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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164125
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】空気分離装置および空気分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20231102BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231102BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20231102BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20231102BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20231102BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20231102BHJP
【ＦＩ】
B01D53/22
B01D69/12
B01D69/10
B01D63/06
B01D71/02 500
B01D69/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2022075473
(22)【出願日】2022-04-28
【公序良俗違反の表示】
（特許庁注：以下のものは登録商標）
１．パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金指 正言
(72)【発明者】
【氏名】都留 稔了
(72)【発明者】
【氏名】長澤 寛規
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 一俊
【テーマコード（参考）】
4D006
【Ｆターム（参考）】
4D006GA41
4D006HA21
4D006JA66Z
4D006KA01
4D006KA72
4D006KB18
4D006MA02
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB10
4D006MC03X
4D006NA46
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB70
(57)【要約】
【課題】空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度である低温環境（－１９６℃～０℃）で膜分離を用いる空気分離装置および空気分離方法を提供する。
【解決手段】内側の空間を、外部からの侵入熱を遮断するためのコールドボックス（恒温槽）２０と、前記空間に位置する膜モジュール１とを備える、空気分離装置１０１を選択する。
【選択図】図５
【解決手段】内側の空間を、外部からの侵入熱を遮断するためのコールドボックス（恒温槽）２０と、前記空間に位置する膜モジュール１とを備える、空気分離装置１０１を選択する。
【選択図】図５
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の空間を、外部からの侵入熱を遮断するための恒温槽と、
前記空間に位置する膜モジュールと、を備える、空気分離装置。
前記空間に位置する膜モジュールと、を備える、空気分離装置。
【請求項2】
前記膜モジュールが、多孔質基材からなる支持層上に、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する分離膜を有する、請求項１に記載の空気分離装置。
【請求項3】
内側の空間に前記分離膜を有する分離部が位置する膜モジュール本体と、
空気系成分を含む原料を前記膜モジュール本体に導入する原料導入部と、
前記分離部を透過する成分を前記モジュール本体から導出する透過成分導出部と、
前記分離部を透過しない成分を前記モジュール本体から導出する非透過成分導出部と、をさらに備える、請求項２に記載の空気分離装置。
空気系成分を含む原料を前記膜モジュール本体に導入する原料導入部と、
前記分離部を透過する成分を前記モジュール本体から導出する透過成分導出部と、
前記分離部を透過しない成分を前記モジュール本体から導出する非透過成分導出部と、をさらに備える、請求項２に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記支持層が、中空筒状である、請求項２に記載の空気分離装置。
【請求項5】
前記分離膜が、疎水性材料からなる層を有する、請求項１又は２に記載の空気分離装置。
【請求項6】
前記疎水性材料が、シロキサン結合を有する無機材料である、請求項５に記載の空気分離装置。
【請求項7】
前記分離膜が、活性分離層と、前記疎水性材料からなる中間層との積層膜である、請求項１又は２に記載の空気分離装置。
【請求項8】
前記活性分離層が、シロキサン結合の架橋構造を有する無機材料からなる層である、請求項７に記載の空気分離装置。
【請求項9】
空気系成分を含む混合ガス中に含まれる水分の露点が、－５０℃以下である、請求項１又は２に記載の空気分離装置。
【請求項10】
空気系成分を含む混合ガスを露点付近の温度に冷却する主熱交換器をさらに備え、
前記主熱交換器の二次側に前記膜モジュールが位置する、請求項１又は２に記載の空気分離装置。
前記主熱交換器の二次側に前記膜モジュールが位置する、請求項１又は２に記載の空気分離装置。
【請求項11】
１以上の蒸留塔をさらに備える、請求項１又は２に記載の空気分離装置。
【請求項12】
空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度において、分離膜により、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する、空気分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離装置および空気分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気に含まれる主要３成分（窒素、酸素、アルゴン）の分離には、主に吸着分離、深冷分離および膜分離が採用されている。
【0003】
吸着分離は、物理的又は化学的な作用を利用し、吸着材のサイトに特定の成分を取り込むことで、他成分との分離を行う。例えば、吸着材としてモレキュラーシーブを用いる窒素／酸素系では、窒素が強い吸着性を示すため、他成分である酸素が製品となる。また、吸着操作及び脱着操作を行うには、圧力または温度をスイングする必要があるが、いずれの操作も常温以上で行われる。特に、低温下では、脱着操作が困難となる。
【0004】
深冷分離は、気液平衡を利用した蒸留により、空気系成分を分離する。深冷分離では、気液が共存する条件で運転する必要があるため、運転温度はその露点付近（－１９６℃～－１００℃）の近傍となり、極めて低温下での実施となる。また、深冷分離では、空気を液化して分離するためのエネルギーを付与するため、複数の圧縮・膨張行程が必要となり、蒸留のための棚段塔および充填塔が必要となる。さらには、気液平衡の制約から、アルゴン／酸素系は分離しづらく、多くの蒸留工程が必要となる。
【0005】
膜分離は、膜細孔の篩を利用して、混合物を分離する。このため、比揮発度などの気液平衡の制約を受けない。膜分離では、混合物が細孔内障壁を通過するには、一般的に分子の運動エネルギーが高い方が有利であるため、非常に高温（例えば、５００℃～８００℃）での実施となる。
【0006】
特許文献１には、蒸留と膜分離とを組み合わせた分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第２０１０／００７７７９６号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、膜分離は、分離が同相（例えば、気相と気相）で行われる場合、分子の拡散性の違いを利用する機構である点、及び細孔径分布を有する点から、例えば窒素／酸素系などで商業運転に適用可能な分離膜は得られていない。
また、特許文献１に開示された分離装置では、膜分離として有機高分子膜からなる分離膜を用いるため、－９０℃程度の操作温度が限界であった。したがって、空気系成分を含む混合ガスの露点付近（－１９６℃～－１００℃）以下の低温環境で、膜分離を用いた空気分離装置を実現することは困難であった。
また、特許文献１に開示された分離装置では、膜分離として有機高分子膜からなる分離膜を用いるため、－９０℃程度の操作温度が限界であった。したがって、空気系成分を含む混合ガスの露点付近（－１９６℃～－１００℃）以下の低温環境で、膜分離を用いた空気分離装置を実現することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度である低温環境（－１９６℃～－１００℃）で膜分離を用いる空気分離装置および空気分離方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
［１］ 内側の空間を、外部からの侵入熱を遮断するための恒温槽と、
前記空間に位置する膜モジュールと、を備える、空気分離装置。
［２］ 前記膜モジュールが、多孔質基材からなる支持層上に、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する分離膜を有する、［１］に記載の空気分離装置。
［３］ 内側の空間に前記分離膜を有する分離部が位置する膜モジュール本体と、
空気系成分を含む原料を前記膜モジュール本体に導入する原料導入部と、
前記分離部を透過する成分を前記モジュール本体から導出する透過成分導出部と、
前記分離部を透過しない成分を前記モジュール本体から導出する非透過成分導出部と、をさらに備える、［２］に記載の空気分離装置。
［４］ 前記支持層が、中空筒状である、［２］又は［３］に記載の空気分離装置。
［５］ 前記分離膜が、疎水性材料からなる層を有する、［２］乃至［４］のいずれかに記載の空気分離装置。
［６］ 前記疎水性材料が、シロキサン結合を有する無機材料である、［５］に記載の空気分離装置。
［７］ 前記分離膜が、活性分離層と、前記疎水性材料からなる中間層との積層膜である、［５］又は［６］に記載の空気分離装置。
［８］ 前記活性分離層が、シロキサン結合の架橋構造を有する無機材料からなる層である、［７］に記載の空気分離装置。
［９］ 空気系成分を含む混合ガス中に含まれる水分の露点が、－５０℃以下である、［１］乃至［８］のいずれかに記載の空気分離装置。
［１０］ 空気系成分を含む混合ガスを露点付近の温度に冷却する主熱交換器をさらに備え、
前記主熱交換器の二次側に前記膜モジュールが位置する、［１］乃至［９］のいずれかに記載の空気分離装置。
［１１］ １以上の蒸留塔をさらに備える、［１］乃至［１０］のいずれかに記載の空気分離装置。
［１２］ 空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度において、分離膜により、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する、空気分離方法。
［１］ 内側の空間を、外部からの侵入熱を遮断するための恒温槽と、
前記空間に位置する膜モジュールと、を備える、空気分離装置。
［２］ 前記膜モジュールが、多孔質基材からなる支持層上に、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する分離膜を有する、［１］に記載の空気分離装置。
［３］ 内側の空間に前記分離膜を有する分離部が位置する膜モジュール本体と、
空気系成分を含む原料を前記膜モジュール本体に導入する原料導入部と、
前記分離部を透過する成分を前記モジュール本体から導出する透過成分導出部と、
前記分離部を透過しない成分を前記モジュール本体から導出する非透過成分導出部と、をさらに備える、［２］に記載の空気分離装置。
［４］ 前記支持層が、中空筒状である、［２］又は［３］に記載の空気分離装置。
［５］ 前記分離膜が、疎水性材料からなる層を有する、［２］乃至［４］のいずれかに記載の空気分離装置。
［６］ 前記疎水性材料が、シロキサン結合を有する無機材料である、［５］に記載の空気分離装置。
［７］ 前記分離膜が、活性分離層と、前記疎水性材料からなる中間層との積層膜である、［５］又は［６］に記載の空気分離装置。
［８］ 前記活性分離層が、シロキサン結合の架橋構造を有する無機材料からなる層である、［７］に記載の空気分離装置。
［９］ 空気系成分を含む混合ガス中に含まれる水分の露点が、－５０℃以下である、［１］乃至［８］のいずれかに記載の空気分離装置。
［１０］ 空気系成分を含む混合ガスを露点付近の温度に冷却する主熱交換器をさらに備え、
前記主熱交換器の二次側に前記膜モジュールが位置する、［１］乃至［９］のいずれかに記載の空気分離装置。
［１１］ １以上の蒸留塔をさらに備える、［１］乃至［１０］のいずれかに記載の空気分離装置。
［１２］ 空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度において、分離膜により、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する、空気分離方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気分離装置および空気分離方法は、空気系成分を含む混合ガスの温度である低温環境（－１９６℃～－１００℃）で膜分離を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュールに適用可能な分離ユニットの構成の一例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な分離膜を示す拡大断面写真である。
【図4】シロキサン結合の架橋構造を有する無機材料の一例を示す模式図であり、（ａ）は橋架け型オルガノシリカの構造図、（ｂ）は側鎖型オルガノシリカの構造図をそれぞれ示す。
【図5】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の一例を示す系統図である。
【図6】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
【図7】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
【図8】本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
【図9】実施例の分離ユニット（分離膜）における、各種ガスの透過率の温度依存性を示す図である。
【図10】比較例の分離ユニット（分離膜）における、各種ガスの透過率の温度依存性を示す図である。
【図11】実施例の分離ユニット（分離膜）における、各種ガスの透過率の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の空気分離装置および空気分離方法について、これに用いる分離膜及び膜モジュールと併せて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0014】
また、本明細書で数値範囲を示す際に「～」を用いた場合、「～」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む。
【0015】
＜膜モジュール＞
先ず、本発明の一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュールの構成について、説明する。図１は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
図１に示すように、膜モジュール１は、膜モジュール本体２、分離ユニット３、原料導入部４、透過成分導出部５、及び非透過成分導出部６を備えて、概略構成されている。
先ず、本発明の一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュールの構成について、説明する。図１は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
図１に示すように、膜モジュール１は、膜モジュール本体２、分離ユニット３、原料導入部４、透過成分導出部５、及び非透過成分導出部６を備えて、概略構成されている。
【0016】
膜モジュール本体２は、内側に密封された空間２Ａを有する筒状の容器である。膜モジュール本体２には、一方の端部に原料導入部４が、他方の端部に透過成分導出部５が、それぞれ設けられている。また、膜モジュール本体２には、筒状の胴部に非透過成分導出部６が設けられている。さらに、膜モジュール本体２の内側の空間２Ａには、分離ユニット３が位置する。
【0017】
図２は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な膜モジュール１の分離ユニット３の構成の一例を示す断面図である。
図１及び図２に示すように、分離ユニット３は、膜モジュール本体２の軸方向に延在しており、原料導入部４側の端部が閉塞し、透過成分導出部５側の端部が開口する中空筒状の部材である。分離ユニット３は、分離部３Ａと支持部３Ｂとを有する。
図１及び図２に示すように、分離ユニット３は、膜モジュール本体２の軸方向に延在しており、原料導入部４側の端部が閉塞し、透過成分導出部５側の端部が開口する中空筒状の部材である。分離ユニット３は、分離部３Ａと支持部３Ｂとを有する。
【0018】
分離部３Ａは、分離ユニット３において原料導入部４側の端部寄りに位置する。また、分離部３Ａは、支持層７上に、空気系成分を分離する分離膜１０を有する。
【0019】
支持層７は、分離膜１０を担持する中空筒状の部材である。分離膜１０を支持層７上に担持させることにより、分離部３Ａの機械的強度を高めることができる。
【0020】
支持層７の材質は、原料となる空気系成分を透過する多孔質基材であれば、特に限定されない。
多孔質基材は、無機多孔体、有機多孔体いずれであってもよく、工業的な使用に耐え得る強度を有することが好ましい。また、分離膜１０の透過性を高めるため、多孔質基材の細孔径及び空隙率は大きい方が好ましい。多孔質基材の平均細孔径は、０．０５μｍ～１０μｍ程度が好ましい。細孔径が大きすぎると分離膜の細孔径との差が大きくなりすぎ、細孔径が小さすぎると透過性が低下する。より好ましくは、０．１μｍ～５μｍであり、０．５μｍ～３μｍが特に好ましい。
多孔質基材は、無機多孔体、有機多孔体いずれであってもよく、工業的な使用に耐え得る強度を有することが好ましい。また、分離膜１０の透過性を高めるため、多孔質基材の細孔径及び空隙率は大きい方が好ましい。多孔質基材の平均細孔径は、０．０５μｍ～１０μｍ程度が好ましい。細孔径が大きすぎると分離膜の細孔径との差が大きくなりすぎ、細孔径が小さすぎると透過性が低下する。より好ましくは、０．１μｍ～５μｍであり、０．５μｍ～３μｍが特に好ましい。
【0021】
多孔質基材として、例えば、アルミナ（α－Ａｌ２Ｏ３（α－アルミナ）、γ－Ａｌ２Ｏ３（γ－アルミナ））、ムライト、ジルコニア、チタニア、或いはこれらの複合物からなるセラミクスが挙げられる。これらの中でも、安価で入手が容易であり、化学的耐性、耐熱性、強度に優れるα－アルミナを主成分とするセラミクスが好ましい。
【0022】
支持層７の形状は、特に限定されないが、円筒状や板状であることが好ましい。より具体的には、支持層７としては、多孔アルミナ管（平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）が挙げられる。
【0023】
支持部３Ｂは、中空筒状の部材である。支持部３Ｂの内側の空間は、分離部３Ａを構成する支持層７の内側の空間とあわせて、分離部３Ａを透過する成分（透過ガス）の流路となる。
【0024】
支持部３Ｂの材質は、原料となる空気系成分を透過しないものであれば、特に限定されない。このような材質としては、無孔アルミナ管やパイレックスガラス管等が挙げられる。これらの中でも、空気分離装置の操作圧力（０．５ＭＰａ）での耐圧強度、及び極低温下での使用を考慮すると、無孔アルミナ管を用いることが好ましい。
【0025】
分離ユニット３は、分離部３Ａと支持部３Ｂとが中間材（図示略）を挟んで相互に固定される。中間材の材質は、分離部（支持層７）３Ａと支持部３Ｂとの間の熱膨張係数の差を緩和させるものであれば、特に限定されない。このような材質としては、例えばガラスフリットが挙げられる。
【0026】
分離ユニット３の形状は、内側に筒状空間を有するものであれば、特に限定されるものではなく、分離膜１０の面積や用途に応じて適宜選択することができる。分離ユニット３の形状としては、円柱状、四角柱状等が挙げられる。
【0027】
図１に示すように、原料導入部４は、膜モジュール本体２の一方の端部に位置する。原料導入部４は、膜モジュール本体２の内側の空間２Ａに、空気系成分を含む原料を導入するガス成分導入口である。
【0028】
原料は、空気の３大成分である窒素、酸素、アルゴンのうち、いずれか１つ以上を含むとともに、全体として２以上の成分を含む混合ガス、又は空気そのものである。空気系成分以外のガス成分としては、二酸化炭素、ネオン、水素、ヘリウム、クリプトン、キセノンなどが挙げられる。なお、原料が空気系成分を含む混合ガスである場合、原料中の各成分の比率は、特に限定されない。また、膜モジュール１は、空気分離装置の温度範囲（－１９６℃～０℃）の操作条件で用いるため、原料となる混合ガスは、上記温度範囲において凝固する成分、例えば、水、二酸化炭素を含まないことが好ましい。特に、分離対象である混合ガス中の水分量は、その露点が－５０℃以下であればよく、－７０℃以下が好ましく、－１００℃以下がより好ましい。
【0029】
透過成分導出部５は、膜モジュール本体２の他方の端部に位置する。透過成分導出部５は、分離ユニット３の分離部３Ａ（すなわち、分離膜１０）を透過する成分（透過ガス）を膜モジュール本体２から導出するガス成分導出口である。
【0030】
透過成分導出部５は、分離ユニット３の開口端と密封状態で接続されており、分離ユニット３を構成する支持部３の内側の空間と連通されている。これにより、分離ユニット３の分離部３Ａを透過する成分（透過ガス）を透過成分導出部５から膜モジュール本体２の外側に導出できる。
【0031】
非透過成分導出部６は、膜モジュール本体２の胴部に位置する。非透過成分導出部６は、分離ユニット３の分離部３Ａ（すなわち、分離膜１０）を透過しない成分（非透過ガス）を膜モジュール本体２の内側の空間２Ａから導出するガス成分導出口である。
【0032】
膜モジュール１は、空気分離装置の温度範囲（－１９６℃～０℃）の操作条件において、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する。
すなわち、原料となる空気、又は空気系成分を含む混合ガスは、事前に上記温度範囲に冷却される。また、膜モジュール１は、空気分離装置の運転中、外部からの侵入熱を遮断するための恒温槽（コールドボックス）の内側に配置され、原料ガスと同程度の温度に維持される。
すなわち、原料となる空気、又は空気系成分を含む混合ガスは、事前に上記温度範囲に冷却される。また、膜モジュール１は、空気分離装置の運転中、外部からの侵入熱を遮断するための恒温槽（コールドボックス）の内側に配置され、原料ガスと同程度の温度に維持される。
【0033】
＜分離膜＞
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な分離膜の構成について、上述した膜モジュール１に適用した場合を一例として説明する。図３は、本発明を適用した一実施形態である分離膜１０を示す拡大断面写真である。
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置に適用可能な分離膜の構成について、上述した膜モジュール１に適用した場合を一例として説明する。図３は、本発明を適用した一実施形態である分離膜１０を示す拡大断面写真である。
【0034】
図３に示すように、本実施形態の分離膜１０は、支持層７上に担持された中間層８と、活性分離層９との積層膜である。
【0035】
中間層８は、支持層７上に位置し、活性分離層９を担持する層である。支持層７と活性分離層９との間に中間層８を設けることにより、隣接する層間の平均細孔径の差を小さくすることができる。この場合、中間層８は、支持層７の平均細孔径より小さく、活性分離層９の平均細孔径より大きい平均細孔径を有する。
【0036】
中間層８は、疎水性材料からなる層である。
疎水性材料としては、例えば、シロキサン結合（－Ｓｉ－Ｏ－Ｓｉ－）を有する無機材料、炭素から構成される炭素材料などが挙げられる。これらの中でも、耐低温特性の観点から、シロキサン結合を有する無機材料を用いることが好ましい。
疎水性材料としては、例えば、シロキサン結合（－Ｓｉ－Ｏ－Ｓｉ－）を有する無機材料、炭素から構成される炭素材料などが挙げられる。これらの中でも、耐低温特性の観点から、シロキサン結合を有する無機材料を用いることが好ましい。
【0037】
ここで、中間層８として親水性材料を使用した場合、不活性ガスによる高温焼成を実施しても、膜細孔内には除去しきれない水分が残存する。このため、０℃以下の低温になると膜細孔内に残存する水分が氷結して物理的な閉塞が起こり、ガスの透過が阻害される。
これに対して、本実施形態の分離膜１０によれば、中間層８が疎水性材料からなる層であるため、高温焼成後の膜細孔内に水分が残存せず、０℃以下の低温であっても残存水分の氷結による閉塞が生ずることがなく、ガスの透過が阻害されない。
これに対して、本実施形態の分離膜１０によれば、中間層８が疎水性材料からなる層であるため、高温焼成後の膜細孔内に水分が残存せず、０℃以下の低温であっても残存水分の氷結による閉塞が生ずることがなく、ガスの透過が阻害されない。
【0038】
シロキサン結合を有する無機材料としては、例えば、オルガノアルコキシシランから調製されるゾル、テトラエトキシシランから調製されるゾルなどが挙げられる。これらの中でも、細孔径制御の観点から、オルガノアルコキシシランから調製されるゾルを適用することが好ましい。
【0039】
オルガノアルコキシシランとしては、例えば、１，２－ビス（トリエトキシシリル）メタン（ＢＴＥＳＭ）、１，２－ビス（トリエトキシシリル）エタン（ＢＴＥＳＥ）、１，２－ビス（トリエトキシシリル）プロパン（ＢＴＥＳＰ）、１，２－ビス（トリエトキシシリル）ベンゼン（ＢＴＥＳＢ）から選択される１以上の前駆体、及びこれらの加水分解物から得られる１以上のゾルが挙げられる。これらの中でも、無機材料に近い特性を示す観点から、少なくともＣ３成分で架橋される、好ましくはＣ２以下の成分で架橋されるＢＴＥＳＭまたはＢＴＥＳＥが好ましい。
【0040】
オルガノアルコキシシランから調製されるゾルが焼成されて形成されたゲルの構造としては、例えば、下記一般式（１）で表される橋架け型オルガノシリカ、及び下記一般式（２）で表される側鎖型オルガノシリカが挙げられる。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
上記一般式（１）において、ケイ素原子（Ｓｉ）間に位置する連結基Ｘは、炭素間に不飽和結合を有する不飽和炭化水素である。上記不飽和炭化水素における炭素数は、１～６であり、１～３が好ましい。
また、上述の連結基Ｘは、水素原子の一部が単体の金属イオンもしくは金属酸化物などの化合物によって置換される構造も含む。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
また、上述の連結基Ｘは、水素原子の一部が単体の金属イオンもしくは金属酸化物などの化合物によって置換される構造も含む。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
【0044】
また、上記一般式（１）において、有機基Ｒは、水素原子、又は炭素数１～１０の炭素間に不飽和結合を有する不飽和炭化水素である。また、有機基Ｒは、水素原子の一部が単体の金属イオンもしくは金属酸化物などの化合物によって置換される構造も含む。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
【0045】
上記一般式（２）において、有機基Ｒは、上記一般式（１）と同じものを適用できる。
また、上記一般式（２）において、ＯＲ’はシロキサン結合にぶら下がる側鎖（ペンダント）であり、有機基Ｒ’としては、ＣＨ３やＣ２Ｈ５などが挙げられる。
また、上記一般式（２）において、ＯＲ’はシロキサン結合にぶら下がる側鎖（ペンダント）であり、有機基Ｒ’としては、ＣＨ３やＣ２Ｈ５などが挙げられる。
【0046】
上記一般式（２）で表される側鎖型オルガノシリカとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン（ＭＴＥＳ；Methyltriethoxysilane）や、メチルトリメトキシシラン（ＭＴＭＳ；Methyltrimethoxysilane）が挙げられる。
【0047】
炭素から構成される炭素材料としては、例えば、炭素膜が挙げられる。
【0048】
中間層８の平均細孔径は、支持層７の平均細孔径より小さく、活性分離層９の平均細孔径より大きい平均細孔径であれば、特に限定されない。中間層８の平均細孔径としては、２ｎｍ以下程度とすることが特に好ましい。なお、中間層８の平均細孔径が大きすぎるとガス分離の際の選択性が低下する。また、中間層８の平均細孔径が小さすぎるとガス透過性が低下する。
【0049】
中間層８の厚さは、支持層７の上面の凹凸を被覆して、活性分離層９を平坦にできる厚さであれば、特に限定されない。このような厚さとしては、１０～５００ｎｍが挙げられ、５０～４００ｎｍが好ましく、１００～２００ｎｍがより好ましい。
【0050】
活性分離層９は、中間層８上に位置し、原料である空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する層である。
活性分離層９の材質は、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離可能であれば、特に限定されない。このような材質としては、例えば、オルガノアルコキシシランを前駆体とするシロキサン結合の架橋構造を有する無機材料；ジルコニア、チタン、鉄などの金属酸化物から構成される無機材料が挙げられる。これらの中でも、細孔径制御と疎水性とを有する観点から、オルガノアルコキシシランを前駆体とするシロキサン結合の架橋構造を有する無機材料を用いることが好ましい。
活性分離層９の材質は、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離可能であれば、特に限定されない。このような材質としては、例えば、オルガノアルコキシシランを前駆体とするシロキサン結合の架橋構造を有する無機材料；ジルコニア、チタン、鉄などの金属酸化物から構成される無機材料が挙げられる。これらの中でも、細孔径制御と疎水性とを有する観点から、オルガノアルコキシシランを前駆体とするシロキサン結合の架橋構造を有する無機材料を用いることが好ましい。
【0051】
シロキサン結合の架橋構造を有する無機材料としては、例えば、オルガノアルコキシシランから調製されるゾル、テトラエトシキシランより調製されるゾルなどが挙げられる。これらの中でも、細孔径制御の観点から、オルガノアルコキシシランから調製されるゾルを適用することが好ましい。細孔径を制御することで、空気系成分を含む混合ガスから、ヘリウムや水素といった拡散係数の高いガスの分離にも適用可能となる。
【0052】
オルガノアルコキシシランとしては、例えば、１，２－ビス（トリエトキシシリル）メタン（ＢＴＥＳＭ）、１，２－ビス（トリエトキシシリル）エタン（ＢＴＥＳＥ）、１，２－ビス（トリエトキシシリル）プロパン（ＢＴＥＳＰ）、１，２－ビス（トリエトキシシリル）ベンゼン（ＢＴＥＳＢ）から選択される１以上の前駆体、及びこれらの加水分解物から得られる１以上のゾルが挙げられる。
これらの中でも、無機材料に近い特性を示す観点から、有機基Ｒの炭素数が３以下（ＢＴＥＳＭ、ＢＴＥＳＥ、ＢＴＥＳＰ）のものが好ましい。これは、従来の知見から、有機基Ｒの炭素数が大きくなると有機材料の性質を示し始めるという知見を反映したものである。
これらの中でも、無機材料に近い特性を示す観点から、有機基Ｒの炭素数が３以下（ＢＴＥＳＭ、ＢＴＥＳＥ、ＢＴＥＳＰ）のものが好ましい。これは、従来の知見から、有機基Ｒの炭素数が大きくなると有機材料の性質を示し始めるという知見を反映したものである。
【0053】
オルガノアルコキシシランから調製されるゾルが焼成されて形成されたゲルの構造としては、例えば、下記一般式（３）で表される橋架け型オルガノシリカ、及び下記一般式（４）で表される側鎖型オルガノシリカが挙げられる。
【0054】
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
上記一般式（３）において、ケイ素原子（Ｓｉ）間に位置する連結基Ｘは、炭素間に不飽和結合を有する不飽和炭化水素である。上記不飽和炭化水素における炭素数は、１～６であり、１～３が好ましい。
また、上述の連結基Ｘは、水素原子の一部が単体の金属イオンもしくは金属酸化物などの化合物によって置換される構造も含む。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
また、上述の連結基Ｘは、水素原子の一部が単体の金属イオンもしくは金属酸化物などの化合物によって置換される構造も含む。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
【0057】
また、上記一般式（３）において、有機基Ｒは、水素原子、又は炭素数１～１０の炭素間に不飽和結合を有する不飽和炭化水素である。また、有機基Ｒは、水素原子の一部が単体の金属イオンもしくは金属酸化物などの化合物によって置換される構造も含む。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
上記金属イオンもしくは金属酸化物を構成する金属種としては、例えば、Ａｇ、Ｃｕ、Ｆｅ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ａｌ、Ｔｉ、Ｚｒなどが挙げられる。なお、ここで列挙した金属種は、一例であり、これらの金属に特定されるものではない。
【0058】
上記一般式（４）において、有機基Ｒは、上記一般式（３）と同じものを適用できる。
また、上記一般式（４）において、ＯＲ’はシロキサン結合にぶら下がる側鎖（ペンダント）であり、有機基Ｒ’としては、ＣＨ３やＣ２Ｈ５などが挙げられる。
また、上記一般式（４）において、ＯＲ’はシロキサン結合にぶら下がる側鎖（ペンダント）であり、有機基Ｒ’としては、ＣＨ３やＣ２Ｈ５などが挙げられる。
【0059】
上記一般式（４）で表される側鎖型オルガノシリカとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン（ＭＴＥＳ；Methyltriethoxysilane）や、メチルトリメトキシシラン（ＭＴＭＳ；Methyltrimethoxysilane）が挙げられる。
【0060】
図４は、シロキサン結合の架橋構造を有する無機材料の一例を示す模式図であり、（ａ）は橋架け型オルガノシリカの構造図、（ｂ）は側鎖型オルガノシリカの構造図をそれぞれ示す。
活性分離層９としては、図４（ａ）に示すように、シロキサン結合を連結基Ｘで置換したゲルを用いることが好ましい。
連結基Ｘは、特に限定されるものではなく、分離対象となるガス種等に応じて適宜選択することができる。連結基Ｘとしては、炭素数１～８のアルキル基や、フェニル基等の芳香族が挙げられる。
活性分離層９としては、図４（ａ）に示すように、シロキサン結合を連結基Ｘで置換したゲルを用いることが好ましい。
連結基Ｘは、特に限定されるものではなく、分離対象となるガス種等に応じて適宜選択することができる。連結基Ｘとしては、炭素数１～８のアルキル基や、フェニル基等の芳香族が挙げられる。
【0061】
ジルコニア、コバルト、ニッケル、アルミ、鉄などの金属酸化物から構成される無機材料としては、例えば、ＴＥＯＳなどの前駆体と金属硝酸塩との複合化物が挙げられる。これらの中でも、耐水蒸気性の観点から、コバルトやニッケルを適用することが好ましい。分離対象や分離環境に応じて、空気系成分を含む混合ガスから、水素やプロパン／プロピレンといった炭化水素ガスの分離にも適用可能となる。
【0062】
活性分離層９の平均細孔径は、１ｎｍ以下が好ましい。上記範囲であると、空気系成分を含む混合ガスから酸素を選択的に分離することができる。
【0063】
具体的には、例えば、活性分離層９の平均細孔径が１ｎｍ以下であると、空気系成分を含む混合ガスから酸素を選択的に分離することができる。なお、空気系成分を含む混合ガスから酸素を選択的に分離する場合、活性分離層９の平均細孔径は、０．１ｎｍ～０．８ｎｍがより好ましく、０．２ｎｍ～０．６ｎｍが特に好ましい。
【0064】
活性分離層９の厚さは、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離できる厚さであれば、特に限定されない。このような厚さとしては、２００～３００ｎｍが挙げられ、１００～２００ｎｍが好ましく、５０～１００ｎｍがより好ましい。
【0065】
分離膜１０は、空気分離装置の温度範囲（－１９６℃～０℃）の操作条件において、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する。
ここで、分離膜の性能の指標である「透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）」は、膜を透過したモル流量を膜の外表面積およびガス分圧で除した値と定義される。
ここで、分離膜の性能の指標である「透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）」は、膜を透過したモル流量を膜の外表面積およびガス分圧で除した値と定義される。
【0066】
例えば、活性分離層９として、ＢＴＥＳＰから得られるゲルを用い、中間層８としてＢＴＥＳＥから調製されるゲルを用いる場合、分離膜１０は空気系成分を含む混合ガスから酸素を透過する酸素分離膜となる。
この場合、本実施形態の分離膜１０の性能は、－１９６℃～０℃の操作条件において、酸素の透過率が少なくとも１×１０－８［ｍｏｌ／（ｍ２・ｓ・Ｐａ）］以上であり、１×１０－６［ｍｏｌ／（ｍ２・ｓ・Ｐａ）］以上であることが好ましい。
この場合、本実施形態の分離膜１０の性能は、－１９６℃～０℃の操作条件において、酸素の透過率が少なくとも１×１０－８［ｍｏｌ／（ｍ２・ｓ・Ｐａ）］以上であり、１×１０－６［ｍｏｌ／（ｍ２・ｓ・Ｐａ）］以上であることが好ましい。
【0067】
また、分離膜１０が酸素分離膜である場合、分離膜１０の性能は、酸素／アルゴンの透過率比が少なくとも４以上であることが好ましく、１０以上であることがより好ましい。このような性能を有すれば、分離膜１０を用いて、酸素とアルゴンとを含む混合ガスから酸素とアルゴンとを膜分離することができる。
【0068】
（分離膜の製造方法）
図２及び図３に示すような、本実施形態の空気分離装置に適用可能な分離膜１０の製造方法について、具体的に説明する。
先ず、多孔アルミナ管（平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）を支持層７として用い、支持層７の表面上に、中間層８を形成する。
図２及び図３に示すような、本実施形態の空気分離装置に適用可能な分離膜１０の製造方法について、具体的に説明する。
先ず、多孔アルミナ管（平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）を支持層７として用い、支持層７の表面上に、中間層８を形成する。
【0069】
中間層８は、先ず、支持層７の表面の均質化を行った上で、中間層８を形成することが好ましい。均質化に用いる素材には、支持層７として用いる多孔質基材と同素材の微粒子を用いるとよく、例えば、多孔質基材としてアルミナを用いる場合、これと同素材のアルミナ微粒子を多孔質基材表面に担持させて均質化するとよい。
多孔質基材上へのアルミナ微粒子の担持は、バインダーとして中間層８の形成に用いる素材と同素材のゾル（例えば、オルガノアルコキシシランから得られるゾル）を用い、バインダーにアルミナ微粒子を分散させて多孔質基材表面に塗布し、乾燥、焼成することで行うことができる。また、上記の工程を複数回行って多孔質基材の表面を均質化することが好ましく、この場合、バインダーに分散させるアルミナ微粒子の大きさを徐々に小さくして行うとよい。
多孔質基材上へのアルミナ微粒子の担持は、バインダーとして中間層８の形成に用いる素材と同素材のゾル（例えば、オルガノアルコキシシランから得られるゾル）を用い、バインダーにアルミナ微粒子を分散させて多孔質基材表面に塗布し、乾燥、焼成することで行うことができる。また、上記の工程を複数回行って多孔質基材の表面を均質化することが好ましく、この場合、バインダーに分散させるアルミナ微粒子の大きさを徐々に小さくして行うとよい。
【0070】
均質化した支持層７上に、中間層８を形成する。中間層８の形成は、以下のようにホットコーティング法で形成するとよい。ホットコーティング法では、多孔質基材を予め１７０℃～１８０℃程度に加熱しておき、オルガノアルコキシシランから得られるゾルの希薄溶液を多孔質基材の表面に塗布し、焼成することにより中間層８を形成できる。なお、所望の厚みの中間層８を得るため、上記の工程を複数回繰り返し行ってもよい。
【0071】
次に、中間層８の表面に、活性分離層９を形成する。具体的には、活性分離層９の形成は、オルガノアルコキシシランをゾル－ゲル法により縮重合する。先ず、水／シリカ比を調製した５０℃のエタノール溶液に、酸として塩酸あるいは硝酸を加えた後、１時間ほど撹拌する。次いで、得られたゾルを薄膜化するため、予め余熱した中間層の上に塗布することで焼結する。その後、窒素雰囲気下、３００℃の条件で焼成し、シロキサン結合を斜線部（図４を参照）で置換したゲルを得る。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の空気分離装置に適用可能な分離膜１０、及びこれを用いた膜モジュール１は、疎水性材料からなる中間層８を有するため、空気分離装置の温度範囲（－１９６℃～０℃）のような低温環境で用いた場合であっても、常温時と同様に優れた透過特性を発揮する。
したがって、本実施形態の空気分離装置に適用可能な分離膜１０、及びこれを用いた膜モジュール１は、空気分離装置が運転されるような極低温度下においても、膜性能を維持することができる。
したがって、本実施形態の空気分離装置に適用可能な分離膜１０、及びこれを用いた膜モジュール１は、空気分離装置が運転されるような極低温度下においても、膜性能を維持することができる。
【0073】
＜空気分離装置＞
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成について、上述した膜モジュール１に適用した場合を一例として説明する。図５は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の一例を示す系統図である。
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成について、上述した膜モジュール１に適用した場合を一例として説明する。図５は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の一例を示す系統図である。
【0074】
図５に示すように、本実施形態の空気分離装置１０１は、コールドボックス（恒温槽）２０、膜モジュール１、主熱交換器３０、原料導入経路Ｌ１、透過成分導出経路Ｌ２、及び非透過成分導出経路Ｌ３を備えて、概略構成されている。本実施形態の空気分離装置１０１は、膜モジュール１を用いる膜分離により、原料空気から任意の成分を分離する。
【0075】
コールドボックス（恒温槽）２０は、内側の空間を空気分離装置が運転できるよう外部からの侵入熱を遮断するように保温する。コールドボックス２０の内側の空間には、主熱交換器３０及び膜モジュール１が配置される。
【0076】
主熱交換器３０は、コールドボックス２０内に位置し、１以上の温熱流体と１以上の冷熱流体との間で熱交換を行い、温熱流体を冷却し、冷熱流体を加熱する。本実施形態の空気分離装置１０１では、原料導入経路Ｌ１を温熱流体とし、透過成分導出経路Ｌ２、及び非透過成分導出経路Ｌ３を冷熱流体として、これらの間で熱交換を行う。すなわち、主熱交換器３０は、原料導入経路Ｌ１を流れる原料空気を、露点付近の温度（例えば、－１９６～－１００℃付近）まで冷却する。
なお、主熱交換器３０には、図示略の温熱流体及び冷熱流体をさらに含んでいてもよい。
なお、主熱交換器３０には、図示略の温熱流体及び冷熱流体をさらに含んでいてもよい。
【0077】
膜モジュール１は、コールドボックス２０内に位置し、導入される原料空気を、分離膜を有する分離部３Ａによって透過する成分（以下、「透過成分」という）と、透過しない成分（以下、「非透過成分」という）とに分離する。
【0078】
原料導入経路Ｌ１は、膜分離の対象となる原料ガスを膜モジュール１に導入する流路である。原料導入経路Ｌ１は、膜モジュール１の原料導入部４（図１を参照）に接続される。
【0079】
原料導入経路Ｌ１には、原料空気を所要の圧力となるまで圧縮する圧縮ブロック４０、原料空気中に含まれる水分及び炭化水素等の不純物を除去する前処理ブロック５０、及び主熱交換器３０が、この順で配置されている。すなわち、原料空気の供給経路において、膜モジュール１は、主熱交換器３０の二次側に位置する。これにより、不純物が除去され、所要の温度・圧力となるまで昇温・昇圧された原料空気が、膜モジュール１に導入される。
【0080】
透過成分導出経路Ｌ２は、膜モジュール１に導入された原料ガスのうち、分離膜を有する分離部３Ａを透過する成分を、膜モジュール１から導出する流路である。透過成分導出経路Ｌ２は、膜モジュール１の透過成分導出部５（図１を参照）に接続される。
【0081】
非透過成分導出経路Ｌ３は、膜モジュール１に導入された原料ガスのうち、分離膜を有する分離部３Ａを透過しない成分を、膜モジュール１から導出する流路である。非透過成分導出経路Ｌ３は、膜モジュール１の非透過成分導出部６（図１を参照）に接続される。
【0082】
本実施形態の空気分離装置１０１によれば、膜モジュール１に導入された原料空気が、分離膜を有する分離部３Ａによって透過成分と非透過成分とに分離され、それぞれ膜モジュール１から導出される。膜モジュール１から導出された透過成分、及び非透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、それぞれ製品として回収される。
【0083】
具体的には、本実施形態の空気分離装置１０１に用いる膜モジュール１において、中間層および活性分離層として、ナノ細孔を有する疎水性材料で構成される分離膜を用いることで、例えば原料空気から酸素と窒素とに分離することが出来る。
【0084】
（変形例１）
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の変形例１について、説明する。図６は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の変形例１について、説明する。図６は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
【0085】
図６に示すように、本実施形態の変形例１の空気分離装置２０１は、コールドボックス（恒温槽）２０、膜モジュール１、主熱交換器３０、蒸留塔６０、原料導入経路Ｌ１、透過成分導出経路Ｌ２、非透過成分導出経路Ｌ３及び製品導出経路Ｌ４を備えて、概略構成されている。すなわち、変形例１の空気分離装置２０１は、膜モジュール１の二次側に蒸留塔６０を備える点で、上述した空気分離装置１０１と構成が異なる。したがって、上述した空気分離装置１０１に示す構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
蒸留塔６０は、コールドボックス２０内に位置し、導入される２以上の空気系成分を含む原料を、低沸点成分と高沸点成分とに分離する。
蒸留塔６０には、非透過成分導出経路Ｌ３、及び製品導出経路Ｌ４が接続されている。
蒸留塔６０には、非透過成分導出経路Ｌ３、及び製品導出経路Ｌ４が接続されている。
【0087】
非透過成分導出経路Ｌ３は、膜モジュール１と蒸留塔６０との間に位置し、蒸留塔６０の任意の位置に接続される。これにより、膜モジュール１から導出された非透過成分が、原料として蒸留塔６０に導入される。
【0088】
製品導出経路Ｌ４は、蒸留塔６０の塔高さの任意の位置に接続される。これにより、蒸留塔６０の塔高さの位置に応じた組成比の成分が、蒸留塔６０から製品として導出される。
【0089】
変形例１の空気分離装置２０１によれば、膜モジュール１に導入された原料空気が、分離膜を有する分離部３Ａによって透過成分と非透過成分とに分離され、それぞれ膜モジュール１から導出される。
膜モジュール１から導出された透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品として回収される。
膜モジュール１から導出された非透過成分は、蒸留塔６０に導入されて低沸点成分と高沸点成分とに分離され、製品導出経路Ｌ４より導出される。
蒸留塔６０から導出された成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
膜モジュール１から導出された透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品として回収される。
膜モジュール１から導出された非透過成分は、蒸留塔６０に導入されて低沸点成分と高沸点成分とに分離され、製品導出経路Ｌ４より導出される。
蒸留塔６０から導出された成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
【0090】
具体的には、変形例１の空気分離装置２０１に用いる膜モジュール１において、中間層および活性分離層として、ナノ細孔を有する疎水性材料で構成される分離膜を用いることで、原料空気から透過成分である酸素と、非透過成分である窒素及びアルゴンとに分離することが出来る。
蒸留塔６０では、例えば窒素とアルゴンとを容易に分離することができる。
蒸留塔６０では、例えば窒素とアルゴンとを容易に分離することができる。
【0091】
（変形例２）
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の変形例２について、説明する。図７は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の変形例２について、説明する。図７は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
【0092】
図７に示すように、本実施形態の変形例２の空気分離装置３０１は、コールドボックス（恒温槽）２０、膜モジュール１、主熱交換器３０、蒸留塔６０，７０、原料導入経路Ｌ１、透過成分導出経路Ｌ２、非透過成分導出経路Ｌ３、製品導出経路Ｌ４，Ｌ６、及び原料空気導入経路Ｌ５を備えて、概略構成されている。すなわち、変形例２の空気分離装置３０１は、膜モジュール１の一次側にさらに蒸留塔７０を備える点で、上述した変形例１の空気分離装置２０１と構成が異なる。したがって、上述した変形例１の空気分離装置２０１に示す構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0093】
蒸留塔７０は、コールドボックス２０内に位置し、導入される２以上の空気系成分を含む原料を、低沸点成分と高沸点成分とに分離する。
蒸留塔７０には、原料空気導入経路Ｌ５、原料導入経路Ｌ１、及び製品導出経路Ｌ６が接続されている。
蒸留塔７０には、原料空気導入経路Ｌ５、原料導入経路Ｌ１、及び製品導出経路Ｌ６が接続されている。
【0094】
原料空気導入経路Ｌ５は、原料空気を蒸留塔７０に導入する流路である。原料空気導入経路Ｌ５は、蒸留塔７０の塔高さの任意の位置に接続される。
【0095】
原料空気導入経路Ｌ５には、原料空気を所要の圧力となるまで圧縮する圧縮ブロック４０、原料空気中に含まれる水分及び炭化水素等の不純物を除去する前処理ブロック５０、及び主熱交換器３０が、この順で配置されている。これにより、不純物が除去され、所要の温度・圧力となるまで昇温・昇圧された原料空気が、蒸留塔７０に導入される。
【0096】
原料導入経路Ｌ１は、蒸留塔７０と膜モジュール１との間に位置し、蒸留塔７０の塔高さの任意の位置に接続される。これにより、蒸留塔７０の塔高さの位置に応じた組成比の成分が、原料として膜モジュール１に導入される。
【0097】
製品導出経路Ｌ６は、蒸留塔７０の塔高さの塔底または塔頂の位置に接続される。これにより、蒸留塔７０の塔高さの位置に応じた組成比の成分が、蒸留塔７０から製品として導出される。
【0098】
変形例２の空気分離装置３０１によれば、蒸留塔７０に導入された原料空気が、低沸点成分と高沸点成分とに分離される一方、蒸留塔７０への任意の位置から抜き出された原料導入経路Ｌ１を介して膜モジュール１に原料として導入される。
また、蒸留塔７０から製品導出経路Ｌ６に導出された成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
膜モジュール１に導入された原料は、分離膜を有する分離部３Ａによって透過成分と非透過成分とに分離され、それぞれ膜モジュール１から導出される。
膜モジュール１から導出された透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品として回収される。
膜モジュール１から導出された非透過成分は、蒸留塔６０に導入されて低沸点成分と高沸点成分とに分離され、製品導出経路Ｌ４より導出される。
蒸留塔６０から導出された成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
また、蒸留塔７０から製品導出経路Ｌ６に導出された成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
膜モジュール１に導入された原料は、分離膜を有する分離部３Ａによって透過成分と非透過成分とに分離され、それぞれ膜モジュール１から導出される。
膜モジュール１から導出された透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品として回収される。
膜モジュール１から導出された非透過成分は、蒸留塔６０に導入されて低沸点成分と高沸点成分とに分離され、製品導出経路Ｌ４より導出される。
蒸留塔６０から導出された成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
【0099】
具体的には、変形例２の空気分離装置３０１に用いる膜モジュール１において、中間層および活性分離層として、ナノ細孔を有する疎水性材料で構成される分離膜を用いることで、酸素及びアルゴンとを含む原料から透過成分である酸素と、非透過成分であるアルゴンとに分離することが出来る。
膜モジュール１の一次側に位置する蒸留塔７０では、窒素と、酸素及びアルゴンとに分離することができる。
膜モジュール１の二次側に位置する蒸留塔６０では、アルゴンと酸素を分離することができる。
膜モジュール１の一次側に位置する蒸留塔７０では、窒素と、酸素及びアルゴンとに分離することができる。
膜モジュール１の二次側に位置する蒸留塔６０では、アルゴンと酸素を分離することができる。
【0100】
（変形例３）
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の変形例３について、説明する。図８は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の変形例３について、説明する。図８は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の変形例を示す系統図である。
【0101】
図８に示すように、本実施形態の変形例３の空気分離装置４０１は、コールドボックス（恒温槽）２０、膜モジュール１、主熱交換器３０、蒸留塔７０、原料導入経路Ｌ１、透過成分導出経路Ｌ２、非透過成分導出経路Ｌ３、及び原料空気導入経路Ｌ５を備えて、概略構成されている。すなわち、変形例３の空気分離装置４０１は、膜モジュール１の二次側の蒸留塔６０を省略する点で、上述した変形例２の空気分離装置３０１と構成が異なる。したがって、上述した変形例２の空気分離装置３０１に示す構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0102】
蒸留塔７０は、コールドボックス２０内に位置し、導入される２以上の空気系成分を含む原料を、低沸点成分と高沸点成分とに分離する。
蒸留塔７０には、原料空気導入経路Ｌ５及び原料導入経路Ｌ１が接続されている。
蒸留塔７０には、原料空気導入経路Ｌ５及び原料導入経路Ｌ１が接続されている。
【0103】
原料空気導入経路Ｌ５は、原料空気を蒸留塔７０に導入する流路である。原料空気導入経路Ｌ５は、蒸留塔７０の塔高さの底部の位置に接続される。
【0104】
変形例３の空気分離装置４０１によれば、蒸留塔７０に導入された原料空気が、低沸点成分と高沸点成分とに分離され、一部が原料導入経路Ｌ１を介して膜モジュール１に原料として導入される。
膜モジュール１に導入された原料は、分離膜を有する分離部３Ａによって透過成分と非透過成分とに分離され、それぞれ膜モジュール１から導出される。
膜モジュール１から導出された透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品として回収される。
膜モジュール１から導出された非透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
膜モジュール１に導入された原料は、分離膜を有する分離部３Ａによって透過成分と非透過成分とに分離され、それぞれ膜モジュール１から導出される。
膜モジュール１から導出された透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品として回収される。
膜モジュール１から導出された非透過成分は、主熱交換器３０によって冷熱を回収された後、製品又は残渣として回収される。
【0105】
具体的には、変形例３の空気分離装置４０１に用いる膜モジュール１において、中間層および活性分離層として、ナノ細孔を有する疎水性材料で構成される分離膜を用いることで、酸素及びアルゴンとを含む原料から、透過成分である酸素と、非透過成分であるアルゴンとに分離することが出来る。
膜モジュール１の一次側に位置する蒸留塔７０では、窒素と、酸素及びアルゴンとに分離することができる。
膜モジュール１の一次側に位置する蒸留塔７０では、窒素と、酸素及びアルゴンとに分離することができる。
【0106】
＜空気分離方法＞
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離方法について、説明する。本実施形態の空気分離方法は、上述した膜モジュール１に適用した空気分離装置１０１を用いて行う。
具体的には、本実施形態の空気分離方法は、空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度において、分離膜を含む膜モジュール１により、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する。
なお、本実施形態の空気分離方法に適用する空気分離装置１０１は一例であり、これに限定されない。例えば、本実施形態の空気分離方法において、上述した空気分離装置２０１，３０１，４０１を適用してもよい。
次に、本発明を適用した一実施形態である空気分離方法について、説明する。本実施形態の空気分離方法は、上述した膜モジュール１に適用した空気分離装置１０１を用いて行う。
具体的には、本実施形態の空気分離方法は、空気系成分を含む混合ガスの露点付近の温度において、分離膜を含む膜モジュール１により、空気系成分を含む混合ガスから任意の成分を選択的に分離する。
なお、本実施形態の空気分離方法に適用する空気分離装置１０１は一例であり、これに限定されない。例えば、本実施形態の空気分離方法において、上述した空気分離装置２０１，３０１，４０１を適用してもよい。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の空気分離装置１０１及び空気分離方法によれば、膜モジュール１が、疎水性材料からなる中間層８を有する分離膜１０を含み、空気分離装置が運転されるような極低温度下においても膜性能を維持することができるため、低温環境（－１９６℃～０℃）で膜分離を用いることができる。したがって、吸着のような回分操作でないため、運転圧力・温度スイングが不要である。
【0108】
また、本実施形態の空気分離装置１０１及び空気分離方法によれば、膜分離を適用するため、蒸留における気液平衡の制約を受けず、相対揮発度が１に近い系（例えば、アルゴン／酸素）での分離を促進できる。さらに、混合ガスの露点付近温度で、膜分離を操作するため、表面拡散が発現し易いことから他成分の拡散を阻害することで、選択性および透過性を高めることができる。
【0109】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した実施形態の空気分離装置１０１は、構成を簡略に示したものであり、これに限定されない。
【0110】
また、上述した空気分離装置１０１、及び変形例１～３の空気分離装置２０１，３０１，４０１では、主熱交換器３０を一つ備える構成を一例として説明したが、２以上の熱交換器を備えていてもよい。また、上述した空気分離装置１０１では、主熱交換器３０の二次側に膜モジュール１が位置するが、他の熱交換器の二次側に膜モジュール１が配置されていてもよい。
【0111】
また、上述した空気分離装置１０１、及び変形例１～３の空気分離装置２０１，３０１，４０１では、膜モジュール１の一次側又は二次側に蒸留塔を１つ備える構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、膜モジュール１の一次側又は二次側に２以上の蒸留塔を備える構成としてもよい。
【実施例0112】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0113】
＜実施例１＞
以下の条件によって、図２に示す構成の分離ユニット（分離膜）を作成し、常温から－３０℃までの温度域における空気系成分の温度依存性を評価した。
以下の条件によって、図２に示す構成の分離ユニット（分離膜）を作成し、常温から－３０℃までの温度域における空気系成分の温度依存性を評価した。
【0114】
（使用材料）
・支持部：無孔アルミナ管（長さ２００ｍｍ）
・支持層：多孔アルミナ管（外径：１０ｍｍ、長さ１００ｍｍ、平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）
・中間層：疎水性材料として、ＢＴＥＳＥゲルを担持（厚み：２００～３００ｎｍ）
・活性分離層：ＢＴＥＳＰポリマーゲルを担持（厚み：５０～１００ｎｍ）
・支持部：無孔アルミナ管（長さ２００ｍｍ）
・支持層：多孔アルミナ管（外径：１０ｍｍ、長さ１００ｍｍ、平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）
・中間層：疎水性材料として、ＢＴＥＳＥゲルを担持（厚み：２００～３００ｎｍ）
・活性分離層：ＢＴＥＳＰポリマーゲルを担持（厚み：５０～１００ｎｍ）
【0115】
（調製比）
・中間層・・・ＢＴＥＳＥ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２４０：０．１
・活性分離層・・・ＢＴＥＳＰ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２００：０．１
・中間層・・・ＢＴＥＳＥ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２４０：０．１
・活性分離層・・・ＢＴＥＳＰ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２００：０．１
【0116】
（製膜方法）
支持層（α－Ａｌ２Ｏ３）の上に、水に溶かしたＡｌ２Ｏ３の微粒子を担持した後、Ｎ２雰囲気にて３００℃で１５分間焼成を行った。これを数回繰り返した。
中間層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＥゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
活性分離層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＰゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
製膜した分離膜を膜モジュールの中に格納し、３００℃で再度焼成を行った。
支持層（α－Ａｌ２Ｏ３）の上に、水に溶かしたＡｌ２Ｏ３の微粒子を担持した後、Ｎ２雰囲気にて３００℃で１５分間焼成を行った。これを数回繰り返した。
中間層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＥゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
活性分離層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＰゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
製膜した分離膜を膜モジュールの中に格納し、３００℃で再度焼成を行った。
【0117】
（評価）
作成した分離ユニット（分離膜）に、以下の条件で各種純ガスを供給し、各ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）をそれぞれ測定した。結果を図９に示す。
・ガス種：水素（Ｈ２）、ヘリウム（Ｈｅ）、酸素（Ｏ２）、アルゴン（Ａｒ）、窒素（Ｎ２）
・ガス温度：－３０～２００℃
・膜を透過させる流量：１Ｌ／ｍｉｎ
・膜の外表面積：３．１４×１０－３ｍ２
・１次側圧力：２００ｋＰａＧ
・２次側圧力：大気圧
作成した分離ユニット（分離膜）に、以下の条件で各種純ガスを供給し、各ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）をそれぞれ測定した。結果を図９に示す。
・ガス種：水素（Ｈ２）、ヘリウム（Ｈｅ）、酸素（Ｏ２）、アルゴン（Ａｒ）、窒素（Ｎ２）
・ガス温度：－３０～２００℃
・膜を透過させる流量：１Ｌ／ｍｉｎ
・膜の外表面積：３．１４×１０－３ｍ２
・１次側圧力：２００ｋＰａＧ
・２次側圧力：大気圧
【0118】
図９は、実施例１の分離ユニット（分離膜）における、各種ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）の温度依存性を示す図である。図９中、第１のＸ軸（下方）は操作温度［Ｋ］の逆数を１０００倍したものを、第２のＸ軸（上方）はガス温度を、Ｙ軸は透過率を、それぞれ示す。
図９に示すように、実施例１の分離ユニット（分離膜）は、中間層として疎水性材料からなる層を用いているため、各種ガスの透過率は常温の外挿線上に乗っていることを確認できた。すなわち、分離膜の中間層を疎水性材料とすることで、－３０℃でも膜性能が維持されていることが確認できた。
図９に示すように、実施例１の分離ユニット（分離膜）は、中間層として疎水性材料からなる層を用いているため、各種ガスの透過率は常温の外挿線上に乗っていることを確認できた。すなわち、分離膜の中間層を疎水性材料とすることで、－３０℃でも膜性能が維持されていることが確認できた。
【0119】
＜比較例１＞
実施例１と同様に、分離ユニット（分離膜）を作成し、常温から－３０℃までの温度域における空気系成分の温度依存性を評価した。
実施例１と同様に、分離ユニット（分離膜）を作成し、常温から－３０℃までの温度域における空気系成分の温度依存性を評価した。
【0120】
（使用材料）
中間層を変更した以外は、実施例１と同様とした。
・中間層：ＳｉＯ２－ＺｒＯ２を用いたゲルを担持（厚み：２００～３００ｎｍ）
中間層を変更した以外は、実施例１と同様とした。
・中間層：ＳｉＯ２－ＺｒＯ２を用いたゲルを担持（厚み：２００～３００ｎｍ）
【0121】
（製膜方法）
中間層以外は、実施例１と同様とした。
ＳｉＯ２－ＺｒＯ２コロイドゾルの調製は、先ず、５００ｍｌのフラスコにエタノールを加え、Ｓｉ前駆体のＴＥＯＳと水と酸触媒の塩酸とを加えて、室温で３時間撹拌した。次いで、Ｚｒ前駆体のＺｒＴＢｔ、水、塩酸を添加して１２時間撹拌した。撹拌後、更に水と塩酸とを加え、１０分間室温で撹拌した。その後、粒径制御のため、所定の量の塩酸を加え、５００ｍｌの標線まで水を加えた。そして、８時間の煮沸撹拌（２００℃）を行うことで、粒径２０～３０ｎｍのＳｉＯ２－ＺｒＯ２コロイドゾルを得た。
中間層として、得られたＳｉＯ２－ＺｒＯ２コロイドゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３５０℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
中間層以外は、実施例１と同様とした。
ＳｉＯ２－ＺｒＯ２コロイドゾルの調製は、先ず、５００ｍｌのフラスコにエタノールを加え、Ｓｉ前駆体のＴＥＯＳと水と酸触媒の塩酸とを加えて、室温で３時間撹拌した。次いで、Ｚｒ前駆体のＺｒＴＢｔ、水、塩酸を添加して１２時間撹拌した。撹拌後、更に水と塩酸とを加え、１０分間室温で撹拌した。その後、粒径制御のため、所定の量の塩酸を加え、５００ｍｌの標線まで水を加えた。そして、８時間の煮沸撹拌（２００℃）を行うことで、粒径２０～３０ｎｍのＳｉＯ２－ＺｒＯ２コロイドゾルを得た。
中間層として、得られたＳｉＯ２－ＺｒＯ２コロイドゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３５０℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
【0122】
（評価）
作成した分離ユニット（分離膜）に、以下の条件で各種ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）をそれぞれ測定した。結果を図１０に示す。
・ガス種：水素（Ｈ２）、ヘリウム（Ｈｅ）、アルゴン（Ａｒ）、窒素（Ｎ２）
・ガス温度：－３０～２００℃
・膜を透過させるモル流量：１Ｌ／ｍｉｎ
・膜の外表面積：３．１４×１０－３ｍ２
・１次側圧力：２００ｋＰａＧ
・２次側圧力：大気圧
作成した分離ユニット（分離膜）に、以下の条件で各種ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）をそれぞれ測定した。結果を図１０に示す。
・ガス種：水素（Ｈ２）、ヘリウム（Ｈｅ）、アルゴン（Ａｒ）、窒素（Ｎ２）
・ガス温度：－３０～２００℃
・膜を透過させるモル流量：１Ｌ／ｍｉｎ
・膜の外表面積：３．１４×１０－３ｍ２
・１次側圧力：２００ｋＰａＧ
・２次側圧力：大気圧
【0123】
図１０は、比較例１の分離ユニット（分離膜）における、各種ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）の温度依存性を示す図である。図６中、第１のＸ軸（下方）は操作温度［Ｋ］の逆数を１０００倍したものを、第２のＸ軸（上方）はガス温度を、Ｙ軸は透過率を、それぞれ示す。
図１０に示すように、比較例１の分離ユニット（分離膜）は、中間層として「ＳｉＯ２－ＺｒＯ２」からなる層を用いているため、各種ガスの透過率は１０℃以下の温度でいずれも大きく低下することを確認できた。すなわち、分離膜の中間層を親水性材料とすることで、膜表面もしくは供給ガス中に残存する水蒸気の影響を受けるため、低温条件では膜性能が低下することが確認できた。
図１０に示すように、比較例１の分離ユニット（分離膜）は、中間層として「ＳｉＯ２－ＺｒＯ２」からなる層を用いているため、各種ガスの透過率は１０℃以下の温度でいずれも大きく低下することを確認できた。すなわち、分離膜の中間層を親水性材料とすることで、膜表面もしくは供給ガス中に残存する水蒸気の影響を受けるため、低温条件では膜性能が低下することが確認できた。
【0124】
＜実施例２＞
以下の条件によって、図２に示す構成の分離ユニット（分離膜）を作成し、常温から－１１５℃までの温度域における空気系成分の温度依存性を評価した。
以下の条件によって、図２に示す構成の分離ユニット（分離膜）を作成し、常温から－１１５℃までの温度域における空気系成分の温度依存性を評価した。
【0125】
（使用材料）
・支持部：無孔アルミナ管（長さ２００ｍｍ）
・支持層：多孔アルミナ管（外径：１０ｍｍ、長さ１００ｍｍ、平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）
・中間層：疎水性材料として、ＢＴＥＳＥゲルを担持（厚み：２００～３００ｎｍ）
・活性分離層：ＢＴＥＳＭゲルを担持（厚み：５０～１００ｎｍ）
・支持部：無孔アルミナ管（長さ２００ｍｍ）
・支持層：多孔アルミナ管（外径：１０ｍｍ、長さ１００ｍｍ、平均細孔径：１μｍ、空隙率：約５０％）
・中間層：疎水性材料として、ＢＴＥＳＥゲルを担持（厚み：２００～３００ｎｍ）
・活性分離層：ＢＴＥＳＭゲルを担持（厚み：５０～１００ｎｍ）
【0126】
（調製比）
・中間層・・・ＢＴＥＳＥ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２４０：０．１
・活性分離層・・・ＢＴＥＳＭ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２００：０．１
・中間層・・・ＢＴＥＳＥ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２４０：０．１
・活性分離層・・・ＢＴＥＳＭ：Ｈ２Ｏ：ＨＣｌ＝１：２００：０．１
【0127】
（製膜方法）
支持層（α－Ａｌ２Ｏ３）の上に、水に溶かしたＡｌ２Ｏ３の微粒子を担持した後、Ｎ２雰囲気にて３００℃で１５分間焼成を行った。これを数回繰り返した。
中間層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＥゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
活性分離層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＭゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
製膜した分離膜を膜モジュールの中に格納し、３００℃で再度焼成を行った。
支持層（α－Ａｌ２Ｏ３）の上に、水に溶かしたＡｌ２Ｏ３の微粒子を担持した後、Ｎ２雰囲気にて３００℃で１５分間焼成を行った。これを数回繰り返した。
中間層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＥゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
活性分離層として、上記調製比に調製したＢＴＥＳＭゾルを、予め余熱された支持層の上に塗布することで焼結させて担持させた。その後、Ｎ２雰囲気下、３００℃の条件で焼成した。これを数回繰り返した。
製膜した分離膜を膜モジュールの中に格納し、３００℃で再度焼成を行った。
【0128】
（評価）
作成した分離ユニット（分離膜）に、以下の条件で各種ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）をそれぞれ測定した。結果を図１１に示す。
・ガス種：水素（Ｈ２）、ヘリウム（Ｈｅ）、酸素（Ｏ２）、アルゴン（Ａｒ）、窒素（Ｎ２）
・ガス温度：－１１５～２００℃
・膜を透過させるモル流量：１Ｌ／ｍｉｎ
・膜の外表面積：３．１４×１０－３ｍ２
・１次側圧力：２００ｋＰａＧ
・２次側圧力：大気圧
作成した分離ユニット（分離膜）に、以下の条件で各種ガスが透過する際の透過率（Ｐｅｒｍｅａｎｃｅ）をそれぞれ測定した。結果を図１１に示す。
・ガス種：水素（Ｈ２）、ヘリウム（Ｈｅ）、酸素（Ｏ２）、アルゴン（Ａｒ）、窒素（Ｎ２）
・ガス温度：－１１５～２００℃
・膜を透過させるモル流量：１Ｌ／ｍｉｎ
・膜の外表面積：３．１４×１０－３ｍ２
・１次側圧力：２００ｋＰａＧ
・２次側圧力：大気圧
【0129】
【符号の説明】
【0130】
１…膜モジュール
２…膜モジュール本体
２Ａ…空間
３…分離ユニット
３Ａ…分離部
３Ｂ…支持部
４…原料導入部
５…透過成分導出部
６…非透過成分導出部
７…支持層
８…中間層
９…活性分離層
１０…分離膜
２０…コールドボックス（恒温槽）
３０…主熱交換器
４０…圧縮ブロック
５０…前処理ブロック
６０，７０…蒸留塔
１０１，２０１，３０１，４０１…空気分離装置
Ｌ１…原料導入経路
Ｌ２…透過成分導出経路
Ｌ３…非透過成分導出経路
Ｌ４，Ｌ６…製品導出経路
Ｌ５…原料空気導入経路
２…膜モジュール本体
２Ａ…空間
３…分離ユニット
３Ａ…分離部
３Ｂ…支持部
４…原料導入部
５…透過成分導出部
６…非透過成分導出部
７…支持層
８…中間層
９…活性分離層
１０…分離膜
２０…コールドボックス（恒温槽）
３０…主熱交換器
４０…圧縮ブロック
５０…前処理ブロック
６０，７０…蒸留塔
１０１，２０１，３０１，４０１…空気分離装置
Ｌ１…原料導入経路
Ｌ２…透過成分導出経路
Ｌ３…非透過成分導出経路
Ｌ４，Ｌ６…製品導出経路
Ｌ５…原料空気導入経路
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】