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特開2024-116085有機電子素子用材料、有機電子素子、及び化合物
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  • 特開-有機電子素子用材料、有機電子素子、及び化合物 図1
  • 特開-有機電子素子用材料、有機電子素子、及び化合物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116085
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】有機電子素子用材料、有機電子素子、及び化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/34 20060101AFI20240820BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20240820BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240820BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240820BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240820BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240820BHJP
【FI】
C07D277/34 CSP
C07D417/14
H10K85/60
H10K50/15
H10K50/17
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015556
(22)【出願日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2023021531
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 壮史
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 澪奈
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA03
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107DD71
3K107DD78
4C063AA05
4C063BB01
4C063CC62
4C063CC92
4C063DD07
4C063DD12
4C063DD62
4C063EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子用材料などの提供。
【解決手段】下記式(1)で示される化合物を含む、有機電子素子用材料。

(式(1)中、XおよびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;YおよびYは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;ZおよびZは、各々独立に、C-R、または窒素原子を表す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物を含む、有機電子素子用材料。
【化1】
(式(1)中、
およびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびYは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびZは、各々独立に、C-R、または窒素原子を表す;
、R、R、RおよびRは、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
ニトロ基;
アミノ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表す;
前記アルキル基、前記芳香族炭化水素基、または前記複素芳香族基に置換されていてもよい置換基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ―ル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、ホルミル基、エステル基、アセチル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基である。)
【請求項2】
前記Xおよび前記Xが、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項3】
前記Xおよび前記Xが、酸素原子である、請求項2に記載の有機電子素子用材料。
【請求項4】
前記Yおよび前記Yが、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子である、請求項2または3に記載の有機電子素子用材料。
【請求項5】
前記Yおよび前記Yが、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子である、請求項4に記載の有機電子素子用材料。
【請求項6】
前記Yおよび前記Yが、硫黄原子である、請求項5に記載の有機電子素子用材料。
【請求項7】
前記Zおよび前記Zが、窒素原子である、請求項6に記載の有機電子素子用材料。
【請求項8】
前記Rおよび前記Rが、各々独立に、
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24のアリール基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基である;請求項7に記載の有機電子素子用材料。
【請求項9】
前記Rおよび前記Rが、各々独立に、
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;または
エチル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されていてもよい、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、またはピリミジル基;である請求項8に記載の有機電子素子用材料。
【請求項10】
光電変換素子用正孔輸送促進材である、請求項1~9のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
【請求項11】
第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む有機電子素子であって、前記有機層は、請求項1~9のいずれかに記載の有機電子素子用材料を含有する、有機電子素子。
【請求項12】
下記式(2)で示されるヘテロ環状化合物:
【化2】
式(2)中、
およびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびYは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
、およびRは、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表し;
は、
シアノ基;
ニトロ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されているフェニル基;
置換されていてもよい炭素数10~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表す;
前記アルキル基、前記芳香族炭化水素基、または前記複素芳香族基に置換されていてもよい置換基、または前記フェニル基に置換されている置換基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ―ル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、ホルミル基、エステル基、アセチル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基である。)
【請求項13】
前記Xおよび前記Xが、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子である、請求項12に記載のヘテロ環状化合物。
【請求項14】
前記Xおよび前記Xが、酸素原子である、請求項13に記載のヘテロ環状化合物。
【請求項15】
前記Yおよび前記Yが、各々独立に、硫黄原子、またはセレン原子である、請求項14に記載のヘテロ環状化合物。
【請求項16】
前記Yおよび前記Yが、硫黄原子である、請求項15に記載のヘテロ環状化合物。
【請求項17】
前記Rおよび前記Rが、各々独立に、
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
ピリジル基;
ピリミジル基;または
エチル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されている、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、またはピリミジル基;である請求項16に記載の有機電子素子用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有するヘテロ環状化合物、該化合物を含む有機電子素子用材料、及び該有機電子素子用材料を用いた有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機物を用いた新しい高機能デバイスの創製が積極的に試みられており、特に光電変換素子、有機EL素子等の有機電子素子に関する研究開発が活発に行われ、デバイスの高性能化を目指した材料・デバイス設計が進められている。例えば、動画撮影用途に用いられる光電変換素子においては、受光層で生成したキャリア(電子および正孔)を電極に運ぶ速度が遅いと残像の原因になるという問題があった。有機EL素子においては、電極から発光層へキャリアを輸送する速度が遅いと、駆動電圧を上昇させるという問題があった。したがって、デバイスの高性能化のためには、素子内でのキャリアの高効率な移動が必要とされている。
【0003】
ところで、アミノ基で置換されたビチアゾリリデンジオン骨格を有する化合物が、知られている(非特許文献1及び2参照)。また、フェニル基で置換されたビチアゾリリデンジオン骨格を有する化合物が、知られている(非特許文献3参照)。しかし、これら化合物を有機電子素子へ用いることについては記載されていない。
他方で、有機電子素子の分野においては一層の性能向上が求められており、そのためにさらなる改良を必要としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H.-Z.Yang, H.-Z.Liu, Y.Wu, Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao, 1995, 16, 1405-1409.
【非特許文献2】M.K.Srivastava, R.K.Khare, H.Singh, Bull. Pol. Acad. Sci. Biol. Sci., 1996, 43, 113-120.
【非特許文献3】Okawara,Tadashi; Kashihara,Hiroshi; Furukawa,Mitsuru, Chemical&Pharmaceutical Bulletin, 1985, 33, 3479-3483.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子用材料、該有機電子素子用材料を用いた有機電子素子、及び、該有機電子素子用材料に好適に用いることができる特定の骨格構造を有する化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有するヘテロ環状化合物が、光電変換素子や有機EL素子の有機電子素子において正孔輸送能力を向上させ得ること、特に受光層を有する光電変換素子である有機電子素子において正孔輸送能力を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
[1] 下記式(1)で示される化合物を含む、有機電子素子用材料。
【化1】
(式(1)中、
およびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびYは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびZは、各々独立に、C-R、または窒素原子を表す;
、R、R、RおよびRは、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
ニトロ基;
アミノ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表す;
前記アルキル基、前記芳香族炭化水素基、または前記複素芳香族基に置換されていてもよい置換基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ―ル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、ホルミル基、エステル基、アセチル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基である。)
[2] 前記Xおよび前記Xが、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子である、[1]に記載の有機電子素子用材料。
[3] 前記Xおよび前記Xが、酸素原子である、[2]に記載の有機電子素子用材料。
[4] 前記Yおよび前記Yが、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子である、[2]または[3]に記載の有機電子素子用材料。
[5] 前記Yおよび前記Yが、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子である、[4]に記載の有機電子素子用材料。
[6] 前記Yおよび前記Yが、硫黄原子である、[5]に記載の有機電子素子用材料。
[7] 前記Zおよび前記Zが、窒素原子である、[6]に記載の有機電子素子用材料。
[8] 前記Rおよび前記Rが、各々独立に、
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24のアリール基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基である;[7]に記載の有機電子素子用材料。
[9] 前記Rおよび前記Rが、各々独立に、
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;または
エチル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されていてもよい、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、またはピリミジル基;である[8]に記載の有機電子素子用材料。
[10] 光電変換素子用正孔輸送促進材である、[1]~[9]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[11] 第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む有機電子素子であって、前記有機層は、[1]~[9]のいずれかに記載の有機電子素子用材料を含有する、有機電子素子。
[12] 下記式(2)で示されるヘテロ環状化合物:
【化2】
式(2)中、
およびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびYは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
、およびRは、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表し;
は、
シアノ基;
ニトロ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されているフェニル基;
置換されていてもよい炭素10~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表す;
前記アルキル基、前記芳香族炭化水素基、または前記複素芳香族基に置換されていてもよい置換基、または前記フェニル基に置換されている置換基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ―ル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、ホルミル基、エステル基、アセチル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基である。)
[13] 前記Xおよび前記Xが、各々独立に、酸素原子、または硫黄原子である、[12]に記載のヘテロ環状化合物。
[14] 前記Xおよび前記Xが、酸素原子である、[13]に記載のヘテロ環状化合物。
[15] 前記Yおよび前記Yが、各々独立に、硫黄原子、またはセレン原子である、[14]に記載のヘテロ環状化合物。
[16] 前記Yおよび前記Yが、硫黄原子である、[15]に記載のヘテロ環状化合物。
[17] 前記Rおよび前記Rが、各々独立に、
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
ピリジル基;
ピリミジル基;または
エチル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されている、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、またはピリミジル基;である[16]に記載の有機電子素子用材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子用材料、該有機電子素子用材料を用いた有機電子素子、及び、該有機電子素子用材料に好適に用いることができる特定の骨格構造を有する化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る有機EL素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(有機電子素子)
本発明の一実施形態は、光電変換素子や有機電界発光素子(有機EL素子)からなる有機電子素子を対象とし、該有機電子素子にビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有するヘテロ環状化合物を含有させることにより、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子を提供するものである。
また、本発明の一実施形態は、特に、受光層を有する光電変換素子である有機電子素子を対象とし、該有機電子素子にビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有するヘテロ環状化合物を含有させることにより、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子(光電変換素子)を提供するものである。
【0011】
本発明の有機電子素子は、光電変換素子および有機電界発光素子(有機EL素子)を含む。光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーや電気信号に変換する素子であり、撮像素子、光センサ、太陽電池等を含む。
【0012】
本発明の有機電子素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含む。
有機層は、下記式(1)で示されるビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有する化合物を含む有機電子素子用材料を含有する。有機電子素子用材料は、式(1)で示されるビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有する化合物自体であってもよい。
なお、式(1)で示されるビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有する化合物を含む有機電子素子用材料も本発明の対象である。
【0013】
【化3】
上記式(1)で示される化合物についての詳しい説明は、後述する。
有機層は、正孔輸送層、および上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料を含有する正孔輸送促進層を含むか、または、正孔輸送材料と前記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料とを混合してなる層を含む態様であることが好ましい。
ここで、正孔輸送層は正孔を輸送する役割を有し、正孔輸送材料を含有する。正孔輸送促進層は、第一の電極と正孔輸送層の間に配置され、正孔輸送と電極の間の正孔のやりとりをスムーズにする役割を有し、正孔輸送促進材料を含有する。
本発明では、上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料は、正孔輸送促進材料として用いられる。
【0014】
本発明の有機電子素子の好ましい実施態様として、光電変換素子が挙げられる。光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層および受光層を含む。
以下、有機電子素子の素子構成について、光電変換素子を例に説明する。
【0015】
<光電変換素子の構成>
本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含み、有機層は正孔輸送領域を含む。正孔輸送領域は、第一の電極と受光層との間の領域を指し、例えば正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含む。
本発明では、正孔輸送促進層に含有される正孔輸送促進材料として、上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料を用いることができる。
正孔輸送領域は、好ましくは第一の電極に隣接している。
光電変換素子は、他の層を含むことができる。他の層としては一般に光電変換素子に使用される層が挙げられる。例えば、受光層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、バッファ層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明に係る光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、および第二の電極がこの順で積層されているか、または第一の電極、正孔輸送層を形成する正孔輸送材料と上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料とが混合されてなる層、および第二の電極がこの順で積層されている。
また、光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。
【0017】
一形態において、本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、および第二の電極がこの順で積層されている。別の形態において、本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が介在していてもよい。
【0018】
光電変換素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光が入射してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、受光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、及び金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0019】
次に、有機電子素子が有機EL素子の場合についても説明する。
【0020】
<有機EL素子の構成>
本発明に係る有機EL素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含み、有機層は正孔輸送領域を含む。正孔輸送領域は、第一の電極と発光層との間の領域を指し、例えば正孔輸送層及び正孔輸送促進層を含む。
本発明では、正孔輸送促進層に含有される正孔輸送促進材料として、上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料を用いることができる。
正孔輸送領域は、好ましくは第一の電極に隣接している。
有機EL素子は、他の層を含むことができる。他の層としては一般に有機EL素子に使用される層が挙げられる。例えば、発光層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、バッファ層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明に係る有機EL素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、および第二の電極がこの順で積層されているか、または第一の電極、正孔輸送層を形成する正孔輸送材料と上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料とが混合されてなる層、および第二の電極がこの順で積層されている。
また、有機EL素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、また、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。
【0022】
一形態において、本発明に係る有機EL素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、および第二の電極がこの順で積層されている。別の形態において、本発明に係る有機EL素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が介在していてもよい。
【0023】
有機EL素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光を取り出してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0024】
次に、本発明の有機電子素子において、正孔輸送促進材料として有機層に含有される式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料について説明する。
【0025】
<有機電子素子用材料>
有機電子素子用材料は、下記式(1)で示される化合物を含む。有機電子素子用材料は、式(1)で示される化合物自体であってもよい。
【0026】
【化4】
【0027】
式(1)中、
およびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびYは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびZは、各々独立に、C-R、または窒素原子を表す;
、R、R、RおよびRは、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
ニトロ基;
アミノ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表す;
前記アルキル基、前記芳香族炭化水素基、または前記複素芳香族基に置換されていてもよい置換基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ―ル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、ホルミル基、エステル基、アセチル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基である。
【0028】
有機電子素子の性能向上に資する点で、XおよびXは、酸素原子、または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0029】
有機電子素子の性能向上に資する点で、YおよびYは、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子であることが好ましく、酸素原子、または硫黄原子であることがより好ましく、硫黄原子であることがさらに好ましい。
【0030】
有機電子素子の性能向上に資する点で、ZおよびZは、窒素原子であることが好ましい。
【0031】
およびRは、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基であることがより好ましい。
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24のアリール基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基。
【0032】
本明細書において、フルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。炭素数2~8のパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロプロパン-1-イル基、パーフルオロプロパン-2-イル基、パーフルオロヘキサン-1-イル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロヘプタン-1-イル基、パーフルオロオクタン-1-イル基、等が挙げられる。
【0033】
本明細書において、アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロブチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、n-オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、等が挙げられる。
【0034】
本明細書において、芳香族炭化水素基の炭素数は、6~24であってよく、好ましくは6~18である。
芳香族炭化水素基は、単環の芳香族炭化水素基、2環以上の芳香環が連結した芳香族炭化水素基、または、縮合環の芳香族炭化水素基であってよい。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、合成が容易な点で、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましく、材料の蒸着性がよい点でフェニル基が特に好ましい。
【0035】
本明細書において、複素芳香族基の核原子数は、3~17であってよく、5~17であってよく、好ましくは5~12である。複素芳香族基は、単環の複素芳香族基、2環以上の芳香環が連結した複素芳香族基、又は、縮合環の複素芳香族基であってよい。なお、複素芳香族基が複数の芳香環を有する場合、当該芳香環の少なくとも一つがヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含んでいればよい。複素芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピラジル基、ピリミジル基、1,3,5-トリアジル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられ、合成が容易な点で、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、キノリル基、ピラジル基、ピリミジル基、1,3,5-トリアジル基が好ましく、有機電子素子の性能向上に資する点で、ピリジル基が特に好ましい。
【0036】
また、RおよびRは、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基であることがさらに好ましい。
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;または
エチル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されていてもよい、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピリジル基、またはピリミジル基。
【0037】
式(1)で示される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明の化合物はこれらに限定されない。式(1)で示される化合物としては、下記式(A-1)~(A-212)で示される化合物を例示することができる。中でも、(A-1)、(A-9)、(A-10)、(A-13)、(A-24)、(A-25)、(A-26)、(A-29)~(A-35)、(A-42)~(A-45)、(A-61)~(A-66)、(A-71)、(A-117)、(A-120)~(A-122)、(A-133)~(A-135)、(A-139)、(A-140)、(A-144)で表される化合物がより好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
【化7】
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
【化14】
【0048】
【化15】
【0049】
【化16】
【0050】
【化17】
【0051】
【化18】
【0052】
【化19】
【0053】
【化20】
【0054】
【化21】
【0055】
【化22】
【0056】
【化23】
【0057】
【化24】
【0058】
【化25】
【0059】
[製造方法]
本実施形態の上記式(1)で示される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、式(1)で示される化合物は、チオアミドとジクロロアセチルクロリドの縮合反応により製造することができる。
【0060】
<<式(1)で示される化合物の作用効果>>
式(1)で示される化合物は、下記式(1A)で表されるビチアゾリリデンジオン骨格、あるいはそれに類する骨格を有しており、この強いアクセプター骨格により、正孔輸送材料のHOMO軌道との強い相互作用が期待される。つまり、有機電子素子(例えば、光電変換素子)中の層(例えば、正孔輸送促進層)が式(1)で示される化合物を含有することにより、隣接する正孔輸送層のHOMO軌道との相互作用が高まり、正孔輸送層と正孔輸送促進層の間のキャリア授受が促進されることが期待される。このように、式(1)で示される化合物は、深いLUMO準位を有するため、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りがスムーズになることが期待される。
【0061】
【化26】
【0062】
また、式(1)で示される化合物のR及びRが電子求引性基を有することにより、更に深いLUMO基準を有し、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りがよりスムーズになることが期待される。
さらにまた、式(1)で示される化合物は、上記ビチアゾリリデンジオン骨格を有しているため、熱安定性や高い還元耐性等も期待できる。
【0063】
本発明者らは、上述のように、式(1)で示される化合物に、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りをスムーズにする正孔輸送促進材料として有効に使用し得ることを見出した。そして、実際に有機電子素子(例えば、光電変換素子)において、式(1)で示される化合物(正孔輸送促進材料)を正孔輸送材料と組み合わせた際にその正孔輸送能力が促進されることを確認した。すなわち、有機電子素子において、受光層内で発生したキャリアを電極側に取り出す際のエネルギー障壁を、式(1)で示される化合物によって低減し得ることを確認した。
【0064】
<実施形態>
本発明の有機電子素子(例えば、光電変換素子)の積層構成として、例えば下記(i)または下記(ii)の構成が挙げられる。
(i):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/第二の電極
(ii):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/電子輸送層/第二の電極
尚、有機電子素子が例えば有機EL素子である場合には、上記(i)または上記(ii)の構成において、「受光層」を「発光層」に読み替えることができる。
【0065】
以下、本発明に係る光電変換素子および有機EL素子を、上記(ii)の構成を例に挙げて、図1および図2を参照しながら更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図であり、図2は本発明に係る有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【0066】
<<第1の実施形態>>
第1の実施形態による光電変換素子は、図1に示す積層構成を備えた有機撮像素子または光センサである。
光電変換素子1は、第一の電極11(第一の電極)、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16(第二の電極)をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0067】
図1に示す光電変換素子1では、透明である第一の電極11の上方から、光が入射し、受光層14で受光する。なお、図1では便宜上受光層14の側面から光が入射するように示されている。また、光電変換素子1は、受光層14で光電変換により発生した電荷(正孔および電子)のうち、正孔を第一の電極11に移動させ、電子を第二の電極16に移動させるように、電圧が印加される。すなわち、第一の電極11を正孔捕集電極とし、第二の電極16を電子捕集電極としている。なお、図1では、第一の電極11の上面に設けられた基板が省略されている。ここでの基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板等が挙げられる。また、基板側から光が入射する構成の場合、基板は光の波長に対して透明である。以下では、上記各層について説明する。
【0068】
[第一の電極11]
基板上には第一の電極11または第二の電極16が設けられている。
光が第一の電極11を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極は当該光を通すかまたは実質的に通す透明材料で形成される。ここで、「光を通す」とは平均透過率が80%以上であることいい、「実質的に通す」とは平均透過率が50%以上であるこという。すなわち、本明細書において、「透明」とは平均透過率が50%以上であることを意味する。
【0069】
第一の電極11または第二の電極16に用いられる透明材料としては、特に限定されないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物等が挙げられる。
【0070】
なお、第二の電極16側のみから光が受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極11の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の第一の電極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
【0071】
[正孔輸送促進層12]
第一の電極11と後述する正孔輸送層13との間には、正孔輸送促進層12が設けられている。正孔輸送促進層12は、正孔輸送層13から第一の電極11への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層12は、前述の式(1)で示される化合物を含有する。また、式(1)で示される化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層12に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられ、後述の正孔輸送層13に用いる化合物等が挙げられる。
【0072】
[正孔輸送層13]
正孔輸送促進層12と受光層14との間には、正孔輸送層13が設けられている。
正孔輸送層13は、受光層14で発生した正孔を受光層14から第一の電極11へ輸送する役割と、受光層14で発生した電子が第一の電極11側へ移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第一の電極11からの電子注入をブロックする役割を有することもある。
【0073】
正孔輸送層13は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層13に含有させることができる正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよい。公知の正孔輸送材料としては、芳香族第三級アミン化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、テトラセン化合物、ペンタセン化合物、フェナントレン化合物、ピレン化合物、ペリレン化合物、フルオレン化合物、カルバゾール化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピセン化合物、チオフェン化合物、ベンゾトリフラン化合物、ベンゾトリチオフェン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾジチオフェン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が挙げられる。
これらの中でも、フルオレン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が好ましく、特にフルオレン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物が好ましい。
【0074】
[受光層14]
正孔輸送層13と後述する電子輸送層15との間には、受光層14が設けられている。
受光層14の材料としては、光電変換機能を有する材料が挙げられる。
【0075】
受光層14は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
中でも、光電変換効率を高める為には、受光層は、少なくとも二種の材料(有機成分)を含有する層からなることが好ましい。
【0076】
一種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体等が挙げられる。
二種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体と、(ii)フラーレンおよびその誘導体、その他アクセプター材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層4の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成しても良いし、任意の割合で共蒸着することで形成しても良い。
三種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体、(ii)フラーレンおよびその誘導体、その他アクセプター材料、および(iii)正孔輸送材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層14の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成しても良いし、任意の割合で共蒸着することで形成しても良い。
【0077】
(i)クマリン誘導体の具体例としては、クマリン6、クマリン30が挙げられる。キナクリドン誘導体の具体例としては、N,N-ジメチルキナクリドンが挙げられる。フタロシアニン誘導体の具体例としては、ホウ素サブフタロシアニンクロリド、ホウ素サブナフタロシアニンクロリド(SubNC)が挙げられる。
(ii)フラーレンおよびその誘導体の具体例としては、[60]フラーレン、[70]フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)が挙げられる。
(iii)正孔輸送材料の好ましい化合物および具体例としては、前述の正孔輸送層13で用いるものと同じものが挙げられる。
【0078】
また、光電変換機能を有する材料は受光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、光電変換機能を有する材料は、受光層14に隣接した層(正孔輸送層13、または電子輸送層15)が含有していてもよい。
【0079】
[電子輸送層15]
受光層14と後述する第二の電極16との間には、電子輸送層15が設けられている。
電子輸送層15は、受光層14で発生した電子を第二の電極16へ輸送する役割と、電子輸送先の第二の電極16から受光層14に正孔が移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第二の電極16からの正孔注入をブロックする役割を有することもある。
【0080】
また、電子輸送層15に含有させることができる電子輸送材料は、公知の電子輸送材料であってよく、電子輸送材料としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、トリアジン誘導体、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン、N,N’-ジフェニル-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、およびN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0081】
電子輸送層15は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0082】
[第二の電極16]
電子輸送層15上には第二の電極16が設けられている。
第二の電極16の材料としては、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、金、白金、希土類金属、酸化モリブデン等が挙げられる。尚、前記第一の電極11と第二の電極16は同一であっても相異なっていてもよい。
【0083】
[各層の形成方法]
以上説明した第一の電極11、第二の電極16を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂等の材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0084】
第一の電極11および第二の電極16は、電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0085】
第一の電極11および第二の電極16の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0086】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0087】
本実施形態の光電変換素子を備えた撮像素子は、例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラの撮像素子、および携帯電話等に内蔵された撮像素子に適用することができる。光センサは、例えば、テレビのリモコンやエアコンのスイッチ、自動ドアの開閉等に適用することができる。
【0088】
<<第2の実施形態>>
本発明の第2の実施形態による光電変換素子は、図1に示す積層構成を備えた太陽電池である。太陽電池1は、第一の電極11と受光層14との間に正孔輸送促進層12および正孔輸送層13が設けられており、第二の電極16と受光層14との間には電子輸送層15が設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0089】
[第一の電極11]
第一の電極11は、例えば透明材料からなり、透明材料は第1の実施形態における透明材料を用いることができる。第一の電極11は任意の基材(例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム等の透明基板)上に形成されていてもよい。
【0090】
[正孔輸送促進層12]
正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における正孔輸送促進層12の材料(式(1)で示される化合物)と同じである。正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における材料以外に従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0091】
[正孔輸送層13]
正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送層13の材料と同じである。正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送材料以外に、従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0092】
[受光層14]
受光層14の材料は、電子供与材料および電子受容材料を用いたものであればよく、電子供与材料と電子受容材料とが平面同士で結合された平面結合型でも、電子供与材料と電子受容材料とが混合して成膜されたバルクヘテロ結合型でもよい。
電子供与材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子供与材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の高分子化合物およびそれらの共重合体、あるいはフタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ペンタセン等のアセン誘導体、ジアミン誘導体等の低分子化合物等が挙げられる。電子供与材料は、本発明の効果を損なわない範囲において有機半導体とともに無機半導体を用いることもできる。
電子受容材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子受容材料としては、例えば、フラーレン誘導体、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられる。
【0093】
[電子輸送層15]
電子輸送層15の材料は、第1の実施形態における電子輸送材料を用いることができる。また、電子輸送材料としてフッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、フッ化カルシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化合物、炭酸セシウム等の炭酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系n型半導体を用いてもよい。
【0094】
[第二の電極16]
第二の電極16は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛等の金属、またはこれらの合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0096】
[各層の形成方法]
各層の形成方法は特に限定されず、例えば基板上に、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、パターン転写法等を用いて第一の電極11、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16を順次積層してもよいし、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、および電子輸送層15を積層した後、この積層体に第一の電極11および第二の電極16をそれぞれ転写、蒸着、スパッタリング等によって形成してもよい。
【0097】
<<第3の実施形態>>
本発明の第3の実施形態による有機電子素子は、図2に示す積層構成を備えた有機EL素子である。すなわち、有機EL素子2は、第一の電極21、正孔輸送促進層22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、および第二の電極26がこの順で設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0098】
[第一の電極21]
第一の電極21は、正孔を正孔輸送層から発光層へ注入する役割を有する。第一の電極21としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、銀、白金、銅等の透明電極、アルミ、モリブデン、クロム、ニッケル等の金属や合金、高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0099】
有機電子素子は、第一の電極21および第二の電極26のいずれの側の面を発光させてもよいし、両面を発光させてもよい。光を取り出す側の電極は、ITO、IZO等の透明材料で形成される。なお、図2では便宜上発光層24の側面から光を放出するように示されている。
【0100】
[正孔輸送促進層22]
第一の電極21と後述する正孔輸送層23との間には、正孔輸送促進層22が設けられている。正孔輸送促進層22は、第一の電極21から正孔輸送層23への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層22は正孔輸送促進材料として、前述の式(1)で示される化合物を含有する。正孔輸送促進層22は上記式(1)で示される化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層22に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられる。
【0101】
[正孔輸送層23]
正孔輸送促進層22と発光層24との間には、正孔輸送層23が設けられている。
正孔輸送層23は、第一の電極21から注入された正孔を発光層24へ輸送する役割を有する。
正孔輸送層23は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層23に含有させることができる正孔輸送材料は、第1の実施形態における正孔輸送層13の材料と同じでよい。
【0102】
[発光層24]
発光層24は、第一の電極21から注入された正孔と第二の電極26から注入された電子が再結合し、発光(燐光または蛍光)を生じさせる役割を有し、発光材料と必要に応じて発光ホスト材料を含む。発光材料および発光ホスト材料は、公知のものから適宜選択することができる。発光材料および発光ホスト材料としては、例えば、トリアジン誘導体(カルバゾール等が置換されたTADF材料を含む)、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ルブレン誘導体、デカシクレン誘導体等の炭素縮合環系色素;ペリレンジイミド等のペリレン誘導体、ローダミンB等のキサンテン系色素、シアニン系色素、クマリン6やC545T等のクマリン系色素、Qd4やDEQ等のキナクリドン系色素、スクアリウム系色素、スチリル系色素、ピラゾロン誘導体、NileRed等のフェノキサゾン系色素、カルバゾール、トリアリールアミン、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、トリス[2-フェニル-4-(2-エチルシクロヘキシルオキシ)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(ehppy)3)等のイリジウム錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、Al、Zn、BeまたはTb、Eu、Dy等の希土類金属からなる中心金属、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等の配位子から構成される金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
[電子輸送層25]
電子輸送層25は、第二の電極と発光層との間に設けられ、第二の電極から注入された電子を発光層へ輸送する機能を有し、電子輸送材料を含む。電子輸送材料としては、例えば、トリアジン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、1,4,4’-bis(2,2’-diphenylvinyl)-1,1’-bipheny(DPVBi)、(2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
[第二の電極26]
第二の電極26は、電子を電子輸送層25から発光層24へ注入する役割を有する。第二の電極26としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、セシウム添加ITO等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0105】
[各層の形成方法]
有機EL素子2の各層の形成方法は、例えば、まず適当な透光性基板(図示せず)上に第一の電極21の材料からなる薄膜を蒸着、スパッタリング等の方法により形成する。第一の電極21上に正孔輸送促進層22および正孔輸送層23をこの順に成膜する。正孔輸送促進層22および正孔輸送層23の成膜は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができる。次に、正孔輸送層23の上に発光層24を設ける。発光層24の形成も所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により有機発光材料を薄膜化することにより形成することができる。次に、発光層24の上に電子輸送層25を形成する。電子輸送層25は、正孔輸送層、発光層と同様の方法により形成することができる。最後に電子輸送層25の上に第二の電極26を積層する。第二の電極26は所望の金属材料を蒸着法、スパッタリング等の方法により形成することができる。有機EL素子の各層の形成方法は上記方法に限定されない。例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、材料を溶媒に溶解した溶液を使用したディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0106】
本発明の有機電子素子(光電変換素子、有機EL素子等)、および該素子を形成する各層の形成方法は、上述の実施形態に示した素子および方法に限定されない。例えば、第一の電極、受光層(または発光層)、電子輸送層、第二の電極の材料は公知の他の材料と適宜置き換えることができる。また、正孔輸送促進層および正孔輸送層は、式(1)で示される化合物と正孔輸送材料を混合して形成された層に置き換えることもできる。
【0107】
(有機電子素子に使用し得る化合物)
本発明は、有機電子素子に用いられる正孔の輸送能力を向上させることができる新規なヘテロ環状の化合物を提供するものである。
有機電子素子に使用し得る本発明の新規なヘテロ環状化合物(ビチアゾリリデンジオン骨格またはそれに類する特定の骨格構造を有する化合物)は、下記式(2)で示される。なお、式(2)で示される化合物は、式(1)で示される化合物の一実施形態である。
【0108】
【化27】
【0109】
式(2)中、
およびXは、各々独立に、N-R、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
およびYは、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表し;
、およびRは、各々独立に、
水素原子;
シアノ基;
ニトロ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されていてもよい炭素6~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表し;
は、
シアノ基;
ニトロ基;
ヒドロキシル基;
チオ―ル基;
ホルミル基;
カルボキシル基;
メチルカルボニル基;
トリフルオロメチルカルボニル基;
フェニルカルボニル基;
パーフルオロフェニルカルボニル基;
クロロ基;
ブロモ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
トリフルオロメトキシ基;
炭素数2~8のパーフルオロアルキル基;
炭素数2~8のパーフルオロアルコキシ基;
炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;
置換されていてもよい炭素数1~18のアルキル基;
置換されているフェニル基;
置換されていてもよい炭素10~24の芳香族炭化水素基;または
置換されていてもよい炭素数3~17の複素芳香族基を表す;
前記アルキル基、前記芳香族炭化水素基、または前記複素芳香族基に置換されていてもよい置換基、または前記フェニル基に置換されている置換基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ―ル基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、フリル基、チエニル基、ホルミル基、エステル基、アセチル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基である。
【0110】
式(2)で示される化合物は、式(1)で示される化合物の一実施形態である。
式(2)で示される化合物の好ましい具体例としては、例えば、式(1)の具体例として挙げた化合物例のうち式(2)の条件を満足する化合物が挙げられる。
式(2)の合成法は、前記(1)の合成法と同様な手法にて合成することができる。
【0111】
有機電子素子の性能向上に資する点で、XおよびXは、酸素原子、または硫黄原子であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0112】
有機電子素子の性能向上に資する点で、YおよびYは、硫黄原子、またはセレン原子であることが好ましく、硫黄原子であることがより好ましい。
【0113】
およびRは、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基であることがさらに好ましい。
シアノ基;
フルオロ基;
トリフルオロメチル基;
ピリジル基;
ピリミジル基;または
エチル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、およびアミド基の群から選択される基、またはこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されている、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、またはピリミジル基。
【実施例0114】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
【0115】
なお、H-NMRの測定には、JNM-ECS400(400MHz;日本電子製)を用いた。H-NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
【0116】
(合成実施例1:化合物(A-37)の合成)
【化28】
【0117】
【化29】
【0118】
3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル2.38g(9.95mmol)、水硫化ナトリウム1.63g(20.4mmol)、塩化マグネシウム6水和物2.12g(10.4mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド15mLを室温で9時間撹拌した。その後、反応液に水、酢酸エチルを添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出し、水および飽和食塩水で有機層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を留去し、得られた固体を乾燥させたところ橙色固体(A-37a)を2.51g得た。得られた化合物(A-37a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.23(br,1H),7.72(br,1H),8.01(s,1H),8.29(s,2H)
化合物(A-37a)552mg(2.02mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液4mLを添加した。混合液にジクロロアセチルクロリド0.20mL(2.10mmol)を滴下し、反応液を室温で10時間撹拌した。次いで、炭酸水素ナトリウム339mg(4.03mmol)を加え、さらに16時間撹拌した。その後、ジクロロメタンを留去し、メタノールを添加した。析出した固体をろ過し、水、メタノールで洗浄した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製したところ黄色固体(A-37)を171mg得た。得られた化合物(A-37)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.26(s,2H),8.71(s,4H)
【0119】
(合成実施例2:化合物(A-44)の合成)
【化30】
【0120】
【化31】
【0121】
2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンズアミド500mg(2.37mmol)、ローソン試薬574mg(1.42mmol)をトルエン6mLに溶解させ、窒素雰囲気下、還流(120℃)下で16時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、沈殿物をろ別し、ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製したところ、黄色固体(A-44a)を335mg得た。得られた化合物(A-44a)の同定は、EI-MSにより行った。
質量分析(EI-MS):227(M+)
化合物(A-44a)335mg(1.47mmol)をジクロロメタン18mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3.5mLを添加した。混合液にジクロロアセチルクロリド0.15mL(1.62mmol)を滴下した。反応液を室温で18時間撹拌した後、炭酸水素ナトリウム246mg(2.94mmol)を加えた。さらに28時間撹拌した後、混合物に水およびクロロホルムを加えた。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、得られた残渣をメタノールに分散させ、固体をろ過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製したところ、橙色固体(A-44)を175mg得た。得られた化合物(A-44)の同定は、EI-MSおよび19F-NMRにより行った。
質量分析(EI-MS):530(M+)
19F-NMR(CDCl)δ(ppm):131.5,141.6,158.0
【0122】
(合成実施例3:化合物(A-36)の合成)
【化32】
【0123】
【化33】
【0124】
4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル948mg(5.54mmol)、水硫化ナトリウム844mg(10.5mmol)、塩化マグネシウム6水和物1.08g(5.32mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド10mLを室温で3時間撹拌した。その後、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。残渣を1N塩酸に分散させた。固体をろ別し、水で洗浄後、乾燥させたところ、淡黄色固体(A-36a)を920mg得た。得られた化合物(A-36a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.20(br,1H),7.68(d,J=7.8Hz,2H),7.70(br,1H),7.96(d,J=7.8Hz,2H)
化合物(A-36a)206mg(1.00mmol)をジクロロメタン10mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1.7mLを加えた。混合液にジクロロアセチルクロリド0.10mL(1.05mmol)を滴下した。反応液を室温で12時間撹拌した後、炭酸水素ナトリウム170mg(2.02mmol)を添加した。さらに67時間撹拌した後、懸濁液に水を加え、固体をろ過し、水、メタノールで洗浄した。得られた固体をクロロホルムに分散させ、再度ろ過し、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を乾燥させたところ橙色固体(A-36)を112mg得た。得られた化合物(A-36)の同定は、EI-MSにより行った。
質量分析(EI-MS):486(M+)
【0125】
(合成実施例4:化合物(A-40)の合成)
【化34】
【0126】
【化35】
【0127】
4-ブロモベンゾニトリル912mg(5.01mmol)、水硫化ナトリウム819mg(10.2mmol)、塩化マグネシウム6水和物1.05g(5.16mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド10mLを室温で3時間撹拌した。次いで、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。得られた固体を1N塩酸に分散させた。固体をろ過後、水で洗浄し、乾燥させたところ、黄色固体(A-40a)を972mg得た。得られた化合物(A-40a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.14(br,1H),7.55(d,J=8.7Hz,2H),7.58(br,1H),7.75(d,J=8.7Hz,2H)
化合物(A-40a)216mg(1.00mmol)をジクロロメタン10mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1.7mLを加えた。混合液にジクロロアセチルクロリド0.10mL(1.05mmol)を滴下し、反応液を室温で12時間撹拌した。次いで、炭酸水素ナトリウム168mg(2.00mmol)を添加し、懸濁液を25時間撹拌した。混合物に水を加え、固体をろ過し、水、メタノールで洗浄した。得られた固体をクロロホルムに分散させ、ろ過し、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を乾燥させたところ褐色固体(A-40)を160mg得た。得られた化合物(A-40)の同定は、EI-MSにより行った。
質量分析(EI-MS):508(M+)
【0128】
(合成実施例5:化合物(A-28)の合成)
【化36】
【0129】
【化37】
【0130】
4-tert-ブチルベンゾニトリル799mg(5.02mmol)、水硫化ナトリウム818mg(10.2mmol)、塩化マグネシウム6水和物1.03g(5.04mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド10mLを室温で12時間撹拌した。その後、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。得られた固体を1N塩酸に分散させ、再度、固体をろ別し、水、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を乾燥させたところ、淡黄色固体(A-28a)を640mg得た。得られた化合物(A-28a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):1.33(s,9H),7.16(br,1H),7.43(d,J=8.9Hz,2H),7.56(br,1H),7.83(d,J=8.9Hz,2H)
化合物(A-28a)194mg(1.00mmol)をジクロロメタン10mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1.7mLを添加した。続いて、混合液にジクロロアセチルクロリド0.10mL(1.05mmol)を滴下した。反応液を室温で10時間撹拌した後、炭酸水素ナトリウム168mg(2.00mmol)を加え、さらに24時間撹拌した。その後、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水、メタノールで洗浄した。得られた固体をクロロホルム/メタノールから再結晶することにより、橙色固体(A-28)を64mg得た。得られた化合物(A-28)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):1.39(s,18H),7.62(d,J=8.7Hz,4H),8.23(d,J=8.7Hz,4H)
【0131】
(合成実施例6:化合物(A-115)の合成)
【化38】
【0132】
【化39】
【0133】
5-ヘキシルチオフェン-2-カルボニトリル2.26g(11.7mmol)、水硫化ナトリウム1.87g(23.4mmol)、塩化マグネシウム6水和物2.40g(11.8mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド20mLを室温で54時間撹拌した。混合液に水、酢酸エチルを加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル 2/1)で精製したところ黄色固体(A-115a)を2.31g得た。得られた化合物(A-115a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=6.4Hz,3H),1.28-1.40(m,6H),1.68(q,J=7.2Hz,2H),2.80(t,J=7.6Hz,2H),6.78(d,J=4.0Hz,1H),6.96(br,1H),7.14(br,1H),7.35(d,J=4.0Hz,1H)
化合物(A-115a)459mg(2.02mmol)をジクロロメタン15mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3.4mLを加えた。混合液にジクロロアセチルクロリド0.21mL(2.18mmol)を滴下した。反応液を室温で10時間撹拌した後、炭酸水素ナトリウム340mg(4.04mmol)を加えた。さらに24時間撹拌した後、反応液に水を加えた。懸濁液をろ過し、固体を水、メタノールで洗浄した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製したところ、橙色固体(A-115)を156mg得た。得られた化合物(A-115)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(t,J=6.9Hz,6H),1.30-1.34(m,8H),1.36-1.44(m,4H),1.74(q,J=7.6Hz,4H),2.95(t,J=7.6Hz,4H),7.04(d,J=4.1Hz,2H),8.00(d,J=4.1Hz,2H)
【0134】
(合成実施例7:化合物(A-71)の合成)
【化40】
【0135】
【化41】
【0136】
5-シアノ-2-(トリフルオロメチル)ピリジン309mg(1.80mmol)、水硫化ナトリウム279mg(3.48mmol)、塩化マグネシウム6水和物356mg(1.75mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド3.0mLを加え、室温で12時間撹拌した。その後、反応液に水、酢酸エチルを添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出し、水および飽和食塩水で有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル 4/1)で精製したところ黄色固体(A-71a)を346mg得た。得られた化合物(A-71a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.22(br,1H),7.72(br,1H),7.75(d,J=8.2Hz,1H),8.39(dd,J=8.2,1.8Hz,1H),9.08(d,J=1.8Hz,1H)
窒素雰囲気下、化合物(A-71a)100mg(0.485mmol)、炭酸水素ナトリウム125mg(1.49mmol)に脱水アセトニトリル2.5mLを加えた。続いて、混合液にジクロロアセチルクロリド55.0μL(0.571mmol)を滴下した。室温で9時間撹拌した後、反応液に水を加えた。析出した固体をろ過し、水、メタノール、ジクロロメタン、アセトンで洗浄したところ暗橙色固体(A-71)を17mg得た。得られた化合物(A-71)の同定は、EI-MSにより行った。
質量分析(EI-MS):488(M+)
【0137】
(合成実施例8:化合物(A-139)の合成)
【化42】
【0138】
【化43】
【0139】
4-ブロモフタル酸無水物2.36g(10.4mmol)、3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリン2.39g(10.4mmol)に酢酸10mLを加え、加熱還流条件下で22時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した固体をろ過し、水、メタノールで洗浄したところ白色固体(A-139a)を3.94g得た。得られた化合物(A-139a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.87(d,J=7.8Hz,1H),7.92(s,1H),8.00(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),8.02(s,2H),8.14(d,J=1.4Hz,1H)。
化合物(A-139a)1.50g(3.42mmol)、ヨウ化カリウム568mg(3.42mmol)、シアン化銅613mg(6.84mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド7.7mLを150℃で53時間撹拌した。その後、溶媒を留去し、得られた残渣にジクロロメタン、水を加え、不溶物をセライトろ過により除去した。水層をジクロロメタンで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を留去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製したところ白色固体(A-139b)を832mg得た。得られた化合物(A-139b)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.95(s,1H),8.03(s,2H),8.14-8.18(m,2H),8.29(t,J=1.1Hz,1H)
化合物(A-139b)448mg(1.16mmol)、水硫化ナトリウム187mg(2.33mmol)、塩化マグネシウム6水和物235mg(1.16mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド2.5mLを室温で19時間撹拌した。次いで、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。得られた固体を1N塩酸に分散させた。固体をろ過後、酢酸エチルに溶解させ、無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル 5/1)で精製したところ黄色固体(A-139c)を323mg得た。得られた化合物(A-139c)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.30(br,1H),7.78(br,1H),7.93(s,1H),8.03-8.05(m,3H),8.36(dd,J=7.8,1.4Hz,1H),8.38-8.39(m,1H)
窒素雰囲気下、化合物(A-139c)323mg(0.772mmol)、炭酸水素ナトリウム194mg(2.31mmol)に脱水アセトニトリル5.0mLを加えた。次いで、反応溶液にジクロロアセチルクロリド88.0μL(0.914mmol)を0℃で滴下した。室温で33時間撹拌した後、溶媒を留去した。得られた固体に炭酸水素ナトリウム194mg(2.31mmol)、脱水アセトニトリル5.0mLを加え、窒素雰囲気下、室温で18時間撹拌した。その後、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水、メタノール、アセトニトリル、クロロホルム、酢酸エチルで洗浄することで橙色固体(A-139)を91mg得た。得られた化合物(A-139)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.97(s,2H),8.07(s,4H),8.28(d,J=8.7Hz,2H),8.77(dd,J=7.8,1.4Hz,2H),8.87-8.88(m,2H)
【0140】
(合成実施例9:化合物(A-205)の合成)
【化44】
【0141】
【化45】
【0142】
4-ブロモフタル酸無水物2.27g(10.0mmol)、4-ヘキシルアニリン1.77g(10.0mmol)に酢酸10mLを加え、加熱還流条件下で19時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した固体をろ過し、水、メタノールで洗浄したところ白色固体(A-205a)を3.59g得た。得られた化合物(A-205a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):0.89(t,J=6.9Hz,3H),1.29-1.38(m,6H),1.60-1.67(m,2H),2.65(t,J=7.8Hz,2H),7.31(s,4H),7.82(d,J=7.8Hz,1H),7.93(dd,J=7.8,1.8Hz,1H),8.09(d,J=1.8.Hz,1H)。
化合物(A-205a)1.50g(3.88mmol)、ヨウ化カリウム644mg(3.88mmol)、シアン化銅694mg(7.76mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド8.7mLを150℃で17時間撹拌した。その後、反応液に水、クロロホルムを加え、不溶物をセライトろ過により除去した。ろ液を濃縮しクロロホルムを留去後、ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を加え、有機層を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を留去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製したところ黄色固体(A-205b)を814mg得た。得られた化合物(B-b)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(t,J=6.9Hz,3H),1.27-1.40(m,6H),1.60-1.68(m,2H),2.66(t,J=7.8Hz,2H),7.30-7.35(m,4H),8.09(d,J=1.2Hz,2H),8.23(t,J=1.2Hz,1H)
化合物(A-205b)814mg(2.45mmol)、水硫化ナトリウム392mg(4.90mmol)、塩化マグネシウム6水和物498mg(2.45mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド9.9mLを加え、室温で37時間撹拌した。次いで、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。得られた固体を1N塩酸に分散させた。固体をろ過後、酢酸エチルに溶解させ、無水硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル 5/1)で精製したところ黄色固体(A-205c)を573mg得た。得られた化合物(A-205c)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):0.90(t,J=6.9Hz,3H),1.25-1.38(m,6H),1.60-1.68(m,2H),2.66(t,J=7.8Hz,2H),7.22(br,1H),7.32(s,4H),7.73(br,1H),7.98-8.00(m,1H),8.32-8.35(m,2H)
窒素雰囲気下、化合物(A-205c)125mg(0.341mmol)、炭酸水素ナトリウム85mg(1.01mmol)に脱水アセトニトリル2.5mLを加えた。次いで、反応溶液にジクロロアセチルクロリド60mg(0.407mmol)を0℃で滴下した。室温で21時間撹拌した後、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルムで洗浄することで暗赤色固体(A-205)を30mg得た。得られた化合物(A-205)の同定は、EI-MSにより行った。
質量分析(EI-MS):808(M+)
【0143】
(合成実施例10:化合物(A-206)の合成)
【化46】
【0144】
【化47】
【0145】
3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル568mg(3.30mmol)、水硫化ナトリウム506mg(6.30mmol)、塩化マグネシウム6水和物650mg(3.20mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド6.0mLを室温で3時間撹拌した。その後、反応液に水を加え、析出した固体をろ過し、水で洗浄した。残渣を1N塩酸に分散させた。固体をろ別し、水で洗浄後、乾燥させたところ、淡黄色固体(A-206a)を450mg得た。得られた化合物(A-206a)の同定は、H-NMRにより行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):7.05-7.83(brs,2H),7.56(dd,J=8.0,8.0Hz,1H),7.77(d,J=8.0Hz,1H),8.06(d,J=8.0Hz,1H),8.11(s,1H)。
化合物(A-206a)206mg(1.00mmol)をジクロロメタン10mLに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1.7mLを加えた。混合液にジクロロアセチルクロリド0.10mL(1.05mmol)を滴下した。反応液を室温で12時間撹拌した後、炭酸水素ナトリウム170mg(2.02mmol)を添加した。さらに24時間撹拌した後、懸濁液に水を加え、固体をろ過し、水、メタノールで洗浄した。得られた固体をクロロホルムに分散させ、再度ろ過し、クロロホルムで洗浄した。得られた固体を乾燥させたところ橙色固体(A-206)を112mg得た。得られた化合物(A-206)の同定は、EI-MSにより行った。
質量分析(EI-MS):486(M+)
【0146】
[評価に用いた化合物]
【化48】
【0147】
<ホールオンリーデバイス(HOD)の作製1および評価1>
[素子実施例1]
第一の電極/第一の正孔注入層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/第二の電極からなる構造を有するホールオンリーデバイスを作製し、該デバイスの正孔輸送特性を評価した。
(第一の電極)
第一の電極をその表面に備えた基板として、ITO膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意し、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0148】
(真空蒸着の準備)
上記表面処理が施された基板の2面のうち、ITO膜が形成されている側の面上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0149】
(第一の正孔注入層の作製)
ITO膜にMoOを1nm製膜し、正孔注入層を作製した。
(正孔輸送層の作製)
正孔輸送材料として(HTL-1)を100nm成膜し、正孔輸送層を作製した。尚、(HTL-1)は特開2018-193371に記載の方法で合成した。
(正孔輸送促進層の作製)
昇華精製した化合物(A-37)を10nm成膜し、正孔輸送促進層を作製した。
【0150】
(第二の電極の作製)
Auを80nm成膜し、第二の電極を作製した。
【0151】
(ホールオンリーデバイスの正孔輸送能力評価)
素子実施例1のホールオンリーデバイスの第一の電極と第二の電極にそれぞれプラスとマイナスの電界をかけ、10mA/cmの電流密度における電圧値を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0152】
[素子実施例2]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-37)の代わりに、化合物(A-71)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0153】
[素子実施例3]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-37)の代わりに、化合物(A-139)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0154】
[素子実施例4]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-37)の代わりに、化合物(A-206)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0155】
[素子比較例1]
正孔輸送促進層を有さないこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0156】
[素子比較例2]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-37)の代わりに、化合物(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
正孔輸送促進材料として化合物(A-37)を用いた素子実施例1、正孔輸送促進材料として化合物(A-71)を用いた素子実施例2、正孔輸送促進材料として化合物(A-139)を用いた素子実施例3および正孔輸送促進材料として化合物(A-206)を用いた素子実施例4の素子(HOD電圧はそれぞれ3.23V、3.09V、3.55V、3.41V)は、正孔輸送促進材料を用いなかった素子比較例1の素子(HOD電圧は4.70V)および正孔輸送促進材料として公知の材料NPTを用いた素子比較例2の素子(HOD電圧は3.90V)に比べHOD電圧が低下した。
【0159】
<光電変換素子の作製および評価>
[素子実施例5]
基板/第二の電極16/電子輸送層15/受光層14/正孔輸送層13/正孔輸送促進層12/第一の電極11からなる積層構成を有する光電変換素子1を作製し、該光電変換素子の暗電流及び外部量子効率を評価した。
【0160】
(基板、第二の電極16の用意)
第二の電極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、7.0×10-5Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(電子輸送層15の作製)
昇華精製した化合物4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジンを0.03nm/秒の速度で10nm成膜し、電子輸送層15を作製した。
(受光層14の作製)
N,N-ジメチルキナクリドン及びフラーレンC60を4:1(質量比)の割合で250nm成膜し、受光層14を作製した。成膜速度は0.13nm/秒であった。
(正孔輸送層13の作製)
正孔輸送材料として(HTL-1)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送層13を作製した。
(正孔輸送促進層12の作製)
化合物(A-37)を0.20nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送促進層12を作製した。
(第一の電極11の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、第一の電極11を成膜した。第一の電極は、Auを80nm成膜することで作製した。Auの成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0161】
以上により、面積4mm図1に示す光電変換素子1を作製した。上記のようにして作製した光電変換素子に、第二の電極16側に電子が、第一の電極11側に正孔が輸送されるように、絶対値として2.5Vの電圧を印加したときの、暗所での電流(暗電流)及び外部量子効率を評価した。暗電流の測定は、ケースレー社製ソース・メジャー・ユニット2636Bを用いて評価した。外部量子効率の測定には太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用いた。照射光の波長は560nmで、強度50μW/cmで測定を行った。結果を表2に示す。なお外部量子効率は、後述する素子比較例4における結果を基準値(100)とした相対値である。暗電流は数値が低いほど性能に優れ、外部量子効率は数値が高いほど性能に優れることを示す。
【0162】
[素子実施例6]
正孔輸送促進層12の作製において、化合物(A-37)の代わりに、化合物(A-71)を用いたこと以外は、素子実施例5と同様の方法により、素子実施例6の光電変換素子を作製し、素子実施例2と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0163】
[素子実施例7]
正孔輸送促進層12の作製において、化合物(A-37)の代わりに、化合物(A-139)を用いたこと以外は、素子実施例5と同様の方法により、素子実施例7の光電変換素子を作製し、素子実施例2と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0164】
[素子比較例3]
正孔輸送促進層12の作製において、化合物(A-37)の代わりに、化合物(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例2と同様の方法により、素子比較例3の光電変換素子を作製し、素子実施例2と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0165】
[素子比較例4]
正孔輸送促進層12を設けなかったこと以外は、素子実施例2と同様の方法により、素子比較例4の光電変換素子を作製し、素子実施例2と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0166】
【表2】
【0167】
表2に示すとおり、本発明の有機電子素子用材料を用いた素子実施例の素子では、素子比較例の素子と比べて暗電流が抑制され、且つ、高い外部量子効率が得られた。
【0168】
本発明の有機電子素子用材料は、式(1)で示される化合物を含むことにより、正孔の輸送能力を向上させることができ、光電変換素子に用いた場合にはより効率的に光電変換を行うことができる。また、本発明の有機電子素子用材料は、式(1)で示される化合物を含むことにより、暗電流が抑制され、高い外部量子効率を有することができる。
【符号の説明】
【0169】
1. 光電変換素子
11. 第一の電極
12. 正孔輸送促進層
13. 正孔輸送層
14. 受光層
15. 電子輸送層
16. 第二の電極
2. 有機EL素子
21. 第一の電極
22. 正孔輸送促進層
23. 正孔輸送層
24. 発光層
25. 電子輸送層
26. 第二の電極
図1
図2