(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003513
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】無線通信方法及び無線局
(51)【国際特許分類】
H04W 16/28 20090101AFI20230110BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20230110BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20230110BHJP
【FI】
H04W16/28
H04B7/06 950
H04W64/00 120
H04W64/00 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104631
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】内山 彰
(72)【発明者】
【氏名】大河原 一輝
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB06
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067FF03
(57)【要約】
【課題】無線局と飛行体との間で無線通信を行う際にビームフォーミングを効率的に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】無線局と飛行体との間で無線通信を行う無線通信方法は、無線局から飛行体に指向したビームを形成するビームフォーミング処理と、ビームを用いて無線局と飛行体との間で通信を行う通信処理と、を含む。ビームフォーミング処理は、飛行体の移動方向を示す移動方向情報を取得する移動方向取得処理と、移動方向情報に基づいて、飛行体の移動方向と交差する部分空間の範囲内でビームのビーム方向を決定するビーム方向決定処理と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線局と飛行体との間で無線通信を行う無線通信方法であって、
前記無線局から前記飛行体に指向したビームを形成するビームフォーミング処理と、
前記ビームを用いて前記無線局と前記飛行体との間で通信を行う通信処理と
を含み、
前記ビームフォーミング処理は、
前記飛行体の移動方向を示す移動方向情報を取得する移動方向取得処理と、
前記移動方向情報に基づいて、前記飛行体の前記移動方向と交差する部分空間の範囲内で前記ビームのビーム方向を決定するビーム方向決定処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記移動方向取得処理は、
カメラを用いて前記飛行体を撮像する処理と、
前記カメラによる撮像結果に基づいて前記飛行体の前記移動方向を取得する処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記移動方向取得処理は、
測距センサを用いて前記飛行体の位置を検出する処理と、
前記飛行体の検出位置に基づいて前記飛行体の前記移動方向を取得する処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記移動方向取得処理は、
他の無線局から送信される無線信号を前記無線局において受信する処理と、
前記受信した無線信号の特徴量の時間変化に基づいて前記飛行体の前記移動方向を推定する処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記移動方向取得処理は、
前記飛行体によって検出された前記飛行体の位置を示す飛行体位置情報を取得する処理と、
前記飛行体位置情報に基づいて前記飛行体の前記移動方向を取得する処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の無線通信方法であって、
前記ビームフォーミング処理は、更に、前記飛行体の前記移動方向と交差する前記部分空間の範囲内で少なくとも一つのビーム方向候補を設定する処理を含み、
前記ビーム方向決定処理は、
前記少なくとも一つのビーム方向候補の前記ビームを用いて、前記無線局から前記飛行体に測定信号を送信する処理と、
前記測定信号の受信結果を示す受信結果情報を前記飛行体から前記無線局にフィードバックする処理と、
前記受信結果情報に基づいて、前記少なくとも一つのビーム方向候補のうち通信品質が条件を満たすものを前記ビーム方向として選択する処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項7】
飛行体と無線通信を行う無線局であって、
前記無線局から前記飛行体に指向したビームを形成し、前記ビームを用いて前記飛行体と通信を行うコントローラを備え、
前記コントローラは、更に、
前記飛行体の移動方向を示す移動方向情報を取得する移動方向取得処理と、
前記移動方向情報に基づいて、前記飛行体の前記移動方向と交差する部分空間の範囲内で前記ビームのビーム方向を決定するビーム方向決定処理と
を実行するように構成された
無線局。
【請求項8】
請求項7に記載の無線局であって、
前記コントローラは、更に、前記飛行体の前記移動方向と交差する前記部分空間の範囲内で少なくとも一つのビーム方向候補を設定し、
前記ビーム方向決定処理は、
前記少なくとも一つのビーム方向候補の前記ビームを用いて、前記無線局から前記飛行体に測定信号を送信する処理と、
前記飛行体における前記測定信号の受信結果を示す受信結果情報を前記飛行体から受信する処理と、
前記受信結果情報に基づいて、前記少なくとも一つのビーム方向候補のうち通信品質が条件を満たすものを前記ビーム方向として選択する処理と
を含む
無線局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線局と飛行体との間で無線通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、通信エリアの拡大に向けて、無線通信機能を備えたドローンなどの飛行体を利用した無線通信システムの検討が進められている(非特許文献1)。そのような無線通信システムを用いることにより、電波が届かずに無線通信が利用できなかったエリアにおいても高品質の無線通信を実現することが可能となる。
【0003】
また、更なる通信高速化に向けて、ミリ波帯などの高周波数帯の利用が加速している。一般的に、高周波数帯の電波は、低周波数帯と比較して、減衰しやすく、また、回折しづらいという特性を有する。言い換えれば、高周波数帯の電波は、伝搬損失が大きく、また、直進性が強いという特性を有する。よって、無線局間の距離が大きい場合や、無線局間に障害物が存在する場合には、高品質な無線通信を提供できなくなるという課題がある。このような課題に対してもドローンなどの飛行体は有用であり、飛行体を活用することによって無線通信を安定的に提供することが可能となる。
【0004】
高周波数帯を利用した無線通信においては、電波減衰を補償し、受信電力を高めることができるビームフォーミングが有効である。ビームフォーミングには、アナログデバイスを用いたアナログビームフォーミングや、デジタル信号処理に基づくデジタルビームフォーミングがある。ビームフォーミングを行うためには、通信相手の無線局の方向や伝搬チャネル情報などの情報が必要となる。例えば、アナログビームフォーミングの場合、通信相手の無線局の方向を知るために、自局のビーム可変アンテナを用いて様々な方向にビームを送信し、各方向のビームの測定結果(受信電力など)を取得する。そして、その測定結果に基づいて、通信相手の無線局に指向した最適なビーム方向が決定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Silvia Sekander, Hina Tabassum, and Ekram Hossain, "Multi-Tier Drone Architecture for 5G/B5G Cellular Networks: Challenges, Trends, and Prospects," IEEE Communications Magazine 56.3 (2018): 104-111.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線局とドローンなどの飛行体との間の無線通信にビームフォーミング技術を適用する場合について考える。無線局と飛行体との間の無線通信の場合、それらの垂直方向の高さが異なるため、3次元空間に対してビームの送信を行う必要がある。従って、2次元平面の場合と比較して、適切なビーム方向を決定するためのビーム送信/測定処理が増大する。このことは、伝送効率の低下の原因となる。また、様々な方向に電波を送信することは、干渉発生の原因にもなる。
【0007】
本開示の1つの目的は、無線局と飛行体との間で無線通信を行う際にビームフォーミングを効率的に行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点は、無線局と飛行体との間で無線通信を行う無線通信方法に関連する。
無線通信方法は、
無線局から飛行体に指向したビームを形成するビームフォーミング処理と、
ビームを用いて無線局と飛行体との間で通信を行う通信処理と
を含む。
ビームフォーミング処理は、
飛行体の移動方向を示す移動方向情報を取得する移動方向取得処理と、
移動方向情報に基づいて、飛行体の移動方向と交差する部分空間の範囲内でビームのビーム方向を決定するビーム方向決定処理と
を含む。
【0009】
第2の観点は、飛行体と無線通信を行う無線局に関連する。
無線局は、無線局から飛行体に指向したビームを形成し、ビームを用いて飛行体と通信を行うコントローラを備える。
コントローラは、更に、
飛行体の移動方向を示す移動方向情報を取得する移動方向取得処理と、
移動方向情報に基づいて、飛行体の移動方向と交差する部分空間の範囲内でビームのビーム方向を決定するビーム方向決定処理と
を実行するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、無線局から飛行体に指向したビームを形成するビームフォーミングにおいて、飛行体の移動方向が考慮される。3次元空間全ての中からではなく、飛行体の移動方向と交差する部分空間の範囲内でビーム方向が決定される。よって、ビーム方向の決定に要する処理負荷及び処理時間が軽減される。すなわち、効率的にビームフォーミングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態に係る無線通信システムを概略的に示す概念図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係るビームフォーミングを説明するための概念図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る無線局の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る無線局の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る飛行体の機能構成例を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施の形態に係る無線通信システムにおける処理を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態に係るビームフォーミング処理(ステップS100)に関連する機能構成例を示すブロック図である。
【
図8】本開示の実施の形態に係るビームフォーミング処理(ステップS100)を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施の形態に係るビームフォーミング処理(ステップs100)を示すタイミングチャートである。
【
図10】本開示の実施の形態に係るビーム方向決定処理(ステップS130)を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第1の例を説明するためのブロック図である。
【
図12】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第2の例を説明するためのブロック図である。
【
図13】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第3の例を説明するためのブロック図である。
【
図14】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第3の例を説明するための概念図である。
【
図15】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第3の例を説明するための概念図である。
【
図16】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第4の例を説明するためのブロック図である。
【
図17】本開示の実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の第5の例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0013】
1.概要
図1は、本実施の形態に係る無線通信システム1を概略的に示す概念図である。無線通信システム1は、無線局10と飛行体20を含んでいる。無線局10は、地上に存在している。無線局10としては、無線基地局や無線端末が例示される。一方、飛行体20は、空中を移動可能である。飛行体20としては、ドローンが例示される。飛行体20は無線通信機能を備えており、無線局10と飛行体20との間の無線通信が可能である。例えば、飛行体20は、無線局10間の通信を中継する中継局として機能する。
【0014】
本実施の形態では、無線局10と飛行体20との間の無線通信にビームフォーミング技術が適用される。少なくとも無線局10は、ビームフォーミングを行い、ビームを用いて飛行体20と通信を行う。但し、無線局10と飛行体20との間の無線通信の場合、それらの垂直方向の高さが異なるため、3次元空間に対してビームの送信を行う必要がある。従って、2次元平面の場合と比較して、適切なビーム方向を決定するための処理負荷が増大するおそれがある。そこで、本開示は、適切なビーム方向を決定するための処理負荷を軽減し、効率的にビームフォーミングを行うことができる技術を提案する。
【0015】
図2は、本実施の形態に係るビームフォーミングを説明するための概念図である。無線局10は、飛行体20と無線通信を行う際、飛行体20に指向したビームを形成する。このビームフォーミングにおいて、無線局10は、飛行体20の移動方向DFを考慮してビーム方向DBを決定する。
【0016】
より詳細には、無線局10は、飛行体20の移動方向DFを示す移動方向情報を取得する。後に詳しく説明されるように、移動方向情報を取得する方法としては様々な例が考えられる。そして、無線局10は、移動方向情報に基づいて、飛行体20の移動方向DFと交差する部分空間PSの範囲内でビーム方向DBを決定する。無線局10は、3次元空間全ての中から適切なビーム方向DBを探索する必要はなく、飛行体20の移動方向DFと交差する部分空間PSの範囲内で適切なビーム方向DBを探索すればよい。例えば、飛行体20の移動方向DFと反対方向に存在する空間は、ビーム方向DBの探索範囲から除外してもよい。従って、ビーム方向DBの決定に要する処理負荷及び処理時間が軽減される。
【0017】
このように、本実施の形態によれば、無線局10から飛行体20に指向したビームを形成するビームフォーミングにおいて、飛行体20の移動方向DFが考慮される。3次元空間全ての中からではなく、飛行体20の移動方向DFと交差する部分空間PSの範囲内でビーム方向DBが決定される。よって、ビーム方向DBの決定に要する処理負荷及び処理時間が軽減される。すなわち、効率的にビームフォーミングを行うことが可能となる。また、ビーム方向DBの決定に要する処理負荷及び処理時間が軽減されるため、伝送効率の低下が抑制される。更に、ビーム方向DBの探索範囲が減るため、干渉発生も抑制される。
【0018】
以下、本実施の形態に係る無線通信システム1について更に詳しく説明する。
【0019】
2.構成例
2-1.無線局の構成例
図3は、無線局10の機能構成例を示すブロック図である。ここでは、特に、ビームフォーミングに関連する機能構成が示されている。無線局10は、信号生成部11、送信部12、ビーム可変アンテナ13、受信部14、信号解析部15、及びビーム方向決定部16を含んでいる。
【0020】
信号生成部11は、無線局10が送信する送信信号を生成し、生成した送信信号を送信部12に出力する。送信信号には、適切なビーム方向DB(ビームパタン)を決定する際に用いられる測定信号も含まれる。送信部12は、入力された送信信号を無線信号に変換し、その無線信号をビーム可変アンテナ13に出力する。ビーム方向決定部16は、ビーム方向DBを決定し、ビーム方向DBをビーム可変アンテナ13に通知する。ビーム可変アンテナ13は、ビーム方向決定部16から通知されたビーム方向DBに従ってビームを設定し、送信部12から入力される無線信号を空中に送信する。
【0021】
また、ビーム可変アンテナ13は、空中の無線信号を受信し、受信した無線信号を受信部14に出力する。受信部14は、入力された無線信号を受信信号に変換し、受信信号を信号解析部15に出力する。信号解析部15は、入力された受信信号から必要なデータを抽出する。抽出されたデータは、ビーム方向決定部16によるビーム方向DBの決定に用いられてもよい。
【0022】
図4は、無線局10の構成例を示すブロック図である。無線局10は、無線通信を制御する通信コントローラ100を備えている。通信コントローラ100は、ビームフォーミング処理を行い、ビームを用いて飛行体20と通信を行う。通信コントローラ100は、1又は複数のプロセッサ101(以下、単に「プロセッサ101」と呼ぶ)、及び1又は複数の記憶装置102(以下、単に「記憶装置102」と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ101は、各種情報処理を行う。例えば、プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置102は、プロセッサ101による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置102としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。
【0023】
通信制御プログラム103は、プロセッサ101によって実行されるコンピュータプログラムである。通信制御プログラム103を実行するプロセッサ101と記憶装置102との協働により、通信コントローラ100の機能が実現される。通信制御プログラム103は、記憶装置102に格納される。通信制御プログラム103は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。通信制御プログラム103は、ネットワーク経由で通信コントローラ100に提供されてもよい。
【0024】
他の例として、通信コントローラ100は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0025】
2-2.飛行体の構成例
図5は、飛行体20の機能構成例を示すブロック図である。ここでは、特に、ビームフォーミングに関連する機能構成が示されている。飛行体20は、通知信号生成部21、送信部22、アンテナ23、受信部24、及び信号解析部25を含んでいる。
【0026】
アンテナ23は、無線局10から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号を受信部24に出力する。受信部24は、入力された無線信号を受信信号に変換し、受信信号を信号解析部25に出力する。信号解析部25は、入力された受信信号に基づいて、受信結果情報を生成する。受信結果情報としては、受信電力、受信信号強度、伝搬チャネル情報(CSI:Channel State Information)、等が例示される。信号解析部25は、受信結果情報を通知信号生成部21に出力する。
【0027】
通知信号生成部21は、受信結果情報を含む通知信号を生成し、通知信号を送信部22に出力する。尚、CSIそのものではなく、圧縮されたCSIや、特異値分解により得られる変換情報が用いられてもよい。送信部22は、入力された通知信号を無線信号に変換し、その無線信号をアンテナ23に出力する。アンテナ23は、送信部22から入力される無線信号を空中に送信する。
【0028】
3.ビームフォーミングに関連する処理
図6は、本実施の形態に係る無線通信システム1における処理を示すフローチャートである。ステップS100において、無線局10(通信コントローラ100)は、無線局10から飛行体20に指向したビームを形成するビームフォーミング処理を行う。ビームフォーミング処理は、少なくともアナログビームフォーミングを含む。ステップS200において、無線局10(通信コントローラ100)は、形成したビームを用いて飛行体20と無線通信を行う。
【0029】
図7は、ビームフォーミング処理(ステップS100)に関連する機能構成例を示すブロック図である。通信コントローラ100は、移動方向取得部110、ビーム方向候補設定部120、ビーム方向決定部130、及びビームフォーミング部140を含んでいる。これら移動方向取得部110、ビーム方向候補設定部120、ビーム方向決定部130、及びビームフォーミング部140は、
図3におけるビーム方向決定部16とビーム可変アンテナ13に対応している。
【0030】
図8及び
図9は、それぞれ、ビームフォーミング処理(ステップS100)を示すフローチャート及びタイミングチャートである。以下、
図7~
図9を参照して、本実施の形態に係るビームフォーミング処理(ステップS100)について説明する。
【0031】
3-1.移動方向取得処理(ステップS110)
ステップS110において、移動方向取得部110は、飛行体20の移動方向DFを示す移動方向情報210を取得する。この移動方向取得処理の様々な例は後述される。移動方向取得部110は、移動方向情報210をビーム方向候補設定部120に出力する。
【0032】
3-2.ビーム方向候補設定処理(ステップS120)
ステップS120において、ビーム方向候補設定部120は、少なくとも一つのビーム方向候補DCを設定する。ビーム方向候補DCは、ビーム方向DBの候補である。ビーム方向候補設定部120は、複数のビーム方向候補DCを設定してもよい。
【0033】
より詳細には、ビーム方向候補設定部120は、移動方向情報210に基づいて、飛行体20の移動方向DFと交差する部分空間PS(
図2参照)を設定する。そして、ビーム方向候補設定部120は、その部分空間PSの範囲で少なくとも一つのビーム方向候補DCを設定する。尚、設定可能なビーム方向候補DCは、全空間にわたって予め決められていてもよい。その場合、ビーム方向候補設定部120は、全てのビーム方向候補DCの中から部分空間PSに存在するものだけを抽出してもよい。
【0034】
ビーム方向候補設定部120は、設定したビーム方向候補DCを示すビーム方向候補情報220を生成し、ビーム方向候補情報220をビーム方向決定部130に出力する。
【0035】
3-3.ビーム方向決定処理(ステップS130)
ステップS130において、ビーム方向決定部130は、適切なビーム方向DBを決定する。具体的には、ビーム方向決定部130は、ビーム方向候補情報220で示されるビーム方向候補DCの中から適切なものをビーム方向DBとして選択する。
図10は、ビーム方向決定処理(ステップS130)を説明するためのフローチャートである。
【0036】
ステップS131において、ビーム方向決定部130は、各ビーム方向候補DCをビームフォーミング部140に通知する。ビームフォーミング部140は、各ビーム方向候補DCのビームを形成する。通信コントローラ100は、各ビーム方向候補DCのビームを用いて、測定信号を飛行体20に送信する。
【0037】
ステップS132において、飛行体20は、無線局10から送信される測定信号を受信し、その受信結果を示す受信結果情報を生成する。受信結果情報としては、受信電力、受信信号強度、伝搬チャネル情報(CSI)、等が例示される。飛行体20は、受信結果情報を無線局10に送信する、つまり、受信結果情報を無線局10にフィードバックする。尚、ビーム方向候補DC毎に受信結果情報が一つずつ送信されてもよいし、全てのビーム方向候補DCに関する受信結果情報がまとめて送信されてもよい。無線局10のビーム方向決定部130は、飛行体20からフィードバックされる受信結果情報を取得する。
【0038】
ステップS133において、ビーム方向決定部130は、受信結果情報に基づいて、通信品質が条件を満たすビーム方向候補DCをビーム方向DBとして選択する。例えば、ビーム方向決定部130は、複数のビーム方向候補DCのうち受信電力の最も高い一つをビーム方向DBとして選択する。ビーム方向候補DCが一つである場合、ビーム方向決定部130は、受信電力が所定の電力閾値を超えた場合にそのビーム方向候補DCをビーム方向DBとして選択してもよい。
【0039】
他の例として、ビームフォーミング対象ではない他の飛行体20に対する干渉が所定の閾値以下に抑えられるという条件の下で、受信電力が最も高くなるビーム方向候補DCがビーム方向DBとして選択されてもよい。これにより、他の飛行体への干渉電力を抑えることができる。更に他の例として、複数のビーム方向DBが選択される場合、MIMO伝送容量が最大となるビーム方向が選択されてもよい。
【0040】
ビーム方向決定部130は、決定したビーム方向DBを指定するビーム方向情報230を生成し、ビーム方向情報230をビームフォーミング部140に出力する。
【0041】
3-4.ビームフォーミング(ステップS140)
ビームフォーミング部140は、ビーム方向情報230を受け取り、ビーム方向情報230によって指定されるビーム方向DBのビームを形成する。形成されたビームに基づいて無線局10と飛行体20との間の無線通信が行われる。
【0042】
4.移動方向取得処理の様々な例
以下、本実施の形態に係る移動方向取得処理(ステップS110)の様々な例について説明する。
【0043】
4-1.第1の例
図11は、移動方向取得処理の第1の例を説明するためのブロック図である。第1の例では、移動方向取得部110は、カメラ111を含んでいる。移動方向取得部110は、カメラ111を用いて飛行体20を撮像する。そして、移動方向取得部110は、カメラ111による撮像結果に基づいて、飛行体20の移動方向DFを取得する。例えば、移動方向取得部110は、カメラ111により撮像された画像を解析して、飛行体20を検出(認識)する。パターンマッチング等の画像解析手法は周知である。そして、移動方向取得部110は、飛行体20の検出位置をトレースすることにより、飛行体20の移動方向DFを取得する。
【0044】
4-2.第2の例
図12は、移動方向取得処理の第2の例を説明するためのブロック図である。第2の例では、移動方向取得部110は、測距センサ112を含んでいる。測距センサ112としては、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、ミリ波レーダ、等が例示される。移動方向取得部110は、測距センサ112を用いて飛行体20の位置を検出する。飛行体20の検出位置は、測距センサ112に対する相対位置であり、測距センサ112から見た距離と方向により規定される。そして、移動方向取得部110は、飛行体20の検出位置をトレースすることにより、飛行体20の移動方向DFを取得する。
【0045】
LIDARは、空間分解能が高いという特徴を有する。但し、LIDARの場合、悪天候時や逆光環境においては計測精度が低下する可能性がある。ミリ波レーダが用いられる場合、天候や逆光の影響は抑制される。LIDARとミリ波レーダの両方を用いて、両方による計測結果を統合(フュージョン)してもよい。
【0046】
尚、測距センサ112によって、飛行体20と異なる物体も一緒に検出される可能性もある。移動方向取得部110は、検出物体の形状に基づいてパターンマッチングを行い、飛行体20と他の物体を識別してもよい。移動方向取得部110は、カメラ111と測距センサ112を組み合わせて、飛行体20の移動方向DFを取得してもよい。
【0047】
4-3.第3の例
図13は、移動方向取得処理の第3の例を説明するためのブロック図である。第3の例では、移動方向取得部110は、送受信装置113を含んでいる。送受信装置113は、無線信号を他の無線局10に送信し、また、他の無線局10から無線信号を受信する。無線信号としては、無線LAN(Local Area Network)信号が例示される。
【0048】
図14は、無線LAN信号に基づいて物体移動方向を推定する手法の一例を説明するための概念図である。送信装置Txは、無線LAN信号を受信装置Rxに向けて送信する。送信装置Txと受信装置Rxとの間にはマルチパスが存在する。受信装置Rxは、各パスを介して無線LAN信号を受信する。受信装置Rxは、各パス毎の無線LAN信号の特徴量をモニタする。特徴量としては、受信電力、受信信号強度、位相、等が例示される。
図14に示されるように、物体がパスA、パスB、及びパスCを順番に横切った場合、パスA、パスB、及びパスCに関する特徴量が順番に変化する。よって、各パスに関する特徴量の時間変化に基づいて、物体の移動方向を推定することが可能となる。
【0049】
図15は、無線LAN信号に基づいて物体移動方向を推定する手法の他の例を説明するための概念図である。送信装置Txは、複数のアンテナを備えている。送信装置Txは、複数のアンテナのそれぞれから無線LAN信号を送信する。受信装置Rxは、複数のアンテナから送信された無線LAN信号を受信する。受信装置Rxは、各アンテナ毎の無線LAN信号の特徴量をモニタする。特徴量としては、受信電力、受信信号強度、位相、等が例示される。
図15に示されるように、物体が送信装置Txと受信装置Rxとの間を横切った場合、各アンテナに関する特徴量が順番に変化する。よって、各パスに関する特徴量の時間変化に基づいて、物体の移動方向を推定することが可能となる。
図15に示される手法は、マルチパスが少ない屋外環境にも適用可能である。
【0050】
移動方向取得部110は、上記手法に基づいて、飛行体20の移動方向DFを推定する。すなわち、移動方向取得部110は、他の無線局10から送信される無線信号(例:無線LAN信号)を送受信装置113を介して受信する。そして、移動方向取得部110は、受信した無線信号の特徴量の時間変化に基づいて、飛行体20の移動方向DFを推定する。上述の通り、複数のアンテナを用いることによって推定精度は向上する。
【0051】
4-4.第4の例
図16は、移動方向取得処理の第4の例を説明するためのブロック図である。第4の例では、移動方向取得部110は、飛行体20と通信を行う通信装置114を含んでいる。飛行体20は、自身の位置を検出する位置センサを搭載している。位置センサとしては、GPS(Global Positioning System)センサが例示される。飛行体20は、位置センサにより検出される自身の位置を示す飛行体位置情報200を無線局10に送信する。移動方向取得部110は、通信装置114を介して飛行体20から飛行体位置情報200を取得する。そして、移動方向取得部110は、飛行体位置情報200で示される位置をトレースすることにより、飛行体20の移動方向DFを取得する。
【0052】
4-5.第5の例
図17は、移動方向取得処理の第5の例を説明するためのブロック図である。第5の例では、移動方向取得部110は、無線局10の外部の飛行体管理装置50と通信を行う通信装置115を含んでいる。飛行体管理装置(管理サーバ)50は、各飛行体20の位置、移動方向、状態、等を管理する。例えば、飛行体管理装置50は、上述の第1~第4の例で説明された手法のいずれかにより各飛行体20の移動方向を把握し、各飛行体20に関する移動方向情報210を提供する。移動方向取得部110は、通信装置115を介して飛行体管理装置50と通信を行い、飛行体管理装置50から移動方向情報210を取得する。
【符号の説明】
【0053】
1…無線通信システム, 10…無線局, 11…信号生成部, 12…送信部, 13…ビーム可変アンテナ, 14…受信部, 15…信号解析部, 16…ビーム方向決定部, 20…飛行体, 21…通知信号生成部, 22…送信部, 23…アンテナ, 24…受信部, 25…信号解析部, 50…飛行体管理装置, 100…通信コントローラ, 101…プロセッサ, 102…記憶装置, 103…通信制御プログラム, 110…移動方向取得部, 120…ビーム方向候補設定部, 130…ビーム方向決定部, 140…ビームフォーミング部, 200…飛行体位置情報, 210…移動方向情報, 220…ビーム方向候補情報, 230…ビーム方向情報, DB…ビーム方向, DF…移動方向, PS…部分空間