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特開2023-56681シミュレーション装置、シミュレーション方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056681
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16Z 99/00 20190101AFI20230413BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G16Z99/00
G01N15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166038
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 元彬
(72)【発明者】
【氏名】仲村 英也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粒子の付着力を加味して粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション装置、シミュレーション方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】シミュレーション装置20は、受付部31と粒子の付着力を算出する付着力算出部321と付着力算出部321が算出した付着力を用い、複数の粒子の挙動を解析する粒子挙動解析部322と、を有する。付着力算出部321は、前記粒子と、前記粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション装置であって、
前記粒子の付着力を算出する付着力算出部と、
前記付着力算出部が算出した付着力を用い、前記複数の粒子の挙動を解析する粒子挙動解析部と、を有し、
前記付着力算出部は、前記粒子と、前記粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて前記付着力を算出するシミュレーション装置。
【請求項2】
前記付着力算出部はさらに、前記粒子と、前記被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、前記粒子と前記被接触物との前記接触面の接線方向についての前記付着力を算出する請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション方法であって、
前記粒子の付着力を算出する付着力算出工程と、
前記付着力算出工程で算出した付着力を用い、前記複数の粒子の挙動を解析する粒子挙動解析工程と、を有し、
前記付着力算出工程では、前記粒子と、前記粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて前記付着力を算出するシミュレーション方法。
【請求項4】
前記付着力算出工程ではさらに、前記粒子と、前記被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、前記粒子と前記被接触物との前記接触面の接線方向についての前記付着力を算出する請求項3に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記粒子の付着力を算出する付着力算出部と、
前記付着力算出部が算出した付着力を用い、前記複数の粒子の挙動を解析する粒子挙動解析部と、して機能させ、
前記付着力算出部は、前記粒子と、前記粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて前記付着力を算出するプログラム。
【請求項6】
前記付着力算出部ではさらに、前記粒子と、前記被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、前記粒子と前記被接触物との前記接触面の接線方向についての前記付着力を算出する請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記複数の粒子を含む粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得する第1パラメータ取得部と、
複数個の前記粒子から構成される粒子群を粗視化し、1個の粗視化粒子とした場合の、前記粗視化粒子についてのパラメータである第2パラメータを算出する第2パラメータ算出部とを更に有し
前記粒子挙動解析部は、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて、前記粗視化粒子の挙動を解析し、
前記第2パラメータ算出部は、前記粒子の付着力と、前記粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて、前記第2パラメータを算出する請求項1または請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記複数の粒子を含む粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得する第1パラメータ取得工程と、
複数個の前記粒子から構成される粒子群を粗視化し、1個の粗視化粒子とした場合の、前記粗視化粒子についてのパラメータである第2パラメータを算出する第2パラメータ算出工程とを更に有し
前記粒子挙動解析工程は、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて、前記粗視化粒子の挙動を解析し、
前記第2パラメータ算出工程では、前記粒子の付着力と、前記粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて、前記第2パラメータを算出する請求項3または請求項4に記載のシミュレーション方法。
【請求項9】
前記コンピュータが、
前記複数の粒子を含む粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得する第1パラメータ取得部と、
複数個の前記粒子から構成される粒子群を粗視化し、1個の粗視化粒子とした場合の、前記粗視化粒子についてのパラメータである第2パラメータを算出する第2パラメータ算出部とを更に有するように機能させ、
前記粒子挙動解析部は、前記第1パラメータ、および前記第2パラメータに基づいて、前記粗視化粒子の挙動を解析し、
前記第2パラメータ算出部は、前記粒子の付着力と、前記粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて、前記第2パラメータを算出する請求項5または請求項6に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、シミュレーション方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シミュレーション条件の入力を行う入力装置と、
シミュレーション結果を出力する出力装置と、
前記入力装置から入力されたシミュレーション条件に基づいて、大きさが異なる複数の
粒子を含む粉粒体の挙動を解析する処理装置とを有し、
前記処理装置は、
前記入力装置から入力されたシミュレーション対象の粉粒体の粒径分布を規定するパラメータの値、及び粒子を粗視化する基準となる粗視化係数の値に基づいて、粗視化された粉粒体の挙動をシミュレーションにより求め、
シミュレーションによって求められた粒子の挙動と、入力された粗視化係数の値とを関連付けて前記出力装置に出力するシミュレーション装置等に開示されているように、粉粒体についてのシミュレーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-57135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場等におけるプロセスの改善や、製造工程を検討する際の試験工数の削減等を目的として、複数の粒子を含む粉体(粉粒体)の挙動の解析を離散要素法(DEM:Discrete Element Method)計算等により行うことが従来からなされてきた。
【0005】
離散要素法計算は、個々の粒子について運動方程式を解くことで、粉体全体の運動を記述するシミュレーション技術である。
【0006】
ところで、工場等の装置内では、粒子、壁面等の物性や、処理条件等により、装置の壁面に粒子が付着する場合や、粒子同士が凝集して造粒現象が生じる場合がある。しかしながら、従来の離散要素法計算では、粒子に生じる付着力について十分に評価できておらず、例えば上記現象を適切に評価できていなかった。
【0007】
上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、粒子の付着力を加味して粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション装置であって、
前記粒子の付着力を算出する付着力算出部と、
前記付着力算出部が算出した付着力を用い、前記複数の粒子の挙動を解析する粒子挙動解析部と、を有し、
前記付着力算出部は、前記粒子と、前記粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて前記付着力を算出するシミュレーション装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、粒子表面の付着力を加味して粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】粒子と壁面との間に生じる付着力の説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るシミュレーション装置のハードウェア構成図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るシミュレーション装置の機能を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態で行った粉体の挙動の解析を行った際の反応器の説明図である。
図5】付着力モデルとして粘着力モデルを用いた場合の粉体の挙動の解析結果の説明図である。
図6】付着力モデルとして液架橋モデルを用いた場合の粉体の挙動の解析結果の説明図である。
図7】複数個の粒子から構成される粒子群と、粒子群と壁面との衝突時の説明図である。
図8】複数個の粒子から構成される粒子群を粗視化した粗視化粒子と、粗視化粒子と壁面との衝突時の説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るシミュレーション装置の機能を示すブロック図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係るシミュレーション方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係るシミュレーション装置、シミュレーション方法、プログラムの具体例を、以下に図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1.第1の実施形態
[シミュレーション装置]
本発明の発明者らは、粒子の付着力を加味して、粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション装置とするべく、付着力を算出するためのモデルについて検討を行った。
(1)付着力モデルについて
(1-1)液架橋モデルの検討
粒子表面に生じる付着力として、粒子表面の液体の表面張力に起因する力と粒子が接近することにより粒子表面の液体が動くことに伴う粘性力に起因する付着力が提案されている。表面張力と粘性抵抗のどちらが支配的となるかはキャピラリ数によって分類される。本発明の発明者が、小型のロータリーキルンに樹脂製のビーズを供給する実験を行った結果から、見積もられるキャピラリ数は数千オーダであり粘性抵抗による液架橋力が支配的であることがわかった。そこで付着力モデルとして、粘性抵抗による液架橋モデルについて検討した。
【0012】
粒子同士が接近あるいは分離する際、粒子表面にある液体の粘性抵抗力が粒子の運動を妨げる。粒子同士の付着力はこの粘性抵抗力が起源となる。粘性抵抗による付着力Fadは以下の式(1-1)のように定式化されている。
【0013】
【数1】

式(1-1)中のηは液体粘性、Rは粒子半径、Dは粒子表面間距離、tは時間を表す。
【0014】
しかしながら、上記式(1-1)は、粒子間距離の逆数である1/Dを式中に含み、付着力Fadは、粒子間距離の逆数である1/Dに比例する。このため、粒子表面が接触している状態、すなわちD=0の場合に、付着力Fadは発散することになる。
【0015】
発散を避ける方法として、離散要素法計算について、無限小の時間ステップで運動方程式を解くことも考えられるが、計算時間が大幅に増加することになり、非現実的な計算時間を要することになる。また、付着力の上限を設定することも考えられるが、付着力の上限設定により計算結果が変わってしまう可能性がある。
【0016】
従って、液架橋モデルによれば、付着力を正確に評価することが困難であることが分かる。
(1-2)粘着力モデルの検討
そこで、新たな付着力モデルについて検討を行った。具体的には、付着力の発生起源として例えば粘着テープのようなフィルム平面上で発生する粘着剤の弾性変化を仮定した。この場合、粘着テープが剥がれる界面上で粘着剤の弾性変形による力がテープを剥がす向きとは逆方向に発生する。これを粒子上の粘着力に発展させると、粒子の接触面の円周上で付着力が発生していると考えられる。なお、上記接触面は、粒子と、該粒子と接触する被接触物との接触面を意味し、被接触物としては他の粒子や、壁面等が挙げられる。単位長さあたりの付着力をAw,nと置くと、接触面と垂直方向の付着力Fad,nは以下の式(1-2)で表せる。
【0017】
【数2】

式(1-2)中のAw,nは垂直方向の付着力の比例定数であり、rcontは接触半径を意味する。
【0018】
図1(A)に示すように、粒子11と、壁面12とが接している場合において、粒子11がブロック矢印A1の方向に移動する場合、該ブロック矢印A1と逆方向であるブロック矢印A2に沿って、粒子11と、壁面12とが接する領域131に上記式(1-2)で算出される付着力が生じる。なお、ここでは粒子11と壁面12とが接している場合を例に説明しているが、粒子11同士の場合でも同様のことが言える。以下の回転方向、接線方向の付着力についても同様である。
【0019】
また、粒子の回転方向の付着力による抵抗トルクTadは以下の式(1-3)で表される。
【0020】
【数3】

式(1-3)中のハットマークを付したωは、単位回転ベクトルを表す。
【0021】
図1(B)に示すように、粒子11と、壁面12とが接している場合において、粒子11がブロック矢印B1の方向に回転する場合、該ブロック矢印B1の回転を妨げる方向であるブロック矢印B2に沿って、粒子11と、壁面12とが接する領域132に、上記式(1-3)で算出できる付着力である抵抗トルクが生じる。
【0022】
すなわち、上記接触面と垂直方向、および粒子の回転方向の付着力は、接触半径rcontに基づいて算出できる。上記式(1-2)、式(1-3)においては、既述の液架橋モデルのような粒子間距離の逆数を含むものではないため、粒子同士が接触する場合や、非常に近接した場合でも、付着力の計算結果が発散することなく、適切に評価できる。
【0023】
ここでは粘着力モデルにより付着力を表すモデルであるため、接線方向については粒子が滑らず転がると規定することで、接線方向の付着力を評価しなくても、適切な付着力を算出できる。従って、付着力を、接触面における接触半径に基づいて算出できる。
【0024】
ただし、接線方向の付着力をより正確に評価する場合、接線方向の付着力Fad,tを以下の式(1-4)で表すことができる。
【0025】
【数4】

式(1-4)中のAw,tは、接線方向の付着力の比例定数であり、δは接線方向オーバーラップ量を示す。
【0026】
図1(C)に示すように、粒子11と、壁面12とが接している場合において、粒子11がブロック矢印C1の方向に移動する場合、該ブロック矢印C1の反対方向であるブロック矢印C2に沿って、粒子11と、壁面12とが接する領域133に、上記式(1-4)で算出できる付着力が生じる。
【0027】
既述の接触半径に基づいて算出した垂直方向や、回転方向の付着力に加えて、上述の粒子と、被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、粒子と被接触物との接触面の接線方向についての付着力を算出して加味することで、付着力をより正確に評価できる。
(2)シミュレーション装置
本実施形態のシミュレーション装置は、複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション装置であり、以下の付着力算出部と、粒子挙動解析部とを有することができる。
【0028】
付着力算出部は、粒子の付着力を算出できる。
【0029】
粒子挙動解析部は、付着力算出部が算出した付着力を用い、複数の粒子の挙動を解析できる。
【0030】
そして、付着力算出部は、粒子と、粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。
【0031】
図2に示したハードウェア構成図に示すように、本実施形態のシミュレーション装置20は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)21と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)22やROM(Read Only Memory)23と、補助記憶装置24と、入出力インタフェース25と、出力装置である表示装置26等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス27で相互に接続されている。なお、補助記憶装置24や表示装置26は、外部に設けられていてもよい。
【0032】
CPU21は、シミュレーション装置20の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU21は、ROM23または補助記憶装置24に格納された、例えば後述するシミュレーション方法や、プログラム(シュミレーションプログラム)を実行して、付着力の算出や、粒子の挙動の解析を行うことができる。
【0033】
RAM22は、CPU21のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
【0034】
ROM23は、プログラム(シュミレーションプログラム)等を記憶することができる。
【0035】
補助記憶装置24は、SSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、シミュレーション装置の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納できる。
【0036】
入出力インタフェース25は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
【0037】
表示装置26は、モニタディスプレイ等である。表示装置26では、解析画面が表示され、入出力インタフェース25を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
【0038】
図2に示したシミュレーション装置20の各機能は、例えばRAM22やROM23等の主記憶装置または補助記憶装置24からプログラム(シミュレーションプログラム)等を読み込ませ、CPU21により実行することにより、RAM22等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェース25および表示装置26を動作させることで実現できる。
【0039】
図3に、本実施形態のシミュレーション装置20の機能ブロック図を示す。
【0040】
図3に示すように、シミュレーション装置20は、受付部31、処理装置32、出力部33を有することができる。これらの各部は、シミュレーション装置20が有するCPU、記憶装置、各種インタフェース等を備えたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置において、CPUが予め記憶されている例えば後述するシミュレーション方法や、プログラムを実行することでソフトウェアおよびハードウェアが協働して実現される。
【0041】
各部の構成について以下に説明する。
(A)受付部
受付部31は、処理装置32で実行される処理に関係するユーザーからのコマンドやデータの入力を受け付ける。受付部31としてはユーザーが操作を行い、コマンド等を入力するキーボードやマウス、ネットワークを介して入力を行う通信装置、CD-ROM、DVD-ROM等の各種記憶媒体から入力を行う読み取り装置などが挙げられる。
(B)処理装置
処理装置32は、付着力算出部321、粒子挙動解析部322有することができる。なお、処理装置は、必要に応じてさらに任意の部材を有することができ、例えば初期設定部や、パラメータ取得部等を有することもできる。
(B-1)付着力算出部
既述のように、本実施形態のシミュレーション装置20では、粒子の付着力を算出し、複数の粒子の挙動を解析する際に、該付着力を反映させることができる。これにより、粒子の凝集や、粒子の壁面への付着等の現象を適切に評価できる。
【0042】
付着力算出部321では、「(1)付着力モデルについて」の「(1-2)粘着力モデルの検討」の中で説明したように、既述の粘着力モデルを用いて、粒子と、該粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。具体的には、既述の式(1-2)、式(1-3)を用いて、粒子と、該粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。ここでは、粘着力モデルにより付着力を表すモデルを用いているため、粒子表面は十分な粘着力を有している。このため、接線方向については粒子が滑らず転がると規定することができる。これにより、接線方向の付着力を評価しなくても、適切な付着力を算出できる。
【0043】
ただし、接線方向の付着力をより正確に評価する場合、付着力算出部はさらに、粒子と、被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、粒子と被接触物との接触面の接線方向についての付着力を算出できる。具体的には、既述の式(1-4)を用いて、接線方向についての付着力を算出できる。この場合、後述する粒子挙動解析部は、付着力について、付着力算出部が算出した既述の垂直方向、回転方向の付着力に加え、上述のように算出した接線方向の付着力も加味して、粉体の挙動を解析することになる。
(B-2)粒子挙動解析部
粒子挙動解析部322では、付着力算出部321が算出した付着力を用い、複数の粒子の挙動を解析できる。具体的には離散要素法を用いて計算し、粒子の挙動を解析できる。
(B-3)初期設定部
図示しない初期設定部は、解析対象となる粉体を構成する粒子の位置を初期化するとともに、解析の条件、例えば必要に応じて粉体を配置する領域の温度等を設定できる。なお、例えば粒子挙動解析部322で粒子の挙動を解析する際に用いるプログラム等に予め初期条件が設定されている場合等には、初期設定部は設けなくてもよい。
(B-4)パラメータ取得部
図示しないパラメータ取得部では、例えば解析の対象となる粉体に関連するパラメータを取得できる。取得するパラメータは、粉体に関連するパラメータ以外に、解析に要する各種パラメータを含むこともできる。取得するパラメータは解析(シミュレーション)の内容に応じて選択できるため、その具体的な種類は特に限定されない。取得するパラメータとしては、離散要素法計算に必要となる各種パラメータが挙げられ、具体的には例えば粒子径、粒子数、ヤング率、計算のTime step、ポワソン比、壁面との摩擦係数、粒子間の摩擦係数、転がり摩擦係数、密度等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0044】
取得するパラメータは、データベース等に収録されているデータであってもよく、予め実験を行い求めた実験値であってもよい。また、取得するパラメータは、実験結果からシミュレーション等によりフィッティングして算出した計算値であってもよい。なお、例えば粒子挙動解析部322で粒子の挙動を解析する際に用いるプログラム等に予め必要なパラメータが組み込まれている場合等には、パラメータ取得部は設けなくてもよい。
(C)出力部
出力部33は、ディスプレイ等を有することができる。粒子挙動解析部322で得られたシミュレーション結果を出力部33に出力できる。出力するシミュレーション結果の内容は特に限定されないが、例えば出力部33に粒子の位置を時系列で画像として出力し、表示することができる。
【0045】
ここで、本実施形態のシミュレーション装置を用いて行った粉体の挙動の解析結果の例を示す。
【0046】
図4(A)に示した円筒形の反応器40内における複数の粒子の挙動のシミュレーション結果例を示す。図4(B)は、図4(A)の反応器40の中心軸CAに沿って反応器40の内部を見た場合の図になる。図4(C)は、図4(A)の反応器40の側面図であり、中心軸CAに直交するように反応器40の内部を見た場合の図になる。反応器40は内径Dが200mm、長手方向の長さLが100mmになる。
【0047】
図4(B)、図4(C)に示した様に、円筒形の反応器40内に複数の粒子41を配置しておいた。そして、回転軸CAを回転軸として、一方方向に回転させた場合の粒子41の挙動を解析した。
【0048】
なお、解析に用いた粒子の条件を表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
付着力モデルとして既述の粘着力モデルを用いた場合、すなわち本実施形態のシミュレーション装置を用いて解析した場合の解析結果を図5(A)~図5(C)に示す。図5(A)が回転開始後1秒経過時、図5(B)が回転開始後5秒経過時、図5(C)が回転開始後10秒経過時の結果になる。
【0051】
また、付着力モデルとして既述の液架橋モデルを用いた点以外は同様にして行った場合の解析結果を図6(A)~図6(C)に示す。図6(A)が回転開始後1秒経過時、図6(B)が回転開始後5秒経過時、図6(C)が回転開始後10秒経過時の結果になる。
【0052】
図5(A)~図5(C)、図6(A)~図6(C)において、反応器40の壁面401を点線で示している。
【0053】
本実施形態のシミュレーション装置によれば、図5(B)、図5(C)に示すように壁面401に粒子41が付着することで、スケーリングが発生することが再現できることを確認できた。また、計算結果が発散することはなく、安定的に粒子の挙動を解析できることを確認できた。
【0054】
一方、付着力モデルとして液架橋モデルを用いた図6(A)~図6(C)に示した結果によると、粒子41が壁面401から離れており、付着力が非物理的な数値となることが確認された。これは、既述のように付着力の算出式である式(1-1)において、付着力が粒子表面間距離の逆数に比例することから、粒子表面が接触している状態で無限大に発散するためと考えられる。
【0055】
以上の結果から、付着力モデルとして、粘着力モデルを用いることで、計算安定性に優れ、壁面のスケーリングを再現できる、妥当な結果を得られることを確認できた。すなわち、本実施形態のシミュレーション装置によれば、粒子表面の付着力を加味して粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション装置を提供できていることを確認できた。
【0056】
以上に説明した本実施形態のシミュレーション装置によれば、複数の粒子を含む粉体の挙動をシミュレーションすることができ、その用途等は特に限定されない。例えば、キルン等の回転体内での粉体の挙動のシミュレーションに好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のシミュレーション装置によれば、回転体内での、粉体の挙動を解析することもできる。
[シミュレーション方法]
次に、本実施形態のシミュレーション方法について説明する。本実施形態のシミュレーション方法は、例えば既述のシミュレーション装置を用いて実施できる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
【0057】
本実施形態のシミュレーション方法は、複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション方法に関する。本実施形態のシミュレーション方法は、以下の工程を有することができる。
【0058】
粒子の付着力を算出する付着力算出工程。
【0059】
付着力算出工程で算出した付着力を用い、複数の粒子の挙動を解析する粒子挙動解析工程。
【0060】
付着力算出工程では、粒子と、粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。
【0061】
各工程について以下に説明する。
(1)付着力算出工程
本実施形態のシミュレーション方法では、粒子の付着力を算出し、複数の粒子の挙動を解析する際に、該付着力を反映させることができる。これにより、粒子の凝集や、粒子の壁面への付着等の現象を適切に評価できる。
【0062】
そこで、付着力算出工程では、「(1)付着力モデルについて」の「(1-2)粘着力モデルの検討」の中で説明したように、既述の粘着力モデルを用いて、粒子と、該粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。具体的には、既述の式(1-2)、式(1-3)を用いて、粒子と、該粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。ここでは、粘着力モデルにより付着力を表すモデルを用いているため、粒子表面は十分な粘着力を有している。このため、接線方向については粒子が滑らず転がると規定することができる。これにより、接線方向の付着力を評価しなくても、適切な付着力を算出できる。
【0063】
ただし、接線方向の付着力をより正確に評価する場合、付着力算出工程ではさらに、粒子と、被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、粒子と被接触物との接触面の接線方向についての付着力を算出できる。具体的には、既述の式(1-4)を用いて、接線方向についての付着力を算出できる。この場合、後述する粒子挙動解析工程では、付着力について、付着力算出工程で算出した既述の垂直方向、回転方向の付着力に加え、接線方向の付着力も加味して、粉体の挙動を解析することになる。
(2)粒子挙動解析工程
粒子挙動解析工程では、付着力算出工程で算出した付着力を用いて、粒子の挙動を解析できる。具体的には離散要素法を用いて計算し、粒子の挙動を解析できる。
(3)初期設定工程
本実施形態のシミュレーション方法は、例えばさらに初期設定工程を有することもできる。初期設定工程では、解析対象となる粉体を構成する粒子の位置を初期化するとともに、解析の条件、例えば必要に応じて粉体を配置する領域の温度等を設定できる。なお、例えば粒子挙動解析工程で粒子の挙動を解析する際に用いるプログラム等に予め初期条件が設定されている場合等には、初期設定工程は実施しなくてもよい。
(4)パラメータ取得工程
本実施形態のシミュレーション方法は、例えばさらにパラメータ取得工程を有することもできる。パラメータ取得工程では、例えば解析の対象となる粉体に関連するパラメータを取得できる。取得するパラメータは、粉体に関連するパラメータ以外に、解析に要する各種パラメータを含むこともできる。取得するパラメータは解析(シミュレーション)の内容に応じて選択できるため、その具体的な種類は特に限定されない。取得するパラメータとしては、離散要素法計算に必要となる各種パラメータが挙げられ、具体的には例えば粒子径、粒子数、ヤング率、計算のTime step、ポワソン比、壁面との摩擦係数、粒子間の摩擦係数、転がり摩擦係数、密度等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0064】
取得するパラメータは、データベース等に収録されているデータであってもよく、予め実験を行い求めた実験値であってもよい。また、取得するパラメータは、実験結果からシミュレーション等によりフィッティングして算出した計算値であってもよい。なお、例えば粒子挙動解析工程で粒子の挙動を解析する際に用いるプログラム等に予め必要なパラメータが組み込まれている場合等には、パラメータ取得工程は実施しなくてもよい。
(5)出力工程
本実施形態のシミュレーション方法は、例えばさらに出力工程を有することができる。出力工程では、例えば粒子挙動解析工程で得られたシミュレーション結果を、出力部へ出力できる。出力するシミュレーション結果の内容は特に限定されないが、例えば出力部に粒子の位置を時系列で画像として出力し、表示することができる。
【0065】
以上に説明した本実施形態のシミュレーション方法によれば、従来は検討されていなかった付着力を加味して粉体の挙動を解析できる。このため、粒子の凝集や、粒子の壁面への付着等の現象を適切に評価できる。
【0066】
従って、本実施形態のシミュレーション方法によれば、粒子表面の付着力を加味して粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション方法を提供できる。
[プログラム]
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
【0067】
本実施形態のプログラムは、複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのプログラムに関し、コンピュータを以下の付着力算出部、粒子挙動解析部として機能させることができる。
【0068】
付着力算出部は、粒子の付着力を算出できる。
【0069】
粒子挙動解析部は、付着力算出部が算出した付着力を用い、複数の粒子の挙動を解析できる。
【0070】
そして、付着力算出部は、粒子と、粒子と接触する被接触物との接触面における接触半径に基づいて付着力を算出できる。
【0071】
なお、付着力算出部ではさらに、粒子と、被接触物とのオーバーラップ量に基づいて、粒子と被接触物との接触面の接線方向についての付着力を算出することもできる。
【0072】
本実施形態のプログラムは、例えば既述のシミュレーション装置のRAMやROM等の主記憶装置または補助記憶装置の各種記憶媒体に記憶させておくことができる。そして、係るプログラムを読み込ませ、CPUにより実行することにより、RAM等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェースおよび表示装置を動作させて実行できる。このため、シミュレーション装置で既に説明した事項については説明を省略する。
【0073】
上述した本実施形態のプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供してもよい。また、本実施形態のプログラムをインターネットなどのネットワークを介して提供、配布するように構成してもよい。
【0074】
本実施形態のプログラムは、CD-ROM等の光ディスクや、半導体メモリ等の記録媒体に格納した状態で流通等させてもよい。
【0075】
以上に説明した本実施形態のプログラムによれば、従来は検討されていなかった付着力を加味して粉体の挙動を解析できる。このため、粒子の凝集や、粒子の壁面への付着等の現象を適切に評価できる。
【0076】
従って、本実施形態のプログラムによれば、粒子表面の付着力を加味して粉体の挙動を解析できる新たなプログラムを提供できる。
【0077】
2.第2の実施形態
次に、複数の粒子から構成される粒子群の粗視化と付着力とを加味して、粉体の挙動を解析できる新たなシミュレーション装置について検討を行った。
【0078】
[シミュレーション装置]
(1)粒子の粗視化、および粗視化粒子の粒子挙動の計算に用いるパラメータについて
(1-1)粒子の粗視化について
本実施形態のシミュレーション装置の詳細について説明する前に、本実施形態のシミュレーション装置で用いることができる、複数個の粒子から構成される粒子群の粗視化、および粗視化した粒子である粗視化粒子に関連するパラメータの算出方法について以下に説明する。
【0079】
離散要素法計算では、取り扱う粒子数が多くなるほど計算負荷が高くなる。このため、例えば工場で用いるプラント等のような大きな規模での粉体の挙動について解析を行う場合、計算量が膨大になり、現実的には計算を行うことが困難となる。
【0080】
そこで、多量の粒子を含む粉体について挙動を解析する場合、計算量を抑制するため、例えば図7(A)に示した複数個の粒子から構成される粒子群71を、図8(A)に示すような1個の大きな粒子である粗視化粒子81として取り扱う粗視化の技術が必要となる。
【0081】
ただし、粗視化前の個別の粒子と、粗視化粒子とでは比表面積等が異なるため、計算に要する一部のパラメータは変化することになる。このため、粗視化粒子のパラメータを適切に決定する必要がある。
【0082】
(1-2)粗視化粒子の粒子挙動の計算に用いるパラメータについて
計算にあたって、図7(A)に示した粗視化する前の複数個の粒子から構成される粒子群71が壁面72に衝突する場合と、図8(A)に示した粗視化粒子81が壁面72に衝突する場合とをモデルに用いた。以下の説明では壁面と粒子とが衝突する場合を例に粗視化粒子に関するパラメータを決定する方法を記載するが、粒子同士が衝突する場合でも同様の議論となるため説明を省略する。
【0083】
図7(A)に示すように、複数個の粒子から構成される粒子群71が、立方体状に、縦方向、横方向、高さ方向に2個ずつ、合計で2個並んでいるとする。後述するように、係る8個の粒子をまとめて1個の粗視化粒子とする場合、一辺の方向に並べた粒子の数、すなわち2を粗視化倍率とする。
【0084】
図7(A)に示した複数個の粒子71A、71Bを含む粒子群71が壁面72に衝突する際に、粒子群71のうち壁面72側に位置する粒子71Aが壁面あるいは外部粒子から受ける力を図7(B)に示すようにFとする。また、図7(B)に示すように粒子71Aの壁面72あるいは外部粒子とのオーバーラップ量をδ、粒子71Bの隣接する粒子71Aとのオーバーラップ量をδとする。なお、図7(B)は、粒子群71が壁面72に衝突する際の様子を側面側から見た図になる。
【0085】
この場合、粒子群71に加わる力の大きさは、以下の式(2-1)で表すことができる。
【0086】
なお、式(2-1)におけるαは粗視化倍率であり、既述のように粒子群71を1個の粗視化粒子とした場合に一辺の方向に並べた粒子の数を意味する。図7(A)に示した粒子群71を図8(A)に示した1個の粗視化粒子81とする場合、α=2となる。
【0087】
また、mは各粒子71A、71Bの質量を、aは粒子群71の重心の加速度を、ηは壁面72あるいは外部粒子と粒子71Aとの反発係数から算出される粘性係数をそれぞれ意味している。作用反作用の法則により粒子間の接触力が打ち消されるため、壁面72とは直接接しない粒子71Bが、隣接する粒子71Aから受ける力Fは式(2-1)には表れないことになる。
【0088】
【数5】

なお、上述のη等を反発係数から算出する際に用いる、反発係数eと粘性係数ηとの関係は、以下の式(A)で表すことができる。式(A)中のmは換算質量を、Kはバネ係数を意味している。
【0089】
【数6】
【0090】
次に、図8(A)に示すように、図7(A)に示した8個の粒子からなる粒子群71を1つの粗視化粒子81としたとする。この場合において、粗視化粒子81が、壁面72に衝突した場合に、粗視化粒子81が受ける力は以下の式(2-2)で表すことができる。
【0091】
式(2-2)中のFcwは、図8(B)に示すように粗視化粒子81が壁面72あるいは外部粒子から受ける力を、δcwは粗視化粒子81の壁面72あるいは外部粒子とのオーバーラップ量を、ηcwは粗視化粒子81と壁面72あるいは外部粒子との反発係数から算出される粘性係数をそれぞれ意味している。なお、図8(B)は、粗視化粒子81が壁面72に衝突する際の様子を側面側から見た図になる。
【0092】
【数7】
【0093】
既述のように、粗視化は、離散要素法計算において、計算量を抑制するために行うものである。このため、粗視化粒子81についての計算結果と、粗視化粒子81とする前の粒子群71についての計算結果とは一致することになる。
【0094】
従って、粒子群71について計算を行った既述の式(2-1)と、粒子群を粗視化した粗視化粒子81について計算を行った既述の式(2-2)とから、対応するパラメータが一致することを示す以下の式(2-3)、式(2-4)が導出される。
【0095】
【数8】
【0096】
【数9】
【0097】
また、Hertz-Mindlinの接触モデルにより、粒子のオーバーラップ量δ、δ、δcwを用いて、各粒子に加わる力を以下の式(2-5)~式(2-7)のように表すことができる。式(2-5)~式(2-7)におけるKは粒子11Aと壁面12あるいは外部粒子とのバネ係数を、Kは粒子群71の内部粒子のバネ係数を、Kcwは粗視化粒子81と壁面72あるいは外部粒子とのバネ係数をそれぞれ意味している。
【0098】
【数10】
【0099】
【数11】
【0100】
【数12】
【0101】
そうすると、式(2-3)、式(2-5)、式(2-7)から以下の式(2-8)の関係が導かれる。
【0102】
【数13】

ここで、以下の式(2-9)のようにKを定義すると、上記式(2-8)は以下の式(2-10)のように表すことができる。
【0103】
【数14】
【0104】
【数15】
【0105】
なお、粗視化前の粒子群71と、粗視化粒子81とで重心が一致しているとすると、以下の式(2-11)の関係を満たすことになる。
【0106】
【数16】
【0107】
従って、Kを適切に設定することで、粗視化粒子81の壁面72あるいは外部粒子とのオーバーラップ量δCWから、粗視化前の粒子群71を構成する粒子のオーバーラップ量を算出できることもわかる。
【0108】
そして、Kは、衝突中の粗視化前の粒子群71の弾性エネルギーと、粗視化粒子81の弾性エネルギーとの関係を用いた特性方程式により算出できる。具体的には例えば、粗視化前の粒子群71全体の弾性エネルギーと、粗視化粒子全体の弾性エネルギーが等しくなると仮定して、特性方程式を作成してKを算出できる。
【0109】
壁面72と衝突中の、粒子群71の弾性エネルギーと、粗視化粒子の弾性エネルギーは、既述の粒子群71を構成する粒子71A、71Bに加わる力や、粗視化粒子に加わる力を表した式(2-5)~式(2-7)をオーバーラップ量の距離で積分することで算出できる。
【0110】
従って、粗視化前の粒子群71全体の弾性エネルギーと、粗視化粒子全体の弾性エネルギーとを用いて、以下の式(2-12)が得られる
【0111】
【数17】

上記式(2-12)は、既述の式(2-8)~式(2-11)を用いて以下の式(2-13)に変形できる。
【0112】
【数18】
【0113】
式(2-13)は垂直方向のKの特性方程式である。そして、式(2-9)の定義式から明らかなように、Kは粗視化粒子、および粗視化前の粒子群71を構成する粒子のオーバーラップ量に関するパラメータであり、粗視化粒子の挙動を支配するパラメータである。このため、特性方程式によりKを事前に求めておくことによって、粗視化粒子のオーバーラップ量から粗視化前粒子群のオーバーラップ量を算出するなど、粗視化粒子についてのパラメータを算出したり、粗視化粒子の挙動を計算したりすることが可能になる。
【0114】
ここまで、壁面72に対する垂直方向の運動方程式を用いて説明したが、接線方向の運動方程式や、回転の運動方程式についても同様のことが言える。
【0115】
具体的には、接線方向の運動方程式は、式(2-14)で表すことができる。
【0116】
この場合も、式(2-15)に示したように、Kを設定すると、δ、δは式(2-16)、式(2-17)のように示すことができ、粗視化前の粒子群の弾性エネルギーと、粗視化粒子の弾性エネルギーが等しいとすると、式(2-18)が得られる。式(2-18)を変形することで、接線方向の特性方程式である式(2-19)が得られる。ただし、接線方向の接触モデルには線形バネモデルを使用した。このように、接触モデルによって弾性エネルギーの計算式が異なるが、必要に応じて特性方程式を変更する等により、適切に弾性エネルギーを算出できる。
【0117】
【数19】
【0118】
【数20】
【0119】
【数21】
【0120】
【数22】
【0121】
【数23】
【0122】
【数24】
【0123】
(1-3)粗視化粒子の付着力に関するパラメータについて
既述の垂直方向のKの特性方程式は、付着力を考慮する場合、付着力項が必要となり、以下の式(2-20-1)で表される。式(2-20-1)中のAp,nは、粗視化前の粒子群の内部粒子の付着力係数を表している。式(2-20-1)におけるAは、粗視化前の粒子群を構成する粒子の付着力係数Aw,nと、粗視化粒子の付着力係数Acwとから、式(2-20-2)で表される。
【0124】
【数25】
【0125】
【数26】
【0126】
式(2-20-1)は粗視化粒子のオーバーラップ量δcwの関数であるため、離散要素法を用いた計算と並行して方程式を解く必要がある。
【0127】
しかしながら、離散要素法を用いた計算と同時に特性方程式を解くことは計算負荷の観点から難しい。そこで、近似解として式(2-20-1)を式(2-21)と式(2-22)とに分ける。ここで、式(2-21)と式(2-22)とはそれぞれは粗視化粒子のオーバーラップ量とは独立に解くことができるものである。ここで、式(2-21)は本実施形態で用いられる特性方程式であり、既述の方法と同様の特性パラメータを用いることができる。一方で、付着力に関しては式(2-22)の解であるAと粗視化前の粒子群を構成する粒子の付着力係数Aw,nを用いて、既述の式(2-20-2)から、粗視化粒子の付着力係数Acwを求めることができる。すなわち、粗視化粒子の付着力は、粗視化前の粒子群を構成する粒子の付着力と、粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて算出できる。
【0128】
【数27】
【0129】
【数28】
【0130】
なお、ここでは粗視化前後での付着力を例に説明したが、付着力以外のパラメータについても同様にして、既述の特性方程式の解K、Aを用いて粗視化後のパラメータを算出できる。例えば、特性方程式を用いて反発係数、摩擦係数、転がり摩擦係数を算出することもできる。なお、計算に適用するモデルに応じて、これらの係数は調整可能であり、上述のように特性方程式を用いて算出、換算できる。
【0131】
(2)シミュレーション装置
本実施形態のシミュレーション装置は、複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション装置であり、第1の実施形態で説明したシミュレーション装置において、さらに以下の第1パラメータ取得部、第2パラメータ取得部を有することができる。
【0132】
第1パラメータ取得部は、複数の粒子を有する粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得できる。
【0133】
第2パラメータ算出部は、複数個の粒子から構成される粒子群を粗視化し、1個の粗視化粒子とした場合の、粗視化粒子についてのパラメータである第2パラメータを算出できる。
【0134】
そして、粒子挙動解析部は、第1パラメータ、および第2パラメータに基づいて、粗視化粒子の挙動を解析できる。
【0135】
また、第2パラメータ算出部は、粒子群を構成する粒子の付着力と、粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて、第2パラメータを算出できる。
【0136】
図9に、本実施形態のシミュレーション装置90の機能ブロック図を示す。なお、ハードウェアは、第1実施形態のシミュレーション装置と同様に構成できるため、説明を省略する。
【0137】
図9に示すように、シミュレーション装置90は、受付部91、処理装置92、出力部93を有することができる。これらの各部は、シミュレーション装置90が有するCPU、記憶装置、各種インタフェース等を備えたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置において、CPUが予め記憶されている例えば後述するシミュレーション方法や、プログラムを実行することでソフトウェアおよびハードウェアが協働して実現される。
【0138】
各部の構成について以下に説明する。
【0139】
(A)受付部
受付部91は、処理装置92で実行される処理に関係するユーザーからのコマンドやデータの入力を受け付ける。受付部91としてはユーザーが操作を行い、コマンド等を入力するキーボードやマウス、ネットワークを介して入力を行う通信装置、CD-ROM、DVD-ROM等の各種記憶媒体から入力を行う読み取り装置などが挙げられる。
【0140】
(B)処理装置
処理装置92は、第1パラメータ取得部921、第2パラメータ算出部922、粒子挙動解析部923を有することができる。なお、処理装置は、必要に応じてさらに任意の部材を有することができ、例えば初期設定部等を有することもできる。
【0141】
(B-1)第1パラメータ取得部
第1パラメータ取得部921では、例えば解析の対象となる粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得できる。第1パラメータは、粉体に関連するパラメータ以外に、解析に要する各種パラメータを含むこともできる。なお、第1パラメータ取得部は、第1の実施形態におけるパラメータ取得部に相当する。第1パラメータは解析(シミュレーション)の内容に応じて選択できるため、その具体的な種類は特に限定されない。第1パラメータとしては、離散要素法計算に必要となる各種パラメータが挙げられ、具体的には例えば粒子径、粒子数、ヤング率、計算のTime step、ポワソン比、壁面との摩擦係数、粒子間の摩擦係数、転がり摩擦係数、密度等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0142】
第1パラメータは、データベース等に収録されているデータであってもよく、予め実験を行い求めた実験値であってもよい。また、第1パラメータは、実験結果からシミュレーション等によりフィッティングして算出した計算値であってもよい。
【0143】
(B-2)第2パラメータ算出部
既述のように、本実施形態のシミュレーション装置90では、計算量を抑制するため、粉体が有する複数個の粒子から構成される粒子群を、1個の粗視化粒子に粗視化し、粒子の数を少なくして計算を行うことができる。ただし、粗視化粒子は、粗視化前の粒子群を構成する個々の粒子とは質量等の各種パラメータが異なる。このため、粗視化粒子について、計算を行う際に必要となるパラメータの算出や、設定を行う必要がある。
【0144】
第2パラメータ算出部922では、「(1)粒子の粗視化、および粗視化粒子の粒子挙動の計算に用いるパラメータについて」の中で説明したように、粗視化前の粒子群の弾性エネルギーと、粗視化粒子の弾性エネルギーとの関係を用いて導出した特性方程式の解であるKや、既述のAを用いて、第2パラメータを算出できる。
【0145】
具体的には例えば、粗視化前の粒子群71全体の弾性エネルギーと、粗視化粒子全体の弾性エネルギーが等しくなると仮定して、既述の垂直方向のKの特性方程式である式(2-13)、式(2-21)を導出できる。また、粗視化前の粒子群71全体の付着エネルギーと、粗視化粒子全体の付着エネルギーが等しくなると仮定して既述のAの特性方程式である式(2-22)を導出できる。導出した式(2-13)、式(2-21)および式(2-22)から垂直方向のK、Aを算出できる。そして、既述の式(2-13)に示した特性方程式の解である垂直方向のKや、式(2-22)の解であるAを用いて、第2パラメータを算出できる。また、既述の式(2-19)に示した接線方向のKの特性方程式を用いて、接線方向のKを算出でき、係る接線方向のKを用いて第2パラメータを算出することもできる。
【0146】
既述のように、K、Aは、粗視化粒子の挙動を支配するパラメータであり、K、Aを用いることで、粗視化粒子の挙動に関連する各種パラメータを算出できる。
【0147】
後述する粒子挙動解析部で用いる第2パラメータの種類は解析の内容に応じて選択できるため、特に限定されない。例えば第2パラメータは、粗視化粒子の付着力を含むこともできる。この場合、第2パラメータ算出部は、第1の実施形態で説明した付着力算出部で算出した粒子の付着力から、既述の特性方程式の解K、Aを用いて、粗視化粒子の付着力に関するパラメータを算出できる。なお、第1の実施形態で説明した付着力算出部は、第2パラメータ算出部と別に設けていても良く、第2パラメータ算出部内に含まれていても良い。
【0148】
(B-3)粒子挙動解析部
粒子挙動解析部923では、第1の実施形態で説明した粒子挙動解析部と同様に、付着力算出部が算出した付着力を用いて、詳細には第2パラメータ算出部で算出した粗視化粒子の付着力を用いて、複数の粒子の挙動を解析できる。粒子挙動解析部923では、第1パラメータ取得部921により取得した第1パラメータ、および第2パラメータ算出部922で算出した第2パラメータを用いて、粗視化粒子の挙動を解析できる。具体的には離散要素法を用いて計算し、粗視化粒子の挙動を解析できる。粗視化粒子の挙動を解析することで、粉体の挙動を解析することができる。
【0149】
なお、ここでいう挙動とは、粗視化粒子の運動による位置の変化だけではなく、温度変化等の状態変化も含む。
【0150】
(B-4)初期設定部
図示しない初期設定部は、解析対象となる粉体を構成する粒子の位置を初期化するとともに、解析の条件、例えば必要に応じて粉体を配置する領域の温度等を設定できる。なお、例えば粒子挙動解析部923で粗視化粒子の挙動を解析する際に用いるプログラム等に予め初期条件が設定されている場合や、第1パラメータ取得部921により取得する場合には、初期設定部は設けなくてもよい。
【0151】
(C)出力部
出力部93は、ディスプレイ等を有することができる。粒子挙動解析部923で得られたシミュレーション結果を出力部93に出力できる。出力するシミュレーション結果の内容は特に限定されないが、例えば出力部93に粗視化された粒子の位置を時系列で画像として出力し、表示することができる。
【0152】
以上に説明した本実施形態のシミュレーション装置によれば、複数の粒子を含む粉体の挙動をシミュレーションすることができ、その用途等は特に限定されない。例えば、キルン等の回転体内での粉体の挙動のシミュレーションに好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のシミュレーション装置によれば、回転体内での、粉体の挙動を解析することもできる。
【0153】
以上に説明した本実施形態のシミュレーション装置によれば、複数個の粒子からなる粒子群を1個の粗視化粒子とすることで、計算量を抑制できる。このため、工場で用いるプラント等のような大きな規模での粉体の挙動についても計算量を抑制し、効率的に計算を行うことができる。
【0154】
そして、粗視化粒子のパラメータを既述のパラメータK、Aを用いて計算するため、精度よく計算を行うことができる。
【0155】
[シミュレーション方法]
次に、本実施形態のシミュレーション方法について説明する。本実施形態のシミュレーション方法は、例えば既述のシミュレーション装置を用いて実施できる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
【0156】
本実施形態のシミュレーション方法は、複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのシミュレーション方法に関する。本実施形態のシミュレーション方法は、図10に示したフロー図に従って実施することができ、第1の実施形態で説明したシミュレーション方法において、さらに以下の第1パラメータ取得工程、第2パラメータ取得工程を有することができる。
【0157】
第1パラメータ取得工程は、粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得できる(S1)。
【0158】
第2パラメータ算出工程は、複数個の粒子から構成される粒子群を粗視化し、1個の粗視化粒子とした場合の、粗視化粒子についてのパラメータである第2パラメータを算出できる(S2)。
【0159】
そして、粒子挙動解析工程では、第1パラメータ、および第2パラメータに基づいて、粗視化粒子の挙動を解析できる(S3)。
【0160】
また、第2パラメータ算出工程(S2)では、粗視化前の粒子群を構成する粒子の付着力と、粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて、第2パラメータを算出できる。
【0161】
各工程について以下に説明する。
(1)第1パラメータ取得工程(S1)
第1パラメータ取得工程(S1)では、解析の対象となる粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得できる。既述のシミュレーション装置を用いる場合、例えば第1パラメータ取得部921において、第1パラメータ取得工程を実施できる。なお、第1パラメータ取得工程は、第1の実施形態におけるパラメータ取得工程に相当する。
【0162】
第1パラメータは解析の内容に応じて選択できるため、その具体的な種類は特に限定されない。第1パラメータとしては、離散要素法計算に必要となる各種パラメータが挙げられる。第1パラメータの具体的な例はシミュレーション装置で既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0163】
第1パラメータは、データベース等に収録されているデータであってもよく、予め実験を行い求めた実験値であってもよい。また、第1パラメータは、実験結果からシミュレーション等によりフィッティングして算出した計算値であってもよい。
【0164】
(2)第2パラメータ算出工程(S2)
本実施形態のシミュレーション方法では、計算量を抑制するため、粉体が有する複数個の粒子から構成される粒子群を、1個の粗視化粒子に粗視化し、粒子の数を少なくして計算を行うことができる。
【0165】
そこで、第2パラメータ算出工程(S2)では、「(1)粒子の粗視化、および粗視化粒子の粒子挙動の計算に用いるパラメータについて」の中で説明したように、粗視化前の粒子群の弾性エネルギーと、粗視化粒子の弾性エネルギーとの関係を用いて導出した特性方程式の解であるKや、既述のAを用いて、第2パラメータを算出できる。具体的には例えば、粗視化前の粒子群71全体の弾性エネルギーや付着エネルギーと、粗視化粒子全体の弾性エネルギーや付着エネルギーが等しくなると仮定して、既述の垂直方向のK、Aの特性方程式である式(2-13)、式(2-21)および式(2-22)を導出し、式(2-13)、式(2-21)および式(2-22)から垂直方向のK、Aを算出できる。そして、既述の式(2-13)に示した特性方程式の解である垂直方向のKや、式(2-22)の解であるAを用いて、第2パラメータを算出できる。また、既述の式(2-19)に示した接線方向のKの特性方程式を用いて、接線方向のKを算出でき、係る接線方向のKを用いて第2パラメータを算出することもできる。
【0166】
既述のように、K、Aは、粗視化粒子の挙動を支配するパラメータであり、K、Aを用いることで、粗視化粒子の挙動に関連する各種パラメータを算出できる。
【0167】
既述のシミュレーション装置を用いる場合、例えば第2パラメータ算出部922において、第2パラメータ算出工程を実施できる。
【0168】
後述する粒子挙動解析工程で用いる第2パラメータの種類は解析の内容に応じて選択できるため、特に限定されない。例えば第2パラメータは、粗視化粒子の付着力を含むこともできる。この場合、第2パラメータ算出工程では、第1の実施形態で説明した付着力算出工程で算出した粒子の付着力から、既述の特性方程式の解K、Aを用いて、粗視化粒子の付着力に関するパラメータを算出できる。なお、図10において、付着力算出工程の記載は省略しているが、付着力算出工程は、第2パラメータ算出工程とは別に実施しても良く、第2パラメータ算出工程内で実施しても良い。付着力算出工程を、第2パラメータ算出工程と別に実施する場合、実施するタイミングは特に限定されないが、例えば第1パラメータ取得工程後、第2パラメータ算出工程前等のタイミングで実施できる。
【0169】
(3)粒子挙動解析工程(S3)
粒子挙動解析工程(S3)では、第1の実施形態で説明した粒子挙動解析工程と同様に、付着力算出工程で算出した付着力を用いて、詳細には第2パラメータ算出工程で算出した粗視化粒子の付着力を用いて、複数の粒子の挙動を解析できる。粒子挙動解析工程では、第1パラメータ取得工程(S1)で得た第1パラメータ、および第2パラメータ算出工程(S2)で算出した第2パラメータを用いて、粗視化粒子の挙動を解析できる。具体的には離散要素法を用いて計算し、粗視化粒子の挙動を解析できる。粗視化粒子の挙動を解析することで、粉体の挙動を解析することができる。
【0170】
なお、ここでいう挙動とは、粗視化粒子の運動による位置の変化だけではなく、温度変化等の状態変化も含む。
【0171】
(4)初期設定工程
本実施形態のシミュレーション方法は、例えばさらに初期設定工程を有することもできる。初期設定工程では、解析対象となる粉体を構成する粒子の位置を初期化するとともに、解析の条件、例えば必要に応じて粉体を配置する領域の温度等を設定できる。なお、例えば粒子挙動解析工程で粗視化粒子の挙動を解析する際に用いるプログラム等に予め初期条件が設定されている場合や、第1パラメータ取得工程により取得する場合には、初期設定工程は実施しなくてもよい。
【0172】
(5)出力工程
本実施形態のシミュレーション方法は、例えばさらに出力工程を有することができる。出力工程では、例えば粒子挙動解析工程(S3)で得られたシミュレーション結果を、出力部へ出力できる。出力するシミュレーション結果の内容は特に限定されないが、例えば出力部に粗視化された粒子の位置を時系列で画像として出力し、表示することができる。
【0173】
以上に説明した本実施形態のシミュレーション方法によれば、複数個の粒子からなる粒子群を1個の粗視化粒子とすることで、計算量を抑制できる。このため、工場で用いるプラント等のような大きな規模での粉体の挙動についても計算量を抑制し、効率的に計算を行うことができる。
【0174】
そして、粗視化粒子のパラメータを既述のパラメータK、Aを用いて計算するため、精度よく計算を行うことができる。
【0175】
[プログラム]
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
【0176】
本実施形態のプログラムは、複数の粒子を含む粉体の挙動を解析するためのプログラムに関し、コンピュータを以下の各部として機能させることができる。本実施形態のプログラムは、具体的には、コンピュータが、第1実施形態のプログラムで説明した各部に加えて、以下の第1パラメータ取得部と、第2パラメータ取得部とをさらに有するように機能させることができる。
【0177】
第1パラメータ取得部は、粉体に関連するパラメータを含む第1パラメータを取得することができる。
【0178】
第2パラメータ取得部は、複数個の粒子から構成される粒子群を粗視化し、1個の粗視化粒子とした場合の、粗視化粒子についてのパラメータである第2パラメータを算出できる。
【0179】
そして、粒子挙動解析部は、第1パラメータ、および第2パラメータに基づいて、粗視化粒子の挙動を解析できる。
【0180】
第2パラメータ算出部では、粗視化前の粒子群を構成する粒子の付着力と、粗視化粒子の付着力との関係を用いた特性方程式の解を用いて、第2パラメータを算出できる。
【0181】
本実施形態のプログラムは、例えば既述のシミュレーション装置のRAMやROM等の主記憶装置または補助記憶装置の各種記憶媒体に記憶させておくことができる。そして、係るプログラムを読み込ませ、CPUにより実行することにより、RAM等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェースおよび表示装置を動作させて実行できる。このため、シミュレーション装置で既に説明した事項については説明を省略する。
【0182】
上述した本実施形態のプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供してもよい。また、本実施形態のプログラムをインターネットなどのネットワークを介して提供、配布するように構成してもよい。
【0183】
本実施形態のプログラムは、CD-ROM等の光ディスクや、半導体メモリ等の記録媒体に格納した状態で流通等させてもよい。
【0184】
以上に説明した本実施形態のプログラムによれば、複数個の粒子からなる粒子群を1個の粗視化粒子とすることで、計算量を抑制できる。このため、工場で用いるプラント等のような大きな規模での粉体の挙動についても計算量を抑制し、効率的に計算を行うことができる。
【0185】
そして、粗視化粒子のパラメータを既述のパラメータK、Aを用いて計算するため、精度よく計算を行うことができる。
【符号の説明】
【0186】
11、71A、71B 粒子
12、72 壁面(被接触物)
20、90 シミュレーション装置
321 付着力算出部
322、923 粒子挙動解析部
921 第1パラメータ取得部
922 第2パラメータ算出部
S1 第1パラメータ取得工程
S2 第2パラメータ算出工程
S3 粒子挙動解析工程
71 粒子群
81 粗視化粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10