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特開2024-103857付加硬化型シリコーン組成物、シリコーン硬化物および接合部材、ならびに接合部材の解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103857
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物、シリコーン硬化物および接合部材、ならびに接合部材の解体方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240726BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240726BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240726BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C09J183/04
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007793
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明田 隆
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】倉敷 哲生
(72)【発明者】
【氏名】向山 和孝
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP043
4J002CP053
4J002CP141
4J002DA037
4J002DD006
4J002DE117
4J002DE137
4J002DJ007
4J002FD146
4J002FD207
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
4J040EK031
4J040HA026
4J040HA136
4J040HA296
4J040JB02
4J040KA14
4J040KA42
4J040LA06
4J040LA07
4J040MA10
4J040PA42
4J040PA44
(57)【要約】
【課題】 150℃付近の高温環境にさらされても接着性の低下および部材との固着を起こさず、短時間かつ少ない消費エネルギーで容易に部材から剥離する硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物を提供すること。
【解決手段】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~10質量部
(C)アリーレン骨格を有し、ケイ素原子と結合する水素原子を有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部
(D)ヒドロシリル化反応触媒
および
(E)マイクロ波照射により発熱する粒子:1~100質量部
を含む付加硬化型シリコーン組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~10質量部
(C)アリーレン骨格を有し、ケイ素原子と結合する水素原子を有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部
(D)ヒドロシリル化反応触媒
および
(E)マイクロ波照射により発熱する粒子:1~100質量部
を含む付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(C)成分が、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物である請求項1記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【化1】
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは、エーテル結合を含んでいてもよく、1つまたは2つ以上のフェニレン骨格を有する2価の有機基を表し、kは、それぞれ独立して3~5の整数である。)
【請求項3】
前記Xが、下記式(2)、下記式(3)、または下記式(4)で表される基である請求項2記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【化2】
(各式中、破線は、ケイ素原子との結合手を表す。)
【請求項4】
前記(E)マイクロ波照射により発熱する粒子が、炭素、酸化鉄、酸化チタン、および炭化ケイ素から選ばれる1種以上を含む粒子である請求項1記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物で複数の部材同士が接合された接合部材。
【請求項7】
前記複数の部材のうち少なくとも1つが、ポリフェニレンサルファイド樹脂である請求項6記載の接合部材。
【請求項8】
請求項6記載の接合部材における、少なくとも前記硬化物にマイクロ波を照射し、前記複数の部材同士を分離して接合部材を解体する解体工程を含む接合部材の解体方法。
【請求項9】
前記解体工程が、剥離手段により前記複数の部材から付加硬化型シリコーン組成物の硬化物を剥離する剥離工程を含む請求項7記載の接合部材の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物、シリコーン硬化物および接合部材、ならびに接合部材の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車電装部品等の自動車部品や電気・電子製品などの回収、修理、リサイクル時の環境負荷およびコスト低減の考えから、接着剤により接合された部材同士の解体方法の検討が進められている。一方で、接合部材は、接着性と、必要に応じて剥離が可能な易解体性という相反する性能を両立させる必要がある。
【0003】
接合部材の解体方法としては、例えば、加熱によって膨張するマイクロカプセルや発泡剤を添加した接着剤(特許文献1)や、熱溶融性または熱分解性を付与した解体性接着剤(特許文献2、3)を用いる方法が提案されている。
【0004】
また、シリコーン系の接着剤やシーリング材は、耐熱性、耐候性等の特性に優れるため、自動車分野、電気電子分野、建築分野等で広く使用されている。
しかし、シリコーン系接着剤は、部材とシリコーン系接着剤が熱により強固に接着することから、解体が難しく、回収・修理することが困難であり、シリコーン系接着剤で接着接合される用途においてもリサイクル可能な接合部材とその解体方法が求められている。
【0005】
例えば、特許文献4では、160℃付近から分解する水酸化アルミニウムを特定割合で配合した硬化性液状シリコーン系接着剤が報告されている。この接着剤で接合された接着部材は、室温、さらには150℃程度の高温に晒された後もシール性を発揮するが、160℃以上の高温に晒すことでシール性が低下し、部材同士を容易に分離することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-187973号公報
【特許文献2】特開2004-231808号公報
【特許文献3】特開2015-196793号公報
【特許文献4】特開2022-183437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献4の熱解体性の接着剤は、高温で接着性の低下を引き起すため、高温環境で使用する部品の接合に用いることができず、また、加熱炉を用いて、数時間の加熱が必要であるためエネルギー消費量が多いという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、150℃付近の高温環境にさらされても接着性の低下および部材との固着を起こさず、短時間かつ少ない消費エネルギーで容易に部材から剥離する硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物、この組成物の硬化物で複数の部材同士が接合された接合部材およびその接合部材の解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、付加硬化型シリコーン組成物に特定の有機ケイ素化合物およびマイクロ波で発熱する粒子を特定の含有量で配合してなる付加硬化型シリコーン組成物が、150℃付近の高温環境にさらされても接着性の低下および部材との固着を起こさず、かつ、短時間かつ少ない消費エネルギーで容易に部材から剥離する硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. (A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~10質量部
(C)アリーレン骨格を有し、ケイ素原子と結合する水素原子を有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部
(D)ヒドロシリル化反応触媒
および
(E)マイクロ波照射により発熱する粒子:1~100質量部
を含む付加硬化型シリコーン組成物、
2. 前記(C)成分が、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物である1の付加硬化型シリコーン組成物、
【化1】
(式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは、エーテル結合を含んでいてもよく、1つまたは2つ以上のフェニレン骨格を有する2価の有機基を表し、kは、それぞれ独立して3~5の整数である。)
3. 前記Xが、下記式(2)、下記式(3)、または下記式(4)で表される基である2の付加硬化型シリコーン組成物、
【化2】
(各式中、破線は、ケイ素原子との結合手を表す。)
4. 前記(E)マイクロ波照射により発熱する粒子が、炭素、酸化鉄、酸化チタン、および炭化ケイ素から選ばれる1種以上を含む粒子である1の付加硬化型シリコーン組成物、
5. 1~4のいずれかの付加硬化型シリコーン組成物を硬化させてなるシリコーン硬化物、
6. 5の硬化物で複数の部材同士が接合された接合部材、
7. 前記複数の部材のうち少なくとも1つが、ポリフェニレンサルファイド樹脂である6の接合部材、
8. 6の接合部材における、少なくとも前記硬化物にマイクロ波を照射し、前記複数の部材同士を分離して接合部材を解体する解体工程を含む接合部材の解体方法、
9. 前記解体工程が、剥離手段により前記複数の部材から付加硬化型シリコーン組成物の硬化物を剥離する剥離工程を含む7の接合部材の解体方法
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、150℃付近の高温環境にさらされても接着性の低下および部材との固着を起こさず、マイクロ波を照射することで、接着性および/またはシール性が低下する硬化物を与える。この硬化物を用いて接合された接合部材、例えば、有機樹脂製および/または金属製等の部材が複数(特には2個)接合された接合部材は、マイクロ波照射による短時間かつ少ない消費エネルギーで解体できるため、部材を容易にリサイクルすることができる。
このような特性を有する本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物は、耐熱性が要求され、かつリサイクルが必要な接合箇所の接着剤またはシール材として好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
[付加硬化型シリコーン組成物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、下記(A)~(E)成分を含むものである。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも2個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)アリーレン骨格を有し、ケイ素原子と結合する水素原子を有する有機ケイ素化合物
(D)ヒドロシリル化反応触媒
(E)マイクロ波照射により発熱する粒子
【0013】
[1](A)成分
(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。
アルケニル基としては、特に限定されるものではないが、炭素数2~8のアルケニル基が好ましい。その具体例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル基等が挙げられ、これらの中でも、ビニル基が好ましい。
(A)成分におけるアルケニル基の結合位置は、特に制限されず、分子鎖末端および分子鎖側鎖のいずれであってもよいが、分子鎖末端にアルケニル基を有するものが好ましい。
【0014】
(A)成分のケイ素原子に結合するアルケニル基以外の有機基としては、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、より一層好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~7の、置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられる。
その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、これらの中でも、特に、メチル基、フェニル基が好ましい。
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、三次元網状が挙げられる。
【0015】
(A)成分の25℃における粘度は、得られる硬化物の物理的特性および組成物の取扱作業性の点から、100~500,000mPa・sが好ましく、300~100,000mPa・sがより好ましい。なお、粘度は、B型回転粘度計により測定することができる。
【0016】
(A)成分の具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、R3 3SiO0.5で示されるシロキサン単位とR3 24SiO0.5で示されるシロキサン単位とR3 2SiOで示される単位とSiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、R3 3SiO0.5で示されるシロキサン単位とR3 24SiO0.5で示されるシロキサン単位とSiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、R3 24SiO0.5で示されるシロキサン単位とR3 2SiOで示されるシロキサン単位とSiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、R34SiOで示されるシロキサン単位とR3SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくはR4SiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、及びこれらの二種以上からなる混合物が挙げられる。上記R3は、アルケニル基以外の一価炭化水素基であり、上述したケイ素原子に結合するアルケニル基以外の有機基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。上記R4は、アルケニル基であり、上述したアルケニル基の通りであり、好ましくはビニル基である。(A)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
[2](B)成分
(B)成分は、ケイ素原子に結合する水素原子(すなわち、SiH基)を、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分におけるSiH基の位置は、特に制限されず、分子鎖末端および分子鎖側鎖のいずれであってもよい。
【0018】
(B)成分のSiH基以外の有機基としては、上述した(A)成分においてケイ素原子に結合するアルケニル基以外の有機基として例示した基と同様の基が挙げられるが、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~7の1価炭化水素基、より一層好ましくは、炭素原子数1~3の置換もしくは非置換のアルキル基、またはフェニル基である。
上記炭素原子数1~3の置換または非置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0019】
(B)成分の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン;1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン等の環状メチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。(B)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(B)成分の重量平均分子量は、100~10,000が好ましく、200~5,000がより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定できる。
【0021】
(B)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部あたり、0.1~10質量部であるが、好ましくは0.5~8質量部である。また、(A)成分中のアルケニル基1個に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(すなわち、SiH基)の個数比が0.1~5.0となる量であり、好ましくは0.5~4となるような量である。0.1質量部未満であると硬化性が不足し、10質量部を超えると硬化物が脆くなる場合がある。
【0022】
[3](C)成分
(C)成分は、アリーレン骨格を有し、少なくとも1個、好ましくは1~20個、より好ましくは2~10個のケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)を有する有機ケイ素化合物であり、接着性付与成分として作用するものである。
【0023】
アリーレン骨格としては、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等の2価芳香族基が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
【0024】
SiH基以外の有機基としては、好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、より一層好ましくは炭素数1~6の、置換または非置換の一価有機基が挙げられる。その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル基等のアルケニル基;グリシドキシ基等のエポキシ基;トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基;エステル基、アクリル基、メタクリル基、無水カルボキシ基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基等の官能基が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0025】
(C)成分の有機ケイ素化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化3】
【0027】
式(1)において、R1は、それぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは、エーテル結合を含んでいてもよく、1つまたは2つ以上のフェニレン骨格を有する2価の有機基を表し、kは、それぞれ独立して3~5の整数である。
1の炭素数1~6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0028】
Xの2価の有機基としては、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)、または下記式(5)で表される基が好ましく、下記式(2)、下記式(3)、または下記式(4)で表される基がより好ましい。
【0029】
【化4】
(式中、破線は、ケイ素原子との結合を表す。)
【0030】
(C)成分の具体例としては、下記構造式で表される化合物等が挙げられる。(C)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
【化5】
(式中、nは、独立して1~3の整数である。)
【0032】
【化6】
(式中、nは、独立して1~3の整数である。)
【0033】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であるが、好ましくは0.1~9質量部、より好ましくは0.2~8質量部である。配合量が0.1質量部未満では十分な接着性が得られず、10質量部を超えると物性低下を引き起こす場合がある。
また、組成物中のケイ素原子結合アルケニル基の合計に対する組成物中のSiH基の合計のモル比(特には、(A)成分および(C)成分中のアルケニル基の合計に対する(B)成分および(C)成分中のSiH基のモル比)が、1.0~5.0の範囲となるような量で配合することが好ましく、より好ましくは1.2~4.0の範囲であり、より一層好ましくは1.5~3.0の範囲である。
【0034】
[4](D)成分
(D)成分は、ヒドロシリル化反応触媒であり、(A)成分のアルケニル基と(B)成分および(C)成分のSiH基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0035】
ヒドロシリル化反応触媒としては、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nHO(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0または6である。)等の塩化白金、塩化白金酸および塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム-オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸または塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとの錯体などの白金族金属系触媒が挙げられる。なお(D)成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(D)成分の使用量は、触媒量でよいが、好ましくは(A)成分に対する白金族金属の質量換算で0.1~500ppmであり、より好ましくは0.5~200ppmである。
【0037】
[5](E)成分
(E)成分は、マイクロ波により発熱する粒子である。このような特性を持つ粒子は、いずれも用いることができるが、誘電率が大きい粒子はマイクロ波の吸収率が高く、短時間で効率よく発熱するため、特に好適である。誘電率としては、3GHzで3~1,000が好ましく、5~800がより好ましい。
【0038】
マイクロ波により発熱する粒子は、無機物であり、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等の炭素;酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄等の酸化鉄;酸化チタン(TiO)、二酸化チタン(TiO2)、三酸化二チタン(Ti23)等の酸化チタン系化合物;スピネルフェライト、マグネトプランバイトフェライト、ガーネットフェライト等のフェライト;炭化ケイ素等が挙げられ、これらの中でも、炭素、酸化鉄、酸化チタン、および炭化ケイ素から選ばれる1種以上を含むものが好ましく、アセチレンブラック、二酸化チタン、炭化ケイ素がより好ましい。(E)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
マイクロ波により発熱する粒子の平均粒子径は、0.05~100μmが好ましく、0.1~80μmがより好ましい。平均粒子径が0.05μmより小さいと組成物の粘度が高くなるため、高充填することができず、十分な発熱効果が得られない場合があり、平均粒子径が100μmより大きいとゴムの柔軟性が損なわれる場合がある。なお、平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(またはメジアン径)として求めることができる。
【0040】
マイクロ波により発熱する粒子の表面は、未処理でも表面処理(疎水化処理)されていてもよい。
表面処理する場合の処理剤としては、アルミナ、シリカ、ステアリン酸、シランカップリング剤、シリコーン化合物等が挙げられる。表面処理は、公知の方法によって行うことができる。その処理量は特に制限はないが、10質量%以下(通常、0.1~8質量%)が好ましく、0.5~6質量%がより好ましい。
【0041】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1~100質量部であるが、好好ましくは10~60質量%である。1質量部未満であると十分な発熱が得られず、100質量部を超えると組成物の粘度が上昇し、混合および施工時の吐出性が悪くなる。
【0042】
[6](F)成分
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、調合する際、または基材に塗工する際等に、加熱硬化前に増粘やゲル化を起こさないようにするため、必要に応じて(F)成分として付加反応制御剤を含んでいてもよい。
付加反応制御剤としては、アセチレンアルコール化合物、または当該化合物のアルコール性水酸基がシランまたはシロキサンにより変性された化合物が好ましい。
【0043】
アセチレンアルコール化合物としては、エチニル基と水酸基が同一分子内に存在するものであればよいが、特に、エチニル基と水酸基が同一炭素原子に結合しているものが好ましい。その具体例としては下記構造式で表される化合物等が挙げられる。
【0044】
【化7】
【0045】
また、アセチレンアルコール化合物のアルコール性水酸基が、シランまたはシロキサンにより変性された化合物とは、アセチレンアルコールの水酸基の水素原子がSi-O-C結合に置換された形でシランまたはシロキサン部分と結合したものである。その具体例としては、下記構造式で表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【化8】
(式中、pは、0~50の整数であり、qは、1~50、好ましくは3~50の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列順は任意であってよい。)
【0047】
(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.0001~5質量部、より好ましくは0.001~3質量部、より一層好ましくは0.01~1質量部である。なお、(F)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
[7](G)成分
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、機械的強度を補強するため、補強性シリカを配合してもよい。補強性シリカとしては、例えば煙霧質シリカ、沈降シリカ、焼成シリカ、石英粉末、珪藻土等が挙げられる。また、BET法による比表面積が50m2/g以上、特に50~500m2/gの微粉末シリカが好ましい。このような微粉末シリカは、そのまま使用してもよいが、組成物に流動性を付与させるため、メチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどの有機ケイ素化合物で処理した微粉末シリカを使用することが好ましい。
【0049】
(G)成分を使用する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~200質量部、より好ましくは1~100質量部である。なお、(G)成分は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
[8]その他の成分
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、上記した成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、(C)成分以外の接着性付与剤、補強性のシリコーンレジン等を配合してもよい。
【0051】
(C)成分以外の接着性付与剤としては、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のシランカップリング剤や、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、2-アリルマロン酸ジエチル、安息香酸アリル、フタル酸ジアリル、ピロメリット酸テトラアリルエステル(商品名:TRIAM805、富士フイルム和光純薬(株)製)、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0052】
(C)成分以外の接着性付与剤を配合する場合、その添加量は、(A)成分100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、ゴム弾性、接着性を考慮すると、0.5~10質量部が好ましい。
【0053】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、上述した各成分を均一に混合して製造できる。混合方法は、従来公知の方法に従えばよく、混合装置としては、プラネタリーミキサー等が挙げられる。なお、配合する全成分を一度に混合しても、1種または2種以上の成分を数段階に分けて混合してもよく、また、直前に混合してから用いる2成分系とすることもできる。
【0054】
[シリコーン硬化物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させることで、シリコーン硬化物を得ることができる。
硬化方法および硬化条件は、公知の硬化型シリコーンゴム組成物と同様であり、例えば常温でも十分硬化し得るが、必要に応じて加熱してもよい。加熱する場合、通常加熱温度60~200℃、特に80~170℃で硬化させることが好ましい。硬化時間は、硬化温度や成形方法等により異なるが、通常1分~24時間程度である。
【0055】
[接合部材]
本発明の接合部材は、上記シリコーン硬化物(シリコーンゴム硬化物からなる接着部材)によって複数(特には2個)の同一または異種の部材同士が接合されたものである。
本発明の接合部材において、接合された各部材は、有機樹脂製部材および金属製部材から選ばれるものが好ましく、接合された複数の部材のうち少なくとも1個(一方)が有機樹脂製部材であることがより好ましい。このような部材の組合せとしては、例えば、同一または異種の有機樹脂製の部材同士、金属製部材と有機樹脂製部材の組合せなどが挙げられる。
【0056】
有機樹脂製部材を構成する有機樹脂としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PA66(ナイロン66)、PA6(ナイロン6)等のポリアミド樹脂、PC(ポリカーボネート樹脂)などが挙げられ、金属製部材を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、SUS、銅などが挙げられる。これらの中でも、特に、強度や剛性がきわめて高く、耐磨耗性、耐薬品性や耐熱性に優れるPPS樹脂が好ましい。
【0057】
本発明の接合部材の作製方法は、上記付加硬化型シリコーン組成物を、手または機械吐出等の塗布手段で片側の有機樹脂製または金属製の部材の表面に接合箇所(例えば、ガスケット等)の形状に塗布し、もう一方の部材を貼り合わせて接合し、上記硬化方法により硬化させる。その後、必要に応じてボルトなどで固定してもよい。
【0058】
上記接合部材としては、エンジン、トランスミッション、ECUやPCUなどの自動車部品、スマートフォン、タブレット、液晶、バッテリーなどの電気・電子部品等が挙げられ、自動車部品、電気・電子部品が好ましい。
【0059】
上記接合部材は、通常使用時にはある程度の接着力で接合されていて、マイクロ波照射後に部材の分離が可能な程度に接着力が低下する易解体性の接合部材であることが好ましい。具体的には、上記接合部材の初期せん断接着力は、好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上であり、同部材のマイクロ波照射後のせん断接着力は、好ましくは1.0MPa以下である。このせん断接着力はJIS K 6850:1999に規定する方法に準じて測定した値である。なお、上記初期およびマイクロ波照射後のせん断接着力は、付加硬化型シリコーン組成物の組成を上述した特定範囲の組成とすることにより達成できる。
【0060】
[解体方法]
本発明の接合部材の解体方法は、例えば、接合部材の接着部材である付加硬化型シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物(接着性シリコーンゴム硬化物)にマイクロ波を照射した後の加熱状態において、部材同士を自然剥離させる手法、あるいはマイクロ波照射後の部材に手で力を加える、またはスクレーパー等の器具などの適宜な剥離手段によって部材同士を剥離させる手法が挙げられる。なお、解体した部材は、リサイクルすることが可能である。
【0061】
照射するマイクロ波は、照射後に部材の分離が可能な程度に接着力が低下する程度の周波数、出力、照射時間が好ましく、例えば、周波数は、300MHz以上300GHz以下、出力は、300W以上5,000W以下の範囲で選択できる。照射時間は、特に限定されないが、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下である。
【実施例0062】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、Viは、ビニル基を、Meは、メチル基を表し、動粘度はオストワルド粘度計による25℃における値であり、重量平均分子量は、GPC測定による標準ポリスチレン換算値である。
【0063】
[1]付加硬化型シリコーン組成物の調製
[実施例1-1~1-7、比較例1-1~1-4]
下記成分を、表1および表2に示す配合量(質量部)にて混合し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。
【0064】
(A)成分
(A-1):両末端ジメチルビニルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン(25℃における動粘度100,000mm2/s、ビニル基含有量0.0025モル/100g)
(A-2):Me3SiO1/2単位、Me2ViSiO1/2単位およびSiO4/2単位からなり、25℃で固体のポリシロキサン(Me3SiO1/2単位:Me2ViSiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比7:1:10、重量平均分子量4,000、ビニル基含有量0.08モル/100g)
【0065】
(B)成分
(B-1)下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化9】
【0066】
(C)成分
(C-1)下記構造式で表される有機ケイ素化合物
【化10】
【0067】
(C-2)下記構造式で表される有機ケイ素化合物
【化11】
【0068】
(C-3)下記構造式で表される有機ケイ素化合物
【化12】
【0069】
(C’-4)下記構造式で表される環状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化13】
【0070】
(C’-5)下記構造式で表される環状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化14】
【0071】
(D)成分
(D-1)白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)
(E)成分
(E-1)緑色炭化ケイ素粉(信濃電気精錬(株)製シナノランダムGP、粒度#400)
(E-2)緑色炭化ケイ素粉(信濃電気精錬(株)製シナノランダムGP、粒度#4000)
(F)成分
(F-1)エチニルシクロヘキサノール(付加反応制御剤)
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
[2]硬化物および接合部材の作製
[実施例2-1~2-9、比較例2-1~2-7]
幅25mm、長さ100mm、厚み2mmの平板2枚を、長さ方向に10mm重なるようにし、この間に接着面積が25mm×10mm、厚みが2mmになるように、上記実施例1-1~1-9および比較例1-1~1-7で得られた付加硬化型シリコーン組成物をそれぞれ充填し、150℃で60分間加熱して組成物を硬化させ、接合部材を作製した。
なお、平板の材質は、以下の組み合わせのものを用いた。
接合部材1:PPS樹脂(東ソー(株)製サスティールGS-40、ガラス繊維40質量%)同士の接合
接合部材2:PPS樹脂(東ソー(株)製サスティールGS-40、ガラス繊維40質量%)とアルミダイキャスト(ADC12、JIS H 5302:2006)の接合
接合部材3:PPS樹脂(東レ(株)製トレリナA503-F1)同士の接合
接合部材4:PPS樹脂(東レ(株)製トレリナA503-F1)とアルミダイキャスト(ADC12、JIS H 5302:2006)の接合
【0075】
上記で作製した各接合部材を用いて、下記に示す評価方法により接着力(解体性)の評価を行った。これらの結果を表3および表4に示す。
(1)接着力(初期)
上記で作製した接合部材を用いて、せん断接着力をJIS K 6850:1999に規定する方法に準じて測定し、せん断接着力が2.0MPa以上である場合を「〇」、2.0MPa未満の場合を「×」として評価した。
(2)解体性(高温曝露およびマイクロ波照射後)
上記で作製した接合部材を、150℃のオーブン内で100時間および500時間静置した後、室温にまで降温させた試験片について、それぞれ四国計測工業(株)製μReactor Exを用いて周波数2.4GHz、出力1,000Wでマイクロ波を6分間照射した。照射直後に接合部材を取り出し、被着体(2枚の平板)の片方を固定し、もう一方を接着面に対して垂直方向に手で引き剥がした際の状態が界面剥離であるか凝集破壊であるかを観察した。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
表3および表4に示されるように、各実施例で調製した付加硬化型シリコーン組成物の硬化物で接合された接合部材は、150℃500時間の高温曝露後であっても、マイクロ波の照射により短時間かつ少ない消費エネルギーで被着体表面に接着剤が残存することなく容易に界面剥離することができることがわかる。
一方、マイクロ波により発熱する粒子を含まない比較例1-1の組成物、および、マイクロ波により発熱する粒子の含有量が規定量以下である比較例1-2~1-4の組成物を用いた場合では、解体性は得られないことがわかる。
また、マイクロ波により発熱する粒子の含有量が規定量であるが、(C)成分をアリーレン骨格を有しないSiH基含有化合物に変更した比較例1-6および比較例1-7の組成物を用いた場合では、150℃100時間の高温曝露後、マイクロ波の照射を行っても容易に界面剥離せず凝集破壊となり、被着体表面に接着剤が残存することがわかる。