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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045665
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】トランジスタ型センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
G01N27/414 301N
G01N27/414 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154213
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】南 豪
(72)【発明者】
【氏名】大代 晃平
(72)【発明者】
【氏名】山梨 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中原 勝正
(72)【発明者】
【氏名】長岡 宏一
(57)【要約】
【課題】
抗原-抗体反応を用いて、抗原又は抗体を測定するような測定方法を実現できる小型化が可能なトランジスタ型センサを提供する。
【解決手段】
抗原又は抗体を捕捉することにより前記抗原又は前記抗体を検出するための検出電極と、前記検出電極に接続されたゲート電極を有する有機半導体トランジスタとを備えるトランジスタ型センサであって、前記検出電極が抗原を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させており、前記検出電極が抗体を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させている、トランジスタ型センサ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原又は抗体を捕捉することにより前記抗原又は前記抗体を検出するための検出電極と、前記検出電極に接続されたゲート電極を有する有機半導体トランジスタとを備えるトランジスタ型センサであって、前記検出電極が抗原を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させており、前記検出電極が抗体を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させている、トランジスタ型センサ。
【請求項2】
前記結合部が、ストレプトアビジン及びビオチンから構成される、又は、アビジン及びビオチンから構成される、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項3】
前記抗原又は前記抗体が、前記ストレプトアビジン又は前記アビジンに化学的に結合している、請求項2に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項4】
前記リンカーの分子長が、0.3~2.6nmである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項5】
前記抗原がオキシトシンであり、前記抗体がオキシトシン抗体である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項6】
前記有機半導体トランジスタが、p型半導体である、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項7】
前記トランジスタ型センサは、溶液又は分散液中の前記検出対象を検出する、請求項1に記載のトランジスタ型センサ。
【請求項8】
トランジスタ型センサを用いることによる抗原又は抗体を定量的に測定する測定方法であって、
請求項1に記載のトランジスタ型センサの前記検出電極に検出対象である抗原又は抗体を接触させる工程と、
前記検出対象の濃度ごとに、前記トランジスタのドレイン電極及びソース電極の間に流れる電流Idを測定し、濃度-電流Id関係曲線を得る工程と、
濃度不明な前記検出対象に前記検出電極に接触させ、濃度不明の前記検出対象の電流Idを得る工程と、
濃度不明の前記検出対象の電流Idと、前記濃度-電流Id関係曲線を比較し、濃度不明の前記検出対象の電流Idの濃度を決定する工程とを含む、測定方法。
【請求項9】
トランジスタ型センサを用いることによる抗原又は抗体を定量的に測定する測定方法であって、
請求項1に記載のトランジスタ型センサの前記検出電極に検出対象である抗原又は抗体を接触させる工程と、
前記検出対象の濃度ごとに閾値電圧を測定し、濃度-閾値電圧関係曲線を得る工程と、
濃度不明な前記検出対象に前記検出電極に接触させ、濃度不明の前記検出対象の閾値電圧を得る工程と、
濃度不明の前記検出対象の閾値電圧と、前記濃度-閾値電圧関係曲線を比較し、濃度不明の前記検出対象の閾値電圧の濃度を決定する工程とを含む、測定方法。
【請求項10】
前記閾値電圧の測定は、
前記有機半導体トランジスタのソース電極を基準として、ドレイン電極に電圧Vdを印加し、そして、前記ソース電極を基準として、カウンター電極に電圧Vgを印加する工程と、
前記Vgを掃引し、前記ドレイン電極及び前記ソース電極の間に流れる電流Idを測定することにより、Vg-Id曲線を得る工程と、
前記Vg-Id曲線を用いて閾値電圧の値を得る工程とを含む、請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記トランジスタ型センサはカウンター電極をさらに備え、前記検出電極及び前記カウンター電極を前記検出対象に接触させる、請求項9に記載の測定方法。
【請求項12】
検出対象が溶液又は分散液中に含まれており、前記検出電極及び前記カウンター電極を前記溶液又は前記分散液中に入れた状態で検出する、請求項9に記載の測定方法。
【請求項13】
印加する電圧が、直流電圧である、請求項9に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗原-抗体反応を利用した有機半導体トランジスタ型センサ、及びトランジスタ型センサを用いることによる抗原又は抗体を定量的に測定する測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシトシンは脳内で分泌されるホルモン物質であり,母子看護学などにおいて母親の精神状態を客観的に評価するためのバイオマーカーになり得る。
オキシトシンを分析する手法として、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられているが、高度な専門知識やサンプルの前処理、大型装置が必要不可欠である。さらに、長時間に及ぶ測定時間も迅速な検査を妨げる要因となるため,簡便かつ迅速に高感度検出を達成する小型センサの具現化が望まれている。また、オキシトシンはその量の推移を評価するため、検出には定量性が求められる。
【0003】
従来から小型センサとして、非特許文献1のようなトランジスタを用いたセンサが検討されているが、そのような小型センサを用いて、オキシトシンを測定するような方法は実現できてない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Minami,T. ACS Sens.2019,4, 2571-2587.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、オキシトシンを検出する方法としてトランジスタを用いる検出方法を検討した結果、ゲート電極に接続した検出電極を備える有機半導体を用いたトランジスタを使用し、さらに、検出電極の表面にはリンカー及び結合部を介してオキシトシン抗体を化学的に結合させたものは、抗原であるオキシトシンを検出できることを発見し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 抗原又は抗体を捕捉することにより前記抗原又は前記抗体を検出するための検出電極と、前記検出電極に接続されたゲート電極を有する有機半導体トランジスタとを備えるトランジスタ型センサであって、前記検出電極が抗原を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させており、前記検出電極が抗体を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させている、トランジスタ型センサ。
[2] 前記結合部が、ストレプトアビジン及びビオチンから構成される、又は、アビジン及びビオチンから構成される、[1]に記載のトランジスタ型センサ。
[3] 前記抗原又は前記抗体が、前記ストレプトアビジン又は前記アビジンに化学的に結合している、[2]に記載のトランジスタ型センサ。
[4] 前記リンカーの分子長が、0.3~2.6nmである、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のトランジスタ型センサ。
[5] 前記抗原がオキシトシンであり、前記抗体がオキシトシン抗体である、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のトランジスタ型センサ。
[6] 前記有機半導体トランジスタが、p型半導体である、[1]に記載のトランジスタ型センサ。
[7] 前記トランジスタ型センサは、溶液又は分散液中の前記検出対象を検出する、[1]に記載のトランジスタ型センサ。
[8]トランジスタ型センサを用いることによる抗原又は抗体を定量的に測定する測定方法であって、
[1]に記載のトランジスタ型センサの前記検出電極に検出対象である抗原又は抗体を接触させる工程と、
前記検出対象の濃度ごとに、前記トランジスタのドレイン電極及びソース電極の間に流れる電流Idを測定し、濃度-電流Id関係曲線を得る工程と、
濃度不明な前記検出対象に前記検出電極に接触させ、濃度不明の前記検出対象の電流Idを得る工程と、
濃度不明の前記検出対象の電流Idと、前記濃度-電流Id関係曲線を比較し、濃度不明の前記検出対象の電流Idの濃度を決定する工程とを含む、測定方法。
[9] トランジスタ型センサを用いることによる抗原又は抗体を定量的に測定する測定方法であって、
[1]に記載のトランジスタ型センサの前記検出電極に検出対象である抗原又は抗体を接触させる工程と、
前記検出対象の濃度ごとに閾値電圧を測定し、濃度-閾値電圧関係曲線を得る工程と、
濃度不明な前記検出対象に前記検出電極に接触させ、濃度不明の前記検出対象の閾値電圧を得る工程と、
濃度不明の前記検出対象の閾値電圧と、前記濃度-閾値電圧関係曲線を比較し、濃度不明の前記検出対象の閾値電圧の濃度を決定する工程とを含む、測定方法。
[10] 前記閾値電圧の測定は、
前記有機半導体トランジスタのソース電極を基準として、ドレイン電極に電圧Vdを印加し、そして、前記ソース電極を基準として、カウンター電極に電圧Vgを印加する工程と、
前記Vgを掃引し、前記ドレイン電極及び前記ソース電極の間に流れる電流Idを測定することにより、Vg-Id曲線を得る工程と、
前記Vg-Id曲線を用いて閾値電圧の値を得る工程とを含む、[9]に記載の測定方法。
[11] 前記トランジスタ型センサはカウンター電極をさらに備え、前記検出電極及び前記カウンター電極を前記検出対象に接触させる、[9]に記載の測定方法。
[12] 検出対象が溶液又は分散液中に含まれており、前記検出電極及び前記カウンター電極を前記溶液又は前記分散液中に入れた状態で検出する、[9]に記載の測定方法。
[13] 印加する電圧が、直流電圧である、[9]に記載の測定方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトランジスタ型センサは、簡便な構造でありながら、抗原-抗体反応を利用し、検出対象となる抗原又は抗体を定量的に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のトランジスタ型センサの模式図を示す。
図2図2は、実施例1のトランジスタ型センサの製造手順である。
図3図3は、電極表面に抗体が固定化される工程の模式図である。
図4図4は、抗体を固定したときの模式図である。
図5図5は、抗原を固定したときの模式図である。
図6図6は、実施例1において、検出開始からの閾値電圧のシフトを示す図である。
図7図7は、実施例1の測定結果を示す図である。
図8図8は、実施例1の測定結果を示す図である。
図9図9は、実施例1の濃度に対する閾値電圧の変化を示す図である。
図10図10は、比較例1の測定結果を示す図である。
図11図11は、比較例1の測定結果を示す図である。
図12図12は、比較例1の濃度に対する閾値電圧の変化を示す図である。
図13】実施例1の検出実験について、電流Idをオキシトシン濃度ごとにプロットした図である。
図14】比較例1の検出実験について、電流Idをオキシトシン濃度ごとにプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[トランジスタ型センサについて]
本発明のトランジスタ型センサは、抗原又は抗体を捕捉することにより前記抗原又は前記抗体を検出するための検出電極と、前記検出電極に接続されたゲート電極を有する有機半導体トランジスタとを備えるトランジスタ型センサであって、前記検出電極が抗原を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させており、前記検出電極が抗体を検出する場合は、前記検出電極の表面にリンカー及び結合部を介して、その検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を結合させている。なお、検出電極は、トランジスタの延長ゲート電極である。
【0010】
(トランジスタ)
本発明のセンサは、電界効果トランジスタを備える。小型で簡易的に用いることができる点で、有機半導体からなる薄膜トランジスタである。
本発明において、通常の構成の有機半導体を用いた電界効果トランジスタを用いることができ、一例を図1に示す。図1の電界効果トランジスタTは、典型的な電界効果トランジスタであり、基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4、ドレイン電極5、バンク6、有機半導体(OSC)7、封止膜8から構成されている。
電界効果トランジスタTを構成する材料も特に限定されるものではない。例えば、基板1は、ガラス、セラミックス、金属等の無機材料の他、樹脂、紙等の有機材料等を適用することができる。ゲート電極2としては、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、酸化インジウム錫(ITO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホネート、導電性のカーボンナノチューブ、グラフェン、導電性の有機無機複合材料等を用いることができる。ゲート絶縁膜3の構成材料としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、自己組織化単分子膜、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン、イオン液体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。基板1、ゲート電極2は一体となっていても良く、金属基板やSi基板を用いることができる。Si基板は、導電性を向上させるためドーピングされていることが好ましく、有機半導体層がp型の場合はn型にドープされた基板を、有機半導体層がn型の場合はp型にドープされた基板を用いるとよい。さらに、ゲート絶縁膜3はSi基板を表面酸化させて形成したSiOを用いてもよい。ソース電極4、ドレイン電極5の材料としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム等の金属や、PEDOT:PSS等の導電性高分子、導電性のカーボンナノチューブ、グラフェン、導電性の有機無機複合材料等が挙げられる。バンク6の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、封止膜8の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパラキシリレン等が挙げられる。
基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4、ドレイン電極5は表面処理が行われても良く、例えば表面の撥液性を調整するために自己組織化単分子膜を形成してもよい。
【0011】
有機半導体7は、その機能が発揮できれば材料は特に限定されるものではないが、P型の場合は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(Cn-BTBT)、TIPSペンタセン、TES-ADT、ルブレン、P3HT、PBTTT等を用いることができ、N型の場合は、フラーレン等を用いることができる。中でも、下記化合物などが好適に用いられ、本明細書に記載の実施例の半導体材料としても用いた。
【化1】
【0012】
なお、図1において、検出電極ELは、導線9、検出電極基板10、検出電極本体11、カウンター電極12、検出対象を含む水溶液13、活性層14を含む。検出電極本体11は、トランジスタTのゲート電極2に導線9で電気的に接続されている。実験上、液体を検出しやすくするために、検出電極ELおよびカウンター電極を、水溶液を含むチューブの中に入れることが好ましい。
【0013】
検出電極基板10の材料は、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。検出電極本体(延長ゲート電極本体)11は、検出電極基板10の表面に配置させる。ただし、検出電極本体11が自立している場合は検出電極基板10を兼ねてもよい。検出電極本体11の材料は、ゲート電極2と同様に、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、酸化インジウム錫(ITO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホネート、導電性のカーボンナノチューブ、グラフェン、導電性の有機無機複合材料等を用いることができる。
カウンター電極12は導電性を持つ材料であればよく、金属電極や炭素電極を用いることができる。カウンター電極12は、検出電極基板10の材料と同等の基板上に導電性の膜を形成していてもよく、検出電極と共通した検出電極基板上に導電性の膜を形成してもよい。また、活性層14と同じ又は異なる材料の活性層をカウンター電極12上に形成してもよい。カウンター電極12上の活性層は、活性層14と同一の処理をしてもよく、活性層14の途中の処理まで施したものでもよい。また、参照電極を用いてもよく、一般的に用い得られるAg/AgClなどが挙げられる。
そして、検出電極本体11の上には、活性層14が形成されている。本発明のトランジスタ型センサは、抗原-抗体反応を利用して、検出対象を検出するため、検出対象が抗原のときは、活性層14は、検出対象の抗原に対して抗原-抗体反応可能な抗体を含み、検出対象が抗体のときは、活性層14は、検出対象の抗体に対して抗原-抗体反応可能な抗原を含む。
以下、一例として、検出対象を抗原とし、検出電極本体に固定化するものを抗体として記載するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0014】
検出電極本体11の表面に固定化された抗体は、表面に直接堆積させたものではなく、リンカー及び結合部を介して結合している。
なお、検出電極本体11は、10nm~1000μmの厚さを有する金などの金属薄膜、もしくは、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性無機材料薄膜又は導電性有機材料薄膜、を形成することが好ましく、表面が1nm~1000nm、好ましくは1nm~50nmの厚さを有するSiOなどの金属酸化物膜を形成していてもよい。なお、本明細書において、検出電極本体11の表面とは、検出電極本体11のそのもの材料が表面の場合と、金属薄膜または金属酸化物膜を形成した表面のいずれも包含する概念である。
【0015】
リンカーは、炭素原子2つ以上の直鎖状の化合物から構成される。本発明において、直鎖状の化合物は、分岐鎖を有してもよいし、有さなくてもよい。リンカーを用いることにより、固定化する抗体において、柔軟性を持たせながら安定的に検出電極に固定化することができる。また、検出対象と電極間の距離を一定に保つ役割を果たし、リンカーの長さによって溶液中の電荷と電極間距離を調整する事が出来、これが電気化学的計測の際のゲート電極に作用する電界に影響を与える。具体的には、短ければ短いほど電荷が電極に近接する効果があり、単純に電荷が電極に近づいた場合はゲート電界への作用は大きくなる。ただし、リンカーが短すぎる場合はリンカー自体が電極上で整列しにくくなり、さらに結合部や抗体も乱雑に配置されるようになるため、抗原が作用した際の分子内分極の向きが揃わず、ゲート電界への作用は小さくなる。
【0016】
リンカーは、金属薄膜または金属酸化物膜と反応する部位と、結合部と結合する部位を持つ。それぞれの部位は同一の炭素上ではなく、離れた炭素上にあることが好ましい。また、リンカーは直鎖状が好ましく、両末端に上記の部位がある事が好ましい。
金属薄膜または金属酸化物膜と反応する部位としては、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基、トリクロロシリル基、スルホ基、ホスホン酸基などが挙げられる。結合部と結合する部位(反応性官能基)としては、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基などが挙げられる。
例えば、表面が金の電極を用いる場合、金属と反応する部位としてメルカプト基が選定され、反応性官能基としてカルボキシ基が選定された場合、3-メルカプトプロピオン酸、6-メルカプトヘキサン酸、11―メルカプトウンデカン酸などの中からリンカーを選択する。
【0017】
結合部とは、リンカーと抗体とを結合させる部位である。抗体の抗原結合部位と抗原との免疫反応を抑制せず、かつ、安定的にリンカーに結合できるという観点から、結合部は、ストレプトアビジン及びビオチンの組み合わせ、又は、アビジン及びビオチンの組み合わせから構成されることが好ましい。
【0018】
リンカーと抗体を直接結合してもいいが、アビジン-ビオチン結合を介したほうが好ましい。抗体はリンカーと比較すると大きな分子であることが多く、また、抗体は複数個所の反応活性部位があるため、リンカーと抗体とを直接結合させる場合、複数個のリンカーと抗体が結合する事が想定される。抗体が複数個のリンカーと結合すると、抗体の向きは電極上で一律にそろいにくくなるため、抗原が作用した際の分子内分極の向きが揃わず、ゲート電界への作用は小さくなる。
【0019】
ストレプトアビジンまたはアビジンを用いることで、ストレプトアビジンまたはアビジンがリンカー上に向きが揃って形成されていれば、そこに結合するビオチン、さらにはビオチンが結合している抗体も向きが揃った状態で形成する事が出来る。これにより、抗原の分子内分極の向きがある程度揃った形で電極に作用する事が出来る。
【0020】
また、結合部に結合するリンカーの反応性官能基と、ストレプトアビジンまたはアビジンとを結合させるために、固定化したリンカーと反応性官能基の反応活性を高める化合物を反応させた後に、ストレプトアビジンまたはアビジンと結合させてもよい。上記化合物としては、N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールなどが挙げられる。なお、リンカーを電極に固定する際には、結合部に結合する反応性官能基の反応活性が低い方が、リンカーが電極上に整列して形成されやすく、リンカーを電極に固定した後に反応活性を高め、ストレプトアビジンまたはアビジンと結合させることが好ましい。
【0021】
リンカーは電極上に隙間なく固定化する事はなく、電極が一部露出し、抗原の検出の際に何らかの物質が電極上に作用し、測定結果に悪影響を及ぼすことがある。これを防ぐために、電極表面に事前に物質を物理吸着させることが好ましい。上記物質としては、人血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
リンカーとストレプトアビジンまたはアビジンは、それぞれ反応活性がある個所が100%反応する事はなく、リンカーの反応性官能基が残り、抗原の検出の際に悪影響を及ぼすことがある。これを防ぐために、リンカーの反応性官能基を反応活性が低い置換基に変換する操作を行う事が好ましい。反応性官能基の反応活性を高める化合物に対応する化合物が選定されるが、例えばN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを用いる場合は、水溶性1級アミンが好ましく、2-アミノエタノール、1-アミノ-2-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール等が挙げられる。
【0022】
検出電極本体11の表面にリンカーや結合部位を介して固定された抗体は、検出対象となる抗原に対して、抗原-抗体反応が可能なものである。検出電極本体11に固定化された抗体は、検出対象となる抗原に対して、抗原-抗体反応が可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、クロモグラニンA、IgA、IgGなどが挙げられる。
なかでも、オキシトンシンとオキシトシン抗体との組み合わせは、閾値電圧の値が、オキシトシン濃度とともに、明確に変化するため、正確な濃度を測定することができる。
なお、閾値電圧の値以外にも、電流値を用いて測定することができる。電流値での算出は、所定の電圧Vgに対して測定されたIdを単純に比較する事で行う事ができる。ただし、Idの変化量は電圧Vgに対して線形ではない場合が多く、どの電圧VgでのIdを計算に用いるかによって測定の精度が変化する場合がある。また、異なる閾値電圧を持つトランジスタにおいて電流値を比較する場合は、絶対的な電圧を任意で設定するのではなく、電流の最大値、電流の中央値、電圧(Vth+Vd)での電流値などを設定するとよい。
【0023】
[トランジスタ型センサの製造方法について]
(検出電極の作製)
検出電極の作製は、検出電極の表面に抗体を固定化させる工程を含む。例では、オキシトシン抗体を、検出電極の表面に固定化させる方法について説明する。
すでに説明したように、オキシトシン抗体は直接検出電極の表面に固定化させるのではなく、リンカー及び結合部を介して固定化させる。以下、図3を用いて説明する。
【0024】
(リンカーの形成)
まずは、検出電極の上にリンカーAを形成する(図3の(I))。リンカーAは、リンカーAとなる化合物をディップコート法などの方法で形成する。例えば、3-メルカプトプロピオン酸を含むエタノール溶液に浸漬することにより、3-メルカプトプロピオン酸の硫黄原子が検出電極表面に結合する。
【0025】
(結合部の形成)
次に、表面にリンカーAを形成した検出電極に、結合部となる材料をリンカーAに結合させる。結合部は、リンカーAと化学的に結合できる化合物であることが望ましいが、まず、結合させるために、リンカーの検出電極に結合していない方の端部に、反応性官能基Bを形成させる(図3の(II))。具体的には、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、N-ヒドロキシスルホスクルシンイミドナトリウム、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミドを含む溶液を、リンカーAを形成した検出電極に滴下させ、リンカーAの端部を反応官能基Bにする。
次に、ストレプトアビジンの水溶液を、検出電極に滴下し、ストレプトアビジンCを反応官能基Bに結合させる(図3の(III))。
【0026】
次に、ストレプトアビジンCの未結合の反応性官能基を不活性化させるため2-アミノエタノールを用いて処理しておく。なお、図4のGは、未結合の反応性官能基を2-アミノエタノールで処理し、不活性化していることを模式的に示している。
次に、人血清アルブミン含有溶液を検出電極に滴下し、さらに、人血清アルブミン含有溶液にオキシトシン抗体(ビオチンDを付与した抗体E)を加え、滴下することにより検出電極に固定化することができる(図3のIV)。これにより、固定化された抗体Eは、抗原Fと抗原―抗体反応できるようになる。
【0027】
図4は、固定化した抗体Eが抗原Fと抗原―抗体反応をしている状況を示す図である。なお、検出電極の表面Hは、人血清アルブミンは物理吸着を防ぐために処理されている。
【0028】
図5は、検出電極に抗原Fを固定化した状況を示す図である。この場合は、検出対象は抗体Eとなる。その際、抗原FはビオチンDが付与されているものを用いる。
【0029】
(有機半導体トランジスタの作製)
図1に示す有機半導体トランジスタTの製造方法の一例を、図3を用いて説明する。まず、基板1(材料はガラス)を用意し(a)、その上に表面に30nmの厚さのゲート電極2(材料はアルミニウム)を形成する(b)。そして、RIE処理(反応性イオンエッチング処理により酸化アルミニウム膜を形成)を15分行い、HFPAで処理することによりゲート絶縁膜3を形成する(c)。さらに、ソース・ドレイン電極4、5(材料はいずれも金)をパターニング形成する(d)。その後、バンク6(材料はポリテトラフルオロエチレン)を形成し(e)、有機半導体7の層を形成する(f)。最後に、封止膜8(材料はポリテトラフルオロエチレン)をスピンコート法等により形成し(g)、有機半導体トランジスタTを作製する。
【0030】
ゲート電極2と、上記検出電極ELを接続させて、トランジスタ型センサの製造することができる。
【0031】
[検出対象物質]
本発明は、抗原-抗体反応を用いているため、検出電極に抗原を固定化した場合は、検出対象物質は、抗体であり、検出電極に抗体を固定化した場合は、検出対象物質は、抗原である。したがって、上記の例では、オキシトシン抗体を検出電極に固定している。したがって、当該センサの検出対象は、オキシトシンである。
【0032】
本センサは、検出対象物質の濃度は、好ましくは0.1~1000pg/mL、より好ましくは10~200pg/mLの濃度であるものを検出する。1000pg/mL超であれば、閾値電圧が移動せず、定性検知は可能であるが、定量することが難しい。また、0.1pg/mL未満であれば、検出限界を超えてしまい、定量のみならず、定性も難しい。
【0033】
本例では、検出時における温度は特に限定されるものではないが、常温で行うことができる。また、検出時における圧力も特に限定されるものでないが、大気中で行うことができるが、検出対象物質が上記濃度であることが好ましいため検出対象含有溶液に検出電極を浸漬させ、検出することが好ましい。
【0034】
(検出方法)
検出対象の測定方法は、Vdを-1.0Vに印加し、Vgを+0.5Vから-3.0Vまで0.1Vステップずつ電圧を印加し、そのときのIdを測定する。そして、Idの1/2乗とVgが直線状の領域(飽和領域)で近似直線を引き、そのX切片の値を計算する事で閾値電圧を得る。得られた閾値電圧は、検出対象の濃度に応じて、変化する。
閾値電圧に対する濃度の曲線を描くことで、濃度不明な検出対象における閾値電圧を得ることで、当該濃度を測定することができる。
【実施例0035】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0036】
電極作製例1
電極作製例1について、図2を用いて説明する。
PEN基板上に、メタルマスクを用い、真空蒸着法にて、100nmの金の薄膜を形成し、電極1を得た。エタノールに、3-メルカプトプロピオン酸を1mMになるように溶解させた処理液1を作製した。次に、電極1をエタノールおよび超純水にて洗浄し、乾燥させたのち、処理液1に室温で1時間浸漬させた後、エタノールおよび超純水にて洗浄し、乾燥させた。
そして、超純水に、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸を100mM、塩化ナトリウム500mMを加えたpH5.5の溶液に、N-ヒドロキシスルホスクルシンイミドナトリウム塩を5mM、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミドを40mMになるように加え、処理液2を作製した。電極に処理液2を滴下し、室温で30分間静置し、エタノールにて洗浄し、乾燥させた。
さらに、超純水に、ストレプトアビジンを1mg/mLになるように加え、ストレプトアビジン溶液を作製した。超純水に、炭酸ナトリウムを15mM、炭酸水素ナトリウムを35mMになるように加え、pH9.6の炭酸バッファーを作製した。ストレプトアビジン溶液と炭酸バッファーを体積比で1:1の割合で混合し、処理液3を作製した。電極に処理液3を滴下し、室温で2時間静置し、超純水にて洗浄し、乾燥させた。
そして、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水に、2-アミノエタノールを1Mになるように加え、処理液4を作製した。電極に処理液4を滴下し、室温で15分間静置し、超純水で洗浄し、乾燥させた。
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水に、人血清アルブミンを0.1重量パーセントになるように加え、さらにツイン20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)を0.05重量パーセントになるように加え、処理液5を作製した。電極に処理液5を滴下し、室温で15分間静置し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水にて洗浄し、乾燥させた。
処理液5に、ビオチン標識抗オキシトシン抗体を30μg/mLになるように加え、処理液6を作製した。電極に処理液6を滴下し、室温で30分間静置し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水にて洗浄し、乾燥させることで、オキシトシン抗体固定化済検出電極を得た。
【0037】
実施例1
処理済電極を用いたトランジスタ型センサの製造
電極作製例1で得られたオキシトシン抗体固定化済検出電極を、図3に示した製造方法で得られたトランジスタのゲート電極に接続させることにより、本発明のトランジスタ型センサを製造した。なお、本実施例のトランジスタ型センサは、半導体パラメータアナライザのゲート端子(図示しない)をカウンター電極(Ag/AgCl)に接続させた。
【0038】
有機半導体トランジスタの動作確認
図3に示した製造方法で得られたトランジスタのゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を、それぞれ、半導体パラメータアナライザ(端子は図示しない)のゲート端子、ソース端子、ドレイン端子に接続した。
ソース-ドレイン電圧(Vd)を-1.0Vとし、ゲート電圧(Vg)を0.5~-3Vとした電気測定を行い、有機半導体トランジスタのVgが-3V以内で駆動する事、ソース-ゲート電流(Ig)がソース-ドレイン電流(Id)よりも1桁以上小さいこと、閾値電圧シフトが十分に小さいことを確認した。
【0039】
(オキシトシン検出実験 閾値電圧の確認)
マイクロチューブに、それぞれ、1、5、7、10、20、30、50pg/mLの濃度に調整したオキシトシン溶液に、それぞれ作製した電極を浸漬させ、37℃に設定したインキュベーター内で1時間静置した。この操作は、抗原・抗体反応が十分に進行するように設定した。
時間応答性を確認したところ、10分に満たない時間で閾値電圧がシフトする事が確認された(図6参照)。
【0040】
それぞれの濃度において、測定実験を行った。
マイクロチューブに入ったオキシトシン溶液について、オキシトシン抗体固定化済検出電極に図3に示した製造方法で得られたトランジスタのゲート電極に接続させ、カウンター電極(Ag/AgCl)を入れ、これを半導体パラメータアナライザのゲート端子(図示しない)に接続した。
測定は、ソース-ドレイン電圧(Vd)を-1.0Vとし、ゲート電圧(Vg)を0.5~-3Vとした。測定は6回行った。
【0041】
測定結果を図7に示す。これは、濃度ごとに測定6回分の電流値の平均をとった電流―電圧特性である。図7では、濃度を増加させることにより、電流値が低下していくことが分かった。
図8は電流値の1/2乗を縦軸にとったグラフであり、トランジスタ特性の飽和領域を拡大しても、濃度の増加と共に曲線が移動していることが分かった。
図9は、電流値の1/2乗から計算した閾値電圧を縦軸に、濃度を横軸にとったグラフである。濃度の変化とともに、閾値電圧が負の方向に移動していることが分かった。
図9の中に埋め込んだ図は、各濃度の閾値電圧Vth(n)を、濃度0の閾値電圧Vth(0)で規格化し、閾値電圧の変化量を表したグラフである。Vth-Shift(n)は、Vth(n)からVth(0)を引き、それをVth(0)で割ることで計算する事が出来る。このグラフからも、濃度の変化とともに、閾値電圧が大きく移動していることが分かった。
【0042】
比較例1
ON Semiconductor社製の、通常の半導体製造プロセスを用いて作られたシリコン電界効果トランジスタ、製品名BSS84を、有機半導体トランジスタの代わりに用い、実施例1と同様の実験を行った。
測定結果(電流―電圧特性)を図10に示す。図10からは濃度を増加させることにより、電流値が低下していく関係性は見られなかった。
図11は、実施例1の図9に対応するものであるが、この図においても、トランジスタ特性の飽和領域を拡大しても、濃度の違いによる曲線のシフトは見られなかった。
図12は、実施例1の図10に対応する閾値電圧の計算結果を示すが、閾値電圧の変化はなく、オキシトシンの検出は出来なかった。
なお、測定に用いたトランジスタは、複数回の測定による閾値電圧の変化は、十分に小さいことを確認して用いられた。
図12の中に埋め込んだ図は、閾値電圧の変化量を表したグラフであるが、実施例1と比較すると、ほとんど変化がないことが分かった。
【0043】
(オキシトシン検出実験 電流Idの確認)
実施例1の検出実験について、得られた電流Idをオキシトシン濃度ごとにプロットした。その結果を図13に示す。具体的には、図13は、濃度ごとに測定6回分の電流値の平均をとり、濃度0における-3.0Vでの電流値の半分となる電流値に対応する電圧を算出し、濃度ごとにその電圧における電流値を求めることで得られたグラフである。濃度を増加させることにより、電流値が低下していくことが分かった。
図13の中に埋め込んだ図は、各濃度の電流値Id(n)を、濃度0の電流値Id(0)で規格化し、電流値Idの変化量を表したグラフである。Id-Shift(n)は、Id(n)からId(0)を引き、それをId(0)で割ることで計算する事が出来る。このグラフからも、濃度の変化とともに、電流値が大きく変化していることが分かった。
【0044】
比較例1の検出実験について、得られた電流Idをオキシトシン濃度ごとにプロットした。その結果を図14に示す。比較例1のトランジスタでは、濃度を増加させても、電流値が大きく変化しにくい事が分かった。図14からは、1pg/mLから電流値が増大しているように読み取れるが、センサの特性上電流は低下する方向に変化すると予想されるため、これは誤差であると考えられる。図14の中に埋め込んだ図は、電流値Idの変化量を表したグラフである。濃度を増加させても、電流値の変化量が小さい事が分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の抗原-抗体反応を用いた有機半導体トランジスタ型センサは、抗原又は抗体測定の装置として非常に簡易であり、産業上利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0046】
T 電界効果トランジスタ
EL 検出電極
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 バンク
7 有機半導体
8 封止膜
9 導線
10 検出電極基板
11 検出電極(延長ゲート)
12 カウンター電極
13 検出対象を含む水溶液
14 活性層
A リンカー
B 反応活性基
C ストレプトアビジン
D ビオチン
E 抗体
F 抗原
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14