(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047353
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】静菌効果を有する食用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20230330BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20230330BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20230330BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20230330BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20230330BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20230330BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23D9/013
A23D9/007
A23L7/10 Z
A23L35/00
A23L7/109 E
A23L7/109 A
A23L7/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019227787
(22)【出願日】2019-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000101215
【氏名又は名称】アサマ化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】勝山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真由美
(72)【発明者】
【氏名】金井 盛能
(72)【発明者】
【氏名】長尾 美樹
(72)【発明者】
【氏名】今村 希穂
(72)【発明者】
【氏名】菅野 究
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
(72)【発明者】
【氏名】川原 雅典
【テーマコード(参考)】
4B023
4B026
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC08
4B023LE11
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4B023LK05
4B023LK12
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4B046LG11
4B046LG25
4B046LP41
4B046LP56
(57)【要約】
【課題】従来の食用油脂の機能に加え静菌効果を有する食用油脂組成物を提供する。
【解決手段】食用油脂70質量%以上と、親油性静菌剤0.002~10質量%と、乳化剤0.1~10質量%と、を含有することを特徴とする食用油脂組成物であって、前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種類であることを特徴とする、食用油脂組成物により解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂と、親油性静菌剤と、乳化剤と、を含有することを特徴とする食用油脂組成物であって、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種類であることを特徴とする、食用油脂組成物。
【請求項2】
さらに、酢酸を含有する、請求項1に記載の食用油脂組成物。
【請求項3】
前記親油性静菌剤が、チアミンラウリル硫酸塩、ホップ抽出物、ユッカ抽出物、カラシ抽出物、トウガラシ抽出物、カンゾウ油性抽出物からなる群から選択された1種以上である、請求項1又は2に記載の食用油脂組成物。
【請求項4】
前記乳化剤が、ジグリセリンエステル、有機酸モノグリセリンエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択された1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項5】
前記酢酸の含有量が、0.1~10質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項6】
前記親油性静菌剤の含有量が、0.002~10質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項7】
前記乳化剤の含有量が、0.1~10質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項8】
食用油脂の含有量が、70質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項9】
前記親油性静菌剤のpHが1.3±0.3である、請求項1~8のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項10】
前記乳化剤のHLBが1~6である、請求項1~9のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【請求項11】
前記乳化剤を含有する前記食用油脂の、30℃でのせん断速度100rpm、2minにおける粘度が65mPa・s以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静菌効果を有する食用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油脂を使用する加工食品、例えば炒飯では炒め油に静菌効果はなく、具材に日持ち向上剤を添加し炒め後の消費期限を延長している。パスタのくっつき防止に使用される和え油も同様に静菌効果を有するものは用いられていない。和え油に静菌効果があればパスタと和え油の接触面で静菌効果が得られる。具材側とそれに接触する油脂側で静菌できれば日持ち向上剤のような添加物の使用量削減と消費期限延長も可能となる。
【0003】
有機酸の酸味を抑制するのに油脂を用いる方法として、特開2008-220263号公報には、増粘安定剤、乳清ミネラル及び酸味料を含有させる低油分酸性水中油型乳化油脂組成物が提案されている(特許文献1)。当該低油分酸性水中油型乳化油脂組成物の油脂含量は5~40質量%である。また、特開2019-150068号公報には、HLBが4.7~8の乳化剤と食用油脂を含有する油脂組成物を炒め調理に用いる方法が提案されているが、炒め調理をしやすくするとともに、炒め調理された食品の食感や美味しさを向上させることを目的にしている(特許文献2)。さらに、特開2019-58121号公報には、食品に与える酸味が抑制された食品用静菌剤として、油脂加工澱粉及び酸類を含有するものが提案されているが、澱粉100質量部に対して食用油脂と乳化剤の合計量は0.01~10質量部である(特許文献3)。
【0004】
従来、食品用静菌剤の酸味抑制に油脂が用いられてきたが、食品加工において静菌を目的とする食用油脂組成物はなく、これを用いた添加物削減や消費期限延長が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-220263号公報
【特許文献2】特開2019-150068号公報
【特許文献3】特開2019-58121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来食品加工に用いられる食用油脂は、麺のくっつき防止や炒め調理、炊飯釜からの炊飯米の離型性向上などに用いられている。一方、消費者の健康意識の観点から添加物の使用量削減や廃棄ロス低減のために消費期限延長などが求められている。すなわち従来の食用油脂の機能に静菌の機能を加えることでより効率的な静菌方法を提供することが可能になる。よって、本発明は、静菌効果を有する食用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、食用油脂と、酢酸と、親油性静菌剤と、乳化剤とを含有させた食用油脂組成物において、特定の乳化剤を添加することより、静菌剤を多量に添加しなくともより効率的な静菌が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、食用油脂と、親油性静菌剤と、乳化剤と、を含有することを特徴とする食用油脂組成物であって、前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種類であることを特徴とする、食用油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の静菌効果を有する食用油脂組成物によれば、パスタの和え油や炒め調理に使用される炒め油、あるいは炊飯釜からの炊飯米の離型性向上などの機能の他、静菌効果も備えているため、従来の食用油脂の機能に加え、食品の保存安定性の向上にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】親油性静菌剤の分散性を検討した結果を示す図である。
【
図2】親油性静菌剤の分散性を検討した結果を示す図である。
【
図3】親油性静菌剤の分散性を検討した結果を示す図である。
【
図4】親油性静菌剤の分散性を検討した結果を示す図である。
【
図5】親油性静菌剤の分散性を検討した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る食用油脂組成物の実施形態について説明する。
本実施形態に用いられる食用油脂の種類に特に制限はないが、例えば、大豆油、なたね油、米油、パーム油、ひまわり油、オリーブ油などの植物油脂、牛脂、ラード、魚油、乳脂などの動物油脂、不飽和脂肪酸を水素添加したショートニングなどの油脂加工品等を用いることができる。これら食用油脂は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
前記食用油脂の含有量は従来の機能性を発揮するという観点から70質量%以上であることが好ましい。一方、70質量%未満では麺のくっつき防止や炊飯米の離型性など従来の機能性が低下する。
【0013】
本実施形態に係る食用油脂組成物は、酢酸を含有することが好ましい。用いられる酢酸は純品(氷酢酸)でも含水したもの(水和物)でも用いることができる。前記酢酸の含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。酢酸の含有量をかかる範囲内とすることで、食用油脂への溶解性と静菌効果を高めることができる。
【0014】
本実施形態に用いられる親油性静菌剤としては、例えば、食品衛生法施行規則別表1に収載されたチアミンラウリル硫酸塩、既存添加物名簿に収載されたユッカ抽出物、カラシ抽出物、トウガラシ抽出物、カンゾウ油性抽出物、一般飲食物添加物に収載されたホップ抽出物等を挙げることができる。これら親油性静菌剤は1種又は2種以上を併用してもよい。ここで、「親油性」とは、油や非極性溶媒に溶けやすい性質のことをいい、「静菌剤」とは、対象となる細菌などの微生物を殺傷する作用までは有しないが、かかる微生物の生育・増殖を抑制する作用(静菌作用)を有する剤を意味する。
【0015】
前記親油性静菌剤の含有量は、静菌効果を有する有効成分の食用油脂に対する溶解性に応じて適宜変化するが、0.002~10質量%であることが好ましい。親油性静菌剤の含有量をかかる範囲内とすることで、食用油脂組成物に静菌作用を付与することができる。
【0016】
前記親油性静菌剤のpHは、1.3±0.3であることが好ましい。
【0017】
本実施形態に用いられる乳化剤は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択された少なくとも1種類である。これらの乳化剤を用いることにより、親油性静菌剤の油脂への溶解性を向上させることができる。
【0018】
前記乳化剤の含有量は、0.1~10質量%を含有することが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。
【0019】
前記乳化剤のHLBは、1~6であることが好ましい。
【0020】
ここで、「HLB」(Hydrophile- Lipophile Balance、親水性親油性バランス)とは、親水基を持たない物質をHLB=0とし、親油基をもたず親水基のみを持つ物質をHLB=20として等分したもので、親油性と親水性を併せ持っている乳化剤はその間の値をとる。親油性に対し親水性が大きいほどHLB値も大きく、水に溶けやすい性質の乳化剤ということができ、親油性に対し親水性が小さいほどHLB値も小さく、水に溶けにくい性質の乳化剤ということになる。
【0021】
前記乳化剤を含有する前記食用油脂の、30℃でのせん断速度100rpm、2minにおける粘度は65mPa・s以上であることが好ましい。粘度の測定は、例えば、使用機器としてVISCOMETER TV-25を使用し、粘度計のカップにサンプル約1mLをシリンジで測り取り、30℃に達温後2min、100rpmで回転させた場合の粘度を測定することができる。
【0022】
本実施形態の食用油脂組成物は、従来の食品加工用の油脂と同様に用いることができる。
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例0024】
1.食用油脂組成物の保存性の評価(炒飯)
(1)食用油脂組成物の調製
酢酸としての氷酢酸(アヅマ社製)と、親油性静菌剤としてのホップ抽出物(アサマ化成社製)と、乳化剤としてのC8モノグリセリンエステル(サンソフトNo.700P-2(商標)太陽化学社製)、C16C18コハク酸モノグリセリンエステル(マイベロール(商標)ケリー社製)及びC18ショ糖脂肪酸エステル(O-170(商標)三菱ケミカルフーズ社製)と、食用油脂としての食用なたね油(一番縛りキャノーラ油(商標)J-オイルミルズ社製)を混合し、各種食用油脂組成物を調製した。各種食用油脂組成物の成分割合を表1に示す。
【0025】
【0026】
(2)保存性試験
フライパンに実施例1~3及び比較例1~6の食用油脂組成物を3.5g引いて、熱が通ったら冷凍の「本格炒め炒飯」(商標:ニチレイフーズ社製)200gを4分炒めた後、冷蔵庫で急冷し、15℃の保存試験に用いた。
【0027】
結果を表2に示す。実施例1~3の場合は、製造3日後で一般生菌数が2オーダー以下であったのに対し、対照及び比較例1~6は3オーダー以上に増加した。
【0028】
【0029】
2.食用油脂組成物の保存性の評価(乾麺スパゲティ)
(1)食用油脂組成物の調製
酢酸としての80%酢酸(アズマ社製)と、親油性静菌剤としてのホップ抽出物(アサマ化成社製)、チアミンラウリル硫酸塩(タイショーテクノス社製)と、乳化剤としてのC8モノグリセリンエステル(サンソフトNo.700P-2(商標)太陽化学社製)と、食用油脂としての食用なたね油(一番縛りキャノーラ油(商標)J-オイルミルズ社製)を混合し、食用油脂組成物を調製した。各種食用油脂組成物の成分割合を表3に示す。
【0030】
【0031】
(2)保存性試験
乾麺スパゲティ(日本製粉社製)を10倍量の沸騰水中に投入し7分30秒ボイルし水切りした。1~10℃の水に1分浸漬した後水切りし、市販のコンビニエンスストアパスタ弁当よりグラム陽性菌とグラム陰性菌及び酵母を分離し、それぞれの菌株が100CFU/gになるよう接種した。実施例4と比較例7~12の実施例の油脂を対麺3%で添加し60秒和え、10℃の保存試験に用いた。表4にはグラム陽性菌を接種した保存試験結果を、表5にはグラム陰性菌を接種した保存試験結果を、表6には酵母接種した保存試験結果をそれぞれ示す。
【0032】
【0033】
表4に示すように実施例4の食用油脂組成物を用いて調理した場合は、対照及び比較例7~12と比較して、グラム陽性菌を接種した製造4日後においても一般生菌数の増加が認められなかった。
【0034】
【0035】
表5に示すように、実施例4の食用油脂組成物を用いて調理した場合は、対照及び比較例7~12と比較して、グラム陰性菌を接種した製造4日後においても一般生菌数の増加が認められなかった。
【0036】
【0037】
表6に示すように、実施例4の食用油脂組成物を用いて調理した場合は、対照及び比較例7~12と比較して、酵母菌を接種した製造4日後においても酵母数の増加が認められなかった。
【0038】
3.食用油脂組成物の保存性の評価(白飯)
(1)食用油脂組成物の調製
酢酸としての氷酢酸(アヅマ社製)と、親油性静菌剤としてのホップ抽出物(アサマ化成社製)及びトウガラシ抽出物(アサマ化成社製)と、乳化剤としてのC18ショ糖脂肪酸エステル(O-170(商標)三菱ケミカルフーズ社製)と、食用油脂としての食用なたね油(一番縛りキャノーラ油(商標)J-オイルミルズ社製)を混合し、各種食用油脂組成物を調製した。各種食用油脂組成物の成分割合を表7に示す。
【0039】
【0040】
(2)保存性試験
精米された「あきたこまち」150gを洗米して15分間水に浸漬した。水切り後、210gの水と、対照の「炊飯油」(商標:J-オイルミルズ社製)と、実施例5及び比較例13~15の食用油脂組成物をそれぞれ1.5g加え、それぞれ電気炊飯器で炊飯した。炊飯後10分蒸らした後、へらで混合した。炊飯米を室温まで冷却した後、バチルス・セレウス(Bacillus cereus NBRC13494)を10CFU/gになるよう接種した。それぞれの白飯を20℃の保存試験に用いた。結果を表8に示す。
【0041】
【0042】
表8に示すように、実施例5の食用油脂組成物を用いて調理した場合は、製造1日目で菌数の増加がほとんどなかったのに対し、比較例13~15は3オーダーないし4オーダーに菌数の増加が認められた。
【0043】
4.静菌剤の分散条件の検討
食用油脂に対し静菌剤を何%まで分散させることができるかについて、以下の要領で検討した。食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)と、乳化剤(SYグリスターCV-1L(商標)、阪本薬品工業社製)2.0質量%とを含有する食用油脂を調製した。そして、100mLバイアル瓶に、上記サンプル油脂と、食紅1質量%で着色した親油性静菌剤(AR-274(商標)、アサマ社製)とを投入し、密封してから上下に激しく30回振とうした。その後、常温で保存し、着色した静菌剤がどのように分離するかについて目視観察を行った。食用油脂、親油性静菌剤の配合量を表9に示す。
【0044】
【0045】
結果を
図1に示す。検討したいずれの条件でも、静菌剤が分離沈殿することなく、静菌剤3質量%を含むサンプル油脂を、少なくとも1か月間は分散状態を維持することができた。
【0046】
5.静菌剤の分散条件の検討(1)
親油性静菌剤が緩い攪拌でも分散する配合の検討を行うため、以下の要領により親油性静菌剤の分散条件を検討した。食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)のみ(サンプル5)、食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)に、乳化剤としてSYグリスターCRS-75(商標、阪本薬品工業社製)0.8質量%を含有するもの(サンプル6)、食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)に、乳化剤としてポエム DO-100V(商標、理研ビタミン社製)0.8質量%及びリケマール PO-100V(商標、理研ビタミン社製)0.08質量%を含有するもの(サンプル7)の各サンプル油脂を調製した。また、食紅1質量%で着色した親油性静菌剤(AR-274(商標)、アサマ社製)を別途調製した。そして、その親油性静菌剤0.15gにサンプル油脂14.85gを加え、マグネティックスターラー(iuchi社製HS-3E)を用いて緩い攪拌(レベル2)に設定し、1分間で着色した親油性静菌剤がどの程度分散するか目視観察した。また、親油性静菌剤が均一になる攪拌力で均一になるまで攪拌した条件を確認した。
【0047】
結果を
図2に示す。W/O乳化力の高いポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR:CRS-75)を使用することで親油性静菌剤が分散しやすく、またその分散を1日経っても維持できることが分かった。また、副次的な効果として、PGPRはパスタのツヤも出せることも判明した。
【0048】
6.静菌剤の分散条件の検討(2)
親油性静菌剤を配合した食用油脂の乳化剤の配合量を検討するため、以下の要領で親油性静菌剤の分散条件を検討した。発明者らによる検討で、HLBが高い(DO-100V、HLB7.4)と親油性静菌剤の分散が維持できない事が判明しているため、HLB3~7までの間で分散維持が可能なHLBの確認を行った。
【0049】
乳化剤としてサンソフトNo.81S(商標、モノオレイン酸ソルビタン、HLB5.1、太陽化学社製)を使用し、この乳化剤を食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)に溶解し、乳化剤1質量%を含有するサンプル油脂を調製した。また、食紅1質量%で着色した親油性静菌剤(AR-274(商標)、アサマ社製)を別途調製した。そして、100mLプラカップに前記親油性静菌剤1.8g、サンプル油脂90gを加え、サンプル9とした。サンプルを7000rpmの早さで2分間ディスパーザーにかけた。なお、比較対象として、乳化剤を添加せず親油性静菌剤と食用油脂からなるサンプル(サンプル8)を調製し、同様にディスパーザーにかけた。その後、110mLバイアル瓶に80gを測り取り24℃に静置した。3日後、親油性静菌剤の沈降度合いを目視観察し、サンプル8を基準にして、次の評価基準で評価した。
(評価基準)◎:全く沈降なし、〇:沈降なし、△:サンプル8、×:沈降多い
【0050】
結果を
図3に示す。3日経過後の沈降度合いを目視観察したところ、サンプル8は親油性静菌剤の沈降が認められたが、サンプル9はうっすらと沈降が確認できる程度で、サンプル8と比較して分散性は良好であった。
【0051】
7.静菌剤の分散条件の検討(3)
親油性静菌剤を配合した食用油脂組成物の乳化剤の配合量を検討するため、親油性静菌剤の分散性の確認を行った。乳化剤として、SYグリスターCV-1L(商標、HLB2.7、阪本薬品工業社製)及びTAISET AD(商標、HLB3.0、太陽化学社製)を使用した。SYグリスターCV-1L(商標)は0.1、1、1.5、2、5質量%、TAISET(商標)は1%を食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)に溶解し、乳化剤を含有するサンプル油脂(サンプル10~15)を調製した。また、食紅1質量%で着色した親油性静菌剤(AR-274(商標)、アサマ社製)を別途調製した。100mLプラカップに前記静菌剤1.8gとサンプル油脂90gを加え、7000rpmの早さで2分間ディスパーザーにかけた。その後、110mLバイアル瓶に80gを測り取り24℃に静置した。なお、比較対象として、サンプル8を用いた。3日後、親油性静菌剤の沈降度合いを目視観察し、サンプル8を基準にして、次の評価基準で評価した。結果を
図4に示す。
(評価基準)◎:全く沈降なし、〇:沈降なし、△:サンプル8、×:沈降多い
【0052】
8.静菌剤の分散条件の検討(4)
親油性静菌剤を配合した食用油脂組成物の乳化剤の配合量を検討するため、親油性静菌剤の分散性の確認を行った。乳化剤として、SYグリスターCRS-75(商標、HLB~2、阪本薬品工業社製)を 0.1、1、5質量%を食用油脂(さらさらキャノーラ油(商標)、味の素社製)に溶解し、乳化剤を含有するサンプル油脂(サンプル16~18)を調製した。また、食紅1質量%で着色した親油性静菌剤(AR-274(商標)、アサマ社製)を別途調製した。100mLプラカップに前記静菌剤1.8gとサンプル油脂90gを加え、7000rpmの早さで2分間ディスパーザーにかけた。その後、110mLバイアル瓶に80gを測り取り24℃に静置した。なお、比較対象として、サンプル8を用いた。3日後、親油性静菌剤の沈降度合いを目視観察し、サンプル8を基準にして、次の評価基準で評価した。結果を
図5に示す。
(評価基準)◎:全く沈降なし、〇:沈降なし、△:サンプル8、×:沈降多い
前記親油性静菌剤が、チアミンラウリル硫酸塩、ホップ抽出物、ユッカ抽出物、カラシ抽出物、トウガラシ抽出物、カンゾウ油性抽出物からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の食用油脂組成物。
前記乳化剤が、ジグリセリンエステル、有機酸モノグリセリンエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択された1種以上である、請求項1又は2に記載の食用油脂組成物。