(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126192
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】化合物、光電変換素子、ペロブスカイト型量子ドットLEDモジュール及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230831BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20230831BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20230831BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20230831BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20230831BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230831BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230831BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20230831BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20230831BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230831BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20230831BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/86
H05B33/14 Z
H10K50/115
H10K50/15
H10K59/10
H10K71/12
H10K85/50
H10K85/60
H10K101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029262
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022029169
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄一
(72)【発明者】
【氏名】シャン ルイ
(72)【発明者】
【氏名】福間 翔太
(72)【発明者】
【氏名】王 璞石
(72)【発明者】
【氏名】高杉 明徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 済
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA06
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC22
3K107CC45
3K107DD57
3K107DD71
3K107DD78
3K107FF19
5F251AA11
5F251CB13
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
5F251XA01
5F251XA43
5F251XA55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機無機ペロブスカイト半導体材料を用いた光電変換素子の正孔注入層又は正孔取り出し層の化合物として有用な、低分子かつ中性で濡れ性に優れた新規化合物と、この化合物を用いた光電変換素子等を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される、化合物。上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ペロブスカイト型半導体材料を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置し、この化合物を含有する層とを有する、光電変換素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される、化合物。
【化1】
(式(I)中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
【請求項2】
HOMO準位が、-5.30eVから-5.60eVの範囲内にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、
前記一対の電極間に位置し、有機無機ペロブスカイト型半導体材料を含有する活性層と、
前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置し、請求項1に記載の前記式(I)で表される化合物を含有する層とを有する、光電変換素子。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物を含有する層は、前記下部電極と前記活性層との間に位置する、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物を含有する層は、前記上部電極と前記活性層との間に位置する、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記式(I)で表される化合物を含有する層は、正孔取り出し層又は正孔注入層である、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項7】
請求項3~請求項6のいずれかに記載の光電変換素子を有する、ペロブスカイト型量子ドットLEDモジュール。
【請求項8】
請求項3~請求項6のいずれかに記載の光電変換素子を有する、有機薄膜太陽電池モジュール又はペロブスカイト太陽電池モジュールである太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の正孔取り出し層や正孔注入層に有用な新規化合物と、この化合物を用いた光電変換素子、ペロブスカイト型量子ドットLEDモジュール及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
有機無機ペロブスカイト半導体材料を用いた光電変換素子が高効率性のために注目を浴びている。例えば非特許文献1には、ペロブスカイト半導体化合物を活性層材料として用いた太陽電池が開示され、非特許文献2には、ペロブスカイト量子ドットを活性層にして用いたLEDが開示されている。
また、特許文献1、2には、本発明に係る化合物に類似した化合物を用いた光電変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-13898号公報
【特許文献2】特開2019-46935号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Energy Environ.Sci.,2015,8,1602-1608
【非特許文献2】Chem.Mater.,2018,30,17,6099-6107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機無機ペロブスカイト半導体材料を用いた光電変換素子は、正孔注入層にPEDOT:PSSを用いることから、PEDOT:PSSに由来する強酸の影響で、素子が壊れてしまうという課題を有していた。
【0006】
特許文献1、2に記載の化合物は、本発明の化合物に類似の構造を有しているが、塩型化合物であるため、化合物の純度が低く、膜性も悪く、半導体デバイスとしたときの特性が悪くなり、有機薄膜太陽電池やペロブスカイト型量子ドットLED等に用いるための実用上難があった。
【0007】
即ち、有機薄膜太陽電池やペロブスカイト型量子ドットLEDの実用化のためには、分子量分布がない低分子かつ中性で、濡れ性に優れ、塗布が可能な正孔注入材料が望まれる。
【0008】
そこで本発明は、有機無機ペロブスカイト半導体材料を用いた光電変換素子の正孔注入層又は正孔取り出し層の化合物として有用な、低分子かつ中性で濡れ性に優れた新規化合物と、この化合物を用いた光電変換素子、ペロブスカイト型量子ドットLEDモジュール及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有機無機ペロブスカイト半導体材料を用いた光電変換素子において、特定の新規化合物を含有する正孔注入層又は正孔取り出し層を用いることにより、低分子で濡れ性のよい薄膜を形成することができ、薄膜内での結晶化形成により、PEDOT:PSSを正孔注入層に用いた素子よりも、性能が高いデバイス構築ができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下に存する。
【0011】
[1] 下記式(I)で表される、化合物。
【0012】
【0013】
(式(I)中、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
【0014】
[2] HOMO準位が、-5.30eVから-5.60eVの範囲内にある、[1]に記載の化合物。
【0015】
[3] 上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ペロブスカイト型半導体材料を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置し、[1]又は[2]に記載の前記式(I)で表される化合物を含有する層とを有する、光電変換素子。
【0016】
[4] 前記式(I)で表される化合物を含有する層は、前記下部電極と前記活性層との間に位置する、[3]に記載の光電変換素子。
【0017】
[5] 前記式(I)で表される化合物を含有する層は、前記上部電極と前記活性層との間に位置する、[3]に記載の光電変換素子。
【0018】
[6] 前記式(I)で表される化合物を含有する層は、正孔取り出し層又は正孔注入層である、[3]~[5]に記載の光電変換素子。
【0019】
[7] [3]~[6]のいずれかに記載の光電変換素子を有する、ペロブスカイト型量子ドットLEDモジュール。
【0020】
[8] [3]~[6]のいずれかに記載の光電変換素子を有する、有機薄膜太陽電池モジュール又はペロブスカイト太陽電池モジュールである太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0021】
本発明の化合物は、結晶性、濡れ性に優れるため、低分子であるにもかかわらず、光電変換素子の正孔注入層又は正孔取り出し層に使用することで、ペロブスカイト型量子ドットLEDや太陽電池用のモジュールとして、優れた特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態としての光電変換素子を模式的に表す断面図である。
【
図2】一実施形態としての太陽電池を模式的に表す断面図である。
【
図3】一実施形態としての太陽電池モジュールを模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
【0024】
[化合物]
本発明の化合物は、下記式(I)で表される新規化合物である。
【0025】
【0026】
(式(I)中、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
【0027】
式(I)においてAr1~Ar4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0028】
Ar1~Ar4の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30のものが好ましく、炭素数6~20のものがより好ましく、炭素数6~15のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基等の単環芳香族炭化水素基;2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、若しくは4-ビフェニリル基等の環連結芳香族炭化水素素基;ナフチル基(1-ナフチル基若しくは2-ナフチル基)、アントリル基(2-アントリル基若しくは9-アントリル基等)、又はフルオレニル基等の芳香族縮合環基等が挙げられる。
【0029】
Ar1~Ar4の芳香族複素環基は、単環芳香族複素環基、縮合芳香族複素環基、環連結芳香族複素環基のいずれであってもよい。
【0030】
芳香族複素環基が有するヘテロ原子の例としては、例えば窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられ、芳香族複素環基は環を構成する原子として1種又は2種のヘテロ原子を含むことが好ましい。
【0031】
Ar1~Ar4の単環芳香族複素環基としては、炭素数2~30のものが好ましく、炭素数2~15のものがより好ましく、炭素数4~10のものがより好ましい。単環芳香族複素環基の好ましい例としては、炭素原子以外に1~4個のヘテロ原子を環を構成する原子として有する、3~10員環が挙げられ、より好ましくは5~6員環の、単環芳香族複素環基が挙げられる。
【0032】
単環芳香族複素環基の具体的な例としては、チエニル基(2-チエニル基若しくは3-チエニル基)、フリル基(2-フリル基若しくは3-フリル基)、ピリジル基(2-ピリジル基、3-ピリジル基、若しくは4-ピリジル基)、チアゾリル基(2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、若しくは5-チアゾリル基)、オキサゾリル基(2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、若しくは5-オキサゾリル基)、ピラジニル基、ピリミジニル基(2-ピリミジニル基、4-ピリミジニル基、若しくは5-ピリミジニル基)、ピロリル基(1-ピロリル基、2-ピロリル基、若しくは3-ピロリル基)、イミダゾリル基(1-イミダゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、若しくは5-イミダゾリル基)、ピラゾリル基(1-ピラゾリル基、3-ピラゾリル基、若しくは4-ピラゾリル基)、ピリダジニル基(3-ピリダジニル基若しくは4-ピリダジニル基)、イソチアゾリル基(3-イソチアゾリル基等)、イソオキサゾリル基(3-イソオキサゾリル基等)、イミダゾリル基、又はこれらにさらにアルキル基が結合していているもの等が挙げられる。
【0033】
Ar1~Ar4の縮合芳香族複素環基としては、炭素数2~30のものが好ましく、炭素数2~15のものがより好ましく炭素数4~10のものがより好ましい。縮合芳香族複素環基の好ましい例としては、炭素原子以外に1~4個のヘテロ原子を環を構成する原子として有する、3~10員環が挙げられ、より好ましくは5~6員環の、2環又は3環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0034】
縮合芳香族複素環基の具体的な例としては、キノリル基(2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、若しくは8-キノリル基等)、イソキノリル基(1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、若しくは5-イソキノリル基等)、インドリル基(1-インドリル基、2-インドリル基、若しくは3-インドリル基等)、2-ベンゾチアゾリル基、ベンゾ[b]チエニル基(2-ベンゾ[b]チエニル基若しくは3-ベンゾ[b]チエニル基等)、ベンゾ[b]フラニル基(2-ベンゾ[b]フラニル基若しくは3-ベンゾ[b]フラニル基等)、又はこれらにさらにアルキル基が結合していているもの、等が挙げられる。
【0035】
環連結芳香族複素環基としては、炭素数4~30のものが好ましく、炭素数4~20のものがより好ましい。環連結芳香族複素環基の例としては、上述した単環芳香族複素環基、縮合芳香族複素環基、及び芳香族炭化水素基のうちの少なくとも1つが互いに結合したものが挙げられる。
【0036】
Ar1~Ar4の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、水酸基;フッ素原子若しくは塩素原子等のハロゲン原子;メチル基若しくはエチル基等の炭素数1~6のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基若しくはエトキシカルボニル基等の炭素数1~6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基若しくはエトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジベンジルアミノ基、若しくはジフェネチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基若しくはカルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;ニトロ基;メチレンジオキシ基若しくはエチレンジオキシ等の炭素数1~3のアルキレンジオキシ基;イオン性の置換基;等が挙げられる。
【0037】
なかでも、Ar1~Ar4はそれぞれ独立に、電子吸引基を置換基として有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。特に好ましい例においては、Ar1~Ar4のうちの少なくとも1つは電子吸引基を置換基として有する炭素数6~20の芳香族炭化水素基であるか、又はAr1~Ar4がそれぞれ独立に電子吸引基を置換基として有する炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。Ar1~Ar4が電子吸引基を置換基として有する炭素数6~20の芳香族炭化水素基であることは、キャリア輸送性能が向上しうる点で好ましい。電子吸引基としては、フッ素原子若しくは塩素原子のようなハロゲン原子、シアノ基、アシル基、ニトロ基、又はハロアルキル基等が挙げられる。なかでも、電子吸引基がハロゲン原子の場合、化合物の安定性が向上するために、得られる光電変換素子の耐久性も向上するために好ましく、なかでも、フッ素原子が特に好ましい。
【0038】
一方で、Ar1~Ar4は溶解性の観点からは、それぞれ独立に、炭素数6~20の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基の中でも、特にフェニル基、ナフチル基であることが好ましく、溶解性と好ましい結晶性を阻害しない観点から、Ar1~Ar4は置換基を有さないフェニル基であることが好ましい。
【0039】
式(I)において、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0040】
該アルキル基の炭素数は、塗布溶媒として使われるクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、オルトクロロトルエン、メタクロロトルエン、パラクロロトルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒に対する溶解性の観点から1~15であることが好ましく、式(I)で表される化合物の熱分解温度に近づきすぎないようにするために、特に1~10であることが好ましい。
【0041】
該アルキル基としては、直鎖でも分岐を有していても環状でもよいが、結晶化の配向性の観点から、分岐又は環状アルキル基が好ましい。
【0042】
式(I)中のR-O-C(=O)-で表されるアルコキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、1-プロピルオキシカルボニル基、1-ブチルオキシカルボニル基、1-ペンチルオキシカルボニル基、2-プロピルオキシカルボニル基、2-ブチルオキシカルボニル基、3-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ヘプチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、1-オクチルオキシカルボニル等の炭素数2~15の分岐アルコキシカルボニル基、又は、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘプチルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の環状アルコキシカルボニル基が挙げられる。該アルコキシカルボニル基としては、熱分解開始温度が、150℃以上であるものが好ましく、200℃以上であるものがより好ましい。
【0043】
本発明の化合物の分子量については特に制限はないが、分子量分布がない低分子化合物の特徴から1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1000以下である。一方、基本骨格を有するための観点から、通常、本発明の化合物の分子量は600以上である。
【0044】
本発明のHOMO準位は-5.30eVから-5.60eVの範囲であることが効率的な正孔注入、正孔取り出しの観点から好ましい。HOMO準位が上記下限以上であれば短波長側の活性層とのマッチングがよく、HOMO準位が上記上限以下であれば長波長側の活性層とのマッチングがよい。
本発明の化合物のHOMO準位は特に-5.30~-5.45eVの範囲であることが好ましい。
ここで、本発明の化合物のHOMO準位は、ITO基板上に薄膜化させた後、光電子収量分光法(PYS法)により測定される。
【0045】
本発明の化合物としては、具体的には以下のものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
本発明の化合物の製造方法には特に制限はないが、後述の基本製造例A,Bに示される方法で、各々原料化合物を製造し、製造された原料化合物を用いて後述の基本製造例Cに従って本発明の化合物を製造することができる。
【0050】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、前記一対の電極間に位置し、有機無機ペロブスカイト型半導体材料を含有する活性層と、前記活性層と前記一対の電極の少なくとも一方との間に位置し、本発明の化合物を含有する層とを有する。
ここで、本発明の化合物を含有する層は、下部電極と活性層との間に位置することが好ましく、本発明の化合物を含有する層は、正孔取り出し層又は正孔注入層として機能することが好ましい。
即ち、本発明の化合物はHOMO準位が共役高分子で正孔取り出し層あるいは正孔注入層に代表的に用いられるPEDOT:PSSに近いことから、下部電極と活性層との間の正孔取り出し層又は正孔注入層の構成材料として好ましい。
【0051】
図1は、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図1に示される光電変換素子は、一般的な有機薄膜太陽電池またはペロブスカイト太陽電池(以下特段の断りがない限りこの2つを合わせて有機薄膜太陽電池と記載する)あるいはペロブスカイト型量子ドットLEDに用いられる光電変換素子であるが、本発明に係る光電変換素子が
図1に示されるものに限られるわけではない。
図1に示す光電変換素子100においては、下部電極101、活性層103、及び上部電極107がこの順に配置され、活性層103は、有機無機ペロブスカイト型半導体材料を含有する。また、光電変換素子100は、下部電極101と活性層103との間にはバッファ層102を、上部電極107と活性層103との間にバッファ層105を、それぞれ有し、本実施形態においては、バッファ層102として、本発明の化合物を含有する正孔取り出し層又は正孔注入層が設けられている。また、
図1に示すように、光電変換素子100が、基材108、絶縁体層、及び仕事関数チューニング層のようなその他の層を有していてもよい。
【0052】
<活性層>
活性層103は光電変換が行われる層である。有機薄膜太陽電池の場合、光電変換素子100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアは下部電極101及び上部電極107から取り出される。ペロブスカイト型量子ドットLEDの場合、光電変換素子100に電圧を印加すると、電子と正孔が活性層103で再結合し、発光する。
【0053】
本実施形態において、活性層103は有機無機ペロブスカイト型半導体材料を含有する。有機無機ペロブスカイト型半導体材料とは、有機成分と無機成分とが分子レベル又はナノレベルで組み合わせられた、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物(以下、ペロブスカイト半導体化合物と呼ぶことがある)である。
【0054】
ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al.Structure and Properties of Inorganic Solids,Chapter 7-Perovskite type and related structuresや、Nam-Gyu Park et al.Multifunctional Organic-Inorganic Halide Perovskite:Applications in Solar Cells,Light-Emitting Diodes,and Resistive Memory,Ye Zhou et al.Perovskite Quantum Dots:Synthesis,Properties and Applicationsで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、ペロブスカイト半導体化合物としては、一般式AMX3で表されるAMX3型のもの又は一般式A2MX4で表されるA2MX4型のものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
【0055】
1価のカチオンAに特段の制限はないが、有機カチオンであることが好ましく上記Galassoの著書などに記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、長周期表における周期表第1族及び第13族~第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、一つ以上のフッ素基を置換したアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
【0056】
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n-プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n-ブチルアンモニウムイオン、t-ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0057】
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては好ましくは長周期の周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
【0058】
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4-ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。なかでも、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせを用いることが好ましい。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンを用いることが好ましい。
【0059】
ペロブスカイト半導体化合物の好ましい例としては、有機-無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられ、特にハライド系有機-無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3-x)Clx、CH3NH3PbI(3-x)Brx、CH3NH3PbBr(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI3、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1-y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Brx、及びCH3NH3Pb(1-y)SnyBr(3-x)Clx、並びに、上記の化合物においてCH3NH3の代わりにCFH2NH3、CF2HNH3、又はCF3NH3を用いたもの、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
【0060】
ペロブスカイト型量子ドットは、ACS Nano 2021,15,10775-10981に記載の具体例が挙げられる。特にオレイルアミンとオレイン酸を用い、ホットインジェクション法、あるいは、配位子支援再沈殿法を用いて、該当する量子ドットを合成することが好ましい。
また、ペロブスカイト型量子ドットは、デバイス作成直前に、粉末を溶媒でナノ分散溶液にして用いることが好ましい。
【0061】
活性層103は、有機薄膜太陽電池の場合、2種類以上のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト半導体化合物が活性層103に含まれていてもよい。また活性層103は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有していてもよい。
【0062】
活性層103に含まれるペロブスカイト半導体化合物の量は、良好な半導体特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に特に制限はない。また、活性層103には、ペロブスカイト半導体化合物に加えて添加剤が含まれていてもよい。添加剤の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物、又は有機化合物が挙げられる。
【0063】
活性層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点、又は電荷の取出し効率を高める点で、活性層103の厚さは、好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。
【0064】
活性層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層103を形成できる点で、塗布法を用いることは好ましい。例えば、有機無機ペロブスカイト半導体材料又はその前駆体を含有する塗布液を塗布し、必要に応じて加熱乾燥することにより活性層103を形成する方法が挙げられる。また、このような塗布液を塗布した後で、有機無機ペロブスカイト半導体材料の溶解性が低い溶媒をさらに塗布することにより、有機無機ペロブスカイト半導体材料を析出させることもできる。
【0065】
有機無機ペロブスカイト半導体材料の前駆体とは、塗布液を塗布した後に有機無機ペロブスカイト半導体材料へと変換可能な材料のことを指す。具体的な例として、加熱することによりペロブスカイト半導体化合物へと変換可能なペロブスカイト半導体化合物前駆体を用いることができる。例えば、一般式AXで表される化合物と、一般式MX2で表される化合物と、溶媒と、を混合して加熱撹拌することにより、塗布液を作製することができる。この塗布液を塗布して加熱乾燥を行うことにより、一般式AMX3で表されるペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を作製することができる。溶媒としては、ペロブスカイト半導体化合物及び添加剤が溶解するのであれば特に限定されず、例えばN,N-ジメチルホルムアミドのような極性の高い有機溶媒が挙げられる。
【0066】
一方、量子ドットの有機無機ペロブスカイト半導体材料は、活性層103に含まれるペロブスカイト半導体化合物は、量子ドット2mg~8mgを1mLの溶媒に分散させることが好ましい。2mg以上であれば量子ドットの溶液中での劣化を抑えるために好ましく、8mg以下であれば量子ドットが溶液に分散できる上限であることから好ましい。また、活性層103には、ペロブスカイト半導体化合物に加えて添加剤が含まれていてもよい。添加剤の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物、又は有機化合物が挙げられる。
【0067】
活性層103の厚さに特段の制限はない。好ましくは、活性層103の厚さは10~100nmである。10nm以上であれば、ダークスポットを少なくする観点から好ましく、100nm以下であれば活性層103における電子と正孔の再結合の効率を阻害しない上限の観点から好ましい。
【0068】
量子ドットは分散液で用いるが、この場合の溶媒は、ハロゲンを含まないトルエン、ベンゼンなどの、沸点が80℃~130℃程度の芳香族炭化水素溶媒、または、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの、沸点が65℃~130℃程度の脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、このような溶媒を用いて有機無機ペロブスカイト半導体量子ドットの分散液として活性層103を作製することができる。
【0069】
量子ドット分散液を塗布して薄膜化し、アニール後、さらに繰り返し同様の塗布とアニールを行うことで、活性層103の膜厚を厚くすることができ、輝度(cd/m2)を上げることができる。
この塗布回数は2~10回であることから好ましい。
【0070】
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
【0071】
<電極>
電極は、活性層103における光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。本発明の一実施形態に係る光電変換素子100は一対の電極を有し、一対の電極のうち一方を上部電極と呼び、他方を下部電極と呼ぶ。光電変換素子100が基材を有するか又は基材上に設けられている場合、基材により近い電極を下部電極と、基材からより遠い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶことができる。また、透明電極を下部電極と、下部電極よりも透明性が低い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶこともできる。
図1に示す光電変換素子100は、下部電極101及び上部電極107を有している。
【0072】
有機薄膜太陽電池の場合、一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノードと、電子の捕集に適したカソードとを用いることができる。この場合、光電変換素子100は、下部電極101がアノードであり上部電極107がカソードである順型構成を有していてもよいし、下部電極101がカソードであり上部電極107がアノードである逆型構成を有していてもよい。
ペロブスカイト型量子ドットLEDの場合、一対の電極としては、正孔の導入に適した陽極と、電子の導入に適した陰極とを用いることができる。この場合、光電変換素子100は、下部電極101が陽極であり、上部電極107が陰極である構成を有していてもよいし、逆に、下部電極101が陰極であり、上部電極107が陽極である構成を有していてもよい。
【0073】
一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U-4100)で測定できる。
【0074】
下部電極101及び上部電極107、即ち、太陽電池の場合はアノード及びカソード、ペロブスカイト型量子ドットLEDの場合は陽極及び陰極の、構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
【0075】
<バッファ層>
バッファ層、即ち、正孔取り出し層、正孔注入層、正孔輸送層、電子取り出し層、電子注入層、電子輸送層は、活性層103と一対の電極101,107の少なくとも一方との間に位置する層である。
有機薄膜太陽電池の場合、バッファ層102,105は、例えば、活性層103から下部電極101又は上部電極107へのキャリア移動効率を向上させるために用いることができる。
【0076】
正孔取り出し層は、アノードの仕事関数と、発光層の最高被占軌道(HOMO)との間のエネルギー差を減少させるように機能し、それによって、活性層から取り出される正孔の数を増加させる。動作中は正孔が活性層から正孔輸送層及び正孔取り出し層を介してアノードから取り出され、一方、電子は、活性層から電子輸送層及び電子取り出し層を介してアノードから取り出される。太陽光が活性層に該当することで、活性層が光励起され、キャリアの電荷分離が起こり、正孔と電子に分かれ、正孔と電子が、正孔輸送層または電子輸送層を通って各電極へ移動することで、光起電力が生じ電荷抽出される。
【0077】
ペロブスカイト型量子ドットLEDの場合、バッファ層102,105は、例えば、下部電極101又は上部電極107から活性層103へのキャリア移動効率を向上させるために用いることができる。ホール注入層は、陽極の仕事関数と、発光層の最高被占軌道(HOMO)との間のエネルギー差を減少させるように機能し、それによって、発光層に導入される正孔の数を増加させる。動作中は正孔が陽極を経て注入され、正孔注入層および正孔輸送層を介して活性層(発光層を含む領域)に注入され、一方、陰極側からは電子が活性層に注入される。電子および正孔の両方のキャリアが存在する活性層では、キャリアの再結合が起こり、そのうちの発光再結合により光が放出される。正孔注入層および電子注入層は、デバイス内にキャリア(電子・正孔)を閉じ込めるという点で同じ役割を有する。
【0078】
本発明の別の実施形態としては、
図1における下部電極101とバッファ層102の間に、正孔取り出し層または正孔注入層として働く層を設け、そこに本発明の化合物を含有する。この層が当該化合物を含有して形成されることにより、材料の界面近傍での結晶性を変化させることが可能となり、有機無機ペロブスカイト型半導体材料を用いた光電変換素子の光電変換性能を向上させることができる。
【0079】
光電変換素子100は、下部電極101と活性層103との間にバッファ層102及び正孔取り出し層や正孔注入層(図示しない)を有することもでき、又は、上部電極107と活性層103との間に前述の正孔取り出し層や正孔注入層(図示しない)及びバッファ層105を有することができる。また、光電変換素子100は、バッファ層102及び前述の正孔取り出し層または正孔注入層、正孔取り出し層または正孔注入層及びバッファ層105と両側にこの層を有することもできる。ここで、下部電極101と活性層103との間に設けられるバッファ層102と、上部電極107と活性層103との間に設けられるバッファ層105とは、通常異なる材料で構成されている。すなわち、一方のバッファ層が本発明の化合物を含有する層である一方、他方のバッファ層は本発明の化合物以外の化合物で構成される層である。なお、本発明の化合物を含有する前述の層は、下部電極101とバッファ層102との間に位置していてもよいし、バッファ層105と上部電極107との間に位置していてもよいが、本発明の化合物を含有する層を塗布法により成膜する際には、塗布溶媒が活性層103を浸漬して、活性層103に影響を及ぼす可能性があるため、本発明の化合物を含有する層は、下部電極101と、バッファ層(102との間に位置していることが好ましい。
【0080】
有機薄膜太陽電池の場合、アノードと活性層との間に設けられたバッファ層は、正孔取り出し層、正孔輸送層と呼ばれることがあり、カソードと活性層との間に設けられたバッファ層は電子取り出し層、電子輸送層と呼ばれることがある。一実施形態において、正孔取り出し層、正孔輸送層は本発明の化合物を含有する層である。
ペロブスカイト型量子ドットLEDの場合、陽極と活性層との間に設けられたバッファ層は正孔注入層、正孔輸送層と呼ばれることがあり、陰極と活性層との間に設けられたバッファ層は電子注入層、電子輸送層と呼ばれることがある。一実施形態において、正孔注入層は本発明の化合物を含有する層である。
【0081】
本発明の化合物以外の化合物で構成されるバッファ層に関しては、材料に特に限定はない。
有機薄膜太陽電池の場合、正孔輸送層及び正孔輸送層については、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な任意の材料を用いることができる。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、又は有機化合物、が挙げられる。例えば、無機化合物としては、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。また、有機化合物としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等にドーパントがドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、ナフィオン、又はリチウムドーピングされたspiro-OMeTADやpoly-TPDが挙げられる。より具体的には、Lumtec社カタログ記載の化合物群、あるいは、Ossila社カタログ記載の化合物群が代表的で好ましい。
【0082】
同様に、電子輸送層及び電子取り出し層についても、活性層からカソードへの電子の取り出し効率を向上させることが可能な任意の材料を用いることができる。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、2,2’,2”-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンゾイミダゾール)(TPBi)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。より具体的には、Lumtec社カタログ記載の化合物群、あるいは、Ossila社カタログ記載の化合物群が代表的で好ましい。
【0083】
ペロブスカイト型量子ドットLEDの場合は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層の構成材料には、公知の材料が制限なく用いられる。具体的には、ホール注入層には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)など、ホール輸送層には、N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(poly-TPD)など、電子注入層には、8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)など、電子輸送層には、2,2’,2”-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンゾイミダゾール)(TPBi)などが用いられる。より具体的には、Lumtec社カタログ記載の化合物群、あるいは、Ossila社カタログ記載の化合物群が代表的で好ましい。
【0084】
バッファ層の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上である、一方、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。バッファ層の膜厚が上記の範囲内にあることで、キャリアの移動効率が向上しやすくなり、かつ活性層の膜厚とのバランスが取れるため、光電変換効率が向上しうる。
【0085】
バッファ層の形成方法に制限はなく、材料の特性に合わせて形成方法を選択することができる。例えば、材料と溶媒を含有する塗布液を作製し、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法を用いることにより、バッファ層を形成することができる。この場合、溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族系溶媒、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロピランなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。溶媒の沸点は60℃~150℃程度が好ましい。溶媒の沸点が60℃以上であれば、塗布の際、許容範囲の溶媒の蒸発下に抑えられることから好ましく、150℃以下であれば、活性層を劣化させないために好ましい。
また、真空蒸着法等の乾式成膜法により、バッファ層を形成することもできる。
【0086】
<基材>
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材108を有する。ただし、光電変換素子100は基材108を有さなくてもよい。基材108の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
【0087】
<電極>
アノードやカソードあるいは陽極や陰極を形成する材料は、効率良く発光させるために十分な電子や正孔を取り出しまたは注入できるものでなければならない。そのため、キャリアを受ける有機分子や高分子などの他の材料の最高被占軌道(HOMO)および最高空軌道(LUMO)との障壁ができるだけ小さくなるように、電子取り出し側のカソードや電子注入側の陰極には仕事関数の小さいもの、正孔取り出し側のアノードや正孔注入の陽極には仕事関数の大きいものを使用する。また、太陽光を透過する、または、活性層の光を取り出すため、少なくとも一方の電極は透明である必要がある。よって、アノードや陽極の材料には、一般に酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。一方、カソードや陰極の材料には、アルミニウム、金や銀、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの仕事関数の小さな金属、例えば、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、リチウム-アルミニウム(Li-Al)などの合金が用いられる。
電極の膜厚は、特に限定されず、透明性が必要の場合には通常10nm~20nmであり、一方、透明性が不要の場合は、耐久性の向上の観点から、70nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。
【0088】
<その他の層>
光電変換素子100は、その他の層を有していてもよいし、さらに異なる正孔取り出し層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子取り出し層、電子注入層を有していても良い。
例えば、光電変換素子100は、電極の仕事関数を調整する仕事関数チューニング層や更なるバッファー層を、下部電極101とバッファ層102との間、バッファ層102と活性層103との間、又は上部電極107とバッファ層105との間に有していてもよい。また、光電変換素子100は、下部電極101と活性層103との間、又は上部電極107と活性層103との間に、水や溶媒が活性層103に到達することを抑制する目的から厚さが1nm~5nm程度の絶縁体層を有していてもよい。例えば、一般には絶縁体として用いられるCYTOP(旭硝子社製)を厚さ1~5nm程度塗布することで、下部層と上部層の間を連続的に塗布することも可能となる。
【0089】
<光電変換素子の作製方法>
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電 変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法 に特段の制限はなく、シートツゥーシート(万葉)方式、又はロールツゥーロール方式で 形成することもできる。
【0090】
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
【0091】
ロールツゥーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツゥーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径の上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下である。一方、下限は好ましくは10cm以上、さらに好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径の上限は、好ましくは4m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下である。一方、下限は好ましくは1cm以上、さらに好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは各工程で成膜される層が曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅の下限は、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上である。一方、上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは光電変換素子100の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
【0092】
また、上部電極107を積層した後に、光電変換素子100を好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上、一方、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことは、光電変換素子100の各層間の密着性、例えばバッファ層102と下部電極101、バッファ層102活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
【0093】
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上、一方、好ましくは180分以下、さらに好ましくは60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
【0094】
<光電変換特性>
光電変換素子100の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子100にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流-電圧特性を測定する。得られた電流-電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
【0095】
光電変換素子100の光電変換効率は、特段の制限はないが、好ましくは1%以上、さらに好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。また、光電変換素子100のフィルファクターは、特段の制限はないが、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
【0096】
また、光電変換素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、光電変換素子100を1週間大気暴露する前後での光電変換効率の耐久性は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。光電変換効率の耐久性は、光電変換素子100を大気暴露する前後での光電変換効率に基づいて、以下のように算出することができる。
耐久性(%)=((所定時間大気暴露した後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率))×100
【0097】
同様の観点から、光電変換素子100の活性層103が大気に対して封止されていない状態、又は大気に対する封止が破綻している状態において、光電変換素子100を1週間暗所中で大気暴露する前後での光電変換効率の耐久性は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0098】
[ペロブスカイト量子ドットLEDモジュール・有機薄膜太陽電池モジュール]
本発明のペロブスカイト型量子ドットLEDモジュールは本発明の光電変換素子を有する。
LEDモジュールについては、J.Mater.Chem.C,2021,9,3795に記載されているものなど、OLEDで一般的に知られている方法が使用できる。
【0099】
光電変換素子100は、有機薄膜太陽電池の太陽電池素子あるいは、ペロブスカイト量子ドットLED素子として使用されることが好ましい。
図2は本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を模式的に表す断面図であり、
図2には本発明の一実施形態に係る太陽電池である有機薄膜太陽電池が示されている。
図2に表すように、本実施形態に係る有機薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、光電変換素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。本実施形態に係る有機薄膜太陽電池14は、光電変換素子6として、上記説明した光電変換素子100を有している。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(
図2中下方)から光が照射されて、光電変換素子6が発電するようになっている。なお、有機薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
【0100】
有機薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
【0101】
有機薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。
【0102】
有機薄膜太陽電池14はそのまま用いてもよいし、有機薄膜太陽電池モジュールの構成要素として用いられてもよい。例えば、
図3に示すように、本発明に係る太陽電池、特には上述した有機薄膜太陽電池14を基材12上に備える有機薄膜太陽電池モジュール13を作製し、この有機薄膜太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。基材12としては周知技術を用いることができ、例えば、基材12の材料としては国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等に記載の材料を用いることができる。例えば、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に有機薄膜太陽電池14を設けることにより、有機薄膜太陽電池モジュール13として、建物の外壁用太陽電池パネルを作製することができる。
【実施例0103】
以下に、実施例により本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例には限定されない.
【0104】
【0105】
ブロモ酢酸(1.2equiv)とアルコール(1.0equiv)を含むトルエン溶液(0.5M)にp-トルエンスルホン酸一水和物(2mol%)を加え、110℃で4時間撹拌した。得られた反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、フロリジルを通した。溶媒を減圧下で除き、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、目的物を得た。
【0106】
【0107】
ブロモ酢酸(1.0equiv)と4-ジメチルアミノピリジン(5mol%)を含む塩化メチレン溶液(0.5M)にN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.0equiv)を0℃に保ちながらゆっくり加えたのち、10分間撹拌した。この反応溶液にアルコール(1.0equiv)を加え、室温で4時間撹拌した。反応溶液をフロリジルを通したのち、溶媒を減圧下で除去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、目的物を得た。
【0108】
[製造例1:2-ethylhexyl-2-bromoacetate(A1)の製造]
【化8】
【0109】
アルコールとして2-エチルヘキサノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(2-エチルヘキシル-2-ブロモ酢酸(A1))を無色オイルで得た(4.92g,98%)。
【0110】
[製造例2:Isopropyl-2-bromoacetate (A2)の製造]
【化9】
【0111】
アルコールとして2-プロパノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(イソプロピル-2-ブロモ酢酸(A2))を無色オイルで得た(2.46g,57%)。
【0112】
[製造例3:Sec-butyl-2-bromoacetate(A3)の製造]
【化10】
【0113】
アルコールとして2-ブタノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(sec-ブチル-2-ブロモ酢酸(A3))を無色オイルで得た(3.18g,68%)。
【0114】
[製造例4:Tert-pentyl-2-bromoacetate(A4)の製造]
【化11】
【0115】
アルコールとして2-メチル-2-ブタノールを用い、基本製造例Bに従って上記目的物(tert-ペンチル-2-ブロモ酢酸(A4))を得た。この目的物はこのまま、次の反応に供した。
【0116】
[製造例5:Cyclopentyl-2-bromoacetate(A5)の製造]
【化12】
【0117】
アルコールとしてシクロペンタノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(シクロペンチル-2-ブロモ酢酸(A5))を無色オイルで得た(3.43g,83%)。
【0118】
[製造例6:Cyclohexyl-2-bromoacetate(A6)の製造]
【化13】
【0119】
アルコールとしてシクロヘキサノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(シクロヘキシル-2-ブロモ酢酸(A6))を無色オイルで得た(4.30g,97%)。
【0120】
[製造例7:Cycloheptyl-2-bromoacetate(A7)の製造]
【化14】
【0121】
アルコールとしてシクロヘプタノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(シクロヘプチル-2-ブロモ酢酸(A7))を無色オイルで得た(4.56g,97%)。
【0122】
[製造例8:Cyclooctyl-2-bromoacetate(A8)の製造]
【化15】
【0123】
アルコールとしてシクロオクタノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(シクロオクチル-2-ブロモ酢酸(A8))を無色オイルで得た(8.78g,88%)。
【0124】
[製造例9:(3s,5s,7s)-adamantan-1-yl-2-bromoacetate(A9)の製造]
【化16】
【0125】
アルコールとして1-アダマンタノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(アダマンチル-2-ブロモ酢酸(A9))を得た。この目的物はこのまま、次の反応に供した。
【0126】
[製造例10:Etyl-2-bromoacetate(A10)の製造]
【化17】
【0127】
アルコールとしてエタノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(エチル-2-ブロモ酢酸(A10))を得た。この目的物はこのまま、次の反応に供した。
【0128】
[製造例11:n-propyl-2-bromoacetate(A10)の製造]
【化18】
【0129】
アルコールとしてn-プロパノールを用い、基本製造例Aに従って上記目的物(n-プロピル-2-ブロモ酢酸(A11))を得た。この目的物はこのまま、次の反応に供した。
【0130】
【0131】
2,3,6,7-テトラフェニル-1,5-ジヒドロピロロ[2,3-f]インドール(1.0equiv)のDMF(0.10M)溶液にt-BuOK(4.0equiv)を室温で加えた。10分撹拌したのち、アルキルブロモ酢酸(4.0equiv)を滴下した後、さらに室温で3~6時間撹拌した。反応溶液に塩化メチレンを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、フロジルを通した後、溶媒を減圧下で除去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、さらに、再結晶を行い、デバイス作成に使用可能な目的物を得た。
【0132】
[実施例1:BDP diester-Me(A10)の製造]
【化20】
【0133】
アルキルブロモ酢酸として2-エチルヘキシル-2-ブロモ酢酸(A1)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率21%)。
【0134】
得られた化合物の融点は、mp:298℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.56(s,2H),7.41-7.30(m,18H),7.24-7.19(m,2H)4.79(s,4H),3.71(s,6H).で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ169.8,138.6,135.5,135.2,131.7,131.0,129.9,128.5,128.2,128.1,125.8,125.6,115.3,98.0,52.4,46.0.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値がそれぞれ以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C40H32N2O4(M),604.2362,found 604.2342.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0135】
[実施例2:BDP diester-iPr(A11)の製造]
【化21】
【0136】
アルキルブロモ酢酸としてイソプロピル-2-ブロモ酢酸(A2)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率29%)。
【0137】
得られた化合物の融点は、mp:262℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.54(s,2H),7.41-7.34(m,14H),7.33-7.28(m,4H),7.23-7.18(m,2H),5.12-5.03(sep,J=6.3Hz,2H),δ4.71(s,4H),1.23-1.19(d,J=6.3Hz,12H).
で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ168.9,138.5,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.1,125.9,125.5,115.1,98.0,69.1,46.6,21.7.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値がそれぞれ以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C44H40N2O4(M),660.2988,found 660.2982
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0138】
[実施例3:BDP diester-sec-Bu(A12)の製造]
【化22】
【0139】
アルキルブロモ酢酸としてsec-ブチル-2-ブロモ酢酸(A3)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率29%)。
【0140】
得られた化合物の融点は、mp:288℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.55(s,2H),δ7.44-7.33(m,14H),7.32-7.27(m,4H),7.24-7.21(m,2H),4.95-4.87(m,2H),4.74(s,4H),1.60-1.41(m,2H),1.19-1.15(d,J=6.3Hz,6H),0.82-0.78(t,J=7.5Hz,6H)
で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ169.1,138.5,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.0,125.9,125.5,115.1,98.0,73.6,46.5,28.7,19.4,9.6,
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値がそれぞれ以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C46H44N2O4(M),688.3301,found 688.3295.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0141】
[実施例4:BDP diester-tert-pentyl(A13)の製造]
【化23】
【0142】
アルキルブロモ酢酸としてtert-ペンチル-2-ブロモ酢酸(A4)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率20%)。
【0143】
得られた化合物の融点は、mp:221℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.55(s,2H),7.41-7.33(m,14H),7.32-7.27(m,4H),7.22-7.18(m,2H),4.67(s,4H),1.74-1.68(q,J=7.4Hz,4H),1.37(s,12H),0.78-0.74(t,J=7.4Hz,6H).
となり目的物であることがわかる。さらにカーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ168.5,138.4,135.7,135.4,131.9,131.1,129.9,128.3,128.2,128.0,125.8,125.3,115.0,98.0,84.5,47.0,33.3,25.4,8.1,
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C48H48N2O4Na(M+Na),739.3528,found 739.3512.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0144】
[実施例5:BDP diester-adamantyl(A14)の製造]
【化24】
【0145】
アルキルブロモ酢酸としてアダマンチル-2-ブロモ酢酸(A9)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率20%)。
【0146】
得られた化合物の融点は、mp:318℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.57(s,2H),δ7.43-7.34(m,14H),7.33-7.28(m,4H),7.22-7.18(m,2H),4.64(s,4H),2.15-2.11(br,6H),2.047-2.04(br,12H),1.64-1.61(br,12H).
で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ168.2,138.4,135.8,135.3,131.9,131.1,130.0,128.3,128.1,127.9,125.8,125.4,114.9,98.1,82.2,47.2,41.1,36.0,30.8.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C58H56N2O4(M),844.4240,found 844.4345.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0147】
[実施例6:BDP diester-cyclopentyl(A15)の製造]
【化25】
【0148】
アルキルブロモ酢酸としてシクロペンチル-2-ブロモ酢酸(A5)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率%24%)。
【0149】
得られた化合物の融点は、mp:257であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.54(s,2H),7.41-7.34(m,14H),7.33-7.28(m,4H),7.23-7.18(m,2H),5.22-5.17(m,2H),4.72(s,4H),1.84-1.72(m,4H),1.64-1.47(m,12H).
で、目的物であることがわかる。さらにカーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ169.1,138.6,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.0,125.9,125.5,115.2,89.0,78.3,46.6,32.6,23.5.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値を示した。
HRMS(ESI)m/z calcd for C48H44N2O4Na(M+Na),735.3199,found 735.3186.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0150】
[実施例7:BDP diester-cyclohexyl(A16)の製造]
【化26】
【0151】
アルキルブロモ酢酸としてシクロヘキシル-2-ブロモ酢酸(A6)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率25%)。
【0152】
得られた化合物の融点は、mp:287℃であり,プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.55(s,2H),7.42-7.33(m,14H),7.32-7.28(m,4H),7.23-7.18(m,2H),4.85-4.79(m,2H),4.73(s,4H),1.81-1.70(m,4H),1.64-1.56(m,4H),1.52-1.40(m,2H),1.40-1.15(m,12H).
で、目的物であることがわかる。さらにカーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ168.9,138.6,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.0,125.9,125.5,115.2,98.1,73.8,46.7,31.4,25.2,23.4.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C50H48N2O4(M),740.3614,found 740.3584.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0153】
[実施例8:BDP diester-cycloheptyl(A17)の製造]
【化27】
【0154】
アルキルブロモ酢酸としてシクロヘプチル-2-ブロモ酢酸(A7)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率21%)。
【0155】
得られた化合物の融点は、mp:295℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.55(s,2H),7.42-7.34(m,14H),7.33-7.28(m,4H),7.23-7.17(m,2H),5.02-4.94(m,2H),4.73(s,4H),1.87-1.79(m,4H),1.63-1.45(m,16H),1.40-1.30(m,4H).
で、目的物であることがわかる。さらにカーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ166.8,138.6,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.0,125.9,125.5,115.1,98.1,76.4,46.7,33.6,28.1,22.6.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C52H52N2O4(M),768.3927,found 768.3967.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0156】
[実施例9:BDP diester-cyclooctyl(A18)の製造]
【化28】
【0157】
アルキルブロモ酢酸としてシクロオクチル-2-ブロモ酢酸(A8)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率21%)。
【0158】
得られた化合物の融点は、mp:277℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.54(s,2H),7.42-7.34(m,14H),7.32-7.28(m,4H),7.23-7.18(m,2H),5.02-4.95(m,2H),4.72(s,4H),1.77-1.38(m,28H).
で、目的物であることがわかる。さらに,カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ168.8,138.6,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.0,125.9,125.5,115.1,98.1,76.5,46.7,31.2,27.0,25.2,22.7.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C54H56N2O4(M),796.4240,found 796.4209.
これらの分析結果から目的化合物であることを同定できた。
【0159】
[実施例10:BDP diester-ethylhexyl(A19)の製造]
【化29】
【0160】
アルキルブロモ酢酸として2-エチルヘキシル-2-ブロモ酢酸(A1)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率34%)。
【0161】
得られた化合物の融点は、mp:122℃であり,プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHzCDCl3):δ7.55(s,2H),7.39-7.34(m,14H),7.33-7.29(m,4H),7.18-7.23(m,2H),4.79(s,4H),4.04-3.96(m,4H),1.47-1.39(m,2H),1.22-1.00(m,16H),0.82-0.77(t,J=6.3Hz,3H),0.77-0.72(t,J=7.5Hz,3H).
で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHzCDCl3):δ168.8,138.6,135.6,135.4,131.8,131.1,129.9,128.4,128.2,128.0,125.9,125.5,115.1,98.1,76.5,46.7,31.2,27.0,25.2,22.7.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C54H60N2O4Na(M+Na),823.4451,found 823.4463.
これらの分析結果から、目的化合物であることを同定できた。
【0162】
[実施例11:BDP diester-ethyl(A20)の製造]
【化30】
【0163】
アルキルブロモ酢酸としてシクロエチル-2-ブロモ酢酸(A10)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率39%)。
【0164】
得られた化合物の融点は、mp:263℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHz CDCl3):δ7.56(s,2H),7.42-7.34(m,14H),7.34-7.29(m,4H),7.24-7.18(m,2H),4.76(s,4H),4.25-4.11(q,J=6.9Hz,4H),1.24-1.20(t,J=6.9Hz,6H)
で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHz CDCl3):δ169.3,138.6,135.5,135.3,131.7,131.1,129.9,128.4,128.2,128.1,125.8,125.5,115.2,98.0,61.4,46.3,14.1.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C42H36N2O4(M+),632.2670,found 632.2648
これらの分析結果から目的化合物であることを同定できた。
【0165】
[実施例12:BDP diester-n-propyl(A21)の製造]
【化31】
【0166】
アルキルブロモ酢酸としてシクロ(n-プロピル)-2-ブロモ酢酸(A11)を用いた以外は基本製造例Cに従って本発明の化合物である上記目的物を白色固体で得た(収率30%)。
【0167】
得られた化合物の融点は、mp:227℃であり、プロトンNMRを測定したところ、
1H NMR(500MHz CDCl3):δ7.56(s,2H),7.41-7.35(m,14H),7.34-7.29(m,4H),7.24-7.18(m,2H),4.78(s,4H),4.06-4.10(t,J=6.6Hz,4H) 1.63-1.56(m,4H),0.87-0.82(t,J=7.7Hz,6H).
で、目的物であることがわかる。さらに、カーボンNMRを測定したところ、
13C NMR(500MHz CDCl3):δ169.5,138.6,135.5,135.3,131.7,131.0,129.9,128.4,128.2,128.1,125.9,125.5,115.2,98.0,68.9,46.3,21.9,10.2.
となり、ESI法によるハイマススペクトルは計算値、実測値が以下の値をしめした。
HRMS(ESI)m/z calcd for C44H40N2O4(M),660.3061,found 660.3066
これらの分析結果から目的化合物であることを同定できた。
【0168】
[実施例13]
<ペロブスカイト活性層用塗布液の調製>
Quantum Solutions社のペロブスカイト量子ドット(510nm)粉末5mgを1mLの脱水ヘプタンに分散させ、マグネチックスターラー800rpm、室温にて30分撹拌した。PTFEフィルター(孔径0.2μm)で濾過し、30分間、室温で放置し、ペロブスカイト量子ドット塗布液を作製した。
【0169】
<正孔注入層用塗布液の調製>
実施例1~3、実施例6~9及び実施例11,12で得られた化合物(A10)~(A12)、(A15)~(A18)、(A20)、(A21)の4mgをそれぞれ1mLのベンゼンまたはクロロベンゼンに70℃で溶解させた(10分以内)後、60℃を保った。
【0170】
<CYTOP保護膜層用塗布液の調製>
旭硝子社のCYTOP14mgにCYTOP用の溶媒7gを加え、室温で完溶させた。
【0171】
<ペロブスカイト型量子ドットLED素子の作製>
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を備えるガラス基板(ジオマテック社製)を、洗浄剤(横浜油脂工業社製、セミクリーンM-LO、15mL)を用いて、超音波洗浄し、続けて超純水を用いた超音波洗浄、イソプロパノールを用いた超音波洗浄後、窒素ブローにより乾燥した。薄膜形成前に、UV-オゾン下10分の処理を行った。
次に、ウェットーホットスピンコート法を応用し、オゾン洗浄した基板をスピンコーターにセットし、60℃のクロロベンゼンをかけて500rpmで1秒回転させて、調製した60℃の化合物(A10)溶液を、室温で、上記基板上に100μLのせ、500rpmで3秒、次いで4000rpmで30秒スピンコートすることにより、厚さ約30nmの層を形成した。得られた基板を110℃で10分間加熱した。
続いて、調製したCYTOP溶液を4000rpm回転下、6滴加え、30秒スピンコートすることにより、厚さ3nmの層を形成した。得られた基板を90℃で5分間加熱した。
次に、poly-TPD(Mw:20000~30000の範囲)8mgを1mLのベンゼンに溶解させ、3000rpmで30秒スピンコートし、厚さ約20nmに成膜した基板を110℃で10分間加熱して正孔輸送層を形成した。
次に、基板をグローブボックスに移し、調製したペロブスカイト量子ドット活性層塗布液(60μL)を500rpmで3秒、2000rpmで20秒、3000rpmで20秒の順で基板上にスピンコートし、ホットプレート上で80℃にて5分間加熱し、その後室温に戻した。再度ペロブスカイト活性層塗布液(60μL)を500rpmで3秒、1500rpmで20秒、3000rpmで20秒の順で基板上にスピンコートし、ホットプレート上で80℃で5分間加熱して活性層を有する基板を作製した。
続いて、活性層上に、抵抗加熱型真空蒸着法によりパターニングマスクを用いて厚さ30nmの電子輸送材料となるTPBiを蒸着させた。続いて上部電極として、パターニングマスクを用いて厚さ約100nmの銀膜を蒸着させ、電極を形成した。
以上のようにして、ペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0172】
[実施例14]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A11)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0173】
[実施例15]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A12)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0174】
[実施例16]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A15)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0175】
[実施例17]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A16)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0176】
[実施例18]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A17)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0177】
[実施例19]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A18)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0178】
[実施例20]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A20)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0179】
[実施例21]
化合物(A10)溶液の代わりに、化合物(A21)溶液を用いた以外は、実施例11と同様にしてペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0180】
[比較例1]
<ペロブスカイト型量子ドットLED素子の作製>
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を実施例10と同様にして洗浄した。薄膜形成前には、UV-オゾン下10分の処理を行った。
次に、PEDOT:PSSを、室温で、上記ガラス基板上に4000rpmで30秒でスピンコートすることにより、厚さ約30nmの層を形成した。得られた基板を110℃で10分間加熱した。次に、poly-TPD(Mw:20000~30000)8mgを1mLのベンゼンに溶解させ、3000rpmで30秒スピンコートして厚さ約20nmの膜を形成した。得られた基板を110℃で10分加熱し、正孔輸送層とした。
次に、基板をグローブボックスに移し、窒素雰囲気下100℃で10分間加熱処理した。グローブボックスに移し、調製したペロブスカイト活性層塗布液(60μL)を500rpmで3秒、2000rpmで20秒、3000rpmで20秒の順で基板上にスピンコートし、ホットプレート上で80℃で5分間加熱した後、室温に戻した。再度ペロブスカイト活性層塗布液(60μL)を500rpmで3秒、1500rpmで20秒、3000rpmで20秒の順で基板上にスピンコートし、ホットプレート上で80℃で5分間加熱して活性層を有する基板を作製した。
続いて、活性層上に、抵抗加熱型真空蒸着法によりパターニングマスクを用いて厚さ30nmの電子輸送材料となるTPBiを蒸着させた。続いて上部電極として、パターニングマスクを用いて厚さ約100nmの銀膜を蒸着させ、電極を形成した。
以上のようにして、ペロブスカイト型量子ドットLED素子を作製した。
【0181】
[ペロブスカイト型量子ドットLED素子の評価]
実施例13~21及び比較例1で得られたペロブスカイト型量子ドットLED素子について、I-V分光輝度特性を測定した。測定には、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)を用い、輝度は、コニカミノルタ社製分光放射輝度計CS-2000により最高輝度(cd/m2)を測定した。
結果を表1に示す。
【0182】
【0183】
[実施例22]
<ペロブスカイト活性層塗布液の調製>
モル比が1:1となるようにヨウ化鉛(II)(1.01g)及びヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I、350mg)をバイアルに量りとり、N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)を加えた。得られた混合液を70℃で1時間加熱撹拌した。その後、得られた溶液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、活性層塗布液を作製した。
【0184】
<ペロブスカイト太陽電池素子の作製>
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を備えるガラス基板(ジオマテック社製)を、洗浄剤(横浜油脂工業社製、セミクリーンM-LO、15mL)を用いて、超音波洗浄し、続けて超純水を用いた超音波洗浄、窒素ブローにより乾燥、及びUV-オゾン処理を行った。
次に、酸化スズナノ水溶液を、室温で、上記ガラス基板上に4000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約30nmの電子取り出し層を形成した。得られた基板を120℃で20分間加熱した。次に、電子取り出し層が形成された基板をグローブボックスに移し、窒素雰囲気下100℃で10分間加熱処理した。
冷却後、調製したペロブスカイト活性層塗布液(160μL)を4000rpmの速度で基板上にスピンコートし、約8秒後にクロロベンゼン(320μL)をさらに添加するAnti-solvent法によりペロブスカイトカイト活性層を作成した。さらに、ホットプレート上で100℃で10分間加熱して、厚さ約350nmの活性層を形成した。
続いて、実施例1で得られた化合物(A10)4mgを1mLのクロロベンゼンに溶解させ、活性層上に、2000rpmの速度でスピンコートして厚さ約20nmの膜を形成し、正孔取り出し層とした。
次に、正孔取り出し層上に、抵抗加熱型真空蒸着法によりパターニングマスクを用いて厚さ約100nmの銀膜を蒸着させ、電極を形成した。
以上のようにして、ペロブスカイト太陽電池素子を作製した。
【0185】
[実施例23]
化合物(A10)の代わりに、化合物(A11)を用いた以外は、実施例22と同様にしてペロブスカイト太陽電池素子を作製した。
【0186】
[比較例2]
実施例22と同様にして厚さ約350nmの活性層までを作製した。
続いて、活性層上に、共役高分子poly-TPD 8mgを1mLのクロロベンゼンに溶解させ、3000rpmの速度でスピンコートして厚さ約20nmの膜を形成して正孔取り出し層とした。次に、正孔取り出し層上に、抵抗加熱型真空蒸着法によりパターニングマスクを用いて厚さ約100nmの銀膜を蒸着させ、電極を形成した。
以上のようにして、ペロブスカイト太陽電池素子を作製した。
【0187】
[ペロブスカイト太陽電池素子の評価]
実施例22、23及び比較例2で得られたペロブスカイト太陽電池素子に1mm角のメタルマスクを付け、ITO電極と銀電極との間における電流-電圧特性を測定した。測定にはソースメーター(ケイスレー社製,2400型)を用い、照射光源としてはエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cm2のソーラシミュレータを用いた。この測定結果から、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、形状因子FF、及び光電変換効率PCE(%)を算出した。これらはいずれもペロブスカイト太陽電池素子を作製した直後の測定結果に基づいて算出した。
結果を表2に示す。
【0188】
【0189】
本発明の化合物は、塩になっていないため、中性であり、有機溶媒に可溶である。またアルコキシカルボニル基の配置をBDPのN上から-CH2-鎖(C1鎖)することで、分子間相互作用により単結晶X線構造解析により結晶性の高い構造をとり、さらに、この傾向は、薄膜にした時、維持できることが2次元XRDであるGIWAXにより明らかになった。
この結果、本発明の化合物は、低分子であるにもかかわらずネットワークが薄膜上でも構築されることから、有機薄膜太陽電池素子にしても、ペロブスカイト型量子ドット素子にしても、効果的な電荷移動が維持できる。
さらに、本発明の化合物は、低分子にも関わらず、化合物の安定性に優れ、結晶ネットワークが形成されやすいにも関わらず濡れ性に優れ、均一な膜を形成しやすい。特に、より薄膜の素子であるペロブスカイト型量子ドット素子において、高分子半導体を上回る輝度を与えることが可能である。
これらの結果から、本発明の化合物は、光電変換素子やそれを用いた太陽電池やLEDとして好適に使用できることが分かる。