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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109303
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】飛行制御システム
(51)【国際特許分類】
   B64U 70/97 20230101AFI20240806BHJP
   G01S 13/91 20060101ALI20240806BHJP
   G01S 13/50 20060101ALI20240806BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240806BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240806BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20240806BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240806BHJP
   B64D 45/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B64U70/97
G01S13/91 200
G01S13/50
B64C13/18 Z
B64U10/13
B64U20/80
G06N20/00
B64D45/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014023
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 達哉
(72)【発明者】
【氏名】小阪 尚子
(72)【発明者】
【氏名】中村 亨
(72)【発明者】
【氏名】久田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】梅宮 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 紘也
(72)【発明者】
【氏名】川原 圭博
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC01
5J070AC20
5J070AE20
5J070AF06
5J070AK22
5J070BA01
(57)【要約】
【課題】UAVの着地精度を改善可能な技術を提供する。
【解決手段】レーダを備えた飛行体10と、前記飛行体が着地するポート20と、前記飛行体の飛行を制御する制御装置30と、を備えた飛行制御システム1において、前記制御装置30は、前記レーダから照射され前記ポートで反射された反射波の解析結果を基に、前記ポートの変動の予測値を計算する推定部32と、前記ポートの変動の予測値を用いて、前記飛行体の前記ポートへの着地を制御する制御部33と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダを備えた飛行体と、前記飛行体が着地するポートと、前記飛行体の飛行を制御する制御装置と、を備えた飛行制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記レーダから照射され前記ポートで反射された反射波の解析結果を基に、前記ポートの変動の予測値を計算する推定部と、
前記ポートの変動の予測値を用いて、前記飛行体の前記ポートへの着地を制御する制御部と、
を備える飛行制御システム。
【請求項2】
前記推定部は、
ドップラーレーダ解析により解析された前記反射波の解析結果を基に、前記ポートの位置又は傾きの時間変化の予測値を計算する請求項1に記載の飛行制御システム。
【請求項3】
前記推定部は、
機械学習技術を用いて、前記ポートの位置又は傾きの時間変化の予測値を計算する請求項2に記載の飛行制御システム。
【請求項4】
前記ポートは、
前記飛行体の着地面に散乱体を備える請求項1に記載の飛行制御システム。
【請求項5】
前記散乱体は、
コーナリフレクタ構造を備える請求項4に記載の飛行制御システム。
【請求項6】
前記レーダは、
ミリ波帯のレーダである請求項1に記載の飛行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、飛行体(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)に搭載されたカメラでランディングマットの模様及び位置を認識し、その認識結果を基にUAVの自動着地を制御する方法が記載されている。
【0003】
非特許文献2には、上記方法に加え、対象物に光を照射して反射した光をセンサで捉えて距離を計測するリモートセンシング技術(LiDAR:Light Detection And Ranging)を用いることにより、UAVの自動着地精度を高める方法が記載されている。
【0004】
非特許文献3には、ミリ波レーダを用いて車々間の距離を計測する方法が記載されている。非特許文献4には、ミリ波レーダ及びコーナリフレクタを用いてUAVの着地位置を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lingjie Yang、外5名、“Autonomous Landing of a Rotor Unmanned Aerial Vehicle on a Boat Using Image-Based Visual Servoing”、Proceedings of the 2021 IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics、December 27-31, 2021、p.1848-p.1854
【非特許文献2】Jonghwi Kim、外2名、“Lidar-guided Autonomous Landing of an Aerial Vehicle on a Ground Vehicle”、2017 14th International Conference on Ubiquitous Robots and Ambient Intelligence (URAI)、June 28-July 1, 2017、p.228-p.231
【非特許文献3】Akash Deep Singh、外3名、“RadHAR: Human Activity Recognition from Point Clouds Generated through a Millimeter-wave Radar”、Session 3: mmWave Sensing and Applications、mmNets ’19、October 25, 2019、p.51-p.56
【非特許文献4】Christopher Doer、外3名、“Radar Based Autonomous Precision Takeoff and Landing System for VTOLs in GNSS Denied Environments”、2020 International Conference on Unmanned Aircraft Systems (ICUAS)、September 1-4, 2020、p.922-p.931
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、霧、雨、雪、夜間等の視界不良状況下では、カメラの計測精度は著しく低下するため、UAVを上手く着地させることは難しい。また、LiDARは距離計測に近赤外線を使用するため、カメラの場合と同様に視界不良状況下ではUAVを上手く着地させることは難しい。また、非特許文献4は、着地面が変動しないことを前提とし、高度計のようにUAVと着地面との相対位置を計測するにすぎないため、着地面の位置や傾きが揺れ等で変動する場合にはUAVを上手く着地させることは難しい。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、UAVの着地精度を改善可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の飛行制御システムは、レーダを備えた飛行体と、前記飛行体が着地するポートと、前記飛行体の飛行を制御する制御装置と、を備えた飛行制御システムにおいて、前記制御装置は、前記レーダから照射され前記ポートで反射された反射波の解析結果を基に、前記ポートの変動の予測値を計算する推定部と、前記ポートの変動の予測値を用いて、前記飛行体の前記ポートへの着地を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、UAVの着地精度を向上可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、飛行制御システムの構成例を示す図である。
図2図2は、UAV及び制御装置の構成例を示す図である。
図3図3は、機械学習モデルの生成方法を示すフロー図である。
図4図4は、UAVの飛行制御方法を示すフロー図である。
図5図5は、洋上浮遊ポートの傾斜の時間変化等の例を示す図である。
図6図6は、機械学習モデルの変形例を示す図である。
図7図7は、制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。
【0012】
[本開示の概要]
本開示では、レーダを用いた視界不良状況下でのUAV着地方法を開示する。
【0013】
具体的には、視界不良状況下でも計測性能劣化を生じないレーダ技術を用いて着地面の様子を把握し、着地面が揺れ等で動いている場合には当該着地面の位置や傾きを推定し、把握・推定した着地面の状況を基にUAVを着地させる。
【0014】
例えば、ドップラーレーダ解析技術を備えたミリ波レーダを用いて着地面の位置や傾きを推定する。また、着地面の位置や傾きの時間変化を予測可能な機械学習モデルを予め生成しておき、当該機械学習モデルを用いてUAVの着地時に着地面の位置や傾きの時間変化を推定する。
【0015】
これにより、UAVの着地精度を向上可能となる。その結果、視界不良状況を含む全ての天候下おいて、トラックの荷台、船の甲板、洋上浮遊ポート等の動く着地面への着地が可能となる。また、配送業や海洋環境観測分野等において、UAVを活用可能となる。
【0016】
[飛行制御システムの構成]
図1は、本実施形態に係る飛行制御システム1の構成例を示す図である。飛行制御システム1は、ミリ波レーダ11が搭載されたUAV10と、コーナリフレクタ構造の散乱体21が埋め込まれた着地ポート20と、UAV10の飛行を制御する制御装置30と、を備える。
【0017】
着地ポート20は、例えば、洋上浮遊ポートである。着地ポート20のUAV着地面には、コーナリフレクタ構造を備えた1つ又は複数の散乱体21が埋め込まれている。コーナリフレクタ構造は、電波の入射方向に電波を反射する特性を備えるので、強く電波を反射可能となり、着地ポート20の位置や傾きを高精度に把握可能となる。なお、散乱体21の位置座標及び反射特性は、既知である。
【0018】
図2は、本実施形態に係るUAV10及び制御装置30の構成例を示す図である。UAV10は、ミリ波レーダ11と、計測装置12と、制御装置30と、を備える。本実施形態では、制御装置30がUAV10に内蔵される場合を例としている。
【0019】
ミリ波レーダ11は、周波数がミリ波帯のレーダを着地ポート20へ照射し、着地ポート20上の散乱体21からの反射波を用いて、位置解析により、現時点の着地ポート20の位置(x,y,z)及び傾きθを推定(計算)する機能を備える。
【0020】
ミリ波レーダ11は、上記着地ポート20上の散乱体21からの反射波を用いて、ドップラーレーダ解析により、散乱体21(着地ポート20)の揺れの速度vを測定し、散乱体21までの距離rと散乱体21の揺れの速度vとで構成された2次元空間での反射強度分布を示すレンジドップラーイメージRDI(Range Doppler Image)を出力する機能を備える。
【0021】
上記ミリ波レーダ11は、例えば、ミリ波アンテナと、位置解析手段と、ドップラーレーダ解析手段と、で構成される。各手段は、例えば、ハードウェア回路、コンピュータのソフトウェアプログラムである。
【0022】
計測装置12は、UAV10の加速度a及び傾きθを計測する機能を備える。計測装置12は、例えば、加速度計、加速度センサである。
【0023】
制御装置30は、生成部31と、推定部32と、制御部33と、記憶部34と、を備える。制御装置30は、例えば、コンピュータ及びソフトウェアプログラムである。
【0024】
生成部31は、例えば散乱体21(着地ポート20)に関するレンジドップラーイメージRDIとUAV10の加速度aとUAV10の傾きθとを入力して着地ポート20の傾きθの時間変化予測値を出力する機械学習モデルMを予め生成する機能を備える。
【0025】
推定部32は、ミリ波レーダ11で行われた反射波の解析結果を基に、着地ポート20の変動の予測値を計算する機能を備える。
【0026】
例えば、推定部132は、上記機械学習モデルMを用いて、ドップラーレーダ解析により解析されたレンジドップラーイメージRDI、現時点のUAV10の加速度a、現時点のUAV10の傾きθを基に、着地時の着地ポート20の傾きθの時間変化予測値を推定(計算)する。
【0027】
制御部33は、上記着地ポート20の変動の予測値を用いて、UAV10の着地ポート20への着地を制御する機能を備える。
【0028】
例えば、制御部33は、ミリ波レーダ11で推定された現時点の着地ポート20の位置(x,y,z)及び傾きθと、推定装置13で推定された着地時の着地ポート20の傾きθの時間変化予測値と、を基に、UAV10の着地を制御する。
【0029】
記憶部34は、制御装置30が扱う各種データを記憶する機能を備える。
【0030】
[機械学習モデルMの生成方法]
図3は、機械学習モデルMの生成方法を示すフロー図である。
【0031】
ステップS101;
実験環境において、制御装置30の生成部31は、下記入出力を持つ機械学習モデルを学習させる。
【0032】
入力:
・レーダ計測信号(レンジドップラーイメージRDI)
・UAV10の加速度a
・UAV10の傾きθ
出力:
・着地ポート20の傾きθ(θgx,θgy,θgz)の時間変化予測値(θgx(t),θgy(t),θgz(t))
なお、地上の固定座標系(x,y,z)に対する着地ポート20の座標系(x,y,z)での回転を(θgx,θgy,θgz)と表現している。また、機械学習モデルMとは、データの学習・推論モデルであり、CNN(Convolutional Neural Network)等の公知の機械学習技術を用いて実現可能である。
【0033】
[UAV10の飛行制御方法]
図4は、UAV10の飛行制御方法を示すフロー図である。UAV10は、洋上に浮遊する着地ポート20への着地を試みているものとする。
【0034】
ステップS201;
ミリ波レーダ11は、ミリ波帯のレーダを着地ポート20へ照射し、コーナリフレクタ構造を備える散乱体21からの反射波を用いて、位置解析により、現時点の着地ポート20の位置(x,y,z)及び傾きθを推定(計算)する。
【0035】
例えば、着地ポート20の位置(x,y,z)は、着地ポート20に3つ以上の散乱体21を埋め込み、それぞれの散乱体21との距離rをレーダにより計測し、三角測量の原理より計算する。
【0036】
例えば、着地ポート20の傾きθは、着地ポート20に埋め込まれた第1の散乱体21Aと第2の散乱体21Bとの間の距離が既知であることから、第1の散乱体21Aまでの距離rと第2の散乱体21Bまでの距離rとの差を更に用いて計算する。
【0037】
ステップS202;
次に、ミリ波レーダ11は、上記散乱体21からの反射波を用いて、ドップラーレーダ解析により、散乱体21(着地ポート20)の揺れの速度vを測定し、散乱体21までの距離rと散乱体21の揺れの速度vとで構成された2次元空間での反射強度分布を示すレンジドップラーイメージRDIを出力する。
【0038】
ステップS203;
次に、計測装置12は、現時点のUAV10の加速度a(avx,avy,avz)及び傾きθ(θvx,θvy,θvz)を計測する。なお、地上の固定座標系(x,y,z)に対するUAV10の座標系(x,y,z)での回転を(θvx,θvy,θvz)と表現している。
【0039】
ステップS204;
次に、制御装置30は、ステップS202で出力されたレンジドップラーイメージRDIとステップS203で計測されたUAV10の加速度a(avx,avy,avz)及び傾きθ(θvx,θvy,θvz)とを機械学習モデルMへ入力し、当該機械学習モデルMより着地ポート20の傾きθ(θgx,θgy,θgz)の時間変化予測値(θgx(t),θgy(t),θgz(t))を得る。なお、地上の固定座標系(x,y,z)に対する着地ポート20の座標系(x,y,z)での回転を(θgx,θgy,θgz)と表現している。
【0040】
ステップS205;
最後に、制御装置30は、ステップS201で推定していた現時点の着地ポート20の位置(x,y,z)及び傾きθと、ステップS204で推定した着地ポート20の傾きθの時間変化予測値(θgx(t),θgy(t),θgz(t))と、を基に、UAV10の着地を制御する。
【0041】
例えば、制御装置30は、着地ポート20の傾きθの時間変化予測値(θgx(t),θgy(t),θgz(t))より、現時刻から着地ポート20の傾きθが水平(0°)になるまでの時間を待機時間として計算し、当該待機時間の経過後に現時点の着地ポート20の位置(x,y,z)にUAV10を着地させる。
【0042】
例えば、制御装置30は、現時点の着地ポート20の位置(x,y,z)にUAV10をホバリング(空中停止)させ、ホバリング時から下降開始までの時間(下降時間)が予め設定されている場合には、当該下降時間の経過後の着地ポート20の傾きθが水平と予測されたタイミングでUAV10を着地させる。
【0043】
なお、着地ポート20の位置(x,y,z)は波の影響を受けて変動する可能性があるので、制御装置30は、ミリ波レーダ11により着地直前に測定された着地ポート20の位置情報を活用することも可能である。
【0044】
[実施例]
79Ghz帯のミリ波レーダを搭載したUAVをコーナリフレクタ構造の散乱体が埋め込まれた洋上浮遊ポートへ着地させる実験を行った。
【0045】
(ミリ波レーダの仕様)
UAVに搭載するミリ波レーダには、79Ghz帯のミリ波FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダを用い、77Ghz~81Ghzの帯域を利用した。これにより、37.5mmの距離分解能(=光速度/(2×利用帯域幅))を実現した。
【0046】
1つのチャープを照射する時間は100μsとし、0.2sの周期でドップラーレーダ解析を実行した。これにより、1.0×10-2m/sの速度分解能(=波長/(2×周期))を実現した。
【0047】
送信アンテナ数は3つとし、受信アンテナ数は4つとした。
【0048】
(洋上浮遊ポートの仕様)
半径2m、高さ1mの円柱とした。密度は、500kg/mとした。一辺が20mmのコーナリフレクタを4つ埋め込んだ。コーナリフレクタの配置位置は、洋上浮遊ポートの中心から0.5m以上とした。
【0049】
(想定する波高)
想定する波高は、1.5mとした。
【0050】
(波による洋上浮遊ポートの揺れ)
図5に示すように、洋上浮遊ポート及び波を流体シミュレーション上で再現し、洋上浮遊ポートの揺れ(傾斜)の時間変化を求めた。図5(a)は、洋上浮遊ポートと波のシミュレーションモデルを示す図である。x方向に波が伝搬する。図5(b)は、波高と洋上浮遊ポートの重心の各時間変化を示すグラフである。図5(c)は、洋上浮遊ポートの傾斜の時間変化(y軸回りの回転角度)を示すグラフである。
【0051】
波揺れによる洋上浮遊ポートの角速度は4°/s程度であり、3.5×10-2m/s程度の速度(=回転半径×角速度)を各コーナリフレクタが持つことになる。
【0052】
(UAVの飛行制御プログラムの仕様)
実際のUAV飛行ログより概算した値を参照し、下降時の飛行制御の事前設定として、UAVの下降が初速度0.5m/s、一定の加速度-0.0625m/sで変化し、4s後に地面に着地するように設定した。
【0053】
ミリ波レーダにより洋上浮遊ポートの位置を検出し、洋上浮遊ポートの真上0.5m地点でUAVをホバリングさせる。
【0054】
このとき、レーダ照射、ドップラーレーダ解析、機械学習により、4s後の洋上浮遊ポートの傾きを0.2s周期で予測する。図5(c)に示したように、洋上浮遊ポートの揺れ(傾き)の時間変化のパターンを予め学習しておくことで、4s後の傾きを予測可能である。また、ドップラーレーダ解析おけるレーダの速度分解能と実際のコーナリフレクタの速度の観点においても、レーダにより洋上浮遊ポートの動きを正確に捉えることが可能である。
【0055】
4s後の傾きが水平と予測されたタイミングで下降を開始するように飛行制御を行う。
【0056】
[機械学習モデルMの変形例1]
機械学習モデルMの入出力データには、様々なバリエーションが考えられる。
【0057】
(入力データのバリエーション)
着地ポート20の傾きθの時間変化は、必ずしもUAV10の加速度aや傾きθに直接依存しない。そこで、機械学習モデルMは、図6(a)に示すように、レンジドップラーイメージRDIのみから着地ポート20の傾きθの時間変化予測値を計算(推論)する機械学習モデルでもよい。
【0058】
また、図6(b)(c)に示すように、UAV10の加速度aと傾きθのうちいずれか一方のみを更に入力して着地ポート20の傾きθの時間変化予測値を出力する機械学習モデルMでもよい。その他、UAV10の加速度a及び傾きθ以外のデータ情報を更に入力して着地ポート20の傾きθの時間変化予測値を出力する機械学習モデルMでもよい。
【0059】
(出力データのバリエーション)
本実施形態では、機械学習モデルMが、レンジドップラーイメージRDI等から着地ポート20の傾きθの時間変化予測値を出力(推論)する場合を例に説明した。その他、機械学習モデルMは、例えば、位置解析結果、ドップラーレーダ解析結果、レンジドップラーイメージRDI等から、着地ポート20の位置(x,y,z)の時間変化予測値を出力(推論)するようにしてもよい。
【0060】
[機械学習モデルMの変形例2]
本実施形態では、着地ポート20の傾きや位置の時間変化予測値を推定する推定手段として、機械学習モデルを用いる場合を例に説明した。機械学習モデルは、時間変化予測値を推定する推定手段の例であり、着地ポート20の傾きや位置の時間変化予測値を推定可能な任意の推定手段を利用可能である。例えば、カルマンフィルター等の物理モデルに基づき予測する推定手段を用いてもよい。
【0061】
[UAV10及ぶ制御装置30の構成の変形例]
本実施形態では、制御装置30がUAV10の内部に配置される場合を例に説明した。制御装置30は、UAV10の外部に配置してもよい。この場合、UAV10は、制御装置30との間で、所定の無線網や有線網を介して、着地ポート20の傾きや位置の時間変化予測値の推定要求や推定結果を送受信する。これにより、複数のUAV10に対する飛行制御を一元管理可能となる。
【0062】
[着地ポート20の変形例]
本実施形態では、着地ポート20が散乱体21、コーナリフレクタ構造を備える散乱体21を備える場合を例に説明した。これらの散乱体21は、着地ポート20の反射強度を高めるための手段であり、リファレンスとして利用することで着地面情報の検出性能を高める効果があるが、なくてもよい。
【0063】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、レーダを備えたUAV10と、UAV10が着地する着地ポート20と、UAV10の飛行を制御する制御装置30と、を備えた飛行制御システム1において、制御装置30は、レーダから照射され着地ポート20で反射された反射波の解析結果を基に、着地ポート20の変動の予測値を計算する推定部32と、着地ポート20の変動の予測値を用いて、UAV10の着地ポート20への着地を制御する制御部33と、を備えるので、UAV10の着地精度を向上可能となる。
【0064】
本実施形態によれば、推定部32は、ドップラーレーダ解析により解析された反射波の解析結果を基に、着地ポート20の位置又は傾きの時間変化の予測値を計算するので、UAV10の着地精度をより向上可能となる。
【0065】
本実施形態によれば、推定部32は、機械学習技術を用いて、着地ポート20の位置又は傾きの時間変化の予測値を計算するので、UAV10の着地精度をより向上可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、着地ポート20は、UAV10の着地面に散乱体21を備えるので、UAV10の着地精度をより向上可能となる。
【0067】
本実施形態によれば、散乱体21は、コーナリフレクタ構造を備えるので、UAV10の着地精度をより向上可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、レーダは、ミリ波帯のレーダであるので、UAV10の着地精度をより向上可能となる。
【0069】
以上、本実施形態によれば、視界不良状況を含む全ての天候下おいて、トラックの荷台、船の甲板、洋上浮遊ポート等の動く着地面への着地が可能となり、配送業や海洋環境観測分野等においてUAV10を活用可能となる。
【0070】
[その他]
本開示は、上記実施形態に限定されない。本開示は、本開示の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0071】
上記説明した 本実施形態の制御装置30は、例えば、図7に示すように、CPU901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。
【0072】
メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、制御装置30の各機能が実現される。
【0073】
制御装置30は、1つのコンピュータで実装されてもよい。制御装置30は、複数のコンピュータで実装されてもよい。推定装置13は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。
【0074】
制御装置30用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。制御装置30用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 飛行制御システム
10 UAV
11 ミリ波レーダ
12 計測装置
20 着地ポート
21 散乱体
30 制御装置
31 生成部
32 推定部
33 制御部
34 記憶部
901 CPU
902 メモリ
903 ストレージ
904 通信装置
905 入力装置
906 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7