(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152922
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ線材複合体
(51)【国際特許分類】
C01B 32/168 20170101AFI20231005BHJP
H01B 5/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C01B32/168
H01B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052602
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022060879
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悟志
(72)【発明者】
【氏名】杉原 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 晴佳
(72)【発明者】
【氏名】會澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊也
(72)【発明者】
【氏名】森本 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 陽子
(72)【発明者】
【氏名】小橋 和文
【テーマコード(参考)】
4G146
5G307
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AA12
4G146AA13
4G146AA16
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AC20B
4G146AD17
4G146AD22
4G146BC09
4G146BC42
4G146CA16
4G146CB07
4G146CB11
4G146CB21
4G146CB32
4G146CB34
5G307EA09
(57)【要約】
【課題】カーボンナノチューブが高密度に充填されていることで、さらなる低抵抗化を実現して導電性をさらに向上させることができるカーボンナノチューブ線材を提供する。
【解決手段】1層以上の層構造を有するカーボンナノチューブの複数で構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ線材であり、前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの真円度が、平均0.80以下であるカーボンナノチューブ線材。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブの複数で構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ線材であり、
前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの真円度が、平均0.80以下であるカーボンナノチューブ線材。
【請求項2】
真円度0.50以下である前記カーボンナノチューブが、10個数%以上含まれている請求項1に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項3】
真円度0.50以下である前記カーボンナノチューブが、30個数%以上含まれている請求項1に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの空隙部に、異種元素が導入され、前記異種元素が、ヨウ素(I)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)及びインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項5】
前記異種元素の含有量が、前記カーボンナノチューブ線材に含まれている前記カーボンナノチューブ100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下である請求項4に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項6】
前記異種元素が、前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んだ異種元素連続体を形成している請求項4に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブの空隙部が、前記カーボンナノチューブの最内層の内部、前記カーボンナノチューブの層構造の層間、及び/または複数の前記カーボンナノチューブの最外層で囲まれた領域である請求項4に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブの最内層の内部の2箇所以上に、前記異種元素が導入されている前記カーボンナノチューブを有する請求項4に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブの最内層の円相当直径が1.5nm以上であり、前記カーボンナノチューブの最内層の対向する面が0.400nm以下である部位を有する前記カーボンナノチューブを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ線材を構成している全ての前記カーボンナノチューブのうち、2層構造の前記カーボンナノチューブと3層構造の前記カーボンナノチューブの合計が、75個数%以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブ線材を構成している全ての前記カーボンナノチューブのうち、4層以上の層構造を有する前記カーボンナノチューブが、75個数%以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの円相当直径が、平均5.0nm以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブ線材の長手方向における前記カーボンナノチューブの配向度が、1.0°以上10°以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項14】
前記異種元素が、ヨウ素(I)を含み、ヨウ素(I)が、3つ以上のヨウ素(I)が前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んで配置されているヨウ素結合体の状態である請求項4に記載のカーボンナノチューブ線材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1層以上の層構造を有するカーボンナノチューブの複数で構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなり、前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの径方向の形状が歪んだカーボンナノチューブ線材に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への適用が期待されている。例えば、カーボンナノチューブは、六角形格子の網目構造を有する筒状体の単層または略同軸で配された多層で構成される3次元網目構造体であり、軽量であるだけではなく、導電性、熱伝導性、機械的強度等の特性にも優れている。
【0003】
従来、自動車や産業機器などの様々な分野における電力線や信号線として、単数または複数の線材からなる導電性の芯線が用いられている。芯線としては、一般的には、例えば、銅やアルミニウム等の金属線が使用されている。しかし、自動車、産業機器等の高性能化・高機能化に伴い、各種電気機器、制御機器などの配設数が増加し、また、これら機器に使用される電気配線体の配線数と芯線からの発熱も増加する傾向にある。さらには、環境負荷低減のために、線材の軽量化も要求されている。
【0004】
そこで、カーボンナノチューブ線材は、上記の通り、軽量性、導電性、熱伝導性、機械的強度等に優れることから、様々な分野における電力線や信号線として、金属線の芯線に代えて、カーボンナノチューブ線材の使用が求められている。一方で、自動車、産業機器等のさらなる高性能化・高機能化に伴い、カーボンナノチューブ線材には、さらなる導電性の向上も要求されている。
【0005】
カーボンナノチューブ線材は、複数のカーボンナノチューブが集合して形成された構造体なので、カーボンナノチューブ同士の間で接触抵抗が生じ得ることから、カーボンナノチューブ線材としての導電性に改善の余地があった。また、カーボンナノチューブ線材を構成するカーボンナノチューブは、直径が必ずしも均一ではないことから、カーボンナノチューブ間にナノサイズの隙間が生じて、カーボンナノチューブ線材の密度が低下し、抵抗値が上昇する場合があった。そこで、カーボンナノチューブ線材に異種元素をドープして、カーボンナノチューブ同士の間に異種元素を介在させることで、カーボンナノチューブ同士の間の接触抵抗を低減して、導電性を向上させたカーボンナノチューブ線材複合が提案されている。
【0006】
導電性を向上させたカーボンナノチューブ線材を得るために、カーボンナノチューブ線材にドープする異種元素として、ヨウ素が使用されることがある(特許文献1)。ヨウ素は、カーボンナノチューブ線材への均一なドープが容易であり、カーボンナノチューブ線材における存在位置の安定性に優れている特性を有している。すなわち、ヨウ素は、カーボンナノチューブ線材のドーパントとしてハンドリング性に優れていることから、使用されている異種元素である。
【0007】
また、カーボンナノチューブ線材の導電性を向上させるために、カーボンナノチューブ線材に異種元素をドープするとともに、直径を小さく抑えて径方向の形状の真円度を向上させたカーボンナノチューブを形成し、このような真円度を向上させたカーボンナノチューブにて六方最密充填構造を形成することでカーボンナノチューブの充填密度を上昇させたカーボンナノチューブ線材とすることも行われている。真円度を向上させたカーボンナノチューブを用いてカーボンナノチューブの充填密度を上昇させることでカーボンナノチューブ間に隙間が発生することを抑制して、カーボンナノチューブ線材の抵抗値上昇を防止している。
【0008】
しかし、真円度を向上させたカーボンナノチューブを用いて充填密度を上昇させても、カーボンナノチューブ間には、依然として隙間が存在しているので、カーボンナノチューブ線材の導電性を向上させる点で、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、カーボンナノチューブ線材の長手方向に揃い且つカーボンナノチューブの凝集により本来なればその断面が真円であるカーボンナノチューブが、径方向に歪み且つ拉げることで、カーボンナノチューブ線材中におけるカーボンナノチューブのパッキングがあげられてカーボンナノチューブが高密度化されことで、さらなる低抵抗化を実現して導電性をさらに向上させることができるカーボンナノチューブ線材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の構成の要旨は以下の通りである。
[1]カーボンナノチューブの複数で構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ線材であり、
前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの真円度が、平均0.80以下であるカーボンナノチューブ線材。
[2]真円度0.50以下である前記カーボンナノチューブが、10個数%以上含まれている[1]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[3]真円度0.50以下である前記カーボンナノチューブが、30個数%以上含まれている[1]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[4]前記カーボンナノチューブの空隙部に、異種元素が導入され、前記異種元素が、ヨウ素(I)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)及びインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[5]前記異種元素の含有量が、前記カーボンナノチューブ線材に含まれている前記カーボンナノチューブ100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下である[4]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[6]前記異種元素が、前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んだ異種元素連続体を形成している[4]または[5]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[7]前記カーボンナノチューブの空隙部が、前記カーボンナノチューブの最内層の内部、前記カーボンナノチューブの層構造の層間、及び/または複数の前記カーボンナノチューブの最外層で囲まれた領域である[4]乃至[6]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[8]前記カーボンナノチューブの最内層の内部の2箇所以上に、前記異種元素が導入されている前記カーボンナノチューブを有する[4]乃至[7]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[9]前記カーボンナノチューブの最内層の円相当直径が1.5nm以上であり、前記カーボンナノチューブの最内層の対向する面が0.400nm以下である部位を有する前記カーボンナノチューブを有する[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[10]前記カーボンナノチューブ線材を構成している全ての前記カーボンナノチューブのうち、2層構造の前記カーボンナノチューブと3層構造の前記カーボンナノチューブの合計が、75個数%以上である[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[11]前記カーボンナノチューブ線材を構成している全ての前記カーボンナノチューブのうち、4層以上の層構造を有する前記カーボンナノチューブが、75個数%以上である[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[12]前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの円相当直径が、平均5.0nm以上である[1]乃至[11]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[13]前記カーボンナノチューブ線材の長手方向における前記カーボンナノチューブの配向度が、1.0°以上10°以下である[1]乃至[12]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
[14]前記異種元素が、ヨウ素(I)を含み、ヨウ素(I)が、3つ以上のヨウ素(I)が前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んで配置されているヨウ素結合体の状態である[4]乃至[8]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材。
【0012】
上記態様における「真円度」とは、以下の手順で求め定義されたものである。高配向なカーボンナノチューブ線材に対して、集束イオンビームを用いてカーボンナノチューブ線材の輪切りを作製し、更に走査透過型電子観察が可能な数十nm以下の薄片試料を作製する。カーボンナノチューブ線材の薄片試料の径方向(すなわち、長手方向に対して直交方向)の断面について、カーボンナノチューブ自体の断面と走査透過電子顕微鏡における電子ビームの晶帯軸が合う場所を見つける若しくはホルダーを傾けることで軸調整することにより得られた明視野の画像(BF-STEM画像)を取得し、前記画像に対して、カーボンナノチューブの外周を最大で100点以上プロットすることで外周を描き、カーボンナノチューブの周長と面積を算出し、真円度=4π×(面積)/(円周の二乗)の式で求める。この式で真円度が1の時、正円となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、カーボンナノチューブの複数で構成されるカーボンナノチューブ集合体の単数または複数からなるカーボンナノチューブ線材であり、前記カーボンナノチューブ線材を構成している前記カーボンナノチューブの真円度が平均0.80以下であることにより、多くのカーボンナノチューブの径方向の形状が真円ではなく歪な形状となっていることで、多くのカーボンナノチューブの径方向の形状が真円または真円に近いカーボンナノチューブ線材と比較して、カーボンナノチューブが高密度に充填されている。従って、本発明のカーボンナノチューブ線材の態様では、さらなる低抵抗化を実現して導電性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、真円度0.50以下である前記カーボンナノチューブが10個数%以上含まれていることにより、カーボンナノチューブがさらに確実に高密度充填されているので、さらなる低抵抗化をさらに確実に実現して導電性をさらに向上させることができる。
【0015】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブの空隙部に、異種元素が導入され、前記異種元素が、ヨウ素(I)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)及びインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことにより、カーボンナノチューブ同士の間の接触抵抗を低減できるので、さらに優れた導電性を得ることができる。
【0016】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記異種元素の含有量が、前記カーボンナノチューブ線材に含まれている前記カーボンナノチューブ100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下であることにより、温度上昇によるカーボンナノチューブの格子振動が異種元素の作用によって抑制され、また、カーボンナノチューブの空隙部に異種元素が導入されて、導電性が確実に向上しつつ、異種元素をドープすることによるカーボンナノチューブの電子の散乱に起因したカーボンナノチューブ自体の導電性の低下を確実に防止できる。
【0017】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記異種元素が、前記カーボンナノチューブの長手方向に沿って並んだ異種元素連続体を形成していることにより、導電性に寄与するキャリアをさらに増大させてカーボンナノチューブの長手方向の導電性がさらに向上し、また、電気抵抗増大の一因であるカーボンナノチューブの格子振動をさらに抑制できるので、さらに優れた導電性を得ることができる。
【0018】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブの空隙部が、前記カーボンナノチューブの最内層の内部、前記カーボンナノチューブの層構造の層間、及び/または複数の前記カーボンナノチューブの最外層で囲まれた領域であることにより、カーボンナノチューブ線材全体において、導電性に寄与するキャリア密度が向上し、さらに優れた導電性を得ることができる。
【0019】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブの最内層の内部の2箇所以上に、前記前記異種元素が導入されているカーボンナノチューブを有していることにより、カーボンナノチューブ線材全体において、導電性に寄与するキャリア密度が向上する。
【0020】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブの最内層の円相当直径が1.5nm以上であり、前記カーボンナノチューブの最内層の対向する面が0.400nm以下である部位を有するカーボンナノチューブを有していることにより、カーボンナノチューブ内における導電性が向上するので、さらに優れた導電性を確実に得ることができる。
【0021】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブ線材を構成している複数の前記カーボンナノチューブのうち、2層構造の前記カーボンナノチューブと3層構造の前記カーボンナノチューブの合計が75個数%以上であることにより、カーボンナノチューブの導電性が向上することから、さらに優れた導電性を確実に得ることができる。
【0022】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブ線材を構成している複数の前記カーボンナノチューブのうち、4層以上の層構造を有する前記カーボンナノチューブが75個数%以上であることにより、カーボンナノチューブの耐熱性が向上することから、カーボンナノチューブ線材の耐熱性が向上する。
【0023】
本発明のカーボンナノチューブ線材の態様によれば、前記カーボンナノチューブ線材の長手方向における前記カーボンナノチューブの配向度が1.0°以上10°以下であることにより、カーボンナノチューブ同士の接触面積が増大して、さらに優れた導電性を確実に得ることができるとともに、カーボンナノチューブ線材の引張強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の構成を概略的に示す図であり、(a)図は、カーボンナノチューブ線材の斜視図、(b)図は、カーボンナノチューブ集合体の斜視図、(c)図は、カーボンナノチューブの斜視図である。
【
図2】カーボンナノチューブ間の空隙部とカーボンナノチューブの最内層の内部及び層間の空隙部に異種元素が導入されたカーボンナノチューブ集合体の斜め方向の構成を模式的に示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図4】異種元素連続体がカーボンナノチューブ間の空隙部とカーボンナノチューブの層構造の内部に導入された状態の一例を示す、カーボンナノチューブ線材の径方向の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、異種元素としてヨウ素が導入されたカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、異種元素としてヨウ素が導入されたカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図7】本発明の実施形態に係る、異種元素としてヨウ素が導入されたカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図8】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の拡大画像である。
【
図9】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の全体画像である。
【
図10】実施例1のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図11】実施例2のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図12】比較例1のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【
図13】比較例2のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明のカーボンナノチューブ線材の実施形態について、詳細を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の構成を概略的に示す図であり、(a)図は、カーボンナノチューブ線材の斜視図、(b)図は、カーボンナノチューブ集合体の斜視図、(c)図は、カーボンナノチューブの斜視図である。
図2は、カーボンナノチューブ間の空隙部とカーボンナノチューブの最内層の内部及び層間の空隙部に異種元素が導入されたカーボンナノチューブ集合体の斜め方向の構成を模式的に示す説明図である。
図3は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図4は、異種元素連続体がカーボンナノチューブ間の空隙部とカーボンナノチューブの層構造の内部に導入された状態の一例を示す、カーボンナノチューブ線材の径方向の説明図である。
図5は、本発明の実施形態に係る、異種元素としてヨウ素が導入されたカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図6は、本発明の実施形態に係る、異種元素としてヨウ素が導入されたカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図7は、本発明の実施形態に係る、異種元素としてヨウ素が導入されたカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図8は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の拡大画像である。
図9は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の全体画像である。
【0026】
図1(a)に示すように、本発明の実施形態であるカーボンナノチューブ線材(以下、「CNT線材」ということがある。)1は、1層以上の層構造を有するカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)の複数で構成されるカーボンナノチューブ集合体(以下、「CNT集合体」ということがある。)11の単数または複数を束ねて構成されている。CNT線材1の外径は、例えば、0.01mm以上10mm以下であり、好ましくは0.01mm以上1mm以下である。
【0027】
CNT線材1では、CNT線材1の長手方向とCNTの長手方向が揃っており、複数のCNTがCNT線材1において高い配向度を有していることが好ましい。CNT線材1の長手方向における複数のCNTの配向度としては、CNT同士の接触面積が増大することで、さらに優れた導電性を確実に得ることができるとともに、カーボンナノチューブ線材
の引張強度が向上する点から、10°以下が好ましく、9.0°以下が特に好ましい。C
NT線材1の長手方向におけるCNTの配向度は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られた画像(SEM画像)を高速フーリエ変換した画像を解析(FFT解析)して算出することができる。例えば、イオンミリングを用いてCNT線材1を長手方向に沿って切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、当該切断面におけるSEM画像をFFT(高速フーリエ変換)処理して配向解析を行うことで、CNT線材1の長手方向におけるCNTの配向度を算出することができる。CNTの配向度は、低いほど好ましいが、その下限値としては、例えば、1.0°が挙げられる。
【0028】
図1(b)に示すように、CNT集合体11は、1層または2層以上の多層構造を有する複数のCNT11a、11a、・・・が束ねられて形成されたCNTの束となっている。CNT線材1は、例えば、CNT集合体11を撚って形成される。ここで、CNT線材1とはCNT11aの割合が90質量%以上のCNT線材1を意味する。なお、CNT線材1におけるCNT11aの割合の算定においては、メッキとドーパントは除く。CNT集合体11では、複数のCNT11a、11a、・・・の長軸方向がほぼ揃って配置されている。また、CNT集合体11は線状となっており、CNT集合体11の長手方向が、CNT線材1の長手方向を形成している。上記から、CNT11aの長手方向が、CNT線材1の長手方向を形成している。CNT集合体11の円相当直径は、例えば、20nm以上1000nm以下が挙げられる。
【0029】
CNT11aは、単層構造または多層構造(複層構造)を有する筒状体であり、それぞれ、SWNT(Single-walled nanotube)、MWNT(Multi-walled nanotube)と呼ばれる。
図1(b)~
図1(c)では、説明の便宜上、2層構造を有するCNT11aのみを記載しているが、実際には、1層の層構造を有するCNT11a、3層以上の層構造を有するCNT11aも存在する。
【0030】
図2、3に示すように、CNT線材1を構成しているCNT11aでは、多くのCNT11aで、その径方向(すなわち、長手方向に対して直交方向)の形状は歪んでいる。従って、多くのCNT11aでは、径方向の形状は円形とはなっていない。CNT線材1では、CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度が、平均0.80以下である。CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度が平均0.80以下であることにより、多くのCNT11aの径方向の形状が真円ではなく歪な形状となっており、CNT11aの径方向の歪みの程度も適度に大きいことで、多くのCNTの径方向の形状が真円または真円に近いCNT線材と比較して、CNT線材1では、CNT11aが高密度に充填されている。従って、CNT線材1では、さらなる低抵抗化を実現して導電性をさらに向上させることができる。
【0031】
CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度は、平均0.80以下であれば、特に限定されないが、CNT11aがさらに高密度に充填されていることで、さらに優れた導電性を得ることができる点から、平均0.70以下が好ましく、平均0.65以下が特に好ましい。CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度の下限値は、特に限定されないが、高密度化による接触抵抗の低減の点、且つ完全に潰れた状態でもそのつぶれたCNT11aの両端は曲率を持ちCNT11aとして維持することでCNT11aの本来持つ高い電子の移動度を担保し、その部分に異種元素が入り、電荷移動が起こりさらにCNT11a自体の抵抗が下がる点から、0.15が好ましく、0.20が特に好ましい。なお、
図3のCNT線材1では、CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度は0.59となっている。
【0032】
CNT線材1では、真円度0.50以下であるCNT11aの個数割合は、特に限定されないが、CNT11aがさらに確実に高密度充填されることで、さらなる低抵抗化をさらに確実に実現して導電性をさらに向上させることができる点から、真円度0.50以下であるCNT11aの個数割合が、CNT線材1を構成しているCNT11aの総数の10個数%以上含まれていることが好ましく、30個数%以上含まれていることがより好ましく、40個数%以上含まれていることが特に好ましい。真円度0.50以下であるCNT11aの個数割合の上限値は、特に限定されないが、平均の真円度を適度に低くしてCNT11aを高密度充填させる点から、CNT線材1を構成しているCNT11aの総数の70個数%が好ましく、60個数%が特に好ましい。なお、
図3のCNT線材1では、真円度0.50以下であるCNT11aの個数割合が52個数%となっている。
【0033】
また、CNT線材1では、CNT11aがさらに確実に高密度充填される点から、真円度0.50以下であるCNT11aの個数割合が、CNT線材1を構成しているCNT11aの総数の10個数%以上含まれ、且つ真円度0.80以上1.0以下であるCNT11aの個数割合が、CNT線材1を構成しているCNT11aの総数の10個数%以上含まれるのが好ましく、20個数%以上含まれるのがさらに好ましく、30個数%以上含まれるのが特に好ましい。真円度0.80以上1.0以下であるCNT11aの個数割合の上限値は、CNT11aの高密度充填を確実に維持する点から、CNT線材1を構成しているCNT11aの総数の50個数%が好ましく、40個数%が特に好ましい。
【0034】
真円度の平均を調整する方法として、後述するCNT線材1の製造方法において触媒サイズを調整する方法が挙げられる。CNT11aの直径サイズは触媒サイズに依存することから、直径が5.0nm以上の金属触媒粒子を使用し、直径の大きなCNT11aを合成したのち、直接紡糸などの紡糸方法でCNT線材1を製造し、これをツイストすることで真円度の高いCNT11aを潰してCNT11aの真円度を調整することができる。また、異なる触媒サイズで合成された、複数の直径を有するCNT11aを組み合わせて紡糸し、CNT線材1を製造することで、一部のCNT11aが潰れて所望の真円度ヒストグラムを有するCNT線材1を製造することができる。
【0035】
図2、4、5、6に示すように、本発明のCNT線材1では、必要に応じて、CNT集合体11に、複数の異種元素12a、12a、・・・がドープされた構成を有していてもよい。なお、
図5、6では、輝度の高い部分が、異種元素12aがドープされた部位である。
【0036】
CNT線材1では、異種元素12aとしては、ヨウ素(I)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)及びインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。ヨウ素(I)は、CNT線材1への均一なドープが容易であり、CNT線材1における存在位置の安定性に優れている特性を有している。テルル(Te)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)、インジウム(In)は、単体としての導電率が高いため、CNT線材1の全体としての導電率の向上に寄与する。異種元素12aは、単体、酸化物、炭化物、合金等の状態で存在している。
【0037】
異種元素12aがヨウ素(I)の場合には、ヨウ素(I)が、3つ以上のヨウ素(I)がCNT11aの長手方向に沿って並んで配置されているヨウ素結合体の状態、すなわち、ヨウ素の三量体以上の状態で存在していてもよい。ヨウ素結合体としては、例えば、3つのヨウ素(I)がCNT11aの長手方向に沿って並んで配置されているヨウ素の三量体が挙げられる。また、異種元素がテルル(Te)の場合には、テルル化合物などの状態で存在していてもよい。このうち、異種元素12aとしては、異種元素12aのCNT線材1へのドープが確実に均一化され、CNT線材1における存在位置の安定性に優れる点から、ヨウ素(I)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)が好ましい。なお、存在位置の安定性に優れるとは、具体的には、500℃以上の真空または不活性雰囲気下でも異種元素12aの脱離が起こりにくいことを指す。存在位置の安定性を調べるためには、異種元素12aをドープしたCNT線材1を500℃以上の真空または不活性雰囲気下に24時間以上放置したあと、CNT線材1の抵抗測定及び蛍光X線分析及び/又はSEM-EDX測定により、異種元素12aの脱離がどの程度生じているのかを調査する方法が挙げられる。
【0038】
また、スズ(Sn)、インジウム(In)を異種元素12aとしてドープした場合、CNT線材1を他の線材や端子、基板等の他の部材と接続する場合の導通の低下を抑制する効果が得られる。これは、スズ(Sn)、インジウム(In)がドープされる際、微粒子としてCNT線材1に付着するためである。他の線材や端子、基板等の他の部材とCNT線材1との接続には、一般にはんだが使用される。
【0039】
図2、4、5、6に示すように、CNT線材1では、複数のCNT11a、11a、・・・が束ねられて形成されたCNT集合体11に形成された複数のCNT11a、11a、・・・間の空隙部11Bに、複数の異種元素12a、12a、・・・が導入された構成を有している。CNT線材1では、複数のCNT11a、11a、・・の最外層間に複数の空隙部11B、11B、・・・が形成されており、この複数の空隙部11B、11B、・・・のそれぞれに、複数の異種元素12a、12a、・・・が配置される。空隙部11Bは、CNT集合体11の長手方向に沿って形成されており、空隙部11Bに配置された複数の異種元素12a、12a、・・・も、CNT集合体11の長手方向、すなわち、CNT11aの長手方向に沿って並んで配置されている。
【0040】
また、本発明のCNT線材1では、CNT11aの層構造の内部、より具体的には、空隙部であるCNT11aの最内層T1の内部11Cにも、さらに、複数の異種元素12a、12a、・・・が導入されている。CNT11aの最内層T1の内部11Cは、CNT集合体11の長手方向に沿って延在しており、CNT11aの最内層T1の内部11Cに配置された複数の異種元素12a、12a、・・・も、CNT集合体11の長手方向、すなわち、CNT11aの長手方向に沿って並んで配置されている。特に、
図6では、真円度の低い大きく歪んだCNT11aの最内層T1の内部11Cに、複数の異種元素12a、12a、・・・が、CNT11aの径方向において板状に導入されている。
【0041】
また、
図2、4に示すように、本発明のCNT線材1では、空隙部であるCNT11aの層構造の層間11D(図では、2層構造であるCNT11aの最内層T1と最外層T2との間の領域)にも、さらに、複数の異種元素12a、12a、・・・が導入されている。層間11Dは、CNT集合体11の長手方向に沿って延在しており、CNT11aの層間11Dに配置された複数の異種元素12a、12a、・・・も、CNT集合体11の長手方向、すなわち、CNT11aの長手方向に沿って並んで配置されている。
【0042】
CNT11aとCNT11aとの間の中空部分である空隙部11Bは絶縁部であり、絶縁部である空隙部11Bに異種元素12aが配置されていることで、CNT11aとCNT11aとの間の接触抵抗を低減させることができるので、さらに優れた導電性を得ることができる。特に、CNT11aはアスペクト比の大きい線状の構造を持ち、上記空隙部11BはCNT線材1の長手方向に平行して存在していることから、異種元素12aが長手方向にも配置されていることで、接触抵抗を低減することができる。また、CNT11aの層構造の内部、特に、CNT11aの最内層T1の内部11Cも絶縁部であり、絶縁部である内部11Cに異種元素12aが配置されていることで、CNT11a内部の抵抗を低減させることができる。また、CNT11aの層構造の層間11Dも絶縁部であり、絶縁部である層間11Dに異種元素12aが配置されていることで、CNT11a内部の抵抗を低減させることができる。
【0043】
上記から、CNT線材1では、CNT11aの空隙部である、CNT11aの最内層T1の内部11C、CNT11aの層構造の層間11D、及び/または複数のCNT11a、11a、・・の最外層で囲まれた空隙部11Bに、異種元素12aが導入されている。従って、CNT線材1では、CNT線材1全体において、導電性に寄与するキャリア密度が向上している。
【0044】
また、
図7に示すように、CNT線材1は、1つのCNT11aの最内層T1の内部11Cの2箇所以上に、異種元素12aが導入されているCNT11aを有していてもよい。
図7では、真円度の非常に低い、すなわち、非常に歪な径方向の形状を有するCNT11aの最内層T1の内部11Cに、2箇所に分かれて異種元素12aが導入されていているCNT11aを有している。言い換えれば、
図7では、1つのCNT11aにおいて最内層T1の二か所がCNT11aの層間距離に近い値まで近づくことで内部に生じた2箇所の最内層T1の内部11Cを有している。CNT11aの最内層T1の内部11Cの2箇所以上に異種元素12aが導入されているCNT11aを有していることにより、CNT線材1全体において、導電性に寄与するキャリア密度が向上する。また、1つのCNT11aに2箇所の最内層T1の内部11Cを有していることで導電キャリアが生じることからも、導電性に有利である。なお、
図7では、輝度の高い部分が、異種元素12aがドープされた部位である。
【0045】
次に、CNT線材1における異種元素12aのCNT11aの長手方向に関する配置について説明する。
【0046】
図2、4に示すように、複数のCNT11a、11a、・・・の最外層で形成される空隙部11Bには、異種元素12aが導入されており、異種元素12aは、CNT11aの長手方向に沿って並んで配置されて、第1の異種元素連続体12を形成している。複数の異種元素12a、12a、・・・が、例えば、2nm以上100nm以下の範囲の長さにわたって略直鎖状に一列に並んで、1つの第1の異種元素連続体12が形成されている。複数の異種元素12a、12a、・・・は、連続的に略直鎖状に一列に並んで、1つの第1の異種元素連続体12を形成している。
【0047】
また、
図5~7に示すように、第1の異種元素連続体12の存在は、複数のCNTの最外層で形成される空隙部における異種元素の輝度からも確認をすることができる。
【0048】
図2、4に示すように、CNT線材1では、CNT11aの周方向に沿って、1つまたは複数の第1の異種元素連続体12が備えられている。また、CNT集合体11の長手方向に沿って、1つまたは複数の第1の異種元素連続体12、12、・・・が並んで配置されている。
【0049】
CNT線材1では、複数のCNT11a、11a、・・・間に形成された1つの空隙部11Bに、1つまたは複数の第1の異種元素連続体12、12、・・・が、CNT11aの径方向に沿って配置されている。また、CNT線材1では、複数の第1の異種元素連続体12、12、・・・が、空隙部11Bに略充填された状態で配置されている。複数のCNT11a、11a、・・・間に形成された1つの空隙部11Bに配置されている第1の異種元素連続体12の個数は、1つの空隙部11Bのサイズや形状等により、適宜、選択可能であり、特に限定されない。
【0050】
第1の異種元素連続体12は、1つの空隙部11Bのサイズや形状等により、配される数が変化する。本発明のCNT線材1では、例えば、1個以上の第1の異種元素連続体12を配するために空隙部11Bのサイズを0.05 nm2以上と定めることが可能であり、2個以上の第1の異種元素連続体12を配するために空隙部11Bのサイズを0.1 nm2以上と定めることが可能であり、25個以下の第1の異種元素連続体12を配するために空隙部11Bのサイズを10 nm2以下と定めることが可能である。適切な空隙部11Bのサイズを選択することにより、異種元素12aの存在安定性が向上する。
【0051】
また、
図2、4に示すように、CNT11aの層構造の内部には、異種元素12aが導入されており、異種元素12aは、CNT11aの長手方向に沿って並んで配置されて、第2の異種元素連続体22を形成している。より具体的には、CNT11aの最内層T1の内部11Cに、異種元素12aが導入されている。また、CNT11aの層間11D(図では、2層構造であるCNT11aの最内層T1と最外層T2との間の領域)にも、異種元素12aが導入されている。複数の異種元素12a、12a、・・・が、例えば、2nm以上100nm以下の範囲の長さにわたって略直鎖状に一列に並んで、1つの第2の異種元素連続体22が形成されている。複数の異種元素12a、12a、・・・は、連続的に略直鎖状に一列に並んで、1つの第2の異種元素連続体22を形成している。
【0052】
また、
図5~7に示すように、第2の異種元素連続体22を含め、異種元素12aの存在は、透過電子顕微鏡像において、試料から透過した電子には、試料との相互作用により、結晶性や構成元素により得られた像にコントラストが発生することから判断できる。電子顕微鏡像(HAADF―STEM)においてその輝度の強弱は原子番号(Z)に比例する。CNT11aを構成する炭素は元素周期表でも6番目の原子であれ、それよりも輝度の低い原子は、水素~ホウ素までとなり、逆に炭素よりも輝度の高い元素は、窒素以上の原子となる。異種元素12aは炭素よりも原子番号が大きいことから、HAADF―STEM像では輝度が高くなる。これを踏まえてHAADF―STEM像を確認すると、CNT11a間、CNT11a内に輝度の高い構造体が確認され、これは必然的にドープされた異種元素12aであると断定可能である。
図5では、歪んだカーボンナノチューブの内部に結晶性を持った異種元素が内包されており、カーボンナノチューブの内部の導電パスとして機能する。また、
図5、6のカーボンナノチューブ同士の隙間に断面として異種元素の原子三個もしくは一個で構成された構造体は、カーボンナノチューブ間の導電パスとして機能する。
図6の断面像で真円度が低いカーボンナノチューブに内包された板状の異種元素で構成された構造体、もしくは
図7の真円度が低いカーボンナノチューブの両端部に内包された板状の異種元素で構成された構造体は、導電パスとしての機能とその密着性からキャリアドープによるカーボンナノチューブ自体の導電性向上の機能を兼ね備えている。
【0053】
図2、4に示すように、CNT線材1では、CNT集合体11の長手方向に沿って、1つまたは複数の第2の異種元素連続体22、22、・・・が並んで配置されている。なお、
図2では、図面における説明の便宜上、CNT11aの最内層T1の内部11C及びCNT11aの層間11Dには、いずれも、1つの第2の異種元素連続体22が形成されている態様としている。
【0054】
CNT11aの層構造の内部に、複数の第2の異種元素連続体22、22、・・・が、CNT11aの径方向に沿って配置されている。CNT線材1では、複数の第2の異種元素連続体22、22、・・・が、CNT11aの最内層T1の内部11Cに略充填された状態で配置されている。
【0055】
CNT11aの層構造の最内層T1の内部11Cにおける空間が内径1.0nm以上4.0nm以下の場合には、
図4に示すように、複数の第2の異種元素連続体22、22、・・・が、CNT11aの径方向に沿って配置されている。また、CNT11aの層構造の最内層T1の内部11Cにおける空間が内径1.0nm未満の場合には、1つのまたは複数の第2の異種元素連続体22が径方向に配置される。
【0056】
第1の異種元素連続体12及び/または第2の異種元素連続体22が形成されていることにより、導電性に寄与するキャリアをさらに増大させてCNT11aの長手方向の導電性がさらに向上し、また、電気抵抗増大の一因であるCNT11aの格子振動をさらに抑制できるので、CNT線材1は、さらに優れた導電性を得ることができる。
【0057】
異種元素12aの含有量は、特に限定されないが、その下限値は、温度上昇によるCNT11aの格子振動が異種元素12aの作用によって抑制され、また、CNT11aの空隙部に異種元素12aが導入されて、導電性が確実に向上する点から、CNT線材1に含まれているCNT100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、2.0質量部がより好ましく、3.0質量部が特に好ましい。一方で、異種元素12aの含有量の上限値は、異種元素12aをドープすることによるCNT11aの電子の散乱に起因したCNT11a自体の導電性の低下を確実に防止できる点で、CNT線材1に含まれているCNT100質量部に対して、20質量部が好ましく、17質量部がより好ましく、15質量部が特に好ましい。
【0058】
また、CNT線材1の径方向断面の拡大画像である
図8、全体画像である
図9に示すように、CNT線材1では、CNT11aの最内層の円相当直径が1.5nm以上であり、CNT11aの最内層の対向する面(
図8の両矢印部)が0.400nm以下である部位を有するCNT11aを有していてもよい。上記態様では、CNT11aの真円度が非常に低く、CNT11aが潰れてCNT11aの最内層の対向する面が近接していることで、CNT11aがさらに高密度に充填され、また、CNT11a内における導電性が向上するので、CNT線材1は、さらに優れた導電性を確実に得ることができる。
【0059】
次に、CNT11aの構造及び特性について説明する。CNT集合体11を構成する2層構造のCNT11aは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体(最内層T1、最外層T2)が略同軸で配された3次元網目構造体となっており、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
【0060】
CNT11aの性質は、筒状体のカイラリティ(chirality)に依存する。筒状体のカイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型、及びそれ以外のカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、カイラル型は半導体性、ジグザグ型はその中間の挙動を示す。CNT11aの導電性は、いずれのカイラリティを有するかによって大きく異なり、CNT集合体11の導電性を向上させるためには、金属性の挙動を示すアームチェア型のCNT11aの割合を増大させることが重要とされてきた。一方で、半導体性を有するカイラル型のCNT11aは、電子供与性または電子受容性を有する異種元素12aがドープされることにより、金属的挙動を示す。また、一般的な金属では、異種元素12aがドープされることによって、金属内部での伝導電子の散乱が起こって導電性が低下するが、これと同様に、金属性のCNT11aに異種元素12aがドープされた場合には、導電性の低下を引き起こす。
【0061】
このように、金属性のCNT11a及び半導体性のCNT11aへの異種元素12aのドープ効果は、導電性の観点からはトレードオフの関係にあることから、理論的には金属性のCNT11aと半導体性のCNT11aとを別個に作製し、半導体性のCNT11aにのみドーピング処理を施した後、金属性のCNT11aと半導体性のCNT11aを組み合わせることが望ましい。しかし、金属性のCNTCNT11aと半導体性のCNT11aとを選択的に作り分けることはきわめて煩雑であることから、金属性のCNT11aと半導体性のCNT11aが混在した状態で作製される。このため、金属性のCNT11aと半導体性のCNT11aの混合物からなるCNT線材1の導電性を向上させるには、異種元素12aによるドーピング処理が効果的となるCNT11aの構造を選択することが好ましい。
【0062】
複数のCNT11a、11a、・・・からなるCNT線材1において、CNT11aの導電性が向上することから、CNT線材1がさらに優れた導電性を確実に得ることができる点からは、CNT線材1を構成している全てのCNT11aのうち、2層構造のCNT11aと3層構造のCNT11aの合計が75個数%以上であることが好ましい。
【0063】
2層構造または3層構造のような層数が少ないCNT11aは、4層構造以上の多層構造のCNT11aよりも比較的導電性が高い。また、層数が少ないCNT11aは、CNT線材1において、真円度の低い歪な径方向の形状となりやすい。
【0064】
また、異種元素12aは、複数のCNT11a、11a、・・・で形成されるCNT11a間の空隙部11B及びCNT11aの最内層T1の内部11Cに導入される。また、多層構造のCNT11aでは、最内層T1の内部11Cだけではなく、層間11Dにも異種元素12aが導入されることがある。特に、2層構造または3層構造のような層数が少ないCNT11aでは、層間11Dの空隙が比較的大きく、層間11Dの空隙にも異種元素12aが導入されやすい。このように、異種元素12aによるドーピング効果は、CNT11aの内部および外部に異種元素12aが導入されることで発現する。以上のような理由により、多層構造のCNT11aに、異種元素12aによるドーピング処理を施した際には、多層構造のCNT11aの層間11Dにおける導電性も向上する2層構造または3層構造を有するCNT11aでのドーピング効果が最も高い。また、単層構造のCNT11aは、ドーピング工程の加熱処理において、微量に残存した酸素により酸化され、分解されてしまうことがある。従って、本発明のCNT線材1では、2層構造または3層構造を有するCNT11aの個数に着目する。また、2層構造または3層構造のCNT11aの個数の和の比率が75%未満であると、単層構造または4層以上の多層構造を有するCNT11aの比率が高くなるので、CNT線材1及びCNT集合体11全体として異種元素12aによるドーピング効果が小さくなり、高導電率が得にくくなる。よって、2層構造または3層構造のCNT11aの個数の和の比率を75個数%以上の値とする。このように、2層構造または3層構造のCNT11aの個数の和の比率を75個数%以上とすることにより、CNT線材1自体の導電性が向上するとともに、CNT11aの層構造の内部にも異種元素12aが導入されやすくなることから、さらに優れた導電性を得ることができる。また、製造上の観点からは、2層構造のCNT11aと3層構造のCNT11aの個数の和の比率の上限は、99個数%が好ましく、95個数%がより好ましく、90個数%がさらに好ましく、85個数%が特に好ましい。
【0065】
一方で、CNT線材1を構成している全てのCNT11aのうち、4層以上の層構造を有するCNT11aが75個数%以上であることにより、CNT11aの耐熱性が向上することから、CNT線材1の耐熱性が向上する。また、製造上の観点からは、4層以上の構造のCNT11aの比率の上限は、99個数%が好ましく、95個数%がより好ましく、90個数%がさらに好ましく、85個数%が特に好ましい。
【0066】
CNT線材1を構成しているCNT11aの円相当直径は、特に限定されないが、その下限値は、真円度の低い歪な径方向の形状となるCNT11aを所定割合得て、CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度が確実に平均0.80以下となる点から、平均5.0nmが好ましく、6.0nmが特に好ましい。一方で、CNT線材1を構成しているCNT11aの円相当直径の上限値は、CNT11aが確実に高密度充填される点から、12.0nmが好ましく、10.0nmが特に好ましい。尚、本明細書における円相当直径とは、CNT11aの断面に対して、100点以上のポイントでCNT11aの断面積を算出し、断面積=2×円周率×CNT11aの半径の二乗と仮定して、半径を算出した後、その二倍の値とする。
【0067】
次に、本発明のCNT線材の製造方法について説明する。本発明の実施形態に係るCNT線材1は、例えば、以下の方法で製造することができる。先ず、浮遊触媒気相成長(CCVD)法、基板法等により、炭素源に触媒及び反応促進剤を含む混合物を供給して、複数のCNT11aを生成する。このとき、炭素源には六員環を有する飽和炭化水素、触媒には鉄などを含有する金属触媒、反応促進剤には硫黄化合物をそれぞれ用いることができる。また、キャリアガス流量の増加に伴ってSWNTの割合が減少することから、原料組成及び噴霧条件を調整して、2層構造または3層構造を有するCNT11aの比率を高めることができる。
【0068】
また、CNT11aの直径(最外層の外径)が所定値以上、例えば、5.0nm以上となるように調節するには、金属触媒の大きさを調整する。このため、原料は、噴霧によりミスト粒径が20μm前後となるよう反応炉に供給を行う。その後、複数のCNT11a、11a、・・・が束になったCNT集合体11に酸処理を施すことで残留した金属触媒を除去する。次いで、複数のCNT集合体11を紡糸して、CNT線材1を作製する。CNT線材1は、例えば、乾式紡糸(特許第5819888号、特許第5990202号、特許第5350635号)、湿式紡糸(特許第5135620号、特許第5131571号、特許第5288359号)、液晶紡糸(特表2014-530964)等の紡糸法で作製することができる。
【0069】
CNT11aの層数、CNT11aの直径、紡糸法、紡糸条件等を調整することで、CNT線材1を構成しているCNT11aの真円度を平均0.80以下とする。
【0070】
CNT集合体11に異種元素12aを導入する場合には、酸処理後のCNT集合体11に異種元素12aのドーピング処理を施し、CNT集合体11の空隙部11B、CNT11aの最内層T1の内部11C及び/またはCNT11aの層構造の層間11Dに異種元素12aがドープされたCNT集合体11を作製する。また、CNT線材1を作製後、CNT線材1に異種元素12aのドーピング処理を施してもよい。CNT集合体11またはCNT線材1に異種元素12aをドープする方法としては、減圧処理をした容器にCNT集合体11またはCNT線材1と異種元素12aを投入後、容器を加熱して蒸発させた異種元素12aをCNT集合体11またはCNT線材1に施与する気相法、異種元素12aを溶解させた溶液にCNT集合体11またはCNT線材1を浸漬させる液相法が挙げられる。このうち、CNT集合体11の空隙部11BとCNT11aの最内層T1の内部11Cに異種元素12aが確実にドープされる点から、気相法が好ましい。
【0071】
ドープする前の異種元素12aの状態は限定されず、ドープ方法によって適宜選択できる。気相法を用いる場合は、例えば、気化しやすい単体(金属)として異種元素12aを準備する。液相法を用いる場合は、使用する溶媒に溶解しやすい化合物(例えば、酸化物、硫酸化物等)として異種元素12aを選択する。
【0072】
なお、本発明のCNT線材1の外周には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等からなる絶縁被覆層(図示せず)を配してもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド、フェノール樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0073】
次に、本発明のCNT線材の他の実施形態について説明する。上記CNT線材1の実施形態では、1層以上の層構造を有するCNT11aの複数で構成されるCNT集合体11の複数からなるCNT線材1を用いたが、これに代えて、CNT11aの複数で構成されるCNT集合体11の単数からなるCNT線材1を用いてもよい。さらに、CNT線材1には、ヨウ素(I)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)及びインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも1種の元素以外の他の元素をドープすることもできる。
【実施例0074】
次に、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例1
浮遊触媒気相成長(CCVD)法にて、CNT線材を構成しているCNTの真円度が平均0.59、真円度0.50以下であるCNTが52個数%含まれているCNT線材を調製した。次に、調製したCNT線材を石英管の長手方向中央部に、異種元素としてヨウ素(I)粒子を石英管の長手方向の一端に入れ、石英管内部を脱気処理しながらCNT線材を加熱後、石英管を封止した。ヨウ素(I)粒子が重力方向下方となるように加熱炉に石英管を設置し、100℃/時間の速度で700℃まで昇温し、700℃にて48時間保持した。その後、石英管からCNT線材を取り出し、酸洗浄して、ヨウ素(I)でドープしたCNT線材を得た。
【0076】
比較例1
浮遊触媒気相成長(CCVD)法にて、CNT線材を構成しているCNTの真円度が平均0.99であるCNT線材を調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のヨウ素(I)でドープしたCNT線材を得た。
【0077】
実施例2
浮遊触媒気相成長(CCVD)法にて、ヨウ素(I)をドープしなかった以外は、実施例1と同様にしてCNT線材を得た。
【0078】
比較例2
浮遊触媒気相成長(CCVD)法にて、CNT線材を構成しているCNTの真円度が平均0.99であるCNT線材を調製した以外は、実施例2と同様にしてヨウ素(I)をドープしなかったCNT線材を得た。
【0079】
なお、
図10は、実施例1のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図11は、実施例2のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図12は、比較例1のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。
図13は、比較例2のカーボンナノチューブ線材の径方向の断面における、走査透過電子顕微鏡の画像である。なお、
図10~13は、いずれも同じ倍率の画像である。
【0080】
実施例の評価項目は以下の通りである。
【0081】
(1)抵抗率変化
ヨウ素(I)でドープしたCNT線材及びドープ工程を行わなかったCNT線材の抵抗率を測定した。測定は四端子法にて抵抗を測定した後、マイクロスコープにより抵抗を測定した箇所の線材の直径を測定し、端子間距離とその直径より、ヨウ素(I)でドープしたCNT線材及びドープ工程を行わなかったCNT線材の抵抗率を算出した。ドープ工程を行わなかったCNT線材の抵抗率に対するヨウ素(I)でドープしたCNT線材の抵抗率を抵抗率変化(%)として算出した。また、抵抗率変化は以下の基準で評価した。
○:抵抗率変化が-30%以下である
△:抵抗率変化が-30%よりも大きいが-20%よりも低い
×:抵抗変化率が-20%以上である
【0082】
CNT線材を構成しているCNTの真円度が平均0.59であり、ヨウ素(I)をドープした実施例1では、抵抗率変化が○評価であり、ヨウ素(I)ドープによるさらなる低抵抗化を実現して導電性をさらに向上させることができた。一方で、CNT線材を構成しているCNTの真円度が平均0.99である比較例1では、抵抗率変化が×評価であり、ヨウ素(I)ドープしてもさらなる低抵抗化を実現できず導電性をさらに向上させることはできなかった。
本発明のカーボンナノチューブ線材は、カーボンナノチューブが高密度に充填されていることで、さらなる低抵抗化を実現して導電性をさらに向上させることができるので、例えば、電線の分野で、特に利用価値が高い。