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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088827
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】粘着テープ、及び、構造体の解体方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230620BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230620BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230620BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230620BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/08
C09J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111234
(22)【出願日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021203628
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】今 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】倉敷 哲生
(72)【発明者】
【氏名】園部 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】向山 和孝
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004DB01
4J004DB02
4J004FA05
4J040CA001
4J040DF001
4J040DF021
4J040EF001
4J040EK031
4J040GA05
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA37
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA09
4J040PA00
4J040PA30
4J040PA31
4J040PA32
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離できる粘着テープを提供する。また、該粘着テープにより被着体が貼合されている構造体の解体方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの粘着剤層を有する粘着テープであって、6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの粘着剤層を有する粘着テープであって、
6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する粘着テープ。
【請求項2】
更に、熱膨張性マイクロスフェアーを含有する、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記フィラー(a)及び前記熱膨張性マイクロスフェアーを含有する層を有する、請求項2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記熱膨張性マイクロスフェアーは、熱膨張前の平均粒子径が45μm以下である、請求項2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記熱膨張性マイクロスフェアーは、規定膨張温度における熱膨張率が150%以上である、請求項2又は3記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層を含む多層構造であり、
少なくとも一方の最外層が前記粘着剤層である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項7】
少なくとも一方の最外層が、前記フィラー(a)を含有しない粘着剤層である、請求項6記載の粘着テープ。
【請求項8】
少なくとも一方の最外層が、前記フィラー(a)及び前記熱膨張性マイクロスフェアーのいずれも含有しない粘着剤層である、請求項7記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記フィラー(a)は、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種からなる、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記フィラー(a)は、平均粒子径が0.3μm以上、80.0μm以下である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤層は、アクリル粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ウレタン粘着剤層及びゴム系粘着剤層からなる群より選択される少なくとも1種の粘着剤層である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記フィラー(a)を含有する層における前記フィラー(a)の含有量が25体積%以下である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項13】
マイクロ波の照射により粘着力が低下する、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項14】
6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する粘着テープにより被着体が貼合されている構造体を解体する方法であって、
前記構造体にマイクロ波を照射した後に、前記被着体と前記粘着テープとを分離する、構造体の解体方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ、及び、構造体の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、電子機器、自動車部品等の構造体において部材の固定用として広く用いられている。
構造体の使用後に部材を再利用したり再資源化したりする場合、構造体から部材を分離する必要がある。しかしながら、粘着テープで強固に固定された部材を人の手で分離したり、部材から粘着テープをきれいに剥がしたりすることは困難を伴う。
【0003】
使用後に粘着テープを剥離する方法として、例えば、粘着テープを直接加熱する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-108394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の粘着テープは、加熱により剥離する際には粘着テープの周辺も同時に加熱されてしまうため、周辺の部材に損傷を与え、劣化させてしまう問題があった。また、粘着テープが剥離するまでの時間が長く、加熱時間が長くなることによっても、部材が損傷を受けやすかった。
【0006】
本発明は、被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離できる粘着テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着テープにより被着体が貼合されている構造体の解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示1は、少なくとも1つの粘着剤層を有する粘着テープであって、6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する、粘着テープである。
本開示2は、更に、熱膨張性マイクロスフェアーを含有する、本開示1の粘着テープである。
本開示3は、前記フィラー(a)及び前記熱膨張性マイクロスフェアーを含有する層を有する、本開示2の粘着テープである。
本開示4は、前記熱膨張性マイクロスフェアーは、熱膨張前の平均粒子径が45μm以下である、本開示2又は3の粘着テープである。
本開示5は、前記熱膨張性マイクロスフェアーは、規定膨張温度における熱膨張率が150%以上である、本開示2、3又は4の粘着テープである。
本開示6は、前記粘着剤層を含む多層構造であり、少なくとも一方の最外層が前記粘着剤層である、本開示1、2、3、4又は5の粘着テープである。
本開示7は、少なくとも一方の最外層が、前記フィラー(a)を含有しない粘着剤層である、本開示6の粘着テープである。
本開示8は、少なくとも一方の最外層が、前記フィラー(a)及び前記熱膨張性マイクロスフェアーのいずれも含有しない粘着剤層である、本開示7の粘着テープである。
本開示9は、前記フィラー(a)は、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種からなる、本開示1、2、3、4、5、6、7又は8の粘着テープである。
本開示10は、前記フィラー(a)は、平均粒子径が0.3μm以上、80.0μm以下である、本開示1、2、3、4、5、6、7、8又は9の粘着テープである。
本開示11は、前記粘着剤層は、アクリル粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ウレタン粘着剤層及びゴム系粘着剤層からなる群より選択される少なくとも1種の粘着剤層である、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の粘着テープである。
本開示12は、前記フィラー(a)を含有する層における前記フィラー(a)の含有量が25体積%以下である、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11の粘着テープである。
本開示13は、マイクロ波の照射により粘着力が低下する、本開示1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の粘着テープである。
本開示14は、6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する粘着テープにより被着体が貼合されている構造体を解体する方法であって、前記構造体にマイクロ波を照射した後に、前記被着体と前記粘着テープとを分離する、構造体の解体方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、粘着テープに対して、6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が特定範囲を満たす、マイクロ波の吸収率が高く発熱しやすいフィラーを配合することを検討した。本発明者らは、このような粘着テープであれば、被着体を強固に接着できる一方で、マイクロ波を照射するとフィラーが効率的に発熱し、フィラーの周囲やフィラーを含有する層が局所的に短時間で加熱されて軟化し、粘着テープの粘着力が低下することを見出した。本発明者らは、このような粘着テープであれば、被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の粘着テープは、少なくとも1つの粘着剤層を有する。
本発明の粘着テープは、上記粘着剤層からなる単層構造であってもよいし、上記粘着剤層を含む多層構造であってもよい。
【0010】
本発明の粘着テープは、6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する。
本発明の粘着テープが単層構造である場合は、上記粘着剤層が上記フィラー(a)を含有する層である。即ち、本発明の粘着テープは、上記粘着剤層からなる単層構造であって、上記粘着剤層が上記フィラー(a)を含有する層である粘着テープであってもよい。本発明の粘着テープが多層構造である場合は、上記粘着剤層及び上記フィラー(a)を含有する層を有していてもよく、更に、上記粘着剤層及び上記フィラー(a)を含有する層以外に、他の層を有していてもよい。上記他の層は特に限定されず、例えば、基材、弾性体層等が挙げられる。上記フィラー(a)を含有する層及び上記他の層は、粘着性を有していてもよいし、粘着性を有さなくともよい。
また、本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。本発明の粘着テープは、片面粘着テープであってもよいし、両面粘着テープであってもよい。
なお、本発明の粘着テープは、その表面に(即ち最外層上に)、離型紙、離型フィルム、セパレータ等の表面保護材が積層されていてもよい。これらの離型紙、離型フィルム、セパレータ等は、通常、粘着テープを使用する際には剥離される。
【0011】
上記フィラー(a)の上記誘電損率が上記範囲内であれば、上記フィラー(a)がマイクロ波の吸収率が高く発熱しやすいものとなり、粘着テープにマイクロ波を照射すると、上記フィラー(a)が効率的に発熱し、上記フィラー(a)の周囲や上記フィラー(a)を含有する層が短時間で局所的に加熱されて軟化し、粘着テープの粘着力が低下する。このため、本発明の粘着テープは、被着体を強固に接着でき、被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離することができる。上記誘電損率の好ましい下限は0.1、好ましい上限は800であり、より好ましい下限は1、より好ましい上限は500である。
【0012】
上記フィラー(a)は、6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した比誘電率は特に限定されないが、好ましい下限が5、好ましい上限が1000である。上記誘電損率は上記比誘電率に比例することから、上記比誘電率が上記範囲内であることで、上記誘電損率が上記範囲を満たしやすくなる。上記比誘電率のより好ましい下限は10、より好ましい上限は800である。
なお、フィラー(a)の誘電損率、及び、比誘電率は、6GHz帯のマイクロ波照射装置と直方体空胴共振器とを用いてTE103モードで摂動法により23℃で測定することができる。
【0013】
上記フィラー(a)は、上記誘電損率が上記範囲を満たせば特に限定されず、金属からなるフィラーであってもよく、非金属からなるフィラーであってもよい。また、上記フィラー(a)は、無機物フィラーであってもよく、有機物フィラーであってもよく、有機-無機ハイブリッドフィラーであってもよい。なかでも、上記誘電損率が上記範囲を満たしやすいことから、上記フィラー(a)は、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。上記フィラー(a)は、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種からなることがより好ましく、炭化ケイ素及び酸化鉄からなる群より選択される少なくとも1種からなることが更に好ましい。これらのフィラー(a)は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記フィラー(a)の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.3μm、好ましい上限が80.0μmである。上記平均粒子径が0.3μm以上であれば、上記フィラー(a)の表面エネルギーが低くなるため凝集しにくくなり、上記フィラー(a)を含有する層が粘着性を有する場合にも粘着力の低下を防ぐことができる。上記平均粒子径が80.0μm以下であれば、上記フィラー(a)の周囲や上記フィラー(a)を含有する層がより効率的に軟化する。これは、上記フィラー(a)の比表面積が増大することで、マイクロ波を照射した際に上記フィラー(a)がより効率的に発熱できるからと考えられる。上記平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は50μmであり、更に好ましい下限は3μm、更に好ましい上限は30μmである。
なお、フィラー(a)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法を用いて測定することができる。レーザー回折・散乱法に用いる装置としては、例えば、堀場製作所社製の粒子径分布測定装置LA-960を用いることができる。
【0015】
上記フィラー(a)を含有する層における上記フィラー(a)の含有量は特に限定されないが、好ましい上限が25体積%である。上記フィラー(a)の含有量が25体積%以下であれば、上記フィラー(a)を含有する層が粘着性を有する場合にも粘着力の低下を防ぐことができる。上記フィラー(a)の含有量のより好ましい上限は24体積%、更に好ましい上限は23体積%である。
上記フィラー(a)の含有量の下限は特に限定されないが、上記フィラー(a)の周囲や上記フィラー(a)を含有する層をより効率的に加熱して軟化させる観点から、好ましい下限は10体積%、より好ましい下限は15体積%である。
【0016】
本発明の粘着テープは、更に、熱膨張性マイクロスフェアーを含有することが好ましい。
上記熱膨張性マイクロスフェアーとは、通常、重合体からなるシェルに、揮発性の液体発泡剤が内包されたマイクロカプセルである。上記熱膨張性マイクロスフェアーは、例えば、熱発泡性マイクロカプセル等とも呼ばれる。
上記熱膨張性マイクロスフェアーを含有することで、粘着テープは、上記フィラー(a)の発熱によって、より短時間で容易に被着体から剥離することができる。即ち、上記フィラー(a)の発熱によって上記熱膨張性マイクロスフェアーが熱膨張し、その結果粘着テープが変形することで、容易に剥離することができるようになる。粘着テープが変形することで(非一時的な変形)、室温程度まで冷却された後であっても、粘着テープを被着体から容易に剥離することができる。また、被着体から剥離した後に仮に粘着テープが再び被着体に貼り付いてしまったとしても、容易に被着体から剥離することができる。
【0017】
上記熱膨張性マイクロスフェアーの熱膨張前の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい上限が45μmである。上記熱膨張前の平均粒子径が45μm以下であれば、上記熱膨張性マイクロスフェアーが効率よく加熱されやすい。上記熱膨張前の平均粒子径のより好ましい上限は42μm、更に好ましい上限は40μmである。
上記熱膨張性マイクロスフェアーの熱膨張前の平均粒子径の下限は特に限定されないが、上記熱膨張性マイクロスフェアーの凝集を防ぐ観点から、好ましい下限は10μm、より好ましい下限は15μmである。
【0018】
上記熱膨張性マイクロスフェアーの規定膨張温度における熱膨張率は特に限定されないが、好ましい下限が150%である。上記規定膨張温度における熱膨張率が150%以上であれば、上記熱膨張性マイクロスフェアーが熱膨張することで粘着テープがより充分に変形し、より短時間で容易に被着体から剥離することができる。上記規定膨張温度における熱膨張率のより好ましい下限は5000%、更に好ましい下限は8000%である。
上記規定膨張温度における熱膨張率の上限は特に限定されないが、上記熱膨張性マイクロスフェアーの熱膨張時の粘着テープの変形による周辺部材の汚染を防ぐ観点から、好ましい上限は10000%、より好ましい上限は9000%である。
なお、本明細書において、熱膨張性マイクロスフェアーの規定膨張温度とは、昇温速度5℃/minでの昇温時に熱膨張性マイクロスフェアーの熱膨張が始まる温度より5℃高い温度を意味する。また、熱膨張性マイクロスフェアーの規定膨張温度における熱膨張率は、例えば、次のようにして求めることができる。まず、熱膨張性マイクロスフェアー1gをメスフラスコに入れ、水置換法により真比重を測定する。次に、熱膨張性マイクロスフェアー1gをギア式オーブンに入れ、規定膨張温度にて1分間加熱し熱膨張させる。熱膨張した熱膨張性マイクロスフェアーをメスフラスコに入れ、水置換法により真比重を測定する。熱膨張後の熱膨張性マイクロスフェアーの真比重に対する熱膨張前の熱膨張性マイクロスフェアーの真比重の比を算出し、これに100を乗じた値を熱膨張率とする。
【0019】
上記熱膨張性マイクロスフェアーは特に限定されず、市販品として、具体的には例えば、積水化学工業社製のアドバンセル、日本フィライト社製のエクスパンセル等が挙げられる。より具体的には、アドバンセルとしてEMH204(40μm、7692%)、EML101(15μm、5882%)、EHM302(20μm、6250%)、EHM303(29μm、6250%)、EM306(25μm、6250%)、EM403(30μm、6250%)、EM406(29μm、6250%)、EM501(26μm、6250%)、EM504(19μm、5000%)、エクスパンセルとして920-40DU(12μm、5882%)、909-80DU(21μm、10000%)等が挙げられる。なお、括弧内に示した値は、それぞれ熱膨張前の平均粒子径及び規定膨張温度における熱膨張率である。これらの熱膨張性マイクロスフェアーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記熱膨張性マイクロスフェアーを含有する層を構成する樹脂(例えば、アクリル共重合体、粘着付与樹脂、架橋剤等)の合計100重量部に対する上記熱膨張性マイクロスフェアーの含有量は特に限定されないが、好ましい上限が20重量部である。上記熱膨張性マイクロスフェアーの含有量が20重量部以下であれば、上記熱膨張性マイクロスフェアーを含有する層が粘着性を有する場合であっても、粘着力の低下を防ぐことができる。上記熱膨張性マイクロスフェアーの含有量のより好ましい上限は15重量部、更に好ましい上限は10重量部である。
上記熱膨張性マイクロスフェアーの含有量の下限は特に限定されないが、粘着テープをより充分に変形させる観点から、好ましい下限は2重量部、より好ましい下限は5重量部である。
【0021】
上記粘着剤層の組成は特に限定されないが、アクリル粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ウレタン粘着剤層及びゴム系粘着剤層からなる群より選択される少なくとも1種の粘着剤層であることが好ましい。なかでも、耐熱性により優れることから、アクリル粘着剤層又はシリコーン系粘着剤層がより好ましく、光、熱、水分等に対し比較的安定で、種々の被着体に接着が可能である(被着体選択性が低い)ことから、アクリル粘着剤層が更に好ましい。
上記アクリル粘着剤層は、アクリル共重合体及び粘着付与樹脂を含有する粘着剤層であることが好ましい。
【0022】
上記アクリル共重合体は、初期のタックが向上するため低温時の貼り付け易さが良好となる観点から、ブチルアクリレートに由来する構成単位及び2-エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1つの構成単位を有することが好ましい。上記アクリル共重合体は、ブチルアクリレートに由来する構成単位及び2-エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位を有することがより好ましい。
上記ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は80重量%である。上記ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有量をこの範囲内とすることにより、高い粘着力とタック性とを両立することができる。
上記2-エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は100重量%、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい下限は50重量%、更に好ましい上限は60重量%である。上記2-エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位の含有量をこの範囲内とすることにより、高い粘着力を発揮することができる。
【0023】
上記アクリル共重合体は、必要に応じてブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート以外の共重合可能な他の重合性モノマーに由来する構成単位を有していてもよい。上記共重合可能な他の重合性モノマーとして、例えば、アクリル酸エステル、官能基含有モノマー、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
上記アクリル酸エステルとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレートル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記官能基含有モノマーとして、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー、グリセリンジメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のバルク強度を上げる観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーが好ましい。
【0024】
上記アクリル共重合体を得るには、モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記モノマー混合物をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。上記モノマー混合物をラジカル反応させる際の反応方式としては、例えば、リビングラジカル重合、フリーラジカル重合等が挙げられる。
【0025】
上記アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましい下限が30万、好ましい上限が200万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上であれば、上記粘着剤層のバルク強度が上がり、被着体をより強固に接着することができる。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が200万以下であれば、上記粘着剤層が界面の濡れ性に優れ、被着体をより強固に接着することができる。上記重量平均分子量のより好ましい下限は40万、より好ましい上限は190万であり、更に好ましい下限は50万、更に好ましい上限は180万であり、更により好ましい下限は60万、更により好ましい上限は175万である。
【0026】
上記アクリル共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、好ましい下限が1.05、好ましい上限が30である。Mw/Mnが上記範囲内であると、低分子成分の割合が抑えられ、上記粘着剤層の凝集力が高くなるため、被着体をより強固に接着することができる。Mw/Mnのより好ましい上限は25であり、更に好ましい上限は20であり、更により好ましい上限は15である。
【0027】
なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。GPCの詳細な測定方法は以下の通りである。
アクリル共重合体含有溶液をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過する。得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求める。カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いることができる。
【0028】
上記粘着付与樹脂として、例えば、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ロジン系樹脂又はテルペン系樹脂が好ましく、水酸基を有するロジン系樹脂又はテルペン系樹脂がより好ましい。
【0029】
上記粘着付与樹脂は、軟化温度の好ましい下限が70℃、好ましい上限が170℃である。上記軟化温度が70℃以上であれば、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎることを抑制することができる。上記軟化温度が170℃以下であれば、上記粘着剤層が界面の濡れ性に優れ、被着体をより強固に接着することができる。上記軟化温度のより好ましい下限は90℃である。
なお、軟化温度とは、JIS K2207環球法により測定した軟化温度である。
【0030】
上記粘着付与樹脂は、水酸基価の好ましい下限が25、好ましい上限が200である。上記水酸基価が上記範囲内であることで、上記粘着剤層が界面の濡れ性に優れ、被着体をより強固に接着することができる。上記水酸基価のより好ましい下限は30、より好ましい上限は160である。
なお、水酸基価は、粘着付与樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法に基づいて測定された値として定義される。
【0031】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が10重量部以上であれば、上記粘着剤層の粘着力が高くなる。上記粘着付与樹脂の含有量が60重量部以下であれば、上記粘着剤層が硬くなりすぎて粘着力が低下することを抑制することができる。
【0032】
上記粘着剤層は、架橋剤により構成樹脂(例えば、上記アクリル共重合体、上記粘着付与樹脂等)の主鎖間に架橋構造が形成されていることが好ましい。上記架橋剤の種類及び量を調整することによって、上記粘着剤層のゲル分率を調整しやすくなる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の添加量は、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限が0.1重量部、より好ましい上限が6重量部である。
【0033】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が5μm、好ましい上限が150μmである。上記粘着剤層の厚みが上記範囲内であれば、粘着テープの粘着力が充分となる。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は100μmであり、更に好ましい下限は15μm、更に好ましい上限は75μmであり、更により好ましい下限は20μm、更により好ましい上限は50μmである。
【0034】
上記他の層の組成は特に限定されないが、上記他の層を構成する樹脂として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系(共)重合体、オレフィン系(共)重合体、塩化ビニル系(共)重合体、ポリエーテルエステル系トリブロック系(共)重合体、ポリエステル系(共)重合体、ウレタン系(共)重合体、アミド系(共)重合体又はアクリル系(共)重合体等が挙げられる。
また、上記他の層として、不織布等の繊維層や、アルミニウム等の金属層等を用いてもよい。また、上記他の層は、発泡体層であってもよい。
【0035】
上記他の層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が10μm、好ましい上限が5000μmである。上記他の層の厚みのより好ましい下限は15μm、より好ましい上限は200μmであり、更に好ましい下限は20μm、更に好ましい上限は150μmであり、更により好ましい下限は25μm、更により好ましい上限は100μmである。
なお、各層の厚みは、光学顕微鏡(例えば、キーエンス社製、「VHX-6000」)を用いて断面を観察することで測定できる。
【0036】
本発明の粘着テープの厚みは特に限定されないが、好ましい下限が5μm、好ましい上限が5500μmである。上記厚みが上記範囲内であれば、電子機器、自動車部品等の部品固定に粘着テープを好適に用いることができる。上記厚みのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は1000μmであり、更に好ましい下限は30μm、更に好ましい上限は500μmであり、更により好ましい下限は50μm、更により好ましい上限は200μmである。
【0037】
本発明の粘着テープは、上記フィラー(a)及び上記熱膨張性マイクロスフェアーを含有する層を有することが好ましい。上記フィラー(a)及び上記熱膨張性マイクロスフェアーを同じ層に含有することで、上記フィラー(a)の発熱によって上記熱膨張性マイクロスフェアーをより効率的に熱膨張させることができる。また、熱による層の軟化と、上記膨張性マイクロスフェアーによる層の変形とが同じ層で起こり、相乗的に変形が大きくなるため、被着体から粘着テープをより容易に剥離することができる。
なお、上記フィラー(a)と上記熱膨張性マイクロスフェアーとが別々の層に含有されている場合であっても、本発明の粘着テープは、通常の粘着テープよりも短時間で容易に被着体から剥離することができる。即ち、上記フィラー(a)と上記熱膨張性マイクロスフェアーとが別々の層に含有されている場合であっても、上記フィラー(a)の発熱は上記熱膨張性マイクロスフェアーを含有する層にも順次伝わるため、上記熱膨張性マイクロスフェアーの熱膨張により粘着テープが変形して粘着力が低下する。
【0038】
本発明の粘着テープは、最外層が上記粘着剤層であることが好ましい。
本発明の粘着テープが単層構造である場合は、テープ全体が粘着剤層かつ最外層となる。本発明の粘着テープが多層構造である場合は、上記粘着剤層を最外層に有することが好ましい。即ち、本発明の粘着テープは、上記粘着剤層を含む多層構造であり、少なくとも一方の最外層が上記粘着剤層であってもよい。なお、多層構造の粘着テープにおいて、一方の最外層が粘着剤層であれば片面粘着テープとして、両方の最外層が粘着剤層であれば両面粘着テープとして用いることができる。
なお、本明細書中、最外層とは、粘着テープにおける、離型紙、離型フィルム、セパレータ等の表面保護材を除いた最も外側の層(最表面の層)を意味する。
【0039】
本発明の粘着テープが多層構造である場合は、少なくとも一方の最外層が、上記フィラー(a)を含有しない粘着剤層であることが好ましい。
上記フィラー(a)を含有しない粘着剤層は、粘着テープにマイクロ波を照射した際、上記フィラー(a)を含有する層に比べて昇温の程度や速度が低い。このため、上記フィラー(a)を含有しない粘着剤層が被着体と接するように用いることで、被着体に与える熱による損傷を低減しつつ、粘着テープを被着体から剥離することができる。
【0040】
本発明の粘着テープが多層構造である場合は、少なくとも一方の最外層が、上記フィラー(a)及び前記熱膨張性マイクロスフェアーのいずれも含有しない粘着剤層であってもよい。このような構成とすることで、上記フィラー(a)や上記熱膨張性マイクロスフェアーの含有量に関わらず、被着体と接する粘着剤層の粘着力を高めることができる。
【0041】
本発明の粘着テープは、上記フィラー(a)を含有することで、マイクロ波の照射により粘着力が低下する粘着テープである。このため、本発明の粘着テープは、被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離することができる。
【0042】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、上記フィラー(a)を含有する層が粘着性を有する場合、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、アクリル共重合体、フィラー(a)、必要に応じて粘着付与樹脂、架橋剤、熱膨張性マイクロスフェアー等に溶剤を加えてフィラー(a)含有粘着剤溶液を作製する。このフィラー(a)含有粘着剤溶液を離型紙の離型処理面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去してフィラー(a)を含有する層を形成する。形成したフィラー(a)を含有する層上に別の離型紙の離型処理面を積層し、養生を行い、離型紙で覆われた粘着テープを得る。
【0043】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、電子機器、自動車部品等の構造体において部材の固定用として用いられることが好ましい。本発明の粘着テープで部材を固定することで、構造体の使用後に構造体から部材を分離することが容易となる。
【0044】
6GHz帯の空胴共振器を用いて23℃で測定した誘電損率が0.05以上、1000以下であるフィラー(a)を含有する粘着テープにより被着体が貼合されている構造体を解体する方法であって、上記構造体にマイクロ波を照射した後に、上記被着体と上記粘着テープとを分離する構造体の解体方法もまた、本発明の1つである。
上記マイクロ波を照射する方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波照射装置(例えば、Maxzen社製、JM17AGZ01)、家庭用電子レンジ等を用いて、周波数約2.45GHz、出力500~700W程度にてマイクロ波を照射する方法が挙げられる。
上記被着体と上記粘着テープとを分離する方法は特に限定されず、例えば、上記マイクロ波を照射して上記フィラー(a)を含有する層が加熱される際に(加熱されるのと同時に)、自然剥離又は人の手によって上記被着体と上記粘着テープとを分離する方法等が挙げられる。また、例えば、上記マイクロ波を照射して上記フィラー(a)を含有する層が加熱された後、上記フィラー(a)を含有する層が室温程度まで冷却された後に、人の手によって上記被着体から本発明の粘着テープを剥がす方法も挙げられる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離できる粘着テープを提供することができる。また、本発明によれば、該粘着テープにより被着体が貼合されている構造体の解体方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0047】
(粘着剤溶液Iの調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に酢酸エチル52重量部を入れて、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。酢酸エチルが沸騰してから、30分後に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を投入した。ここにブチルアクリレート70重量部、2-エチルヘキシルアクリレート26.9重量部、アクリル酸3重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部からなるモノマー混合物を1時間30分かけて、均等かつ徐々に滴下し反応させた。滴下終了30分後にアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加し、更に5時間重合反応させ、反応器内に酢酸エチルを加えて希釈しながら冷却することにより、固形分25重量%のアクリル共重合体の溶液を得た。
得られたアクリル共重合体について、ゲルパミエーションクロマトグラフとしてWater社製「2690 Separations Model」を用いてGPC法により重量平均分子量を測定したところ、125万であった。数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は25であった。
得られたアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、軟化点160℃の重合ロジンエステル15重量部、軟化点150℃のテルペンフェノール10重量部、軟化点100℃の水添ロジンエステル10重量部を添加した。更に、アクリル共重合体の固形分100重量部に対して、酢酸エチル(不二化学薬品社製)30重量部、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)0.2重量部を添加し、攪拌して、粘着剤溶液を得た。
【0048】
(実施例1)
粘着剤溶液Iに、炭化ケイ素(SiC)フィラー(GC♯4000、フジミインコーポレーテッド社製、比誘電率20、誘電損率1、平均粒子径3μm)を含有量が粘着剤層を構成する全ての成分中の25体積%となるように添加し、攪拌して、フィラー(a)含有粘着剤溶液を得た。
離型処理された厚み75μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用意し、このPETフィルムの離型処理面にフィラー(a)含有粘着剤溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み100μmのフィラー(a)を含有する層を形成した。フィラー(a)を含有する層上に離型処理された厚み75μmの別のPETフィルムの離型処理面を積層し、40℃で48時間加熱することで養生を行い、離型PETフィルムで覆われた粘着テープを得た。
【0049】
(実施例2)
粘着剤溶液Iに、炭化ケイ素(SiC)フィラー(GC♯4000、フジミインコーポレーテッド社製、比誘電率20、誘電損率1、平均粒子径3μm)を含有量が粘着剤層を構成する全ての成分中の25体積%となるように添加した。更に、熱膨張性マイクロスフェアー(アドバンセルEMH204、熱膨張前の平均粒子径40μm、規定膨張温度における熱膨張率7692%、積水化学工業社製)を含有量が粘着剤固形分(アクリル共重合体、粘着付与樹脂及び架橋剤の合計)100重量部に対して10重量部となるように添加し、攪拌して、フィラー(a)含有粘着剤溶液を得た。
離型処理された厚み75μmのPETフィルムを用意し、このPETフィルムの離型処理面にフィラー(a)含有粘着剤溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み50μmのフィラー(a)を含有する層を形成した。離型処理された厚み75μmの別のPETフィルムを用意し、このPETフィルムの離型処理面に粘着剤溶液Iを塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み25μmのフィラー(a)を含有しない粘着剤層を形成した。
PETフィルム上に形成されたフィラー(a)を含有する層及びフィラー(a)を含有しない粘着剤層を、粘着剤層同士を対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧した。また、同様の要領でフィラー(a)を含有しない粘着剤層をもう1つ作製し、フィラー(a)を含有する層の他方の面のPETフィルムを剥離した後、同様の要領でフィラー(a)を含有しない粘着剤層を積層した。40℃で48時間加熱することで養生を行い、離型PETフィルムで覆われた粘着テープを得た。
【0050】
(実施例3~8、比較例1~2)
フィラー及び熱膨張性マイクロスフェアーを表1に示すように変更したこと以外は実施例1又は実施例2と同様にして、粘着テープを得た。
【0051】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0052】
(1)吊り下げ加熱試験
まず、次のようにして試験用サンプルを作製した。
粘着テープを25mm×5mmのサイズに切断し、100mm×25mm、厚み3mmのポリカーボネート板の平面端部に貼り付け、もう一枚の同形状のポリカーボネート板を粘着テープの上から貼り合わせた。その後、得られた積層体に対して0.3MPaの圧力で10秒間圧着し、試験用サンプルを作製した。
【0053】
作製した試験用サンプルの端部(粘着テープを貼り付けた端部)がマイクロ波照射装置(Maxzen社製、JM17AGZ01)の底面から20mmの位置にくるように試験用サンプルを吊り下げ、周波数2.45GHz、出力700Wにて試験用サンプルにマイクロ波を照射した。粘着テープが剥離するまでのマイクロ波照射時間と、剥離時の粘着テープの温度とを測定した。
粘着テープが剥離するまでのマイクロ波照射時間が120秒以下であった場合を〇、120秒を超えた場合を×とした。剥離時の粘着テープ温度が150℃以下であった場合を〇、150℃を超えた場合を×とした。
【0054】
(2)平置き加熱試験
まず、次のようにして試験用サンプルを作製した。
粘着テープを25mm×5mmのサイズに切断し、100mm×25mm、厚み3mmのポリカーボネート板の平面端部に貼り付け、もう一枚の同形状のポリカーボネート板を粘着テープの上から貼り合わせた。その後、得られた積層体に対して0.3MPaの圧力で10秒間圧着し、試験用サンプルを作製した。
【0055】
マイクロ波照射装置(Maxzen社製、JM17AGZ01)を用い、周波数2.45GHz、出力700Wにて作製した試験用サンプルにマイクロ波を照射した。粘着テープが80℃、120℃、160℃に達するまでマイクロ波を照射した。このとき、粘着テープが120℃に達するまでの照射時間を測定した。
【0056】
マイクロ波照射無しの場合、粘着テープが80℃に達するまでマイクロ波を照射した場合、粘着テープが120℃に達するまでマイクロ波を照射した場合、粘着テープが160℃に達するまでマイクロ波を照射した場合のそれぞれについて、次のようにして試験用サンプルのせん断剥離力を測定した。粘着テープが自然剥離した場合には、試験用サンプルの温度が25℃に戻った後、元の試験用サンプルと同じ形状になるように配置し、再度0.3MPaの圧力で10秒間圧着することにより粘着テープを再び被着体に貼り付け、試験用サンプルの再接着処理後のせん断剥離力を測定した。
[せん断剥離力の測定方法]
試験用サンプルを引張試験機(今田製作所社製、Sl-6001)に取り付け、引張速度10mm/secでせん断方向に引張り、試験用サンプルが剥離するまでの試験力を測定した。最大剥離力をテープ面積で割り、せん断剥離力とした。
【0057】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、被着体に熱による過度な損傷を与えることなく、短時間で容易に被着体から剥離できる粘着テープを提供することができる。また、本発明によれば、該粘着テープにより被着体が貼合されている構造体の解体方法を提供することができる。