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特開2024-106787制御装置、制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106787
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/20 20220101AFI20240801BHJP
【FI】
G06N10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011224
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 傑
(72)【発明者】
【氏名】徳永 裕己
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 信行
(57)【要約】
【課題】量子ビット数のオーバーヘッドが少ない量子エラーの抑制を実現させる。
【解決手段】与えられたハミルトニアンの基底状態を近似する量子状態と、前記量子状態に対応する双対量子状態と、を含む量子回路を有する第一量子コンピュータによる第一量子測定の結果に基づいて、第一行列を算出する第一行列算出部と、前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の一部を有する第二量子コンピュータによる第二量子測定の結果に基づいて、第二行列を算出する第二行列算出部と、算出された前記第一行列および前記第二行列に基づいて一般化線形方程式を解くことによって、前記ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出する密度行列算出部と、を備える制御装置である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられたハミルトニアンの基底状態を近似する量子状態と、前記量子状態に対応する双対量子状態と、を含む量子回路を有する第一量子コンピュータによる第一量子測定の結果に基づいて、第一行列を算出する第一行列算出部と、
前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の一部を有する第二量子コンピュータによる第二量子測定の結果に基づいて、第二行列を算出する第二行列算出部と、
算出された前記第一行列および前記第二行列に基づいて一般化線形方程式を解くことによって、前記ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出する密度行列算出部と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の設計に関する値を、前記ハミルトニアンから分解されたパウリ演算子に基づいて算出する量子回路設計部をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第一行列算出部は、複数回のZ基底での測定を行って、各測定における最後の測定で始状態と同じビット列を測定する確率に基づいて、前記第一行列を算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
コンピュータが実行する制御方法であって、
与えられたハミルトニアンの基底状態を近似する量子状態と、前記量子状態に対応する双対量子状態と、を含む量子回路を有する第一量子コンピュータによる第一量子測定の結果に基づいて、第一行列を算出するステップと、
前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の一部を有する第二量子コンピュータによる第二量子測定の結果に基づいて、第二行列を算出するステップと、
算出された前記第一行列および前記第二行列に基づいて一般化線形方程式を解くことによって、前記ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出するステップと、を備える、
制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせの原理を活用して計算を行う技術で、素因数分解や量子化学計算などの問題を高速に解けることが期待されているため、その開発が世界で盛んに進められている。量子コンピュータが扱う量子ビットには、古典コンピュータのような0と1が入れ替わるエラーの他に、0と1の「重ね合わせ」の比率がずれたり、0と1の「重ね合わせ」が失われてしまったりといった特有のエラーが発生する。そこで、量子コンピュータにおいて発生する誤り(量子エラー)を抑制する方法が研究されている。従来、量子エラーを抑制する方法として、抑制したい量子エラーの情報を必要とする手法と、量子エラーの情報を必要としない手法と、が知られている。
【0003】
従来、量子エラーの情報を必要としない量子エラー抑制機構として一般化部分展開空間法(例えば、非特許文献1)と呼ばれる手法がある。一般化部分展開空間法は、仮想蒸留法(例えば、非特許文献2、非特許文献3等)と部分空間展開法(例えば、非特許文献4)と呼ばれる量子エラー抑制手法を統合し、一般化した手法である。仮想蒸留法は確率的エラーを、部分空間展開法は回転エラーやアルゴリズムエラーなどといったコヒーレントエラーを効率よく抑制する量子エラー抑制法である。ここで、仮想蒸留法が量子状態のコピーを用いる手法であるため、一般化部分空間展開法もコピーを用いることが必要である。
【0004】
また、双対状態純粋化法(例えば、非特許文献5)と呼ばれる手法が開発され、コピーを用いずに仮想蒸留法に近い操作が可能になった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yoshioka, Nobuyuki, Hideaki Hakoshima, Yuichiro Matsuzaki, Yuuki Tokunaga, Yasunari Suzuki, and Suguru Endo. "Generalized quantum subspace expansion." Physical Review Letters 129, no. 2 (2022): 020502.
【非特許文献2】Koczor, Balint. "Exponential error suppression for near-term quantum devices." Physical Review X 11.3 (2021): 031057.
【非特許文献3】Huggins, William J., et al. "Virtual distillation for quantum error mitigation." Physical Review X 11.4 (2021): 041036.
【非特許文献4】McClean, Jarrod R., Mollie E. Kimchi-Schwartz, Jonathan Carter, and Wibe A. De Jong. "Hybrid quantum-classical hierarchy for mitigation of decoherence and determination of excited states." Physical Review A 95, no. 4 (2017): 042308.
【非特許文献5】Huo, Mingxia, and Ying Li. "Dual-state purification for practical quantum error mitigation." Physical Review A 105, no. 2 (2022): 022427.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、提案されている一般化部分空間法では、計算エラーを抑制したい量子状態のコピーが2個以上必要であり、量子ビット数が十分でないNISQ(Noisy intermediate-scale quantum)コンピュータにとって、大きなオーバーヘッドである。そこで、上述した双対状態純粋化法を適応した一般化部分空間展開法を提案する。
【0007】
開示の技術は、量子ビット数のオーバーヘッドが少ない量子エラーの抑制を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術は、与えられたハミルトニアンの基底状態を近似する量子状態と、前記量子状態に対応する双対量子状態と、を含む量子回路を有する第一量子コンピュータによる第一量子測定の結果に基づいて、第一行列を算出する第一行列算出部と、前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の一部を有する第二量子コンピュータによる第二量子測定の結果に基づいて、第二行列を算出する第二行列算出部と、算出された前記第一行列および前記第二行列に基づいて一般化線形方程式を解くことによって、前記ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出する密度行列算出部と、を備える制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、量子ビット数のオーバーヘッドが少ない量子エラーの抑制を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】量子計算システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】第一量子コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】第二量子コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図6】量子計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0012】
(本実施の形態の概要)
本実施の形態に係る量子計算システムは、量子エラーを抑制した量子計算を行うシステムである。本実施の形態に係る量子エラーの抑制方法は、双対状態純粋化法と部分空間展開法を統合し、一般化した双対一般化部分空間展開法である。
【0013】
具体的には、量子系のハミルトニアンHが与えられた際に、その固有状態の量子エラーを抑制する手順について説明する。
【0014】
図1は、量子計算システムのシステム構成の一例を示す図である。量子計算システム1は、制御装置10と、第一量子コンピュータ20と、第二量子コンピュータ30と、を備える。制御装置10と第一量子コンピュータ20とは、通信線40を介して通信可能に接続されている。また、制御装置10と第二量子コンピュータ30とは、通信線50を介して通信可能に接続されている。
【0015】
制御装置10は、古典コンピュータから構成される装置である。古典コンピュータは、電子回路によって古典計算を行うコンピュータである。以下では、古典コンピュータを単にコンピュータともいう。
【0016】
制御装置10は、通信線40を介して、第一量子コンピュータ20から第一の量子測定の結果を示すデータを受信する。また、制御装置10は、通信線50を介して、第二量子コンピュータ30から第二の量子測定の結果を示すデータを受信する。
【0017】
そして、制御装置10は、第一の量子測定の結果と第二の量子測定の結果とに基づいて、一般化線型方程式を解くことによって、ハミルトニアンHの期待値を最小化する式(1)に示す密度行列の係数ベクトルを算出する。
【0018】
【数1】
ここで、
【0019】
【数2】
は、通常の量子状態の集合であり、
【0020】
【数3】
は、双対量子状態の集合であり、αは、複素数である。
【0021】
【数4】
と定義する。
【0022】
Nはベクトル
【0023】
【数5】
の要素数である。
【0024】
第一量子コンピュータ20および第二量子コンピュータ30は、量子コンピュータから構成される装置である。量子コンピュータは、重ね合わせや量子もつれと言った量子力学的な現象を用いて高速に演算を行う装置である。
【0025】
第一量子コンピュータ20および第二量子コンピュータ30は、別々のハードウェアによって実装されてもよいし、共通のハードウェアを流用して実装されてもよい。後述するように、第一量子コンピュータ20および第二量子コンピュータ30は、一部を除き同様の量子回路を有する。
【0026】
第一量子コンピュータ20および第二量子コンピュータ30に含まれる量子回路の構造は、制御装置10による計算の結果に応じて決定される。そこで、以下、制御装置10による計算の方法と、第一量子コンピュータ20および第二量子コンピュータ30のハードウェア構成について説明する。
【0027】
制御装置10は、与えられたハミルトニアンHをパウリ演算子(およびその積)Pの和に分解する。分解されたハミルトニアンHは、H=Σとなる。ここで、bは実数である。
【0028】
また、あらかじめ、量子コンピュータに従来の変分量子固有値ソルバー(VQE:Variational Quantum Eigensolver)を実装し、基底状態を近似する状態σを得ておく。それを実現するユニタリ回路をUとするが、この回路は一般に計算エラーの影響を受けた回路である。
【0029】
また、制御装置10は、量子回路を決定するため、
【0030】
【数6】
となるRを算出する。Zは、0番目の量子ビットに作用するパウリZ演算子である。
【0031】
図2は、第一量子コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。第一量子コンピュータ20は、状態σを実現する量子回路と、算出されたRに基づく量子回路と、を含む。
【0032】
図3は、第二量子コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。第二量子コンピュータ30は、状態σを実現する量子回路を含む。
【0033】
また、制御装置10は、例えば、図4に示すコンピュータ500のハードウェア構成により実現される。図4に示すコンピュータ500は、入力装置501と、表示装置502と、外部I/F503と、通信I/F504と、プロセッサ505と、メモリ装置506とを有する。これらの各ハードウェアは、それぞれがバス507により通信可能に接続される。
【0034】
入力装置501は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等である。表示装置502は、例えば、ディスプレイ等である。なお、コンピュータ500は、入力装置501及び表示装置502のうちの少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0035】
外部I/F503は、記録媒体503a等の外部装置とのインタフェースである。なお、記録媒体503aとしては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0036】
通信I/F504は、他の装置や機器、システム等との間でデータ通信を行うためのインタフェースである。プロセッサ505は、例えば、CPU等の各種演算装置である。メモリ装置506は、例えば、HDDやSSD、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の各種記憶装置である。
【0037】
制御装置10は、図4に示すコンピュータ500のハードウェア構成を有することにより、後述する各種処理を実現することができる。なお、図4に示すコンピュータ500のハードウェア構成は一例であって、コンピュータ500は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、コンピュータ500は、複数のプロセッサ505を有していてもよいし、複数のメモリ装置506を有していてもよい。
【0038】
図5は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。制御装置10は、準備演算部11と、量子回路設計部12と、第一行列算出部13と、第二行列算出部14と、密度行列算出部15と、を備える。
【0039】
準備演算部11は、第一量子コンピュータ20および第二量子コンピュータ30の量子回路を設計するための準備となる演算を行う。具体的には、準備演算部11は、与えられたハミルトニアンHをパウリ演算子(およびその積)Pの和に分解する。
【0040】
量子回路設計部12は、パウリ演算子(およびその積)Pに基づいて、Rを算出する。Rは、第一量子コンピュータ20に含まれる量子回路の設計に関する。
【0041】
第一行列算出部13は、第一量子コンピュータ20から第一量子測定の結果を示すデータを受信して、第一行列を算出する。第一行列の算出方法の詳細については後述する。
【0042】
第二行列算出部14は、第二量子コンピュータ30から第二量子測定の結果を示すデータを受信して、第二行列を算出する。第二行列の算出方法の詳細については後述する。
【0043】
密度行列算出部15は、算出された第一行列および第二行列に基づいて、一般化線形方程式を解くことによって、密度行列を算出する。算出された密度行列は、ハミルトニアンHの期待値を最小化する式(1)に示される密度行列である。
【0044】
次に、量子計算システム1の動作について説明する。
【0045】
図6は、量子計算処理の流れの一例を示すフローチャートである。量子系のハミルトニアンHが与えられると、準備演算部11は、ハミルトニアンHをパウリ演算子(およびその積)Pの和に分解する(ステップS101)。分解されたハミルトニアンHは、H=Σとなる。ここで、bは実数である。
【0046】
続いて、量子回路設計部12は、準備演算部11による演算の結果に基づいて、第一量子コンピュータ20の量子回路を設計する。具体的には、量子回路設計部12は、前述のRを算出する。Rは、第一量子コンピュータ20の量子回路の設計に関する。そして、第一量子コンピュータ20を用いた量子測定が行われる。
【0047】
次に、第一行列算出部13は、第一量子コンピュータ20から測定値を取得して、第一行列を算出する(ステップS103)。具体的には、第一行列算出部13は、式(2)の量を算出する。
【0048】
【数7】
【0049】
ここで、σは、量子回路から得られた実際の量子状態であり、計算エラーを含むプロセス
【0050】
【数8】
を用いて、
【0051】
【数9】
と表記される。ただし、
【0052】
【数10】
は初期状態である。また、
【0053】
【数11】
は、あらかじめ量子コンピュータに従来の変分量子固有値ソルバーを実装して得られた基底状態を近似する状態である。
【0054】
また、
【0055】
【数12】
は、典型的には
【0056】
【数13】
のノイズの大きさを増やして得た量子プロセスであってもよく、
【0057】
【数14】
にゲート操作を追加したものでもよく、
【0058】
【数15】
に関連した量子プロセスである。
【0059】
ただし、計算エラーの影響を受けているのでσは理想の状態とは異なっている。
【0060】
【数16】
は、双対量子状態であり、クラウス演算子{Eを用いて、
【0061】
【数17】
と表現されるとき、
【0062】
【数18】
となる。ここで、
【0063】
【数19】
は、
【0064】
【数20】
の逆操作に対応するが、一般的に計算エラーの影響で逆操作にはならない。理想的な場合、
【0065】
【数21】
となる。
【0066】
式(2)を得るための手順は以下の通りである。初期状態
【0067】
【数22】
【0068】
【数23】
を作用させたあと、量子ゲートRを作用させる。その後、0番目の量子ビットに対してZ測定を行う。その後、量子ゲートRを作用させた後、
【0069】
【数24】
を作用させ、Z基底での測定を行う。このとき、0番目の量子ビット測定で0を観測したあと最後の測定で始状態と同じビット列を測定する確率を
【0070】
【数25】
、1番目の量子ビット測定で0を観測したあと最後の測定で始状態と同じビット列を測定する確率を
【0071】
【数26】
とすると、
【0072】
【数27】
となる。
【0073】
したがって、何度も第一量子コンピュータ20において量子計算を実行し、量子回路上で
【0074】
【数28】
【0075】
【数29】
とを求めることで、式(2)を得ることができる。
【0076】
第一行列算出部13は、このようにして全てのPkに対して式(2)を求め、
【0077】
【数30】
を計算する。そして、第一行列算出部13は、全ての{i,j}の組み合わせに対して、
【0078】
【数31】
を計算し、
【0079】
【数32】
を成分として持つ行列
【0080】
【数33】
を算出する。なお、行列
【0081】
【数34】
は、第一行列算出部13が算出する第一行列の一例である。上述した第一量子コンピュータ20による量子測定を第一量子測定と呼んでもよい。
【0082】
次に、第二行列算出部14は、第二量子コンピュータから測定値を取得して、第二行列を算出する(ステップS104)。具体的には、第二行列算出部14は、全ての{i,j}の組み合わせに対して、
【0083】
【数35】
を計算し、
【0084】
【数36】
を成分として持つ行列(第二行列の一例)
【0085】
【数37】
を算出する。上述した第一量子コンピュータ20による量子測定を第二量子測定と呼んでもよい。
【0086】
密度行列算出部15は、算出された第一行列および第二行列に基づいて、ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出する(ステップS105)。具体的には、密度行列算出部15は、一般化線形方程式
【0087】
【数38】
を解き、密度行列
【0088】
【数39】
を算出する。
【0089】
本実施の形態によれば、双対状態純粋化法と部分空間展開法とを統合して一般化された双対一般化部分空間展開法を実現させることができる。これによって、量子状態のコピーが不要となり、量子ビット数のオーバーヘッドが少ない量子エラーの抑制を実現させることができる。
【0090】
(付記)
以上の実施形態に関し、更に以下の付記項を開示する。
(付記項1)
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、を含む制御装置であって、
前記プロセッサは、
与えられたハミルトニアンの基底状態を近似する量子状態と、前記量子状態に対応する双対量子状態と、を含む量子回路を有する第一量子コンピュータによる第一量子測定の結果に基づいて、第一行列を算出し、
前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の一部を有する第二量子コンピュータによる第二量子測定の結果に基づいて、第二行列を算出し、
算出された前記第一行列および前記第二行列に基づいて一般化線形方程式を解くことによって、前記ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出する、
制御装置。
(付記項2)
前記プロセッサは、さらに、前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の設計に関する値を、前記ハミルトニアンから分解されたパウリ演算子に基づいて算出する、
付記項1に記載の制御装置。
(付記項3)
前記プロセッサは、複数回のZ基底での測定を行って、各測定における最後の測定で始状態と同じビット列を測定する確率に基づいて、前記第一行列を算出する、
付記項1に記載の制御装置。
(付記項4)
コンピュータが実行する制御方法であって、
与えられたハミルトニアンの基底状態を近似する量子状態と、前記量子状態に対応する双対量子状態と、を含む量子回路を有する第一量子コンピュータによる第一量子測定の結果に基づいて、第一行列を算出し、
前記第一量子コンピュータに含まれる前記量子回路の一部を有する第二量子コンピュータによる第二量子測定の結果に基づいて、第二行列を算出し、
算出された前記第一行列および前記第二行列に基づいて一般化線形方程式を解くことによって、前記ハミルトニアンの期待値を最小化する密度行列を算出する、
制御方法。
(付記項5)
コンピュータを、付記項1から3のいずれか1項に記載の制御装置における各部として機能させるためのプログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【0091】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 量子計算システム
10 制御装置
11 準備演算部
12 量子回路設計部
13 第一行列算出部
14 第二行列算出部
15 密度行列算出部
20 第一量子コンピュータ
30 第二量子コンピュータ
40,50 通信線
500 コンピュータ
501 入力装置
502 表示装置
503 外部I/F
503a 記録媒体
504 通信I/F
505 プロセッサ
506 メモリ装置
507 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6