(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045649
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】吸湿材及びその製造方法、除湿装置、並びに、ガスの乾燥方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/26 20060101AFI20230327BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230327BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230327BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20230327BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20230327BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20230327BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230327BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B32B27/26
B32B3/30
B32B9/00 A
B32B27/16 101
B01D53/26 210
B01J20/04 A
B01J20/30
B01J20/34 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154186
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】柳原 英人
(72)【発明者】
【氏名】小出 史代
(72)【発明者】
【氏名】長島 一樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 江洋
(72)【発明者】
【氏名】柳田 剛
【テーマコード(参考)】
4D052
4F100
4G066
【Fターム(参考)】
4D052AA00
4D052CA02
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4G066AA36B
4G066BA03
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4G066FA37
4G066FA38
4G066FA40
4G066GA01
(57)【要約】
【課題】水分子を短時間で選択的に吸着することができ、且つ簡易な手段によって吸湿性能を回復させることが可能な吸湿材を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた樹脂層とを備える積層体であって、前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、前記基材に対し前記樹脂層を設けた側の最表面が、リンクル構造を含む凹凸を有する積層体と、前記積層体の最表面に設けられた、潮解性を有する金属化合物を含有する吸水層とを備える、吸湿材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた樹脂層とを備える積層体であって、
前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、
前記基材に対し前記樹脂層を設けた側の最表面が、リンクル構造を含む凹凸を有する積層体と、
前記積層体の最表面に設けられた、潮解性を有する金属化合物を含有する吸水層とを備える、吸湿材。
【請求項2】
前記積層体の最表面の比表面積(S/A)が、1.005以上である、請求項1に記載の吸湿材。
【請求項3】
前記積層体の最表面の算術平均粗さ(Sa)が50nm以上であり、かつ前記最表面の最大高さ(Sz)が4000nm以上である、請求項1又は2に記載の吸湿材。
【請求項4】
前記積層体の最表面のSsk(偏り度)の絶対値が5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項5】
前記リンクル構造が一次リンクル構造と、前記一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項6】
前記積層体は、前記樹脂層の前記基材と反対側にさらにカバー層を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項7】
前記カバー層が、無機物含有層及び樹脂層のいずれかである、請求項6に記載の吸湿材。
【請求項8】
前記無機物が、ダイヤモンドライクカーボン、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及びこれらの複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項7に記載の吸湿材。
【請求項9】
前記積層体は、前記カバー層上に、さらにオーバーカバー層を備える、請求項6~8のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項10】
前記カバー層の厚み(ta)が5nm以上300nm以下である、請求項6~9のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項11】
前記樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対する前記カバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)が、0.1以上3500以下である、請求項6~10のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項12】
前記樹脂層の厚み(tb)が0.1μm以上15μm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項13】
前記オーバーカバー層が、無機物含有層及び樹脂層のいずれかである、請求項9~12のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項14】
前記積層体の最表面の水に対する接触角が25°以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の吸湿材。
【請求項15】
基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、
前記樹脂層前駆体に対してドライプロセスによる表面処理を行って該表面にリンクル構造を含む凹凸を形成する工程と、
前記リンクル構造を含む凹凸を形成した積層体の最表面に、潮解性を有する金属化合物と溶媒を含み、前記金属化合物の濃度が1.0~5.0mol/Lである溶液を接触させて、前記積層体上に前記金属化合物を含有する液膜を設ける工程と、
前記液膜を加熱して溶媒の含有量を低減することにより、前記積層体の最表面上に吸水層を設ける工程とを有する、吸湿材の製造方法。
【請求項16】
前記表面処理によりカバー層を形成する、請求項15に記載の吸湿材の製造方法。
【請求項17】
前記表面処理を行った前記基材の表面処理面にカバー層を形成した後さらにオーバーカバー層を形成する工程、又は前記表面処理により形成されたカバー層の上にオーバーカバー層を形成する工程をさらに備える、請求項15又は16に記載の吸湿材の製造方法。
【請求項18】
前記表面処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、及びプラズマ処理のいずれかである、請求項15~17のいずれか1項に記載の吸湿材の製造方法。
【請求項19】
前記塗布により形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程をさらに備え、前記表面処理を前記半硬化させた樹脂層前駆体に対して行う、請求項15~18のいずれか1項に記載の吸湿材の製造方法。
【請求項20】
前記積層体の最表面の水に対する接触角が25°以下である、請求項15~19のいずれか1項に記載の吸湿材の製造方法。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか1項に記載の吸湿材を備える、除湿装置。
【請求項22】
前記吸湿材を加熱する加熱手段を更に備える、請求項21に記載の除湿装置。
【請求項23】
前記加熱手段が前記吸湿材の前記基材と接するように配置されている、請求項22に記載の除湿装置。
【請求項24】
請求項1~14のいずれか1項に記載の吸湿材に、水蒸気を含むガスを接触させ、前記ガスの水蒸気の含有量を低減することを含む、ガスの乾燥方法。
【請求項25】
前記ガスが疎水性ガスである、請求項24に記載のガスの乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿材及びその製造方法、除湿装置、並びに、ガスの乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒反応の原料となる気体、及び化学センサーの評価対象である気体などは、極力水分が除去された状態で用いられることが望ましい。例えば、水蒸気を含む反応気体を供給した場合、触媒の反応活性点に水分子が吸着し、反応性及び目的物の収率の低下が予想される。また水蒸気を含む気体を化学センサーのセンサー部に供給した場合には、水分子がセンサー部に吸着し正確な測定を行うことが困難になる傾向にある。そこで、気体中の水分量を低減するために、各種吸湿材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カルシウム、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属カチオンを有するゼオライトの上記金属カチオンを、塩化水素、硫酸、硝酸および塩素からなる群より選択される少なくとも一種の気体分子と気相中で化学反応させて上記ゼオライト表面に潮解性を有する金属化合物を形成させてなる吸湿剤の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体中の水分を短時間で低減できるような応答性と、気体中から水分子を選択的に除去できるような選択性とに優れる吸着材があれば有用である。さらに、吸着材は繰り返しの使用に耐えることが可能なように、例えば、加熱処理などの簡易な手段によって、水分子を脱離させて吸着性能を回復させることができるものであることが望ましい。
【0006】
本発明は、水分子を短時間で選択的に吸着することができ、且つ簡易な手段によって吸湿性能を回復させることが可能な吸湿材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、上述のような吸湿材を備える除湿装置を提供することを目的とする。
本発明はまた、上述のような吸湿材を用いたガスの乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、基材にリンクル構造を含む凹凸を形成し、この面に潮解性を有する金属化合物を含む吸水層を設けた吸着材であれば、上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0008】
[1] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた樹脂層とを備える積層体であって、前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、前記基材に対し前記樹脂層を設けた側の最表面が、リンクル構造を含む凹凸を有する積層体と、前記積層体の最表面に設けられた、潮解性を有する金属化合物を含有する吸水層とを備える、吸湿材。
【0009】
[2] 前記積層体の最表面の比表面積(S/A)が、1.005以上である、[1]に記載の吸湿材。
【0010】
[3] 前記積層体の最表面の算術平均粗さ(Sa)が50nm以上であり、かつ前記最表面の最大高さ(Sz)が4000nm以上である、[1]又は[2]に記載の吸湿材。
【0011】
[4] 前記積層体の最表面のSsk(偏り度)の絶対値が5以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の吸湿材。
【0012】
[5] 前記リンクル構造が一次リンクル構造と、前記一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造とを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の吸湿材。
【0013】
[6] 前記積層体は、前記樹脂層の前記基材と反対側にさらにカバー層を備える、[1]~[5]のいずれかに記載の吸湿材。
【0014】
[7] 前記カバー層が、無機物含有層及び樹脂層のいずれかである、[6]に記載の吸湿材。
【0015】
[8] 前記無機物が、ダイヤモンドライクカーボン、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及びこれらの複合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[7]に記載の吸湿材。
【0016】
[9] 前記積層体は、前記カバー層上に、さらにオーバーカバー層を備える、[6]~[8]のいずれかに記載の吸湿材。
【0017】
[10] 前記カバー層の厚み(ta)が5nm以上300nm以下である、[6]~[9]のいずれかに記載の吸湿材。
【0018】
[11] 前記樹脂層の厚み(tb、単位:μm)に対する前記カバー層の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)が、0.1以上3500以下である、[6]~[10]のいずれかに記載の吸湿材。
【0019】
[12] 前記樹脂層の厚み(tb)が0.1μm以上15μm以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の吸湿材。
【0020】
[13] 前記オーバーカバー層が、無機物含有層及び樹脂層のいずれかである、[9]~[12]のいずれかに記載の吸湿材。
【0021】
[14] 前記積層体の最表面の水に対する接触角が25°以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の吸湿材。
【0022】
[15] 基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、前記樹脂層前駆体に対してドライプロセスによる表面処理を行って該表面にリンクル構造を含む凹凸を形成する工程と、前記リンクル構造を含む凹凸を形成した積層体の最表面に、潮解性を有する金属化合物と溶媒を含み、前記金属化合物の濃度が1.0~5.0mol/Lである溶液を接触させて、前記積層体上に前記金属化合物を含有する液膜を設ける工程と、前記液膜を加熱して溶媒の含有量を低減することにより、前記積層体の最表面上に吸水層を設ける工程とを有する、吸湿材の製造方法。
【0023】
[16] 前記表面処理によりカバー層を形成する、[15]に記載の吸湿材の製造方法。
【0024】
[17] 前記表面処理を行った前記基材の表面処理面にカバー層を形成した後さらにオーバーカバー層を形成する工程、又は前記表面処理により形成されたカバー層の上にオーバーカバー層を形成する工程をさらに備える、[15]又は[16]に記載の吸湿材の製造方法。
【0025】
[18] 前記表面処理が、化学的気相蒸着、物理的気相蒸着、及びプラズマ処理のいずれかである、[15]~[17]のいずれかに記載の吸湿材の製造方法。
【0026】
[19] 前記塗布により形成した樹脂層前駆体を半硬化させる工程をさらに備え、前記表面処理を前記半硬化させた樹脂層前駆体に対して行う、[15]~[18]のいずれかに記載の吸湿材の製造方法。
【0027】
[20] 前記積層体の最表面の水に対する接触角が25°以下である、[15]~[19]のいずれかに記載の吸湿材の製造方法。
【0028】
[21] [1]~[14]のいずれかに記載の吸湿材を備える、除湿装置。
【0029】
[22] 前記吸湿材を加熱する加熱手段を更に備える、[21]に記載の除湿装置。
【0030】
[23] 前記加熱手段が前記吸湿材の前記基材と接するように配置されている、[22]に記載の除湿装置。
【0031】
[24] [1]~[14]のいずれかに記載の吸湿材に、水蒸気を含むガスを接触させ、前記ガスの水蒸気の含有量を低減することを含む、ガスの乾燥方法。
【0032】
[25] 前記ガスが疎水性ガスである、[24]に記載のガスの乾燥方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、水分子を短時間で選択的に吸着することができ、且つ簡易な手段によって吸湿性能を回復させることが可能な吸湿材及びその製造方法を提供できる。
本発明によればまた、このような吸湿材を備える除湿装置を提供できる。
本発明によればまた、このような吸湿材を用いたガスの乾燥方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の吸湿材の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】リンクル構造を含む凹凸の一例を示す模式図である。
【
図4】リンクル構造を含む凹凸の一例を示す模式図である。
【
図5】実施例1で製造されたリンクル構造を含む凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5千倍に拡大して観察した観察画像である。
【
図6】実施例1で製造されたリンクル構造を含む凹凸を有する積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。
【
図7】実施例1及び比較例1で製造された吸湿材の吸水量の測定における湿度変化プロファイルを示すグラフである。
【
図8】実施例1及び比較例1で製造された吸湿材の吸水量の測定における3分間の吸水量を示すグラフである。
【
図9】実施例1及び比較例1で製造された吸湿材の水分子に対する選択性の評価における分析結果を示すグラフである。
【
図10】比較例1で製造された積層体の最表面を、走査型顕微鏡(SEM)により5万倍に拡大して観察した観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。図面における上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0036】
また、本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0037】
〔吸湿材〕
本発明の吸湿材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた樹脂層とを備える積層体であって、前記樹脂層が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成され、前記基材に対し前記樹脂層を設けた側の最表面が、リンクル構造を含む凹凸を有する積層体(以下、「本発明の積層体」と称す場合がある。)と、前記積層体の最表面に設けられた、潮解性を有する金属化合物を含有する吸水層とを備えるものである。
【0038】
本発明の吸湿材は、このような構造を備えることによって、水分を含むガスとの接触時には、ガスと吸水層との接触面積が従来の吸湿材に比べて大きく、より短時間で水分子を吸着することができる。
また、本発明の吸湿材が、水分子を選択的に吸着することができる理由は明らかでないが、本発明者らは化学反応を介した金属水酸化物の形成及び水酸基による材料の表面被覆によって上述のような効果が得られたものと推測している。
さらに本発明の吸湿材の吸水層に含まれる金属化合物は、水分子を吸着することで潮解するが、吸水層は基材上に維持、定着され、加熱等の簡易な操作によって水分子を再び放出することが可能であり、吸湿材は容易に吸湿性能を回復することができる。
【0039】
図1(a)~(c)は、本発明の吸湿材100(100a,100b,100c)の実施の形態の一例を示す断面図であり、後述する本発明の積層体10の最表面に吸水層20が形成されている。
【0040】
[積層体]
まず、本発明の積層体について
図2(a)~(c)を参照して説明する。
本発明の積層体は、例えば、
図2(a)~(c)に示すように、基材11と、基材11の少なくとも一方の面11Aに設けられた樹脂層12とを有し、樹脂層12が、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される。
【0041】
積層体10(10a)においては、樹脂層12上に他の層が設けられず、
図1(a)に示す積層体10aのように、樹脂層12が、基材11の一方の面11A側における積層体10の最表面10Aとなってもよい。また、積層体10は、
図1(b)に示す積層体10bのように、樹脂層12の上にカバー層13が設けられることが好ましく、また、
図1(c)に示す積層体10cのように、カバー層13の上にさらにオーバーカバー層14が設けられてもよい。
カバー層13が設けられ、かつカバー層13の上にオーバーカバー層14が設けられない場合には、
図1(b)に示すように、カバー層13が積層体10(10b)の最表面10Aを構成する。
また、カバー層13の上にさらにオーバーカバー層14が設けられる場合には、
図1(c)に示すように、オーバーカバー層14が積層体10(10c)の最表面10Aを構成する。
【0042】
なお、積層体10において、樹脂層12は、基材11の上に直接接触するように形成されてもよいが、基材11との間に接着層などの層が適宜設けられてもよい。
【0043】
以下、本実施形態の積層体についてより詳細に説明する。以下の説明では、本実施形態における積層体10、基材11、樹脂層12、カバー層13及びオーバーカバー層14をそれぞれ「積層体(I)」、「基材(I)」、「樹脂層(I)」、「カバー層(I)」、「オーバーカバー層(I)」ということがある。
【0044】
<リンクル構造を含む凹凸>
積層体(I)10では、基材(I)11の一方の面11A側における積層体(I)10の最表面10Aが、リンクル構造を含む凹凸を有する。
積層体(I)10は、リンクル構造を含む凹凸を有することで、この上に設けられた吸水層にその凹凸が反映され、その結果、吸水層と水分とを含むガスとの接触面積が大きくなることで、優れた吸湿効果が得られる。
【0045】
ここで、リンクル構造とは、樹脂層(I)12が座屈することで生じるしわ形状であり、粒子により形成される凹凸形状のように、点状の突起が多数ある凹凸形状とは異なる形状である。本実施形態では、樹脂層(I)自体の座屈により凹凸を形成することで、粒子脱落のおそれがない凹凸表面を形成できる。また、このリンクル構造は自発的に形成されるため、転写シートのような型は不要である。
即ち、基材上に凹凸形状を形成する技術としては、一般的に凹凸を形成する層に、ビーズ状の粒子を含有させ、この粒子により凹凸を形成する技術が知られているが、この方法では、粒子の脱落の問題がある。また、転写シート等を用いる方法では、型が必要であり、工程数が多く操作が煩雑となるが、樹脂層(I)自体の座屈により凹凸を形成することで、このような問題は解消される。
典型的なリンクル構造は、疑似的なフラクタル構造になっているため、倍率を変えたSEM画像、例えば1000倍と10000倍を比較した場合に、凹凸を拡大していったときに、さらに凹凸が見えることにより、リンクル構造であることは容易に判別できる。
【0046】
図3に、リンクル構造を含む凹凸の模式図を示す。リンクル構造は、複数のうねりcで構成されており、当該複数のうねりcは、それぞれ突条部aと、溝部bとを有する。突条部a及び溝部bは、それぞれ直線、曲線又はこれらを組み合わせた形状を有する。突条部aは、不規則に形成される。突条部aは、連続的に形成されてもよいし、不連続に形成されてもよい。
【0047】
リンクル構造は、後述するように、樹脂層(I)12に面方向に沿う圧縮応力が作用されたことに伴い形成される。ここで、圧縮応力は、面方向に沿う多数の方向に沿って作用され、それにより、突条部a及び溝部bが不規則に形成されると推定される。
【0048】
リンクル構造の有無は、積層体(I)の最表面を、走査電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡により、例えば1000~10万倍程度の倍率で確認できる。また、リンクル構造の有無は、三次元非接触表面形状計測機などにより得られる三次元画像などによっても確認できる。なお、リンクル構造を有する場合には、突条部aと溝部bがうねりcを形成するように現れる。うねりcは、一辺が例えば3~500μm、好ましくは4~100μm程度の方形又は矩形の観察画像のいずれかにおいて観察されるとよい。
【0049】
なお、リンクル構造を形成する突条部aは、不規則であり、また上記うねりcもμmオーダーの周期で現れる。そのため、突条部a及び溝部bにより形成されるうねりcは、上記観察画像において縦方向、横方向、及び斜め方向などの多方向(例えば、3方向)に沿って見ても、突条部aの頂部と溝部bの底部とがそれぞれ複数回(例えば、5回以上)現れる。なお、うねりcの周期は、典型的には一定ではなく、したがって、突条部aの頂部間の距離、溝部bの底部間の距離なども一定ではない。
なお、「うねりcの周期」とは、
図3に示すように、突条部aの頂点と、該突条部aに隣接する溝部bに隣接する突条部aの頂点との距離dをいう。
【0050】
また、リンクル構造は、互いにうねりの周期が異なる2以上のリンクル構造(以下、「高次リンクル構造」ともいう)を有する態様であってもよい。
例えば、リンクル構造は、一次リンクル構造と、一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造を含んでもよい。
図4に、一次リンクル構造と二次リンクル構造を含む場合のリンクル構造を含む凹凸の模式図を示す。
図4において、一次リンクル構造は複数のうねりcで構成され、二次リンクル構造は、当該複数のうねりcを構成する突条部a及び溝部bのそれぞれにおいて、うねりcよりも周期が小さい複数のうねりc’で構成される。
すなわち、リンクル構造は、一次リンクル構造と、一次リンクル構造を形成する比較的大きな突条部a及び溝部bそれぞれにおいて、より微細な突条部a’と溝部b’により形成される二次リンクル構造とを有するとよい。このように、一次リンクル構造に加えて二次リンクル構造を有すると、疑似フラクタル表面を形成することが可能である。
なお、一次及び二次リンクル構造を有するか否かは、異なる倍率で観察した2つの観察画像の両方にうねりが現れるか否かにより判断できる。例えば一方の観察画像の倍率(X)に対する他方の観察画像の倍率(Y)の比(Y/X)が、10以上(Y>Xとする)であっても、両方の観察画像において上記うねりが観察されると、一次及び二次リンクル構造があると判断できる。
【0051】
また、リンクル構造は、一次リンクル構造と、一次リンクル構造よりもうねりの周期が小さい二次リンクル構造に加えて、一次リンクル構造よりもうねりの周期が大きい三次リンクル構造を含んでもよい。
なお、一次、二次及び三次リンクル構造を有するか否かは、異なる倍率で観察した3つの観察画像全てにうねりが現れるか否かにより判断できる。例えば、第一の観察画像の倍率(X)と、第二の観察画像の倍率(Y)と、第三の観察画像の倍率(Z)が、10X≦Y、かつ、10Y≦Zであっても、全ての観察画像において上記うねりが観察されると、一次、二次及び三次リンクル構造があると判断できる。
【0052】
<積層体(I)の最表面の物性>
積層体(I)10の最表面10Aの凹凸が自発的に形成されたリンクル構造を有していることは、例えばSsk(スキューネス)の値に現れる。
Sskは、表面の凹凸の偏り度を示すパラメータである。この偏り度Sskは、二乗平均平方根高さSqの三乗によって無次元化した基準面において、Z(x,y)の三乗平均を表したもので、歪度(わいど)を意味し、平均面を中心とした山部と谷部の対称性を表す数値である。そのため、偏り度Ssk<0の場合は平均線に対して下側に偏っている、つまり凸の山部よりも凹の谷部が多く存在することを意味する。他方、Ssk>0の場合は平均線に対して上側に偏っている、つまり凹の谷部よりも凸の山部が多く存在することを意味する。そして偏り度Ssk=0の場合は、平均線に対して対称(正規分布)な状態を意味する。
【0053】
積層体(I)10の最表面10Aが有するリンクル構造は、樹脂層(I)12が座屈することで生じるしわ形状である。そのため、粒子により形成される凹凸形状に比べて、凸の山部と凹の谷部の対称性が高い。よって、積層体(I)10が有するリンクル構造のSskは、粒子により形成される凹凸形状のSskよりも0に近い値となると考えられる。
このような観点から、積層体(I)10の最表面10AのSskの絶対値が5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましく、0.8以下であることがよりさらに好ましい。中でも、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
【0054】
なお、SskはISO25178に基づいたパラメータであり、例えば以下の方法で算出できる。
三次元非接触表面形状計測機((株)菱化システム製のVertScan2.0 R5200G)を使用し、装置CCDカメラ SONY HR-50 1/3インチ(対物レンズ10倍、波長フィルタ530nm white)で測定モード;Wave、測定面積:469.17μm×351.89μmでの測定を行い、付属の解析ソフト(VS-Viewer Version5.1.3)により撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いで補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を行うことで算出できる。
【0055】
積層体(I)の最表面10Aは、その比表面積(S/A)が1.005以上であることが好ましい。比表面積を1.005以上とすることで、リンクル構造により十分に表面積が大きくなったことを意味する。そのため、吸湿材としての用途において、この上に形成される吸水層とガスとの接触面積を大きくして、吸湿効果を高めることができる。この観点から比表面積(S/A)は、1.01以上がより好ましく、1.05以上がさらに好ましく、1.1以上がよりさらに好ましい。
また、比表面積(S/A)は、特に限定されないが、リンクル構造の突条が高くなりすぎて構造的強度が低下することを防止するために、2以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
なお、比表面積(S/A)は、最表面10Aにおいて、測定対象エリアの面積をA、測定対象エリアの表面積をSとすると、S/Aにより算出できる。より詳細には、後述する実施例に示す方法で求めることができる。
【0056】
積層体(I)の最表面10Aの算術平均粗さ(Sa)は、特に限定されないが、例えば50nm以上である。Saが50nm以上であれば、リンクル構造により十分に凹凸が形成されたことを意味し、上記の通り、ガスとの接触面積の増加で吸湿効率を高めることができる。これら観点から、算術平均粗さ(Sa)は、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは300nm以上である。
また、算術平均粗さ(Sa)の上限は、特に限定されないが、リンクル構造の物理的強度を保つ観点から、好ましくは3000nm以下、より好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1800nm以下、よりさらに好ましくは1600nm以下、中でも好ましくは1300nm以下である。
【0057】
積層体(I)の最表面10Aの最大高さ(Sz)は、特に限定されないが、好ましくは4000nm以上、より好ましくは5000nm以上、さらに好ましくは6000nm以上である。Szが上記下限値以上であると、十分な座屈が進み、突条の高いリンクル構造が形成されたことを意味する。したがって、上記の通り、ガスとの接触面積の増加で吸湿効率を高めることができる。
最大高さ(Sz)の上限は、特に限定されないが、リンクル構造の物理的強度を保つ観点から、好ましくは20000nm以下、より好ましくは15000nm以下、さらに好ましくは13000nm以下、よりさらに好ましくは10000nm以下である。
なお、Sa及びSzは、後述する実施例に示す方法で測定することができる。
【0058】
積層体(I)の最表面10Aの水に対する接触角は25゜以下、特に10°以下であることが好ましい。水に対する接触角が25゜以下であれば、上記リンクル構造を含む凹凸の最表面と後述の潮解性を有する金属化合物を含む吸水層との接合をより強固なものとすることができ、吸水層が水分を吸収し、上記金属化合物が潮解し流動性を獲得した場合であっても、自重等の要因によって吸水層が失われることをより効果的に抑制することができる。このような作用によって、本発明の吸湿材が、より多くの繰り返し使用に耐え得る。また、吸水層の形成に当たり、後述の潮解性を有する金属化合物を含む液膜及び吸水層の定着をより容易なものにできることから、吸湿材の製造の歩留まりを向上させることもできる。
【0059】
<基材(I)>
積層体(I)に用いられる基材(I)は、特に限定されず、材料としては樹脂などの有機物、金属や金属酸化物などの無機物、有機無機複合体などが挙げられる。
基材(I)の形状としてはシートやフィルム、板状、ブロック形状、球形状、棒状、管状などの立体形状品などが挙げられる。
基材(I)は、樹脂からなることが好ましく、樹脂フィルムよりなることが好ましい。
【0060】
(樹脂フィルム)
基材(I)として用いられる樹脂フィルムは、必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。樹脂フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。樹脂フィルムが多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の効果を阻害しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよい。
【0061】
樹脂フィルムに使用する樹脂としては、ポリエステル、ポリアリレート類、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル系液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリイミド、ポリシクロオレフィン類等を例示することができる。これら樹脂は、樹脂フィルムにおいて1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂フィルムが多層である場合、各層を構成する樹脂は互いに異なる種類であってもよいし、互いに同じ種類であってもよい。また、樹脂フィルムは、上記各樹脂を2種以上組み合わせて各層を構成して、単層又は多層としてもよい。
【0062】
樹脂フィルムが単層構成であっても多層構成であっても、各層の主成分樹脂がポリエステルであるポリエステルフィルムであることが好ましい。
この際、「主成分樹脂」とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えばポリエステルフィルムを構成する樹脂のうち50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
樹脂フィルムの各層は、ポリエステルを主成分樹脂として含有すれば、ポリエステル以外の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
【0063】
上記ポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0064】
他方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸等の1種又は2種以上を挙げることができ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0065】
ポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が例示される。これらのなかでは、PET、PENが好ましく、より好ましくはPETである。
【0066】
樹脂フィルムは、フィルム表面に微細な凹凸構造を形成して各種機能を付与する目的及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、ポリエステルなどの樹脂成分を製造する工程で、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0067】
上記粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.01μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上2.5μm以下である。5μm以下とすることで、樹脂フィルムの表面粗度が粗くなるのを防止し、樹脂層(I)、カバー層(I)を形成させる際に不具合が生じにくくなる。
【0068】
粒子の含有量は、樹脂フィルム100質量%に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上2質量%以下である。粒子含有量をこのような範囲とすることで、フィルムの滑り性と透明性との両立が可能となる。
【0069】
樹脂フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、樹脂成分を製造する過程において添加することができる。例えば、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができる。好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのがよい。
【0070】
樹脂フィルムには、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0071】
樹脂フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは12μm以上250μm以下、より好ましくは25μm以上250μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
【0072】
樹脂フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にすることにより形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0073】
(樹脂以外の基材)
樹脂以外の基材としては、後述する樹脂層(I)が基材(I)上に定着できる限り特に限定されないが、金属、半金属、セラミックス、複合材料などが挙げられる。
金属としては、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、ニッケルなどが挙げられ、これらの金属を単体あるいは合金で用いてもよく、好ましくはアルミニウム、銅、鉄鋼系材料のSUSなどが挙げられる。
半金属としては、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられ、これらの半金属を単体あるいは合金で用いてもよい。
セラミックスとしては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機固体材料が挙げられ、好ましくはガラス、陶磁器などが挙げられる。
複合材料は、樹脂、金属、半金属及びセラミックなどからなる2種以上の異なる材料を一体的に組み合わせた材料であり、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、ナノコンポジット材料などが挙げられる。
【0074】
これら樹脂フィルム以外の基材の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは8μm以上300μm以下、さらに好ましくは10μm以上250μm以下である。
【0075】
<樹脂層(I)>
樹脂層(I)は、熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「硬化性樹脂組成物」ということがある)から形成される。樹脂層(I)は、硬化性樹脂組成物が硬化することで形成される硬化物である。硬化性樹脂組成物は硬化することで、基材(I)、カバー層(I)などに対して容易に接着できる。また、樹脂層(I)は、後述するように半硬化状態などでドライプロセスによる表面処理を行うと、面方向に沿って作用される圧縮応力に追従して座屈しリンクル構造を形成できる。
【0076】
(熱硬化性樹脂組成物)
硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合、当該熱硬化性樹脂組成物はバインダー樹脂を含有することが好ましく、バインダー樹脂と硬化剤を含むことがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂と硬化剤を含むことで、基材(I)、カバー層(I)などに対する接着性を確保しつつ、圧縮応力が作用されると座屈しやすくなり、リンクル構造を形成しやすい。
【0077】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、加熱することで硬化することが可能な熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含む場合には、硬化剤の存在下に硬化する樹脂である。
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。バインダー樹脂は、バインダー樹脂同士を反応させて樹脂層(I)を形成してもよい。
中でも、基材(I)又は基材(I)及びカバー層(I)との密着性、及び耐熱水性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ基含有樹脂、及びアルコキシル基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
また、バインダー樹脂は、ウレタン硬化やエポキシ硬化などの熱架橋が可能な樹脂であればよく、後述する硬化剤として使用されるイソシアネート化合物との反応性の観点から、一分子中に水酸基を2つ以上有するポリオールであることが好ましく、中でもアクリルポリオールが好ましい。
【0078】
アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性モノマーを重合した(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系重合体は、単独重合体であってもよいし共重合体であってもよいし、さらには(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系モノマーとは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。また、(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーは、重合性官能基を有するモノマーであり、重合性官能基としては、ビニル基などの(メタ)アクリロイル基以外の炭素-炭素不飽和結合を含む官能基が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基という表現を用いた場合、「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」の一方又は両方を意味するものとし、他の類似する用語も同様である。
【0079】
重合性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状アルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレートなどの重合性官能基以外の部分が炭化水素からなる炭化水素系(メタ)アクリレートが例示できる。
これらの中では、アルキル(メタ)アクリレート又は環状アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系重合体において、炭化水素系(メタ)アクリレート由来の構成単位は、例えば20質量%以上90質量%以下、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0080】
重合性モノマーとしては、炭化水素系(メタ)アクリレート以外のモノマー成分を使用してもよく、具体的には水酸基含有モノマーを使用することが好ましい。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、水酸基含有モノマーでいう水酸基は、芳香族環に直接結合しない水酸基である。これらの中では、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有モノマーは、上記炭化水素系(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、したがって、アクリル樹脂は、炭化水素系(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーを共重合した(メタ)アクリル系共重合体、又は炭化水素系(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーとこれら以外のモノマー成分(その他のモノマー成分)を共重合した(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。これにより、(メタ)アクリル系共重合体を、複数の水酸基を含有するアクリルポリオールとすることができる。
(メタ)アクリル系重合体において、水酸基含有モノマー由来の構成単位は、例えば0.5質量%以上80質量%以下が好ましく、1質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0081】
重合性モノマーとしては、炭化水素系(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマー以外のモノマー成分(その他のモノマー成分)を使用してもよく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のようなカルボキシル基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)メタクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどのスチレン誘導体;塩化ビニル、塩化ビニリデンのような各種のハロゲン化ビニルなどが挙げられる。
また、重合性モノマーは、樹脂層(I)の耐光性などを向上させる観点から、紫外線吸収機能を有する官能基を有するモノマーを使用してもよい。具体的には、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、ヒンダードアミン骨格などの紫外線吸収性官能基と、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有するモノマーが挙げられる。
【0082】
その他のモノマー成分(炭化水素系(メタ)アクリレート及び水酸基含有モノマー以外のモノマー成分)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体において、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
なお、上記各モノマー成分(炭化水素系(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー、その他のモノマー成分)は、上記で例示したように、分子中に重合性官能基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーを適宜含んでもよい。
【0083】
<硬化剤>
硬化剤としては、上記バインダー樹脂に反応して硬化できる化合物を使用すればよいが、バインダー樹脂との硬化性の観点から好ましくはイソシアネート化合物を使用する。イソシアネート化合物を使用する場合には、バインダー樹脂はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するとよく、官能基としては水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられ、イソシアネート基との反応性の観点から、水酸基が好ましい。
したがって、硬化剤としてイソシアネート化合物、バインダー樹脂としてポリオールを使用することが好ましく、アクリル樹脂を使用する場合には、アクリル樹脂は上記のとおり1分子中に水酸基を複数含有するアクリルポリオールであることが好ましい。
【0084】
イソシアネート化合物は、芳香族又は脂肪族ジイソシアネート或いは3価以上のポリイソシアネートが好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、又はこれらの三量体を使用することができる。
また、これらイソシアネート化合物の過剰量と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、ビウレット、シアヌル酸、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、又は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリアミド等の活性水素高分子化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を使用してもよい。
【0085】
<各成分の配合比>
熱硬化性樹脂組成物において、バインダー樹脂と硬化剤の配合比は、バインダー樹脂の水酸基の数と硬化剤のイソシアネート基の数の比を調整して混合すればよく、(イソシアネート基の数)/(水酸基の数)は0.05以上30以下が好ましく、0.1以上20以下がより好ましく、0.2以上15以下がさらに好ましい。
【0086】
<熱硬化性樹脂組成物の好ましい形態>
樹脂層(I)が熱硬化性樹脂組成物から形成される場合、当該樹脂層(I)はウレタン結合を有する樹脂を含有することが好ましい。ウレタン結合を有する樹脂を使用することで柔軟性が確保され、ドライプロセスにより表面処理がされた際に発生する圧縮応力により座屈しやすくなる。
ウレタン結合は、上記バインダー樹脂同士の反応、及びバインダー樹脂と硬化剤との反応の少なくともいずれかにより形成されることが好ましく、中でもバインダー樹脂と硬化剤との反応により形成されることがより好ましい。これら反応によりウレタン結合を形成すると、樹脂層(I)のカバー層(I)、基材(I)などに対する密着性を良好にしやすくなる。
また、バインダー樹脂との硬化性促進及び上記密着性の観点から、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
【0087】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
<光重合性化合物>
硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である場合、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されることで重合することが可能な化合物である。なお、活性エネルギー線の詳細は、後述する製造方法で述べる通りである。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物により形成される樹脂層(I)の樹脂成分は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートなどのプレポリマーと光重合性モノマーとを混合したもの、あるいは光重合性モノマーを単独で用いることができる。
【0088】
光重合性モノマーは、ラジカル重合性基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、多官能の光重合性モノマーが挙げられる。多官能の光重合性モノマーにおいて一分子中に含まれるラジカル重合性基の数は特に限定されず、2以上であればよい。
ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの炭素-炭素不飽和結合を含む官能基が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0089】
光重合性モノマーとして、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環、フェナレン環などを有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、これらの中ではフルオレン環を有するフルオレン系多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
フルオレン系多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-((メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシ))フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-((メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-((メタ)アクリロイルオキシポリ(プロピレンオキシ))-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-((メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシ))-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0090】
また、光重合性モノマーとしては、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレート以外にも様々な多官能(メタ)アクリレートを使用可能であり、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記した光重合性モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した中では、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートは他の光重合性化合物と併用してもよい。
光重合性モノマーは、単独で使用してもよいし、後述する単官能の光重合性化合物と併用してもよい。
【0091】
光重合性モノマーは、多官能に限定されず、単官能光重合性モノマーでもよい。単官能の光重合性モノマーは、単独で使用してもよいが、上記のとおり多官能の光重合性モノマーと併用してもよい。
単官能光重合性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体、ハロゲン化ビニルなどが挙げられる。これらの具体的な化合物としては、上記した(メタ)アクリル系重合体において例示したものが適宜使用できる。
【0092】
<光重合開始剤>
硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物を含む場合、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することで、後述するように樹脂層(I)前駆体に活性エネルギー線を照射することで樹脂層(I)前駆体を容易に硬化させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-ヒドロキシアセトフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類、オキシムエステル化合物などが挙げられる。中でも、α-ヒドロキシアルキルフェノン類は硬化時に黄変を起こしにくく、透明な硬化物が得られるので好ましい。
【0093】
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2質量部以上3質量部以下の範囲である。光重合開始剤の含有量が0.05質量部以上であることで、所望する開始効果が得られ、また、光開始剤の含有量が5質量部以下であることで、活性エネルギー線の照射より、硬化性樹脂組成物が硬化されすぎず、半硬化状態に留めやすくなる。
【0094】
なお、以上の説明では、硬化性樹脂組成物は、熱硬化性又は活性エネルギー線硬化性のいずれかを有する態様について説明したが、熱及び活性エネルギー線の両方により硬化可能な熱及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であってもよい。この場合には、硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂及び光重合性化合物の両方を含むとよい。
【0095】
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の主旨を損なわない範囲で、内消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料、無機粒子及び有機粒子等を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0096】
(樹脂層(I)の厚み)
樹脂層(I)の厚み(tb)は、形成したい凹凸の段差や用途に応じて調整すればよく制約はないが、0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。15μm以下であれば、樹脂層(I)自体の内部応力によって基材(I)から剥離することなどを防止できる。0.1μm以上の厚みであれば、樹脂層(I)の厚みを均一に保つことができ、リンクル構造により一定以上の粗さを確保できる。かかる観点から、樹脂層(I)の厚み(tb)は、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、よりさらに好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
なお、樹脂層(I)、並びに後述するカバー層(I)及びオーバーカバー層(I)の厚みは、微細形状測定機を使用した段差測定、あるいは走査電子顕微鏡(SEM)及び/又は透過電子顕微鏡(TEM)を使用した断面観察により、最大厚み(凸の山部)と最小厚み(凹の谷部)を測定し、これらの平均値により求めることができる。
【0097】
<カバー層(I)>
本発明においては、上記のとおり、樹脂層(I)の上にカバー層(I)を形成することが好ましい。カバー層(I)は、樹脂層(I)の上に直接接触する層として形成すればよい。カバー層(I)は、具体的には、無機物含有層、カバー樹脂層などが挙げられる。これらの中では、無機物含有層が好ましい。
なお、以下の説明においては、後述するオーバーカバー層(I)を構成する無機物含有層と区別するために、カバー層(I)を構成する無機物含有層を無機物含有層(1)ということがある。
【0098】
(無機物含有層(1))
無機物含有層(1)は、無機物により形成され、無機物を主成分として含有する層である。なお、無機物を主成分として含有するとは、無機物含有層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%を無機物が占めるということを意味する。無機物含有層(1)は、樹脂層(I)との密着性が良好な無機物により形成するとよい。また、無機物含有層(1)は、ドライプロセスにより樹脂層(I)の上に容易に成膜できる材料を使用して形成することが好ましい。
【0099】
無機物含有層(1)は、無機物として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物から選ばれる少なくとも一種から形成されることが好ましい。なお、ここでいう金属には、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムなどのいわゆる半金属も含まれる。
無機物含有層(1)において、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物を構成する金属としては、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ニオブ、金、銀、銅、インジウム、スズ、ニッケルなどが挙げられ、中でもケイ素、ニオブが好ましく、より好ましくはケイ素である。
【0100】
無機物含有層(1)に使用される無機物は、酸化ケイ素(シリカ)、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、炭化ケイ素、フッ素含有酸化ケイ素、フッ素含有炭化ケイ素などのケイ素系化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、酸化ニオブなどのニオブ系化合物、酸化亜鉛などの亜鉛系化合物、酸化チタンなどのチタン系化合物、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン及び、ITO、IZOなどの導電性酸化物から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0101】
無機物含有層(1)は、積層体(I)の硬度を高くでき、積層体(I)の耐久性を良好にできる観点から、上記した中でも、無機物としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化炭化ケイ素、及び炭化ケイ素の少なくともいずれかを含む層であることが好ましく、DLC、酸化ケイ素及び酸化ニオブの少なくともいずれかを含む層であることがより好ましい。これらの中でも、無機物含有層は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)により形成されたDLC層がより好ましい。DLCを使用することで、無機物含有層(1)成膜時に発生する膜応力が大きくなりやすく、上記した高次リンクル構造を形成しやすくなる。
【0102】
(カバー樹脂層)
カバー樹脂層は、後述するドライプロセスにより樹脂層(I)の上に成膜することが好ましい。カバー樹脂層は、樹脂成分により形成され、樹脂成分を主成分として含有する層である。ここで、樹脂成分を主成分として含有するとは、カバー樹脂層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上、中でも100質量%が樹脂成分が占めるということを意味する。
【0103】
カバー樹脂層に使用される樹脂成分としては、ドライプロセスにより樹脂層(I)の上に成膜できる樹脂成分を好ましく使用できる。具体的な樹脂成分としては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンなどが挙げられ、中でもフッ素系樹脂により形成されたフッ素系樹脂層が好ましい。フッ素系樹脂を使用することで、ドライプロセスにより容易に樹脂層(I)の上にカバー樹脂層を成膜できる。また、フッ素系樹脂を使用することで、カバー樹脂層が最表面となる場合には、積層体(I)に耐薬品性、滑り性又は撥液性を付与しやすくなる。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などが挙げられる。
【0104】
(カバー層(I)の形成)
カバー層(I)は、後述するようにドライプロセスにより形成されることが好ましいが、必ずしもドライプロセスにより形成される必要はない。カバー層(I)をドライプロセスにより形成しない場合には、予め別のドライプロセスにより樹脂層(I)にリンクル構造を含む凹凸を形成し、その後にカバー層(I)を成膜すればよい。
このようにドライプロセス以外にカバー層(I)を形成する場合には、無機物含有層、カバー樹脂層に使用される無機物、樹脂成分には上記以外のものも使用できる。具体的には、上記した樹脂成分以外にも、後述するオーバーカバー層(I)に使用できる樹脂成分として例示したものを使用してもよい。
【0105】
(カバー層(I)の厚み)
カバー層(I)の厚み(ta)は、5nm以上300nm以下が好ましい。カバー層(I)の厚み(ta)を上記範囲内にすることで、ドライプロセスにより成膜した際に適度に膜応力が発生し、樹脂層(I)に対して適度に圧縮応力を作用させ、所望の粗さのリンクル構造を形成しやすくなる。積層体(I)の最表面に所望の凹凸を形成しやすくする観点から、カバー層(I)の厚み(ta)は、10nm以上250nm以下がより好ましく、20nm以上200nm以下がさらに好ましい。
【0106】
(カバー層(I)と樹脂層(I)との厚み比率(ta/tb))
本発明において、樹脂層(I)の厚み(tb、単位:μm)に対するカバー層(I)の厚み(ta、単位:nm)の比(ta/tb)は、0.1以上3500以下が好ましい。厚み比を上記範囲内とすることで、ドライプロセスによりカバー層(I)を成膜した際に、該ドライプロセスにより所望の粗さのリンクル構造の凹凸を形成しやすくなる。また、カバー層(I)成膜前に予めリンクル構造を含む凹凸を樹脂層(I)表面に形成している場合には、カバー層(I)による凹凸の平滑化が防止できる。
積層体(I)の最表面に所望の凹凸を形成しやすくする観点から、上記厚み比は、1以上500以下がより好ましく、2以上400以下がさらに好ましく、5以上250以下がよりさらに好ましい。
【0107】
<オーバーカバー層(I)>
オーバーカバー層(I)は、カバー層(I)の上にさらに設けられる層である。オーバーカバー層(I)としては、無機物含有層、オーバーカバー樹脂層などが挙げられる。オーバーカバー層(I)は、材料を適宜変更することで様々な機能を積層体(I)の最表面に付与することができる。オーバーカバー層(I)は、1層単層からなるものでもよいし、2層以上が積層されてもよい。2層以上のオーバーカバー層(I)が設けられる場合、例えば、1層以上の無機物含有層と、1層以上のオーバーカバー樹脂層の組み合わせでもよい。
なお、以下の説明においては、上記したカバー層(I)を構成する無機物含有層(1)と区別するためにオーバーカバー層(I)を構成する無機物含有層を無機物含有層(2)ということがある。
【0108】
(無機物含有層(2))
無機物含有層(2)は、無機物により形成され、無機物を主成分として含有する層である。無機物含有層(2)は、カバー層(I)が無機物含有層(1)である場合には、無機物含有層(1)と組成が異なるとよく、例えば無機物含有層(1)に含有される無機物と異なる無機物を含むとよい。
無機物含有層(2)は、カバー層(I)との密着性が良好な無機物により形成するとよい。また、無機物含有層(2)は、ドライプロセスによりカバー層(I)の上に成膜できる材料がよいが、ドライプロセス以外の方法によりカバー層(I)の上に成膜できる材料でもよい。
【0109】
無機物含有層(2)は、無機物として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、金属、金属酸化物及び金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物から選ばれる少なくとも一種を含む薄膜から形成されることが好ましい。
無機物含有層(2)において、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、又はこれらの複合物を構成する金属としては、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ニオブ、金、銀、銅、インジウム、スズ、ニッケルなどが挙げられ、中でもケイ素、ニオブが好ましく、より好ましくはケイ素である。
【0110】
無機物含有層(2)に使用される無機物は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、炭化ケイ素、フッ素含有酸化ケイ素、フッ素含有炭化ケイ素などのケイ素系化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、酸化ニオブなどのニオブ系化合物、酸化亜鉛などの亜鉛系化合物、酸化チタンなどのチタン系化合物、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン及び、ITO、IZOなどの導電性酸化物からなる選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0111】
無機物含有層(2)は、上記した中でも、無機物として炭化ケイ素を含む層であることが好ましく、すなわち、無機物含有層は、無機物として炭化ケイ素を使用した炭化ケイ素層であることが好ましい。炭素ケイ素を使用することで、積層体(I)の最表面の硬度を高くでき、積層体(I)の耐熱性、耐久性なども良好にできる。
【0112】
(オーバーカバー樹脂層)
オーバーカバー樹脂層は、樹脂成分により形成され、樹脂成分を主成分として含有する層である。オーバーカバー樹脂層は、カバー層(I)がカバー樹脂層である場合には、カバー層(I)と組成が異なるとよく、例えばカバー樹脂層に含有される樹脂成分と異なる樹脂成分を含むとよい。
オーバーカバー樹脂層に使用できる樹脂成分としては、カバーコート層に接着できる限り特に限定されず、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0113】
上記した中では、フッ素系樹脂を使用したフッ素系樹脂層が好ましい。フッ素樹脂層を使用することで、積層体(I)に耐薬品性、滑り性又は撥液性を付与しやすくなる。また、フッ素系樹脂の具体的な化合物は、上記カバー層(I)で述べたとおりである。これら樹脂を使用することで、オーバーカバー樹脂層をドライプロセスにより形成可能である。
【0114】
(オーバーカバー層(I)の厚み)
オーバーカバー層(I)の厚みは、樹脂層(I)によって形成されたリンクル構造の凹凸が最表面において現れる限り特に限定されないが、5nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上250nm以下がより好ましく、20nm以上200nm以下がさらに好ましい。
【0115】
[吸水層]
本発明の吸湿材100(100a,100b,100c)は、
図1(a)~(c)に示すように、上述した本発明の積層体10(10a,10b,10c)の最表面に潮解性を有する金属化合物を含有する吸水層20を備える。本発明の吸湿材が吸水層を有することによって、周囲の雰囲気から水分子を吸着することができる。吸水層20は潮解性を有する金属化合物を含有するが、吸水層20は潮解性を有する金属化合物のみからなっていてもよい。
【0116】
潮解性を有する金属化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、並びに、アルミニウム等の貧金属の金属化合物等が挙げられる。
例えば潮解性を有する金属化合物としては、金属塩化物が挙げられる。金属塩化物としては、具体的には、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、及び塩化アルミニウム等が挙げられる。金属塩化物は、入手の容易性や価格の観点から、塩化カルシウムが好ましい。
【0117】
吸水層の厚みは、吸湿材の吸湿性の観点から1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。一方で、比表面積の観点から2000nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。
【0118】
[親水層]
本発明の吸湿材は、本発明の積層体の最表面と上記吸水層との間に親水層を有していてもよい。吸湿材が親水層を有することで、本発明の積層体と吸水層との接合をより強固なものとすることができる。
【0119】
親水層は、本発明の積層体及び吸水層の双方に対する親和性に優れるものであることが望ましい。親水層は、二酸化ケイ素及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも一種を含有してよく、二酸化ケイ素及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも一種のみからなるものあってよく、酸化チタンのみからなるものであってよい。
なお、親水層は、積層体(I)のカバー層(I)又はオーバーカバー層(I)であってもよい。
【0120】
〔吸湿材の製造方法〕
本発明の吸湿材の製造方法は、前述した本発明の吸湿材を製造することができる方法であればよく、特に制限はないが、例えば、本発明の吸湿材の製造方法に従って、
基材の少なくとも一方の面に熱又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層前駆体を形成する工程と、前記樹脂層前駆体に対してドライプロセスによる表面処理を行って該表面にリンクル構造を含む凹凸を形成する工程とを経て本発明の積層体を製造し、
次いで、
前記リンクル構造を含む凹凸を形成した積層体の最表面に、潮解性を有する金属化合物と溶媒を含み、前記金属化合物の濃度が1.0~5.0mol/Lである溶液を接触させて、前記積層体上に前記金属化合物を含有する液膜を設ける工程と、前記液膜を加熱して溶媒の含有量を低減することにより、前記積層体の最表面上に吸水層を設ける工程と
を経て製造される。
【0121】
以下に、本発明の吸湿材の製造方法を、積層体(I)の製造方法と、吸水層の形成方法とに基づいて説明するが、積層体(I)の製造と、吸水層の形成は、別々に行うものに限られず、連続して行うこともできる。
【0122】
[積層体(I)の製造方法]
積層体(I)はいかなる製造方法で製造してもよいが、本実施形態の一例に係る積層体(I)の製造方法は、以下の工程1~工程3を備える。
工程1:基材(I)の少なくとも一方の面に硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層(I)前駆体を形成する工程
工程2:工程1で形成した樹脂層(I)前駆体を半硬化させる工程
工程3:工程2で半硬化させた樹脂層(I)前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、基材(I)の一方の面側の表面においてリンクル構造を含む凹凸を形成する工程
ただし、工程2は、後述するように省略してもよく、したがって、工程3では未硬化の樹脂層(I)前駆体に対して表面処理を行ってもよい。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0123】
<工程1>
工程1では、基材(I)の少なくとも一方の面に硬化性樹脂組成物を塗布して樹脂層(I)前駆体を形成する。
工程1で使用される硬化性樹脂組成物の詳細は上記で説明したとおりである。硬化性樹脂組成物は、必要に応じて水、有機溶剤などの溶媒により希釈されていてもよい。なお、水、有機溶剤などの溶媒により希釈される場合、上記で述べた硬化性樹脂組成物の量(質量部など)、及び組成物を構成する各成分の量は、固形分基準を意味する。
使用する有機溶剤としては特に限定されず、硬化性樹脂組成物の組成に応じて溶解性や分散性などの観点から選べばよく、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、ジメチルグリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、各種アルカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。硬化性樹脂組成物を構成する成分は、溶媒に溶解していてもよいし、溶媒中に分散していてもよい。
硬化性樹脂組成物は、水、有機溶剤などにより希釈される場合には、固形分濃度が例えば0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは3質量%以上40質量%以下程度となるように調整することが好ましい。
【0124】
硬化性樹脂組成物を基材(I)上に塗布する方法としてはリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート等の従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、基材(I)が樹脂フィルムの場合には、硬化性樹脂組成物をインラインコーティングによって塗布してもよい。インラインコーティングとは、樹脂フィルムを形成した製造ライン上で硬化性樹脂組成物を塗布することをいう。
塗布後の溶剤の乾燥は、オーブンによる加熱乾燥や減圧乾燥機による無加熱の乾燥を用いることができる。
なお、硬化性樹脂組成物を塗布する基材(I)表面には、予めコロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理等の表面処理を施してもよい。
【0125】
<工程2>
工程2では、上記工程1で形成した樹脂層(I)前駆体中の硬化性樹脂組成物を半硬化状態とする。ここでいう半硬化とは、硬化性樹脂組成物を完全に硬化させていない状態をいい、さらに熱を照射させ、又はエネルギー線を照射すると、硬化性樹脂組成物の硬化が更に進行する状態をいう。
硬化性樹脂組成物が半硬化であるか否かは、例えば、溶剤を浸した綿棒で樹脂層(I)前駆体の表面を軽く50回擦り、基材(I)の表面が露出するか否かで確認できる。硬化性樹脂組成物が完全に硬化していれば、樹脂層(I)前駆体の表面を擦っても基材(I)の表面が露出しない。半硬化の度合いは、樹脂層(I)前駆体の表面が膜減り始める擦り回数や基材(I)の表面が露出するまでの擦り回数などから判断できる。なお、綿棒を浸す溶剤は、硬化性樹脂組成物を希釈した溶媒と同じものを用いることが好ましい。
【0126】
半硬化とする目的は、工程1で得た樹脂層(I)前駆体を工程3の真空ドライプロセスに持ち込む前にハンドリングしやすい性状とすること、及び、工程3で形成するリンクル構造を制御することにある。
よって例えば、工程1で得た樹脂層(I)前駆体のタックが強くて取り扱いが難しい場合は半硬化処理を行うことが好ましいが、取り扱い上問題がなければ本工程2は必須ではなく、加熱やエネルギー線照射を行わなくてもよい。
また、硬化性樹脂組成物を半硬化状態とすることで、工程3におけるドライプロセスによる表面処理により樹脂層(I)前駆体が座屈しやすくなり、リンクル構造を含む凹凸を形成しやすくなる。
【0127】
硬化性樹脂組成物が熱硬化性を有する場合、本工程2では、上記工程1で形成した樹脂層(I)前駆体を加熱により半硬化させる。樹脂層(I)前駆体を半硬化させる方法は、自然乾燥などのように常温で行ってもよいが、実用上の観点から、加熱乾燥などのように加熱により行うことが好ましい。なお、工程1の溶剤の乾燥を加熱乾燥で行う場合は、当該溶剤の乾燥が本工程2を兼ねていてもよい。
また、硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性を有する場合、本工程2では、工程1で形成した樹脂層(I)前駆体に活性エネルギー線を照射することで樹脂層(I)前駆体を半硬化させる。ただし、樹脂層(I)成分として熱及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる場合などには、加熱のみ、あるいは活性エネルギー線の照射のみで樹脂層(I)前駆体を半硬化させてもよいし、加熱と活性エネルギー照射を併用して樹脂層(I)前駆体を半硬化させてもよい。
【0128】
樹脂層(I)前駆体を加熱により半硬化させる場合、その加熱温度及び加熱時間は、硬化性樹脂組成物に含まれる成分に応じて設定すればよいが、例えば50℃以上200℃以下、好ましくは70℃以上150℃以下の温度で、例えば3秒以上30分以下、好ましくは30秒以上10分以下、より好ましくは40秒以上5分以下の時間で樹脂層(I)前駆体を加熱する。
【0129】
また、活性エネルギー線を照射することで樹脂層(I)前駆体を半硬化させる場合、使用される活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
紫外線照射により樹脂層(I)前駆体を半硬化させる場合には、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LEDランプ等を用いればよい。また、紫外線は、樹脂層(I)前駆体が半硬化する程度に照射すればよく、その照射量は特に限定されないが、例えば0.5~5000mJ/cm2、好ましくは1~2000mJ/cm2程度の積算光量で紫外線を照射すればよい。
【0130】
<工程3>
工程3は、工程2で半硬化させた樹脂層(I)前駆体、又は未硬化の樹脂層(I)前駆体に対してさらにドライプロセスによる表面処理を行い、基材(I)の一方の面側の表面にリンクル構造を含む凹凸を形成する工程である。工程3ではドライプロセスによってカバー層(I)を形成してもよいが、カバー層(I)を形成せず、成膜を伴わないドライプロセス処理を行ってもよい。
また、リンクル構造は、上記のとおり高次リンクル構造を有することがあるが、高次リンクル構造は、工程3において形成されるとよい。
なお、ドライプロセスは、半硬化させた樹脂層(I)前駆体、又は未硬化の樹脂層(I)前駆体に減圧下又は真空中で表面処理を行う手法である。
【0131】
本実施形態において、ドライプロセスによる表面処理でリンクル構造を含む凹凸が形成される原理、及び高次リンクル構造が形成される原理は定かではないが、以下のように推定される。
半硬化又は未硬化の樹脂層(I)前駆体に対してドライプロセスによってカバー層(I)を形成すると、樹脂層(I)前駆体がドライプロセス処理によるエネルギー(プラズマからの光、輻射熱、電子やイオン、あるいは、入射粒子から受けるエネルギー)を受けて硬化が進むと考えられる。その際、ドライプロセス処理によるエネルギーを受けた樹脂層(I)前駆体が昇温しながら硬化収縮し流動性を失っていく過程と、カバー層(I)が成長するときに膜応力を生成する過程が同時に進行する。その中で、樹脂層(I)前駆体の面方向に沿う圧縮応力が大きくなり、樹脂層(I)前駆体がその圧縮応力に対して抵抗できなくなった時点で座屈が起こり、リンクル構造が形成されると推定される。
また、カバー層(I)を形成せず、成膜を伴わないドライプロセスであっても、同様にドライプロセス処理によるエネルギーにより樹脂層(I)前駆体に面方向に沿う圧縮応力が生成し、樹脂層(I)前駆体がその圧縮応力に対して抵抗できなくなった時点で座屈が起こりリンクル構造が形成されると推定される。
なお、カバー層(I)を形成する際に、カバー層(I)成膜時に発生する膜応力が大きい場合には、早い段階で1度目の座屈が起こって大きなうねり(一次リンクル構造)が生成し、その後、樹脂流動性が少し下がった段階で2度目の座屈が起こると小さなうねり(二次リンクル構造)が生成すると考えられる。
【0132】
なお、リンクル構造におけるうねりの大きさ(すなわち、表面粗さ(Sa、Sz)、比表面積S/A、Sskの値など)は、樹脂層(I)及びカバー層(I)の厚み、樹脂層(I)前駆体の半硬化又は未硬化状態における硬さ、樹脂流動性のバランスで変化すると推定される。したがって、うねりの大きさは、樹脂層(I)及びカバー層(I)の厚み、樹脂層(I)及びカバー層(I)に含有される成分、及び硬化条件などを適宜変更することで調整できる。
また、ドライプロセスによる表面処理は、上記のとおり樹脂層(I)前駆体の硬化を進行させるものであり、工程3では例えば樹脂層(I)を全硬化させてもよい。なお、全硬化とは、樹脂層(I)を加熱し、又は活性エネルギー線を照射させても、硬化が実質的に進行しない状態を意味する。
【0133】
本発明の積層体(I)の製造方法では、ドライプロセスによる表面処理によってカバー層(I)を形成することが好ましい。ドライプロセスによる表面処理によってカバー層(I)を形成すると、上記のとおり膜応力が生じて、リンクル構造を形成しやすくなり、さらには高次リンクル構造も形成可能となる。また、ドライプロセスによる表面処理によってカバー層(I)を形成することで、工程3において、リンクル構造を含む凹凸を形成しつつ、カバー層(I)も形成できるので工程を簡略化できる。
なお、ドライプロセス処理を行ったか否かは、断面をSEM及び/又はTEMで観察することによって判断できる。例えば、カバー層(I)が結晶性材料からなる場合、カバー層(I)の厚み方向で結晶粒径が変化していれば、ドライプロセス処理を行っていると判断できる。ドライプロセスによる成膜が進行するにつれて樹脂層(I)表面に生成した結晶核が成長し、徐々に粒径が拡大していくため、カバー層(I)表面の結晶粒径が最も大きくなり、樹脂層(I)に近づくにしたがって結晶粒径が小さくなる傾向がある。
一方で、溶剤を塗布するウェット処理を行っている場合はこのような結晶粒径の変化は見られない。ウェット処理の場合は、塗膜を乾燥させる過程で溶剤が蒸発するため、カバー層(I)の厚み方向全体にわたって微小なボイドが生じやすく低密度な膜となりやすい。
【0134】
ドライプロセスによる表面処理によってカバー層(I)を形成する場合、当該ドライプロセスによる表面処理は、例えば、化学的気相蒸着(CVD)、物理的気相蒸着(PVD)などが挙げられる。
ドライプロセスは、真空又は減圧下で行われる処理であることが好ましい。真空又は減圧下で表面処理が行われると、半硬化又は未硬化の樹脂層(I)前駆体は酸素が少ない雰囲気下に置かれることになり、ドライプロセスにより硬化が進行しやすくなる。そのため、真空又は減圧下でドライプロセスを行うと、リンクル構造を形成しやすい。特に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の場合は、ラジカル重合を妨げる酸素阻害が抑制されることから架橋が進みやすくなる。
真空又は減圧下で行われるドライプロセスにおける圧力は、ドライプロセスの手法にもよるが、例えば15Pa以下、好ましくは10Pa以下、より好ましくは1Pa以下である。また、ドライプロセスにおける圧力の下限は、特に限定されないが、各装置の性能限界を考慮すると、例えば、1×10-7Paである。
【0135】
CVDは、特に限定されず、プラズマCVD、熱CVD、cat-CVD(触媒化学気相成長法)などがあるが、プラズマCVDが好ましい。プラズマCVDを使用することで、リンクル構造を形成しやすくなる。CVDは、リンクル構造を形成しやすくする観点から減圧下で行うことが好ましく、カバー層(I)を形成する際の圧力は、成膜速度と凹凸構造形成性との観点から、好ましくは15Pa以下、より好ましくは1×10-2Pa以上10Pa以下、更に好ましくは1×10-1Pa以上1Pa以下である。
【0136】
カバー層(I)を形成する際の出力条件は、カバー層(I)に必要十分な膜応力を発生させる観点から、好ましくは100W以上1500W以下、より好ましくは300W以上1200W以下、更に好ましくは400W以上1000W以下である。
カバー層(I)の膜厚調整は、公知の方法で行うことができ、例えば、プラズマCVDを使用する場合、出力、原料ガスの圧力、原料ガスの濃度、プラズマ発生時間等を調節することなどによりできる。
CVDにより表面処理を行う場合、カバー層(I)には耐水性、耐久性向上のため、必要に応じて、電子線照射による架橋処理を施してもよい。
【0137】
CVDは、例えば、無機物含有層(1)、カバー樹脂層を形成する際に使用することが好ましく、特にDLCを無機物として含む無機物含有層、炭化ケイ素及び/又は酸化ケイ素を無機物として含む無機物含有層、フッ素系樹脂などを樹脂成分として含むフッ素系樹脂層などを形成する際に好適に使用できる。
【0138】
PVDとしては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどが挙げられ、これらの中では、真空蒸着、スパッタリングが好ましい。PVDは、例えば、無機物含有層(1)に含有させる無機物として、金属、酸化ニオブ、酸化ケイ素などの金属酸化物、金属窒化物などを使用する場合に好適である。
また、真空蒸着は、無機物含有層(1)に含有される無機物が金、銀、銅、アルミニウムなどの金属、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、フッ化カルシウムなどのフッ化物を使用する場合に好適であり、また、スパッタリングは、無機物含有層(1)に含有される無機物が金、銀、銅、アルミニウムなどの金属、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、ITO、IZOなどの金属酸化物を使用する場合に好適である。
【0139】
PVDによりカバー層(I)を形成する際の圧力は、凹凸構造形成性と真空排気能力などの観点から、好ましくは1×10-7Pa以上20Pa以下、より好ましくは1×10-6Pa以上10Pa以下、更に好ましくは1×10-4Pa以上5Pa以下である。
【0140】
ドライプロセスによる表面処理によりカバー層(I)を形成する場合には、カバー層(I)を形成するための原料を適宜選択して、ドライプロセスを行うとよい。
例えば、無機物としてDLCを含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料として炭化水素などを使用するとよい。具体的には、式C4n+6H4n+12で(nは1以上の整数)表される脂環式炭化水素、例えば、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ペンタマンタン、テトラマンタン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセチレン、エチレン、プロピレン、メタン、エタン、プロパン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これら原料は、各化合物を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、原料ガスをアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスで希釈して使用してもよい。
もちろん、DLCを含む無機物含有層(1)は、PVDにより形成してもよい。
【0141】
また、例えば無機物として炭化ケイ素を含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてテトラメチルシラン、ヘキサメチルジシランなどのオルガノシランを使用するとよい。また、シラン、ジシランなどのケイ素成分と、炭素原子数1~6のアルカンなどの炭素成分の混合ガスに適宜水素ガスも混入させてもよい。ただし、炭化ケイ素を形成できる限り、他の原料を使用してもよい。
さらに、例えば、フッ素樹脂層をCVDにより形成する場合には、原料として、CF4、C2F4、C2F6、C3F8、C4F8、C5F8などのフッ素系ガスを使用すればよい。
【0142】
さらに、例えば無機物として炭化酸化ケイ素を含む無機物含有層をCVDにより形成する場合には、原料としてのケイ素化合物(以下、「ケイ素化合物原料」ともいう)を使用すればよい。ケイ素化合物原料は、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用できる。気体の場合にはそのまま反応器内部(例えば、放電空間)に導入することもできる。液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用することができる。また、溶媒希釈してから使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n-ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
【0143】
上記ケイ素化合物原料としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4-ビストリメチルシリル-1,3-ブタジイン、ジ-t-ブチルシラン、1,3-ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1-(トリメチルシリル)-1-プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、メチルシリケート(例えば、コルコート株式会社製「メチルシリケート51」)等を挙げることができる。
【0144】
工程3におけるドライプロセスによる表面処理において、カバー層(I)が形成されなくてもよい。カバー層(I)が形成されない場合の表面処理は、表面処理により樹脂層(I)前駆体が座屈してリンクル構造を含む凹凸を形成できる限り特に限定されないが、プラズマ処理などが挙げられる。
プラズマ処理としては、特に限定されないが、真空又は減圧プラズマ処理などの方法で行うとよいが、これらの中では真空プラズマ処理が好ましい。また、プラズマ処理は、ガスをプラズマ化してプラズマ処理を行えばよい。使用するガスの種類は、例えば、酸素ガス、水素ガス、窒素ガス、又はアルゴンやヘリウムのような希ガスが挙げられる。ガスは、これらのガスの1種のみを用いてもよく、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。これらの中ではアルゴンが好ましい。
【0145】
本実施形態では、上記したように硬化が十分に進んでいない樹脂層(I)前駆体に対してドライプロセスによる表面処理を行う。したがって、リンクル構造を安定的に形成するために、樹脂層(I)前駆体を半硬化させた後(工程2)、ドライプロセスによる表面処理(工程3)に移るまでの時間や保存温度を調整することが好ましい。
工程2と工程3の間のインターバル(すなわち、加熱及び/又は活性エネルギー線照射が終了してから、ドライプロセスによる表面処理を開始するまでの時間)は、表面処理を開始させる際に樹脂層(I)前駆体が所望の半硬化状態になる限り特に限定されないが、例えば24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。当該インターバルの下限は特に限定されず、0分以上であればよい。
また、工程2と工程3の間のインターバルでは、特に限定されないが、樹脂層(I)前駆体が形成された基材(I)を例えば0℃以上40℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下の温度で放置すればよい。
また、インターバル時間が長い場合には、工程2と工程3の間で硬化が進行することも考慮して、工程2における加熱条件、活性エネルギー線の照射条件などを適宜選択すればよい。
【0146】
本発明の積層体(I)の製造方法においては、以上の工程1~工程3、又は工程1及び工程3を経ることで、基材(I)の上に樹脂層(I)、又は樹脂層(I)及びカバー層(I)が形成されるとともに、樹脂層(I)表面又はカバー層(I)表面にリンクル構造を含む凹凸を形成することができる。
【0147】
<工程4>
本発明の積層体(I)の製造方法では、上記工程1~工程3、又は工程1及び工程3の後に以下の工程4をさらに備えてもよい。
工程4:工程3で表面処理を行った基材(I)の一方の面側にカバー層(I)を形成し、又は表面処理により形成されたカバー層(I)の上にオーバーカバー層(I)を形成する工程
本発明の積層体(I)の製造方法は、工程4を備えることで、上記した表面処理が施された樹脂層(I)の上にカバー層(I)、又は既にカバー層(I)がある場合にはオーバーカバー層(I)を形成できる。
【0148】
工程4において、カバー層(I)又はオーバーカバー層(I)は、工程3において無機物含有層、樹脂層(I)を形成する方法と同様の方法で形成することができ、すなわち、無機物含有層、樹脂層(I)は、ドライプロセスによる表面処理により形成するとよい。これら各層の形成方法の具体的な説明は、工程3において説明したとおりであるので、その説明は省略する。
また、工程4においてカバー層(I)又はオーバーカバー層(I)は、ドライプロセス以外の方法によっても形成でき、例えば、無機物、樹脂成分、又は無機物及び樹脂成分を含む塗布液を、基材(I)の一方の面側に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を必要に応じて乾燥、硬化などすることで形成してもよい。
【0149】
[吸水層の形成方法]
吸水層は、上記のようにして製造された積層体(I)の最表面に、潮解性を有する金属化合物と溶媒を含む溶液(以下、「吸水層用溶液」と称す場合がある。)を接触させて、潮解性を有する金属化合物を含有する液膜を形成し、この液膜を加熱して溶媒を除去する(溶媒の含有量を低減する)ことにより製造することができる。
【0150】
吸水層用溶液中の潮解性を有する金属化合物の濃度は、通常1.0~5.0mol/Lである。この吸水層用溶液の濃度の調整によって、形成される吸水層の厚みを調整することができる。
【0151】
吸水層用溶液の潮解性を有する金属化合物濃度の下限値は、好ましくは1.3mol/L以上、より好ましくは1.5mol/L以上、さらに好ましくは1.7mol/L以上又は2.0mol/L以上である。吸水層用溶液の金属化合物濃度の下限値を上記範囲内とすることで、積層体(I)上に設けられる液膜の膜厚をより十分なものとすることができ、得られる吸湿材における吸水層が薄くなり吸水性能が低下することをより十分に抑制できる。吸水層用溶液の金属化合物濃度の上限値は、好ましくは4.5mol/L以下、より好ましくは4.0mol/L以下又は3.5mol/L以下である。吸水層用溶液の金属化合物濃度の上限値を上記範囲内とすることで、リンクル構造を含む凹凸に液溜まりが形成され、この液溜まり部分に由来する吸水層の形成によって表面積が低下することをより十分に抑制することができる。
【0152】
積層体(I)に対して吸水層用溶液を接触させる手段は、例えば、積層体(I)を吸水層用溶液中に浸漬させてもよく、吸水層用溶液を積層体(I)に塗布してもよい。塗布は、例えば、スプレー等によって行ってもよい。
【0153】
吸水層用溶液は潮解性を有する金属化合物と溶媒とを含むが、溶液中で該金属化合物は、完全に溶解してもよく、化合物として存在してもよく、電離してイオンとして存在していてもよい。該金属化合物が溶液中でイオンとして存在している場合には、後の工程において液膜から溶媒の含有量を低減していく過程で化合物を形成し析出することで、元の金属化合物の状態に戻る。吸水層用溶液の溶媒としては、通常水が用いられる。
【0154】
形成された吸水層用溶液の潮解性を有する金属化合物を含む液膜を加熱し、液膜における溶媒の含有量を低減するための液膜の加熱は、液膜を設けた積層体(I)を加熱された雰囲気下に静置することによって行ってもよく、積層体(I)自体を加熱することによって行ってもよい。加熱温度は、通常90~200℃、好ましくは100~150℃である。加熱時間は、通常0.01~5時間、好ましくは0.05~3時間である。液膜の加熱は、液膜における溶媒の含有量の低減を促進する観点から、乾燥ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0155】
〔除湿装置〕
本発明の吸湿材は、水分子を短時間で選択的に吸着することができ、且つ簡易な手段によって吸湿性能の回復が可能であることから、除湿装置に使用する吸湿材として好適に使用することができる。
【0156】
本発明の除湿装置は、本発明の吸湿材を備える。本発明の除湿装置は、本発明の吸湿材を加熱する加熱手段を更に備えてもよい。当該加熱手段は吸湿材が設置される空間を加熱するものであってよく、吸湿材を構成する基材を加熱するものであってもよい。
加熱手段は、例えば、ヒーター等が挙げられる。ヒーターは、例えば、電熱線等であってよい。加熱手段は、例えば、本発明の吸湿材を構成する基材と接するように配置されていてもよい。基材と加熱手段が接触する場合、基材と加熱手段とが離隔して配置される場合に比べ効率的に吸湿材を加熱することができる。
【0157】
〔ガスの乾燥方法〕
本発明の吸湿材はまた、ガスの乾燥方法に好適に使用することができる。本発明のガスの乾燥方法は、本発明の吸湿材に、水蒸気を含むガスを接触させることでガスの水蒸気の含有量を低減する。上記ガスの乾燥方法は、供給するガスの温度を50℃以下に調整してよい。ガスの温度が高い場合、当該熱によって、吸水層に取り込まれた水分子のガス中への再放出及び拡散等をより十分によくできる。
【0158】
本発明のガスの乾燥方法を適用する対象となるガスは、例えば、化学合成された気体状の化合物、大気、呼気、及び燃焼ガス等であってよい。上記ガスの乾燥方法を適用する対象となるガスは疎水性ガスであってよい。本発明の吸湿材を疎水性ガスの乾燥に用いる場合には、本発明の吸湿材による乾燥効果をより顕著に得ることができる。
【0159】
疎水性ガスは、例えば、長鎖アルキル鎖を有するような化合物(例えば、炭素数5~10程度の有機化合物)等が挙げられ、全体として疎水性を有するものであればよく、極性基を有していても構わない。長鎖アルキル基を有する化合物としては、ノナン酸、ノナナール、ノナノン、ノナノール、ノニルアミン及びノナン等が挙げられる。親水性を有するガスの乾燥を行う場合には、上記ガスの乾燥処理の操作中に、吸湿材の吸水層に水分子が吸着され、吸水層中の金属化合物の少なくとも一部が潮解することによって吸水層における水分子の含有量が上昇する。水分子の含有量が上昇した吸水層に対して、親水性ガス自体が吸着し得るために、対象となるガス中の水分子のみを吸着すことが困難となる傾向にある。そのため、本発明の吸湿材を親水性のガスの乾燥に用いる場合には、吸湿材に供給するガスの供給速度等の条件を調整することが好ましい。
【実施例0160】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法及び評価方法は次のとおりである。
【0161】
(1)樹脂層の厚み
樹脂層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO4染色し、樹脂層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H-7650」、加速電圧100kV)を用いて樹脂層の厚みを測定した。
なお、厚みは、最大厚みと最小厚みの平均値を用いた。
【0162】
(2)カバー層の厚み
エポキシ樹脂包埋超薄切片法で試料を調整し、断面TEM装置(日本電子株式会社製「JEM-1200EXII」)により加速電圧120kVの条件でカバー層の厚みを測定した。
【0163】
(3)最大高さ(Sz)、最大高さ(Sz)及び比表面積(S/A)
三次元非接触表面形状計測機((株)菱化システムのVertScan2.0 R5200G)を用いて積層体における最表面のSa、Sz、及び比表面積(S/A)を測定した。測定は10倍対物レンズで496.17μm×351.89μmの範囲で行った。
なお、比表面積(S/A)において、Aは測定対象エリアの面積、Sは測定対象エリアの表面積、S/Aは測定対象エリアの比表面積を表す。
【0164】
(4)偏り度
ISO25178に基づき、前述の方法で得られた積層体における最表面の偏り度Sskを測定した。
【0165】
(5)表面観察
積層体の最表面を、走査型顕微鏡を用いて5千倍、5万倍で撮影して、60μm×40μmの観察画像、及び6μm×4μmの観察画像を得た。
【0166】
(6)接触角
積層体の最表面に対して、接触角計(協和界面科学株式会社製、「DropMaster 500」)を用いて、水滴に対する接触角を測定した。
【0167】
(7) 吸水量
吸湿材の吸水量は以下のように評価した。
140mLの密閉容器内に、温湿度センサー(サンワサプライ株式会社製、商品名:温湿度センサーUNI-01-B002)を収容し、温度25℃において相対湿度90%に調整された空気で置換した。温度25℃の下、蓋を閉めた時点を起点として、50秒間静置後、評価対象の吸湿材を前記密閉容器内に収納した。再び蓋を閉めた時点を起点として、温湿度センサーによって密閉容器内の湿度の変化を測定した。測定の間、温度は25℃に維持した。
吸湿材を密閉容器内に収納し、蓋を閉めてから180秒間に測定された湿度変化から、吸水量を算出した。
【0168】
(8) 水分子に対する選択性
吸湿材の水分子に対する選択性を以下のように評価した。
まず、20mLのバイアル瓶に予め湿度を調製した空気(25℃、相対湿度90%RH)で置換した。次に、アセトン2μLをバイアル瓶の底に滴下し、容器を密閉した。バイアル瓶を密閉した状態で、アセトンが容器内に十分拡散し、飽和するように30分間静置した。予め110℃、3分間の加熱処理を施すことで脱水した評価対象の吸湿材を上記バイアル瓶内に懸垂させ、3分間静置させた。その後、バイアル瓶から吸湿材を取出し、加熱処理を行い、脱離したガスをガスクロマトグラフィー-質量分析法にて分析した。
【0169】
[実施例1]
<積層体(I)の製造>
(熱硬化性樹脂組成物(AC1)の調製)
バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(株式会社日本触媒製、製品名「UV-G301)2.00質量部と、硬化剤としてのイソシアネート系化合物(三井化学株式会社製、製品名「タケネートD-165N」、ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物)2.46質量部と、溶剤としての酢酸エチル10.70質量部とを混合して、固形分濃度21.83質量%の熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を用意した。
【0170】
(樹脂層前駆体の形成)
得られた熱硬化性樹脂組成物(AC1)の希釈液を、基材としてのPETフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「T100タイプ」、厚み188μm)の一方の面上に、硬化後の厚みが5μmとなるように塗布して、80℃で1分間加熱することで、乾燥かつ硬化して、半硬化の樹脂層前駆体を形成した。その後、室温(23℃)で3時間放置した後、直ちに以下に示すCVD処理による成膜処理を開始した。
【0171】
(カバー層の形成)
プラズマCVD装置(ユーテック株式会社製)を使用した。装置を真空に排気した後、アセチレンガスを導入して、分圧を1Paとし、1Paの真空下にて電力500WでCVDによる成膜処理を行い、その後、酸素プラズマによる親水化処理を施し、半硬化の樹脂層前駆体上に厚み90nmの無機物含有層(1)(DLC層)を形成し、基材/樹脂層/カバー層の積層構造を有する積層体(ta/tb=18)を得た。
【0172】
得られた積層体の最表面を5千倍、5万倍で撮影した画像を
図5、6に示す。
図5、6に示すように、各観察画像において、不規則な突条が現れており、リンクル構造が見られた。また、倍率比が10倍である両観察画像でリンクル構造が見られたことから、最表面に現れた凹凸は、一次及び二次リンクル構造を有することが理解できる。
また、得られた積層体の最表面の算術平均粗さ(Sa)、最大高さ(Sz)、比表面積(S/A)、水に対する接触角、及び偏り度(Ssk)の測定結果を表1に示す。
【0173】
(吸水層の形成)
得られた積層体の最表面(リンクル構造を含む凹凸が形成された面)に、塩化カルシウム濃度が2.5mol/Lである塩化カルシウム水溶液を滴下し、液膜を形成した。液膜の形成後、100℃の窒素気流下で1分間乾燥させることによって、吸水層を形成し、吸湿材を製造した。
得られた吸湿材の吸水量の測定結果を
図7,8に、水に対する選択性の分析結果を
図9に示す。
なお、
図7中、縦軸は密閉容器内の25℃における相対湿度を示し、横軸は経過時間を示す。また、
図8は吸水量の算出結果を示す。
【0174】
[比較例1]
実施例1において、樹脂前駆体の形成を行わないこと以外は同様にして積層体及び吸湿材を製造し、同様に評価を行った。得られた積層体の最表面を5万倍で撮影した画像を
図10に、最表面の測定結果を表1に示す。また、吸水量の測定結果を
図7,8に、水に対する選択性の分析結果を
図9に示した。
【0175】
図5、6に示すように、実施例1では、半硬化した樹脂層前駆体にCVDによる表面処理を施すことで、積層体の最表面にリンクル構造を含む凹凸を形成できた。
それに対して、比較例1の積層体は、
図10に示すように最表面はほぼフラットであり、リンクル構造を含む凹凸を有していなかった。
【0176】
【0177】
表1及び
図5,6に示すように、実施例1では、半硬化した樹脂層前駆体にドライプロセスによる表面処理を施すことで、積層体の最表面にリンクル構造を含む凹凸を形成できた。
それに対して、比較例1の積層体は、表1及び
図10に示すように、最表面にリンクル構造を含む凹凸を有していなかった。
また、
図7,8より、最表面にリンクル構造を含む凹凸を形成した積層体の最表面に吸水層を形成した実施例1の吸湿材は、比較例1の吸湿材よりも、容器内の水分を1.9倍も多くしかも短時間で吸着していることが確認された。
また、
図9より、実施例1で得られた吸着材の置かれる環境に水分が存在する場合は、比較例1の吸湿材よりも、吸着材がアセトン分子を0.45倍しか吸着しないことが確認された。すなわち、触媒反応の原料となる気体、化学センサーの評価対象である気体などに水分が含まれる場合に、本発明の吸着材がその水分の選択的除去に好適であることを示す。