(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150552
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】動物行動記録装置、動物行動記録方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059711
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度採択 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業(うち群飼育下の乳用雌哺育牛から体調不良個体を早期検出するリアルタイムモニタリング技術の開発)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐賀子
(72)【発明者】
【氏名】尾高 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】喜瀬 智文
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】成井 公一
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 美来
(72)【発明者】
【氏名】上田 宏一郎
(57)【要約】
【課題】動物の行動を、精度よく効率的に把握することを可能とすること。
【解決手段】動物行動記録装置100は、動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得し、前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得し、前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する処理部110を備えている。前記動物挙動情報は、前記動物に設けた加速度センサから取得される加速度データ及び、前記動物に設けた角速度センサから取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方とすることができ、処理部110は、動物挙動情報及び動物位置情報のいずれか一方に基づいて動物の行動を推定し、推定された行動を他方の情報を用いて補正することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた飼育エリア内で飼育されている動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得する動物挙動情報取得部と、
前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得する動物位置情報取得部と、
前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する動物行動記録部と、
を備えている動物行動記録装置。
【請求項2】
前記動物挙動情報は、前記動物に設けた加速度センサから取得される加速度データ及び、前記動物に設けた角速度センサから取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方であり、
前記動物行動記録部は、前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいて前記動物の行動を推定する行動推定部と、前記行動推定部が推定した前記動物の行動を、前記動物位置情報に基づいて補正する推定結果補正部とを備えている、請求項1に記載の動物行動記録装置。
【請求項3】
前記飼育エリア内に配置されている、動物の飼育に必要な複数の種類の設置物の位置の情報を記憶している記憶部を備え、
前記推定結果補正部は、記憶されている前記設置物の位置の情報と、前記動物位置情報とに基づいて、対象となる動物が存在する位置にある設置物の種類を特定し、特定した前記設置物の種類に基づいて前記行動推定部が推定した前記動物の行動を補正する、請求項2に記載の動物行動記録装置。
【請求項4】
前記動物挙動情報は、前記動物に設けた加速度センサから取得される加速度データ及び、前記動物に設けた角速度センサから取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方であり、
前記動物行動記録部は、前記動物位置情報に基づいて前記動物が存在する場所及び当該場所における挙動を推定する行動推定部と、推定された前記動物の存在する場所と前記動物の挙動とを、取得された前記動物挙動情報と対照させて補正する推定結果補正部とを備えている、請求項1に記載の動物行動記録装置。
【請求項5】
前記飼育エリア内に配置されている、動物の飼育に必要な複数の種類の設置物の位置の情報を記憶している記憶部を備え、
前記行動推定部は、記憶されている前記設置物の位置の情報と、前記動物位置情報とに基づいて、対象となる動物が存在する位置にある設置物の種類を特定し、特定した前記設置物の種類に基づいて前記対象となる動物の挙動を推定する、請求項4に記載の動物行動記録装置。
【請求項6】
前記行動推定部が、前記動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方と、複数の類型に区分された前記動物の行動との関係を学習させた学習済みモデルを使用して前記動物の行動を推定する、請求項2から5までのいずれか一項に記載の動物行動記録装置。
【請求項7】
前記行動推定部が、前記動物の行動と、前記動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方との統計的対応関係に基づいて、前記動物の行動を推定する、請求項2から5までのいずれか一項に記載の動物行動記録装置。
【請求項8】
前記動物位置情報は、前記動物に設けた加速度センサ及び角速度センサ又はそのいずれか一方から通信部を介して送信される電波の到来方向に基づいて算出される、請求項2~7までのいずれか一項に記載の動物行動記録装置。
【請求項9】
前記動物行動記録部が時系列に記録した前記動物の行動記録が、当該動物の疾病、発情、分娩、転倒、成長、及び離乳のうちの少なくとも一つ以上の時期を予測するために利用される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の動物行動記録装置。
【請求項10】
前記動物挙動情報が、前記動物に設けられた気圧センサ及び音響センサ又はそのいずれかからの出力データ、前記動物から取得される生体情報のうちの少なくとも一つを含んでいる、請求項1から9までのいずれか一項に記載の動物行動記録装置。
【請求項11】
情報処理装置が、
予め定められた飼育エリア内で飼育されている動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得し、
前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得し、
前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する、
動物行動記録方法。
【請求項12】
情報処理装置に、
予め定められた飼育エリア内で飼育されている動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得する処理と、
前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得する処理と、
前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物行動記録装置、動物行動記録方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
安定的な酪農経営を継続する上で、飼育している動物の健康管理を効率的に行うことが重要になってきている。例えば、特許文献1,2には、動物に気圧センサ、加速度センサを取り付けて、その計測データによって姿勢等を推定し、動物の健康状態を判別したり、異常の発生を検知したりする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-060407号公報
【特許文献2】特開2020-198829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、加速度データ、気圧データを用いる特許文献1,2の技術では、管理対象である動物の姿勢を推定する精度が十分でなく、それに基づいて行われる健康状態変化の予測について、十分な精度が得られないという問題があった。動物の姿勢を十分な精度で予測できないことは、例えば経産牛の発情・分娩予測におけるその予兆の見逃しにもつながっていた。
【0005】
本発明の目的の一つは、動物の行動を、精度よく効率的に把握することを可能とする動物行動記録装置、動物行動記録システム、動物行動記録方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、予め定められた飼育エリア内で飼育されている動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得する動物挙動情報取得部と、前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得する動物位置情報取得部と、前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する動物行動記録部とを備えている動物行動記録装置である。
【0007】
前記動物挙動情報は、前記動物に設けた加速度センサから取得される加速度データ及び、前記動物に設けた角速度センサから取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方であり、前記動物行動記録部は、前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいて前記動物の行動を推定する行動推定部と、前記行動推定部が推定した前記動物の行動を、前記動物位置情報に基づいて補正する推定結果補正部とを備えているとしてもよい。
【0008】
前記飼育エリア内に配置されている、動物の飼育に必要な複数の種類の設置物の位置の情報を記憶している記憶部を備え、前記推定結果補正部は、記憶されている前記設置物の位置の情報と、前記動物位置情報とに基づいて、対象となる動物が存在する位置にある設置物の種類を特定し、特定した前記設置物の種類に基づいて前記行動推定部が推定した前記動物の行動を補正するとしてもよい。
【0009】
前記動物挙動情報は、前記動物に設けた加速度センサから取得される加速度データ及び、前記動物に設けた角速度センサから取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方であり、前記動物行動記録部は、前記動物位置情報に基づいて前記動物が存在する場所及び当該場所における挙動を推定する行動推定部と、推定された前記動物の存在する場所と前記動物の挙動とを、取得された前記動物挙動情報と対照させて補正する推定結果補正部とを備えているとしてもよい。
【0010】
前記飼育エリア内に配置されている、動物の飼育に必要な複数の種類の設置物の位置の情報を記憶している記憶部を備え、前記行動推定部は、記憶されている前記設置物の位置の情報と、前記動物位置情報とに基づいて、対象となる動物が存在する位置にある設置物の種類を特定し、特定した前記設置物の種類に基づいて前記対象となる動物の挙動を推定するとしてもよい。
【0011】
前記行動推定部が、前記動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方と、複数の類型に区分された前記動物の行動との関係を学習させた学習済みモデルを使用して前記動物の行動を推定するとしてもよい。
【0012】
前記行動推定部が、前記動物の行動と、前記動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方との統計的対応関係に基づいて、前記動物の行動を推定するとしてもよい。
【0013】
前記動物位置情報は、前記動物に設けた加速度センサ及び角速度センサ又はそのいずれか一方から通信部を介して送信される電波の到来方向に基づいて算出されるとしてもよい。
【0014】
前記動物行動記録部が時系列に記録した前記動物の行動記録が、当該動物の疾病、発情、分娩、転倒、成長、及び離乳のうちの少なくとも一つ以上の時期を予測するために利用されるとしてもよい。
【0015】
前記動物挙動情報が、前記動物に設けられた気圧センサ及び音響センサ又はそのいずれかからの出力データ、前記動物から取得される生体情報のうちの少なくとも一つを含んでいるとしてもよい。
【0016】
本発明の他の態様は、情報処理装置が、動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得し、前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得し、前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する動物行動記録方法である。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、情報処理装置に、動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得する処理と、前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得する処理と、前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する処理とを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、動物の行動を、精度よく効率的に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態における動物行動記録システムの全体構成を例示する模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態における動物行動記録システムの機能の概要を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態における動物行動記録装置のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態におけるセンサ装置、位置検出器のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【
図5】動物の行動とセンサデータとの対応関係を例示する説明図である。
【
図6】設置物位置情報テーブルの構成例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態における動物行動記録システムによって取得された行動記録の一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態における動物行動記録システムによって取得された行動記録の一例を示す図である。
【
図9】処理対象データ記憶部の構成例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態における動物行動記録装置が実行する行動推定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態における動物行動記録装置が実行する行動推定補正処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の他の実施形態におけるデータ取得処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の他の実施形態における行動推定処理及び推定結果補正処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本実施形態における行動記録結果の評価例を示す図である。
【
図15】本実施形態における行動記録結果を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、その実施形態に即して添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0021】
(実施形態)
<動物行動記録システム1>
図1は、本発明の一実施形態における動物行動記録システム1の全体構成を例示する模式図である。
図1に示すように、本実施形態の動物行動記録システム1は、例えば酪農家が飼育しているウシCの行動を時系列に記録する機能を備えている。記録対象となる動物には、ウシCに限らず、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ等の、いわゆる産業動物のカテゴリーに入る動物、動物園等で飼育される動物、いわゆる愛玩動物を含む、行動記録の取得、利用に利益のあるすべての動物が含まれうる。
【0022】
図1は、牛舎内に配置されている一つの矩形状の牛房CBを取り出して模式的に示している平面図である。簡単のために、
図1では、牛房CB内に一頭のウシCが飼育されている状況を示しているが、通常一つの牛房CBでは複数のウシCが飼育される。
【0023】
牛房CB内には、その適宜の場所に餌場F、哺乳場M、水飲み場Wといった設置物が設けられ、それぞれの場所で、ウシCが餌を食べ(採食動作)、乳を飲み(吸乳動作)、水を飲む(飲水動作)ことができるように構成されている。なお、これらの餌場F、哺乳場M、水飲み場Wの牛房CB内での配置は、
図1の例に限られず適宜定めることができる。
【0024】
ウシCには、3軸加速度センサ、及び3軸角速度センサを備えるセンサ装置200が装着されており、ウシCの移動、身体の動きを反映する加速度データ、角速度データが取得される。センサ装置200にはデータ伝送機能が設けられており、取得された加速度データ、角速度データが、例えば近距離無線通信(NFC)によって送信される。なお、取得、送信されるデータは、加速度データ、角速度データのいずれか一方のみであってもよい。
【0025】
牛房CBを含む牛舎の近傍、例えば酪農家の管理棟等に、本実施形態における動物行動記録の主要な機能が実装されている情報処理装置である、動物行動記録装置100が設置される。動物行動記録装置100は、ウシCに装着されているセンサ装置200からの加速度データ、角速度データを受信して、受信したデータに基づき、ウシCの行動を解析する。
【0026】
牛房CB内には、センサ装置200から送信される電波を受信して送信元であるセンサ装置200の位置、すなわち、牛房CB内でのウシCの位置を前記動物行動記録装置100によって解析するためのデータを生成するデバイスである位置検出器300が設けられる。
図1の例では、2台の位置検出器300が、牛房CB内の適宜の場所に設置され、センサ装置200から到来する電波の角度を検出し、動物行動記録装置100へ送信している。動物行動記録装置100は、各位置検出器300からの角度データを利用して、牛房CB内におけるウシCの位置を解析して取得する。動物行動記録装置100は、ウシCに関して取得される加速度データ、角速度データ、及び牛房CB内における位置情報に基づいて、牛房CB内におけるウシCの行動を特定し、時系列で記録するものである。
図1に例示するように、牛房CB内には、便宜的に、平面座標系を規定するX軸、Y軸と、それらに直交するZ軸を設定しておくことができる。動物行動記録装置100は、インターネット、WAN、LAN等の、外部の通信ネットワークNと通信可能に構成してもよい。動物行動記録装置100、センサ装置200、位置検出器300の構成と機能については、関連図面を参照して後述する。
【0027】
図2に、
図1の動物行動記録システム1の概略構成、機能を示している。本実施形態の動物行動記録システム1は、動物行動記録装置100を備える。動物行動記録装置100には、ウシCに装着したセンサ装置200からセンサデータが、牛房CB内に設置された位置検出器300からセンサ装置200からの電波受信角度データが入力される。動物行動記録装置100は、センサデータ解析機能F1により、入力されたセンサデータ、具体的には3軸加速度データと3軸角速度データとを解析し、その解析結果に基づいて、行動推定機能F2によってウシCの行動を時系列に推定する。
【0028】
一方、動物行動記録装置100は、位置データ解析機能F3により、入力された電波受信角度データと位置検出器300の設置位置とに基づいて、位置情報算出機能F4により、牛房CB内におけるウシCの位置情報を算出する。動物行動記録装置100の推定結果補正機能F5は、行動推定機能F2、位置情報算出機能F4での処理結果に基づいて、推定された行動の精度を高めるべき補正処理を行い、補正後の行動記録は行動記録機能F6により時系列に記録される。なお、後述するが、位置情報に基づいてウシCの行動を推定し、その推定結果をセンサデータの解析結果によって補正する構成を採用してもよい。
【0029】
<動物行動記録装置100,センサ装置200,位置検出器300>
次に、本実施形態における動物行動記録装置100、センサ装置200、位置検出器300の構成と機能について、具体的に説明する。
図3、
図4は、それぞれ、本発明の一実施形態における動物行動記録装置100、センサ装置200及び位置検出器300のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【0030】
<<センサ装置200、位置検出器300>>
まず、
図4を参照して、本実施形態におけるセンサ装置200、位置検出器300について説明する。センサ装置200は、ウシCの身体の適宜部位に装着され、ウシCの行動に含まれる、ウシCの移動、及びウシCの身体各部の動きを物理量に変換して出力するデバイスである。本実施形態では、センサ装置200は例えば首輪に固定されてウシCの首に装着されるが、耳に装着するなど、他の部位に取り付けるように構成してもよい。このようなウシCの歩行等による移動、起き上がり等の様々な動作に伴う動き、首振り、反芻等に伴う身体各部の動きを表す情報は、動物挙動情報として包括的に捉えることができる。
【0031】
図4に例示しているように、センサ装置200は、3軸加速度センサ210、3軸角速度センサ220、処理部230、及び通信部240を備える。3軸加速度センサ210、3軸角速度センサ220は、それぞれx,y,zの3軸方向の加速度、及びx,y,zの3軸周りの角速度を計測するためのセンサであり、各軸方向の加速度、各軸周りの角速度を、例えば出力電圧信号として得ることができる。処理部230は、3軸加速度センサ210、及び3軸角速度センサ220からの出力信号を受け取ってAD変換等の所定の処理を行ってデジタルデータに変換するセンサデータ取得部231、センサデータ取得部231で生成された3軸加速度、3軸角速度のデジタルデータを外部へ送出するセンサデータ送出部232を備える。処理部230は、加速度センサ210、角速度センサ220からのアナログ信号を受信してデジタル信号に変換するAD変換回路、AD変換後のデジタルデータを所定のフォーマットに変換等して送出するセンサデータ送出部232を有する。センサデータ取得部231、センサデータ送出部232は、CPU等のプロセッサによって制御される。なお、加速度センサ、角速度センサとしては、センサ出力信号の各種変換回路等を含めてモジュール化されたデバイスを適宜利用することができる。
【0032】
通信部240は、処理部230のセンサデータ送出部232からセンサ出力信号を表すデジタルデータを受け取って、所定の通信方式によって無線送信する機能を有する。本実施形態では、通信部240は、Bluetooth(登録商標)に準拠した通信機能を備えた通信モジュールとして構成されている。通信部240から送信されるセンサデータ送出部232からのデジタルデータは、Bluetoothのデータパケットとして送信され、動物行動記録装置100によって受信される。Bluetoothのデータパケットはまた、牛房CB内に設置された位置検出器300においても受信される。なお上記の通信方式は一例であり、これに制約されるものではない。
【0033】
位置検出器300は、例えばBluetooth5.1に含まれている方向検知機能を利用するためのロケータとして機能する。
図4に示すように、位置検出器300は、プロセッサ等で構成される処理部310、アンテナアレイ320、及び通信部330を備えて構成することができる。処理部310は、機能ブロックとしての電波受信部311と、受信角度算出部312とを備えるものとすることができる。Bluetooth5.1においては、電波の受信角度(Angle of Arrival,AoA)によりBluetooth信号の入来角度を取得することができる。Bluetooth5.1のデジタル信号には、通常のデータ通信の後にConstant Tone Extension(CTE)と呼ばれる一定期間の単調な正弦波が含まれる。位置検出器300は、このCTEを複数のアンテナを含むアンテナアレイ320を通じて電波受信部311で受信し、受信角度算出部312において、各アンテナでの受信波の位相角の差に基づいて、Bluetooth信号の入射角を算出する機能を備えている。後述するように、位置検出器300の受信角度算出部312で算出された受信角度データは、通信部330によって動物行動記録装置100へ伝送される。なお、センサ装置200の位置を検出する位置検出方式は、Bluetoothの機能を利用する方式に限られず、GPS等の衛星測位システムを利用した位置検出方式、牛房CB内のウシCの撮像画像に基づいた位置特定方式等、他の利用可能な方式を採用することができる。
【0034】
<<動物行動記録装置100>>
次に、動物行動記録装置100について説明する。
図3に示すように、動物行動記録装置100は、サーバコンピュータ又はパーソナルコンピュータなどの情報処理装置であり、処理部110、記憶部120、入出力部130、データインタフェース(データIF)部140、及び通信部150を備えている。処理部110、記憶部120、入出力部130、データIF部140、及び通信部150の間は、図示を省略する内部通信線としてのバスによって接続されている。
【0035】
処理部110は、CPU等のプロセッサによって構成される演算装置であり、後述の記憶部120から各種プログラム、データを読み込んで実行し、動物行動記録装置100の機能を実現する。本実施形態では、処理部110は、センサデータ受信部111、センサデータ解析部112、位置データ受信部113、位置データ解析部114、行動推定部115、推定結果補正部116、推定結果記録部117、及び行動記録出力部118の各機能部のデータ処理を実行する。各機能部の動作については後述する。
【0036】
記憶部120は、ハードウェア群を動物行動記録装置100として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードディスク(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部120は、本実施形態の各機能を処理部110に実行させるためのプログラム(動物行動記録装置100の制御プログラム)、各種パラメータ、行動推定に利用されるデータ、処理対象であるウシCに関するデータ、外部から入力される操作入力データ、及び生成された行動記録データ等が記憶される。
【0037】
入出力部130は、外部から動物行動記録装置100へのデータ入力を可能とするキーボード、マウス、タッチパネル、マイク等の各種入力デバイスと、行動記録データ等を出力表示するためのモニタディスプレイ、スピーカ等の出力デバイスから構成されている。
【0038】
データIF部140は、処理部110、記憶部120、入出力部130、通信部150の間でのデータ通信を制御する機能を有する。
【0039】
通信部150は、センサ装置200、位置検出器300との間で各種データの送受信を行う通信モジュールであり、例えばネットワークインタフェースカード(NIC)等のハードウェアとして構成される。通信部150は、動物行動記録装置100が
図1に例示した外部の通信ネットワークNとの間で通信を実行するのにも使用することができる。
【0040】
次に、処理部110が実行する各プログラムによって実現される動物行動記録装置100の機能について説明する。
【0041】
センサデータ受信部111は、ウシCに装着されたセンサ装置200が備えるセンサから得られるセンサデータを受信する機能を有する。本実施形態では、センサデータは0.2~10秒ごとに受信されるが、この時間間隔は限定的なものではない。なお、ここでは、センサデータは、センサ装置200が備える3軸加速度センサ、3軸角速度センサからの出力信号に基づいて得られるデジタルデータを意味するものとする。
【0042】
センサデータ解析部112は、ウシCに装着されているセンサ装置200から受信した0.2~10秒間の3軸加速度センサデータ(αx,αy,αz)及び3軸角速度センサデータ(ωx,ωy,ωz)に基づいて、当該ウシCの行動、動作を推定するのに必要な長さを抽出する機能を有する。前記のように、センサ装置200から取得するデータは、3軸加速度、3軸角速度のいずれか又は、両方であってもよい。また、センサデータとして、カメラによるウシCの撮像画像データ、ウシCが装着するセンサ装置200近傍の気圧データ、ウシC周辺で録音された音響データ、体温、心拍数、呼吸数、血圧等のウシCに関する生体情報等を適宜に採用することができる。
【0043】
位置データ受信部113は、位置検出器300からの位置データを受信する機能を有する。前記のように、位置データは、例えば各位置検出器300の牛房CB内における位置座標、各位置検出器300の受信角度算出部312において算出された、センサ装置200からの電波受信角度データである。位置検出器300の位置座標データは、あらかじめパラメータとして記憶部120に格納しておいてもよい。
【0044】
位置データ解析部114は、位置データ受信部113にて受信、取得した位置検出器300の位置座標データ及び電波受信角度を用いて、牛房CB内におけるセンサ装置200の位置を算出する。
図1のように2セットの位置検出器300を用いると、電波の発信元であるセンサ装置200の位置は、各位置検出器300の位置から電波受信角度に従って引いた直線の交点として求めることができる。センサ装置200の位置測定精度の必要に応じて、位置検出器300を増設することも可能である。求められたセンサ装置200の位置を、あらかじめ牛房CB内に設定した平面座標とマッチングすることで、センサ装置200が装着されたウシCが、牛房CB内のどの場所にいるかを判定することができる。なお、上記のセンサ装置200の位置検出方式は一例であり、GPS(Global Positioning System)の測位衛星信号に基づいて位置座標を算出する、移動体通信基地局からの電波を利用する等、他の方式を利用するとしてもよい。
【0045】
行動推定部115は、センサデータ解析部112において取得されたセンサデータ(本実施形態ではセンサ装置200によって測定された3軸加速度データ及び3軸角速度データ)、又は位置データ解析部114において取得されたセンサ装置200の牛房CB内での位置情報に基づいて、ウシCの行動を推定する機能を備えている。
【0046】
<センサデータに基づく行動推定>
本実施形態では、センサデータに基づいてウシCの行動を推定する場合、センサデータを含むデータセットと、そのセンサデータが取得されたときのウシCの行動とを対応付けてなる教師データを用いて作成された学習済みモデルを用いている。本実施形態では、この学習済みモデルは、記憶部120の行動推定モデル記憶部121に格納されている。
図5に、行動推定処理に使用される教師データの構成例を示している。
図5に例示する教師データは模式的に示しており、各行動類型に対応する加速度・角速度はそれぞれ1つの値の組ではなく、一定時間内に得られる加速度・角速度の複数の値の組を意味する。言い換えると、各行動類型に対応しているのは、当該行動類型と判別される根拠となる加速度・角速度の値の組の集合ということができる。
図5の教師データでは、センサデータに基づいて判別するウシCの行動を、「飲水」、「採食(人工乳)」、「採食(乾草)」、「反芻」、「吸乳」、「頭振り」、「移動(歩行)」、「移動(走る)」、「起立動作」、「横臥動作」、「咳」、「横臥状態・佇立状態」の12の行動類型に分類しており、各行動類型に対して対応する3軸加速度データ、3軸角速度データの組を対応付けている。教師データは、ウシCの行動を記録した動画像データと、その動画像データに対応して取得されたセンサデータとの組について、動画像データに基づく行動類型をラベリングすることによって作成することができる。本実施形態では、具体的な機械学習のアーキテクチャとして、「長期・短期記憶(Long Short Term-Memory,LSTM)」を用いたニューラルネットワークを採用している。ただし、他の機械学習方式、あるいはルールベースの判定処理を利用することも差し支えない。例えば、各行動類型に対応する加速度データ、角速度データの過去値の集合を両者の統計的対応関係として作成しておき、あらたに取得されたセンサデータをそのような集合と比較することで、行動類型を推定するようにしてもよい。
【0047】
<位置情報に基づく行動推定>
ウシCの行動推定は、ウシCの牛房CB内での位置情報に基づいて実行することも可能である。動物行動記録装置100の位置データ解析部114により、牛房CB内に設置されている位置検出器300からの位置データに基づいて、センサ装置200が牛房CB内のどの位置にあるか、すなわちウシCが牛房CB内のどこにいるかを求めることができる。例えば、ウシCについての位置情報が、ウシCが牛房CB内の「餌場」、「哺乳場」、「水飲み場」にいることを示している場合、そのウシCはそれぞれ、「採食」、「吸乳」、「飲水」の行動をとっていると推定することができる。また、ウシCの位置情報の時間的変化を検出することが可能であるので、ウシCが「移動(歩行)」、「移動(走る)」、「横臥状態・佇立状態」といった行動をとっていることを、位置情報変化の有無とその速度を用いて判定することができる。位置情報に基づく行動推定を行うために利用されるデータは、記憶部120の位置情報解析用データ記憶部122に格納されている。位置情報解析用データとしては、牛房CB内におけるウシCの場所を判定するために用いる、「餌場」、「哺乳場」、「水飲み場」の範囲を示す平面位置座標等が含まれる。
図6に、牛房CB内に設置される各設置物の設置位置を示す設置物位置情報テーブルの構成例を示している。
図6に例示する設置物位置情報テーブル1221は、位置情報解析用データ記憶部122に格納されており、設置物の種類とその牛房CB内における位置を示す位置情報とが関連付けられて記憶されている。
図6の例では、例えば「餌場F」の牛房CB内における位置は、(X11~X12, Y11~Y12)なる位置情報で示されている。これは、牛房CB内において餌場Fは、4つの位置座標(X11, Y11),(X11, Y12),(X12, Y11),(X12, Y12)で特定される領域にあることを示している。行動推定部115は、ウシCに装着されているセンサ装置200からの位置データと、設置物位置情報テーブル1222に記録されている設置物の位置情報とを対比することにより、そのウシCがいずれかの設置物の近傍にいるか否かを判定することができる。例えばウシCが餌場Fの近傍にいると判定されれば、そのウシCは採食の行動をとっていると推定することができる。設置物位置情報テーブル1221には、上記に例示した設置物に限定されず、ウシCの行動推定の精度向上に資すると考えられる設置物、あるいは牛房CB内の特定の場所を記録しておくようにすることができる。
【0048】
推定結果補正部116は、行動推定部115によって推定されたウシCの行動類型について、別の観点からの推定結果を加味して補正する機能を有する。前記したように、本実施形態では、行動推定部115が、ウシCに装着されたセンサ装置200から取得する3軸加速度データ及び3軸角速度データ、又は牛房CB内に設置した位置検出器300からの位置データに基づくウシCの位置情報から、ウシCの行動類型を時系列に推定するように構成されている。推定結果補正部116は、センサデータ、又は位置情報に基づいて推定したウシCの行動類型について、異なる推定ロジックを用いて補正を行う。本実施形態では、推定結果補正部116は、センサデータに基づいて推定したウシCの行動類型は位置情報に基づいて検証、補正を行い、位置情報に基づいて推定したウシCの行動類型はセンサデータに基づいて検証、補正を行うようにしている。このような行動推定結果の補正処理により、ウシCの行動類型の推定精度を向上させることができる。なお、推定結果補正部116における補正処理には、さらに他の観点を導入してもよい。例えば、時系列に記録された行動類型の推定結果について、連続して「採食」が記録されている途中に一点だけ「移動(歩行)」が混入して記録されている場合、混入している「移動(歩行)」は前後の行動類型との連続性を欠いているためノイズであると考えられる。行動推定結果の補正は、このような行動類型の記録の連続性の観点から検証することもできる。
【0049】
推定結果記録部117は、推定結果補正部116において得られた補正後の行動類型推定結果を、時系列に記録する機能を備える。補正後の行動類型推定結果は、記憶部120の行動記録記憶部123に時系列に格納される。行動記録記憶部123の構成例を、
図7、
図8に示している。
図7は、加速度データ及び角速度データに基づいて行動推定を行い、位置情報を用いてその行動推定結果を補正した場合の例、
図8は、位置情報に基づいて行動推定を行い、それに加速度データ及び角速度データを用いて補正を加えた場合の例である。
図7の例では、各ウシCに付与された識別符号である個体IDに対して、記録の年月日及び時刻、そのときの加速度データ及び角速度データ、及びそれに基づいて推定された行動類型が関連付けて記録されている。そして、各レコードについて、対応する年月日及び時刻において取得されたウシCの牛房CB内における位置とそれから推定されるウシCの滞在場所、及び位置情報によって補正された後の行動類型が記録されている。
図7の先頭レコードを参照すると、個体ID「001」のウシCについて、加速度データ及び角速度データから推定された行動類型として「採食」が記録され、ウシCの位置から推定された滞在場所である「餌場」と整合しているため、補正後行動類型にも「採食」と記録されている。これに対して3番目のレコードを参照すると、加速度データ及び角速度データから推定された行動類型が「吸乳」であるところ、位置に基づいて推定された滞在場所は「餌場」であって、先の推定行動類型と整合していない。この場合、本実施形態では位置から推定した滞在場所である「餌場」の情報を優先して、行動類型を「採食」と補正している。一方、
図8の例では、各ウシCに付与された識別符号である個体IDに対して、記録の年月日及び時刻、そのときの位置情報とそれに基づく推定滞在場所、及び移動しているか否か関連付けて記録されている。そして、各レコードについて、対応する年月日及び時刻において取得されたウシCの加速度データ及び角速度データ、それから推定された行動類型、及び補正された後の行動類型が記録されている。
図8の先頭レコードを参照すると、個体ID「001」のウシCについて、位置情報から「餌場」に滞在していること、及び「移動していない」ことが記録されており、ウシCの加速度データ及び角速度データから推定された行動類型である「採食」と整合しているため、補正後行動類型にも「採食」と記録されている。これに対して4番目のレコードを参照すると、位置情報から推定された滞在場所が「水飲み場」、移動については「なし」が記録されているところ、加速度データ及び角速度データから推定された行動類型は「佇立状態」となっている。この場合、補正後の推定行動類型としては、水飲み場にいても実際はなにもせずにじっとしていると考えられることから、行動類型を「休息」と記録している。なお、動物の行動類型の種別、行動類型の補正のポリシーは、対象の動物、行動記録の目的等に応じて変わり得るので、行動記録記憶部123の構成もそれに応じて自由に変更することができる。
【0050】
行動記録出力部118は、行動記録記憶部123に記録されている動物の行動記録を、入出力部130等からの入力操作によって読み出し、ディスプレイに表示させる等の出力処理を実行する。
【0051】
処理対象データ記憶部124は、行動記録の対象となる個々のウシCに関する個別の情報を格納している。
図9に、処理対象データ記憶部124の構成例を示している。
図9に例示する処理対象データ記憶部124は、行動記録の対象である各ウシCに識別符号として付与されている個体IDに対応付けて、センサ装置200の固有の識別符号であるセンサ装置ID、ウシとしての種類を示す牛種、性別、年齢、健康状態、及び病歴の各項目が記録されている。センサ装置IDは、ウシCに取り付けられている各センサ装置200から動物行動記録装置100に送信されるセンサデータに付帯され、受信したセンサデータがどのセンサ装置200で取得されたかを識別可能としている。センサ装置IDは位置検出器300においても受信されるので、特定のセンサ装置200の位置とセンサ装置IDとを紐づけることができる。健康状態は、図示のように評価数値で記録するほか、具体的にテキストで記録してもよい。病歴についても適宜の記載様式を採用してよい。処理対象データ記憶部124の記録項目は、
図9の例に制約されることなく、適宜決定することができる。
【0052】
<動物行動記録装置100によるデータ処理>
次に、本実施形態における動物行動記録装置100が実行するデータ処理について説明する。動物行動記録装置100は、主として、行動推定処理と、行動推定結果補正処理とを実行する。
【0053】
<<センサデータに基づく行動推定処理>>
図10に、本実施形態における動物行動記録装置100が実行する行動推定処理の処理フロー例をフローチャートで示している。行動推定処理は、例えば動物行動記録装置100の電源投入及び起動を契機として開始される。
【0054】
図10に例示する行動推定処理は、牛房CB内で飼育されている各ウシCについて、具体的には、各ウシCに取り付けられているセンサ装置200について所定の時間間隔ごとに実行される(ステップS11のループ)。
【0055】
動物行動記録装置100のセンサデータ受信部111は、ウシCに装着されているセンサ装置200から、3軸加速度センサ及び3軸角速度センサからのセンサデータを受信する(ステップS12)。
【0056】
センサデータ解析部112は、受信した3軸加速度センサ及び3軸角速度センサからのセンサデータに基づいて、3軸加速度データ及び3軸角速度データを算出する(ステップS13)。
【0057】
行動推定部115は、ステップS13において得られた3軸加速度データ及び3軸角速度データに、ウシCの行動類型と3軸加速度データ及び3軸角速度データとの対応関係をあらかじめ学習させて得られた学習済みモデルを適用して、行動類型の推定結果を得る(ステップS14)。
【0058】
行動推定部115は、ステップS14にて推定した行動類型を記憶部120の行動記録記憶部123に格納する(ステップS15)。
【0059】
位置データ受信部113は、牛房CB内に設置されている位置検出器300から位置検出器300の平面位置座標と、位置検出器300で受信されるセンサ装置200の電波受信角度とを受信する(ステップS16)。
【0060】
位置データ解析部114は、位置検出器300から受信した位置検出器300の位置座標と受信角度とから、牛房CB内におけるセンサ装置200の位置を、ウシCがいる場所を示す位置情報として算出する(ステップS17)。
【0061】
行動推定部115は、ステップS17において算出された位置情報から、ウシCの行動類型を推定する(ステップS18)。
【0062】
行動推定部115は、位置情報と、ステップ18において推定した行動類型を、行動記録記憶部123に格納する(ステップS19)。前記のように、以上の処理は、例えば動物行動記録装置100が動作中は、各ウシCについて、所定の時間間隔ごとに繰り返し実行され、各ウシCについての行動記録が蓄積される。
【0063】
<<行動推定結果補正処理>>
次に、行動推定部115によって推定されたウシCの行動類型について補正を行う行動推定結果補正処理について説明する。
図11は、行動推定結果補正処理の処理フロー例を示すフローチャートである。
図11に例示する行動推定結果補正処理は、行動推定処理と同様に、動物行動記録装置100の電源投入及び起動を契機として開始され、動物行動記録装置100の動作中継続して実行される。
【0064】
動物行動記録装置100では、ステップS21のループ処理が、牛房CB内にいる各ウシCについて、一定時間間隔で実行される。本実施形態では、この時間間隔を1時間に設定している。
【0065】
推定結果補正部116は、まず直近1時間に記録されている、ごく短時間に行われる行動類型、ここでは「咳」、「移動(走る)」の数をカウントする(ステップS22)。これは、後述する行動の連続性の観点からの検証によって、ノイズであると誤判定されるのを防ぐためである。
【0066】
推定結果補正部116は、行動記録記憶部123の各記録の時刻をキーとして、センサデータから推定された行動類型と位置情報から推定された行動類型とを比較する(ステップS23)。両方の行動類型が不一致であると判定した場合(ステップS24:YES)、推計結果補正部116は、位置情報から推定した行動類型を推定結果とする補正を行う(ステップS25)。両方の行動類型に不一致がないと判定した場合(ステップS24:NO)、処理はステップS26へ進められる。
【0067】
動物行動記録装置100の推定結果補正部116は、行動記録記憶部123に記録されている補正推定結果について、その連続性を検証する。具体的には、推定結果補正部116は、行動記録記憶部123に記録されている行動類型の補正推定結果を過去1時間分にわたって参照し、記録されている行動類型に連続性がないと判定される項目がないか調べ、連続性が確保されるように補正を行う。連続性を確保するための補正の例としては、ある時間にわたって例えば「採食(乾草)」が記録されている途中に「移動(歩行)」といった別の行動類型が記録されている場合である。この場合、「移動(歩行)」の記録は、連続性の観点から「採食(乾草)」に補正される。
【0068】
前記のように、以上の処理は、動物行動記録装置100の動作中、各ウシCについて、一定時間間隔をもって、例えば1時間ごとに繰り返し実行される。なお、推定された行動類型に連続性の点で欠陥があった場合、その欠陥は、位置情報を用いた推定結果の補正を行うことで治癒されることがある。そのような事情を考慮して、連続性の観点からの行動類型の検証は省略することも可能である。
【0069】
<他の実施形態による動物行動記録システム>
次に、本発明の他の実施形態による動物行動記録システム1について説明する。本実施形態の動物行動記録システム1は、
図1~
図11を参照してすでに説明した実施形態(以下便宜的に「第1実施形態」と称することがある。)と基本的な構成を同じくしているため、ここでは本実施形態(以下便宜的に「第2実施形態」と称することがある。)において、第1実施形態との差異に重点を置いて説明することとする。
【0070】
第2実施形態における動物行動記録システム1は実質的に
図1に関して説明した第1実施形態の構成と同じ構成を有し、牛房CB内にいるウシCの行動を、センサ装置200からの3軸加速度データ及び3軸角速度データと、位置検出器300からの位置データとに基づいて推定し、時系列に記録する機能を有する。第2実施形態における動物行動記録装置100、センサ装置200、位置検出器300の構成は、それぞれ
図2、
図3を参照して説明した第1実施形態と同様である。
【0071】
<第2実施形態における動物行動記録装置100が実行するデータ処理>
第2実施形態では、動物の行動を推定する処理、及びその推定結果を補正する処理が、第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態における動物行動記録装置100が実行する行動推定処理と推定結果補正処理について説明する。本実施形態での行動推定処理は、まず牛房CB内におけるウシCの場所、ウシCが移動しているか否かに基づいて大まかな行動推定を実施し、その際にセンサ装置200から受信しているセンサデータに基づいてその行動推定に所要の補正を加えるように構成されている。具体的には、本実施形態では、位置検出器300からの位置データ及びウシCのセンサ装置200からのセンサデータを比較的短い時間間隔で記録する。動物行動記録装置100は、記録された位置情報に基づいて、より長い時間間隔にて繰り返し行動推定処理及び推定結果補正処理を実行する。
【0072】
<<データ取得処理>>
図12に、本実施形態における動物行動記録装置100が実行するデータ取得処理の処理フロー例をフローチャートで示している。このデータ取得処理は、例えば動物行動記録装置100の電源投入及び起動を契機として開始される。
【0073】
図12に例示するデータ取得処理は、牛房CB内で飼育されている各ウシCについて、一定時間間隔ごとに実行される。具体的には、ステップS32~ステップS35の処理が、各ウシCに取り付けられているセンサ装置200ごとに実行される(ステップS31のループ)。例えば本実施形態では、データ取得処理の実行時間間隔は各センサ装置200について、0.01秒~1分程度の時間であるが、これに限定されず実行時間間隔は適宜決定すればよい。
【0074】
位置データ受信部113は、牛房CB内に設置されている位置検出器300から位置検出器300の平面位置座標と、位置検出器300で受信されるセンサ装置200からの電波受信角度とを受信する(ステップS32)。
【0075】
位置データ解析部114は、位置検出器300から受信した位置検出器300の位置座標と受信角度とから、牛房CB内におけるセンサ装置200の位置を、ウシCがいる場所を示す位置情報として算出し、行動記録記憶部123に記録する(ステップS33)。
【0076】
動物行動記録装置100のセンサデータ受信部111は、ウシCに装着されているセンサ装置200から、3軸加速度センサ及び3軸角速度センサからの出力データ信号を受信する(ステップS34)。
【0077】
センサデータ解析部112は、受信した3軸加速度センサ及び3軸角速度センサからの出力データ信号に基づいて、3軸加速度データ及び3軸角速度データを算出して、行動記録記憶部123に記録する(ステップS35)。
【0078】
以上のデータ取得処理によって、第2実施形態における動物行動推定処理を実行するための基礎データが収集される。
【0079】
<<行動推定処理・推定結果補正処理>>
次に、本実施形態の動物行動記録装置100による行動推定処理及び推定結果補正処理について説明する。
図13に、本実施形態における行動推定処理及び推定結果補正処理の処理フロー例をフローチャートで示している。この行動推定処理及び推定結果補正処理は、例えば動物行動記録装置100のデータ取得処理開始から一定時間経過後に開始される。
【0080】
図13に例示する行動推定処理及び推定結果補正処理は、牛房CB内で飼育されている各ウシCについて、具体的には、各ウシCに取り付けられているセンサ装置200について、一定時間間隔ごとに実行される(ステップS41のループ)。例えば本実施形態では、行動推定処理及び推定結果補正処理の実行時間間隔は各ウシCについて1時間であり、
図12に例示したデータ取得処理の開始から1時間経過後行動推定処理及び推定結果補正処理が開始されて以後1時間ごとに実行される。しかし、実行時間間隔はこれに限定されることなく適宜決定すればよい。
【0081】
動物行動記録装置100の行動推定部115は、行動記録記憶部123に記録されている位置情報から、ウシCが移動しているか否かの区別、及びウシCがいる牛房CB内の場所を推定する(ステップS42)。前記のように、本実施形態では、データ取得処理において、0.2~1秒程度の時間間隔で位置情報及びセンサデータの取得を実行するとしている。1秒ごとにデータ取得を実行するとすれば、各センサ装置200について、3600組/時間のデータが蓄積される。行動推定部115は、直近の1時間に行動記録記憶部123に蓄積されたデータに基づいて、各センサ装置200が取り付けられたウシCの行動を推定する。ステップS42では、まず、時系列に記録された位置情報を用いて、ウシCが各データ取得時点において牛房CB内で移動していたか否か、及びウシCが牛房CB内のどの場所にいたかを推定する。
【0082】
推定結果補正部116は、ステップS42で推定された、ウシCが各データ取得時点において牛房CB内で移動していたか否か、及びウシCが牛房CB内のどの場所にいたかの推定結果に、センサデータから推定されたウシCの行動類型を対照する(ステップS43)。この対照結果に応じた行動類型の補正ポリシーは適宜に規定することができる。一例としては、次のようである。
【0083】
位置情報に基づいて「ウシCがあまり動いていない」、かつ「牛房CB内の休息場所(餌場、哺乳場、水飲み場以外の場所)にいる」と推定される場合、行動類型としては、休息を示す「横臥状態」、又は「佇立状態」、あるいは身体の動きが少ない「反芻」のいずれかと推定される。同様に、位置情報に基づいて「ウシCがあまり動いていない」、かつ「牛房CB内の餌場にいる」と推定される場合、行動類型としては、休息を示す「横臥状態」、又は「佇立状態」、あるいは身体の動きが少ない「反芻」又は「採食」のいずれかと推定される。また、位置情報に基づいて「ウシCが移動している」と推定される場合、行動類型としては、「移動(歩行)」、又は「移動(走る)」のいずれかと推定される。
【0084】
推定結果補正部116は、ステップS43において、位置情報に基づき判定された行動に、センサデータに基づき推定された行動類型を加味して判定された行動類型を、行動記録記憶部123に記録する(ステップS44)。
【0085】
以上の第2実施形態における動物行動記録装置100によれば、牛房CB内におけるウシCの行動をまず位置情報に基づいて把握し、同時刻にセンサデータに基づいて推定された行動類型と対照することで、適切な補正を行うことができる。
【0086】
<本発明の実施形態によるウシCの行動類型推定結果>
図14に、本発明の第1実施形態に係る動物行動記録装置100によって得たウシCの行動類型の推定結果を例示している。
図14には、行動類型として「吸乳」、「採食」が推定された場合の処理結果を示している。いずれの行動類型についても、センサデータに基づく一次推定結果、連続性の検証による補正結果、連続性及び位置情報による最終補正結果がヒストグラムにより示されている。
図14のグラフの横軸は、直近24時間において、実際の吸乳時間、採食時間をビデオ映像の観察から計測し、1時間ごとに予測との差分時間を算出した。いずれの行動類型の場合でも、一次推定結果に対して連続性検証、さらに位置情報に基づく補正を実施することにより、実際の行動の時間との差分時間が少なくなり(差分時間が0である頻度が多くなり)、行動類型の予測精度が向上していることが示された。
【0087】
<動物行動記録装置100による行動記録>
図15に、第1実施形態による動物行動記録装置100によって記録された行動類型の時間的変化を、グラフで示している。このようなグラフは、例えば動物行動記録装置100の入出力部130からの入力操作により、ディスプレイ等に表示させることができる。
図15は、4頭のウシ1~ウシ4が飼育されている牛房CBにおける各ウシの行動記録を例示している。各グラフは、行動類型として、(a)採食・飲水・吸乳を含む飲食系の行動、(b)佇立状態、横臥状態を含む休息、(c)反芻、(d)歩く、走る、を含む移動の4つのパターンに大別して、その頻度の時間的変化を折れ線グラフで各ウシについて示している。このようなウシごとの行動類型の記録は、例えばウシCの体調変化、及び体調変化によって予見される病変、分娩の予測に利用することができる。例えば
図15において一点鎖線で示されているウシ4の行動記録に着目すると、それぞれ破線で囲んで示しているように、(b)休息において、他のウシよりも休息と判定された頻度が高いこと、また、(d)移動において、他のウシよりも移動の頻度が低いことが観察される。このことは、ウシ4については、なんらかの体調変化等に基づいて、活動の度合いが低調になっていることを示唆していると考えることができる。このように、本発明の実施形態による動物行動記録装置100によって記録されたウシCの行動類型の時間的な変化に基づいて、ウシCの体調変化、疾病、発情、分娩、離乳の予兆等を知ることができる。例えば、
図15に例示した(a)~(d)の行動類型の変化パターンと、各ウシCについて観察された体調変化、疾病、発情、分娩、離乳とを対応付けて学習させた学習済みモデルを生成すれば、動物行動記録装置100によって記録された行動類型に基づいて、ウシCの体調変化、疾病等の予兆をとらえることが可能となる。
【0088】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0089】
本実施形態に係る動物行動記録装置100は、動物の挙動を示す情報である動物挙動情報を取得し、前記動物が存在する位置を示す情報である動物位置情報を取得し、前記動物挙動情報と、前記動物位置情報とに基づいて、前記動物の行動を推定して、当該行動を時系列に記録する処理部110を備えている。
【0090】
このようにすれば、動物の行動を、精度よく効率的に把握することが可能となる。
【0091】
前記動物挙動情報は、前記動物に設けたセンサ装置200が備える加速度センサ210から取得される加速度データ及び角速度センサ220から取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方であり、前記処理部110は、前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいて前記動物の行動を推定する行動推定部115と、前記行動推定部115が推定した前記動物の行動を、前記動物位置情報に基づいて補正する推定結果補正部116とを備えているとしてもよい。
【0092】
このようにすれば、加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいて推定された動物の行動が、前記動物位置情報に基づいて補正され、動物の行動の推定精度が向上する。
【0093】
牛房CB内に配置されている、ウシCの飼育に必要な複数の種類の設置物の位置の情報を記憶している記憶部120を備え、推定結果補正部116は、記憶されている設置物の位置の情報と、ウシCの位置情報とに基づいて、対象となるウシCが存在する位置にある設置物の種類を特定し、特定した設置物の種類に基づいて行動推定部115が推定した前記ウシCの行動を補正するとしてもよい。設置物とは、餌場F、哺乳場M、水飲み場Wなどである。
【0094】
このようにすれば、推定されたウシCの行動がウシCの位置に対応する設置物の種類に応じて補正されウシCの行動推定精度が向上する。
【0095】
前記動物挙動情報は、前記動物に設けた加速度センサから取得される加速度データ及び、前記動物に設けた角速度センサから取得される角速度データの両方又はそのいずれか一方であり、前記処理部110は、前記動物位置情報に基づいて前記動物が存在する場所及び当該場所における挙動を推定する行動推定部115と、推定された前記動物の存在する場所と前記動物の挙動とを、取得された前記動物挙動情報と対照させて補正する推定結果補正部116とを備えているとしてもよい。
【0096】
このようにすれば、前記動物位置情報に基づいて推定された動物の行動が、加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいて補正され、動物の行動の推定精度が向上する。
【0097】
牛房CB内に配置されている、ウシCの飼育に必要な複数の種類の設置物の位置の情報を記憶している記憶部120を備え、行動推定部115は、記憶されている設置物の位置の情報と、ウシCの位置情報とに基づいて、対象となるウシCが存在する位置にある設置物の種類を特定し、特定した設置物の種類に基づいて前記対象となるウシCの挙動を推定するとしてもよい。
【0098】
このようにすれば、ウシCの位置に対応する設置物の種類に応じて精度よくウシCの行動を推定することができる。
【0099】
前記行動推定部115が、前記動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方と、複数の類型に区分された前記動物の行動との関係を学習させた学習済みモデルを使用して前記動物の行動を推定するとしてもよい。
【0100】
このようにすれば、機械学習のアーキテクチャを利用して、動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいた動物の行動推定結果の精度を高めることができる。
【0101】
前記行動推定部115が、前記動物の行動と、前記動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方との統計的対応関係に基づいて、前記動物の行動を推定するとしてもよい。
【0102】
このようにすれば、前記の統計的対応関係に基づいて、動物から取得した前記加速度データ及び角速度データ又はそのいずれか一方に基づいた動物の行動推定結果の精度を高めることができる。
【0103】
前記動物位置情報は、前記動物に設けた加速度センサ及び角速度センサ又はそのいずれか一方から通信部を介して送信される電波の到来方向に基づいて算出されるとしてもよい。
【0104】
このようにすれば、動物に設けたセンサ装置200からのデータ送信用電波を利用して動物の位置情報を取得することができる。
【0105】
前記処理部110が時系列に記録した前記動物の行動記録が、当該動物の疾病、発情、分娩、転倒、成長、及び離乳のうちの少なくとも一つ以上の時期を予測するために利用されるようにしてもよい。
【0106】
このようにすれば、動物の疾病、発情、分娩、転倒、成長、及び離乳といった事象を動物の行動記録に基づいて適時に見逃すことなく知得することができる。
【0107】
前記動物挙動情報が、前記動物に設けられた気圧センサ及び音響センサ又はそのいずれかからの出力データ、前記動物から取得される生体情報のうちの少なくとも一つを含んでいるとしてもよい。
【0108】
このようにすれば、動物の行動を推定するための基礎データが増加するので、行動推定の精度を高めることができる。
【0109】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、
図2、
図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が、動物行動記録装置100に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図2、
図3の例に限定されない。また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。本実施形態における機能的構成は、演算処理を実行するプロセッサによって実現され、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0110】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0111】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるUSBメモリ等のリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているROMや、記憶部120に含まれるハードディスク等で構成される。
【0112】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0113】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、上記実施形態と変形例の各構成を組み合わせることも可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 動物行動記録システム
100 動物行動記録装置
110 処理部
115 行動推定部
116 推定結果補正部
120 記憶部
121 行動推定モデル記憶部
123 行動記録記憶部
200 センサ装置
210 3軸加速度センサ
220 3軸角速度センサ
300 位置検出器