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特開2023-117011光ファイバーおよび光ファイバーの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117011
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】光ファイバーおよび光ファイバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20230816BHJP
   C03C 25/52 20060101ALI20230816BHJP
   C03C 13/04 20060101ALI20230816BHJP
   C03C 25/42 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G02B6/44 326
G02B6/44 301B
C03C25/52
C03C13/04
C03C25/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019461
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100181593
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 寿晃
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】上原 日和
(72)【発明者】
【氏名】安原 亮
(72)【発明者】
【氏名】合谷 賢治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 保孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 政直
(72)【発明者】
【氏名】小西 大介
【テーマコード(参考)】
2H250
4G060
4G062
【Fターム(参考)】
2H250AB25
2H250AB27
2H250AC19
2H250AC37
2H250AD32
2H250AD36
2H250AE71
2H250AH33
2H250BA01
2H250BA22
2H250BA32
2H250BB01
2H250BB31
2H250BC01
2H250BD05
2H250BD18
4G060AC10
4G060AC14
4G060AD12
4G060CA06
4G060CA07
4G060CA09
4G060CA12
4G060CA16
4G060CA21
4G062AA06
4G062BB09
4G062BB17
4G062LA06
4G062LA08
4G062LC02
4G062LC04
4G062LC05
4G062LC10
4G062MM04
4G062NN01
(57)【要約】
【課題】光学特性および耐久性に優れる光ファイバーおよび光ファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】光ファイバー20は、フッ化物ガラス、リン酸塩ガラスまたはフツリン酸塩ガラスを含む。光ファイバー20は、側面に直接または間接的に形成された保護膜24を備える。光ファイバーの製造方法は、プリカーサー供給工程と、ガス供給工程と、を備える。プリカーサー供給工程では、光ファイバーを配置したチャンバーにプリカーサーを供給する。ガス供給工程では、プリカーサー供給工程に続いて、チャンバーに残存したプリカーサーをパージした後、酸素、窒素、フッ素または硫黄のうち1つ以上を含むガスを供給する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物ガラス、リン酸塩ガラスまたはフツリン酸塩ガラスを含む光ファイバーであって、
前記光ファイバーの側面に直接または間接的に形成された保護膜を備える、
ことを特徴とする光ファイバー。
【請求項2】
前記保護膜は、前記光ファイバーの前記側面および端面に直接または間接的に形成され、且つ、前記端面および前記側面に連続的に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー。
【請求項3】
前記光ファイバーの経路に形成された検出部を備え、
前記検出部には、前記保護膜が形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバー。
【請求項4】
前記保護膜の厚みは、0nm超1μm以下である、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光ファイバー。
【請求項5】
前記保護膜は、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物または金属硫化物を含む、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光ファイバー。
【請求項6】
前記光ファイバーの外周を保護する被覆部を備え、
前記保護膜は、前記光ファイバーの露出部の端面および側面と、前記被覆部の端面および側面と、に連続的に形成される、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光ファイバー。
【請求項7】
光ファイバーを配置したチャンバーにプリカーサーを供給するプリカーサー供給工程と、
前記プリカーサー供給工程に続いて、前記チャンバーに残存した前記プリカーサーをパージした後、酸素、窒素、フッ素または硫黄のうち1つ以上を含むガスを供給するガス供給工程と、
を備えることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
【請求項8】
前記プリカーサー供給工程において、Al、Ti、Si、Mg、Ca、Zr、Zn、Mo、Hf、W、Gd、Taのうち少なくとも何れか1つを含むプリカーサーを供給する、
ことを特徴とする請求項7に記載のファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーおよび光ファイバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を伝送するために光ファイバーが用いられている。また、光ファイバーは、気体または液体に含まれる成分またはその濃度を検出するファイバーセンサとしても用いられている。光ファイバーには、耐久性を得るため、外周にコーティング層を設けたものが知られている。
【0003】
特許文献1は、石英ガラス製素線の外周に微粒子酸化チタンからなる緻密コーティング層を設け、その緻密コーティング層の外周に有機材料からなるコーティング層を設けた被覆光ファイバーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-003670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に開示された被覆光ファイバーは、外周に有機材料からなるコーティング層を有している。しかしながら、端面に有機材料からなるコーティング層を形成すると、薄膜干渉などにより光学特性に影響が生ずるため、端面には有機材料からなるコーティング層を設けることが困難であり、端面の耐久性を得ることが困難である。このため、光学特性に影響を与えない保護層を有し、耐久性に優れる光ファイバーが求められている。ファイバーセンサとして用いられる光ファイバーにも、光学特性に影響を与えない保護層を有し、耐久性に優れることが求められている。また、レーザ発振器またはASE(Amplified Spontaneous Emission)光源に用いられる光ファイバーにも、同様に光学特性に影響を与えない保護層を有し、耐久性に優れることが求められている。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、光学特性および耐久性に優れる光ファイバーおよび光ファイバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するため、本発明に係る光ファイバーの一態様は、
フッ化物ガラス、リン酸塩ガラスまたはフツリン酸塩ガラスを含む光ファイバーであって、
前記光ファイバーの側面に直接または間接的に形成された保護膜を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の目的を達成するため、本発明に係る光ファイバーの製造方法の一態様は、
光ファイバーを配置したチャンバーにプリカーサーを供給するプリカーサー供給工程と、
前記プリカーサー供給工程に続いて、前記チャンバーに残存した前記プリカーサーをパージした後、酸素、窒素、フッ素または硫黄のうち1つ以上を含むガスを供給するガス供給工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学特性および耐久性に優れる光ファイバーおよび光ファイバーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係るファイバーセンサを示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る光ファイバーを示す断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造装置を示す図である。
図6】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造方法を示すフローチャートである。
図7】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造方法を説明する図である。
図8】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造方法を説明する図である。
図9】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造方法を説明する図である。
図10】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造方法を説明する図である。
図11】第1の実施の形態に係る光ファイバーの製造方法を説明する図である。
図12】第1の実施の形態に係るファイバーセンサの原理を説明する図である。
図13】第1の実施の形態の変形例に係る光ファイバーを示す断面図である。
図14】第2の実施の形態に係るレーザ発振器を示す図である。
図15】第2の実施の形態に係る光ファイバーを示す断面図である。
図16】(A)および(B)は、第2の実施の形態の変形例に係る光ファイバーを示す断面図である。
図17】第3の実施の形態に係るASE光源を示す図である。
図18】第3の実施の形態に係る光ファイバーを示す断面図である。
図19】変形例に係る光ファイバーを示す断面図である。
図20】(A)および(B)は、実施例に係る光ファイバーを示すSEM画像である。
図21】(A)~(D)は、実施例に係る光ファイバーの側面の蛍光X線像である。
図22】(A)~(D)は、実施例に係る光ファイバーの境界部の蛍光X線像である。
図23】実施例に係る光ファイバーの耐久性を評価する方法を説明する図である。
図24】実施例および比較例に係る光ファイバーの耐久性を示す図である。
図25】(A)~(D)は、実施例および比較例に係る光ファイバーの親水性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態に係る光ファイバー、ファイバーセンサおよび光ファイバーの製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るファイバーセンサ100は、図1に示すように、光源10と、光ファイバー20と、検出器30と、レンズ41、42と、を備える。光ファイバー20は、検出部21を有する。これにより、光源10から放射された光Lは、光ファイバー20を透過する際に、検出対象Rにより光Lが検出部21で吸収される。ファイバーセンサ100は、光ファイバー20を透過した光Lのスペクトルを検出器30により検出して、検出部21に接触した検出対象Rの成分または濃度を検出するものである。検出対象Rとしては、特に限定されないが、気体または液体を含む流体であり、例えば、中赤外線領域に共鳴線を有する炭化水素系の各種分子、炭酸ガス、アンモニア、水蒸気等を含む。
【0013】
光源10は、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを光ファイバー20の一端部20aに照射するものであり、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を用いることが好ましい。ASE光源は、励起用光源から照射された励起光を吸収した希土類金属イオンなどの広帯域な自然放出光が誘導放出によって増幅するものであり、光共振器による波長選択機構がない点において、レーザと異なるものである。
【0014】
光ファイバー20は、図2に示すように、検出部21とコア22とクラッド23と保護膜24とを有し、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを透過するフッ化物系光ファイバーである。光ファイバー20の長さは、特に限定されず、検出部21が配置される場所に応じて選択される。
【0015】
検出部21は、図3および図4に示すように、光ファイバー20の経路に形成され、検出部21が形成された部分以外のクラッド23より薄く形成されたクラッド23を有する。言い換えると、検出部21は、クラッド23に凹部が形成された部分であり、予め決められた厚みT1にクラッド23を削ることで得られる。詳細には、円筒径の形状を有し、表面に研磨材が塗布されている研磨棒を回転させながら、光ファイバー20の経路における検出部21を形成する場所に押し当てる。研磨棒を光ファイバー20の光軸方向に移動しながら、予め決められた厚みT1にクラッド23を削ると、クラッド23に凹部が形成され、検出部21が形成された光ファイバー20が得られる。
【0016】
検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、検出部21におけるクラッド23の最も薄い部分であり、好ましくは、検出部21以外のクラッド23の厚みT2の3分の2以下、より好ましくは、厚みT2の5分の3以下、さらに好ましくは、厚みT2の2分の1以下である。具体的には、検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、15μm以下である。また、検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、好ましくは、0倍超であり、より好ましくは、厚みT2の3分の1以上であり、さらに好ましくは、厚みT2の5分の2以上である。具体的には、検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、好ましくは、0μm超であり、より好ましくは、5μm以上である。検出部21におけるクラッド23の厚みT1が上記値であることで、検出対象Rの成分または濃度を感度よく測定することが可能である。また、光ファイバー20の光軸方向における検出部21の長さL1の下限値は、特に限定されないが、好ましくは、0.5mm、より好ましくは、1mmである。また、検出部21の長さL1の上限値は、特に限定されないが、好ましくは、5mm、より好ましくは、3mmである。
【0017】
コア22は、光源10から放出された光Lが通過する部分であり、2.5μm~3.8μmの波長領域の光を透過するものであればよい。例えば、コア22は、ZBLAN(ZrF-BaF-LaF-AlF-NaF)ガラス、HBLAN(HfF-BaF-YF-AlF-NaF)ガラス、ZBYA(ZrF-BaF-YF-AlF)ガラスを含むZrF系ガラス、AlF-BaF-YF-CaF、AlF-BaF-YF-ThF、AlF-BaF-SrF-CaF-MgF-YFを含むAlF系ガラス、InF-ZnF-BaF-SrF-LaF、InF-BaF-YF、InF-ZnF-SrF-BaFを含むInF系ガラスなどのフッ化物ガラスであってもよく、これらの混合物であってもよい。これらの中で、母材は、ZBLANガラスであることが好ましい。また、コア22の直径D1は、例えば、150μmである。この場合、光ファイバー20は、中赤外波長の光Lが複数のモードで伝送されるマルチモードファイバーである。なお、光ファイバー20として、シングルモードファイバーを用いてもよい。
【0018】
クラッド23は、コア22より低い屈折率を有する。クラッド23は、コア22と同様の材料から作成される。また、クラッド23の直径D2は、例えば、200μmである。また、検出部21以外のクラッド23の厚みT2は、例えば、25μmである。
【0019】
図2に示す保護膜24は、光ファイバー20の一端部20aおよび他端部20bの端面と、側面20cと、検出部21と、に連続的に形成され、光ファイバー20を保護するものである。保護膜24は、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物または金属硫化物を含む。具体的には、保護膜24は、Al、TiO、SiO、HfO、WO、Gd、Ta、MgO、ZrOを含む金属酸化物、TiN、Si、AlNを含む金属窒化物、またはMgF、AlF、CaFを含む金属フッ化物、ZnS、MoSを含む金属硫化物を含む。また、保護膜24は、1つの組成の膜を有してもよく、2以上の組成が混合した膜でもよく、異なる組成の膜が積層されてもよい。保護膜24は、例えば、Al膜にTiO膜が積層されたものであってもよい。特に、Siは、酸化膜より優れた耐久性を有すると考えられる。保護膜24の厚みT3の下限は、単原子層である。保護膜24の厚みT3は、光ファイバー20を保護できるように、0nm超であり、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。また、保護膜24の厚みT3の上限は、特に限定されないが、例えば、10μmである。また、保護膜24の厚みT3は、光学特性に影響を与えないように、1μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。また、光ファイバー20の一端部20aおよび他端部20bの端面に形成された保護膜24の厚みT4は、側面20cに形成された保護膜24の厚みT3と同じであることが好ましい。また、検出部21に形成された保護膜24の厚みT5は、側面20cに形成された保護膜24の厚みT3と同じであることが好ましい。
【0020】
検出器30は、図1に示すように、光ファイバー20の他端部20bから照射された光Lを検出する位置に配置され、光ファイバー20を透過した、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の光Lのスペクトルを検出するものである。検出したスペクトルを分析することで、検出部21に接触した検出対象Rの成分の種類または検出対象Rの濃度を検出することができる。
【0021】
レンズ41は、光源10から照射された光Lを光ファイバー20の一端部20aのコア22に集光するものである。レンズ42は、光ファイバー20の他端部20bから照射された光Lを検出器30のセンサ部にコリメートもしくは集光するものである。
【0022】
つぎに、上記構成を有する光ファイバー20の製造方法について説明する。
【0023】
光ファイバー20の製造方法の一例として、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法による方法を以下に説明する。ALD法は、真空を利用した成膜技術の一つであり、原子の性質である自己制御(Self-limiting)性を利用し、一層ずつ原子を堆積することができる。ALD法では、図5に示すALD装置200を用いる。
【0024】
ALD装置200は、図5に示すように、チャンバー210と、ホルダ220と、加熱装置230と、ガス投入口240と、第1の容器250と、第2の容器260と、真空ポンプ270と、を備える。この構成により、ALD装置200は、ALD法で光ファイバー20に保護膜24を成膜できる。
【0025】
チャンバー210は、光ファイバー20を保持するホルダ220等を格納する密閉された空間を形成するものである。
【0026】
ホルダ220は、光ファイバー20を保持するものであり、チャンバー210内に配置される。
【0027】
加熱装置230は、ホルダ220に保持された光ファイバー20を30℃以上500℃以下、好ましくは、50℃以上100℃以下に加熱するものである。加熱装置230は、抵抗加熱装置であってもよく、ランプ加熱装置であってもよい。
【0028】
ガス投入口240は、プリカーサーと、酸素、窒素またはフッ素のうち1つ以上を含むガスと、を供給する投入口である。また、ガス投入口240は、必要に応じてキャリアガスを供給する。
【0029】
第1の容器250は、プリカーサーを収容する容器であり、ガス投入口240に第1のバルブ251を介して接続されている。プリカーサーは、好ましくは、Al、Ti、Si、Mg、Ca、Zr、Zn、Mo、Hf、W、Gd、Taのうち少なくとも何れか1つを含む化合物であり、より好ましくは、Al、Ti、Si、Mg、Ca、Zr、Zn、Mo、Hf、W、Gd、Taのうち少なくとも何れか1つを含む金属塩化物または有機金属化合物である。保護膜24として、Alを成膜する場合、第1の容器250には、プリカーサーとして、例えば、TMA(TriMethylAluminium)が収容される。また、第1の容器250には、例えば、TiO膜を成膜する場合、TiClなどのTiを含む化合物、Si膜を成膜する場合、SiClなどのSiを含む化合物が収容される。
【0030】
第2の容器260は、酸素、窒素またはフッ素のうち1つ以上を含むガスを収容する容器であり、ガス投入口240に第2のバルブ261を介して接続されている。保護膜24として、Al膜、TiO膜などの酸化膜を成膜する場合、第2の容器260には、例えば、酸素を含むガスとして、HOまたはHが収容される。また、第2の容器260には、例えば、窒化膜を成膜する場合、NH、フッ化膜を成膜する場合、HFまたはTiF、硫化膜を成膜する場合、HSが収容される。
【0031】
真空ポンプ270は、チャンバー210内の空気を排出するためのものである。
【0032】
つぎに、上記構成を有する光ファイバー20の製造工程について説明する。
【0033】
光ファイバー20の製造工程は、図6に示すように、プリカーサー供給工程(ステップS101)と、第1のパージ工程(ステップS102)と、ガス供給工程(ステップS103)と、第2のパージ工程(ステップS104)と、を備える。
【0034】
プリカーサー供給工程(ステップS101)では、光ファイバー20をALD装置200のホルダ220に固定し、チャンバー210内にプリカーサーを供給する。詳細には、真空ポンプ270を作動させ、チャンバー210内の気圧を2×10Pa以下に減圧する。つぎに、加熱装置230によって光ファイバー20を50℃以上100℃以下に加熱する。つぎに、図7に示すように、第1のバルブ251を開放し、第1の容器250に収容されたプリカーサーをガス投入口240からチャンバー210に供給する。プリカーサーは、Al、Ti、Si、Mg、Ca、Zr、Zn、Mo、Hf、W、Gd、Taのうち少なくとも何れか1つを含む。好ましくは、プリカーサーをキャリアガスCGと共に投入する。Alを成膜する場合、プリカーサーとして、例えば、TMAが供給される。これにより、光ファイバー20の表面にプリカーサーが付着(物理吸着)する。プリカーサーが熱で分解され、原子1つがまず結合され、核が形成される。つぎに、図8に示すように、核を起点に膜が横方向に成長し、プリカーサーが成膜される。
【0035】
第1のパージ工程(ステップS102)では、余剰のプリカーサー等をパージする。詳細には、第1のバルブ251を閉じると、真空ポンプ270によりチャンバー210に残った余剰のプリカーサー等が排気される。プリカーサーとして、TMAを用いた場合、図9に示すように、光ファイバー20の表面のOの手がAlでうまると、余剰のTMA、CHおよびキャリアガスCGが排気される。
【0036】
ガス供給工程(ステップS103)では、チャンバー210内に酸素、窒素、フッ素または硫黄のうち1つ以上を含むガスを供給する。詳細には、第2のバルブ261を開放し、第2の容器260に収容されたガスをガス投入口240からチャンバー210に供給する。Alを成膜する場合、図10に示すように、ガスとしてHOを用いる。HOがチャンバー210内に供給されると、図11に示すように、Alに結合していたCHがOに置き換わる。
【0037】
第2のパージ工程(ステップS104)では、余剰のガスをパージする。詳細には、第2のバルブ261を閉じると、真空ポンプ270によりチャンバー210に残った余剰のガスが排気される。プリカーサーとして、TMA、ガスとしてHOを用いた場合、余剰のHOとCHが排気される。
【0038】
第2のパージ工程(ステップS104)が終了すると、処理を終了するか否かを判定する(ステップS105)。予定の膜厚まで成膜されていない場合(ステップS105;NO)、ステップS101に戻って、ステップS101~ステップS105を繰り返す。予定の膜厚まで成膜された場合(ステップS105;YES)、処理を終了する。例えば、Alを成膜する場合、1サイクルでおよそ1Å(オングストローム=0.1nm)製膜できるので、10nm(100Å)の膜厚を得る場合、ステップS101~ステップS105を100サイクル繰り返す。保護膜24を単原子層とする場合は、ステップS101~ステップS105を1サイクルで終了する。また、異なる組成の膜を積層する場合は、第1の容器250と第2の容器260との何れか1つまたは両方を交換して、ステップS101~ステップS105を繰り返す。例えば、Al膜にTiO膜を積層して成膜する場合、TMAを入れた第1の容器250を、Tiを含むプリカーサーを入れたものに取り替えて、ステップS101~ステップS105を繰り返す。TiO膜を成膜する場合、例えば、プリカーサーは、TiClであり、ガスは、HOである。
【0039】
つぎに、以上の構成を有するファイバーセンサ100が、検出部21に接触した検出対象Rを検出する原理について説明する。
【0040】
光源10から光ファイバー20のコア22に光Lを照射すると、図12に示すように、コア22の屈折率がクラッド23の屈折率より高いため、入射角θが臨界角以上であると、光は全反射して、光軸方向に導かれる。このとき、光Lの一部は、エバネッセント光ELとして、クラッド23に浸透すると考えられる。
【0041】
検出部21に検出対象Rが接触している場合、検出対象Rの共鳴線に対応する波長の光Lが、エバネッセント光ELを介して、検出部21で吸収されると考えられる。
【0042】
つぎに、図1に示す検出器30は、光ファイバー20から照射された光Lのスペクトルを検出する。スペクトルは、検出対象Rが有する共鳴線に対応する波長において、吸収されると考えられるので、吸収された波長および吸収強度に基づいて、検出対象Rの種類および濃度を検出することができる。なお、保護膜24の厚みT5が、光学特性に影響を与えない厚さに設定される場合、保護膜24を備えない場合と同様に、検出対象Rの種類および濃度を検出することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態の光ファイバー20および光ファイバー20の製造方法によれば、フッ化物ガラスで作成されており、一般的な石英光ファイバーでは不可能な中赤外光の低損失な伝送が可能であり、分子の指紋領域と呼ばれている中赤外線領域の光を用いることができ、検出対象Rとして中赤外線領域に共鳴線を有する炭化水素系の各種分子、炭酸ガス、アンモニア、水蒸気など多くの分子を検出することが可能である。その一方、フッ化物ガラスで作成された光ファイバーは、耐水性および耐候性が低いことが知られており、そのことが、ファイバーデバイスの実用化を妨げる障壁となっている。さらに、フッ化物ガラス表面や樹脂被覆は撥水性が高いため、検出対象Rが液体である場合、検出部21の親水処理が求められている。本実施の形態の光ファイバー20の製造方法として、金属酸化物や窒化物などを原子層レベルで厚さ制御しながら堆積させる気相成膜法の一種であるALD法によるナノ薄膜形成技術を用いることで、光ファイバー20のような特殊形状の試料に対してもその全ての表面に全く均一にコートされ、ピンホールの無い緻密なアモルファス膜が形成可能であり、オングストローム(0.1nm)オーダーで膜厚を制御でき、一度に多くの光ファイバー20に対して保護膜24の成膜が可能である。そのため、光ファイバー20の被覆界面や融着面など耐水性の脆弱な箇所にも保護膜24が成膜され、金属ナノ微粒子を付着したプラズモンセンサーなどの複雑形状にも対応できる。また、ファイバー伝搬モードのエバネッセント深さよりも十分に薄い膜厚数10nm程度でも、ピンホールの無い緻密膜である保護膜24が形成されるため、優れた耐水性や親水性を有しつつ光センシングには影響を与えない。また、保護膜24によりエバネッセント深さの制御が可能である。従って、本実施の形態の光ファイバー20および光ファイバー20の製造方法は、保護膜24を備えることで、光学特性および耐久性に優れる。
【0044】
(第1の実施の形態の変形例)
第1の実施の形態の変形例に係る光ファイバー20は、実施の形態1に係る光ファイバー20がクラッド23の一部に他の部分より薄い部分を有する検出部21を備えているのに対して、図13に示すように、コア22がクラッド23に被覆されない検出部25を備える。このようにすることで、コア22が検出対象Rに直接接触するため、検出対象Rの種類によっては、高い感度で検出対象Rを検出することが可能である。検出部25は、コア22がクラッド23に被覆されていないが、保護膜24を備えることで、コア22が保護され、光学特性および耐久性に優れる。
【0045】
また、上述の実施の形態1では、光源10が、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを照射する例について説明した。光源10は、光ファイバー20を透過できる波長域であればよく、紫外線、可視光線または近赤外線であってもよい。この場合、光ファイバー20は、光源10が照射する光の波長域の光を透過するものを用いる。また、上述の実施の形態では、光源10は、ASE光源を用いる例について説明したが、光源10は、光Lを照射できるものであればよく、発光ダイオード、ハロゲンランプ、量子カスケードレーザー、固体レーザ、ファイバーレーザ、またはスーパーコンティニウム光源等の光源であってもよい。光源10から照射される光Lの波長に対応する共鳴線を有する検出対象Rを検出することが可能である。
【0046】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るレーザ発振器110は、図14に示すように、励起光を供給する励起用光源11と、励起用光源11から励起光が照射される光ファイバー50と、光ファイバー50の一端部に配置されたエンドキャップ51と、光ファイバー50およびエンドキャップ51を挟み込むように配置される共振器60と、を備える中赤外ファイバーレーザである。レーザ発振器110は、2.7μm~3.5μmの波長のレーザを発振するものである。
【0047】
励起用光源11は、半導体レーザを備え、光ファイバー50に励起光を導入することができる位置に配置されている。励起用光源11から照射された励起光は、レンズ43により集光され、出力鏡62を透過して光ファイバー50に供給される。例えば、光ファイバー50にEr:ZBLANを用いた場合、970nm以上980nm以下のレーザ光を照射する励起用光源11を用いる。
【0048】
光ファイバー50は、励起用光源11から照射された励起光を吸収して誘導放出を起こすことで光を増幅するレーザ媒質を含む。光ファイバー50は、例えば、図15に示すように、Er:ZBLANから構成され励起光を吸収して光を誘導放出するコア52と、コア52より屈折率の低いクラッド53と、保護膜54と、を備えるEr:ZBLANファイバーである。Er:ZBLANは、ZBLANにエルビウム(Er)をドープしたものであり、2.7~2.9μmのレーザ光を発振する。レーザ媒質は、Er:ZBLANファイバー、Er、Pr:ZBLANファイバー、Dy:ZBLANファイバーまたはHo:ZBLANファイバーなどファイバーレーザに用いられるものであればよい。
【0049】
保護膜54は、光ファイバー50の端面50aおよび側面50bに連続的に形成され、光ファイバー50を保護するものである。保護膜54の組成および厚みT3等は、第1の実施の形態の保護膜24と同様である。
【0050】
エンドキャップ51は、光ファイバー50の一端部を保護する潮解抑制パーツとしての機能を有する。エンドキャップ51の形状は、光ファイバー50の一端部を保護することができる形状であれば特に限定されない。エンドキャップ51が光ファイバー50の一端部に配置されることで、ファイバーレーザの長期安定化や高出力化を可能にする。なお、エンドキャップ51は、例えば、光ファイバー50としてEr:ZBLANファイバーを用いる場合、エンドキャップ51として、CaFを用いることが好ましい。この例では、光ファイバー50の端面50aおよび側面50bに保護膜54を形成し、保護膜54が形成された光ファイバー50の一端部にエンドキャップ51を取り付けることで、光ファイバー50は、端面50aおよび側面50bに形成された保護膜54と、保護膜54が形成された光ファイバー50の一端部に配置されたエンドキャップ51と、を有する。
【0051】
共振器60は、図14に示すように、誘導放出された光を反射する反射鏡61と、レーザ光の一部を外部に取り出すことができる出力鏡62と、を備える。反射鏡61と出力鏡62とは、光ファイバー50を挟んで互いに対向するように配置されている。反射鏡61は、凹面鏡であり、光ファイバー50から誘導放出された光および励起光を反射するものである。出力鏡62は、光ファイバー50から誘導放出された波長の光の一部を透過し、残りを反射するものである。出力鏡62は、エンドキャップ51と同様に、光ファイバー50の他端部を保護するエンドキャップと呼ばれる潮解抑制パーツとしての機能をさらに有する。出力鏡62は、エンドキャップ51と同様に、光ファイバー50の端面50aおよび側面50bに保護膜54を形成した後、光ファイバー50の他端部に配置される。励起用光源11と出力鏡62との間に、反射鏡44が光軸に対して45°傾けて配置されている。反射鏡44は、励起用光源11から放出された波長の光を透過し、光ファイバー50から誘導放出された波長の光を反射するものである。
【0052】
以上のように、第2の実施の形態の光ファイバー50によれば、第1の実施の形態と同様に、保護膜54を備えることで、第1の実施の形態の光ファイバー20と同様に、光学特性および耐久性に優れる。特に、保護膜54は、光ファイバー50の端面50aに形成されるため、端面50aにおいて、レーザ光の照射による温度上昇を防ぎ、端面50aの損傷を防止することができる。なお、端面50aに保護膜54が形成されていない場合、端面50aのフッ素基がOH基に置換され、OH基がレーザ光を吸収することで温度上昇し、端面50aが損傷する虞がある。また、保護膜54により、誘電多層膜ミラーまたは反射防止膜の形成などにより、光学特性の制御が可能である。また、エンドキャップ51が、光ファイバー50の一端部を保護する潮解抑制パーツとしての機能をさらに有することで、ファイバーレーザの長期安定化や高出力化を可能にする。光ファイバー50としてEr:ZBLANファイバーを用いる場合、エンドキャップ51として、CaFを用いると、ZBLANガラスとCaF2結晶の熱融着における親和性は極めて高いため、CaFは熱伝導度が高く熱負荷を大幅に軽減可能である。
【0053】
(第2の実施の形態の変形例)
実施の形態2に係る光ファイバー50は、端面50aおよび側面50bに形成された保護膜54と、保護膜54が形成された光ファイバー50の一端部に配置されたエンドキャップ51と、を有する。これに対して第2の実施の形態の変形例に係る光ファイバー50は、図16(A)に示すように、ファイバークリーバーなどを使用して光ファイバー50の端部を切断して端面50aを露出させ、エンドキャップ51を融着してもよい。この場合、端面50aには保護膜54が形成されていないが、端面50aは、エンドキャップ51により保護される。また、第2の実施の形態の変形例に係る光ファイバー50は、図16(B)光ファイバー50の一端部にエンドキャップ51を取り付け、エンドキャップ51を取り付けた光ファイバー50に保護膜54を形成したものであり、光ファイバー50の一端部に取り付けられたエンドキャップ51と、光ファイバー50およびエンドキャップ51に形成された保護膜54と、を備える。なお、エンドキャップ51の端面51aに形成された保護膜54は、光ファイバー50の端面50aに間接的に形成された保護膜54に含まれる。この場合であっても、同様に、光ファイバー50に保護膜54を備えることで、光学特性および耐久性に優れる。また、エンドキャップ50の表面でのフレネル反射を抑制し光透過率を向上させるために、エンドキャップ51に反射防止膜を形成してもよい。
【0054】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係るASE光源120は、図17に示すように、励起用光源12と、光ファイバー70と、伝送用光ファイバー80と、レンズ45と、を備える。ASE光源120は、励起用光源12から放出された励起光を自然放出増幅により増幅して、2.5μm~3.8μmの波長領域の光を放出するものである。ASE光源120は、希土類金属イオンなどの広帯域な自然放出光が誘導放出によって増幅するものであり、光共振器による波長選択機構がない点において、第2の実施の形態に係るレーザ発振器110と異なる。
【0055】
励起用光源12は、半導体レーザを備え、伝送用光ファイバー80の一端部80aに接続されている。励起用光源12から照射された励起光は、伝送用光ファイバー80を透過して光ファイバー70に供給される。励起用光源12が照射する励起光の波長は、好ましくは、790nm以上1000nm以下である。
【0056】
光ファイバー70は、図18に示すように、コア72とクラッド73と保護膜74を有し、励起用光源12から照射された励起光を吸収して誘導放出を起こすことで光を増幅して放出するものである。光ファイバー70の一端部70aは、伝送用光ファイバー80の他端部80bに融着接続されている。図17に示す光ファイバー70の他端部70bには、他端部70bを保護し、潮解抑制パーツとしての機能するエンドキャップ71が取り付けられている。エンドキャップ71としては、CaFを用いることが好ましい。エンドキャップ71の取り付け方法は、図15または図16に示す第2の実施の形態のエンドキャップ51と同様である。また、この例では、光ファイバー70はダブルクラッドファイバであり、クラッド73は、コア72の外側に配置された第1のクラッド75と、第1のクラッド75の外側に配置された第2のクラッド76と、を有する。
【0057】
コア72は、母材と、母材に含まれる第1の希土類金属イオンと、励起光を吸収した第1の希土類金属イオンからエネルギー移動を生じることで、光を放出する第2の希土類金属イオンと、を含む。第1の希土類金属イオンは、好ましくは、Nd3+、Er3+、Tm3+、またはYb3+のうち少なくとも何れか1種類を含む。第2の希土類金属イオンは、好ましくは、Dy3+を含む。なお、コア72が、Dy3+と、Er3+と、を有する場合、励起用光源12が照射する励起光の波長は、好ましくは、970nm以上980nm以下である。また、母材は、励起光および2.5μm~3.8μmの波長領域の光を吸収しないものであればよい。例えば、母材は、ZBLANガラス、ZBYAガラス、AlF系ガラス、InF系ガラスなどのフッ化物ガラスであってもよく、これらの混合物であってもよい。また、コア72の直径D3は、例えば、15μmである。この場合、光ファイバー70は、中赤外波長の光が単一のモードで伝送されるシングルモードファイバーである。
【0058】
第1のクラッド75は、励起用光源12から放出された励起光が通過する部分であり、コア72より低い屈折率を有し、励起用光源12から放出された励起光の波長領域で光を吸収しない光学材料により作製される。第1のクラッド75は、酸化物ガラス、フッ化物ガラス、テルライトガラス、カルコゲナイドガラスからなる群から選択される1つのガラスまたは2以上のガラスの混合物であってもよい。第2のクラッド76は、第1のクラッド75より低い屈折率を有する光学材料により作製される。また、第1のクラッド75の直径D4は、例えば、200μmであり、第2のクラッド76の直径D5は、例えば、400μmである。
【0059】
伝送用光ファイバー80は、図17に示す励起用光源12から放出された励起光を光ファイバー70に伝送するものである。伝送用光ファイバー80の他端部80bは、光ファイバー70の一端部70aに融着接続されている。伝送用光ファイバー80は、コア81とコア81の外側に配置されたクラッド82とを有する。コア81は、励起光の波長領域で光を吸収しない光学材料により作製される。コア81は、石英ガラスを含む酸化物ガラス、フッ化物ガラス、テルライトガラス、カルコゲナイドガラスからなる群から選択される1つのガラスまたは2つ以上のガラスの混合物により作製されるとよい。クラッド82は、コア81より低い屈折率を有する光学材料により作製される。コア81の直径D6は、例えば、105μmであり、クラッド82の直径D7は、例えば、300μmである。伝送用光ファイバー80のコア81の直径D6が、光ファイバー70のコア72の直径D3より大きいことで、伝送用光ファイバー80のコア81を通過した励起光は、光ファイバー70の第1のクラッド75に導入される。
【0060】
保護膜74は、第1のクラッド75の側面70cおよび伝送用光ファイバーの側面80cに連続的に形成され、光ファイバー70および伝送用光ファイバー80を保護するものである。保護膜74の組成および厚みT3等は、第1の実施の形態の保護膜24と同様である。保護膜74は、好ましくは、伝送用光ファイバー80の他端部80bと光ファイバー70の一端部70aとが融着接続された後、ALD法により形成される。このようにすることで、光ファイバー70および伝送用光ファイバー80が保護される。特に、光ファイバー70と伝送用光ファイバー80との接続部である融着部も保護される。
【0061】
図17に示すレンズ45は、光ファイバー70の他端部70bから放出されたASE光をコリメートもしくは集光するものである。
【0062】
以上のように、第3の実施の形態の光ファイバー70は、第1および第2の実施の形態と同様に、保護膜74を備えることで、光学特性および耐久性に優れる。特に、伝送用光ファイバー80の他端部80bと光ファイバー70の一端部70aとの融着部分など耐水性の脆弱な箇所にも保護膜74が形成されることで、優れた耐久性を得ることが可能である。
【0063】
(変形例)
上述の第1から第3の実施の形態では、光ファイバー20、50、70は、それぞれコア22、52、72、81と、クラッド23、53、73、82と、を備える例について説明したが、光ファイバー20、50、70は、フッ化物ガラスを含めばよく、コアレス光ファイバーであってもよい。光ファイバー20、50、70は、コアレス光ファイバーであっても保護膜24、54、74を備えることで、光学特性および耐久性に優れる。また、光ファイバー20、50、70は、フッ化物ガラスに変えて、P-CaO-NaO、P-CaO-MgO-NaO、P-CaO-MgO-NaO-Alを含むリン酸塩ガラスであってもよく、P-AlF-CaF-SrF-MgF-BaFを含むフツリン酸塩ガラスであってもよい。リン酸塩ガラスおよびフツリン酸塩ガラスは潮解性を有するが、この場合であっても、保護膜24、54、74を備えることで、光学特性および耐久性に優れる。
【0064】
また、上述の第1から第3の実施の形態では、光ファイバー20、50、70は、被覆部を備えていないが、変形例に係る光ファイバー90は、第1から第3の実施の形態に係る光ファイバー20、50、70に加えて、図19に示すように、外周90cを保護する被覆部91をさらに備える。被覆部91は、合成樹脂または光硬化樹脂を含む樹脂により作成される。光ファイバー90がコア92およびクラッド93を保護する被覆部91をさらに備えることで、光ファイバー90に外部から力が加えられても、光ファイバー90に傷がつくことを防止できる。この場合、保護膜94は、光ファイバー90の露出部の端面90a、側面90b、および被覆部91の端面91a、側面91bに連続的に形成され、光ファイバー90を保護するものである。保護膜94の組成および厚みT3等は、第1の実施の形態の保護膜24と同様である。この場合、保護膜94がALD法により形成されると、光ファイバー90の端面90a、側面90b、および被覆部91の端面91a、側面91bに隙間なく、均一な厚みで形成できる。光ファイバー90の側面90bと被覆部91の端面91aとの境界部分など耐水性の脆弱な箇所にも保護膜94が成膜される。これにより、光ファイバー90を保護することが可能であり、光学特性および耐久性に優れる光ファイバー90が得られる。なお、被覆部91の側面91bに形成された保護膜94は、光ファイバー90の側面90bに間接的に形成された保護膜94に含まれる。この場合であっても、同様に、光ファイバー90に保護膜94を備えることで、光学特性および耐久性に優れる。
【0065】
また、光ファイバー20、50、70、90の製造方法の一例として、ALD法による方法を説明したが、光ファイバー20、50、70、90は、保護膜24、54、74、94を備えればよい。保護膜24、54、74、94は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法、スパッタリング法により形成されてもよい。これらの方法で保護膜24、54、74、94が形成されても、光学特性および耐久性に優れる光ファイバー20、50、70、90が得られる。
【実施例0066】
以下、光ファイバーの効果を実施例により実証した。この実施例は、本開示の一実施態様を示すものであり、本開示は何らこれらに限定されるものではない。
【0067】
実施例1において、図5に示すALD装置200を用いて、樹脂を含む被覆部を有するφ100μmのコアレスフッ化物(ZBLAN)光ファイバーに保護膜として、Al膜を厚さ50nm、TiO膜を厚さ50nm成膜した。ALD装置200は、ピコサン社製のものを用いた。フッ化物光ファイバーの端部および中間部の被覆部は取り除いて、フッ化物光ファイバーが露出するようにした。
【0068】
まず、フッ化物光ファイバーをチャンバー210に配置して、真空ポンプ270を作動させ、チャンバー210内の気圧を2×10Pa以下に減圧した。つぎに、加熱装置230によって光ファイバー20を80℃に加熱した。つぎに、チャンバー210にTMAを含むプリカーサーと、HOを含むガスと、を交互に供給し、光ファイバーに保護膜24として、Al膜を成膜した。Al膜の成膜方法の詳細は、第1の実施の形態の光ファイバー20の製造工程に記載している。その後、TiClを含むプリカーサーと、HOを含むガスと、を交互に供給し、Al膜にTiO膜を成膜した。これにより、50nmのAl膜と50nmTiO膜とが積層された実施例1のフッ化物光ファイバーが得られた。なお、成膜中80℃に加熱したが、被覆部の樹脂の耐熱温度よりも低いため、被覆部が熱で劣化しなかった。
【0069】
つぎに、実施例1のフッ化物光ファイバーのSEM(Scanning Electron Microscope)画像と蛍光X線像を観測した。実施例1のフッ化物光ファイバーの側面および境界部のSEM画像を、それぞれ図20(A)および図20(B)に示す。また、側面の蛍光X線像を、図21(A)~図21(D)、境界部の蛍光X線像を図22(A)~図22(D)に示す。これにより、実施例1のフッ化物光ファイバーファイバー上に厚さ50nmのアルミナ(Al)/厚さ50nmのチタニア(TiO)の積層膜をALD法により成膜し、ガラスファイバー部・被覆部・被覆除去界面の全てが均一にコートされていることが確認できた。なお、図22(A)、図22(C)および図22(D)では、矢印で示す部分において、観測中に傷がついたためAl、O、Tiが少なくなり、図22(B)ではFが多くなった。このことからも、アルミナ/チタニアが成膜されていることがわかった。
【0070】
つぎに、図23に示すように、実施例1のフッ化物光ファイバー130の中間部131を60°に加熱した水中(過酷条件)に浸漬させて、可視プローブ光での光損失の経時変化を追跡することで、加速劣化試験を行い、光学特性および耐久性を評価した。実施例1のフッ化物光ファイバー130は、中間部131の被覆部132を長さL2=30mm取り除いたコアレス光ファイバーであって、保護膜として、全体に50nmのAl膜と50nmのTiO膜を積層して成膜したものである。比較対象として、中間部の被覆部132を長さL2=30mm取り除いたコアレスフッ化物光ファイバーであって、保護膜を形成していない比較例1のフッ化物光ファイバーを用いた。比較例1のフッ化物光ファイバーは、保護膜を形成していない以外の構成は同様である。耐久性の評価は、波長638nmのレーザ光を光源13から一端部に照射し、他端部から出力される光の強度を、フォトダイオードを含む検出器31で測定した。
【0071】
図24に示すように、実施例1のフッ化物光ファイバー130では、40分までは、透過率が1であり、ほぼ劣化していないことがわかった。40分を経過し、180分まで徐々に透過率が小さくなった。アルミナおよびチタニアを成膜した実施例1において、劣化速度が著しく低下していることを確認した。これに対して、比較例1のフッ化物光ファイバーでは、計測直後から透過率が小さくなり、40分で透過率が略0になった。透過率が小さくなる理由としては、潮解による失透が考えられる。従って、実施例1のフッ化物光ファイバー130は、優れた光学特性および耐久性を有することがわかった。
【0072】
つぎに、検出部21を有するフッ化物光ファイバーの親水性について観測した。詳細には、Al膜を50nm成膜した実施例2のフッ化物光ファイバーと、TiO膜を50nm成膜した実施例3のフッ化物光ファイバーと、成膜していない比較例2のフッ化物光ファイバーと、樹脂被覆した比較例3のフッ化物光ファイバーと、の親水性について観測した。親水性の観測方法は、水滴を垂らして、接触角により行った。
【0073】
図25(A)から(D)に示すように、実施例2のフッ化物光ファイバーでは、Al膜が成膜されているため、接触角は約30°であった。実施例3のフッ化物光ファイバーでは、TiO膜が成膜されているため、接触角は約20°であった。これに対して、比較例2のフッ化物光ファイバーでは、成膜していないため、接触角は約50°であった。比較例3のフッ化物光ファイバーでは、樹脂被覆されていたので、接触角80°~90°であった。これにより、フッ化物光ファイバーは疎水性であるが、アルミナやチタニアをALD法により成膜することで親水性へと変化していることが、水の接触角測定から確認された。従って、実施例2および実施例3のフッ化物光ファイバーのように、Al膜またはTiO膜を成膜することで、検出部21を親水性にできることから、検出部を有するフッ化物光ファイバーを液体センサなどに容易に用いることができることがわかった。
【0074】
以上のように、本実施例のフッ化物(ZBLAN)光ファイバーは、Al/TiOの積層膜をALD法により成膜し、ガラスファイバー部・被覆部・被覆除去界面の全てが均一にコートされていることを蛍光X線像にて確認できた。また、コアレスZBLAN光ファイバーを加熱した水中に浸漬させながら、可視プローブ光での光損失の経時変化を追跡することで、加速劣化試験を行った。その結果、AlまたはTiOを成膜した試料において、劣化速度が著しく低下していることを確認した。また、フッ化物光ファイバーは疎水性であるが、AlまたはTiOを成膜することで親水性へと変化していることが、水の接触角測定から確認された。この実施例から、成膜を施したフッ化物光ファイバーは、ファイバー全面が均一に親水コートされており、なお且つ優れた光学特性および耐久性を有することが実証された。リン酸塩ガラスまたはフツリン酸塩ガラスを含む光ファイバーにAlまたはTiOを成膜することで同様の効果が得られると考えられる。また、AlまたはTiO以外の成分の膜でも同様の効果が得られると考えられる。
【0075】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0076】
10、13…光源
11、12…励起用光源
20、50、70、90…光ファイバー
20a、70a、80a…一端部
20b、70b、80b…他端部
20c、50b、70c、80c、90b、91b…側面
21、25…検出部
22、52、72、81、92…コア
23、53、73、82、93…クラッド
24、54、74、94…保護膜
30、31…検出器
41、42、43、45…レンズ
44…反射鏡
50a、90a、91a…端面
51、71…エンドキャップ
60…共振器
61…反射鏡
62…出力鏡
75…第1のクラッド
76…第2のクラッド
80…伝送用光ファイバー
90c…外周
91、132…被覆部
100…ファイバーセンサ
110…レーザ発振器
120…ASE光源
130…フッ化物光ファイバー
131…中間部
200…ALD装置
210…チャンバー
220…ホルダ
230…加熱装置
240…ガス投入口
250…第1の容器
251…第1のバルブ
260…第2の容器
261…第2のバルブ
270…真空ポンプ
D1~D7…直径
T1~T5…厚み
L1、L2…長さ
L…光
CG…キャリアガス
EL…エバネッセント光
R…検出対象
θ…入射角
図1
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