流路53と、第1流路53の下流側端部から延設(管状本体51の他方の端部に接続)され、水熱反応処理された流体の残留物を流出させる残留物流出口54とを有している。すなわち、流入口52と残留物流出口54は、管状本体51(第1流路53)の端部にそれぞれ連設されている。
【0037】
隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aは、更に、第1流路53に沿って、第1流路53の外周面を包囲するように、管状本体51の内部に配置され、水の浸透が可能でかつ溶融ポリマーの通過を阻止する管状の隔膜55と、隔膜55の外周側(隔膜55に対して第1流路53と反対側)に管状本体51の長手方向に延在する管状で、かつ隔膜55を介して第1流路53と隣接配置され、水、又は隔膜55を通過した加水分解成分aを含有する水混合物(水相)が流通する第2流路56と、第2流路56に設けられ、第2流路に水を流入する水流入口57と、第2流路56に設けられ、水流入口57から流入して第2流路56を流通しながら隔膜55を通過してきた加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを含有する水混合物を第2流路56から(その外部に)流出させる水混合物流出口58とを備えている。すなわち、管状本体51は、内部空間が隔膜55によって、隔膜55の内側に画成された第1流路(内側流路)53と、隔膜55の外側に画成された第2流路(外側流路)56とを有する二重管構造を有している。隔膜55は、第1流路53内を流通する溶融成分中の加水分解成分aを溶融成分から分離して第2流路56に移行させる。この隔膜55は、第2流路56における水熱反応処理条件、特に圧力を維持できるように設定されており、例えば、多孔質膜である場合、開口径、空隙率等により、圧力を適宜に設定できる。このときの水の圧力は流体の圧力よりも低い圧力に設定される。具体的には、水の圧力は、装置全体のうち最も高温の部分の温度における水の飽和蒸気圧よりも高く、かつ、流体の圧力が何らかの原因で変動したときの、最低圧力よりも低い圧力に設定される。流体と水の圧力差については、隔膜55内に流体を留める必要性から、同材質にて製作した隔膜を使用した予備検討を実施し、流体が隔膜55を通過して第2流路56に直接漏れ出さないような圧力差とする。水の圧力は、例えば、第2流路56の前後に水供給用高圧ポンプ及び圧力制御に用いられる背圧弁を設けることにより調整できる。特に制限されないが、水流入口57は管状本体51の下流側に設けられ、水混合物流出口58は管状本体51の上流側に設けられることが好ましい。
【0038】
隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aは、第1流路53を内側流路とし、第2流路56を外側流路とする二重管構造であるが、本発明においては、第1流路53を外側流路とし、第2流路56を内側流路とする二重管構造とすることもできる。すなわち、本発明の分離回収装置において、水熱反応処理ユニットの隔膜は第1流路の内部若しくは外部に沿って配置(沿接)することができる。なお、第1流路53を外側流路とする場合、流入口、残留物流出口、水流入口及び水混合物流出口は各機能を奏する位置に設けられる。
【0039】
隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aにおいて、水流入口57から第2流路56に供給される水の状態は、特に制限されず、水熱反応処理条件を満たさない水でもよいが、水熱反応処理条件を満たす水であることが好ましい。この場合、水流入口57の上流側に公知の加圧加熱装置を設けることが好ましい。分離回収装置1においては、
図1に示されるように、循環水再加熱ユニット60Cが設けられている。なお、水熱反応処理条件を満たさない水を第2流路56に供給する場合、管状本体51の外周に設ける後述する加熱機構により、第2流路56を流通する水を加熱して水熱反応処理条件を満たす水にすることができる。このとき、流入する水の温度によって第1流路53内の流体が冷却・凝固しないことが必要となる。
隔膜55は、第2流路56内を流通する水を第1流路53に通過させることができ、また溶融成分は流体の高粘度故に通過できない膜であって、例えば、多孔質の焼結合金パイプ、セラミックパイプ等を用いることができる。
隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aは、管状本体51の外周に、水熱反応処理温度を維持するための加熱機構を有していてもよい。管状本体51の加熱温度は、特に制限されず、後述する水熱反応処理温度に設定される。
分離回収装置1においては、図示しないが、例えば最下流の排出口には保圧のためのバルブを設けること等により、各ユニットを流通する流体は上述のように溶融吐出ユニットから徐々に圧力を下げながら下流側のユニットに移送される。一方、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aに流入させる水は、流体の供給ラインとは別にポンプと背圧弁(図示しない)を設けて、圧力を担保することができる。また、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aの外部には水を加熱するヒーター(図示しない)を設けて温度を調整することができる。このようにして、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aにおける後述する水熱反応処理条件(特に圧力及び温度)を実現することができる。
【0040】
上記隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aの作用について説明する。
流入口52から流入する流体は溶融状態を維持しながら第1流路53内を残留物流出口54に向かって流動する。このとき、第1流路53内は後述する水熱反応処理条件下にあり、流体が隔膜55に浸透している水と接触することで、水熱反応処理環境下におかれる。流体に含まれる加水分解性ポリマーAは加水分解反応されてその加水分解成分aを生じ、この加水分解成分aが隔膜55に浸透している水(水相)に溶解、移行する。そして、加水分解成分aの濃度勾配によって隔膜55に浸透している水に溶解した加水分解成分aは第2流路56を流通する水中に移行する。一方、流体に含まれる非加水分解性ポリマーBは加水分解反応することなく高粘度を維持しているため隔膜55を通過できず、溶融状態のまま第1流路53内に留まり、残留物流出口54に向かって流れる。
こうして、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aに移送された溶融成分のうち、加水分解成分aは第2流路56を流通する水と混合して水混合物流出口58から排出され、非加水分解性ポリマーBは残留物流出口54から排出される。これにより、加水分解性ポリマーA(その加水分解成分a)と非加水分解性ポリマーBとを分離、回収(ハイブリッドリサイクル)することができる。
【0041】
分離回収装置1を含む本発明の分離回収装置に適用可能な水熱反応処理ユニットの別の好ましい形態として、次の構成を有する、二層壁構造を有する隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Bが挙げられる。
このユニット50Bは、
図5に示されるように、断面が略円形の管状本体51を有している。そして、管状本体51の一方の端部に、分離ユニット30から吐出された流体(溶融成分)であって加水分解性ポリマーAを含む流体(好ましくは溶融状態を維持した流体)を管状本体51内に流入させる流入口52と、流入口52に接続され、管状本体51の長手方向に延設された第1流路であって流入口52から流入した流体を流通させる第1流路53と、第1流路53の下流側端部から延設(管状本体51の他方の端部に接続)され、水熱反応処理された流体の残留物を流出させる残留物流出口54とを有している。すなわち、流入口52と残留物流出口54は、管状本体51(第1流路53)の端部にそれぞれ連設されている。
【0042】
隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Bは、更に、管状本体51の内部に管状本体51の内周面に接する状態で配置され、第1流路53の外周面を包囲する管状の隔膜55と、隔膜55に接して設けられ、隔膜内に水を流入する水流入口57と、隔膜55に接して設けられ、隔膜55を通過してきた加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを含有する水混合物を隔膜55から(その外部に)流出させる水混合物流出口58とを備えている。この隔膜55は、多孔質膜であり、その内部に水の浸透が可能でかつ溶融ポリマーの通過を阻止する膜であって、その内部を隔膜55に侵入した加水分解成分aを含有する水混合物(水相)を流通させることができる。この隔膜55内を流通する水は、水熱反応処理条件となっており、隔膜接触型水熱反応処理ユニット50Aと同じく、外部に設けられたポンプと背圧弁、ヒーター等によって、その状態が保持される。特に制限されないが、水流入口57は管状本体51の下流側に設けられ、水混合物流出口58は管状本体51の上流側に設けられることが好ましい。
上記構成以外は、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aと同様である。
【0043】
上記隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Bの作用については、加水分解成分を溶解させる水(水混合物)を第2流路ではなく隔膜55内を流通させること以外は、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aと基本的に同様である。
【0044】
更に、分離回収装置1を含む本発明の分離回収装置に適用可能な水熱反応処理ユニットのまた別の好ましい形態として、次の構成を有する、向流接触型水熱反応処理ユニット50Cが挙げられる。
このユニット50Cは、
図6に示されるように、断面が略円形の管状本体51を有していて、これが垂直に設置されている。そして、管状本体51の上端部に、分離ユニット30から吐出された流体(溶融成分)であって加水分解性ポリマーAを含む流体(好ましくは溶融状態を維持した流体)を管状本体51内に流入させる流入口52と、管状本体51の上部に設けられた水混合物排出口58と、管状本体51下部に設けた残留物排出口54と、管状本体51下端部に設けた水流入口57とを有している。流入口52、残留物排出口54、水流入口57及び水混合物排出口58は管状本体51の内部空間に接続している。管状本体51の内部空間には充填剤55Aが充填されており、この充填剤55Aの表面を流体が流下し、またその流体表面を水が流れることで大きな接触面積を確保することができるようになる。
ユニット50Cは、分離ユニット30から吐出された流体を流入口52から流入させるとともに水流入口57から水を流入させながら水熱反応処理を行うことによって、加水分解成分aが充填剤55A中に浸透して非加水分解性ポリマーBから分離される。これにより、加水分解性ポリマーA(その加水分解成分a)と非加水分解性ポリマーBとを分離、回収(ハイブリッドリサイクル)することができる。
水熱反応処理後の流体は残留物排出口54から排出され、水混合物は水混合物排出口58から排出される。ユニット50Cの運転手法については、水熱処理条件下における流体の比重が水の比重よりも大きい場合に適用でき、水の比重が流体の比重よりも大きい場合には、それぞれの流入口、排出口等の配置を逆にすることで同様の効果を得ることができる。
ユニット50Cに用いる充填剤55Aとしては、内部に水を浸透、通過させることができ、溶融成分を通過させない隔膜55と同様の材料で形成されている。
【0045】
水熱反応処理ユニット50における水熱反応処理条件は適宜に設定される。
水熱反応処理は、流体を移送しながら継続(連続)して行うことができ(連続式水熱反応処理)、例えば、隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aにおいては、流体を第1流路53に移送しながら継続して行うことができる。
【0046】
本発明において、水熱反応処理ユニットは、1基単独で備えていてもよく、また、2基以上を備えていてもよい。2基以上の水熱反応処理ユニットは同条件で水熱反応処理を実施するユニットであってもよく、異なる同条件で水熱反応処理を実施するユニットであってもよい。また、複数の水熱処理ユニットは、直列に配置接続されて連続的な水熱反応処理を実施可能としてもよく、並列に配置接続されて同時に水熱反応処理を実施可能としてもよい。
特に、分離ユニット30から吐出されて水熱反応処理ユニット50に供される流体が複数のポリマー(加水分解性ポリマーA)を含有する場合、ポリマーAの種類数と同数の水熱反応処理ユニットを直列に接続して、低温から高温までの複数段階の水熱反応処理を行うことで、同時に複数のポリマーAから加水分解成分aを回収できる。
【0047】
(加水分解成分回収ユニット)
分離回収装置1は、水熱反応処理ユニット50の後段に、水混合物から加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを回収する加水分解成分回収ユニット60を備えている。この加水分解成分回収ユニット60は、加水分解成分のうち温度によって溶解度が大きく変化する成分について適用でき、最低限の冷却により加水分解成分を析出させ、固液分離によって加水分解成分を回収できる。また、
図1に示されるように、水熱処理ユニットと循環路を構築すると水自体も再利用することができる点で好ましい。水を再利用する好ましい形態においては、水の使用量の削減、及び再加熱に要するエネルギーの削減を図ることができる。
【0048】
加水分解成分回収ユニットは、水混合物を冷却して加水分解成分を析出させる冷却析出サブユニット60Aと、析出した加水分解成分を水と分離する固液分離サブユニット60Bとを有している。冷却析出サブユニット60Aは、水混合物を冷却できるものであればよく、通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができる。例えば、水混合物を流通させる流路若しくは収容する容器を備え、この流路又は容器を空冷するもの、又は流路若しくは容器の周囲に冷却器(例えば水冷式ジャケット)をも備えたもの等が挙げられる。
図1には、管状の流路とこの流路を囲繞する冷却器とを備えたユニットが示されている。
また、固液分離サブユニットは通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができ、例えばろ過器が挙げられる。加水分解成分回収ユニットは、冷却析出サブユニット及び固液分離サブユニットが一体となっていてもよく、別々に構成されていてもよい。
【0049】
分離回収装置1における加水分解成分回収ユニット60は、
図1及び
図7Aに示されるように、管状の冷却析出サブユニット60Aと、冷却析出サブユニット60Aの下流側に接続された管状の固液分離サブユニット60Bとを備えている。
冷却析出サブユニット60Aは、水熱反応処理ユニット50の水混合物流出口58から延設された移送管61aが連結し、加水分解成分aを含む水混合物が流入する流入口62と、流入口62に接続され、流入口62から流入した水混合物を流通させる流路63(流路Aともいう)と、流路63に接続され、(析出した)加水分解成分aを水とともに流出させる流出口64とを備えている。更に、流路63の外周面を包囲する冷却ジャケット65を備え、この冷却ジャケット65の流出口64側に接続され、冷却水を冷却ジャケット65に流入させる冷却水流入部65aと、冷却ジャケット65の流入口62側に接続され、冷却水を冷却ジャケット65から排出する冷却水排出部65bと、図示しないが、冷却水移送部(冷却水貯蔵槽及び冷却水を移送するポンプ等)を有している。これにより、流路63を流通する水混合物を冷却して、加水分解成分を析出させることができる。
なお、移送管61aは外周面に加熱機構を備え、水混合物の温度を維持してもよい。
【0050】
固液分離サブユニット60Bは、冷却析出サブユニット60A(具体的には流出口64)に接続された分離器で構成されている。具体的には、管状の本体66と、本体66の上流側端部に設けられ、流出口64に接続する接続口67と、本体66の下流側端部に設けられ、固液分離後の水を流出する流出口68とを備え、更に、本体66の内部に円盤状の濾過膜69と、流出口68から延設され、後述する再加熱サブユニット60Cに接続する移送管61cと、再加熱サブユニット60Cを水熱反応処理ユニット50の流入口57に接続する移送管61bとを備えている。
図1及び
図7Aに示されるように、固液分離サブユニット60Bは、上流側に配置された隔壁接触型水熱反応処理ユニット50A及び冷却析出サブユニット60Aと、下流側に配置された再加熱サブユニット60Cとともに、移送管61a、61c及び61bで接続されて、水が流通する循環路を形成している。これにより、加水分解成分aから分離された水を循環使用することができる。再加熱サブユニット60Cによって加熱された循環水は比重が小さくなるため、上方(
図1及び
図7Aにおいて隔壁接触型水熱反応処理ユニット50Aの流入口57側)に向かう流れを生じ、また冷却析出サブユニット60Aによって冷却された循環水は下方(
図1及び
図7Aにおいて固液分離サブユニット60Bの流入口67側)に向かう流れを生じる。結果としてポンプ等の機構を設けることなく、全体的に上記循環路を水が循環する流れを作ることができる。
上記循環路中には、加水分解によって消費される水や冷却・加熱によって生じる密度の変動と、それによる循環路内の圧力変動を抑えるために、水を追加するための定圧ポンプ70と、過剰になった水を排出するための背圧弁71を備えていることが好ましい。
【0051】
濾過膜69は、その外縁が本体66の内面に接し、本体66の内部空間を本体66の軸線方向に二分している。上流側に画成された内部空間には析出した加水分解成分を排出する排出部66aが設けられ、下流側に画成された内部空間には濾過膜69を逆洗するための水を導入する逆洗水導入部66bが接続されている。濾過膜69としては、金属や耐熱樹脂製の多孔質膜、焼結合金フィルター等を用いることができる。固液分離サブユニット60Bは、冷却析出サブユニット60Aで析出した加水分解成分と水(水混合物)とが接続口67から本体66内に流入し、水が濾過膜69を通過し、一方、加水分解成分aは濾過膜69上に堆積する。こうして加水分解成分aを水から分離(ろ取)して、逆洗水導入部66bから導入される逆洗水とともに排出部66aから取り出して回収することができる。
【0052】
本発明において、加水分解成分回収ユニット60は、1基単独で備えていてもよく、また、2基以上を備えていてもよい。2基以上の加水分解成分回収ユニット60を備える場合、複数のユニットは、直列に配置接続されてもよく、並列に配置接続されてもよい。
また、分離回収装置1が複数基の水熱反応処理ユニット50を備えている場合、各水熱反応処理ユニット50に1基の加水分解成分回収ユニット60が併設されていることが好ましい。
加水分解成分回収ユニット60は、少なくとも1基ずつの、冷却析出サブユニット60A及び固液分離サブユニット60Bを有していることが好ましく、冷却析出サブユニット60A及び固液分離サブユニット60Bの少なくとも一方を2基以上有していてもよい。分離回収装置1は、
図1及び
図7Aに破線で示されるように、1基の冷却析出サブユニット60Aに並列で接続配置された3基の固液分離サブユニット60Bを有しており、3基とも循環路中に組み込まれ、これを交代で運用することにより連続的に固液分離が可能な状態を実現している。
また、上記の比重差を用いた循環水の流速をより大きくしたい場合等には、
図7Bに示されるように、移送路61cの途中に循環ポンプ72を設けて水を強制的に流通させることもできる。
【0053】
(循環水再加熱ユニット)
分離回収装置1は、上記循環路中に組み込まれ、水熱反応処理ユニット50Aに供給する循環水を加熱する循環水再加熱ユニット60Cを有している。この循環水再加熱ユニット60Cは、水を加熱できるものであればよく、通常用いられるものを特に制限されることなく用いることができる。例えば、冷却器に代えて加熱器を備えていること以外は、上記冷却析出サブユニット60Aと同様の構成とすることができる。ここでは、循環水再加熱ユニット60Cを独立したユニットとして説明したが、
図1に示されるように、分離回収装置1において、循環水再加熱ユニット60Cは加水分解成分回収ユニットを構成している(分離回収装置2~4において同じ)。
【0054】
(ポリマーB回収ユニット)
分離回収装置1は、水熱反応処理ユニット50の後段に、加水分解成分回収ユニット60と並列に配置され、水相から分離された非加水分解性ポリマーBを回収するポリマーB回収ユニット80を備えている。
【0055】
水熱反応処理ユニット50Aにより加水分解性ポリマーAが加水分解成分aとして水に抽出された流体は、非加水分解性ポリマーBが主成分の流体となる。この流体は、冷却されると固化してしまうため、高温のまま減圧排出することが好ましい。具体的には、高温に対応した背圧弁やニードルバルブ等によって背圧を与える構造とする。また、大気開放された焼結合金チューブ等を通すことで、わずかに混入してくることが予想される水や、抽出されなかった分解物a等を蒸発除去させることもできる。
ポリマーB回収ユニット80は、
図8に示されるように、管状のポリマーB回収ユニット80の両端部を形成する管状本体81と、上流側の管状本体81に設けられ、水熱反応処理ユニット50Aで得られた残留物(非加水分解性ポリマーBを含有する流体)が流入する残留物流入口82と、残留物流入口82に接続され、残留物流入口82から流入した残留物を流通させる流路Pと、流路Pに沿って設けられ、残留物中に残存する水及び加水分解成分aを除去する除去膜84と、下流側の管状本体81(流路Pの除去膜84よりも下流側)に接続され、残存する水及び加水分解成分aを除去した非加水分解性ポリマーBを流出させる流出口83とを備えている。除去膜84は、流路Pに沿って、その外周面を包囲する管状に焼結金属で形成されたパイプが採用されている。
このポリマーB回収ユニット80により、加水分解性ポリマーA、更には加水分解成分aが除去された高純度の非加水分解性ポリマーBを回収することができる。
【0056】
上記構成を有する分離回収装置1は、上述のように、樹脂廃棄物等の樹脂混合体を原料として、それを構成する加水分解性ポリマーAをその原料化合物である加水分解成分aとして、また非加水分解性ポリマーBを加水分解性ポリマー及びその加水分解成分の混入を抑制した高純度のポリマーとして、別々に、しかも連続して、回収できる。
分離回収装置1は、水熱反応処理ユニット50AとポリマーB回収ユニット80との間に上述の分離ユニット30を介装することができ、これにより、非加水分解性ポリマーBに残存する不溶成分を高度に除去することもできる。
【0057】
<本発明の別の好ましい分離回収装置>
本発明の別の好ましい形態である分離回収装置2は、
図9に示されるように、破砕ユニット10と、溶融吐出ユニット20と、分離ユニット30と、濃縮ユニット40と、水熱反応処理ユニット50Aと、加水分解成分回収ユニット60、及びポリマーB回収ユニット80とを備えている。濃縮ユニット40と水熱反応処理ユニット50Aとは、濃縮ユニット30から流出する流体が溶融状態を維持しつつ移送する移送管で連結されている。分離回収装置2は、水熱反応処理ユニット50Aの前段、かつ分離ユニット30の後段に、濃縮ユニット40を備えていること以外は、分離回収装置1と同じ構成を有している。
この分離回収装置2は、
図10に示す一連の処理プロセスを実行でき、同図に示される、各ユニットで得られる被処理物を得ることができる。濃縮ユニット40、更にポリマーB回収ユニット80において非加水分解性ポリマーBを分離回収し、かつ加水分解成分回収ユニット60において加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを回収できる。このようにして、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に回収して、連続的なハイブリッドリサイクルすることができる。
分離回収装置2に用いる樹脂混合体は、上述の通りであるが、例えば、加水分解性ポリマーA及び非加水分解性ポリマーBをそれぞれ1種含有し、加水分解性ポリマーAの融点MTAが非加水分解性ポリマーBの融点MTBよりも高いものが好ましい。
【0058】
分離回収装置2が備える濃縮ユニット以外のユニットは分離回収装置1の各ユニットと同じであるので、説明を省略する。
(濃縮ユニット)
濃縮ユニット40は、分離ユニット30と水熱反応処理ユニット50Aとの間に配置されており、非加水分解性ポリマーBを分離して、水熱反応処理ユニット50Aに移送する流体中の加水分解性ポリマーAの含有量を高める。この濃縮ユニット40は、分離ユニット30において、不溶成分が除去された流体(吐出物)を冷却し、高融点成分(好ましくは加水分解性ポリマーA)を優先的に凝固させる。これを例えば濾過等の固液分離することで、ポリマーの融点差に基づいて高融点成分と低融点成分(好ましくは非加水分解性ポリマーB)を互いに分離して、高融点成分濃度を高める(高融点成分を濃縮する)ことができる。
冷却温度は、ポリマーの種類によって一義的に決定できないが、加水分解性ポリマーAの融点MTAと非加水分解性ポリマーBの融点MTBとの間に設定することができる。
【0059】
分離回収装置2が複数基の濃縮ユニット40を備え、各濃縮ユニットにおける冷却温度を各ポリマーの融点に応じて変更することにより、下記濃縮ユニットにおいて異なる非加水分解性ポリマーを分離、回収できる。そのため、樹脂混合体が複数種の非加水分解性ポリマーBを含有している場合、ポリマーBの種類数と同数の濃縮ユニットを設けて、ポリマーBの各融点及び加水分解性ポリマーAの融点を参考にして各ポリマーの固化又は溶融を調整した温度に各ユニットの冷却温度を設定することにより、ユニットごとに異なる種類の非加水分解性ポリマーBを回収できる。複数基の濃縮ユニット40を備えた態様については本発明の更に別の好ましい分離回収装置において具体的に説明する。
【0060】
分離回収装置2に好適な濃縮ユニット40としては、
図9及び
図11に示されるように、上流側に配置されたユニット(例えば、溶融吐出ユニット、分離ユニット)から移送されてきた流体を冷却することによって一部のポリマーを析出固化させる冷却サブユニット40Aと、この冷却サブユニット40Aに接続され、析出固化したポリマーを除去する除去サブユニット40Bとを備えている。
冷却サブユニット40Aは、移送されてきた流体を冷却してポリマーの中でも高い融点を持つポリマーを析出固化させて析出固化したポリマーを不溶物として含む流体とする。冷却サブユニット40Aは、上記機能を果たすことができれば、どのような構造を有していてもよく、分離回収装置2では上述の冷却析出サブユニット60Aを採用している。
除去サブユニット40Bは、冷却サブユニット40Aから移送された流体から析出固化したポリマーを不純物として除去して、析出固化したポリマーを除去した流体を次ユニットに移送する。除去サブユニット40Bは、上記機能を果たすことができれば、どのような構造を有していてもよく、分離回収装置2では上述の分離ユニット30を採用している。具体的には、除去サブユニット40Bは、
図9及び
図11に示されるように、断面が略円形の管状本体41を有している。そして、管状本体41の一方の端部に、冷却サブユニット40Aから移送された流体を管状本体41内に流入させる流入口42と、流入口42に接続され、管状本体41の長手方向に延設された第1流路であって、流入口42から流入した流体を流通させる第1流路43と、第1流路43の下流側端部から延設(管状本体41の他方の端部に接続)され、流体から分離された析出固化したポリマーを排出する排出口44とを有している。
除去サブユニット40Bは、更に、第1流路43に沿って管状本体41の内部に配置され、第1流路43内を流通する流体に混在している析出固化したポリマーを流体から分離する管状の分離膜45と、分離膜45の外周側(分離膜45に対して第1流路43と反対側)に管状本体41の長手方向に延在する管状に画成(配置)され、分離膜45を通過して不溶成分が除去、分離された流体が流通する第2流路46と、第2流路46に接続され、析出固化したポリマーが除去された流体が流出する流体流出口47とを備えている。すなわち、管状本体41は、内部空間が分離膜45によって、分離膜45の内側に画成された第1流路(内側流路)43と、分離膜45の外側に画成された第2流路(外側流路)46とを有する二重管構造を有している。
除去サブユニット40Bは、分離ユニット30と同様に、第1流路43を外側流路とし、第2流路46を内側流路とする二重管構造とすることもできる。
【0061】
本発明において、濃縮ユニットは、
図9に示されるように1基単独で備えていてもよく、また、濃縮ユニットに移送されてくる流体が含有するポリマーの種類に応じて2基以上を備えていてもよい。2基以上の濃縮ユニットは直列又は並列に接続配置される。
【0062】
分離回収装置2における一連の処理について説明する。
分離回収装置2においては、分離回収装置1と同様にして、樹脂混合体を、破砕ユニット10、溶融吐出ユニット20及び分離ユニット30に、順に適用する。こうして分離ユニット30の流体流出口37から流出する流体(溶融成分)を、濃縮ユニット40の冷却サブユニット40Aに移送して冷却することにより、高融点成分であるポリマーを固体として排出口44から排出させて、回収することができる。一方、低融点成分であるポリマーは溶融状態のまま分離膜45を通過して第2流路に移行して流通し、流体流出口47から流出する。この流体流出口47から流出する低融点成分を次ユニットの水熱反応処理ユニット50Aに供給して水熱反応処理する。なお、冷却サブユニット40A及び除去サブユニット40Bに移送される流体は、析出固化したポリマーを分散状態で含みながらも流動性を維持している。その後の処理は分離回収装置1と同じである。
【0063】
分離回収装置2は、樹脂廃棄物等の樹脂混合体を原料として、それを構成する加水分解性ポリマーAをその原料化合物である加水分解成分aとして、また非加水分解性ポリマーBを加水分解性ポリマー及びその加水分解成分の混入を抑制した高純度のポリマーとして、別々に、しかも連続して、回収できる。
特に、非加水分解性ポリマーBの大部分は、濃縮ユニット40で水熱反応処理されることなく、加水分解性ポリマーAから分離、回収されるため、ポリマーBは水熱反応処理による熱履歴を避けることができ、ポリマーBの特性の低下をより抑制できる。また、水熱反応処理ユニットに供給されるポリマー量を低減することができ、水熱反応処理ユニットの負荷及びエネルギーを低減することもできる。更に、水熱反応処理ユニット50AにおいてもポリマーBを回収することができ、その特性次第でマテリアルリサイクルが可能となる。
【0064】
<本発明のまた別の好ましい分離回収装置>
本発明のまた別の好ましい形態である分離回収装置3は、
図12に示されるように、水熱反応処理ユニット50Aを、加熱器5を介して、2基直列に接続配置し、各水熱反応処理ユニット50Aに加水分解成分回収ユニット60(冷却析出サブユニット60A、固液分離サブユニット60B及び循環水再加熱ユニット60C)を接続配置したこと以外は、分離回収装置2と同じである。分離回収装置3が備える各ユニットは分離回収装置2の各ユニットと同じであるので、説明を省略する。
加熱器5は、上流側に配置された水熱処理ユニット50Aから流出された流体を再加熱することができれば特に限定されず、適宜の加熱器を用いることができる。分離回収装置3においては、循環水再加熱ユニット60Cと同様のものを用いている。
【0065】
この分離回収装置3は、
図13に示す一連の処理プロセスを実行でき、同図に示される、各ユニットで得られる被処理物を得ることができる。濃縮ユニット40において非加水分解性ポリマーBを分離回収し、かつ各加水分解成分回収ユニット60において加水分解性ポリマーAの加水分解成分aを回収できる。このようにして、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に回収して、連続的なハイブリッドリサイクルすることができる。
分離回収装置3に用いる樹脂混合体は、上述の通りであるが、例えば、2種の加水分解性ポリマーA(例えばPETとナイロン)及び1種の非加水分解性ポリマーBを含有し、加水分解性ポリマーAの融点が非加水分解性ポリマーBの融点よりも高いものが好ましく、また2種の加水分解性ポリマーAは異なる融点(TMA1<TMA2)を有している。
【0066】
分離回収装置3は2基の水熱反応処理ユニット50Aを備えており、分離回収装置2と同様のハイブリッドリサイクルが可能になる。そのうえ、各水熱反応処理ユニット50Aの水熱温度を調整することにより、各ユニットにおいて所定の加水分解性ポリマーAを加水分解反応させることができる。例えば、上流側に配置された水熱処理ユニット50Aの温度は、融点TMA1の加水分解性ポリマーAを加水分解反応しうる温度以上でかつ融点TMA2の加水分解性ポリマーAを加水分解反応させない温度未満に設定することができる。一方、下流側に配置された水熱処理ユニット50Aの温度は、融点TMA2の加水分解性ポリマーAを加水分解反応しうる温度以上に設定することができる。これにより、各水熱反応処理ユニット50Aに接続する加水分解成分回収ユニット60により、加水分解性ポリマーA1及びA2それぞれの加水分解成分aを別々にケミカルリサイクルできる。
【0067】
分離回収装置3における一連の処理を説明する。
分離回収装置3においては、分離回収装置2と同様にして、濃縮ユニット40の不溶成分排出口34から流出する高融点成分(加水分解性ポリマーA)を1基目の水熱反応処理ユニット50Aに供給する。この水熱反応処理ユニット50Aの水混合物流出口58から流出する水混合物(加水分解性ポリマーA1の加水分解成分a1を含む)を加水分解成分回収ユニット60に供給して、この加水分解成分a1を回収できる。一方、水熱反応処理ユニット50Aの残留物流出口54から流出する流体を加熱器で再加熱し、これを2基目の水熱反応処理ユニット50Aに供給して水熱反応処理する。2基目の水熱反応処理ユニット50Aで得られた水混合物(加水分解性ポリマーA2の加水分解成分a2を含む)を加水分解成分回収ユニット60に供給して、この加水分解成分a2を回収できる。最終的に、2基目の水熱反応処理ユニットの残留物流出口54から流出する流体はポリマーB回収ユニット80に供給して、非加水分解性ポリマーBを回収できる。他方、濃縮ユニット40の流体流出口37から流出する低融点成分(非加水分解性ポリマーB)は別途回収してマテリアルリサイクルに供する。この手法では複数の加水分解性ポリマーが含まれる流体をまとめて処理することで複数の分解物aを連続的に得ることができる。
【0068】
<本発明の更に別の好ましい分離回収装置>
本発明の更に別の好ましい形態である分離回収装置4は、
図14に示されるように、濃縮ユニット40を2基直列に接続配置したうえで、下流側の濃縮ユニット40の流体流出口37に接続された水熱反応処理ユニット50Aと、下流側の濃縮ユニット40の不溶成分排出口34に接続された水熱反応処理ユニット50Aとを有している。そして、各水熱反応処理ユニット50Aは1基の加水分解成分回収ユニット60(冷却析出サブユニット60A、固液分離サブユニット60B及び循環水再加熱ユニット60C)が接続配置されている。また、下流側の濃縮ユニット40の不溶成分排出口34に接続された水熱反応処理ユニット50Aは、その残留物流出口54にポリマーB回収ユニット80が接続配置されている。この構成以外は分離回収装置2と同じである。分離回収装置4が備える各ユニットは分離回収装置2等の各ユニットと同じであるので、説明を省略する。
分離回収装置4に用いる樹脂混合体は、上述の通りであるが、例えば、2種の加水分解性ポリマーA(例えばPETとナイロン)及び1種の非加水分解性ポリマーBを含有し、加水分解性ポリマーAの融点が非加水分解性ポリマーBの融点よりも高いものが好ましく、また2種の加水分解性ポリマーAは異なる融点(TMA1<TMA2)を有している。
【0069】
この分離回収装置4は、
図15に示す一連の処理プロセスを実行でき、同図に示される、各ユニットで得られる被処理物を得ることができる。上流側の濃縮ユニット40において少量の加水分解性ポリマーAが混在しつつも非加水分解性ポリマーBを分離し、かつ下流側の濃縮ユニット40で少量混在した加水分解性ポリマーAから非加水分解性ポリマーBを分離回収できる。ここで、上流側の濃縮ユニット40における冷却温度は加水分解性ポリマーAの融点TMA2よりも高い温度に設定され、下流側の濃縮ユニット40における冷却温度は非加水分解性ポリマーの融点MTB以上であって加水分解性ポリマーAの融点TMA1未満の温度に設定される。更に、流体流出口37に接続された水熱反応処理ユニット50は、融点TMA2の加水分解性ポリマーAを加水分解反応しうる温度以上の温度に水熱反応温度を設定することができる。一方、不溶成分排出口34に接続された水熱反応処理ユニット50は、融点TMA1の加水分解性ポリマーAを加水分解反応しうる温度以上でかつ融点TMA2の加水分解性ポリマーAを加水分解反応させない温度未満に水熱反応温度を設定することができる。
次いで、各水熱反応処理ユニット50に接続された加水分解成分回収ユニット60により、特定のポリマーAに由来する加水分解成分aを分離、回収できる。このようにして、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aと非加水分解性ポリマーBとを連続的に回収して、連続的なハイブリッドリサイクルすることができる。
【0070】
上述のように、分離回収装置4は2基の濃縮ユニット40、2基の水熱反応処理ユニット50A等を備えており、分離回収装置2と同様のハイブリッドリサイクルが可能になる。そのうえ、各水熱反応処理ユニット50Aの水熱温度を調整することにより、分離回収装置3と同様に、各ユニット50Aにおいて所定の加水分解性ポリマーBを加水分解反応させて、加水分解性ポリマーBそれぞれの加水分解成分aを別々にケミカルリサイクルできる。
【0071】
分離回収装置4における一連の処理を説明する。
分離回収装置4においては、分離回収装置2と同様にして、1段目の濃縮ユニット40の流体流出口37から低融点成分を回収した後、不溶成分排出口34から流出する複数の高融点成分(加水分解性ポリマーA)を含む流体を、2基目の濃縮ユニットにより、再分離することで、2基目の濃縮ユニット40の流体流出口37から低融点の加水分解性ポリマーAが、不溶成分排出口34からは高融点の加水分解性ポリマーAが得られる。これらは其々に水熱反応処理ユニット50Aに供給し、水熱処理を行うことで、個別に加水分解成分aを回収することができる。また加水分解性ポリマーAに残留する非加水分解性ポリマーBは2基目の濃縮ユニットの不溶成分排出口34から排出される流体に混入することになる。よって2基目の水熱反応処理ユニット50Aにのみ、ポリマーB回収ユニット80を接続し、ポリマーBの回収も行う。
【0072】
<その他の構成>
本発明の分離回収装置は、上記各ユニット以外のユニットを備えていてもよい。例えば、本発明の分離回収装置に用いる原料(例えば水熱反応処理に用いる水)を貯蔵する貯留槽、貯留槽に貯留されている原料をユニットに移送する移送管及びポンプ、精製ユニット等が挙げられる。また、水熱反応処理ユニットの第1流路内にスタティックミキサーを設置することができる。これにより、流路内を流通する溶融物が攪拌されて、加水分解反応を促進することができる。
分離回収装置1~4において、加水分解成分回収ユニットは加水分解成分のうち温度によって溶解度が大きく変化する成分について適用可能な加水分解成分回収ユニット60を備えているが、本発明においては、温度を下げても析出しない加水分解成分を回収する場合、通常の熱交換器を備え、この熱交換器で冷却して回収することができる。
また、分離回収装置1~4において、各ユニットを連結する連結管、移送管等は、その外周面に冷却器又は加熱器が設けられていてもよい。
各ユニットを構成する本体や流入口等を構成部品等は、特に断らない限り、適宜の材料で形成することができ、このような材料としては、例えば、各種金属、セラミック、耐熱性樹脂等が挙げられる。
【0073】
以上の説明したように、本発明の分離回収装置は、加水分解性ポリマーを含有する樹脂と非加水分解性ポリマーを含有する樹脂とを含む樹脂混合体から、加水分解性ポリマーをその原料化合物(加水分解成分)として、また非加水分解性ポリマーを高純度のポリマーとして、連続的プロセスにより、分離、回収できることが分かる。
【符号の説明】
【0074】
1~4 分離回収装置
5 加熱器
10 破砕ユニット
20 溶融吐出ユニット
30 分離ユニット
31 管状本体
32 流入口
33 第1流路
34 不溶成分排出口
35 分離膜
36 第2流路
37 流体流出口
【0075】
40 濃縮ユニット
40A 冷却サブユニット
40B 除去サブユニット
41 管状本体
42 流入口
43 第1流路
44 排出口
45 分離膜
46 第2流路
47 流体流出口
【0076】
50 水熱反応処理ユニット
50A、50B 隔壁接触型水熱反応処理ユニット
50C 向流接触型水熱反応処理ユニット
51 管状本体
52 流入口
52A 流入排出口
53 第1流路
54 残留物流出口
55 隔膜
55A 充填剤
56 第2流路
57 水流入口
58 水混合物流出口
【0077】
60 加水分解成分回収ユニット
60A 冷却析出サブユニット
60B 固液分離サブユニット
60C 循環水再加熱ユニット
61a、61b、61c 移送管
62 流入口
63 流路
64 流出口
65 冷却ジャケット
65a 冷却水流入部
65b 冷却水排出部
66 本体
66a 排出部
66b 逆洗水導入部
67 接続口
68 流出口
69 濾過膜
【0078】
70 定圧ポンプ
71 背圧弁
72 循環ポンプ
80 ポリマーB回収ユニット
81 管状本体
82 残留物流入口
83 流出口
84 除去膜
P 流路