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特開2023-3300制御装置、リソース割り当て方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003300
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】制御装置、リソース割り当て方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20221228BHJP
【FI】
H04W28/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104389
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】田行 里衣
(72)【発明者】
【氏名】宮原 和大
(72)【発明者】
【氏名】池上 大介
(72)【発明者】
【氏名】木村 達明
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】NOMAを利用する無線通信システムにおいて、複数の基地局が持つリソースを複数の端末に割り当てる処理を高速に行う
【解決手段】制御装置において、各基地局が持つサブキャリアの各端末に対する割り当ての情報の初期値を算出する演算部と、前記初期値に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する演算部と、前記電力割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末へのサブキャリア割り当ての情報を算出するためのハミルトニアンを生成する生成部と、最適化演算を行う装置に前記ハミルトニアンを入力し、前記装置から、演算結果として、前記サブキャリア割り当ての情報を取得する収集部と、前記電力割り当ての情報と前記サブキャリア割り当ての情報を出力する出力部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御区域内に存在する複数の基地局が持つリソースの複数の端末への割り当てを算出する制御装置であって、
各基地局が持つサブキャリアの各端末に対する割り当ての情報の初期値を算出するサブキャリア割り当て初期値演算部と、
前記サブキャリア割り当て初期値演算部により算出された前記初期値に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する電力割り当て最適解演算部と、
前記電力割り当て最適解演算部により算出された前記電力割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末へのサブキャリア割り当ての情報を算出するためのハミルトニアンを生成するハミルトニアン生成部と、
前記ハミルトニアン生成部によって生成された前記ハミルトニアンを目的関数として最適化演算を行う装置に前記ハミルトニアンを入力し、前記装置から、演算結果として、前記サブキャリア割り当ての情報を取得するサブキャリア割り当て最適解収集部と、
前記電力割り当ての情報と前記サブキャリア割り当ての情報を出力する出力部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記サブキャリア割り当て初期値演算部は、同一基地局の同一サブキャリアを割り当てられる端末数は最大2までとする条件のもと、前記初期値を算出し、
前記電力割り当て最適解演算部は、各基地局での各サブキャリアへの電力の割り当ては均一とする条件のもと、前記電力割り当ての情報を算出する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ハミルトニアンは、QUBO形式によるハミルトニアンである
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記サブキャリア割り当て最適解収集部により取得された前記サブキャリア割り当ての情報を前記電力割り当て最適解演算部に入力し、前記電力割り当て最適解演算部が前記サブキャリア割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
制御区域内に存在する複数の基地局が持つリソースの複数の端末への割り当てを算出する制御装置が実行するリソース割り当て方法であって、
各基地局が持つサブキャリアの各端末に対する割り当ての情報の初期値を算出するサブキャリア割り当て初期値演算ステップと、
前記サブキャリア割り当て初期値演算ステップにより算出された前記初期値に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する電力割り当て最適解演算ステップと、
前記電力割り当て最適解演算ステップにより算出された前記電力割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末へのサブキャリア割り当ての情報を算出するためのハミルトニアンを生成するハミルトニアン生成ステップと、
前記ハミルトニアン生成ステップによって生成された前記ハミルトニアンを目的関数として最適化演算を行う装置に前記ハミルトニアンを入力し、前記装置から、演算結果として、前記サブキャリア割り当ての情報を取得するサブキャリア割り当て最適解収集ステップと、
前記電力割り当ての情報と前記サブキャリア割り当ての情報を出力する出力ステップと
を備えるリソース割り当て方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークにおけるリソース割り当て技術に関連し、特に、通信品質の観点からリソースの割り当てを最適化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のセルラーネットワークでは、トラヒック需要の急激な増加に伴い、大規模接続、スループット性能の向上が求められている。それらの要求に対して、5Gで提案されている技術の一つとして、利用効率を高める非直交多元接続技術(NOMA:Non-Orthogonal Multiple Access)が注目されている。従来のLTE(Long Term Evolution)やLTE-Advancedでは直交周波数多元接続技術(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が用いられており、無線周波数帯を複数の直交サブキャリアに分割して、それぞれを1つのUE(User Equipment)に割り当てることで、UE間の干渉を避けていた。
【0003】
一方、NOMAでは、同じ時間、同じ周波数、同じ符号化方式のもと、送信電力を変えることで同じチャネルに複数のUEを多重化して送信し、受信時にはSIC(Successive Interference Cancellation)を用いることで復号を可能とし、多元接続を実現している。これにより、NOMAでは限られた周波数資源の有効活用が可能となり、大規模接続やスループット性能の向上の実現が期待される。
【0004】
このNOMA技術の活用のためには、UEへのリソース割り当てとして、サブキャリア割り当てと電力割り当てを同時に最適化することが必要であり、非特許文献1ではリソース割り当ての最適化手法が提案されている。非特許文献1では1つの基地局(BS:Base Station)を対象としているが、実環境では、複数BSで同時にリソース割り当てを行うため、他のBSからの干渉波を考慮する必要がある。また、複数BS、複数のサブキャリア、複数の電力の割り当ての組み合わせ数が更に膨大となるため、計算時間が割り当ての時間間隔に対して長くなってしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sun, Yan, et al. "Optimal joint power and subcarrier allocation for MC-NOMA systems." 2016 IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM). IEEE, 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実環境でNOMAを利用するためには、他のBSからの干渉波を考慮した上で、複数のBSで同時にリソース割り当てを最適化する必要がある。また、複数のBSにおける、複数のサブキャリアの割り当て、及び電力の割り当てを同時に考慮し、通信品質を最適化するリソース割り当て方法は組み合わせ数が膨大であるため、最適化のために長い計算時間を要し、リソース割り当て時間間隔内の算出が難しい。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、NOMAを利用する無線通信システムにおいて、各端末の通信品質を最適化するように、複数の基地局が持つリソースを複数の端末に割り当てる処理を高速に行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術によれば、制御区域内に存在する複数の基地局が持つリソースの複数の端末への割り当てを算出する制御装置であって、
各基地局が持つサブキャリアの各端末に対する割り当ての情報の初期値を算出するサブキャリア割り当て初期値演算部と、
前記サブキャリア割り当て初期値演算部により算出された前記初期値に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する電力割り当て最適解演算部と、
前記電力割り当て最適解演算部により算出された前記電力割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末へのサブキャリア割り当ての情報を算出するためのハミルトニアンを生成するハミルトニアン生成部と、
前記ハミルトニアン生成部によって生成された前記ハミルトニアンを目的関数として最適化演算を行う装置に前記ハミルトニアンを入力し、前記装置から、演算結果として、前記サブキャリア割り当ての情報を取得するサブキャリア割り当て最適解収集部と、
前記電力割り当ての情報と前記サブキャリア割り当ての情報を出力する出力部と
を備える制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、NOMAを利用する無線通信システムにおいて、各端末の通信品質を最適化するように、複数の基地局が持つリソースを複数の端末に割り当てる処理を高速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態におけるシステムの構成例を示す図である。
図2】制御装置の構成例を示す図である。
図3】制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】制御装置の構成例を示す図である。
図5】制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0012】
(システム構成例)
図1に本実施の形態におけるシステムの全体構成例を示す。図1に示すように、本実施の形態におけるシステムは、複数のBS(基地局)と複数のUE(端末)を備え、BSとUE間で無線通信を行う。BSとUEとの間の無線通信方式は特定のものに限定されないが、例えば5G(NR)、6G等の無線通信方式である。また、BSとUE間の無線通信方式が無線LANであってもよい。本実施の形態においては、BSとUEとの間の無線通信にNOMAが利用される。
【0013】
図1に示すように、制御区域(制御対象区間)にある複数のBSの制御を行う制御装置100が備えられる。制御装置を集中制御サーバと呼んでもよい。制御装置100は、移動体通信網のコアネットワークを構成する装置であってもよいし、コアネットワーク外のネットワーク上の装置であってもよいし、あるBSあるいはあるUEが制御装置100の役割を有していてもよい。
【0014】
制御装置100は、各UEの通信品質が最適になるように、制御区域内に存在する各BSの各UEに対するサブキャリア割り当て及び電力割り当てを決定し、決定した割り当て情報を各BSに通知する。具体的な最適化の計算方法については後述する。なお、「サブキャリア」と「電力」を総称して「リソース」と呼んでもよい。
【0015】
(装置構成、動作概要)
図2に、制御装置100の機能構成例を示す。図2に示すように、制御装置100は、データ収集部110、サブキャリア割り当て初期値演算部120、電力割り当て最適解演算部130、ハミルトニアン生成部140、サブキャリア割り当て最適解収集部150、割り当て実行部160を備える。図2の矢印線で示すように演算結果等が機能部間で受け渡しされる。各機能部は、他の機能部に情報を渡す手段と、他の機能部から情報を受け取る手段を含む。なお、割り当て実行部160を出力部と呼んでもよい。
【0016】
また、アニーリングマシン200がネットワークを介して制御装置100に接続されている。アニーリングマシン200は、制御装置100の内部に備えられていてもよい。アニーリングマシン200は、量子アニーリングの技術により、組合せ最適化処理を高速かつ高精度に実行する装置である。
【0017】
なお、以下の説明においてアニーリングマシン200が実行することとしている最適解算出処理を高速に実行できる装置であれば、アニーリングマシン200以外の装置をアニーリングマシン200に代えて使用してもよい。
【0018】
制御装置100における処理の流れを図3のフローチャートを参照して説明する。
【0019】
S1において、データ収集部110は、各UEの位置を、当該UEと通信を行うBSから受信し、制御装置100の内部に入力する。なお、各BSの位置については制御装置100が予め保持しているものとする。
【0020】
BSの位置とUEの位置は、後述するチャネルゲインの算出に利用される。なお、データ収集部110が、各UEからサブキャリア毎のチャネル状態情報を取得し、取得したチャネル状態情報を用いてチャネルゲインを算出してもよい。
【0021】
S2において、サブキャリア割り当て初期値演算部120は、同一BSの同一サブキャリアを割り当てられるUE数は最大2までとする条件のもと、各BSの持つサブキャリアの各UEに対する割り当ての情報の初期値を算出する。
【0022】
S3において、電力割り当て最適解演算部130は、サブキャリア割り当て初期値演算部120から、各BSの持つサブキャリアの各UEに対する割り当ての情報の初期値を受け取り、当該割り当ての情報の初期値により各BSでの各サブキャリアへの電力の割り当ては均一であるという条件のもと、各UEに与えられた通信容量の平均値が最大となる各UEへの電力割り当てを演算する。
【0023】
S4において、ハミルトニアン生成部140は、電力割り当て最適解演算部130から各UEへの電力割り当て情報を受け取り、各UEへの電力割り当て情報をもとに、各UEに与えられた通信容量の平均値が最大となるサブキャリア割り当てを算出するためのハミルトニアンを生成し、生成したハミルトニアンをアニーリングマシン200へ出力する。ハミルトニアン生成部140が生成するハミルトニアンは、例えばQUBO形式によるハミルトニアンである。
【0024】
アニーリングマシン200は、ハミルトニアン生成部140により生成されたハミルトニアンを目的関数として入力し、目的関数を最小化するような変数割り当てを出力する。
【0025】
S5において、サブキャリア割り当て最適解収集部150は、アニーリングマシン200から出力された、目的関数を最小化するような変数割り当てを受信(収集)する。当該変数割り当てはサブキャリア割り当て最適解に相当する。つまり、当該変数割り当ては、各BSの持つサブキャリアの各UEに対する割り当ての情報である。サブキャリア割り当て最適解収集部150は、サブキャリア割り当て最適解を割り当て実行部160に渡す。割り当て実行部160には、電力割り当て最適解演算部130から電力割り当て最適解も渡される。
【0026】
S6において、割り当て実行部160は、各BSに対して、サブキャリア割り当て情報と電力割り当て情報を送信する。各BSでは、これらの情報に基づいて、各UEへのサブキャリア割り当て及び電力割り当てを実行し、通信を行う。
【0027】
制御装置100が、最適化問題を解く時間幅、つまりリソース割り当ての制御を行う時間幅をCTI(Control Time Interval)と呼び、CTIは任意の時間幅で設定する。
【0028】
制御装置100が、あるCTIにおける制御を実施するにあたり、制御対象となる区域内のUEをUE集合Nとして、これらのUEから、各UE位置xが前の制御時刻で割り当てられたBSを通じて制御装置100に申告される。当該申告された各UE位置xが、データ収集部110により入力される。
【0029】
もし前の制御時刻に割り当てられたBSが存在しない場合は、受信電力が最も高いプライマリBSを通じて申告されるとする。なお、これらの情報は過去の各UE位置xあるいは別の情報源から推定、予測した値でも構わない。
【0030】
この場合、位置推定・予測機能は制御装置100内にあってもよい。制御装置100において、各BS位置yが既知のもと、ユーザの通信品質を最適化するリソース割り当てを算出する。上記で説明した最適化問題をCTI毎に実施して実施結果に基づきUEに対して各サブキャリアの割り当てを行う。
【0031】
(最適化問題の詳細)
制御装置100は、最適化問題を解くことで、各BSにおける各UEに対するリソース割り当てを決定する。その最適化問題について詳細に説明する。
【0032】
NOMAが利用可能な環境の下、制御装置100の制御区域にあるUE集合をN={1,2,…,N}とし、BS集合をB={1,2,…,S}とする。各BSのサブキャリア集合をM={1,2,…,M}とする。
【0033】
n番目のUEに対して、s番目のBSがm番目のサブキャリアを割り当てているかどうかをvs,m,nと表す。vs,m,n∈{0,1}として、0のときを割り当てなし、1のときを割り当てありとする。
【0034】
続いて、チャネルモデル及びNOMAのモデルの説明を行う。本実施の形態では、各UEの通信品質として通信容量を扱う。通信容量はSINRを用いて表される。SINR(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)はUEの受信信号と干渉の比で表わされる。
【0035】
s番目のBSからm番目のサブキャリアを割り当てた際のn番目のUEのチャネルゲインを|gs,m,nとして、当該サブキャリアに対するBSの送信電力をPs,m,nとすると、UEの受信信号はPs,m,n|gs,m,nで表現される。
【0036】
NOMAでは、2つ以上のUEをNOMAグループとして、それらのUEに対して同じサブキャリアを割り当てるが、送信電力の強さを変えることで多重化している。その際、チャネルゲインがより小さいUEに対して、より強い送信電力で割り当てを行う。NOMAグループに含まれるUEは、グループ内のより大きなチャネルゲインを持つUEへの信号をSICにより復号することで得たい信号を受信することができる。
【0037】
n番目のUEが受ける干渉は、同じBSの同じサブキャリアを割り当てられたNOMAグループに含まれるUEへの信号から受ける干渉と、他のBSからの干渉があり、それぞれ、Iと^Iとする。なお、明細書のテキストにおける記載の便宜上、文字の頭の上に記載される"^"は、"^I"にように、文字の前に記載している。
【0038】
NOMAグループに含まれるUEへの信号から受ける干渉Iについて説明する。n´番目のUEがn番目のUEと同じNOMAグループに所属しているとき、n´番目のUEへのチャネルゲインの方が大きい場合、つまり、|gs,m,n´>|gs,m,nのときは、n番目のUEは、n´番目のUEへの信号の干渉の影響を受けるが、n´番目のUEへのチャネルゲインの方が小さい場合、つまり、|gs,m,n´<|gs,m,nのときは、n番目のUEは、n´番目のUEへの信号をSICにより復号することで干渉の影響を受けない。
【0039】
ここで、s番目のBSに対してn番目のUEよりチャネルゲインが大きいUE集合をNs,n={n´|n´∈N,|gs,m,n´>|gs,m,n}として、ノイズをNとすると、n番目のUEのSINRは数式(1)-(3)で表される。ただし、ここでは1つのUEに対しては最大1つのサブキャリアが割り当てられるとしている。
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
n番目のUEの通信容量はSINRを用いて、数式(4)で表される。
【0043】
【数4】
以下では、通信品質としてUE間の平均通信容量の最大化を例として、最適化問題を解くことでリソース割り当てを決定する。可用帯域のUE平均は数式(5)で表される。
【0044】
【数5】
これを最大化する
v:={vs,m,n│s∈B,m∈M,n∈N}
P:={Ps,m,n|s∈B,m∈M,n∈N}
を算出した結果に基づきリソース割り当てを行う。ここで、各BSの電力の最大値をP、s番目のBSのm番目のサブキャリアに割り当てた電力Ps,mとしたとき、各BSはM個のサブキャリアに対して電力を均等に割り当てるとする。つまり、Σn´´∈Nj,m,n´´が0より大きいとき、Ps,m=(1/M)×Pが成り立つ。以上の最適化問題は下記の数式(6)-(9)により表される。
【0045】
【数6】
【0046】
【数7】
【0047】
【数8】
【0048】
【数9】
ここで、制約条件となる数式(7)-(9)について説明する。数式(7)は、1つのUEに対しては、1つのBSの1つのサブキャリアのみが割り当てられることを示す。数式(8)は、1つのNOMAグループに含まれるUE数は最大2つ(2ユーザNOMA)であることを示す。数式(9)は、s番目のBSのm番目のサブキャリアに割り当てた電力(1/M)×Pは、s番目のBSのm番目のサブキャリアが割り当てられたUEへの電力の和と等しいことを示す。なお、これらの制約は一例である。
【0049】
(最適化問題を解く方法について)
制御装置100は、上記の最適化問題を解くことにより、各BSの有する複数サブキャリアと電力の各UEに対する割り当てを決定する。以下では、数式(6)-(9)の最適化問題を解く方法について説明する。
【0050】
まずは、サブキャリア割り当て初期値演算部120が、vの初期値を決定する。初期値の決定方法は、ランダムに与える、もしくはBSとUEの距離を加味して、近い順に割り当てるとして決定してもよい。
【0051】
電力割り当て最適解演算部130は、vの初期値のもとで、Pを最適化する。具体的には、サブキャリア割り当て初期値演算部120から受け取った、各BSの持つサブキャリアの各UEに対する割り当ての情報の初期値のもとで、各BSでの各サブキャリアへの電力の割り当ては均一とする条件の下、各UEに与えられた通信容量の平均値が最大となるように各UEへの電力割り当てを演算する。
【0052】
具体的には、例えば、参考文献1「J. Zhu, J. Wang, Y. Huang, S. He, X. You, and L. Yang, "On optimal power allocation for downlink non-orthogonal multiple access systems," IEEE J. Sel. Areas Commun., vol. 35, no. 12, pp. 2744-2757, Dec. 2017.」の手法を用いてPを最適化することができる。
【0053】
本実施の形態では、ここで得られたPにおいて、最適なvを算出する最適化問題をアニーリングマシン200で演算する。その際に、当該問題をアニーリングマシン200への入力可能な形式に変換する必要がある。
【0054】
ハミルトニアン生成部140が実行する、最適化問題をアニーリングマシン200への入力可能な形式へ変換する方法を説明する。本実施の形態では、最適化問題をQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)形式に変換し、アニーリングマシン200への入力とする。なお、QUBO形式を用いることは一例である。
【0055】
QUBO形式を用いる場合、アニーリングマシン200へは、0か1を取る変数(ビット)からなるハミルトニアンを入力し、ハミルトニアンを最小化する変数の値を算出する。
【0056】
入力可能な形式へ変換するため、Pが与えられた場合の数式(6)-(9)の最適化問題は、数式(10)に示す通り、イェンセン不等式を用いた近似により、通信容量のUE平均の上限をTとして、Tの最大化問題と置き換える。
【0057】
【数10】
さらに、log(1+X)は単調増加関数であることより、log(1+X)の最大化問題は、Xの最大化問題に置き換えることができる。つまり、Tの最大化問題は、SINRのUE平均の最大化問題と置き換えることができる。置き換えた新たな最適化問題を数式(11)-(14)に示す。
【0058】
【数11】
【0059】
【数12】
【0060】
【数13】
【0061】
【数14】
したがって、SINRのQUBO形式を考える。Ωs,m,n,n´=Ps,m,n|gs,m,n´と置くと、数式(1)-(3)は、数式(15)-(17)で書き換えられ、数式(15)は数式(16)を用いて数式(18)に変形できる。
【0062】
【数15】
【0063】
【数16】
【0064】
【数17】
【0065】
【数18】
数式(18)の第一項はNOMAグループ内のUEからの干渉を受ける場合で、第二項はSICによりNOMAグループ内のUEからの干渉を受けない場合を意味する。
【0066】
ここで、Σn´´∈Nj,m,n´´が1もしくは2のとき、Σn´´∈Nj,m,n´´j,m,n´´=(1/M)×Pとなることを用いると、数式(19)に示すようにwj,mを定義すると、数式(20)が成り立つ。ただし、Θj,m,n=(1/M)×P|gj,m,nとした。
【0067】
【数19】
【0068】
【数20】
数式(20)は、wj,mに関して高々(S-1)次多項式で表せ、数式(21),(22)とおくと、n番目のUEのSINRは数式(23)となる。
【0069】
【数21】
【0070】
【数22】
【0071】
【数23】
これは、vj,m,nに関して高々2S次多項式となるため、参考文献2「Dattani, Nike. "Quadratization in discrete optimization and quantum mechanics." arXiv preprint arXiv: 1901.04405 (2019). https://arxiv.org/abs/1901.04405」に記載の方法、システムにより二次多項式へ変換可能となる。以上より、数式(24)の問題となり、最小化するハミルトニアンは数式(25)となる。
【0072】
【数24】
【0073】
【数25】
ここで、C,Cは、最適化係数を表し、as,mは0か1の値を持つ追加の補助ビットを表す。
【0074】
ハミルトニアン生成部140がHを生成し、アニーリングマシン200に入力し、アニーリングマシン200が、minimize Hを満たすvを算出し、サブキャリア割り当て最適解収集部150へ出力する。
【0075】
割り当て実行部160は、サブキャリア割り当て最適解収集部150により得られたvと、電力割り当て最適解演算部130により得られたPとを各BSに通知する。各BSは、これらのリソース割り当て情報に基づいて、各UEへのサブキャリア割り当てを行って、割り当てられた電力で信号信号を行う。
【0076】
なお、例えば、ある特定のBSが、制御装置100として機能する場合、当該特定のBSは自身でUEと通信するとともに、他のBSにリソース割り当て情報を通知する。
【0077】
(繰り返し演算について)
上記の例のように、1つのCTIにおいて、1回の電力割り当て最適演算と1回のサブキャリア割り当て最適演算を行うこととしても良いし、最適演算により算出されたvに基づき、再度Pを最適化するという操作を行っても良いし、Pの最適化とvの最適化を複数回繰り返し実施してもよい。それによって得られたv、Pに基づき、各BSはUEに対してサブキャリア及び電力の割り当てを行う。
【0078】
Pの最適化とvの最適化を繰り返し行う場合の制御装置100の構成例を図4に示す。また、図5は、この場合のフローチャートを示す。
【0079】
図4図5に示すように、アニーリングマシン200により算出されたvが、サブキャリア割り当て最適解収集部150から電力割り当て最適演算部130に渡される。電力割り当て最適演算部130は、そのvのもとで、最適なPを算出する。そのPによりHが生成され、そのPのもとで最適化されたvが算出される。このような繰り返しが例えば予め定めた回数だけ行われる。また、最適化したUEの平均通信品質が閾値よりも良くなるまで繰り返すこととしてもよい。
【0080】
(装置のハードウェア構成例)
制御装置100は、例えば、コンピュータに、本実施の形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現可能である。より具体的には、当該プログラムは、サブキャリア割り当て初期値を演算するモジュール、電力割り当ての最適解を演算するモジュール、及び、ハミルトニアンを生成するモジュールを少なくとも含む。
【0081】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0082】
図6は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図6のコンピュータは、それぞれバスBSで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0083】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0084】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、当該装置に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。例えば、インタフェース装置1005は、ハミルトニアンをアニーリングマシン200に入力し、演算結果をアニーリングマシン200から受信する。
【0085】
表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0086】
(実施の形態の効果等)
以上、説明したように、制御装置100において、各UEの通信品質の最適化を実現するリソースの割り当てを高速に算出するため、当該最適化問題を、QUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)形式等の目的関数を入力として目的関数を最小化するような変数割り当てを出力する装置(例:アニーリングマシン200)へ入力可能な形式への変換を行うこととし、当該装置の演算結果を用いてリソース割り当てを行うこととした。
【0087】
これにより、UEが複数BSに接続可能な状況において、限られたリソースの中でUEの通信品質を最大化する割り当ての最適解の高速な算出が可能となる。これにより、個々のUEの通信品質を向上するネットワークの提供が可能となる。
【0088】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項の制御装置、リソース割り当て方法、及びプログラムが記載されている。
(第1項)
制御区域内に存在する複数の基地局が持つリソースの複数の端末への割り当てを算出する制御装置であって、
各基地局が持つサブキャリアの各端末に対する割り当ての情報の初期値を算出するサブキャリア割り当て初期値演算部と、
前記サブキャリア割り当て初期値演算部により算出された前記初期値に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する電力割り当て最適解演算部と、
前記電力割り当て最適解演算部により算出された前記電力割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末へのサブキャリア割り当ての情報を算出するためのハミルトニアンを生成するハミルトニアン生成部と、
前記ハミルトニアン生成部によって生成された前記ハミルトニアンを目的関数として最適化演算を行う装置に前記ハミルトニアンを入力し、前記装置から、演算結果として、前記サブキャリア割り当ての情報を取得するサブキャリア割り当て最適解収集部と、
前記電力割り当ての情報と前記サブキャリア割り当ての情報を出力する出力部と
を備える制御装置。
(第2項)
前記サブキャリア割り当て初期値演算部は、同一基地局の同一サブキャリアを割り当てられる端末数は最大2までとする条件のもと、前記初期値を算出し、
前記電力割り当て最適解演算部は、各基地局での各サブキャリアへの電力の割り当ては均一とする条件のもと、前記電力割り当ての情報を算出する
第1項に記載の制御装置。
(第3項)
前記ハミルトニアンは、QUBO形式によるハミルトニアンである
第1項又は第2項に記載の制御装置。
(第4項)
前記サブキャリア割り当て最適解収集部により取得された前記サブキャリア割り当ての情報を前記電力割り当て最適解演算部に入力し、前記電力割り当て最適解演算部が前記サブキャリア割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の制御装置。
(第5項)
制御区域内に存在する複数の基地局が持つリソースの複数の端末への割り当てを算出する制御装置が実行するリソース割り当て方法であって、
各基地局が持つサブキャリアの各端末に対する割り当ての情報の初期値を算出するサブキャリア割り当て初期値演算ステップと、
前記サブキャリア割り当て初期値演算ステップにより算出された前記初期値に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末への電力割り当ての情報を算出する電力割り当て最適解演算ステップと、
前記電力割り当て最適解演算ステップにより算出された前記電力割り当ての情報に基づいて、各端末に与えられた通信容量の平均値が最大となる各端末へのサブキャリア割り当ての情報を算出するためのハミルトニアンを生成するハミルトニアン生成ステップと、
前記ハミルトニアン生成ステップによって生成された前記ハミルトニアンを目的関数として最適化演算を行う装置に前記ハミルトニアンを入力し、前記装置から、演算結果として、前記サブキャリア割り当ての情報を取得するサブキャリア割り当て最適解収集ステップと、
前記電力割り当ての情報と前記サブキャリア割り当ての情報を出力する出力ステップと
を備えるリソース割り当て方法。
(第6項)
コンピュータを、第1項ないし第4項のうちいずれか1項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【0089】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 制御装置
110 データ収集部
120 サブキャリア割り当て初期値演算部
130 電力割り当て最適解演算部
140 ハミルトニアン生成部
150 サブキャリア割り当て最適解収集部
160 割り当て実行部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6