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  • 特開-アンモニアの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126983
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】アンモニアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20230906BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C01C1/04 E
B01J31/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126528
(22)【出願日】2020-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、「分子触媒を用いたアンモニア合成に関する研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西林 仁昭
(72)【発明者】
【氏名】荒芝 和也
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 章一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆正
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BD09A
4G169BD09B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169BE33A
4G169BE33B
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169CB82
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB77
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モリブデン錯体を用いたアンモニアの製造方法の提供。
【解決手段】モリブデン錯体、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを生成する工程を含む製造方法であって、前記プロトン源は、アルコール又は水であり、前記モリブデン錯体は、式(1):

(式(1)中、R、Rは独立してC数3乃至6のアルキル基、XはI、Br又はCl原子、RとRは、独立して電子求引基を表す)で表されるモリブデン錯体であり、該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体の、ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン錯体、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを生成する工程を含む製造方法であって、
前記プロトン源は、アルコール又は水であり、
前記モリブデン錯体は、式(1):
【化1】
(式(1)中、R及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表し、
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。)
で表されるモリブデン錯体であり、
該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体である式(2):
【化2】
(式(2)中、R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表されるピンサー型配位子のセレン付加体において、ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値である、
アンモニアの製造方法。
【請求項2】
モリブデン錯体、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造する際のモリブデン錯体の触媒性能を評価する方法であって、
前記モリブデン錯体は、式(1):
【化3】
(式(1)中、R及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表し、
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。)
で表されるモリブデン錯体であり、
該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体である式(2):
【化4】
(式(2)中、R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表されるピンサー型配位子のセレン付加体を調製する工程、並びに
当該ピンサー型配位子のセレン付加体の77SeNMRを測定する工程を含む、
ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値であるか否かで、触媒回転頻度(Turnover Frequency)が200(1/分)を超えるモリブデン錯体であるか否かを判断する、方法。
【請求項3】
下記式(1)で表されるモリブデン錯体であり、
【化5】
(式(1)中、R及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表し、
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。
ただし、Rがフッ素原子のとき、Rは、フッ素原子ではなく、Rが水素原子のと
き、Rはトリフルオロメチル基ではない。)
該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体である式(2):
【化6】
(式(2)中、R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表されるピンサー型配位子のセレン付加体において、ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値である、モリブデン錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素分子からアンモニアを製造する方法において、触媒にモリブデン錯体を使用して、プロトン源に水を用いたアンモニアの製造に関する報告例がある(非特許文献1)。さらには、触媒にモリブデン錯体を使用して、還元剤としてヨウ化サマリウム(II)を、プロトン源としてアルコール類又は水を用いたアンモニアの製造に関する報告例がある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本化学会 第99春季年会予稿集 2019年,講演番号4D1-37
【非特許文献2】Nature 2019年,568巻,536-540ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒素分子からアンモニアを製造する方法において、触媒にモリブデン錯体を用いた場合に、実用化の観点から必要時に直ちにアンモニアを得られることも一つの重要な観点であり、反応開始の初期から高速で反応できる触媒がのぞまれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、反応開始の初期から高速で反応できるモリブデン錯体を創出することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体の77SeNMRのカルベン炭素上のセレンの化学シフト値と触媒活性の間に相関関係があることを見出し、該化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値を示すピンサー型配位子のセレン付加体を分子設計又は合成し、触媒1分子が単位時間当たりに行う物質変換量である触媒回転頻度(Turnover Frequency(以下、TOFと略す。)が200(1/分)を超えるモリブデン錯体を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、すなわち本発明は、第1観点として、モリブデン錯体、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを生成する工程を含む製造方法であって、
前記プロトン源は、アルコール又は水であり、
前記モリブデン錯体は、式(1):
【化1】
(式(1)中、R及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表し、
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。)
で表されるモリブデン錯体であり、
該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体である式(2):
【化2】
(式(2)中、R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表されるピンサー型配位子のセレン付加体において、ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値である、
アンモニアの製造方法に関する。
第2観点として、モリブデン錯体、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造する際のモリブデン錯体の触媒性能を評価する方法であって、
前記モリブデン錯体は、式(1):
【化3】
(式(1)中、R及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表し、
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。)
で表されるモリブデン錯体であり、
該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカル
ベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体である式(2):
【化4】
(式(2)中、R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表されるピンサー型配位子のセレン付加体を調製する工程、並びに
当該ピンサー型配位子のセレン付加体の77SeNMRを測定する工程を含む、
ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値であるか否かで、触媒回転頻度(Turnover Frequency)が200(1/分)を超えるモリブデン錯体であるか否かを判断する、方法に関する。
第3観点として、下記式(1)で表されるモリブデン錯体であり、
【化5】
(式(1)中、R及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表し、
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。
ただし、Rがフッ素原子のとき、Rは、フッ素原子ではなく、Rが水素原子のとき、Rはトリフルオロメチル基ではない。)
該モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体である式(2):
【化6】
(式(2)中、R、R、R及びRは、上記と同じ。)
で表されるピンサー型配位子のセレン付加体において、ベンゾイミダゾール環のカルベン
炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値である、モリブデン錯体に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモリブデン錯体によれば、TOFが200(1/分)を超えるという効果を奏する。
また、本発明のアンモニアの製造方法によれば、高速で反応できるモリブデン錯体を用いることで、反応開始の初期からアンモニア製造を実施できる方法を提供する。
また、上記モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体の77SeNMRを測定することで、上記モリブデン錯体の触媒性能を評価できる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】式(6’)で示したR及びRに種々の置換基を導入したピンサー型配位子のセレン付加体のベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値に対して、それぞれのピンサー型配位子のセレン付加体に対応する式(1’)で示したモリブデン錯体が触媒するアンモニア合成のTOF(1/分)の値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーを表し、「o」はオルトを、「m」はメタを、「p」はパラを表す。「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Bu」はターシャリーブチル基を、「TMS」はトリメチルシリル基を、「thf」はテトラヒドロフランを表す。
本発明のアンモニアの製造方法、及び該製造方法に用いる式(1)で表されるモリブデン錯体の好適な実施形態を以下に示す。
本発明のアンモニアの製造方法及び製造装置の好適な実施形態を以下に示す。
【0011】
式(1)で表されるモリブデン錯体において、
及びRは、各々独立して、炭素原子数3乃至6のアルキル基を表す。ここで、炭素原子数3乃至6のアルキル基としては、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられ、t-ブチル基が好ましい。
Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子を表す。ここで、Xはヨウ素原子及び塩素原子が好ましい。
【0012】
及びRは、各々独立して、電子求引基を表す。電子求引基とは、電子吸引基、電子受容性基とも言われ、電子説(電子説は反応物質の電子密度や結合状態の変化に注目してできるだけ統一的に解釈しようとする理論をいう。)において、メソメリー効果や誘起効果により、水素原子と比較して結合電子側から電子を引き付ける置換基のことを表す。
【0013】
本実施形態のアンモニアの製造方法においてのR及びRは、式(2)で表されるモリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体において、ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が、170ppmよりも低磁場の値を示す置換基であればよい。上記の化学シフト値を満たすR及びRの組み合わせであれば、R及びRが電子求引基であってよいし、Rが電子求引基の場合、Rは、水素原子であってもよい。
【0014】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、電子求引基としては、例えば、メソメリー効果は電子供与性であるが誘起効果の電子求引性の寄与が大きい置換基が挙げられ、より具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CHCl又は-CH=CHNOが挙げられる。また、電子求引基としては、例えば、メソメリー効果及び誘起効果が電子求引性である置換基が挙げられ、より具体的には、アニオンを対イオンとする第四級アンモニウム基、トリフルオロメチル基、パーフルオロアルキル基、トリクロロメチル基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、カルボン酸基、カルボニル(C1-6アルキル)基、カルボニル(C1-6アルコキシ)基、カルボニル(Ar6-10アリール)基、カルボニルアミノ基、カルボニル(C1-6アルキル)アミノ基、カルボニルジ(C1-6アルキル)アミノ基、スルホン酸基、スルホニルアミノ基、スルホニル(C1-6アルキル)アミノ基、スルホニルジ(C1-6アルキル)アミノ基、Ar6-10アリール基が挙げられる。
【0015】
1-6アルキルは、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。ここで、炭素原子数1乃至6のアルキル基の具体例としては、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
1-6アルコキシは、前記のC1-6アルキルが、酸素と結合した形の一価の基を表す。ここで、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、t-ペントキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキトキシ基、イソヘキトキシ基、シクロヘキトキシ基等が挙げられる。
【0017】
Ar6-10アリールとしては、炭素原子数6乃至10の芳香族炭化水素の芳香環からひとつの水素原子を取り去った置換基を表し、例えばフェニル基、2位から6位の少なくとも1つに置換基を有するフェニル基、1-ナフチル基、2位から8位の少なくとも1つに置換基を有する1-ナフチル基、2-ナフチル基及び1位及び3位から8位の少なくとも1つに置換基を有する2-ナフチル基等が挙げられる。Ar6-10アリールの芳香環上の置換基をしては、ハロゲン原子であるフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基並びにメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基等が挙げられる。Ar6-10アリールの具体例としては、フェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、o-トリフルオロメチルフェニル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-トリフルオロメチルフェニル基、o-クロロフェニル基、m-クロロフェニル基、p-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基、m-ブロモフェニル基、p-ブロモフェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、o-(t-ブチル)フェニル基、m-(t-ブチル)フェニル基、p-(t-ブチル)フェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,5-ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-フルオロナフタレン-1-イル基、3-フルオロナフタレン-1-イル基、4-フルオロナフタレン-1-イル基、5-フルオロナフタレン-1-イル基、6-フルオロナフタレン-1-イル基、7-フルオロナフタレン-1-イル基、8-フルオロナフタレン-1-イル基、2-クロロナフタレン-1-イル基、3-クロロナフタレン-1-イル基、4-クロロナフタレン-1-イル基、5-クロロ
ナフタレン-1-イル基、6-クロロナフタレン-1-イル基、7-クロロナフタレン-1-イル基、8-クロロナフタレン-1-イル基、2-ブロモナフタレン-1-イル基、3-ブロモナフタレン-1-イル基、4-ブロモナフタレン-1-イル基、5-ブロモナフタレン-1-イル基、6-ブロモナフタレン-1-イル基、7-ブロモナフタレン-1-イル基、8-ブロモナフタレン-1-イル基、2-ヨードナフタレン-1-イル基、3-ヨードナフタレン-1-イル基、4-ヨードナフタレン-1-イル基、5-ヨードナフタレン-1-イル基、6-ヨードナフタレン-1-イル基、7-ヨードナフタレン-1-イル基、8-ヨードナフタレン-1-イル基、2-メチルナフタレン-1-イル基、3-メチルナフタレン-1-イル基、4-メチルナフタレン-1-イル基、5-メチルナフタレン-1-イル基、6-メチルナフタレン-1-イル基、7-メチルナフタレン-1-イル基、8-メチルナフタレン-1-イル基、2-エチルナフタレン-1-イル基、3-エチルナフタレン-1-イル基、4-エチルナフタレン-1-イル基、5-エチルナフタレン-1-イル基、6-エチルナフタレン-1-イル基、7-エチルナフタレン-1-イル基、8-エチルナフタレン-1-イル基、2-n-プロピルナフタレン-1-イル基、3-n-プロピルナフタレン-1-イル基、4-n-プロピルナフタレン-1-イル基、5-n-プロピルナフタレン-1-イル基、6-n-プロピルナフタレン-1-イル基、7-n-プロピルナフタレン-1-イル基、8-n-プロピルナフタレン-1-イル基、2-i-プロピルナフタレン-1-イル基、3-i-プロピルナフタレン-1-イル基、4-i-プロピルナフタレン-1-イル基、5-i-プロピルナフタレン-1-イル基、6-i-プロピルナフタレン-1-イル基、7-i-プロピルナフタレン-1-イル基、8-i-プロピルナフタレン-1-イル基、2-c-プロピルナフタレン-1-イル基、3-c-プロピルナフタレン-1-イル基、4-c-プロピルナフタレン-1-イル基、5-c-プロピルナフタレン-1-イル基、6-c-プロピルナフタレン-1-イル基、7-c-プロピルナフタレン-1-イル基、8-c-プロピルナフタレン-1-イル基、2-n-ブチルナフタレン-1-イル基、3-n-ブチルナフタレン-1-イル基、4-n-ブチルナフタレン-1-イル基、5-n-ブチルナフタレン-1-イル基、6-n-ブチルナフタレン-1-イル基、7-n-ブチルナフタレン-1-イル基、8-n-ブチルナフタレン-1-イル基、1-フルオロナフタレン-2-イル基、3-フルオロナフタレン-2-イル基、4-フルオロナフタレン-2-イル基、5-フルオロナフタレン-2-イル基、6-フルオロナフタレン-2-イル基、7-フルオロナフタレン-2-イル基、8-フルオロナフタレン-2-イル基、1-クロロナフタレン-2-イル基、3-クロロナフタレン-2-イル基、4-クロロナフタレン-2-イル基、5-クロロナフタレン-2-イル基、6-クロロナフタレン-2-イル基、7-クロロナフタレン-2-イル基、8-クロロナフタレン-2-イル基、1-ブロモナフタレン-2-イル基、3-ブロモナフタレン-2-イル基、4-ブロモナフタレン-2-イル基、5-ブロモナフタレン-2-イル基、6-ブロモナフタレン-2-イル基、7-ブロモナフタレン-2-イル基、8-ブロモナフタレン-2-イル基、1-ヨードナフタレン-2-イル基、3-ヨードナフタレン-2-イル基、4-ヨードナフタレン-2-イル基、5-ヨードナフタレン-2-イル基、6-ヨードナフタレン-2-イル基、7-ヨードナフタレン-2-イル基、8-ヨードナフタレン-2-イル基、1-メチルナフタレン-2-イル基、3-メチルナフタレン-2-イル基、4-メチルナフタレン-2-イル基、5-メチルナフタレン-2-イル基、6-メチルナフタレン-2-イル基、7-メチルナフタレン-2-イル基、8-メチルナフタレン-2-イル基、1-エチルナフタレン-2-イル基、3-エチルナフタレン-2-イル基、4-エチルナフタレン-2-イル基、5-エチルナフタレン-2-イル基、6-エチルナフタレン-2-イル基、7-エチルナフタレン-2-イル基、8-エチルナフタレン-2-イル基、1-n-プロピルナフタレン-2-イル基、3-n-プロピルナフタレン-2-イル基、4-n-プロピルナフタレン-2-イル基、5-n-プロピルナフタレン-2-イル基、6-n-プロピルナフタレン-2-イル基、7-n-プロピルナフタレン-2-イル基、8-n-プロピルナフタレン-2-イル基、1-i-プロピルナフタレン-2-イル基、3-i-プロピルナフタレン-2-イル基、4-i-プロピ
ルナフタレン-2-イル基、5-i-プロピルナフタレン-2-イル基、6-i-プロピルナフタレン-2-イル基、7-i-プロピルナフタレン-2-イル基、8-i-プロピルナフタレン-2-イル基、1-c-プロピルナフタレン-2-イル基、3-c-プロピルナフタレン-2-イル基、4-c-プロピルナフタレン-2-イル基、5-c-プロピルナフタレン-2-イル基、6-c-プロピルナフタレン-2-イル基、7-c-プロピルナフタレン-2-イル基、8-c-プロピルナフタレン-2-イル基、1-n-ブチルナフタレン-2-イル基、3-n-ブチルナフタレン-2-イル基、4-n-ブチルナフタレン-2-イル基、5-n-ブチルナフタレン-2-イル基、6-n-ブチルナフタレン-2-イル基、7-n-ブチルナフタレン-2-イル基及び8-n-ブチルナフタレン-2-イル基等が挙げられる。
【0018】
本実施形態の電子求引基において、第四級アンモニウム基の対イオンであるアニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロホスファートイオン、ヘキサクロロアンチモナートイオン、トリフルオロメタンスルホナートイオン、テトラフルオロボラートイオン、ホスフェートイオン、スルホナートイオン、クロリド、ブロミド、ヨージド、ヒドロキシド等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の電子求引基において、第四級アンモニウム基のアンモニウムカチオンとしては、例えば、-NHカチオン、-Nモノ(C1-12アルキル)Hカチオン、-Nジ(C1-12アルキル)Hカチオン、-Nトリ(C1-12アルキル)カチオン、-Nモノ(Ar6-10アリール)Hカチオン、-Nジ(Ar6-10アリール)Hカチオン、-Nトリ(Ar6-10アリール)カチオン、-N(C1-12アルキル)(Ar6-10アリール)Hカチオン、-Nジ(C1-12アルキル)モノ(Ar6-10アリール)カチオン、又は-Nモノ(C1-12アルキル)ジ(Ar6-10アリール)カチオンが挙げられ、上記の「-」は結合を表す。
【0020】
本実施形態の電子求引基において、第四級アンモニウム基のアンモニウムカチオンにおける、上記のC1-12アルキルは、各々独立して、炭素原子数1乃至12のアルキル基を表す。ここで、炭素原子数1乃至12のアルキル基としては、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、1-メチルヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、1,1,3-トリメチルヘキシル基、1,1,3,3-テトラメチルペンチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、1-メチルウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられ、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基が好ましい。
【0021】
本実施形態の電子求引基において、第四級アンモニウム基のアンモニウムカチオンにおける、上記のAr6-10アリールは、上記の記載と同じものが挙げられ、フェニル基、o-トリフルオロメチルフェニル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基が好ましい。
【0022】
本実施形態の電子求引基において、第四級アンモニウム基のアンモニウムカチオンとしては、例えば、-NHカチオン、-Nトリメチルカチオン、-Nトリエチルカチオン、-Nジメチルフェニルカチオンが好ましい。
【0023】
本実施形態の電子求引基において、パーフルオロアルキル基としては、例えば、-CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CF10CF、-(CF11CF等が挙げられ、-(CFCF及び-(CF11CFが好ましい。
【0024】
本実施形態の電子求引基において、カルボニル(C1-6アルキル)基におけるC1-6アルキルは、上記の記載と同じものが挙げられ、カルボニル(C1-6アルキル)基の具体例としては、カルボニルメチル基、カルボニルトリフルオロメチル基、カルボニルエチル基、カルボニルn-プロピル基、カルボニルイソプロピル基、カルボニルn-ブチル基、カルボニルイソブチル基、カルボニルs-ブチル基、カルボニルt-ブチル基が好ましい。
【0025】
本実施形態の電子求引基において、カルボニル(C1-6アルコキシ)基におけるC1-6アルコキシは、上記の記載と同じものが挙げられ、カルボニル(C1-6アルコキシ)基の具体例としては、カルボニルメトキシ基、カルボニルトリフルオロメトキシ基、カルボニルエトキシ基、カルボニルn-プロポキシ基、カルボニルイソプロポキシ基、カルボニルn-ブトキシ基、カルボニルイソブトキシ基、カルボニルs-ブトキシ基、カルボニルt-ブトキシ基が好ましい。
【0026】
本実施形態の電子求引基において、カルボニル(Ar6-10アリール)基におけるAr6-10アリールは、上記の記載と同じものが挙げられ、カルボニル(Ar6-10アリール)基の具体例としては、カルボニルフェニル基、カルボニルo-トリフルオロメチルフェニル基、カルボニルm-トリフルオロメチルフェニル基、カルボニルp-トリフルオロメチルフェニル基、カルボニル3,5-ビストリフルオロメチルフェニル基、カルボニル3,4,5-トリフルオロフェニル基、カルボニル1-ナフチル基及びカルボニル2-ナフチル基が好ましい。
【0027】
本実施形態の電子求引基において、カルボニル(C1-6アルキル)アミノ基におけるC1-6アルキルは、上記の記載と同じものが挙げられ、カルボニル(C1-6アルキル)アミノ基の具体例としては、カルボニルメチルアミノ基、カルボニルトリフルオロメチルアミノ基、カルボニルエチルアミノ基、カルボニルn-プロピルアミノ基、カルボニルイソプロピルアミノ基、カルボニルn-ブチルアミノ基、カルボニルイソブチルアミノ基、カルボニルs-ブチルアミノ基、カルボニルt-ブチルアミノ基が好ましい。
【0028】
本実施形態の電子求引基において、カルボニルジ(C1-6アルキル)アミノ基におけるC1-6アルキルは、上記の記載と同じものが挙げられ、カルボニルジ(C1-6アルキル)アミノ基の具体例としては、カルボニルジメチルアミノ基、カルボニルビス(トリフルオロメチル)アミノ基、カルボニルジエチルアミノ基、カルボニルジn-プロピルアミノ基、カルボニルジイソプロピルアミノ基、カルボニルジn-ブチルアミノ基、カルボニルジイソブチルアミノ基、カルボニルジs-ブチルアミノ基、カルボニルジt-ブチルアミノ基が好ましい。
【0029】
本実施形態の電子求引基において、スルホニル(C1-6アルキル)アミノ基におけるC1-6アルキルは、上記の記載と同じものが挙げられ、スルホニル(C1-6アルキル)アミノ基の具体例としては、スルホニルメチルアミノ基、スルホニルトリフルオロメチルアミノ基、スルホニルエチルアミノ基、スルホニルn-プロピルアミノ基、スルホニルイソプロピルアミノ基、スルホニルn-ブチルアミノ基、スルホニルイソブチルアミノ基、スルホニルs-ブチルアミノ基、スルホニルt-ブチルアミノ基が好ましい。
【0030】
本実施形態の電子求引基において、スルホニルジ(C1-6アルキル)アミノ基におけるC1-6アルキルは、上記の記載と同じものが挙げられ、スルホニルジ(C1-6アルキル)アミノ基の具体例としては、スルホニルジメチルアミノ基、スルホニルビス(トリフルオロメチル)アミノ基、スルホニルジエチルアミノ基、スルホニルジn-プロピルアミノ基、スルホニルジイソプロピルアミノ基、スルホニルジn-ブチルアミノ基、スルホニルジイソブチルアミノ基、スルホニルジs-ブチルアミノ基、スルホニルジt-ブチルアミノ基が好ましい。
【0031】
本実施形態の電子求引基において、Ar6-10アリール基は、上記の記載と同じものが挙げられ、Ar6-10アリール基の具体例としては、フェニル基、o-トリフルオロメチルフェニル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-トリフルオロメチルフェニル基、3,5-ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が好ましい。
【0032】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、より好ましい電子求引基は、-NHカチオン、-Nトリメチルカチオン、-Nトリエチルカチオン、-Nジメチルフェニルカチオン、-(CFCF及び-(CF11CF、フッ素原子、塩素原子及びトリフルオロメチル基であり、特に好ましい電子電子求引基は、フッ素原子、塩素原子及びトリフルオロメチル基である。
【0033】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、還元剤としては、ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)が挙げられ、ランタノイド系金属としては、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLu等が挙げられ、このうちSmが好ましく、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、このうちヨウ素が好ましい。
従って、ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)としては、ハロゲン化サマリウム(II)が好ましく、ヨウ化サマリウム(II)がより好ましい。
【0034】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、プロトン源は、アルコール及び水が挙げられる。用いるアルコールとしては、グリコールを用いてもよいし、ROH(Rは水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6の鎖状、環状又は分岐状のアルキル基、又は、アルキル基を有していてもよいフェニル基)を用いてもよい。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコール等が挙げられる。
ROHは、例えば、鎖状又は分岐状のアルキルアルコールとして、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、イソブチルアルコール及びt-ブチルアルコール等が挙げられ、環状のアルキルアルコールとしては、シクロプロパノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール等が挙げられ、フッ素原子を含むアルコールとしては、トリフルオロエチルアルコール及びテトラフルオロエチルアルコール等が挙げられ、アルキル基を有していてもよいフェニル基を含むアルコールとしては、フェノール、クレゾール及びキシレノール等が挙げられる。
【0035】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、好ましいプロトン源は、水及びエチレングリコールであり、水がより好ましい。
【0036】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、窒素分子からアンモニアを製造するにあたっては、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、特に限定するものではないが、環状エーテル系溶媒、鎖状エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、炭化水素系溶媒、及び含ハロゲン炭化水素溶媒が挙げられる。環状エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン及
び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、及びシクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリル及びプロピオニトリル等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン及びo-キシレン等の芳香族炭化水素、並びにヘキサン、ヘプタン及び石油エーテル等などの飽和炭化水素等が挙げられる。含ハロゲン炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン等が挙げられる。本実施形態のアンモニアの製造方法において、好ましい溶媒は、テトラヒドロフランである。また、本実施形態のアンモニアの製造方法において、触媒に用いるモリブデン錯体を加える際に、好ましい溶媒は、ジクロロメタンである。
【0037】
生成したアンモニアの収量は公知の方法により測定できる。硫酸水溶液中のアンモニアの定量は、例えば、公知のインドフェノール法(Analytical Chemistry,1967年,39巻,971-974ページ)を用いて行うことができる。
【0038】
本明細書において、モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子とは下記式(4)で表される配位子を示す。
【化7】
式中のR、R、R及びRは、式(1)中で記載したものと同じである。
【0039】
式(2)で表されるモリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体
【化8】
において、式中のR、R、R及びRは、式(1)中で記載したものと同じである。なお、本明細書では、モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体を、ピンサー型配位子のセレン付加体とも称する。
【0040】
後述する実施例でも示されるように、式(2)で表されるモリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体において
、構造中のベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値と触媒回転頻度(TOF)の間に相関関係がある。ピンサー型配位子のセレン付加体の構造中のベンゾイミダゾール環のカルベン炭素に結合したセレン原子の77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値を示すようなピンサー型配位子のセレン付加体に対応するピンサー型配位子がモリブデン中心に配位したモリブデン錯体は、TOFが200(1/分)を超えるモリブデン錯体となる。
【0041】
錯体の構造や電子状態から、その錯体の触媒活性を見積もることは、触媒活性を検証する際の資材や時間を節約することができるので、非常に有用である。
【0042】
しかし、本願発明に記載のモリブデン錯体の場合は、錯体の調製が煩雑な上に、錯体の取扱いには特殊な環境と技術が必要となるので、錯体そのものを評価することは、あまり有用とは言えない。
【0043】
一方で、ピンサー型配位子のセレン付加体は、非常に安定な化合物として調製可能であり、取り扱いも容易である。更にモリブデンに比べ、77SeはNMRに対する感度が良好であり、上記モリブデン錯体の電子状態を定量的に見積もることができる点で優れている。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例0045】
以下に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0046】
[実験例1]
触媒としてモリブデン錯体(1a)
【化9】
を用いて、窒素分子からアンモニアを製造した。シュレンク反応容器に、モリブデン錯体(1a)の0.05mmol/Lのジクロロメタン溶液を調製した。常圧の窒素雰囲気下、反応容器に、触媒である該モリブデン錯体(1a)のジクロロメタン溶液(500μL、25nmol)と還元剤であるジヨードビス(テトラヒドロフラン)サマリウム(II)(397.6mg、0.725mmol、モリブデン錯体のモル数に対して29000当量)のテトラヒドロフラン溶液(5mL)を加え、次にプロトン源である水(13.1mg,0.725mmol,モリブデン錯体のモル数に対して29000当量)のテトラヒドロフラン溶液(1mL)を加え、室温である20℃乃至25℃にて30分間攪拌した。その後、反応を停止するため、水酸化カリウム水溶液(30質量%、5mL)を反応容器に加えた。次に本反応で発生したアンモニア量を定量するため、反応容器を減圧蒸留して蒸留液を硫酸水溶液(0.5M、10mL)にて回収した。該硫酸水溶液中のアンモニア量はインドフェノール法にて決定した。その結果、触媒(モリブデン錯体)当たり8000当量のアンモニアが生成した。触媒回転頻度であるTOFは、267(1/分)であ
った。
【0047】
[比較例1乃至比較例4]
比較例1乃至比較例4では、触媒であるモリブデン錯体(1a)を変更して、比較例1ではモリブデン錯体(1c)を、比較例2ではモリブデン錯体(1d)を、比較例3ではモリブデン錯体(1e)を、比較例4ではモリブデン錯体(1f)を
【化10】
使用した以外の実験操作は、実験例1と同様の操作を行い、窒素分子からアンモニアを製造した。触媒として使用したモリブデン錯体当たりのアンモニア量とTOFの結果を表1に示す。
【表1】
【0048】
[合成例1]
触媒として用いたモリブデン錯体(1a)の合成ルートを、下記に示し説明する。
【化11】
【0049】
化合物(2a)の合成
【化12】
化合物(2a)の合成を以下に示す。反応容器にジ-tert-ブチルホスフィン(2.25g、14.9mmol)及びパラホルムアルデヒド(450mg、15.0mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃で16時間攪拌した。その後、反応容器に、ジクロロエタン(150mL)及び式(5a)で表される1,2-ジアミノ-4,5-ジクロロベンゼン(1.07g、6.02mmol)を加えて、窒素雰囲気下60℃で24時間攪拌した。次に、セレン(1.26g、16.0mmol)を加えて、窒素雰囲気下室温である20~25℃にて24時間攪拌した。反応物を濃縮し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1/1)により分離した。回収したフラクションを濃縮し、真空下乾固することで化合物(2a)を白色固体として2.58g(3.97mmol、66%収率)で単離した。
融点=195.4℃乃至196.5℃
H NNR(CDCl):δ6.66(s,2H),4.85(br,2H),3.30(d,J=7.2Hz,4H),1.42(d、J=15.2Hz,36H).
13C NNR(CDCl):δ137.2(s),121.7(s),112.4(s),37.1(d,J=32.6Hz),34.6(d,J=40.3Hz),28.0(s).
31P NMR(CDCl):δ79.7(s with Se satellites,J=706.1Hz).
【0050】
化合物(3a)の合成
【化13】
化合物(3a)の合成を以下に示す。反応容器に、化合物(2a)(2.48g、3.81mmol)、オルトギ酸トリエチル(10mL)及びヘキサフルオロリン酸アンモニウム(629mg、3.86mmol)を加えた後、空気下、120℃で3時間攪拌した。次に応混合物を濃縮した後、ジクロロメタン(4mL)及びジエチルエーテル(8mL)からなる混合溶液を用いて2回洗浄し、更にジエチルエーテル(10mL)で1回洗浄した。この反応混合物を真空下で乾燥して、化合物(3a)を白色固体として2.49g(3.09mmol、81%収率)で単離した。
H NNR(Acetone-d):δ10.69(s,1H),8.69(s,2H),5.57(d,J=2.8Hz,4H),1.50(d、J=16.4Hz,36H).
13C NNR(Acetone-d):δ144.6(s),132.1(s),131.7(s),117.0(s),40.8(d,J=26.8Hz),39.2(d
,J=30.7Hz),28.0(s).
31P NMR(Acetone-d):δ-143.9(seq,J=708.3Hz),83.1(s with Se satellites,J=732.3Hz).
【0051】
化合物(4a)の合成
【化14】
化合物(4a)の合成を以下に示す。反応容器に、化合物(3a)(2.58g、3.20mmol)、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(1.5mL)及びジクロロメタン(40mL)を加えた後、窒素雰囲気下、室温である20~25℃にて4時間攪拌した。次に応混合物を濃縮した後、トルエン(7mL)で3回洗浄し、この反応混合物を真空下で乾燥して、化合物(4a)を白色固体として1.83g(2.81mmol、88%収率)で単離した。
H NNR(THF-d):δ9.87(s,1H),8.42(s,2H),4.81(s,4H),1.23(d、J=12.0Hz,36H).
13C NNR(THF-d):δ145.8(t,J=12.0Hz),132.5(s),131.7(s),117.1(d,J=6.7Hz),43.6(d,J=28.7Hz),32.8(d,J=20.1Hz),29.5(d,J=13.5Hz).
31P NMR(THF-d):δ-146.0(seq,J=711.9Hz),24.7(s).
【0052】
モリブデン錯体(1a)の合成
【化15】
モリブデン錯体(1a)の合成を以下に示す。反応容器に化合物(4a)(1.30g、2.00mmol)、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(561mg、2.81mmol)及びトルエン(45mL)を加えた後、アルゴン雰囲気下、室温である20~25℃にて1時間攪拌した。次に、反応混合物をセライトにて濾過した後、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)モリブデン(III)(756mg、1.81mmol)を加えて、80℃で26時間攪拌した。更に、反応混合物を5mLまで濃縮し、濾紙を用いて濾過した後、真空下にて乾固させた。得られた固体をトルエン(5mL)で2回洗浄した後、ジクロロメタン(20mL)に溶解させた溶液を、セライトを用いて濾過をした。濾過した濾液に、ヘキサン(30mL)を静かに加えた後、5日間静置させて結晶を生成させた。該結晶を生成させた上澄み液を取り除き、ヘキサン(5mL)で3回洗浄した後、真空下で乾燥することでモリブデン錯体(1a)を茶色結晶として166.3mg(0.24mmol、13%収率)で単離した。
Anal.
Calcd. for C2542l5MoN
C,42.55; H,6.00; N,3.97,
Found:
C,41.66; H,5.68; N,3.20.
【0053】
[合成例2乃至合成例5]
モリブデン錯体(1c)乃至(1f)の合成は、非特許論文Nature 2019年,568巻,536-540ページの記載及び本明細書の[合成例1]の記載を参考に合成できる。
【化16】
各々のモリブデン錯体の合成に関しては、[合成例1]で用いた式(5a)で表される1,2-ジアミノ-4,5-ジクロロベンゼンの代わりに、
モリブデン錯体(1c)の合成は、1,2-ジアミノ-4,5-ジメチルベンゼンを用いて、
モリブデン錯体(1d)の合成は、1,2-ジアミノベンゼンを用いて、
モリブデン錯体(1e)の合成は、1,2-ジアミノ-4,5-ジフルオロベンゼンを用いて、
モリブデン錯体(1f)の合成は、1,2-ジアミノ-4-トリフルオロメチルベンゼンを用いて、
合成することができる。
【0054】
[合成例6]
式(6a)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体の合成ルートを、下記に示し説明する。
【化17】
式(6a)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体の合成を以下に示す。反応容器に化合物(3a)(80.7mg、0.10mmol)、セレン(39.5mg、0.50mmol)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(560mg、2.81mmol)及びトルエン(5mL)を加えた後、アルゴン雰囲気下、室温である20~25℃にて18時間攪拌した。次に反応混合物の溶媒を留去し、反応容器にジクロロメタン加えた後、セライトにて濾過した濾液を真空下にて乾固させた。得られた固体をヘキサン(5mL)で2回洗浄した後、真空下で乾燥することで、式(6a)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体を白色結晶として56.3mg(0.076mmol、76%収率)
で単離した。
融点=226.3℃乃至227.8℃
H NNR(THF-d):δ8.84(br,2H),5.68(br,4H),1.47(d,J=15.2Hz,36H).
13C NNR(THF-d):δ173.2(s),134.2(s),127.3(s),116.9(s),47.9(d,J=30.8Hz),39.5(d,J=29.7Hz),28.5(s).
31P NMR(THF-d):δ71.6(s with Se satellites,J=732.8Hz).
77Se NMR(THF-d):δ177.3(s),-383.2(d,J=732.8Hz).
【0055】
[合成例7]
式(6b)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体の合成ルートを、下記に示し説明する。
【化18】
式(6b)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体の合成を以下に示す。反応容器に化合物(3b)(80.7mg、0.10mmol)、セレン(39.5mg、0.50mmol)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(560mg、2.81mmol)及びトルエン(5mL)を加えた後、アルゴン雰囲気下、室温である20~25℃にて18時間攪拌した。次に反応混合物の溶媒を留去し、反応容器にジクロロメタン加えた後、セライトにて濾過した濾液を真空下にて乾固させた。得られた固体をヘキサン(5mL)で2回洗浄した後、真空下で乾燥することで、式(6b)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体を白色結晶として56.3mg(0.076mmol、76%収率)で単離した。
融点=170℃にて分解
H NNR(THF-d):δ9.11(s,2H),5.72(br,4H),1.49(d,J=14.8Hz,36H).
13C NNR(THF-d):δ175.0(s),136.4(s),124.1(q,J=282.3Hz),121.9-122.2(m),116.3(s),46.6(d,J=30.7Hz),39.5(d,J=30.7Hz),28.4(s).19F NNR(THF-d):δ-60.8(s).
31P NMR(THF-d):δ72.8(s with Se satellites,J=732.8Hz).
77Se NMR(THF-d):δ196.9(s),-390.9(d,J=732.8Hz).
HRMS(FAB)
Calcd. for C2742Se[M]: 810.0223.
Found: 810.0199.
[合成例8乃至合成例11]
式(6c)乃至式(6f)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体は、上記の[合成例1]及び[合成例6]の記載を参考に合成できる。
【化19】
[合成例1]で用いた式(5a)で表される1,2-ジアミノ-4,5-ジクロロベンゼンの代わりに、
セレン付加体(6c)の合成は、1,2-ジアミノ-4,5-ジメチルベンゼンを用いて、
セレン付加体(6d)の合成は、1,2-ジアミノベンゼンを用いて、
セレン付加体(6e)の合成は、1,2-ジアミノ-4,5-ジフルオロベンゼンを用いて、
セレン付加体(6f)の合成は、1,2-ジアミノ-4-トリフルオロメチルベンゼンを用いて、
[合成例1]の記載を参考にして、式(3c)乃至式(3f)で表される化合物まで合成することができ、[合成例6]の記載を参考にして、式(6c)乃至式(6f)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体を合成できる。
【0056】
式(6c)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体
【化20】
融点=239.5℃乃至240.7℃
H NNR(THF-d):δ8.44(s,2H),5.78(br,4H),2.33(s,6H),1.46(d、J=15.6Hz,36H).
13C NNR(THF-d):δ170.3(s),133.4(s),132.6(s),116.0(s),49.2(d,J=31.7Hz),39.4(d,J=30.8Hz),28.7(s),20.0(s).
31P NMR(THF-d):δ71.2(s with Se satellites,J=732.6Hz).
77Se NMR(THF-d):δ135.2(s),-381.0(d,J=732.6Hz).
HRMS(FAB)
Calcd. for C2748Se[M]: 702.0788.
Found: 702.0809.
【0057】
式(6d)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体
【化21】
融点=230.5-232.0℃
H NNR(THF-d):δ8.60-8.56(m,2H),7.19-7.22(m,2H),5.72(br,4H),1.47(d,J=15.2Hz,36H).
13C NNR(THF-d):δ171.6(s),135.0(s),125.6(s),115.6(s),48.8(d,J=31.6Hz),39.4(d,J=30.7Hz),28.6(s).
31P NMR(THF-d):δ71.6(s with Se satellites,J=732.7Hz).
77Se NMR(THF-d):δ147.1(s),-384.5(d,J=732.7Hz).
HRMS(FAB)
Calcd. for C2544Se[M]: 674.0475.
Found: 674.0488.
【0058】
式(6e)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体
【化22】
融点=239.7℃乃至240.4℃
H NNR(THF-d):δ8.65(t,2H),5.68(br,4H),1.47(d、J=15.6Hz,36H).
13C NNR(THF-d):δ171.6(s),147.8(dd,J=245.3,16.3Hz),130.7(s),104.7(dd,J=16.7,9.1Hz),48.4(d,J=31.6Hz),39.5(d,J=30.6Hz),28.5(s).
19F NNR(THF-d):δ-145.5(d,J=17.3Hz).
31P NMR(THF-d):δ71.3(s with Se satellites,J=727.6Hz).
77Se NMR(THF-d):δ170.2(s),-382.0(d,J=727.6Hz).
HRMS(FAB)
Calcd. for C2543Se[M]: 711.0365

Found: 711.0358.
【0059】
式(6f)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体
【化23】
融点=182.0-183.0℃
H NNR(THF-d):δ8.96(br,H),8.68(br,H),7.51(br,H),5.72(br,4H),1.47-1.50(m,36H).
13C NNR(THF-d):δ173.8(s),137.3(s),134.9(s),125.5(q,J=271.8Hz),125.4(q,J=32.6Hz),120.4(s),116.2(s),113.5(s),48.0(d,J=31.7Hz),47.8(d,J=31.7Hz),39.6(d,J=30.7Hz),28.6(s).
19F NNR(THF-d):δ-64.0(s).
31P NMR(THF-d):δ71.9(s with Se satellites,J=727.6Hz).
77Se NMR(THF-d):δ174.3(s),-387.2(d,J=732.6Hz),-387.8(d,J=732.7Hz).
HRMS(FAB)
Calcd. for C2643Se[M]: 742.0349.
Found: 742.0351.
【0060】
式(6a)乃至(6f)で表されるピンサー型配位子のセレン付加体のベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値を横軸に、それぞれのピンサー型配位子のセレン付加体に対応する式(1a)乃至(1f)で表されるモリブデン錯体の触媒1分子が単位時間当たりに行う物質変換量であるTOFの実測値を縦軸にプロットした図を図1に示す。
【0061】
図1に示すように、モリブデン錯体から導かれる分子内に二つのホスフィンとベンゾイミダゾール環のカルベン炭素の3つの結合箇所を持つピンサー型配位子の当該3つの結合箇所にセレン原子が結合したセレン付加体のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値とモリブデン錯体の触媒活性を示すTOFには相関関係があることが確認された。R及びRに電子求引基を導入したピンサー型配位子、又はRに電子求引基を導入したピンサー型配位子が配位したモリブデン錯体は、電子求引基の影響で該モリブデン錯体の触媒活性が向上することが確認された。この原因の一つとしては、ピンサー型配位子の部分構造のベンゾイミダゾール環のπ-受容性が強くなることが考えられる。また、特に、R及びRに電子求引基を導入したピンサー型配位子のセレン付加体において、ベンゾイミダゾール環のカルベン炭素上のセレンの77SeNMRの化学シフト値が170ppmよりも低磁場の値であることが好ましく、前記に対応するR及びRに電子求引基を導入したモリブデン錯体の触媒活性は、TOFが200(1/分)を超えるモリ
ブデン錯体となることが推察できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、アンモニアの製造方法に利用可能である。
図1