(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125195
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】共役高分子の製造方法、共役高分子、該共役高分子を含有する有機半導体デバイス用インク及び有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20230831BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20230831BHJP
H10K 10/40 20230101ALI20230831BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20230831BHJP
【FI】
C08G61/12
C09D11/52
H01L29/28 100A
H01L29/28 250G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029168
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄一
(72)【発明者】
【氏名】シャン ルイ
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】道場 貴大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 済
【テーマコード(参考)】
4J032
4J039
【Fターム(参考)】
4J032BA18
4J032BB01
4J032BB09
4J032BC03
4J032BC12
4J032BD07
4J032CG01
4J032CG06
4J039AE12
4J039BA18
4J039BE12
4J039EA24
4J039GA34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デバイスの性能及び安全性に悪影響を及ぼし得る元素を用いることなく共役高分子を得る、新たな製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(II)で表されるモノマーのカップリング反応による重合工程を含む、下記式(I)で表される共役高分子の製造方法。
(Xは置換基を有してよい、芳香環を有する2価の基、R
1~R
4は独立して水素原子又は1価の有機基を表し、それぞれ置換基を介して結合していてもよい。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表されるセレノフェンモノマーのCH/CHカップリング反応による重合工程を含む、下記式(I)で表される共役高分子の製造方法であって、
三価の鉄塩化合物、アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下に、前記CH/CHカップリング反応を行う、共役高分子の製造方法。
【化1】
(式(I),(II)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R
1及びR
2、R
3及びR
4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【請求項2】
前記三価のリン化合物は、下記式(III)で表される化合物を含む、請求項1に記載の共役高分子の製造方法。
【化2】
(式(III)中、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示す)
【請求項3】
前記CH/CHカップリング反応において、-O-を有する溶媒及び/又は-C(=O)を有する溶媒を用いる、請求項1又は2に記載の共役高分子の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテル、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の共役高分子の製造方法。
【請求項5】
下記式(II)で表されるセレノフェンモノマーを構造単位とする共役高分子であって、該共役高分子中に含有される金属量が、100ppm以下である、共役高分子。
【化3】
(式(II)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R
1及びR
2、R
3及びR
4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。)
【請求項6】
下記式(I)で表されるp型共役高分子と、該p型共役高分子を溶解する溶剤とを含有する、有機半導体デバイス用膜形成用インク。
【化4】
(式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R
1及びR
2、R
3及びR
4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【請求項7】
前記p型共役高分子の重量平均分子量(Mw)が、1.0×104~1.5×105であり、且つ、Mw/Mnが、3.5以下である、請求項6に記載の有機半導体デバイス用膜形成用インク。
【請求項8】
下記式(I)で表されるp型共役高分子を含む有機半導体デバイス膜を備える、有機半導体デバイス。
【化5】
(式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R
1及びR
2、R
3及びR
4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄触媒を用いた電子供与性のセレノフェン骨格を含有する共役高分子とその製造方法に関し、さらに該共役高分子を含有する有機半導体デバイス用インク及び有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
PLED、OLED、OFET、OPV、PSC、QD-LED、CMOSなどデバイスの有機半導体材料として、共役高分子が利用されており、中でも、共役高分子はp型高分子半導体として、フレキシブルデバイスやセンサーへの応用が注目されている。
【0003】
共役高分子の合成方法として、パラジウム触媒を用いて原料モノマーをCH/CHカップリング反応させるStilleカップリングが広く使われている。例えば、イミドチオフェン骨格とジチエノシクロペンタジエン骨格を有するコポリマーを、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)又はテトラキス(トリオルトトリルホスフィン)パラジウム(0)触媒を用いたクロスカップリング法によって得る方法が開示されている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。また、1、4-ビス(2-チアゾリル)ベンゼン (BTB)をモノマーとし、パラジウム触媒によるC-H /C-HCH/CHカップリング反応により、共役高分子化を行う方法が開示されている(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society(2011)、133(12)、4250-4253
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society(2011)、133(26)、10062-10065
【非特許文献3】Journal of Materials Chemistry(2011)、21(11)、3895-3902
【非特許文献4】ChemSusChem (2016)、9、2765-2768
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CH/CHカップリング反応で用いるパラジウム触媒やカップリング前駆体に由来するスズは反応系内に残りやすく、得られる共役高分子に取り込まれる。これらの元素は、デバイスの性能及び安全性に悪影響を及ぼす。
しかしながら、上記記載の従来技術では、これらの元素の除去は難しい。また、パラジウム触媒のような貴金属は、製造コストの面でも好ましくないが、従来において、貴金属を用いない触媒系で共役高分子を得る方法は知られていなかった。
【0007】
本発明の課題は、デバイスの性能及び安全性に悪影響を及ぼし得る元素を用いることなく共役高分子を得る、新たな製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、三価の鉄塩化合物、アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下、チオフェンより高電子供与性のセレノフェンモノマーのCH/CHカップリング反応を行うことで、含有金属残存量を抑え、かつ、近赤外n型化合物と好ましい組み合わせとなる長波長化したp型共役高分子が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、以下に存する。
【0009】
[1] 下記式(II)で表されるセレノフェンモノマーのCH/CHカップリング反応による重合工程を含む、下記式(I)で表される共役高分子の製造方法であって、
三価の鉄塩化合物、アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下に、前記CH/CHCH/CHカップリング反応を行う、共役高分子の製造方法。
【0010】
【0011】
(式(I),(II)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【0012】
[2] 前記三価のリン化合物は、下記式(III)で表される化合物を含む、[1]に記載の共役高分子の製造方法。
【0013】
【0014】
(式(III)中、R5、R6、R7は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示す)
【0015】
[3] 前記CH/CHカップリング反応において、-O-を有する溶媒及び/又は-C(=O)を有する溶媒を用いる、[1]又は[2]に記載の共役高分子の製造方法。
【0016】
[4] 前記溶媒が、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、メチル-tert-ブチルエーテル、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンから選択される少なくとも1種を含む、[3]に記載の共役高分子の製造方法。
【0017】
[5] 下記式(II)で表されるセレノフェンモノマーを構造単位とする共役高分子であって、該共役高分子中に含有される金属量が、100ppm以下である、共役高分子。
【0018】
【0019】
(式(II)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。)
【0020】
[6] 下記式(I)で表されるp型共役高分子と、該p型共役高分子を溶解する溶剤とを含有する、有機半導体デバイス用膜形成用インク。
【0021】
【0022】
(式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【0023】
[7] 前記p型共役高分子の重量平均分子量(Mw)が、1.0×104~1.5×105であり、且つ、Mw/Mnが、3.5以下である、[6]に記載の有機半導体デバイス用膜形成用インク。
【0024】
[8] 下記式(I)で表されるp型共役高分子を含む有機半導体デバイス膜を備える、有機半導体デバイス。
【0025】
【0026】
(式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、デバイスの性能及び安全性に悪影響を及ぼし得る元素を用いることなく共役高分子を得ることができる。同時に、高電子供与性を有するセレノフェンを含有することで、より長波長のn型半導体との組み合わせが可能となる。
本発明の共役高分子の製造方法により製造される共役高分子及び本発明の共役高分子は、デバイスの性能及び安全性に悪影響を及ぼし得る金属含有量が極めて少ないことから、この共役高分子を用いて高性能かつ高安全性の有機半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例で製造したポリマー2と比較のポリマー10の膜スペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容 に限定はされない。
【0030】
[共役高分子の製造方法]
本発明の共役高分子の製造方法は、下記式(II)で表されるセレノフェンモノマーのCH/CHカップリング反応による重合工程を含む、下記式(I)で表される共役高分子(以下、「共役高分子(I)」と称す場合がある。)の製造方法であって、三価の鉄塩化合物、アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの共存下に、前記CH/CHカップリング反応を行うことを特徴とする。
【0031】
【0032】
(式(I),(II)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【0033】
<メカニズム>
本発明に従って、三価の鉄塩化合物と、2座リン配位子を形成するためのアセチレン-リン原子結合を有する三価のリン化合物とからなる鉄錯体触媒を用いると共に、求核性の弱いアルキルアルミニウムを添加剤として用いることで、パラジウム触媒を用いることなく、CH/CHカップリング反応を円滑に進行させることができる。
本発明の共役高分子の製造方法によれば、三価の鉄塩化合物と、アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物、及びトリアルキルアルミニウムの存在下でCH/CHカップリング反応を行うことで、従来法のように、パラジウム触媒を用いることなく、共役高分子(I)を製造することができる。このため、本発明により製造される共役高分子(I)は、パラジウム等のデバイスの性能及び安全性に悪影響を及ぼし得る元素を殆ど含まない。しかも、共役高分子(I)は、従来のチオフェン環を有する共役高分子等よりも、高電子供与性複素環であることにより、極大吸収スペクトルが更に長波長化され、有機半導体デバイスにおける近赤外n型化合物との好ましい組み合わせとなりうる。
このため、本発明によれば、高性能かつ高安全性の有機半導体デバイスを提供することができる。
【0034】
<共役高分子(I)>
本発明の共役高分子の製造方法により製造される共役高分子(I)は、下記式(I)で表されるものであり、p型共役高分子として、有機半導体デバイスの有機半導体膜の形成に好適に用いられる。
【0035】
【0036】
(式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【0037】
(X)
式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香族環を有する2価の基であり、該芳香族環は炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子などを含有する芳香族複素環であってもよく、芳香族炭化水素環であってもよく、また、単環でも縮合環であってもよく後述の連結基を介して連結した連結環であってもよい。これらの単環、縮合環、連結環は、後述の連結基を介して式(I)におけるセノレフェン環と結合する。
【0038】
Xの芳香環としては、例えばベンゼン環、シクロヘキサジエン、1,4-ジヒドロペンタレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フェナレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾ[a]ピレン、アヌレン、アズレン、シクロペンタジエニルアニオン、シクロヘプタトリエチルカチオン、トロポン、メタロセン、アセプレイアジレン等の炭素数6~20の芳香族炭化水素環、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、イソティアゾール、ピラゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,2,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-トリアゾール、イソインドール、イソベンゾフラン、イソベンゾチオフェン、シロール、ゲルモール、カルバゾール、3H-インドール、ベンゾフラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、1,2,3-ベンゾオキサジアゾール、などからなる5員環の芳香族複素環;ピリジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、4H-キノリジン、イソキノリン、キノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノオキサジン、フラタジン、キナゾリン、シンノリン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、フェナジン、キノキサリン、フルオレン、5H-ジベンゾシロール,5H-ジベンゾゲルモールなどの6員環の芳香族複素環等の炭素数2~20の芳香族複素環が挙げられるが、電子供与性を付与しやすい観点から芳香族炭化水素環が好ましく、特にチオフェン環あるいはベンゼン環を含むことが好ましい。
【0039】
Xの芳香環は、上記の芳香環の2以上、例えば3~7個が縮合した縮合環であってもよく、また、上記の芳香環やその縮合環が直接結合で式(I)におけるセレノフェン環と結合する。
【0040】
X中の芳香環の数には特に制限はないが、溶解性向上の観点からXの芳香環の数は3~6であることが好ましく、Xの芳香環が置換基を有する場合は、その置換基に含まれる芳香環も含めて3~10であることが好ましい。これは共役高分子(I)の平面性をより適切に制御し、極大吸収スペクトルの長波長化ができるためと考えられる。
【0041】
Xの芳香環が有していてもよい置換基としては、以下の置換基群Zから選ばれるものが挙げられる。
【0042】
(置換基群Z)
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基、シリル基。
【0043】
置換基群Zの具体的な置換基例は以下のとおりである。
メチル基、エチル基などの炭素数1~15程度のアルキル基;
エチニル基、プロピレニル基などの炭素数2~10程度のアルケニル基;
アセチレニル基など炭素数2~10程度のアルキニル基;
フェニル基、ナフチル基などの炭素数6~20程度のアリール基;
チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3~20程度のヘテロアリール基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1~10程度のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6~10程度のアリールオキシ基;
ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3~10程度のヘテロアリールオキシ基;
メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1~10程度のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6~10程度のアリールチオ基;
ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3~10程度のヘテロアリールチオ基;
ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1~15程度の置換基を有していてもよいアミノ基;
アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2~10程度のアシル基;
アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2~10程度のアシルアミノ基;
3-メチルウレイド基などの炭素数2~10程度のウレイド基;
メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1~10程度のスルホンアミド基;
ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1~10程度のカルバモイル基;
エチルスルファモイル基などの炭素数1~10程度のスルファモイル基;
ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1~10程度のスルファモイルアミノ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2~10程度のアルコキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7~12程度のアリールオキシカルボニル基;
ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6~12程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;
メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1~10程度のアルキルスルホニル基;
ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6~12程度のアリールスルホニル基;
チエニルスルホニル基などの炭素数3~12程度のヘテロアリールスルホニル基;
フタルイミド基などの炭素数4~12程度のイミド基;又は、
アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基:
【0044】
Xとしては、より具体的には、以下のような基が挙げられる。以下の例示において、破線で示す部分は、式(I)におけるセレノフェン環との結合手を示す。
下記例示のうち、電子供与性のものが好ましく、下記例示のうち、ビフェニル型、ターフェニル型、COPV型、ビチオフェン型、チオフェン-フェニルーチオフェン型、ヘテロアセン型、チエノチオフェン型、ベンゾジチオフェン型、ベンゾトリチオフェン型、ナフトジチオフェン型、縮合環型のものがより好ましい。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
(R1、R2、R3、R4)
R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表す。1価の有機基としては、前述の置換基群Zに挙げたもの或いはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
これらのうち、R1、R4としては、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、より好ましくは水素原子、アルキル基であり、より高い重量平均分子量となるように高分子量化を行うためには、立体障害の観点から、特に好ましくは水素原子である。
【0052】
また、R2、R3としては、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、アルキル基等の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくは、溶解性の観点から、置換基を有さないアルキル基又はアルコキシ基である。
【0053】
該脂肪族炭化水素基としては、飽和であっても不飽和であってもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルカジエル基、アルキニル基などが挙げられるが、導入のしやすさからアルキル基であることが好ましい。
【0054】
また、該脂肪族炭化水素基は直鎖であってもよく、溶解性向上の観点から分岐を有していてもよいが、立体障害軽減と芳香環の平面性の維持の観点から、直鎖脂肪族炭化水素基又は一級分岐鎖脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0055】
該脂肪族炭化水素基の炭素数は、溶解性の観点から直鎖、一級分岐鎖で、4以上であることが好ましく、熱分解温度を下げすぎない観点から12以下であることが好ましい。この炭素数は、正孔輸送のしやすさ/正孔の取り出しのし易さの面から、特に6~10であることが好ましい。
【0056】
(R1及びR2、R3及びR4が置換基を介して結合している場合)
R1及びR2、R3及びR4は、それぞれ置換基を介して結合していてもよい。この場合、その構造としては、例えば以下のものが挙げられる。以下において、式(I)中のセレノフェン環の2位の結合手は点線で記載している。
【0057】
【0058】
(n)
式(I)中のnは整数であり、後述の重量平均分子量Mwを満たす数であればよい。
【0059】
(分子量)
本発明の共役高分子(I)の重量平均分子量(Mw)は、通常1.0×104(10,000)以上であり、好ましくは2.0×104以上、より好ましくは2.5×104以上、さらに好ましくは3.0×104以上である。一方、通常1.5×105(150,000)以下であり、好ましくは1.0×105以下、より好ましくは8.0×104以下、さらに好ましくは6.0×104以下である。
共役高分子(I)のMwは有機溶媒への溶解性及び塗布性の観点から、有機半導体デバイスの成膜材料に用いた際に安定した均一膜を形成する点で上記範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明の共役高分子(I)の数平均分子量(Mn)は、通常8.0×103以上、好ましくは1.0×104以上、より好ましくは1.5×104以上、さらに好ましくは2.0×104以上である。一方、好ましくは1.0×105以下、より好ましくは7.5×104以下、さらに好ましくは4.0×104以下である。
共役高分子(I)のMnは、有機溶媒への溶解性及び塗布性の観点から、有機半導体デバイスの成膜材料に用いた際に安定した均一膜を形成する点でこの範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明の共役高分子(I)の分子量分布(PDI、(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)))は、通常2.0以上、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは2.7以上である。一方、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下、さらに好ましくは3.2以下であり、特に好ましくは3.0以下である。
この範囲にあることで、共役高分子(I)の分子長が適度に揃っていて、かつ、適した溶解性を得ることができるという観点から、分子量分布がこの範囲にあることが好ましい。
【0062】
本発明において、共役高分子(I)の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めるものとする。具体的には、カラムとして、Shim-pac GPC-803、GPC-804(島津製作所製、内径8.0mm、長さ30cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用い、ポンプとしてLC-10AT、オーブンとしてCTO-10A、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID-10A)、及びUV-vis検出器(島津製作所製:SPD-10A)を用いることにより測定できる。測定対象の共役高分子(I)はクロロホルムに溶解させ、得られた溶液5μLをカラムに注入する。移動相としてクロロホルムを用い、1.0mL/minの流速で測定を行なう。解析にはLC-Solution(島津製作所)を用いる。
【0063】
(金属量)
共役高分子(I)中に含有される金属量は、100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは80ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。金属量が上記上限以下であることで、この共役高分子(I)を用いて高性能かつ高安全性の有機半導体デバイスを製造することができる。
なお、共役高分子(I)中の金属含有量は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定することができる。
【0064】
(溶解度)
本発明の共役高分子(I)の溶解度は、特に限定は無いが、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、一方、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。溶解性が高いことは、均一な膜を成膜することができるため好ましい。
【0065】
<セレノフェンモノマー>
本発明の共役高分子の製造方法において、共役高分子(I)の原料モノマーとして用いるセレノフェンモノマー(以下、「原料モノマー(II)」と称す場合がある。)としては、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化14】
式(II)中、X、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、式(I)中のX、R
1、R
2、R
3、R
4と同義であり、その具体例、好適例は前述の式(I)で表される共役高分子(I)の説明におけると同様である。なお、式(II)で示される範囲内であれば、複数種の式(II)で表される原料モノマーを使用してもよい。
【0067】
<三価の鉄塩化合物>
三価の鉄塩化合物としては、反応中共存させるアセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物と活性錯体を形成できるものであれば特に限定されず、好ましくは混合しただけで、反応中共存させるアセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物と活性錯体を形成できるものである。
【0068】
例えば、臭化鉄(III)、塩化鉄(III)、塩化鉄(III)六水和物、アセチルアセトン鉄(III)、硝酸鉄(III)九水和物、シュウ酸鉄(III)六水和物、過塩素酸鉄(III)水和物、リン酸鉄(III)水和物、イソプロポキシ鉄(III)、硫酸鉄(II)七水和物、シュウ酸鉄(III)水和物、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(II)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)鉄(III)などが挙げられる。
これらのうち好ましい鉄塩化合物は、基質依存性が少ないことから、ハロゲン化鉄である。
【0069】
反応における鉄塩化合物の使用量は、原料モノマー(Ia)1mоlに対し通常3mmоl以上であり、好ましくは5mmоl以上であり、また撹拌効率の観点から、通常15mmоl以下であり、好ましくは10mmоl以下である。
【0070】
<アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物>
アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物は、上記鉄塩化合物との間で活性錯体を形成できるものであり、下記式(III)で示すように、アセチレンがリン原子に結合した部位を有し、分子内に3つのリン原子を有する配位子である。
【0071】
【0072】
(式(III)中、R5、R6、R7は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示す)
【0073】
上記R5、R6、R7の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2-エチルブチル基、イソプロピル基、2-ブチル基、シクロヘキシル基、3-ペンチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルオクチル基等の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基;2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2,4-ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。橋かけ環状脂肪族炭化水素として、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊,1990年)15頁~16頁に記載のものが挙げられる。
【0074】
上記R5、R6、R7の芳香族炭化水素基としては、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)7頁~14頁及び20頁~22頁に記載の芳香族炭化水素基が挙げられ、ヘテロ環芳香族炭化水素としては、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)27頁~39頁に記載のヘテロ環芳香族炭化水素基が挙げられる。橋かけ芳香族炭化水素として、例えば、有機化合物命名の手引き(化学同人刊、1990年)17頁に記載のものが挙げられる。
【0075】
上記脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0076】
R5、R6、R7は、具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1~15程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数2~10程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数2~10程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6~20程度の芳香族炭化水素基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3~20程度の芳香族ヘテロ環炭化水素基;が挙げられる。
【0077】
R5、R6、R7は、これらのうち好ましくは、単環からなる芳香族炭化水素基が好ましく、具体的には、フェニル基、o-トリル基が好ましい。
【0078】
アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物の分子量は特に限定されないが、通常500以上、好ましくは600以上であり、また通常1200以下、好ましくは1100以下である。
【0079】
アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物としては、以下の化合物が例示される。以下において、「Ph」はフェニル基を、「Me」はメチル基を、「Bu」はブチル基を、「Mes」はメシチル基を、「TMS」はトリメチルシリル基を、「TES」はトリエチルシリル基を、「TBS」はtert-ブチルジメチルシリル基を、「TIPS」はトリ-iso-プロピルシリル基を、それぞれ表す。
【0080】
【0081】
反応におけるアセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物の使用量は、前記鉄塩化合物1mоlに対し通常1.2mol以上であり、好ましくは1.5mol以上である。アセチレン-リン結合を有する三価のリン化合物は鉄塩化合物に対し過剰量加えてもよいが、精製の効率性、反応溶液の撹拌効率の面から、通常2.0mol以下であり、好ましくは1.7mol以下である。
【0082】
<トリアルキルアルミニウム>
本発明の共役高分子(I)の製造には、添加剤としてトリアルキルアルミニウムの存在下にCH/CHカップリング反応を行う。
用いるトリアルキルアルミニウムとしては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどが挙げられ、特に好ましくは、反応後の精製が容易なトリメチルアルミニウムである。
【0083】
CH/CHカップリング反応において用いるトリアルキルアルミニウムの量は適宜設定されるが、原料モノマー(Ia)に対して、通常3.0当量以上であり、5.0当量以上であることが好ましく、また、後処理を簡易にするためには、通常10.0当量以下であり、7.0当量以下であることが好ましい。
【0084】
<反応溶媒>
本発明の共役高分子(I)の製造は、高分子量化を促進するために、少なくとも2種類以上の混合溶媒(主溶媒と補助溶媒からなる反応溶媒)中で行うことが好ましい。
【0085】
主溶媒としては、少なくとも一種類の-O-を有する溶媒及び/又は-C(=O)を有する溶媒から選ばれることが好ましい。これらの溶媒は、高分子量化を進めることから好ましい。具体的にはテトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサンの群より選ばれるエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの群より選ばれるケトン系溶媒;が挙げられる。これらのうち、特に、リン化合物との相互作用の観点からTHFが好ましく、高沸点の観点からはMTBEが好ましい。
【0086】
補助溶媒としては、具体的には、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ODCB(o-ジクロロベンゼン)などの芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒;DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N-ジメチルアセトアミド)などのアミド系溶媒などから選択できる。これらのうち、特に、溶解性の観点から、芳香族系溶媒が好ましく、トルエン、クロロベンゼンが特に好ましい。これらの溶媒は単独でも2種以上を混合してもよく、例えば、基質等の溶解度が低い溶媒を用いる場合には、ハロゲン系溶媒やアミド系溶媒を組み合わせると高分子分布を向上させ、反応収率が向上する。
主溶媒と補助溶媒の使用割合は、溶解性の観点から、主溶媒と補助溶媒の容量比で主溶媒:補助溶媒=9:1から1:1の範囲であることが好ましい。
【0087】
また、反応溶媒は反応基質の1ミリモルに対して1~5mL、反応効率を落とさないために、特に2~3mLの割合で用いることが好ましい。
【0088】
<酸化剤>
本発明の共役高分子(I)を合成するためのCH/CHカップリング反応は、炭素-水素結合活性化を経る酸化的CH/CHカップリング反応であることから、反応を加速するため、酸化剤を共存させることが好ましい。
【0089】
酸化剤としては、二価の-C(=O)-C(=O)-を有するジケトン化合物が好ましく、具体的には、2,3-ブタンジオン、ピルビン酸、オキサミド、オキサミン酸、2,3-ペンタンジオン、2-オキソ酪酸、ピルビン酸メチル、1,2-シクロヘキサンジオン、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオン、パラバン酸、3,4-ヘキサンジオン、2-オキソ酪酸メチル、ピルビン酸エチル、2-オキソ吉草酸、オキサミン酸エチル、N,N-ジメチルオキサミン酸、シュウ酸ジメチル、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、2,3-ヘプタンジオン、5-メチル-2,3-ヘキサンジオン、4-メチル-2-オキソ吉草酸、3-メチル-2-オキソ吉草酸、3,3-ジメチル-2-オキソ酪酸、2-オキソ吉草酸メチル、オキサル酢酸、1-エチル-2,3-ジオキソピペラジン、オキサミン酸ブチル、2-オキソグルタル酸、シュウ酸ジエチル、1,2-インダンジオン、イサチン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、ベンゾイルギ酸、トリフルオロピルビン酸メチル、2,4-ジオキソ吉草酸エチル、1,2-ナフトキノン、1-メチルイサチン、ベンゾイルギ酸メチル、フェニルピルビン酸、2,3-ボルナンジオン、トリキノイル水和物、トリフルオロピルビン酸エチル、メソシュウ酸ジエチル、2-オキソグルタル酸ジメチル、ジメチルオキサロイルグリシン、N,N’-ジメトキシ-N,N’-ジメチルオキサミド、ベンゾイルギ酸エチル、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、オキサル酢酸ジエチル、フリル、1,1’-オキサリルジイミダゾール、メチルオキサル酢酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、9,10-フェナントレンキノン、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、ベンジル、3,5-ジ-tert-ブチル-1,2-ベンゾキノン、クロロオキサル酢酸ジエチル、1,3-ジフェニルプロパントリオン、シュウ酸ジフェニル、o-クロラニル、1,4-ビスベンジル、シュウ酸ビス(2,4-ジニトロフェニル)、シュウ酸ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)などから選ばれる。
【0090】
これらの酸化剤のうち、適した酸化電位を有する観点からシュウ酸ジアルキルであることが特に好ましい。
【0091】
CH/CHカップリング反応において用いる酸化剤の量は適宜設定されるが、通常原料モノマー(Ia)に対して1.0当量以上であり、2.0当量以上であることが好ましく、また通常10.0当量以下であり、5.0当量以下であることが好ましい。
【0092】
<反応条件>
本発明の共役高分子(I)を製造する際の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは25℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、反応温度の上限は、反応の進行速度に応じて用いる溶媒の還流温度までの範囲で任意に設定可能である。反応が遅いときは、超音波、オートクレーブ、マイクロ波を併用することも好ましい。
反応時間は、通常30分以上36時間以下であるが、用いる溶媒の種類や、その他の反応条件にも依存するので、任意に設定すればよい。
反応の進行度合いは、分析GPCやHPLCを用いて確認することができる。
【0093】
<共役高分子(I)の回収>
反応終了後は、公知の単離・精製方法を用いて、目的とする共役高分子(I)を得ることができる。反応後、鉄塩化合物を除去するために、希塩酸水溶液で抽出することが好ましい。
【0094】
[共役高分子]
本発明の共役高分子は、セレノフェン環を含むモノマーを構造単位とする共役高分子であって、該共役高分子中の金属量が、100ppm以下であるものである。
本発明の共役高分子は、好ましくは、本発明の共役高分子の製造方法により製造された前述の共役高分子(I)であり、その好適な金属量、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布等については本発明に係る共役高分子(I)について前述した通りである。
【0095】
[有機半導体デバイス用膜形成用インク]
本発明の有機半導体デバイス用膜形成用インクは、下記式(I)で表されるp型共役高分子と、該p型共役高分子を溶解又は分散する溶剤とを含有するものであり、ここで用いられるp型共役高分子として用いられる共役高分子は、好ましくは本発明の共役高分子の製造方法により製造された前述の共役高分子(I)であり、その好適な金属量、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布等については本発明に係る共役高分子(I)について前述した通りである。
【0096】
【0097】
(式(I)中、Xは置換基を有していてもよい、単環または縮合環からなる芳香環を有する2価の基であり、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は任意の1価の有機基を表し、R1及びR2、R3及びR4はそれぞれ置換基を介して結合していてもよい。nは整数を表す。)
【実施例0098】
以下に、実施例により本発明の実施態様をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0099】
なお、本実施例に記載の項目は以下の方法によって測定した。
【0100】
[重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)の測定]
ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めた。具体的には、カラムとして、Shim-pac GPC-803、GPC-804(島津製作所製,内径8.0mm,長さ30cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用い、ポンプとしてLC-10AT、オーブンとしてCTO-10A、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID-10A)、及びUV-vis検出器(島津製作所製:SPD-10A)を用いた。測定のために、測定対象の共役高分子をクロロホルムに溶解させ、得られた溶液5μLをカラムに注入した。移動相としてはクロロホルムを用い、1.0mL/minの流速で測定を行った。解析にはLC-Solution(島津製作所)を用いた。
【0101】
[金属量の測定]
ICP質量分析法は、公知文献(「プラズマイオン源質量分析」(学会出版センター))に記載されている方法により実施した。具体的には、パラジウム、ニッケル、銅、鉄などについては、試料を湿式分解後、分解液中のPd等をICP質量分析装置(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて検量線法により定量した。
【0102】
[膜スペクトルの測定]
ポリマー1mgをクロロホルム200μLを用いて溶解させ、スピンコーター(500rpm/3秒、1500rpm/20秒、3000rpm/20秒)により成膜し、分光器「JASCO V-770」により膜スペクトルを測定した。
【0103】
【0104】
シュレンク管1に、化合物1(Lumtec社製)(130mg,0.20mmol)とリン配位子3(21mg,0.030mmol)を加え、シュレンク管を真空引きし、アルゴン置換した。これに、塩化鉄(III)六水和物THF溶液(0.067mol/L,0.30mL,塩化鉄(III)量0.020mmol)とトリメチルアルミニウムのトルエン溶液(2.0mol/L,0.30mL,トリメチルアルミニウム量0.60mmol)を加えた。続けて、シュウ酸ジエチル(54μL,0.40mmol)を加え、反応溶液を凍結脱気した後、再度アルゴン置換した。反応溶液を、500rpm回転下、70℃で24時間、加熱した後、反応用液にTHF1mLを加え希釈した。さらにHClジオキサン溶液(4mol/L,0.50mL)を加え、1時間撹拌した。反応溶液を遠心分離管に移し、THF5mLと水10mLを加えると沈殿が生成した。これを4000rpm、10分で遠心分離し溶液を除き、THF/水(1:1,15mL)を再度加え、4000rpm、10分で遠心分離し溶液を除いた。さらにメタノール10mL加え、4000rpm、10分で遠心分離し溶液を除いた。得られた固体を真空下、120℃で12時間加熱した。得られたポリマー2の重量平均分子量Mwは1.7×104であり、PDIは2.24で、収率は97%であった。また、ポリマー2中の鉄の含有量は21ppmであった。なお、ポリマー2の製造には、金属成分として塩化鉄(III)のみを用いているため、鉄含有量がポリマー2の金属量となる。以下のポリマー5,7,9においても同様である。
【0105】
【0106】
化合物1の代わりに、化合物4(Lumtec社製)を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリマー5の重量平均分子量Mwは2.0×104であり、PDIは2.14で、収率は65%であった。また、ポリマー5中の鉄の含有量は25ppmであった。
【0107】
【0108】
化合物1の代わりに、化合物6(Lumtec社製)を用いた他は、実施例1と同様に反応を行った。得られたポリマー7の重量平均分子量Mwは2.9×104であり、PDIは2.07で、収率は72%であった。また、ポリマー7中の鉄の含有量は19ppmであった。
【0109】
[膜スペクトルの比較]
実施例1で製造した下記ポリマー2と、比較のためのLumtec社製下記ポリマー10について、前述の方法で膜スペクトルを測定した。
【0110】
【0111】
測定結果を
図1に示す。
図1中、実線がポリマー10を示し、破線がポリマー2を示す。
チオフェン環を有するポリマー10に比べて、セレノフェン環を有するポリマー2は、膜スペクトルが長波長化していることが分かる。