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特開2024-106904カルシウムイオン溶出方法、二酸化炭素の固定化方法、及び炭酸カルシウムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106904
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】カルシウムイオン溶出方法、二酸化炭素の固定化方法、及び炭酸カルシウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 3/00 20060101AFI20240801BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20240801BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240801BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240801BHJP
   C12R 1/245 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C12P3/00 A
B09B3/60
C02F1/58 H
C12N1/20 A
C12N1/20 D
C12R1:245
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011392
(22)【出願日】2023-01-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費 バイオミネラリゼーションを模した海水からの炭酸カルシウム合成による大気中の二酸化炭素固定技術の研究開発 委託研究、令和4年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発 カーボンリサイクル・次世代火力推進事業 カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発/海水と生体アミンを用いたCO2鉱物化法の研究開発 委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000191135
【氏名又は名称】株式会社日本海水
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道生
(72)【発明者】
【氏名】リ イテイ
(72)【発明者】
【氏名】勝又 聡
(72)【発明者】
【氏名】植田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】安元 剛
(72)【発明者】
【氏名】森安 賢司
(72)【発明者】
【氏名】吉馴 太一
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4D004
4D038
【Fターム(参考)】
4B064AC00
4B064BA02
4B064CA02
4B064CC09
4B064CD01
4B064DA16
4B065AA21X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BB02
4B065CA56
4D004AA02
4D004AA33
4D004AA43
4D004CA18
4D004CA19
4D004CA41
4D004CC07
4D038AA10
4D038AB24
4D038BB19
(57)【要約】
【課題】化学薬品の使用を抑えることのできるカルシウムイオン溶出方法を提供する。
【解決手段】カルシウム含有物と、カルシウムイオン溶出能を有する微生物とを、水系環境下で接触させて、前記水系環境中に前記カルシウム含有物に由来するカルシウムイオンを溶出させる工程を含む、カルシウムイオン溶出方法とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム含有物と、カルシウムイオン溶出能を有する微生物とを、水系環境下で接触させて、前記水系環境中に前記カルシウム含有物に由来するカルシウムイオンを溶出させる工程を含む、カルシウムイオン溶出方法。
【請求項2】
前記カルシウム含有物が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セメント、モルタル、廃コンクリート、鉄鋼スラグ、石灰石、カルシウム含有岩石、廃石膏、製紙スラッジ、及び生コンスラッジからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のカルシウムイオン溶出方法。
【請求項3】
前記微生物が、好気性微生物及び通性嫌気性微生物からなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のカルシウムイオン溶出法。
【請求項4】
前記微生物が、乳酸菌である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカルシウムイオン溶出方法。
【請求項5】
前記乳酸菌が、JCM1134株である、請求項4に記載のカルシウムイオン溶出方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のカルシウムイオン溶出方法を用いた、カルシウムイオン含有水溶液の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られるカルシウムイオン含有水溶液と、二酸化炭素由来の炭酸イオンとを、塩基の存在下で接触させて、炭酸カルシウムを生成する工程を含む、二酸化炭素の固定化方法。
【請求項8】
前記塩基が、生体内で合成されるアミン、人工的に合成されるアミン、及びこれらアミンから誘導される基を含むポリマーからなる群から選択される1種以上のアミン化合物である、請求項7に記載の二酸化炭素の固定化方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の二酸化炭素の固定化方法を用いた、炭酸カルシウムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カルシウムイオン溶出方法、二酸化炭素の固定化方法、及び炭酸カルシウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因物質と言われている温室効果ガスの中でも、特に影響が大きいのが二酸化炭素(炭酸ガス)であり、大気中の二酸化炭素濃度の増大を防止することが地球温暖化抑制手段の1つとなりうる。そのため、化石資源の利用を制限して大気中への二酸化炭素の放出量を削減する技術についての研究が行われている。また、既に放出した大気中の二酸化炭素を吸収・固定する技術や、化石資源を燃焼した二酸化炭素を大気中に放出させることなく、あるいは大気中への放出を抑えつつ吸収・固定する技術について、日本を含む多くの国で盛んに研究されている。
【0003】
近年、二酸化炭素を吸収・固定する方法の1つとして、二酸化炭素を化学反応により炭酸塩として固定するというアイディアが提案されている。
例えば特許文献1では、二酸化炭素を含む気体を、水とアルカリ土類金属含有物質(例えば鉄鋼スラグ)を弱塩基と強酸の塩とから得られる水溶液に接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-097072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案されるような、二酸化炭素を化学反応により炭酸塩として固定する方法においては、アルカリ土類金属含有物質からアルカリ土類金属を水に溶出させる工程が必要になる。
しかしながら、特許文献1で提案されている方法は、当該工程を強酸等の化学薬品に依存している。環境保護の観点からは、化学薬品の使用を極力抑えた方法を確立することが望ましい。
【0006】
本開示は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、化学薬品の使用を抑えることのできるカルシウムイオン溶出方法、当該カルシウムイオン溶出方法を利用した二酸化炭素の固定化方法、及び当該二酸化炭素の固定化方法を利用した炭酸カルシウムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、下記[1]~[4]が提供される。
[1] カルシウム含有物と、カルシウムイオン溶出能を有する微生物とを、水系環境下で接触させて、前記水系環境中に前記カルシウム含有物に由来するカルシウムイオンを溶出させる工程を含む、カルシウムイオン溶出方法。
[2] 上記のカルシウムイオン溶出方法を用いた、カルシウムイオン含有水溶液の製造方法。
[3] 上記の製造方法により得られるカルシウムイオン含有水溶液と、二酸化炭素由来の炭酸イオンとを、塩基の存在下で接触させて、炭酸カルシウムを生成する工程を含む、二酸化炭素の固定化方法。
[4] 上記の二酸化炭素の固定化方法を用いた、炭酸カルシウムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、化学薬品の使用を抑えることのできるカルシウムイオン溶出方法、当該カルシウムイオン溶出方法を利用した二酸化炭素の固定化方法、及び当該二酸化炭素の固定化方法を利用した炭酸カルシウムの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のカルシウムイオン溶出方法の実施するためのカルシウムイオン溶出装置の実施形態の一例を示す概念図である。
図2】本実施形態の二酸化炭素の固定化方法(炭酸カルシウムの製造方法)の一例を示す概念図である。
図3】本実施形態の二酸化炭素の固定化方法の好ましい態様の一例を示す工程概略図である。
図4】本実施形態の二酸化炭素の固定化システムの一例を示す概略図である。
図5】微生物のカルシウムイオン溶出能に関する検討の結果を示す図である(試験1)。
図6】カルシウム含有物(モルタル)と培養液の固液比がカルシウムイオン溶出量に与える影響の検討の結果を示す図である(試験2)。
図7】カルシウム含有物(モルタル)のサイズがカルシウムイオン溶出量に与える影響の検討の結果を示す図である(試験3)。
図8】カルシウム含有物(モルタル)のサイズがカルシウムイオン以外の金属の溶出能に与える影響の検討の結果を示す図である(試験3)。
図9】L-乳酸のカルシウムイオン溶出能に関する検討の結果を示す図である(試験4)。
図10】L-乳酸のカルシウムイオン以外の金属の溶出能に関する検討の結果を示す図である(試験4)。
図11】微生物懸濁液中のL-乳酸濃度を測定した結果を示す図である(試験5)。
図12】L-乳酸濃度14~17mg/mLの場合のカルシウムイオン溶出量と、試験3のモルタル:微生物懸濁液=1g/25mLの場合のカルシウムイオン溶出量とを比較した図である(試験5)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本開示の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された「アミン」及び「ポリアミン」は、特に断りのない限り、生体内で合成されるアミン及び人工的に合成されるアミンから選択されるアミンを意味する。
【0011】
[カルシウムイオン溶出方法]
本実施形態のカルシウムイオン溶出方法は、カルシウム含有物と、カルシウムイオン溶出能を有する微生物とを、水系環境下で接触させて、前記水系環境中に前記カルシウム含有物に由来するカルシウムイオンを溶出させる工程を含む。
【0012】
本開示者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、化学薬品の使用を抑えることのできる方法として、微生物を利用したカルシウムイオン溶出方法を行うことを想起するに至り、種々検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0013】
本実施形態のカルシウムイオン溶出方法において、カルシウム源となるカルシウム含有物としては、固体状又は半固体状のカルシウム含有物等が挙げられる。
具体例を挙げると、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セメント、モルタル、廃コンクリート、鉄鋼スラグ、石灰石、カルシウム含有岩石、廃石膏、製紙スラッジ、及び生コンスラッジからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
なお、カルシウム含有物は、塊状のまま本実施形態のカルシウムイオン溶出方法に供してもよいが、カルシウム含有物の比表面積を向上させて、カルシウム含有物と微生物との接触面積を増大させ、微生物によるカルシウムイオンの溶出効率を向上させやすくする観点から、破砕処理物であることが好ましく、粉末等の粉砕処理物であることがより好ましい。
【0014】
また、本実施形態のカルシウムイオン溶出方法において、カルシウムイオン溶出能を有する微生物は、酸素存在下におけるハンドリング性向上の観点から、好気性微生物及び通性嫌気性微生物からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、カルシウムイオンを効率よく溶出させる観点から、これらの微生物の中でも、乳酸菌が好ましい。乳酸菌は、L-乳酸を代謝産物として産生し、カルシウム含有物からのカルシウムイオンの溶出に起因して水系環境がアルカリ性に傾いた場合であっても、カルシウムイオン溶出能を良好に発揮し得る。
また、カルシウムイオンをより効率よく溶出させる観点から、乳酸菌の中でも、JCM1134株、JCM1558株、及びこれらの近縁種等からなる群から選択される1種以上が好ましく、JCM1134株がより好ましい。
【0015】
本実施形態のカルシウムイオン溶出方法における、カルシウム含有物と、カルシウムイオン溶出能を有する微生物とを、水系環境下で接触させる方法としては、例えば、カルシウムイオン溶出能を有する微生物と当該微生物に適した培地成分を含む微生物懸濁液を準備し、当該微生物懸濁液とカルシウム含有物とを接触させる方法等が挙げられる。
【0016】
本実施形態のカルシウムイオン溶出方法は、例えば、図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1により実施される。図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1は、処理槽x2と、当該処理槽x2に収容された微生物懸濁液x3とを有する。そして、カルシウム含有物x4が微生物懸濁液x3と接触したときに、微生物懸濁液x3中に生息する微生物x3a(カルシウムイオン溶出能を有する微生物x3a)の作用によってカルシウム含有物x4中のカルシウムが微生物懸濁液x3中に溶出する。
具体的には、カルシウム含有物x4中の水酸化カルシウム(Ca(OH))及び炭酸カルシウム(CaCO)等が、当該微生物x3aの代謝物等と反応し、微生物懸濁液x3中カルシウムイオンが溶出するものを推察される。
本実施形態では、カルシウム含有物x4由来のカルシウムイオンが溶出した微生物懸濁液x3を、カルシウムイオン溶出水溶液(B)として得ることができる。
カルシウムイオン溶出水溶液(B)は、例えば後述する二酸化炭素の固定化システムにおけるカルシウムイオン溶出水溶液(B)の貯留槽31に貯留され、二酸化炭素の固定方法及び固定システムに供される。
なお、本実施形態のカルシウムイオン溶出方法によれば、カルシウム以外の元素のイオンの溶出を抑制することができるという副次的な効果が得られる。したがって、後述するカルシウムイオンと炭酸イオンとの反応により炭酸カルシウムの生成を行う際、カルシウム以外の元素のイオンによる妨害を受けにくく、炭酸カルシウムを効率よく生成させることが可能になるという利点がある。
【0017】
ここで、微生物懸濁液中におけるカルシウムイオン溶出能を有する微生物の菌体密度は、特に制限されないが、好ましくは0.5g/L~4g/L、より好ましくは2g/L~4g/L、更に好ましくは2.5g/L~3.0g/Lである。
【0018】
また、カルシウムイオン溶出能を有する微生物に適した培地成分は、使用する微生物に応じ、公知の培地成分を適宜採用することができる。例えば、カルシウムイオン溶出能を有する微生物として乳酸菌を用いる場合、培地成分としては、例えばMRS培地、LB培地、MB2216培地等が挙げられる。
【0019】
微生物懸濁液の温度は、カルシウムイオン溶出能を有する微生物の好適温度、好ましくは至適温度に制御される。具体的には、好ましくは20℃~40℃、より好ましくは25℃~40℃、更に好ましくは37℃である。
【0020】
カルシウム含有物と微生物懸濁液との含有比率(固液比(g/mL))は、特に制限されないが、カルシウム含有物からのカルシウムイオン溶出効率の向上等の観点から、好ましくは1/10~1/100、より好ましくは1/10~1/75、更に好ましくは1/10~1/50である。
【0021】
微生物懸濁液のエアレーションの要否は、カルシウムイオン溶出能を有する微生物の性質により判断される。例えば、乳酸菌は通性嫌気性細菌であることから、エアレーションを行うことなく、カルシウムイオン溶出能が発揮される。好気性微生物を用いる場合には、エアレーションを行うことで好気性微生物のカルシウムイオン溶出能が発揮される。
【0022】
なお、図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1は、例えば、下記のような構成をさらに有していてもよい。
すなわち、例えばカルシウム含有物x4が塊状や破砕物等である場合には、少なくとも一部に網目構造等の通液部を有する容器等にカルシウム含有物x4を収容するようにしてもよい。これにより、カルシウムイオン溶出処理後のカルシウム含有物x4の残渣を、微生物懸濁液x3中から容易に取り除くことができる。そして、カルシウムイオン溶出処理後のカルシウム含有物x4の残渣を取り除いた後の微生物懸濁液x3を、カルシウム含有物由来のカルシウムイオンを含有するカルシウムイオン含有水溶液(B)として得ることができる。
また、例えば、カルシウム含有物x4が粉末状等の粉砕物である場合には、沈降分離及び遠心分離等の分離処理によりカルシウム含有物を微生物懸濁液x3から分離する少なくとも1つ以上の手段を有するようにしてもよい。これにより、カルシウムイオン溶出処理後のカルシウム含有物x4の残渣を、微生物懸濁液x3中から分離して取り除くことができる。そして、カルシウムイオン溶出処理後のカルシウム含有物x4の残渣を取り除いた後の微生物懸濁液x3を、カルシウム含有物x4由来のカルシウムイオンを含有するカルシウムイオン含有水溶液(B)として得ることができる。
さらに、図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1は、処理槽x2に収容されている微生物懸濁液x2に微生物x3aを添加する微生物添加手段をさらに有していてもよい。
また、図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1は、処理槽x2に収容されている微生物懸濁液x3に培地成分を添加する培地成分添加手段を有していてもよい。
さらに、図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1において、微生物x3aは、担体に担持されていてもよい。これにより、微生物x3aを担持した担体を固液分離して再利用することができる。担体としては、微生物処理の分野で一般的に採用される材質の担体、例えば多孔質シリカ等が挙げられる。
【0023】
本実施形態のカルシウムイオン溶出方法を用いることで、カルシウム含有物由来のカルシウムイオンを含有するカルシウムイオン含有水溶液(B)が製造される。
そして、図2に示すように、カルシウムイオン含有水溶液(B)を、塩基の存在下、二酸化炭素由来の炭酸イオンと反応させることで、炭酸カルシウムが生成される。これにより二酸化炭素の固定化が行われる。
すなわち、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法は、上記のカルシウムイオン溶出方法を用いた製造方法により得られるカルシウムイオン含有水溶液(B)と、二酸化炭素由来の炭酸イオンとを接触させて、炭酸カルシウムを生成する工程を含む。
ここで、本実施形態では、二酸化炭素の固定化は、後述する方法で実施することが好ましい。
【0024】
[二酸化炭素の固定化方法]
本実施形態において、二酸化炭素の固定化方法は、塩基(A)と、上記の製造方法により得られるカルシウムイオン含有水溶液(B)と、二酸化炭素を含む気体(C)とを接触させて、炭酸カルシウムを生成する工程(S)を含むことが好ましい。
【0025】
以下、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法の具体例について、以下に詳細に説明する。
【0026】
本実施形態の二酸化炭素の固定化方法の好ましい態様の一例を図3に示す。
図3に示す二酸化炭素の固定化方法は、塩基(A)と、カルシウムイオン含有水溶液(B)と、二酸化炭素を含む気体(C)とを接触させる接触工程(S)を含む。
さらに、図3に示す二酸化炭素の固定化方法は、工程(S)の後に、炭酸カルシウムを回収する回収工程(T)をさらに含む。
【0027】
次に、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法を実施するための二酸化炭素の固定化システムの一例を図4に示す。
図4に示す二酸化炭素の固定化システム1は、接触部(P)及び炭酸カルシウム回収部(Q)を少なくとも備える。
接触部(P)では、塩基(A)と、カルシウムイオン含有水溶液(B)と、二酸化炭素を含む気体(C)とを接触させて、炭酸カルシウムを析出させる。
炭酸カルシウム回収部(Q)では、炭酸カルシウムを回収する。
なお、図4中、符号21は塩基(A)の貯留タンクであり、符号21aは塩基(A)の接触部(P)への供給ラインであり、符号22はブロアであり、符号22aは二酸化炭素を含む気体(C)の接触部(P)への供給ラインであり、符号31はカルシウムイオン含有水溶液(B)の貯留タンクであり、符号31aはカルシウムイオン含有水溶液(B)の接触部(P)への供給ラインである。
符号2aは、接触部(P)で生成された炭酸カルシウムを含む液体を炭酸カルシウム回収部(Q)に供給する供給ラインである。
また、接触部(P)は、1つであってもよいし、複数備えられていてもよい。
炭酸カルシウム回収部(Q)も、接触部(P)の数に応じて、複数備えられていてもよい。
【0028】
<接触工程(S)>
接触工程(S)では、塩基(A)と、カルシウムイオン含有水溶液(B)と、二酸化炭素を含む気体(C)とを接触させて、炭酸カルシウムを析出させる。
【0029】
(塩基(A))
塩基(A)としては、二酸化炭素を含む気体(C)中の二酸化炭素の、カルシウムイオン含有水溶液(B)への溶解を促進し得る塩基を適宜採用することができる。代表的な塩基としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。
また、塩基(A)としては、アミン全般を用いることもでき、具体的には、生体内で合成されるアミン、人工的に合成されるアミン、及びこれらアミンから誘導される基を含むポリマーからなる群から選択される1種以上のアミン化合物(A1)を用いることもできる。
アミン化合物(A1)を用いることで、二酸化炭素を含む気体(C)中の二酸化炭素の、カルシウムイオン含有水溶液(B)への溶解をより促進し得る。
【0030】
生体内で合成されるアミンとしては、例えば海洋細菌の生体内で合成されるアミン(モノアミン及びポリアミン)が挙げられる。具体的には、1,3-プロパンジアミン、プトレシン(ブタン-1,4-ジアミン)、カタベリン(ペンタン-1,4-ジアミン)、スペルミン(1,11-ジアミノ-4,9-ジアザウンデカン)、スペルミジン(1,8-ジアミノ-4-アザオクタン)、ノルスペルミジン(3,3’-イミノビス(プロパン-1-アミン))、及びノルスペルミン(3,3’-[(プロパン-1,3-ジイル)ビスイミノ]ビス(プロパン-1-アミン))が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
人工的に合成されるアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、ジグリコールアミン(DGA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、並びにピペラジン及びエチレンジアミンなどのジアミン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
また、アミン化合物(A1)としては、上記アミンから誘導される基を含むポリマー(生体内で合成されるアミンから誘導される基を含むポリマー、人工的に合成されるアミンから誘導される基を含むポリマー)を用いてもよい。
上記アミンから誘導される基を含むポリマーとしては、上記アミンから誘導される基を少なくとも末端に含むポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、上記アミンから誘導される基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物由来の構成単位を有するポリマー、ポリアルキレンイミン等が挙げられ、好ましくはポリアルキレンイミンである。
ポリアルキレンイミンのアルキレン基の炭素数は、好ましくは2~4、より好ましくは2~3、更に好ましくは2である。なお、「上記アミンから誘導される基」とは、上記アミン(生体内で合成されるアミン、人工的に合成されるアミン)の水素原子の少なくとも1つを除いた1価以上の基を意味する。例えば、エチレンジアミンから誘導される基としては、1価基である-NHCHCHNH等が挙げられる。
また、上記アミンから誘導される基を含むポリマーの、沸点上昇法により測定される数平均分子量は、好ましくは500~50,000、より好ましくは500~40,000、更に好ましくは500~35,000である。
【0033】
なお、生体内で合成されるアミン、人工的に合成されるアミン、及びこれらアミンから誘導される基を含むポリマーからなる群から選択される1種以上のアミン化合物(A1)と、カルシウムイオン含有水溶液(B)と、二酸化炭素を含む気体(C)とを接触させて、二酸化炭素がカルシウムイオン含有水溶液(B)に吸収されると、当該二酸化炭素がカルシウムイオン含有水溶液(B)中のアミン化合物(A1)と反応して、カルシウムイオン含有水溶液(B)中で炭酸イオンを生じ、アミン化合物(A1)はカチオンになるものと推測される。
アミン化合物(A1)がプトレシンである場合について推測される反応式を以下に示す。
【化1】
【0034】
(カルシウムイオン含有水溶液(B))
カルシウムイオン含有水溶液(B)は、上述したカルシウムイオン溶出方法を用いた製造方法により得られる。
具体的には、図1に示すカルシウムイオン溶出装置X1によりカルシウムイオン含有水溶液(B)が製造される。
このカルシウムイオン含有水(B)を貯留タンク31に収容し、接触部(P)に送液するようにしてもよい。あるいは、カルシウムイオン溶出装置X1から接触部(P)に直接カルシウムイオン含有水(B)を送液するようにしてもよい。
【0035】
(二酸化炭素を含む気体(C))
二酸化炭素を含む気体(C)としては、例えば、空気、燃焼排ガス等が挙げられる。
燃焼排ガスとしては、例えば、製鉄所等の各種工場から排出される燃焼排ガス、LNG火力発電所から排出される燃焼排ガス、石炭火力発電所から排出される燃焼排ガス、製油所の水素製造装置から排出されるオフガスが挙げられる。二酸化炭素の固定化効率をより向上させやすくする観点から、これらの中でも、二酸化炭素濃度が高い、石炭火力発電所から排出される燃焼排ガス(二酸化炭素濃度は、11~15体積%)や製油所の水素製造装置から排出されるオフガス(二酸化炭素濃度は、40~60体積%)が好適である。また、空気中の二酸化炭素濃度が0.04体積%以上の場合には空気を用いることとしても良い。
ここで、二酸化炭素を含む気体(C)が、燃焼排ガスのように高温のガスである場合、燃焼排ガスを冷却して適切な温度に低下させた後、接触部(P)に供給するようにしてもよい。燃焼排ガスの冷却方法としては、例えば熱交換器を用いた方法等が挙げられる。
また、燃焼排ガスは、必要に応じて、脱硝、集塵、及び脱硫から選択される1種以上の処理を施した後、接触部(P)に供給するようにしてもよい。
【0036】
(接触工程(S)の各種条件)
塩基(A)とカルシウムイオン含有水(B)と二酸化炭素を含む気体(C)との接触方法は特に限定されず、カルシウムイオン含有水(B)に含まれるカルシウムイオンと、二酸化炭素を含む気体(C)由来の炭酸イオンとを反応させて効率よく炭酸カルシウムを生成する方法が適宜採用される。
塩基(A)とカルシウムイオン含有水(B)と二酸化炭素を含む気体(C)との接触は、同時であってもよいし、同時でなくてもよい。例えば、塩基(A)とカルシウムイオン含有水(B)とを混合して混合液を得た後、二酸化炭素を含む気体(C)と当該混合液を接触させてもよい。また、塩基(A)を水に溶解した水溶液の状態とし、当該水溶液に二酸化炭素を含む気体(C)を導入した後、カルシウムイオン含有水(B)と接触させるようにしてもよい。
【0037】
なお、接触工程(S)より生じる、塩基(A)とカルシウムイオン含有水(B)との混合液中の塩基(A)の含有量は、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは10質量%~40質量%、更に好ましくは25質量%~35質量%である。
【0038】
接触工程(S)の温度は、二酸化炭素を効率よく吸収して、混合液中の炭酸イオン濃度を増大させつつ、炭酸カルシウムを生成させやすくする観点から、好ましくは10℃~45℃、より好ましくは25℃~40℃である。
【0039】
<回収工程(T)>
回収工程(T)では、接触工程(S)において生成した炭酸カルシウムを回収する。
炭酸カルシウムは、析出して沈殿するので、濾過及び遠心分離等から選択される1種以上の固液分離処理により、分離して回収することができる。
炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム回収部(Q)において回収される。
回収した炭酸カルシウムは、必要に応じて水洗し、さらに乾燥して、製品とすることができる。
【0040】
[二酸化炭素固定化方法の他の実施形態]
二酸化炭素固定化方法の他の実施形態としては、カルシウム含有物と、カルシウムイオン溶出能を有する微生物とを、水系環境下で接触させて、前記水系環境中に前記カルシウム含有物に由来するカルシウムイオンを溶出させる工程において、塩基(A)を前記水系環境中に配合するとともに、前記水系環境中に二酸化炭素を含む気体(C)を導入する方法が挙げられる。これにより、水系環境中に溶出したカルシウムイオンを、二酸化炭素由来の炭酸イオンと逐次反応させて、炭酸カルシウムを生成するようにしてもよい。
【0041】
[炭酸カルシウムの製造方法]
既述のように、本実施形態にかかる二酸化炭素の固定化方法によれば、炭酸カルシウムを回収することができる。したがって、本開示によれば、本実施形態にかかる二酸化炭素の固定化方法を用いた、炭酸カルシウムの製造方法も提供される。
炭酸カルシウムは、各種用途として有用である。例えば、製紙、ゴム、プラスチック、食品、及び化粧品等の広範囲な工業分野で、充填剤、顔料、及び増量剤などとして利用することができる。
また、炭酸カルシウムは、石灰石、セメント原料、細骨材、アスファルト添加剤、及びストーンペーパー等の用途としても有用である。
【実施例0042】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実験に供した試料等]
1.微生物
「乳酸菌 JCM1134株」:理化学研究所、微生物材料開発室から入手した。
【0044】
2.液体培地
LB培地の組成を表1に示し、MRS培地の組成を表2示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
3.カルシウム含有物
カルシム含有物として、モルタルを用いた。
モルタルは、ポルトランドセメントと水を、質量比で2:1で混合し、2週間以上養生し固めたものとして準備した。これを粉砕し1μmから数cm程度の大きさの粒子にした。100μmの篩にかけ、通過したものをモルタル粉末として使用した。
【0048】
[試験1:微生物のカルシウムイオン溶出能に関する検討]
各種微生物によるモルタルからのカルシウムイオン溶出能について検討した。三角フラスコ内に菌体濃度2.5g/Lの微生物懸濁液を1~50mL収容し、微生物懸濁液にモルタルを添加した後、三角フラスコにゴム栓をして、24時間振とうした。なお、微生物懸濁液調製時の培養から振とうまでの処理は、全て37℃で実施した。また、振とう条件は130rpmとした。なお、モルタル:微生物懸濁液=1g:200mLとした。
培地はMRS培地とした。
振とう終了後、上清のカルシウムイオン濃度を、Agilent ICP-7800にて測定した。
また、参照試験として、微生物を加えることなく、LB液体培地又はMRS液体培地にモルタルを添加して、同様の試験を実施した。
【0049】
結果を図5に示す。
【0050】
図5に示す結果から、JCM1134株が優れたカルシウムイオン溶出能を有していることがわかった。
【0051】
[試験2:固液比がカルシウムイオン溶出量に与える影響の検討]
微生物として乳酸菌JCM1134株を用い、モルタルの添加量を各種異ならせて、試験1と同様の方法でモルタルからのカルシウムイオン溶出能について検討した。また、参照試験として、微生物を加えることなく、MRS液体培地にモルタルを添加して、同様の試験を実施した。
【0052】
結果を図6に示す。
【0053】
図6に示す結果から、微生物懸濁液に対してモルタルの添加量を増やすことで、カルシウムイオンの溶出量が上昇する傾向が見られた。以降の試験では、カルシウムイオンの溶出効率が良好と考えられる、モルタル:微生物懸濁液=1g:25mLを採用することとした。
【0054】
[試験3:カルシウム含有物のサイズがカルシウムイオン溶出量に与える影響の検討]
微生物として乳酸菌JCM1134株を用い、モルタルのサイズを各種異ならせて、試験1と同様の方法でモルタルからのカルシウムイオン溶出能について検討した。但し、試験3では、モルタル:微生物懸濁液=1g:25mLとした。また、振とう時間は96時間とした。また、参照試験として、モルタル未添加の場合についても検討した。
さらに、試験3では、カルシウム以外の金属(アルミニウム、ケイ素、チタン、及び鉄)の溶出量についても検討した。
モルタルのサイズは、以下のとおりとした。
・「小」:粒径100μm未満
・「一般」:粒径1μm~200μm
・「大」:塊状
【0055】
結果を図7及び図8に示す。
なお、図8中、横軸の「小」、「中」、「大」、「モルタルなし」において、各々掲載されている4つの棒グラフは、左から順に、アルミニウム濃度、ケイ素濃度、チタン濃度、鉄濃度を示す。
【0056】
図7に示す結果から、モルタルのサイズが小さくなる程、カルシウムイオン溶出量が増加することが明らかとなった。また、図8に示す結果から、アルミニウム、ケイ素、チタン、及び鉄の溶出量はごくわずかであり、乳酸菌JCM1134株は、アルミニウム、ケイ素、チタン、及び鉄の溶出を抑えつつ、カルシウムイオンのみを選択的に溶出させることのできる優れた性能を有していることが明らかとなった。
【0057】
[試験4:L-乳酸のカルシウムイオン溶出能に関する検討]
微生物に代えて、乳酸菌JCM1134株の代謝産物であるL-乳酸(和光純薬株式会社製、純度85.0~92.0%品)を用い、試験1と同様の方法でモルタルからのカルシウムイオン溶出能について検討した。但し、試験4では、モルタル:微生物懸濁液=1g:25mLとした。また、振とう時間は96時間とした。
さらに、試験4では、カルシウム以外の金属(アルミニウム、ケイ素、チタン、及び鉄)の溶出量についても検討した。
【0058】
結果を図9及び図10に示す。
図10中、横軸の「15」、「30」、「60」、「120」において、各々掲載されている4つの棒グラフは、左から順に、アルミニウム濃度、ケイ素濃度、チタン濃度、鉄濃度を示す。
【0059】
図9に示す結果から、L-乳酸を用いた場合にも、カルシウムイオンを溶出することができることが明らかとなった。しかし、図10(及び図8)に示す結果から、アルミニウム、ケイ素、チタン、及び鉄の溶出を抑える能力は、L-乳酸よりも乳酸菌JCM1134株が優れており、乳酸菌JCM1134株は、アルミニウム、ケイ素、チタン、及び鉄の溶出を抑えつつ、カルシウムイオンのみを選択的に溶出させる性能が、L-乳酸よりも優れていることが明らかとなった。
【0060】
[試験5:微生物によるカルシウムイオン溶出とL-乳酸によるカルシウム溶出の比較]
予備試験として、乳酸菌JCM1134株を用い、モルタル量を各種異ならせて、試験1と同様の方法(但し、振とう時間は96時間、モルタルなしの場合のみ振とう時間24時間についても検討)を実施した。その後、微生物懸濁液の上清中のL-乳酸濃度を測定した。
L-乳酸濃度の測定には、Lactate Assay Kit-WST (DOJINDO/L256)を用いた。このキットは、乳酸量に応じてWSTホルマザンが発色することを利用して、細胞培養液の乳酸濃度を測定するキットである。
微生物懸濁液中のL-乳酸濃度を測定した結果を図11に示す。
【0061】
予備試験の結果から、JCM1134株をMRS培地に入れた時のL-乳酸濃度は14~17mg/mL程度で、pHは24時間後に4.0付近まで低下することがわかった。
そこで、14~17mg/mlの濃度でL-乳酸をMRS培地に添加しpHを4.0に調整した液におけるカルシウムイオン溶出量と、試験3のモルタル:微生物懸濁液=1g/25mLの場合のカルシウムイオン溶出量を比較した。なお、これらの試験における振とう時間は同一である。また、試験3のモルタル:微生物懸濁液=1g/25mLの場合、本培養24時間後のモルタル添加前の微生物懸濁液のpHは4.0である。結果を図12に示す。
【0062】
図12に示す結果から、L-乳酸を用いた場合よりも、乳酸菌JCM1134株を用いた場合の方が、カルシウムイオン溶出量が増加していることがわかった。このことから、乳酸菌JCM1134株の代謝産物のうち、L-乳酸以外の物質が、カルシウムイオン溶出に寄与し、乳酸菌JCM1134株を用いることで、効率的にカルシウムイオンを溶出し得ることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0063】
X1 カルシウムイオン溶出装置
x2 処理槽
x3 微生物懸濁液
x3a カルシウムイオン溶出能を有する微生物
x4 カルシウム含有物
1 二酸化炭素の固定システム
(P) 接触部
2a 混合液の供給ライン
21 (塩基(A)の)貯留タンク
21a (塩基(A)の)供給ライン
22 ブロア
22a (二酸化炭素を含む空気(C)の)供給ライン
31 (カルシウムイオン含有水溶液(B)の)貯留タンク
31a (カルシウムイオン含有水溶液(B)の)供給ライン
(Q) 炭酸カルシウム回収部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12