IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075370
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】二価のサマリウム化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/24 20210101AFI20230524BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20230524BHJP
   C01F 17/36 20200101ALI20230524BHJP
【FI】
C25B1/24 B
C25B1/00 Z
C01F17/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020067676
(22)【出願日】2020-04-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、「分子触媒を用いたアンモニア合成に関する研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西林 仁昭
(72)【発明者】
【氏名】荒芝 和也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 章一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆正
【テーマコード(参考)】
4G076
4K021
【Fターム(参考)】
4G076AA08
4G076AB04
4G076BA11
4G076BB08
4G076BD02
4G076BG02
4G076DA30
4K021AB11
4K021BA11
4K021BA18
4K021BB01
4K021BB03
4K021BB05
4K021DB05
(57)【要約】
【課題】
二価のサマリウム化合物の新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】
三価のサマリウム化合物を電解反応を用いて二価のサマリウム化合物に還元する還元工程を含む、二価のサマリウム化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三価のサマリウム化合物を電解反応を用いて二価のサマリウム化合物に還元する還元工程を含む、二価のサマリウム化合物の製造方法。
【請求項2】
前記三価のサマリウム化合物が、ハロゲン化サマリウム(III)、サマリウム(III)アルコキシド、β-ジケトナートサマリウム(III)錯体、又は無機酸サマリウム(III)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化サマリウム(III)が、ヨウ化サマリウム(III)である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記還元工程において、-1.0V乃至-3.0Vの電位で電解反応を為すことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記還元工程において、電解反応を行う反応容器が、隔膜により作用極反応槽と対極反応槽とに分かれた構成である反応容器を用いて、電解反応を為すことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記還元工程において、イオン液体を含む溶媒中で電解反応を為すことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記還元工程において、-20℃乃至60℃の温度範囲内で電解反応を為すことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二価のサマリウム化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二価のサマリウム化合物、例えば、ヨウ化サマリウム(II)は、有機合成反応において官能基選択的還元反応、炭素-炭素結合生成反応等に利用されている重要な還元剤の一つである(非特許文献1)。例えば、還元剤としてヨウ化サマリウム(II)を用いて、モリブデン触媒、窒素ガス及びプロトン源として水を使用した常温常圧条件によるアンモニア合成技術が報告されており(非特許文献2)、このアンモニア合成技術をエネルギーキャリアとして利活用する研究が進められている。
一方、ヨウ化サマリウム(II)の調製方法は、例えば、金属サマリウムにヨウ素を反応させる方法、無水テトラヒドロフラン中で金属サマリウムに1,2-ジヨードエタン又はジヨードメタンを反応させてテトラヒドロフラン溶液として調製する方法、ヨウ化サマリウム(III)と金属サマリウムとの均一化反応から調製する方法等が報告されている(非特許文献1)。出発原料の金属サマリウムは還元蒸留や溶融塩電解等を行うことで得られることが報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Organic Synthesis using Samarium Diiodide: A Practical Guide 2009年
【非特許文献2】Nature 2019年, 568(7753)巻, 536-540ページ
【非特許文献3】レアメタル便覧 2011年, 1巻, 217-233ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、二価のサマリウム化合物を製造するにあたり、出発原料に原子価が0価である金属サマリウムが必要であることと、さらに、その金属サマリウムを得るための還元蒸留や溶融塩電解によるエネルギー消費が大きいことも課題であり、省エネルギーで二価のサマリウム化合物を製造できる代替方法が望まれていた。さらに非特許文献1には、二価のサマリウム化合物は取り扱いが難しいことが記載されており、これを容易に調製できることは、有機合成化学の観点から望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属サマリウムを使用することを回避して、省エネルギーで且つ、容易に調製可能な二価のサマリウム化合物を製造する新規な方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、三価のサマリウム化合物を電解反応を用いて二価のサマリウム化合物に還元することで、二価のサマリウム化合物を製造する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、第1観点として、三価のサマリウム化合物を電解反応を用いて二価のサマリウム化合物に還元する還元工程
を含む、二価のサマリウム化合物の製造方法に関する。
第2観点として、上記三価のサマリウム化合物が、ハロゲン化サマリウム(III)、サマリウム(III)アルコキシド、β-ジケトナートサマリウム(III)錯体、又は
無機酸サマリウム(III)である、第1観点に記載の製造方法に関する。
第3観点として、上記ハロゲン化サマリウム(III)が、ヨウ化サマリウム(III)である、第2観点に記載の製造方法に関する。
第4観点として、上記還元工程において、-1.0V乃至-3.0Vの電位で電解反応を為すことを特徴とする、第1観点乃至第3観点のうち何れか一に記載の製造方法に関する。
第5観点として、上記還元工程において、電解反応を行う反応容器が、隔膜により作用極反応槽と対極反応槽とに分かれた構成である反応容器を用いて、電解反応を為すことを特徴とする、第1観点乃至第4観点のうち何れか一に記載の製造方法に関する。
第6観点として、上記還元工程において、イオン液体を含む溶媒中で電解反応を為すことを特徴とする、第1観点乃至第5観点のうち何れか一に記載の製造方法に関する。
第7観点として、上記還元工程において、-20℃乃至60℃の温度範囲内で電解反応を為すことを特徴とする、第1観点乃至第6観点のうち何れか一に記載の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法は、三価のサマリウム化合物を電解反応を用いて二価のサマリウム化合物に還元することにより二価のサマリウム化合物を製造できるので、二価のサマリウム化合物を省エネルギーで製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、三価のサマリウム化合物を電解反応を用いて二価のサマリウム化合物に還元する還元工程
を含む、二価のサマリウム化合物の製造方法を対象とする。
更に詳細に本発明を説明する。
【0010】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法では、出発原料に三価のサマリウム化合物を用いる。該三価のサマリウム化合物としては、例えばハロゲン化サマリウム(III)、サマリウム(III)アルコキシド、β-ジケトナートサマリウム(III)錯体、又は無機酸サマリウム(III)等が挙げられる。
【0011】
上記ハロゲン化サマリウム(III)としては、例えば、臭化サマリウム(III)、塩化サマリウム(III)、塩化サマリウム(III)(6水和物)、ヨウ化サマリウム(III)等が挙げられる。上記サマリウム(III)アルコキシドとしては、例えば、サマリウム(III)イソプロポキシド等が挙げられる。上記β-ジケトナートサマリウム(III)錯体としては、例えば、サマリウム(III)アセチルアセトナート二水和物等が挙げられる。上記無機酸サマリウム(III)としては、例えば、硫酸サマリウム(III)八水和物等が挙げられる。
【0012】
この中でも、好ましい三価のサマリウム化合物としては、臭化サマリウム(III)、塩化サマリウム(III)及びヨウ化サマリウム(III)が挙げられ、より好ましいサマリウム化合物としては、ヨウ化サマリウム(III)が挙げられる。
【0013】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法において、溶媒に三価のサマリウム化合物を混合して電解反応で還元することが好ましい。そのような溶媒としては、特に限定するものではないが、ハロゲン化炭化水素系溶媒、環状エーテル系溶媒、鎖状エーテル系溶媒等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば塩化メチレンやクロロホルム等が挙げられる。環状エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)や1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル等が挙げられる。テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン及びジエチ
ルエーテルが好ましく、テトラヒドロフラン(THF)がより好ましい。
【0014】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法において、イオン液体を上記溶媒に溶解させることが好ましい。そのようなイオン液体としては、例えば、ジエチル-メチル-(2-メトキシエチル)アンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジエチル-メチル-(2-メトキシエチル)アンモニウム-テトラフルオロボレート、N-メチル-N-プロピルピペリジニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチル-プロピルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチル-プロピルピロリジウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ブチル-メチルピロリジウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ブチルピリジニウム-テトラフルオロボレート、1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、ブチルピリジニウム-トリフルオロメタンスルホナート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート、又はそれらの組み合わせが挙げられる。1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及び1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0015】
イオン液体のアニオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホナート又はヘキサフルオロホスファート等が挙げられ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0016】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法において、電解反応を行う反応容器は、電極、作用極反応槽、対極反応槽、隔膜を具備する容器であれば、特に限定するものではないが、H型セルが好ましい。電極としては、例えば、白金電極、カーボンペーパー電極、グラシーカーボン電極、Ag/AgCl電極等が挙げられる。カーボンペーパーとしては、例えば、TGP-H-120(東レ社製)、TGP-H-120H(東レ社製)、TGP-H-090(東レ社製)、TGP-H-090H(東レ社製)、TGP-H-060(東レ社製)、TGP-H-060H(東レ社製)、EC-TP1-060T(エレクトロケム社製)等が挙げられ、TGP-H-120(東レ社製)、TGP-H-090(東レ社製)、TGP-H-060(東レ社製)が好ましい。
【0017】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法において、電解反応を行う反応容器における作用極反応槽と対極反応槽とに分ける隔膜としては、例えば、多孔性のフィルター、ガラスフィルター、イオン交換膜等が挙げられる。イオン交換膜としては、例えば、カチオン交換膜、アニオン交換膜等が挙げられる。カチオン交換膜としては、例えば、アストム社のネオセプタ(登録商標)、AGC社のセレミオン(登録商標)、旭化成社のAciplex(登録商標)、Fumatech社のFumasep(登録商標)、Fumatech社のfumapem(登録商標)、デュポン社のナフィオン(登録商標)、ソルヴェイ社のアクイヴィオン(登録商標)、AGC社のフレミオン(登録商標)、日本ゴア合同会社のゴアセレクト(登録商標)等が挙げられる。アニオン交換膜としては、例えば、第四級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有するアニオン交換樹脂を含有する固体高分子膜が挙げられる。アニオン交換膜としては、例えば、Fumasep
社製のアニオン交換膜であるFAP、FAP-450、FAA-3、FAS、FAB、AMI-7001、AGC社製のアニオン交換膜であるAMV、AMT、DSV、AAV、ASV、ASV-N、AHO、APS4等が挙げられる。本発明の電解反応を行う反応容器における作用極反応槽と対極反応槽とに分ける隔膜は、ガラスフィルターが好ましい。
電解反応を行う反応容器において、溶媒及びイオン液体は、作用極反応槽及び対極反応槽にて使用される。
【0018】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法において、定電位電解反応の電位は、-1.0Vから-3.0Vが好ましく、-1.5Vから-2.5Vがより好ましく、-1.6Vから-2.2Vが更により好ましい。
【0019】
本発明の二価のサマリウム化合物の製造方法において、反応温度としては、特に限定するものではないが、-20℃から60℃が好ましく、-10℃から40℃がより好ましく、常温(室温)である20℃から30℃が更により好ましい。反応雰囲気は、不活性雰囲気、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気が好ましい。反応時間は、特に限定するものではないが、通常は数十分乃至数十時間の範囲で設定すればよい。
【0020】
ここで、本発明の好ましい態様の一つは、ヨウ化サマリウム(III)を電解反応を用いてヨウ化サマリウム(II)に還元する下記式(1)で表される還元工程
を含む、二価のサマリウム化合物の製造方法に関する。
【化1】
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0022】
ファラデー効率は、全反応電荷量に対して、目的とする電解による生成物の生成に用いられた電荷量の割合を示したものである。具体的には、以下の数式(A)を用いて算出した。
ファラデー効率(%)
=[(目的の電解生成物のために用いられた反応電荷量(C))/(全反応電荷量(C))]×100 (%) (A)
【実施例0023】
[実施例1]
電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造方法を以下に示す(下記式(2))。
ヨウ化サマリウム(III)(26.3mg、50μmol)及び1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(844.82mg、2.0mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させた溶液を、作用極と対極をガラスフィルターで接続したH型セルの作用極側に加え、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(844.82mg、2.0mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させた溶液を、H型セルの対極側に加えた。H型セルの作用極はカーボンペーパー(TGP-H-090(東レ社製))の電極を装着し、対極は白金電極を装着した。窒素雰囲気下室温で-2.0Vの定電位電解反応を1時間行った。その後、作用極側の反応溶液を紫外可視分光法にて測定して得られたUV-visスペクトルより算出して、ヨウ化サマリウム(II)を収率67%(ファラデー効率64%)にて製造できることを確認した。
【化2】
【0024】
[実施例2]
対極は白金電極からグラシーカーボン電極に変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率43%にて製造できることを確認した。
【0025】
[実施例3]
作用極はカーボンペーパー(TGP-H-090(東レ社製))からカーボンペーパー(TGP-H-120(東レ社製))の電極に変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率54%にて製造できることを確認した。
【0026】
[実施例4]
電解質を1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから1-エチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率62%にて製造できることを確認した。
【0027】
[実施例5]
電解質を1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率56%にて製造できることを確認した。
【0028】
[実施例6]
電解質を1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率66%にて製造できることを確認した。
【0029】
[実施例7]
定電位電解を-2.0Vからに-1.8Vに変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率58%にて製造できることを確認した。
【0030】
[実施例8]
定電位電解を-2.0Vからに-1.6Vに変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率55%にて製造できることを確認した。
【0031】
[実施例9]
定電位電解を-2.0Vからに-1.5Vに変更した以外は上述した実施例1と同様にして、電解反応を用いたヨウ化サマリウム(II)の製造を行った。ヨウ化サマリウム(II)を収率42%にて製造できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、金属サマリウムの使用を回避して、電解反応を用いた二価のサマリウム化合物を製造する新規な方法を提供する。これにより、エネルギーキャリアを志向した実用化向けのアンモニア合成方法として利用可能である。さらに特に、有機合成化学の観点より、不安定で取り扱いが難しい二価のサマリウム化合物を容易に調製できるため、有機合成用の試薬としての利用価値がある。