(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121583
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体等の化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 7/04 20060101AFI20240830BHJP
C07H 1/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C07H7/04
C07H1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028755
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】ムラニ シャヘーン カシム
(72)【発明者】
【氏名】タプキル サンジープ ラメシュラオ
(72)【発明者】
【氏名】ナディヴェードヒ マヘシュワラ レディ
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057BB02
4C057DD01
4C057EE04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体等の化合物を高収率で製造することができる方法を提供する。
【解決手段】化合物(I)と、アルカリ金属を含む塩基とを接触させて、化合物(II)を製造する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II):
【化1】
[式中、
Arは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表される化合物(II)を製造する方法であって、
下記式(I):
【化2】
[式中、
Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、
Arは、前記と同義である。]
で表される化合物(I)と、アルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、-20℃以上0℃以下の温度で、0.5分間以上20分間以下、接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ金属を含む塩基が、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属アミドから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ金属を含む塩基が、アルカリ金属アルコキシドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属アルコキシドが、ナトリウムメトキシドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アルコールが、炭素数1以上5以下のアルコールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
炭素数1以上5以下のアルコールが、メタノールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させる工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
強酸性陽イオン交換樹脂が、H型の強酸性陽イオン交換樹脂である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
下記式(IV):
【化3】
[式中、R
100は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Arは、前記と同義である。]
で表される化合物(IV)を製造する方法であって、
請求項1又は2に記載の方法により化合物(II)を製造した後、製造された化合物(II)と、下記式(III):
【化4】
[式中、R
100は、前記と同義である。]
で表される化合物(III)とを接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体等の化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SGLT-2阻害剤は、抗糖尿病薬として有用である。なお、「SGLT-2」は、ナトリウム-グルコース共輸送担体-2を意味する。SGLT-2阻害剤としては、例えば、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)等が知られている。
【0003】
SGLT-2阻害剤の製造方法として、1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体の保護基を脱保護してカナグリフロジンを合成することが提案されている(特許文献1参照)。1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体は、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体とも称され、SGLT-2阻害剤を製造するための中間体として注目されている(特許文献1~2及び非特許文献1~3)。
【0004】
C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体の製造方法として種々の提案がされており、例えば、-78℃の超低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にアリールリチウムを作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献1及び3)、-20~-10℃の低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にArMgBr・LiCl(Arはアリール基を表す)等のターボグリニャール試薬を作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献2)、リチウムトリn-ブチルマグネサート(nBu3MgLi)から得られたマグネシウムアート錯体を用いて、-15℃程度の温度環境下、D-グルコノラクトン誘導体にアリール基を付加反応させる方法(特許文献2)等が知られている。また、ニッケル触媒存在下でチオエステル誘導体に有機亜鉛試薬を反応させることによりカップリングが起こり、ケトン誘導体が得られることが報告されている(非特許文献4及び5)。
【0005】
また、下記式(X)で表されるレムデシビル(Remdesivir)は、抗ウイルス薬として用い得る化合物である。レムデシビルは、例えば、RSウイルス、コロナウイルス等の一本鎖RNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。
【0006】
【0007】
特許文献3には、レムデシビル及びその中間体の製造方法が開示されている。特許文献3には、クロロトリメチルシラン(TMSCl)及びn-ブチルリチウム存在下、下記式(XI)で表されるラクトンと、下記式(Ar’’)で表されるブロモピラゾールとを、-78℃で反応させることにより、下記式(XII)で表されるヒドロキシヌクレオシドが得られることが記載されている。このヒドロキシヌクレオシドは、レムデシビル合成のための中間体として用いることができる。なお、「Bn」はベンジル基を表す。
【0008】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2010/043682号公報
【特許文献2】WO2015/012110号公報
【特許文献3】WO2012/012776号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Med.Chem.2008,51,1145-1149
【非特許文献2】Org.Lett.2014,16,4090-4093
【非特許文献3】J.Org.Chem.1989,54,610-612
【非特許文献4】Tetrahedron Letters 2002,43,1039-1042
【非特許文献5】Chem.Eur.J.2018,24,8774-8778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体等の化合物を高収率で製造することができる方法が求められている。
【0012】
本発明は、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体等の化合物を高収率で製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]下記式(II):
【化3】
[式中、
Arは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表される化合物(II)を製造する方法であって、
下記式(I):
【化4】
[式中、
Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、
Arは、前記と同義である。]
で表される化合物(I)と、アルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させる工程を含む、方法。
[2]化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、-20℃以上0℃以下の温度で、0.5分間以上20分間以下、接触させる、[1]に記載の方法。
[3]アルカリ金属を含む塩基が、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属アミドから選択される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]アルカリ金属を含む塩基が、アルカリ金属アルコキシドである、[3]に記載の方法。
[5]アルカリ金属アルコキシドが、ナトリウムメトキシドである、[4]に記載の方法。
[6]アルコールが、炭素数1以上5以下のアルコールである、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]炭素数1以上5以下のアルコールが、メタノールである、[6]に記載の方法。
[8]化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させる工程を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]強酸性陽イオン交換樹脂が、H型の強酸性陽イオン交換樹脂である、[8]に記載の方法。
[10]下記式(IV):
【化5】
[式中、R
100は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Arは、前記と同義である。]
で表される化合物(IV)を製造する方法であって、
[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法により化合物(II)を製造した後、製造された化合物(II)と、下記式(III):
【化6】
[式中、R
100は、前記と同義である。]
で表される化合物(III)とを接触させる工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体等の化合物を高収率で製造することができる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明する。本明細書に記載の2以上の実施形態を組み合わせることができ、2以上の実施形態の組み合わせも本発明に包含される。
【0016】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で用いられる用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。なお、「値A~値B」という表現は、別段規定される場合を除き、値A以上値B以下を意味する。
【0017】
ハロゲン原子
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
【0018】
アルキル基
アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12(例えば、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2)である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上であり、分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上である。
【0019】
アルケニル基
アルケニル基の炭素数は、例えば2~20、好ましくは2~15、より好ましくは2~12(例えば、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4又は2~3)である。アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素数は2以上であり、分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は3以上である。
【0020】
シクロアルキル基
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。
【0021】
ヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロシクロアルキル基の員数は、例えば3~8員、好ましくは4~7員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等が挙げられる。
【0022】
一実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基から選択される。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは、テトラヒドロフラニル基である。
【0023】
アリール基
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~14、好ましくは6~14、より好ましくは6~10の芳香族炭化水素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。
【0024】
ヘテロアリール基
ヘテロアリール基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の芳香族複素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは4~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロアリール基は、好ましくは単環式又は二環式の4~10員、好ましくは5~10員の芳香族複素環基である。
【0025】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0026】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0027】
一実施形態において、ヘテロアリール基は、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基及びピリジル基から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは、チエニル基及びベンゾチオフェニル基から選択される。
【0028】
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基は、それぞれ、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基、ハロアリール基又はハロヘテロアリール基が有するハロゲン原子の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0029】
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0030】
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基は、それぞれ、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0031】
アリールアルキル基
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0032】
アリールアルケニル基
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0033】
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アルキル基及び式:-CO-アリール基で表される基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0034】
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基は、それぞれ、式:-O-アルキル基、式:-O-ハロアルキル基、式:-O-ヘテロシクロアルキル基及び式:-O-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0035】
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-アルキル基、式:-S-ハロアルキル基、式:-S-ヘテロシクロアルキル基及び式:-S-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0036】
アルキルオキシカルボニル基
アルキルオキシカルボニル基は、式:-CO-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0037】
アミノ基
アミノ基は、式:-NH2で表される基(1級アミノ基)である。
【0038】
モノアルキルアミノ基
モノアルキルアミノ基は、式:-NH(-Q1)[式中、Q1は、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q1で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0039】
ジアルキルアミノ基
ジアルキルアミノ基は、式:-N(-Q2)(-Q3)[式中、Q2及びQ3は、それぞれ独立して、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q2又はQ3で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0040】
脂環式アミノ基
脂環式アミノ基は、例えば、5又は6員環の脂環式アミノ基であり、5又は6員環の脂環式アミノ基としては、例えば、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジン-1-イル基、ピラゾリジン-1-イル基、イミダゾリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基等が挙げられる。脂環式アミノ基は、脂環式アミノ基の結合手を有する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択されるヘテロ原子(例えば、1個のヘテロ原子)を含んでいてもよい。脂環式アミノ基は、好ましくは、モルホリノ基である。
【0041】
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アミノ基、式:-CO-モノアルキルアミノ基、式:-CO-ジアルキルアミノ基及び式:-CO-脂環式アミノ基で表される基であり、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及び脂環式アミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0042】
1以上の置換基
1以上の置換基は、好ましくは1~3個の置換基、より好ましくは1個又は2個の置換基を意味する。
【0043】
置換基群α
置換基群αは、以下の置換基で構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
【0044】
置換基群β
置換基群βは、以下の置換基で構成される。
(β-1)式(i)で表される置換基
(β-2)式(ii)で表される置換基
【0045】
以下、置換基群α及びβについて説明する。
【0046】
(α-5)において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0047】
(α-6)において、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、より一層好ましくは1である。
【0048】
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
ヒドロキシ基保護基は、目的の反応を行う際にはヒドロキシ基を保護することができ、目的の反応の終了後にはヒドロキシ基から脱離させることができるものであることが好ましい。ヒドロキシ基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。
【0049】
アルキルカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基が挙げられる。置換基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキルオキシ基、炭素数2~11(好ましくは炭素数2~9、より好ましくは炭素数2~7、より好ましくは炭素数2~5)のアルキルオキシカルボニル基等から選択され得る。1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。アルキルカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~5のアルキルカルボニル基、より好ましくは、アセチル基又はピバロイル基であり、より一層好ましくは、アセチル基である。
【0050】
アリールカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基等が挙げられる。
【0051】
アリールアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、トリチル基等が挙げられる。アリールアルキル型保護基は、好ましくは、ベンジル基である。
【0052】
アルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であり、より一層好ましくは、メチル基である。
【0053】
アリールアルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数9~13のアリールアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数10~14のアリールアルキルオキシプロピル基等のアリールアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アリールアルキルオキシアルキル型保護基は、例えば、1以上の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はメチルオキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、より好ましくはベンジルオキシメチル基である。
【0054】
アルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数4~10のアルキルオキシプロピル基等のアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキルオキシアルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、より好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチルオキシ基又はエチルオキシ基を有していてもよい炭素数2~6のアルキルオキシメチル基、より一層好ましくは、メチルオキシメチル基である。
【0055】
シリル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。シリル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基、より好ましくは、炭素数1~5のアルキル基及びフェニル基から選択される官能基を有するシリル基、より一層好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0056】
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルケニルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。オキシカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~6のアルキルオキシカルボニル基、炭素数3~6のアルケニルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基、より好ましく、メチルオキシメチル基、アリルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0057】
アセタール型保護基としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0058】
アリール型保護基としては、例えば、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0059】
保護基で保護されたヒドロキシ基は、式:-O-Qで表される基であることが好ましい。Qは、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールアルキル基を表す。式:-O-Qで表される基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。Qは、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、エチル基、テトラヒドロフラニル基、アセチル基又はベンジル基であることがより好ましい。
【0060】
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
チオール基保護基は、目的の反応を行う際にはチオール基を保護することができ、目的の反応の終了後にはチオール基から脱離させることができるものであることが好ましい。チオール基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。これらの保護基に関する説明は、上記の通りである。
【0061】
保護基で保護されたチオール基は、式:-S-Qで表される基であることが好ましい。Qに関する説明は、上記の通りである。
【0062】
【0063】
式(i)において、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基又は保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基を表す。保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基は、上記式:-O-Qで表される基であることが好ましい。aは、0以上3以下である。
【0064】
【0065】
式(ii)において、V10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。アルキレン基及びハロアルキレン基の炭素数は、それぞれ、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。アリーレン基及びハロアリーレン基の炭素数は、それぞれ、4~14であることが好ましく、6~14であることがより好ましい。ヘテロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基の炭素数は、それぞれ、4~14であることが好ましい。V10は、アルキレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがより好ましい。
【0066】
式(ii)において、bは、0又は1を表す。bは、1であることが好ましい。
【0067】
式(ii)において、W10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。W10は、ヘテロアリーレン基であることが好ましく、硫黄原子をヘテロ原子として含む5員環のヘテロアリーレン基であることがより好ましく、チエニレンであることがより一層好ましい。
【0068】
式(ii)において、cは、0又は1を表す。cは、1であることが好ましい。
【0069】
式(ii)において、X10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され得る。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択されることがより好ましい。ヘテロシクロアルキルオキシ基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0070】
X10は、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基又はヘテロシクロアルキルオキシ基を有するアリール基、或いは、非置換のヘテロアリール基であることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基又はテトラヒドロフラニルオキシ基を有するフェニル基、或いは、非置換のベンゾチオフェニル基であることがより好ましい。ヘテロシクロアルキルオキシ基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。
【0071】
≪化合物(I)≫
化合物(I)は、下記式(I)で表される。
【0072】
【0073】
式(I)において、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。アルキル基及びアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基及びアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましい。
【0074】
式(I)において、4個のRは、異なっていてもよいが、式:-CO-Rで表されるヒドロキシ基保護基の効率的な導入及び除去の観点から、同一であることが好ましい。一実施形態において、4個のRはすべてメチル基である。別の実施形態において、4個のRはすべてフェニル基である。
【0075】
式(I)において、Arは、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。
【0076】
以下、官能基(1)~(8)について説明する。
【0077】
(1)置換基を有していてもよいアルキル基
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0078】
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基
アルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0079】
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基
シクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0080】
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロシクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0081】
(5)置換基を有していてもよいアリール基
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0082】
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基
ヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0083】
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基
アリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0084】
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
アリールアルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0085】
官能基(5)(すなわち、置換基を有していてもよいアリール基)において、アリール基の結合手を有する炭素原子(すなわち、-CO-と結合する炭素原子)の両隣に位置する炭素原子は、置換基を有さないことが好ましい。残りの炭素原子は、置換基を有していてもよい。
【0086】
官能基(6)(すなわち、置換基を有していてもよいヘテロアリール基)において、ヘテロアリール基の結合手を有する炭素原子(すなわち、-CO-と結合する炭素原子)の両隣に位置する炭素原子又はヘテロ原子は、置換基を有さないことが好ましい。残りの炭素原子又はヘテロ原子は置換基を有していてもよい。
【0087】
一実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(1)である。
【0088】
別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(2)である。
【0089】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(3)である。
【0090】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(4)である。
【0091】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(5)である。
【0092】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(6)である。
【0093】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(7)である。
【0094】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは官能基(8)である。
【0095】
Arは、下記式(iv)で表される官能基であることが好ましい。一実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは下記式(iv)で表される官能基である。
【0096】
【0097】
式(iv)において、Y10は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。アリーレン基の炭素数は、4~14であることが好ましく、6~14であることがより好ましい。ヘテロアリーレン基の炭素数は、4~14であることが好ましい。アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され得る。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより好ましい。アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0098】
Y10は、置換基を有するアリーレン基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基を有するアリーレン基であることがより好ましく、フッ素原子、塩素原子又はメチル基を有するフェニレン基であることがより好ましい。
【0099】
Y10は、-CO-と結合する炭素原子の両隣に位置する炭素原子は置換基を有さず、残りの炭素原子は置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、-CO-と結合する炭素原子の両隣に位置する炭素原子若しくはヘテロ原子は置換基を有さず、残りの炭素原子若しくはヘテロ原子は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基であることが好ましい。Y10は、-CO-と結合する炭素原子に対してオルト位には置換基を有さず、メタ位及び/又はパラ位には置換基を有していてもよいフェニレン基であることがより好ましい。
【0100】
式(iv)において、V10、W10、X10、b及びcは、それぞれ、式(ii)と同義である。
【0101】
あるいは、Arは、下記式(vi)で表される官能基であることが好ましい。一実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは下記式(vi)で表される官能基である。
【0102】
【0103】
式(vi)において、R41及びR42は、それぞれ独立して、水素原子又はアミノ基の保護基を表す。アミノ基の保護基としては、カルバメート系、アシル系、アミド系、スルホンアミド系、フタロイル基等、いずれの保護基を用いてもよい。カルバメート系の保護基としては、例えば、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。アシル系の保護基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。アミド系の保護基としては、例えば、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。スルホンアミド系の保護基としては、例えば、p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基等が挙げられる。アミノ基の保護基は、アシル系又はアミド系の保護基であることが好ましい。アミノ基の保護基は、ピバロイル基又はトリフルオロアセチル基であることがより好ましい。R41及びR42は、互いに結合してフタロイル基等のアミノ基の保護基を形成していてもよい。Arが式(vi)の構造を有していると、レムデシビルの中間体として好適に用いることができる。
【0104】
式(I)におけるArは、化合物(I)をSGLT-2阻害剤又はその誘導体の製造原料として用いる観点から、SGLT-2阻害剤が有する官能基と同一であるか、SGLT-2阻害剤が有する官能基を誘導化した官能基であることが好ましい。
【0105】
ここで、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)及びダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)をはじめとするSGLT-2阻害剤は、下記式(A)で表される官能基を有する。
【0106】
したがって、式(I)におけるArは、下記式(A)で表される官能基であることが好ましい。一実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは下記式(A)で表される官能基である。
【0107】
【0108】
式(A)において、dは、0~4の整数を表す。dは、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。dが2以上である場合、d個のRaは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0109】
式(A)において、d個のRaは、それぞれ独立して、置換基群αから選択され得る。d個のRaは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ及びハロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより好ましい。
【0110】
式(A)において、Ar’は、下記式(v)で表される官能基である。
【0111】
【0112】
式(v)において、W10、X10及びcは、それぞれ、式(ii)と同義である。
【0113】
式(A)において、Ar’は、以下の式(Ar’-1)、(Ar’-2)又は(Ar’-3)で表される官能基であることが好ましい。
【0114】
【0115】
式(Ar’-1)、(Ar’-2)及び(Ar’-3)において、pは、0~5の整数である。pは、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
【0116】
式(Ar’-1)、(Ar’-2)及び(Ar’-3)において、p個のRbは、それぞれ独立して、置換基群α、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基から選択され得る。p個のRbは、それぞれ独立して、置換基群α、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基から選択されることが好ましい。置換基群αから選択される1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択されることがより好ましい。アリール基及びヘテロアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0117】
pが2以上である場合、p個のRbは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0118】
式(Ar’-1)において、pは、好ましくは1であり、Rbは、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有するフェニル基であり、より好ましくは、フッ素原子を有するフェニル基である。非置換又は置換のフェニル基が結合している位置は、好ましくは、チオフェン環の2位である。ハロゲン原子を有するフェニル基において、ハロゲン原子が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0119】
式(Ar’-2)において、pは、好ましくは0である。
【0120】
式(Ar’-3)において、pは、好ましくは1であり、Rbは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~3のアルキルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基は、好ましくは、テトラヒドロフラニルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0121】
d=1である場合、式(A)で表される官能基は、下記式(B)で表される官能基であることが好ましい。
【0122】
【0123】
式(B)において、Ra及びAr’は、式(A)と同義である。
【0124】
式(A)又は(B)で表される官能基は、下記式(Ar-1)、(Ar-2)、(Ar-3)又は(Ar-4)で表される官能基であることが好ましい。なお、「Et」は、エチル基を表す(本明細書を通じて同様である)。
【0125】
【0126】
一実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは式(Ar-1)で表される官能基である。
【0127】
別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは式(Ar-2)で表される官能基である。
【0128】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは式(Ar-3)で表される官能基である。
【0129】
さらに別の実施形態において、4個のRは同一であり(例えば、4個のRはすべてメチル基又はフェニル基であり)、Arは式(Ar-4)で表される官能基である。
【0130】
≪化合物(II)≫
化合物(II)は、下記式(II)で表される。なお、化合物(II)は、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体を包含する。
【0131】
【0132】
式(II)において、Arは、式(I)と同義である。したがって、式(I)におけるArに関する説明は、式(II)におけるArにも適用される。
【0133】
≪化合物(III)≫
化合物(III)は、下記式(III)で表される。化合物(III)には、アルキルスルホン酸が包含される。
【0134】
【0135】
式(III)において、R100は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましい。
【0136】
化合物(III)は、好ましくはメタンスルホン酸である。
【0137】
≪化合物(IV)≫
化合物(IV)は、下記式(IV)で表される。
【0138】
【0139】
式(IV)において、Arは、式(I)と同義である。したがって、式(I)におけるArに関する説明は、式(IV)におけるArにも適用される。
【0140】
式(IV)において、R100は、式(III)と同義である。したがって、式(III)におけるR100に関する説明は、式(IV)におけるR100にも適用される。
【0141】
≪化合物(II)を製造する方法≫
化合物(II)を製造する方法は、化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させる工程を含む。
【0142】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中、例えば-30℃以上40℃以下、好ましくは-20℃以上0℃以下、より好ましくは―15℃以上0℃以下の温度で、例えば0.1分間以上11時間以下、好ましくは0.5分間以上20分間以下、より好ましくは1分間以上20分間以下、接触させることにより、化合物(II)を得ることができる。化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0143】
以下、アルコールを含む溶媒中での化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触により化合物(II)が生じるメカニズムを説明する。化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とをアルコールを含む溶媒中で接触させると、以下の反応式に示すように、まず、環化が極めて速い速度で進行して中間体(Ia)が生じ、引き続いて、脱アセチル化反応が進行して化合物(II)が生じると考えられる。このため、5員環体(Ib)への環化は生じないと考えられる。これにより、化合物(II)を高収率で得ることができる。化合物(II)の収率は、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。なお、以下の反応式は、Rがメチル基(すなわち、-CO-Rがアセチル基(Ac))であり、アルカリ金属を含む塩基がナトリウムメトキシド(NaOMe)である場合の反応式である。
【0144】
【0145】
アルカリ金属を含む塩基のアルコールへの溶解により生じたアルカリ金属イオンに起因して、中間体(Ia)及び化合物(II)における-OHは-OM[式中、Mは、アルカリ金属を表す。]となる場合がある。例えば、ナトリウムメトキシドのアルコールへの溶解により生じたナトリウムイオンに起因して、中間体(Ia)及び化合物(II)における-OHは-ONaとなる場合がある。
【0146】
脱アセチル化反応において、アルカリ金属を含む塩基のアルコールへの溶解により生じた陰イオン(例えば、ナトリウムメトキシドのアルコールへの溶解により生じたメトキシドイオン)は、求核剤として作用し、-CO-Rにおける-CO-を攻撃する。これにより、-CO-Rが除去される。アルコールは、除去された-CO-Rを受け取る役割(すなわち、-CO-Rのスカベンジャーとしての役割)を果たす。例えば、Rがメチル基(すなわち、-CO-Rがアセチル基)であり、アルコールがメタノールである場合、メタノールは、除去されたアセチル基を受け取る役割(すなわち、アセチル基のスカベンジャーとしての役割)を果たす。メタノールがアセチル基を受け取ると、メタノールはアセチル化されて酢酸メチルとなる。
【0147】
化合物(I)は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0148】
アルカリ金属を含む塩基は、例えば、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アミドから選択され得る。1種の塩基を単独で使用してもよいし、2種以上の塩基を併用してもよい。
【0149】
塩基に含まれるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等から選択され得る。
【0150】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等のアルカリ金属メトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属エトキシド、リチウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のアルカリ金属ブトキシド等が挙げられる。
【0151】
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0152】
アルカリ金属アミドとしては、例えば、リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミド、カリウムビストリメチルシリルアミド等が挙げられる。
【0153】
化合物(II)の収率を高める観点から、アルカリ金属を含む塩基は、好ましくはアルカリ金属アルコキシド、より好ましくはアルカリ金属メトキシド、より一層好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0154】
アルカリ金属を含む塩基の使用量は、化合物(I) 1モルに対して、例えば、0.005モル以上5モル以下、好ましくは0.01モル以上1.5モル以下、より好ましくは0.01モル以上1.2モル以下である。塩基の使用量は、1種の塩基を使用する場合には当該1種の塩基の使用量を意味し、2種以上の塩基を使用する場合には当該2種以上の塩基の合計使用量を意味する。
【0155】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触は、アルコールを含む溶媒中で行われる。化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で混合することにより、化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させることができる。
【0156】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触に使用される溶媒は、1種のアルコールを含んでいてもよいし、2種以上のアルコールを含んでいてもよい。
【0157】
化合物(II)の収率を高める観点から、アルコールは、アルカリ金属を含む塩基が溶解し得るアルコールであることが好ましい。
【0158】
アルコールは、一価アルコールであってもよいし、多価アルコールであってもよいが、化合物(II)の収率を高める観点から、一価アルコールが好ましい。
【0159】
一価アルコールとしては、例えば、一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコール等が挙げられる。化合物(II)の収率を高める観点から、一価の鎖式脂肪族アルコールが好ましい。
【0160】
一価の鎖式脂肪族アルコールは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。一価の鎖式脂肪族アルコールの炭素数は、例えば1以上10以下である。化合物(II)の収率を高める観点から、一価の鎖式脂肪族アルコールの炭素数は、好ましくは炭素数1以上5以下、より好ましくは炭素数1以上4以下、より好ましくは炭素数1以上3以下、より一層好ましくは1又は2である。一価アルコールとしては、例えば、炭素数1以上10以下の一価アルコールが挙げられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-メチル-2-プロピルアルコール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブチルアルコール、2-メチル-2-ブチルアルコール、3-メチル-1-ブチルアルコール、3-メチル-2-ブチルアルコール、ネオペンチルアルコール、n-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール等が挙げられる。化合物(II)の収率を高める観点から、一価の鎖式脂肪族アルコールは、好ましくはメタノール又はエタノール、より好ましくはメタノールである。
【0161】
一価の環式脂肪族アルコールとしては、例えば、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の炭素数4~6の環式脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0162】
一価の芳香族アルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。
【0163】
多価アルコールとしては、例えば2~10価のアルコール、好ましくは2~6価のアルコールが挙げられる。多価アルコールは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、エチレングリコールの3~15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(例えば、プロピレングリコールの3~15量体)、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(例えば、グリセリンの2~8量体、具体的には、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2~8量体、ペンタエリスリトール及びその2~4量体、1,2,4-ブタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3,4-ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0164】
アルコールの使用量は、化合物(I) 1モルに対して、例えば4モル以上300モル以下、好ましくは4モル以上200モル以下、より好ましくは10モル以上300モル以下である。アルコールの使用量は、1種のアルコールを使用する場合には当該1種のアルコールの使用量を意味し、2種以上のアルコールを使用する場合には当該2種以上のアルコールの合計使用量を意味する。
【0165】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触に使用される溶媒は、アルコール以外の1種又は2種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコール誘導体;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、酢酸メチル及び酢酸エチルから選択され得る。有機溶媒は、エーテル系溶媒であることが好ましく、テトラヒドロフランであることがより好ましい。
【0166】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触に使用される溶媒は、アルコールとエーテル系溶媒との混合溶媒であることが好ましく、メタノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒であることがより好ましい。
【0167】
化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との接触に使用される溶媒の使用量は、化合物(I) 1gに対して、例えば1mL以上100mL以下、好ましくは2mL以上50mL以下である。
【0168】
化合物(I)とアルカリ金属アルコキシドとを、一価アルコールを含む溶媒中で接触させる場合、アルカリ金属アルコキシドの炭素数と一価アルコールの炭素数とは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。例えば、アルカリ金属アルコキシドの炭素数が1である場合(すなわち、アルカリ金属アルコキシドがアルカリ金属メトキシド(好ましくはナトリウムメトキシド)である場合)、一価アルコールの炭素数も1であること(すなわち、一価アルコールがメタノールであること)が好ましい。すなわち、アルカリ金属を含む塩基がアルカリ金属メトキシド(好ましくはナトリウムメトキシド)である場合、化合物(I)とアルカリ金属メトキシド(好ましくはナトリウムメトキシド)とを、メタノールを含む溶媒中で接触させることが好ましい。メタノールを含む溶媒は、好ましくは、メタノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒である。
【0169】
アルカリ金属アルコキシドの炭素数と一価アルコールの炭素数とが異なっている場合、アルカリ金属アルコキシドと一価アルコールとの反応により、当初のアルカリ金属アルコキシドとは異なるアルカリ金属アルコキシドが新たに生じ得る。新たに生じたアルカリ金属アルコキシドも、アルカリ金属を含む塩基として作用し得る。したがって、新たに生じたアルカリ金属アルコキシドも、本発明における「アルカリ金属を含む塩基」に包含される。例えば、アルカリ金属アルコキシドがアルカリ金属メトキシドであり、一価アルコールがエタノールである場合、アルカリ金属メトキシドとエタノールとの反応により、アルカリ金属エトキシドが新たに生じ得る。新たに生じたアルカリ金属エトキシドも、アルカリ金属を含む塩基として作用し得る。したがって、新たに生じたアルカリ金属エトキシドも、本発明における「アルカリ金属を含む塩基」に包含される。
【0170】
化合物(II)を製造する方法は、化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基とを、アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させる工程をさらに含むことが好ましい。反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させることにより、反応混合物中のアルカリ金属イオンを水素イオンと交換することができる。これにより、化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との反応をクエンチすることができる。また、反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させることにより、反応混合物のpHを低下させることができる。これにより、6員環生成物である化合物(II)の5員環生成物への異性化を抑制することができる。6員環生成物である化合物(II)の5員環生成物への異性化の一例を以下に示す。
【0171】
【0172】
強酸性陽イオン交換樹脂は、好ましくはH型の強酸性陽イオン交換樹脂である。強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン骨格上にスルホン酸基(-SO3H)等の交換基を有するスチレン系の強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。強酸性陽イオン交換樹脂は市販されており、市販の強酸性陽イオン交換樹脂を使用することができる。市販の強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、ダウ・ケミカル社製アンバーライトシリーズ(例えば、IR120B(H+型)、IR124B(H+型)等)等が挙げられる。1種の強酸性陽イオン交換樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の強酸性陽イオン交換樹脂を併用してもよい。
【0173】
強酸性陽イオン交換樹脂の使用量は、化合物(I) 100gに対して、例えば0.1g以上1g以下、好ましくは0.05g以上20g以下、より好ましくは0.05g以上15g以下である。強酸性陽イオン交換樹脂の使用量は、1種の強酸性陽イオン交換樹脂を使用する場合には当該1種の強酸性陽イオン交換樹脂の使用量を意味し、2種以上の強酸性陽イオン交換樹脂を使用する場合には当該2種以上の強酸性陽イオン交換樹脂の合計使用量を意味する。
【0174】
反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを、例えば-30℃以上40℃以下、好ましくは-20℃以上20℃以下、より好ましくは0℃以上20℃以下の温度で、例えば0.1時間以上3時間以下、好ましくは0.1時間以上2時間以下、より好ましくは0.1時間以上1時間以下、接触させることにより、化合物(I)とアルカリ金属を含む塩基との反応をクエンチすることができる。また、反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させることにより、6員環生成物である化合物(II)の5員環生成物への異性化を抑制することができる。反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0175】
反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂との接触は、例えば、反応混合物に強酸性陽イオン交換樹脂を添加して攪拌することにより行うことができる。
【0176】
6員環生成物である化合物(II)の5員環生成物への異性化をより効果的に抑制する観点から、反応混合物と強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させた後の反応混合物のpHは、好ましくは0.1以上4.0以下、より好ましくは1.0以上3.0以下、より一層好ましくは1.5以上3.0以下である。
【0177】
化合物(II)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。例えば、反応混合物をろ過し、ろ液をテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒で洗浄し、ろ液を濃縮し、必要に応じてトリチュレーション、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、化合物(II)を単離することができる。
【0178】
化合物(II)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【0179】
≪化合物(IV)を製造する方法≫
化合物(IV)を製造する方法は、上記方法により化合物(II)を製造した後、製造された化合物(II)と、化合物(III)とを接触させる工程を含む。
【0180】
化合物(II)と化合物(III)とを、例えば0℃以上40℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下、より好ましくは10℃以上30℃以下の温度で、例えば30分間以上240分間以下、好ましくは60分間以上240分間以下、より好ましくは120分間以上240分間以下、接触させることにより、化合物(IV)を得ることができる。化合物(II)と化合物(III)との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0181】
化合物(III)の使用量は、化合物(II) 1モルに対して、例えば0.5モル以上4モル以下、好ましくは1モル以上4モル以下、より好ましくは2モル以上4モル以下である。
【0182】
化合物(II)と化合物(III)との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。化合物(II)と化合物(III)とを溶媒中で混合することにより、化合物(II)と化合物(III)とを接触させることができる。溶媒は、有機溶媒から選択されることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-メチル-2-プロピルアルコール等の一価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコール誘導体;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、一価アルコール類から選択されることが好ましく、メタノールであることがより好ましい。1種の有機溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の有機溶媒の混合溶媒を使用してもよい。
【0183】
化合物(II)と化合物(III)との接触に使用される溶媒の使用量は、化合物(II) 1gに対して、例えば3mL以上200mL以下、好ましくは4mL以上100mL以下、より好ましくは4mL以上80mL以下である。
【0184】
化合物(IV)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。例えば、ジクロロメタン(DCM)等を反応混合物に添加して反応をクエンチし、有機層を分取し、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液、ブライン溶液等で洗浄し、ろ過し、ろ液を濃縮し、必要に応じてトリチュレーション、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等で精製することにより、化合物(IV)を単離することができる。
【0185】
化合物(IV)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【実施例0186】
<製造例1>
以下の反応式に従って、(2R,3R,4S,5R)-6-(ドデシルチオ)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(VIIe)を製造した。
【0187】
【0188】
オーブン乾燥させたシュレンク管中で、エチルビニルエーテル(VId)(0.7mL,7.29mmol,2当量)を、(2R,3R,4S,5R)-2-(アセトキシメチル)-6-オキソテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイル トリアセテート(Va)(2g,3.65mmol,1当量)、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)(92mg,0.364mmol,0.1当量)及びジクロロメタン(DCM)(30mL,15倍容量)を含む氷冷溶液に、0℃~5℃の温度で加えた。次いで、反応混合物を0℃~5℃の温度で4時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターし、次いで、水(20mL)の添加により反応をクエンチした。有機層を水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、粗化合物を得た。粗化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 9.5/0.5→8/2)により精製して、1.53g(収率68%)の(2R,3R,4S,5R)-6-(ドデシルチオ)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(VIIe)を無色油状物として得た。
【0189】
得られた(2R,3R,4S,5R)-6-(ドデシルチオ)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(VIIe)の分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):5.47-5.32(m,2H),5.19(dddd,J=41.8,7.4,6.1,3.4Hz,1H),4.77(dq,J=49.8,5.3Hz,1H),4.46-4.23(m,2H),4.04(ddd,J=12.2,6.1,2.8Hz,1H),3.68-3.45(m,2H),2.93-2.77(m,2H),2.13-2.01(m,12H),1.59-1.49(m,2H),1.40-1.21(m,20H),1.20-1.12(m,3H),0.87(t,J=7.0Hz,3H).
【0190】
<製造例2>
以下の反応式に従って、(2R,3R,4S,5R)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(IXe)を製造した。
【0191】
【0192】
オーブン乾燥させたシュレンク管中で、1,2-ジブロモエタン(0.050mL,1~2滴)を、切削片状マグネシウム(218.7mg,9mmol,4当量)及びテトラヒドロフラン(THF)(9.8mL,7倍容量)を含む混合物に、アルゴン雰囲気下で加えた。次いで、2-(5-ブロモ-2-メチルベンジル)-5-(4-フルオロフェニル)チオフェン(VIII)(1.625g,4.5mmol,2当量)を、アルゴン雰囲気下で加えた。次いで、反応混合物を75℃~80℃の温度で3時間、還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、反応混合物を、CuCN(403mg,4.5mmol,2当量)及びTHF(2mL,2倍容量)の懸濁液を含む別のシュレンク管に、THF(2.8mL×2)を用いて室温で移し、10分間維持した。こうして、有機銅試薬を調製した。
【0193】
上記で調製した有機銅試薬に、THF(4.2mL×2)を用いて、(2R,3R,4S,5R)-6-(ドデシルチオ)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(VIIe)(1.40g,2.25mmol,1.00当量)を加え、40℃~50℃の温度に加温した。反応混合物を40℃~50℃の温度で20時間撹拌した。TLCにより反応の完了を確認し、水(2.8mL,2倍容量)でクエンチした。セライトパッドを通じて反応混合物を濾過し、ベッドを酢酸エチル(20mL×3)で洗浄した。濾液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、粗化合物を得た。粗化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=1/9~4/6)により精製して、0.77g(収率49%)の(2R,3R,4S,5R)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(IXe)をオフホワイトの粘着性固体として得た。また、0.40g(収率29%)の(2R,3R,4S,5R)-6-(ドデシルチオ)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(VIIe)を回収した。
【0194】
得られた(2R,3R,4S,5R)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(IXe)の分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):8.00-7.81(m,2H),7.46(ddd,J=7.3,4.9,1.7Hz,2H),7.29-7.26(m,1H),7.07-6.96(m,3H),6.71-6.62(m,1H),5.67-5.56(m,1H),5.39-5.29(m,1H),5.19(dtd,J=39.2,6.7,3.0Hz,1H),5.12-4.65(m,2H),4.33-4.20(m,1H),4.17(s,2H),3.99(dd,J=12.3,6.4Hz,1H),3.49-3.21(m,2H),2.38-2.37(m,3H),2.07-1.91(m,12H),1.29-1.25(m,3H),1.07-0.89(m,3H).
【0195】
<製造例3>
以下の反応式に従って、(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)を製造した
【0196】
【0197】
パラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)(26mg,0.102mmol,0.2当量)を、(2R,3R,4S,5R)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(IXe)(360mg,0.513mmol,1当量)のジクロロメタン(DCM)(4mL)及びメタノール(MeOH)(4mL)の溶液に、室温で加えた。反応塊を40℃~50℃の温度に加熱し、4~5時間維持した。反応の進行をTLCによりモニターした。水(10mL)の添加により反応をクエンチし、有機層を水(5mL)及びブライン(5mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、310mg(収率96%)の(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)をオフホワイトの粘着性固体として得た。
【0198】
得られた(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)の分析結果を以下に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):7.77(d,J=1.8Hz,1H),7.69(dd,J=7.9,2.0Hz,1H),7.52-7.44(m,2H),7.32(d,J=7.9Hz,1H),7.06-6.98(m,3H),6.68-6.65(m,1H),5.64(dd,J=6.8,4.6Hz,1H),5.41(dd,J=4.6,2.5Hz,1H),5.35-5.23(m,2H),4.35(dd,J=12.5,2.6Hz,1H),4.19(s,2H),4.13-4.03(m,1H),3.84(bs,1H),2.40(s,3H),2.06(s,6H),1.98(s,3H),1.91(s,3H);
13C{1H} NMR(76MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):197.82,170.82,169.95,169.78,169.60,162.18(d,1JC-F=248.5Hz),144.02,142.04,141.90,139.16,132.03,131.12,130.60(d,4JC-F=3.04Hz),129.46,127.13(d,3JC-F=8.36Hz),127.06,126.27,122.74,115.75(d,2JC-F=22.04Hz),71.61,70.64,69.96,68.75,62.09,33.94,29.68,20.73,20.69,20.29,19.91.
【0199】
<製造例4>
以下の反応式に従って、(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)を製造した。
【0200】
【0201】
パラトルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)(7mg,0.028mmol,0.2当量)を、(2R,3R,4S,5R)-2-(1-エトキシエトキシ)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(IXe)(100mg,0.142mmol,1当量)のテトラヒドロフラン(THF)(2mL)及びエタノール(EtOH)(2mL)の溶液に、室温で加えた。反応塊を室温で40時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。水(10mL)の添加により反応をクエンチし、有機層を水(5mL)及びブライン溶液(5mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、50mg(収率89%)の(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)をオフホワイトの粘着性固体として得た。
【0202】
得られた(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)の分析結果を以下に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):7.77(d,J=1.8Hz,1H),7.69(dd,J=7.9,2.0Hz,1H),7.52-7.44(m,2H),7.32(d,J=7.9Hz,1H),7.06-6.98(m,3H),6.68-6.65(m,1H),5.64(dd,J=6.8,4.6Hz,1H),5.41(dd,J=4.6,2.5Hz,1H),5.35-5.23(m,2H),4.35(dd,J=12.5,2.6Hz,1H),4.19(s,2H),4.13-4.03(m,1H),3.84(bs,1H),2.40(s,3H),2.06(s,6H),1.98(s,3H),1.91(s,3H);
13C{1H} NMR(76MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):197.82,170.82,169.95,169.78,169.60,162.18(d,1JC-F=248.5Hz),144.02,142.04,141.90,139.16,132.03,131.12,130.60(d,4JC-F=3.04Hz),129.46,127.13(d,3JC-F=8.36Hz),127.06,126.27,122.74,115.75(d,2JC-F=22.04Hz),71.61,70.64,69.96,68.75,62.09,33.94,29.68,20.73,20.69,20.29,19.91.
【0203】
<実施例1>
以下の反応式に従って、(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVa)を製造した。
【0204】
【0205】
オーブン乾燥させたシュレンク管を室温まで冷却した。ナトリウムメトキシド(NaOMe)(9.45mg,0.175mmol,1.1当量)のテトラヒドロフラン(THF)(1mL)溶液を、(2R,3R,4S,5R)-6-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xa)(100mg,0.159mmol,1当量)のTHF(2mL)及びメタノール(MeOH)(1mL)の溶液を含む反応塊に、窒素雰囲気下、-15℃~20℃の温度で5分間かけて加え、反応混合物を-15℃~20℃の温度で10分間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。次いで、ダウ・ケミカル社製アンバーライトIR120B(H+型)(1g)の添加により、反応をクエンチした(pH2)。次いで、反応混合物を-15℃~20℃の温度で30分間撹拌した。次いで、反応塊をセライトベッドで濾過し、THFで洗浄した。濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、粗化合物を得た。粗化合物をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE):ヘキサン(4:6)(3mL)でトリチュレーションして、77mg(定量的収率)の(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVa)を淡黄色の固体として得た。
【0206】
得られた(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVa)の分析結果を以下に示す。
FTIR(NaCl):3374,2926,1680,1603,1509,1233,1159,1096,1031,832,801,757cm-1-;
1H NMR(500MHz,DMSO-d6,30℃) δ(ppm):7.84(d,J=1.5Hz,1H),7.77(dd,J=7.9,1.7Hz,1H),7.63-7.50(m,3H),7.44(d,J=1.6Hz,1H),7.31(dd,J=11.3,5.0Hz,1H),7.28-7.22(m,2H),7.17(td,J=8.9,1.0Hz,3H),7.07(d,J=8.0Hz,1H),6.81(d,J=3.6Hz,1H),6.73(d,J=3.6Hz,1H),6.13(d,J=1.2Hz,1H),5.14(dd,J=7.0,3.5Hz,1H),4.91(dd,J=94.6,6.2Hz,2H),4.59(dd,J=30.5,5.1Hz,2H),4.36(tdd,J=11.7,8.9,5.4Hz,4H),4.19(s,1H),4.09(q,J=16.0Hz,2H),4.01-3.93(m,1H),3.73-3.61(m,2H),3.60-3.45(m,4H),3.22(td,J=9.3,5.4Hz,1H),2.99-2.91(m,1H),2.22(s,3H);
HRMS:[M+Na]+ C24H25FNaO6S 計算値:483.1254;測定値 483.1248.
【0207】
<実施例2>
以下の反応式に従って、(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(XVa)を製造した。
【0208】
【0209】
メタンスルホン酸(MSA)(19mg,0.195mmol,3当量)を、(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVa)(30mg,0.065mmol,1当量)のメタノール(MeOH)(2mL)溶液に、15℃~20℃の温度で加えた。反応塊を15℃~20℃の温度で3時間維持した。反応の進行をTLCによりモニターした。ジクロロメタン(DCM)(10mL)の添加により反応をクエンチし、有機層を飽和NaHCO3水溶液(5mL)及びブライン溶液(5mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、25mg(収率80%)の(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(XVa)を粘着性の淡黄色の残渣として得た。
【0210】
得られた(3R,4S,5S,6R)-2-(3-((5-(4-フルオロフェニル)チオフェン-2-イル)メチル)-4-メチルフェニル)-6-(ヒドロキシメチル)-2-メトキシテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(XVa)の分析結果を以下に示す。
FTIR(NaCl):3393,2926,2855,1554,1508,1436,1232,1098,1071,1028,832,801,757cm-1-;
1H NMR(500MHz,DMSO-d6,30℃) δ(ppm):7.52-7.34(m,4H),7.27(dd,J=11.2,4.6Hz,2H),7.05(t,J=7.2Hz,1H),7.02-6.90(m,4H),6.57-6.37(m,1H),4.95(d,J=67.5Hz,2H),4.23-3.97(m,2H),3.88(dt,J=27.7,10.1Hz,4H),3.68-3.51(m,2H),3.27(d,J=7.8Hz,1H),3.03(dd,J=21.0,11.4Hz,1H),2.96(s,3H),2.45-2.25(m,1H),2.23(d,J=17.2Hz,3H),2.19-2.07(m,1H),1.25(d,J=1.0Hz,2H);
HRMS:[M+Na]+ C25H27FNaO6S 計算値:497.1410;測定値:497.1405.
【0211】
<実施例3>
以下の反応式に従って、(3R,4S,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVb)を製造した。
【0212】
【0213】
オーブン乾燥させたシュレンク管を室温まで冷却した。ナトリウムメトキシド(NaOMe)(10mg,0.185mmol,1.1当量)のテトラヒドロフラン(THF)(1mL)溶液を、(2R,3R,4S,5R)-6-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-2-ヒドロキシ-6-オキソヘキサン-1,3,4,5-テトライル テトラアセテート(Xb)(100mg,0.168mmol,1当量)のTHF(2mL)及びメタノール(MeOH)(1mL)の溶液を含む反応塊に、窒素雰囲気下、-15℃~20℃の温度で5分間かけて加え、反応混合物を-15℃~20℃の温度で10分間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。次いで、ダウ・ケミカル社製アンバーライトIR120B(H+型)(1g)の添加により、反応をクエンチした(pH2)。次いで、反応混合物を-15℃~20℃の温度で30分間撹拌した。次いで、反応塊をセライトベッドで濾過し、THFで洗浄した。濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空引きすることにより除去して、粗化合物を得た。粗化合物をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE):ヘキサン(4:6)(3mL)でトリチュレーションして、72mg(定量的収率)の(3R,4S,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVb)を淡黄色の固体として得た。
【0214】
得られた(3R,4S,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(XIVb)の分析結果を以下に示す。
FTIR(NaCl):3421,3411,3040,2980,2927,2361,1653,1583,1510,1476,1395,1301,1241,1177,1115,1043,804,756cm-1;
1H NMR(500MHz,DMSO-d6,30℃) δ(ppm):7.56(s,1H),7.39(dd,J=8.3,0.9Hz,1H),7.31(d,J=8.3Hz,1H),7.14-7.00(m,2H),6.84-6.72(m,2H),6.29-5.97(m,1H),4.84(d,J=5.4Hz,1H),4.65(d,J=4.9Hz,1H),4.49(d,J=7.2Hz,1H),4.38-4.30(m,1H),4.03-3.91(m,4H),3.74-3.61(m,2H),3.59-3.44(m,2H),3.22(td,J=9.3,5.7Hz,1H),3.00-2.87(m,1H),1.28-1.23(m,3H).