(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020088
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】テラヘルツ波発生システム、テラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20230202BHJP
H04B 10/50 20130101ALI20230202BHJP
G02F 1/37 20060101ALN20230202BHJP
H01S 1/02 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
H04B10/80
H04B10/50
G02F1/37
H01S1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125271
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】胡間 遼
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 稜
(72)【発明者】
【氏名】可児 淳一
(72)【発明者】
【氏名】永妻 忠夫
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA07
2K102AA36
2K102BA18
2K102BB03
2K102BC02
2K102BD01
2K102BD09
2K102EB06
2K102EB20
5K102AA11
5K102AD01
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC01
5K102PB13
5K102PB15
5K102PC11
5K102PH11
5K102PH23
5K102PH41
5K102PH48
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD04
(57)【要約】
【課題】利用環境に応じたテラヘルツ波を発生させるとともに、コストを削減すること。
【解決手段】光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムであって、光送信装置は、テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源、を備え、テラヘルツ波発生装置は、光送信装置から送信された光信号に含まれる基本波となる波長の光信号を選択する波長選択部と、選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成するテラヘルツ波生成部と、を備えるテラヘルツ波発生システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムであって、
前記光送信装置は、
テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源、
を備え、
前記テラヘルツ波発生装置は、
前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択する波長選択部と、
選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成するテラヘルツ波生成部と、
を備えるテラヘルツ波発生システム。
【請求項2】
前記光源は、多波長の光信号を出力可能な光源であり、
前記波長選択部は、前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる2波長の光信号を選択し、
前記テラヘルツ波生成部は、選択された前記2波長の光信号に基づいてテラヘルツ波の信号を生成する、
請求項1に記載のテラヘルツ波発生システム。
【請求項3】
前記テラヘルツ波発生装置は、
所望のテラヘルツ波を発生させるために用いる基本波の送信を前記光送信装置にリクエストする波長リクエスト部をさらに備え、
前記光送信装置は、
前記テラヘルツ波発生装置からのリクエストに応じた波長の光信号を前記光源から出力させる波長制御部をさらに備える、
請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生システム。
【請求項4】
前記テラヘルツ波発生装置は、
所望のテラヘルツ波を発生させるために用いる波長の光信号を出力する波長可変光源をさらに備え、
前記波長リクエスト部は、前記所望のテラヘルツ波を発生させるために用いる基本波として1波長の光信号の送信を前記光送信装置にリクエストする、
請求項3に記載のテラヘルツ波発生システム。
【請求項5】
前記光源は、多波長の光信号を出力可能な複数種別の光源の組み合わせで構成され、
前記波長リクエスト部は、前記光源として使用する種別を示す情報をさらに含めて前記光送信装置にリクエストし、
前記波長制御部は、前記波長リクエスト部で要求された種別の光源から、前記リクエストに応じた波長の光信号を出力させる、
請求項3又は4に記載のテラヘルツ波発生システム。
【請求項6】
光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムにおける前記テラヘルツ波発生装置であって、
テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源を備える前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択する波長選択部と、
選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成するテラヘルツ波生成部と、
を備えるテラヘルツ波発生装置。
【請求項7】
光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムにおけるテラヘルツ波発生方法であって、
前記光送信装置が、
テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信し、
前記テラヘルツ波発生装置が、
前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択し、
選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成する、
テラヘルツ波発生方法。
【請求項8】
光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムにおけるテラヘルツ波発生方法であって、
テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源を備える前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択し、
選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成する、
テラヘルツ波発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波発生システム、テラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラヘルツ波と呼ばれる周波数帯の電磁波の発生や応用研究が盛んである。テラヘルツ波は、約100GHz~10THzまでの周波数帯を示し、この周波数帯は電波法で周波数の割り当てがされておらず、高いキャリア周波数と広い周波数帯から高速無線通信が期待できる。テラヘルツ波は、光波の特性である指向性と、電波の特性である透過性の性質を備えている。さらに、テラヘルツ波は、電波と比較して波長が短いためイメージング検査(X線を用いない非破壊検査)や、近年ではこの周波数帯に固有の吸収スペクトルを持つ物質も発見され、物質検査の観点からも各分野への応用可能性が広がりつつある。
【0003】
具体的なテラヘルツ波の応用先としては、電波に代わる高速無線通信、イメージング検査では空港のセキュリティチェック、郵便物の危険物検査、生産ラインでの内部欠陥検査による品質確認、美肌診断が挙げられ、物質検査では、閉鎖空間内での有毒ガス検知、水分含有量検査、医薬品の混入不純物検出などがあり、情報通信、工業、生体・医療、セキュリティなど応用先は多岐に渡る。
【0004】
これまで、テラヘルツ領域は、電波領域(<100GHz)や光波領域(>10THz)と比較して技術面や応用面で未開の領域であった。これは、テラヘルツ波を効率よく発生させる技術が確立していなかったことが原因の一つであるといえる。しかし、近年では技術の進展により効率よくテラヘルツを発生させる手法が多く報告されている。テラヘルツ波を発生させる方法として、以下のような方法が報告されている。1つ目の方法として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)集積回路等の電子回路を用いて局部発振信号と中間周波数帯の変調信号をミキサに入力し、周波数変換を行うことにより電気領域でテラヘルツ波を発生させる方法がある。2つ目の方法として、GaSe等の非線形光学結晶に2波長を入力し、非線形光学効果の1つである差周波発生からテラヘルツ波を発生させる方法がある。3つ目の方法として、波長(周波数)の異なる2つの光を3dBカプラに入力して発生した光ビート信号を単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD:Uni-Traveling carrier Photodiode)に入射することで光電変換により光領域でテラヘルツ波を発生させる方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】国土交通省、“成田国際空港におけるボディスキャナー実証実験の進め方に関する実行委員会報告のとりまとめ及び同空港における実証実験実施について”、[online]、[令和3年6月8日検索]、インターネット、<URL: https://www.mlit.go.jp/report/press/cab02_hh_000030.html >
【非特許文献2】Pioneer、“ポータブルテラヘルツスキャナー”、[online]、[令和3年6月8日検索]、インターネット、<URL: https://jpn.pioneer/ja/manufacturing/crdl/fr/terahertzimaging/prototype.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気領域でテラヘルツ波を発生させる方法は、構成が簡易であり1チップ化することで、小型化が期待できるが、発生できるテラヘルツ波は電子デイバスの帯域に律速される。例えば、発生できるテラヘルツ波の範囲は、275GHz~305GHzとなる。一方で、光領域でテラヘルツ波を発生させる方法は、光通信で利用できる光学素子を転用できるため技術的な障壁は低いが、構成が複雑になる。このようにテラヘルツ波を発生させる方法については、多くの報告がなされているが、発生できるテラヘルツ波の範囲が限られること、利用場所でテラヘルツを発生させ検出や分析するために装置が大掛かりなもので高価になってしまい経済的なシステムの実現が難しいことが、いずれのアプローチについても課題である。この課題を以下で述べる。
【0007】
従来技術で述べたテラヘルツ波の応用先として、高速無線通信、イメージング検査、物質検査が挙げられるが、これらは応用先の用途によって利用するテラヘルツ波の周波数帯が異なる。例えば、非特許文献1に記載されているように、成田国際空港においてボディスキャナー実証実験で利用された英国Thruvision社のテラヘルツ波周波数は250GHzであり、非特許文献2に記載されているように、文化財の非破壊検査において利用されたパイオニア社のポータブルテラヘルツスキャナのテラヘルツ波周波数は0.1THz~1.7THzである。高速無線通信への適用は、要求される帯域によって発生させるテラヘルツ波の周波数を変えることで周波数資源を有効に利用することも考えられる。更に、物質検査においては、その物質の特定の吸収スペクトルを確認するため、被検査物内部の確認したい物質に応じたテラヘルツ波を発生させなければならない。
【0008】
上記の点を踏まえると、発生方法によってテラヘルツ波の範囲が限られており、都度特定のICチップ開発や光源を変更する必要があり、利用用途によって専用のテラヘルツ装置が必要となることから、既存の手法ではコストの面で経済的ではない。さらに、テラヘルツ波を利用する場所で発生や検出機能が1体となった大型の装置が一般的であり、場所の制限によっては適用できない場合も想定される。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、利用環境に応じたテラヘルツ波を発生させるとともに、コストを削減することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムであって、前記光送信装置は、テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源、を備え、前記テラヘルツ波発生装置は、前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択する波長選択部と、選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成するテラヘルツ波生成部と、を備えるテラヘルツ波発生システムである。
【0011】
本発明の一態様は、光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムにおける前記テラヘルツ波発生装置であって、テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源を備える前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択する波長選択部と、選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成するテラヘルツ波生成部と、を備えるテラヘルツ波発生装置である。
【0012】
本発明の一態様は、光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムにおけるテラヘルツ波発生方法であって、前記光送信装置が、テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信し、前記テラヘルツ波発生装置が、前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択し、選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成する、テラヘルツ波発生方法である。
【0013】
本発明の一態様は、光送信装置と、テラヘルツ波発生装置とを備えるテラヘルツ波発生システムにおけるテラヘルツ波発生方法であって、テラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる波長を含む光信号を送信する光源を備える前記光送信装置から送信された前記光信号に含まれる前記基本波となる波長の光信号を選択し、選択された光信号に基づいて、テラヘルツ波の信号を生成する、テラヘルツ波発生方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、利用環境に応じたテラヘルツ波を発生させるとともに、コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置の第1構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置の第2構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】第2の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの構成を示す図である。
【
図6】第2の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図7】第2の実施形態における光源の別例を示す図である。
【
図8】波長スイープ光源から出力される光信号の波形を示す図である。
【
図9】第3の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの構成を示す図である。
【
図10】第3の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図11】第3の実施形態における光源の別例を示す図である。
【
図12】第4の実施形態におけるテラヘルツ波発生システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100の構成を示す図である。テラヘルツ波発生システム100は、光送信装置10と、テラヘルツ波発生装置20-1~20-n(nは1以上の整数)とを備える。光送信装置10と、テラヘルツ波発生装置20-1~20-nとは、光ファイバ等の光伝送路を介して接続される。
図1に示すように、光送信装置10はシステムを統括するセンター側に設けられ、テラヘルツ波発生装置20-1~20-nは光送信装置10の設置位置は離れた場所(リモート側)に設けられる。以下の説明では、テラヘルツ波発生装置20-1~20-nについて特に区別しない場合には単にテラヘルツ波発生装置20と記載する。
【0017】
光送信装置10は、テラヘルツ波発生装置20においてテラヘルツ波の信号を生成するための基本波として、多波長の光信号をブロードキャストによりテラヘルツ波発生装置20-1~20-nに送信する。光送信装置10は、光源11を備える。光源11は、多波長の光信号を出力可能な光源である。例えば、光源11は、光コム光源111又はLDアレイ112である。
【0018】
光コム光源111は、波長間隔「Δλ=λ
0
2f
0/C」の多波長(例えば、λ
1~λ
m)の光信号を生成する。ここで、「λ
0」は、任意の基準波長を表す。「f
0」は、光コム光源111のクロック周波数によって定まる周波数を表す。「C」は、光速を表す。「m」は2以上の整数を表す。光源11が光コム光源111である場合、光コム光源111は、波長間隔「Δλ」の多波長の光信号を、光伝送路を介して接続している全てのテラヘルツ波発生装置20に出力する。光コム光源111から出力される多波長の光信号の出力スペクトルを
図1に示している。
【0019】
LDアレイ112は、アレイ上に設置された複数のLD(Laser Diode)で構成される。各LDは、互いに異なる波長(例えば、λ
1~λ
m)のレーザ光を出力する。LDアレイ112は、各LDから出力される多波長の光信号を、光伝送路を介して接続している全てのテラヘルツ波発生装置20に出力する。LDアレイ112から出力される多波長の光信号の出力スペクトルを
図1に示している。
【0020】
テラヘルツ波発生装置20は、光送信装置10から送信された多波長の光信号に基づいてテラヘルツ波の信号を生成する。より具体的には、テラヘルツ波発生装置20は、多波長の光信号から、所望のテラヘルツ波の信号を得るために利用する2波長を抽出し、抽出した2波長の光信号を用いてテラヘルツ波の信号を生成する。所望のテラヘルツ波の信号とは、テラヘルツ波発生装置20が設置されている環境で、必要となるテラヘルツの周波数の信号である。すなわち、テラヘルツ波発生装置20が設置されている環境に応じて、所望のテラヘルツ波の信号は異なる。本発明におけるテラヘルツ波発生装置20は、テラヘルツ波発生装置20が設置されている環境に応じて必要となるテラヘルツの周波数の信号を生成することができる。
【0021】
図1に示すように、本発明では、テラヘルツ波を発生させるために、従来におけるテラヘルツ装置の機能を送信側(センター側の光送信装置10)と受信側(リモート側のテラヘルツ波発生装置20)とに機能分離する。このように、機能分離することで、これまで利用用途毎に必要であった送受一体のテラヘルツ装置から、送信側を複数拠点に設置された受信側(リモート側)でシェアリングすることが可能になる。
【0022】
次に、
図2及び
図3を用いて、テラヘルツ波発生装置20の具体的な構成について説明する。
図2は、第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置20の第1構成を示す図である。
図2に示すテラヘルツ波発生装置20は、波長選択部21と、光増幅部22と、ポラライザ23と、テラヘルツ波生成部24とを備える。
【0023】
波長選択部21は、所望のテラヘルツ波を生成するための2波長を抽出するための波長フィルタである。これにより、波長選択部21は、所定の波長の光信号を、波長間隔「Δλ」の多波長の光信号のうちから選択することができる。波長選択部21で選択された(波長選択部21を透過した)2波長の光信号は、光増幅部22に入力される。例えば、波長選択部21で選択された(波長選択部21を透過した)2波長の光信号が、λ2の光信号とλ6の光信号であるとする。なお、λ2の光信号とλ6の光信号の組み合わせは、一例である。
【0024】
光増幅部22は、非線形光学効果を効率よく発生させるために2波長の光信号を増幅する。なお、光送信装置10が備える光源11から出力された光信号の強度が、テラヘルツ波発生装置20で十分に高い光強度である場合には、光増幅部22は備えられなくてもよい。
【0025】
ポラライザ23は、光増幅部22によって増幅された2波長の光信号において特定の偏光状態のみの光信号を透過させる。
【0026】
テラヘルツ波生成部24は、ポラライザ23を透過した2波長の光信号を用いてテラヘルツ波の光信号を生成する。テラヘルツ波生成部24は、例えば、非線形光学結晶である。非線形光学結晶内では、二次の非線形光学効果の差周波発生により光周波数(
図1では、λ
2=ω
2,λ
6=ω
6)の差周波に相当する光(ω
3=|ω
6-ω
2|)が発生する。非線形光学結晶に入力する2波長を選ぶことで、テラヘルツ領域の光(テラヘルツ波)を発生することが可能である。なお、第1構成におけるテラヘルツ波の発生方法は、参考文献1に示す手法を用いることができる。
(参考文献1:Zhiming Huang, Jinxing Lu, Jingguo Huang, Bingbing Wang, Yun Hou;Xuemin Shen, and Junhao Chu, “Terahertz generation from DFG and TPG configurations”, 2011 International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves, 2011.)
【0027】
図3は、第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置20の第2構成を示す図である。
図3に示すテラヘルツ波発生装置20は、複数の波長選択部21-1,21-2と、テラヘルツ波生成部24と、カプラ25と、カプラ26とを備える。
【0028】
カプラ25は、光送信装置10から送信された光信号を分岐させる。カプラ25は、例えば3dB光カプラであり、入力された光信号を第1経路及び第2経路に出力する。第1経路には波長選択部21-1が接続されており、第2経路には波長選択部21-2が接続されている。
【0029】
波長選択部21-1は、所望のテラヘルツ波を生成するための波長を抽出するための波長フィルタである。波長選択部21-1で選択された(波長選択部21-1を透過した)波長の光信号は、カプラ26に入力される。例えば、波長選択部21-1で選択された(波長選択部21-1を透過した)波長の光信号が、λ2の光信号であるとする。
【0030】
波長選択部21-2は、所望のテラヘルツ波を生成するための波長を抽出するための波長フィルタである。波長選択部21-2で選択された(波長選択部21-2を透過した)波長の光信号は、カプラ26に入力される。例えば、波長選択部21-2で選択された(波長選択部21-2を透過した)波長の光信号が、λ6の光信号であるとする。
【0031】
上記のように、第2構成では、波長選択部21-1,21-2により、所望のテラヘルツ波を生成するための2波長を抽出する。
【0032】
カプラ26は、波長選択部21-1から出力された光信号(例えば、λ2の光信号)と、波長選択部21-2から出力された光信号(例えば、λ6の光信号)とを合波する。カプラ26は、例えば3dB光カプラである。カプラ26により複数の光信号を合波することで、入力された2波長(λ2=f2、λ6=f6,f2>f6と仮定)の光ビート(f2-f6)信号が発生する。
【0033】
テラヘルツ波生成部24は、カプラ26により発生した光ビート信号を用いてテラヘルツ波の光信号を生成する。テラヘルツ波生成部24は、例えば、UTC-PDである。テラヘルツ波生成部24は、入力した光ビート信号を光電変換することによりテラヘルツ領域の光(テラヘルツ波)を発生することが可能である。なお、第2構成におけるテラヘルツ波の発生方法は、参考文献2に示す手法を用いることができる。
(参考文献2:H. Ito, T. Furuta, F. Nakajima, K. Yoshino, and T. Ishibashi:“Photonic Generation of Continuous THz Wave Using Uni-Traveling Carrier Photodiode”, J. Lightwave Technol.,Vol.23, No.12, pp.4016-4021, 2005.)
【0034】
図4は、第1の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100の処理の流れを示すシーケンス図である。
図4の説明では、テラヘルツ波発生装置20-1が
図2に示す第1構成を備え、テラヘルツ波発生装置20-2が
図3に示す第2構成を備えているものとする。
光送信装置10の光源11は、多波長の光信号を、光伝送路を介してテラヘルツ波発生装置20-1及び20-2に送信する(ステップS101)。テラヘルツ波発生装置20-1,20-2の設置場所に応じて、光送信装置10から送信された光信号の到達時間に差異がある。ここでは、説明の簡単化のため、テラヘルツ波発生装置20-1における処理を説明した後に、テラヘルツ波発生装置20-2における処理について説明する。
【0035】
テラヘルツ波発生装置20-1の波長選択部21では、所望のテラヘルツ波を生成するための2波長の光信号を透過させることで波長を選択する(ステップS102)。なお、どの波長の光信号を透過させるかについては、波長選択部21に予め設定されているものとする。波長選択部21を透過した2波長の光信号は、光増幅部22に入力される。光増幅部22は、入力された光信号を増幅する(ステップS103)。光増幅部22は、増幅後の光信号をポラライザ23に出力する。ポラライザ23は、光増幅部22によって増幅された2波長の光信号において特定の偏光状態のみの光信号を透過させる(ステップS104)。ポラライザ23を透過した2波長の光信号は、テラヘルツ波生成部24に入力される。テラヘルツ波生成部24は、ポラライザ23を透過した2波長の光信号を用いて非線形光学効果を利用することで、テラヘルツ波の光信号を生成する(ステップS105)。
【0036】
テラヘルツ波発生装置20-2のカプラ25では、入力された光信号を第1経路及び第2経路に分岐して出力する(ステップS106)。カプラ25から出力された光信号は、波長選択部21-1,21-2に入力される。波長選択部21-1及び21-2では、所望のテラヘルツ波を生成するための波長の光信号を透過させることで波長を選択する(ステップS107)。例えば、波長選択部21-1は、1波長の光信号(例えば、λ2の光信号)を透過させることで波長を選択し、波長選択部21-2は、1波長の光信号(例えば、λ6の光信号)を透過させることで波長を選択する。なお、どの波長の光信号を透過させるかについては、波長選択部21-1,21-2に予め設定されているものとする。波長選択部21-1,21-2を透過した光信号は、カプラ26に入力される。カプラ26は、波長選択部21-1から出力された光信号(例えば、λ2の光信号)と、波長選択部21-2から出力された光信号(例えば、λ6の光信号)とを合波する(ステップS108)。これにより、カプラ26に入力された2波長の光ビート信号が発生する。発生したビート信号は、テラヘルツ波生成部24に入力される。テラヘルツ波生成部24は、カプラ26により発生した光ビート信号を用いてテラヘルツ波の光信号を生成する(ステップS109)。
【0037】
以上のように構成されたテラヘルツ波発生システム100によれば、センター側に設置された光送信装置10に多波長の光信号を出力できる光源11を搭載し、光ファイバを介して、リモート側に設置されたテラヘルツ波発生装置20で選択的に受信した2波長の光信号を用いて、利用環境に応じたテラヘルツ波の光信号を生成する。このように、センター側に設置される光源11を、複数のテラヘルツ波発生装置20でシェアすることにより経済化が期待でき、リモート側において所望のテラヘルツ波を選択可能な柔軟性を備えるシステムを構成することができる。そのため、利用環境に応じたテラヘルツ波を発生させるとともに、コストを削減することが可能になる。
【0038】
テラヘルツ波発生装置20は、テラヘルツ波を生成するための構成を備えていればよく、光源を備える必要がない。これにより、リモート側の装置の小型化が可能になる。したがって、テラヘルツ波発生装置20の設置場所の自由度が増し、従来よりも多くの場所で利用することが可能になる。そのため、利便性を向上させることが可能になる。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、リモート側のテラヘルツ波発生装置から要求された2波長の光信号を、センター側の光送信装置が送信する構成について説明する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
図5は、第2の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100aの構成を示す図である。テラヘルツ波発生システム100aは、光送信装置10aと、テラヘルツ波発生装置20a-1~20a-nとを備える。光送信装置10aと、テラヘルツ波発生装置20a-1~20a-nとは、光ファイバ等の光伝送路を介して接続される。
【0041】
テラヘルツ波発生装置20aは、所望のテラヘルツ波を発生させるために用いる基本波の送信を光送信装置10aにリクエストする。第2の実施形態において、テラヘルツ波の信号を生成する構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、テラヘルツ波発生装置20aは、第1の実施形態における第1構成又は第2構成のいずれかを備える。
図5では、テラヘルツ波発生装置20a-1が第1の実施形態における第1構成を備え、テラヘルツ波発生装置20a-nが第1の実施形態における第2構成を備える例を示している。
【0042】
さらに、テラヘルツ波発生装置20aは、サーキュレータ27、波長リクエスト部28及び送信部29を備える。サーキュレータ27は、複数のポートを有する部品である。
図5に示す例では、サーキュレータ27が3つのポート(第1のポート~第3のポート)を有する例を示している。サーキュレータ27が有する第1のポートは送信部29に接続され、第2のポートは光伝送路に接続され、第3のポートはカプラ25に接続される。例えば、第1のポートに入力された光信号は光伝送路に出力され、第2のポートに入力された光信号はカプラ25に出力される。なお、テラヘルツ波発生装置20aは、サーキュレータ27に代えてカプラを備えてもよい。
【0043】
波長リクエスト部28は、所望のテラヘルツ波の信号を生成するための基本波の送信要求を含むリクエストを生成する。第2の実施形態における波長リクエスト部28は、2波長の光信号の送信要求を含むリクエストを生成する。送信部29は、LDと変調器とを備える。送信部29は、LDは、所定の波長の光信号を出力する。変調器は、電気信号であるリクエストを用いて、LDから出力された光信号を変調することにより変調信号を生成する。送信部29は、生成した変調信号を光送信装置10aに送信する。
【0044】
光送信装置10aは、テラヘルツ波発生装置20aから要求された2波長の光信号を、要求元であるテラヘルツ波発生装置20aに送信する。光送信装置10aは、光源11a、サーキュレータ12、受信部13、リクエスト解釈部14及び波長制御部15を備える。サーキュレータ12は、複数のポートを有する部品である。
図5に示す例では、サーキュレータ12が3つのポート(第1のポート~第3のポート)を有する例を示している。サーキュレータ12が有する第1のポートは光伝送路に接続され、第2のポートは受信部13に接続され、第3のポートは光源11aに接続される。例えば、第1のポートに入力された光信号は受信部13に出力され、第3のポートに入力された光信号は光伝送路に出力される。なお、光送信装置10は、サーキュレータ12に代えてカプラを備えてもよい。
【0045】
受信部13は、テラヘルツ波発生装置20aから送信された変調信号(光信号)を電気信号に変換する。リクエスト解釈部14は、電気信号に含まれるリクエストを解釈して、テラヘルツ波発生装置20aから要求された2波長の情報を取得する。具体的には、リクエスト解釈部14は、光電変換したビット列から要求波長(例えば、波長λ2,λ6など)のリクエストを取得する。リクエスト解釈部14は、取得したリクエストを波長制御部15に出力する。
【0046】
波長制御部15は、リクエストに基づいて光源11aを制御して、テラヘルツ波発生装置20aから要求された2波長の光信号を送信させる。光源11aは、多波長の光信号を出力可能な光源である。例えば、光源11aは、波長可変光源113-1,113-2と、カプラ114とで構成される。波長可変光源113-1,113-2は、波長制御部15の制御に応じた波長の光信号を出力する。カプラ114は、波長可変光源113-1,113-2から出力された各波長の光信号を合波する。
【0047】
図6は、第2の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100aの処理の流れを示すシーケンス図である。
図6の説明では、テラヘルツ波発生装置20aが
図2に示す第1構成を備えているものとする。
図6において、
図4と同様の処理については
図4と同様の符号を付して説明を省略する。
テラヘルツ波発生装置20aの波長リクエスト部28は、所望の2波長の光信号の送信要求を含むリクエストを生成する(ステップS201)。所望の2波長は、ユーザにより入力されているものとする。波長リクエスト部28は、生成したリクエストを送信部29に出力する。送信部29は、波長リクエスト部28により生成されたリクエストの電気信号を用いて変調信号(光信号)を生成する。送信部29は、生成した変調信号(光信号)を、光伝送路を介して光送信装置10aに送信する(ステップS202)。
【0048】
光送信装置10aの受信部13は、テラヘルツ波発生装置20aから送信された変調信号(光信号)を受信する(ステップS203)。受信部13は、受信した変調信号(光信号)を電気信号に変換してリクエスト解釈部14に出力する。リクエスト解釈部14は、電気信号に含まれるリクエストを解釈して、テラヘルツ波発生装置20aから要求された2波長の情報を取得する(ステップS204)。リクエスト解釈部14は、取得した2波長の情報を波長制御部15に出力する。波長制御部15は、リクエスト解釈部14から出力された2波長の情報に基づいて光源11aから出力させる光信号の波長を制御する(ステップS205)。光源11aでは、波長制御部15の制御に応じて、要求された2波長の光信号を合波して、要求元の光送信装置10aに対して合波された光信号を送信する(ステップS206)。その後、ステップS102以降の処理が実行される。
【0049】
以上のように構成されたテラヘルツ波発生システム100aによれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、テラヘルツ波発生システム100aでは、リモート側のテラヘルツ波発生装置20aから所望の2波長の光信号の送信を要求することが可能になる。
【0050】
(第2の実施形態の変形例)
図6の説明では、テラヘルツ波発生装置20aが第1の実施形態における第1構成を備える場合を例に説明したが、テラヘルツ波発生装置20aが第1の実施形態における第2構成を備える場合には、
図6のステップS102~S105の処理を、ステップS106~S109の処理に変更すればよい。
【0051】
上記の説明では、光源11aが波長可変光源113-1,113-2と、カプラ114とで構成される例を示した。光源11aは、
図7に示す時間的に波長が掃引される波長スイープ光を出力するスイープ光源であってもよい。
図7は、第2の実施形態における光源11aの別例を示す図である。
図7に示す光源11aは、複数の波長可変フィルタ115-1,115-2と、クロック116と、オフセット回路117と、複数の波長スイープ光源118-1,118-2と、カプラ119とで構成される。波長可変フィルタ115-1,115-2は、透過させる波長を変更可能なフィルタである。波長可変フィルタ115-1,115-2は、波長制御部15の制御に応じて設定された波長の光信号を透過させる。
【0052】
クロック116は、波長スイープ光源118-1,118-2の動作基準となる動作周波数f
0を出力する。オフセット回路117は、クロック116から出力された動作周波数f
0にΔfの遅延を与える。波長スイープ光源118-1,118-2は、波長を連続的に変化させたレーザ光を発生させる。波長スイープ光源118-1,118-2は、クロック116から出力された動作周波数f
0が入力されたタイミングを基準に、波長を連続的に変化させたレーザ光を発生させる。
図8は、波長スイープ光源118-1,118-2から出力される光信号の波形を示す図である。
図8において、
図8(A)は波長スイープ光源118-1から出力される光信号の波形を示し、
図8(B)は波長スイープ光源118-2から出力される光信号の波形を示す。波長スイープ光源118-2には、波長スイープ光源118-1よりもΔfの時間だけ遅れて動作周波数f
0が入力される。このように、波長スイープ光をある動作周波数f
0で動作させ、オフセット回路117を介してΔfの周波数オフセットを与えることにより波長スイープ光源118-1,118-2間の発生する波長を周期的にずらすことができ、所望のテラヘルツ基本波を発生させることが可能である。
【0053】
波長スイープ光源118-1,118-2からは、時間的に波長が掃引された光信号が送信されるため、所望の波長を得るために、リモート側で要求した波長を波長制御部15において波長可変フィルタ115-1,115-2を制御することにより所望の波長を得ることが可能である。ここで、波長可変フィルタ115-1,115-2を制御するとは、波長可変フィルタ115-1,115-2で透過させる波長を設定することを意味する。カプラ119は、波長可変フィルタ115-1,115-2を透過した各波長の光信号を合波する。
【0054】
図7に示す構成では、光源11aがオフセット回路117を備える構成を示しているが、波長スイープ光源118-1と、波長スイープ光源118-2とで、波長レンジが異なる場合には、光源11aにオフセット回路117が備えられなくてもよい。
【0055】
光送信装置10aが、光源11aとして、
図5に示す構成(波長可変光源113-1,113-2と、カプラ114とを備える構成)と、
図7に示す構成とを備えてもよい。このように構成される場合、テラヘルツ波発生装置20aの波長リクエスト部28は、要求波長の他に、光源の種別を示す情報を含めたリクエストを生成する。第2の実施形態において光源の種別を示す情報とは、
図5に示す光源11aを利用するか、
図7に示す光源11aを利用するかを示す情報である。光送信装置10aのリクエスト解釈部14は、電気信号に含まれるリクエストを解釈して、テラヘルツ波発生装置20aから要求された2波長の情報と、光源の種別を示す情報とを取得する。波長制御部15は、リクエストに基づいて、要求された光源11aを制御して、テラヘルツ波発生装置20aから要求された2波長の光信号を送信させる。
【0056】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、リモート側のテラヘルツ波発生装置から要求された2波長の光信号を、センター側の光送信装置が送信する構成について説明した。第3の実施形態では、リモート側のテラヘルツ波発生装置が波長可変光源を備え、リモート側のテラヘルツ波発生装置から要求された1波長の光信号を、センター側の光送信装置が送信する構成について説明する。以下、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0057】
図9は、第3の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100bの構成を示す図である。テラヘルツ波発生システム100bは、光送信装置10bと、テラヘルツ波発生装置20b-1~20b-nとを備える。光送信装置10bと、テラヘルツ波発生装置20b-1~20b-nとは、光ファイバ等の光伝送路を介して接続される。
【0058】
テラヘルツ波発生装置20bは、所望のテラヘルツ波を発生させるために用いる基本波の送信を光送信装置10bにリクエストする。第3の実施形態において、テラヘルツ波の信号を生成する構成は、第1の実施形態の第1構成(第2の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置20a-1)と同様である。すなわち、テラヘルツ波発生装置20aは、第1の実施形態における第1構成を備える。
図9では、テラヘルツ波発生装置20b-1が、第2の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置20a-1の構成に加えて、波長可変光源30を備える。
【0059】
波長可変光源30は、特定の波長の光信号を出力する。例えば、波長可変光源30は、特定の波長の光信号を光増幅部22に出力する。なお、波長可変光源30が光信号を出力する出力先は、ポラライザ23であってもよいし、テラヘルツ波生成部24であってもよい。波長可変光源30が出力する波長の光信号は、予め定められていてもよい。このように、第3の実施形態におけるテラヘルツ波発生装置20bは、特定の波長の光信号を出力する光源を1つ備えている。そのため、テラヘルツ波発生装置20bにおいて、テラヘルツ波の信号を生成するためには、1波長の光信号があればよい。そこで、テラヘルツ波発生装置20bの波長リクエスト部28は、所望のテラヘルツ波の信号を生成するための基本波となる1波長の光信号の送信要求を含むリクエストを生成する。この際、波長リクエスト部28は、波長可変光源30が出力する光信号の波長を踏まえて、所望のテラヘルツ波の信号を生成するために必要な1波長の光信号の送信を要求する。なお、要求する波長の情報についてはあらかじめ波長リクエスト部28に入力されていてもよい。
【0060】
光送信装置10bは、テラヘルツ波発生装置20bから要求された1波長の光信号を、要求元であるテラヘルツ波発生装置20bに送信する。光送信装置10bは、光源11b、サーキュレータ12、受信部13、リクエスト解釈部14及び波長制御部15bを備える。波長制御部15bは、リクエストに基づいて光源11bを制御して、テラヘルツ波発生装置20bから要求された1波長の光信号を送信させる。光源11bは、多波長の光信号を出力可能な光源である。例えば、光源11bは、波長可変光源113で構成される。波長可変光源113は、波長制御部15bの制御に応じた1波長の光信号を出力する。
【0061】
図10は、第3の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100bの処理の流れを示すシーケンス図である。
図10の説明では、テラヘルツ波発生装置20bが
図2に示す第1構成を備えているものとする。テラヘルツ波発生装置20bにおいては、波長可変光源30から所定の波長の光信号が出力されているものとする。
【0062】
テラヘルツ波発生装置2010の波長リクエスト部28は、所望の1波長の光信号の送信要求を含むリクエストを生成する(ステップS301)。所望の1波長は、ユーザにより入力されているものとする。波長リクエスト部28は、生成したリクエストを送信部29に出力する。送信部29は、波長リクエスト部28により生成されたリクエストの電気信号を用いて変調信号(光信号)を生成する。送信部29は、生成した変調信号(光信号)を、光伝送路を介して光送信装置10bに送信する(ステップS302)。
【0063】
光送信装置10bの受信部13は、テラヘルツ波発生装置20bから送信された変調信号(光信号)を受信する(ステップS303)。受信部13は、受信した変調信号(光信号)を電気信号に変換してリクエスト解釈部14に出力する。リクエスト解釈部14は、電気信号に含まれるリクエストを解釈して、テラヘルツ波発生装置20bから要求された1波長の情報を取得する(ステップS304)。リクエスト解釈部14は、取得した1波長の情報を波長制御部15bに出力する。波長制御部15bは、リクエスト解釈部14から出力された1波長の情報に基づいて光源11bから出力させる光信号の波長を制御する(ステップS305)。光源11bでは、波長制御部15bの制御に応じて、要求された1波長の光信号を、要求元の光送信装置10bに対して送信する(ステップS306)。
【0064】
テラヘルツ波発生装置20bの波長選択部21では、所望のテラヘルツ波を生成するための1波長の光信号を透過させることで波長を選択する(ステップS307)。なお、どの波長の光信号を透過させるかについては、波長選択部21に予め設定されているものとする。波長選択部21を透過した1波長の光信号は、光増幅部22に入力される。波長可変光源30から出力された所定の波長の光信号も光増幅部22に入力される。光増幅部22は、入力された光信号を増幅する(ステップS308)。光増幅部22は、増幅後の光信号をポラライザ23に出力する。ポラライザ23は、光増幅部22によって増幅された2波長の光信号において特定の偏光状態のみの光信号を透過させる(ステップS309)。ポラライザ23を透過した2波長の光信号は、テラヘルツ波生成部24に入力される。テラヘルツ波生成部24は、ポラライザ23を透過した2波長の光信号を用いてテラヘルツ波の光信号を生成する(ステップS310)。
【0065】
以上のように構成されたテラヘルツ波発生システム100bによれば、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、テラヘルツ波発生システム100bでは、センター側の波長を複数のリモート装置でシェアする際に要求する波長リソースを削減することが可能になる。
【0066】
(第3の実施形態の変形例)
上記の説明では、光源11bが波長可変光源113で構成される例を示した。光源11bは、
図11に示す時間的に波長が掃引される波長スイープ光を出力するスイープ光源であってもよい。
図11は、第3の実施形態における光源11bの別例を示す図である。
図11に示す光源11bは、波長可変フィルタ115と、クロック116と、波長スイープ光源118とで構成される。波長可変フィルタ115は、透過させる波長を変更可能なフィルタである。波長可変フィルタ115は、波長制御部15bの制御に応じて設定された波長の光信号を透過させる。クロック116は、波長スイープ光源118の動作基準となる動作周波数f
0を出力する。波長スイープ光源118は、波長を連続的に変化させたレーザ光を発生させる。波長スイープ光源118は、クロック116から出力された動作周波数f
0が入力されたタイミングを基準に、波長を連続的に変化させたレーザ光を発生させる。波長スイープ光源118からは、時間的に波長が掃引された光信号が送信されるため、所望の波長を得るために、リモート側で要求した波長を波長制御部15bにおいて波長可変フィルタ115を制御することにより所望の波長を得ることが可能である。
【0067】
光送信装置10bが、光源11bとして、
図9に示す構成(波長可変光源113を備える構成)と、
図11に示す構成とを備えてもよい。このように構成される場合、テラヘルツ波発生装置20bの波長リクエスト部28は、要求波長の他に、光源の種別を示す情報を含めたリクエストを生成する。第3の実施形態において光源の種別を示す情報とは、
図9に示す光源11bを利用するか、
図11に示す光源11bを利用するかを示す情報である。光送信装置10bのリクエスト解釈部14は、電気信号に含まれるリクエストを解釈して、テラヘルツ波発生装置20bから要求された1波長の情報と、光源の種別を示す情報とを取得する。波長制御部15bは、リクエストに基づいて、要求された光源11bを制御して、テラヘルツ波発生装置20bから要求された1波長の光信号を送信させる。
【0068】
(第4の実施形態)
第1の実施形態~第3の実施形態の組み合わせた実施形態である。具体的には、第4の実施形態では、第1の実施形態~第3の実施形態のいずれかの方法により、複数のリモート側のテラヘルツ波発生装置に対して、基本波を送信する構成である。
【0069】
図12は、第4の実施形態におけるテラヘルツ波発生システム100cの構成を示す図である。テラヘルツ波発生システム100cは、光送信装置10cと、テラヘルツ波発生装置20c-1~20a-nとを備える。光送信装置10cと、テラヘルツ波発生装置20c-1~20c-nとは、光ファイバ等の光伝送路を介して接続される。
図12に示す例では、テラヘルツ波発生装置20c-1~20c-nはそれぞれ、異なる拠点に設置されている。テラヘルツ波発生装置20c-1~20c-nの構成は、第1の実施形態~第3の実施形態に示すテラヘルツ波発生装置20,20a,20bのいずれかである。
【0070】
光送信装置10cは、第1の実施形態のように、多波長の光信号をブロードキャストによりテラヘルツ波発生装置20cに送信、又は、第2の実施形態及び第3の実施形態のようにテラヘルツ波発生装置20cから要求された1又は2波長の光信号をテラヘルツ波発生装置20cに送信する。
【0071】
光送信装置10cは、光源11c、受信部13、リクエスト解釈部14c、波長制御部15c及び波長選択部16を備える。光源11cは、光コム光源111、LDアレイ112、波長可変光源113及び波長スイープ光源118で構成される。リクエスト解釈部14cは、電気信号に含まれるリクエストを解釈して、テラヘルツ波発生装置20cから要求された波長の情報を取得する。リクエストに光源11cの種別の情報が含まれている場合には、リクエスト解釈部14cは波長の情報に加えて、光源11cの種別の情報も取得する。
【0072】
波長制御部15cは、光源11cを制御して、テラヘルツ波発生装置20cに対して、1以上の波長の光信号を送信させる。例えば、波長制御部15cは、第1の実施形態のように、多波長の光信号をブロードキャストによりテラヘルツ波発生装置20c-1~20c-nに送信させる。例えば、波長制御部15cは、第2の実施形態のように、リクエストに基づいて光源11cを制御して、テラヘルツ波発生装置20cから要求された2波長の光信号を送信させる。例えば、波長制御部15cは、第3の実施形態のように、リクエストに基づいて光源11cを制御して、テラヘルツ波発生装置20cから要求された1波長の光信号を送信させる。このようにして、波長制御部15cは、テラヘルツ波発生装置20cに対して、1以上の波長の光信号を送信させる。
【0073】
波長選択部16は、光源11cから出力された1以上の波長の光信号を合波又は分離、更にはリモート側へ送信するための波長ルーティングを行う。波長選択部16は、例えば光スイッチ、カプラ、WDMフィルタ等である。
【0074】
以上のように構成されたテラヘルツ波発生システム100cによれば、第1の実施形態~第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第1の実施形態~第4の実施形態に共通する変形例)
上記の各実施形態では、テラヘルツ波の信号を生成するための光信号をセンター側の光送信装置10,10a,10b,10cから送信し、リモート側のテラヘルツ波発生装置20,20a,20b,20cで選択的に受信した1又は2波長からテラヘルツ領域へ変換する構成を説明した。しかし、テラヘルツ生成以外の利用用途も考えられ、これに依らない。例えば、Clock源となる情報をセンター側の光送信装置10,10a,10b,10cから光信号で送信し、リモート側のテラヘルツ波発生装置20,20a,20b,20cで受信する方法や、テラヘルツ領域以外のRF(Radio Frequency)を光で変調し、本発明の構成でリモート側のテラヘルツ波発生装置20,20a,20b,20cにおいて必要に応じて光を選択的に受信する方法が考えられる。
【0076】
なお、上述した実施形態において、上記のような形態で実施されるプログラムは、単一の装置に依存するものではなく、プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行することによって画像処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0077】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0078】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、テラヘルツ波を発生させて利用するシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
10、10a、10b、10c…光送信装置, 11、11a、11b…光源, 12…サーキュレータ, 13…受信部, 14、14c…リクエスト解釈部, 15、15b、15c…波長制御部, 20、20-1~20-n、20a、20a-1~20a-n、20b、20b-1~20b-n、20c、20c-1~20c-n…テラヘルツ波発生装置, 21…波長選択部, 22…光増幅部, 23…ポラライザ, 24…テラヘルツ波生成部, 25…カプラ, 26…カプラ, 27…サーキュレータ, 28…波長リクエスト部, 29…送信部, 30…波長可変光源, 111…光コム光源, 112…LDアレイ, 113…波長可変光源, 114…カプラ, 115、115-1~115-2…波長可変フィルタ, 116…クロック, 117…オフセット回路, 118、118-1~118-2…波長スイープ光源