IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トクヤマの特許一覧 ▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

<>
  • 特開-二置換メタン誘導体の製造方法 図1
  • 特開-二置換メタン誘導体の製造方法 図2
  • 特開-二置換メタン誘導体の製造方法 図3
  • 特開-二置換メタン誘導体の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122347
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】二置換メタン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/18 20060101AFI20240902BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 27/135 20060101ALI20240902BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
C07C41/18
C07C43/225 A
B01J27/135 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029840
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】ムラニ シャヘーン カシム
(72)【発明者】
【氏名】タプキル サンジープ ラメシュラオ
(72)【発明者】
【氏名】ナディヴェードヒ マヘシュワラ レディ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BE06A
4G169CB02
4G169CB62
4G169DA04
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA10
4H006BA37
4H006BB12
4H006BB14
4H006BB15
4H006GP03
4H039CA19
4H039CB40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、二置換メタン誘導体を高収率で得ることができる二置換メタン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記式(I):

で表されるケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物とチタン化合物とを接触させて、下記式(II):

[両式中、R及びRは独立して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基等]
で表される二置換メタン誘導体(II)を製造する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II):
【化1】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表される二置換メタン誘導体(II)を製造する方法であって、
下記式(I):
【化2】
[式中、R及びRは、前記と同義である。]
で表されるケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物とチタン化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
及びRが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化ホウ素アルカリ金属塩が、水素化ホウ素ナトリウムである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
炭素数1以上5以下の一価アルコールが、メタノールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
チタン化合物が、下記式(III):
【化3】
[式中、
は、ハロゲン原子であり、
は、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
r及びsは、r+s=3又は4を満たす0~4の整数である。]
で表されるチタン塩又はその溶媒和物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
チタン化合物が、塩化チタン(IV)である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二置換メタン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SGLT-2阻害剤は、抗糖尿病薬として有用である。なお、「SGLT-2」は、ナトリウム-グルコース共輸送担体-2を意味する。SGLT-2阻害剤としては、例えば、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)等が知られている。
【0003】
ジアリールメタン化合物等の二置換メタン誘導体は、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として有用な化合物である(非特許文献1)。
【0004】
ジアリールメタン化合物の製造方法としては、ジアリールケトン誘導体を、四塩化チタン等のチタン化合物の存在下、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を使用して還元して、ジアリールメタン化合物を製造する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/230864号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cem.Rev,2017,117,pp.1687-1764
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、目的の還元反応が進行せず、ジアリールケトン誘導体の二量体が主生成物として生じる場合がある。このような現象は、ジアリールケトン誘導体として電子供与性の低いものを使用する場合に顕著となる。例えば、ジアリールケトン誘導体として(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)を使用する場合、特許文献1に記載の方法では、下記式に示すように、二量体(4)が主生成物として生じる。二量体(4)の収率は97%に及ぶ場合がある(比較例1参照)。
【0008】
【化1】
【0009】
本発明は、二置換メタン誘導体を高収率で得ることができる二置換メタン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]下記式(II):
【化2】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表される二置換メタン誘導体(II)を製造する方法であって、
下記式(I):
【化3】
[式中、R及びRは、前記と同義である。]
で表されるケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物とチタン化合物とを接触させる工程を含む、方法。
[2]R及びRが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基である、[1]に記載の方法。
[3]水素化ホウ素アルカリ金属塩が、水素化ホウ素ナトリウムである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]炭素数1以上5以下の一価アルコールが、メタノールである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]チタン化合物が、下記式(III):
【化4】
[式中、
は、ハロゲン原子であり、
は、置換基を有していてもよいアルキル基であり、
r及びsは、r+s=3又は4を満たす0~4の整数である。]
で表されるチタン塩又はその溶媒和物である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]チタン化合物が、塩化チタン(IV)である、[5]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二置換メタン誘導体を高収率で得ることができる二置換メタン誘導体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、製造例1で得られた(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)のH NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、製造例1で得られた(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)の13C NMRスペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例1で得られた4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(BCEB)のH NMRスペクトルを示す図である。
図4図4は、実施例1で得られた4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(BCEB)の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。本明細書に記載の2以上の実施形態を組み合わせることができ、2以上の実施形態の組み合わせも本発明に包含される。
【0014】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で用いられる用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。なお、「値A~値B」という表現は、別段規定される場合を除き、値A以上値B以下を意味する。
【0015】
ハロゲン原子
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
【0016】
アルキル基
アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12(例えば、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2)である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上であり、分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上である。
【0017】
アルケニル基
アルケニル基の炭素数は、例えば2~20、好ましくは2~15、より好ましくは2~12(例えば、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4又は2~3)である。アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素数は2以上であり、分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は3以上である。
【0018】
シクロアルキル基
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。
【0019】
ヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロシクロアルキル基の員数は、例えば3~8員、好ましくは4~7員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等が挙げられる。
【0020】
一実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基から選択される。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは、テトラヒドロフラニル基である。
【0021】
アリール基
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~14、好ましくは6~14、より好ましくは6~10の芳香族炭化水素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。
【0022】
ヘテロアリール基
ヘテロアリール基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の芳香族複素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは4~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロアリール基は、好ましくは単環式又は二環式の4~10員、好ましくは5~10員の芳香族複素環基である。
【0023】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0024】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0025】
一実施形態において、ヘテロアリール基は、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基及びピリジル基から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは、チエニル基及びベンゾチオフェニル基から選択される。
【0026】
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基は、それぞれ、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基、ハロアリール基又はハロヘテロアリール基が有するハロゲン原子の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0027】
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0028】
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基は、それぞれ、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0029】
アリールアルキル基
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0030】
アリールアルケニル基
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0031】
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アルキル基及び式:-CO-アリール基で表される基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0032】
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基は、それぞれ、式:-O-アルキル基、式:-O-ハロアルキル基、式:-O-ヘテロシクロアルキル基及び式:-O-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0033】
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-アルキル基、式:-S-ハロアルキル基、式:-S-ヘテロシクロアルキル基及び式:-S-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0034】
アルキルオキシカルボニル基
アルキルオキシカルボニル基は、式:-CO-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0035】
アミノ基
アミノ基は、式:-NHで表される基(1級アミノ基)である。
【0036】
モノアルキルアミノ基
モノアルキルアミノ基は、式:-NH(-Q)[式中、Qは、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Qで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0037】
ジアルキルアミノ基
ジアルキルアミノ基は、式:-N(-Q)(-Q)[式中、Q及びQは、それぞれ独立して、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q又はQで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0038】
脂環式アミノ基
脂環式アミノ基は、例えば、5又は6員環の脂環式アミノ基であり、5又は6員環の脂環式アミノ基としては、例えば、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジン-1-イル基、ピラゾリジン-1-イル基、イミダゾリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基等が挙げられる。脂環式アミノ基は、脂環式アミノ基の結合手を有する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択されるヘテロ原子(例えば、1個のヘテロ原子)を含んでいてもよい。脂環式アミノ基は、好ましくは、モルホリノ基である。
【0039】
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アミノ基、式:-CO-モノアルキルアミノ基、式:-CO-ジアルキルアミノ基及び式:-CO-脂環式アミノ基で表される基であり、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及び脂環式アミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0040】
1以上の置換基
1以上の置換基は、好ましくは1~3個の置換基、より好ましくは1個又は2個の置換基を意味する。
【0041】
置換基群α
置換基群αは、以下の置換基で構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
(α-17)カルボキシル基
【0042】
置換基群β
置換基群βは、以下の置換基で構成される。
(β-1)置換基を有していてもよいアリール基
(β-2)置換基を有していてもよいヘテロアリール基
【0043】
以下、置換基群α及びβについて説明する。
【0044】
(α-5)において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0045】
(α-6)において、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、より一層好ましくは1である。
【0046】
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
ヒドロキシ基保護基は、目的の反応を行う際にはヒドロキシ基を保護することができ、目的の反応の終了後にはヒドロキシ基から脱離させることができるものであることが好ましい。ヒドロキシ基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。
【0047】
アルキルカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基が挙げられる。置換基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキルオキシ基、炭素数2~11(好ましくは炭素数2~9、より好ましくは炭素数2~7、より好ましくは炭素数2~5)のアルキルオキシカルボニル基等から選択され得る。1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。アルキルカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~5のアルキルカルボニル基、より好ましくは、アセチル基又はピバロイル基であり、より一層好ましくは、アセチル基である。
【0048】
アリールカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基等が挙げられる。
【0049】
アリールアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、トリチル基等が挙げられる。アリールアルキル型保護基は、好ましくは、ベンジル基である。
【0050】
アルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であり、より一層好ましくは、メチル基である。
【0051】
アリールアルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数9~13のアリールアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数10~14のアリールアルキルオキシプロピル基等のアリールアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アリールアルキルオキシアルキル型保護基は、例えば、1以上の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はメチルオキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、より好ましくはベンジルオキシメチル基である。
【0052】
アルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数4~10のアルキルオキシプロピル基等のアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキルオキシアルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、より好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチルオキシ基又はエチルオキシ基を有していてもよい炭素数2~6のアルキルオキシメチル基、より一層好ましくは、メチルオキシメチル基である。
【0053】
シリル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。シリル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基、より好ましくは、炭素数1~5のアルキル基及びフェニル基から選択される官能基を有するシリル基、より一層好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0054】
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルケニルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。オキシカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~6のアルキルオキシカルボニル基、炭素数3~6のアルケニルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基、より好ましく、メチルオキシメチル基、アリルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0055】
アセタール型保護基としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0056】
アリール型保護基としては、例えば、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0057】
保護基で保護されたヒドロキシ基は、式:-O-Qで表される基であることが好ましい。Qは、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールアルキル基を表す。式:-O-Qで表される基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。Qは、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、エチル基、テトラヒドロフラニル基、アセチル基又はベンジル基であることがより好ましい。
【0058】
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
チオール基保護基は、目的の反応を行う際にはチオール基を保護することができ、目的の反応の終了後にはチオール基から脱離させることができるものであることが好ましい。チオール基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。これらの保護基に関する説明は、上記の通りである。
【0059】
保護基で保護されたチオール基は、式:-S-Qで表される基であることが好ましい。Qに関する説明は、上記の通りである。
【0060】
(β-1)置換基を有していてもよいアリール基
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択されることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のハロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましい。
【0061】
(β-2)置換基を有していてもよいヘテロアリール基
ヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択されることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のハロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましい。
【0062】
≪ケトン誘導体(I)≫
ケトン誘導体(I)は、下記式(I)で表される。
【0063】
【化5】
【0064】
式(I)において、R及びRは、それぞれ独立して、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。
【0065】
以下、官能基(1)~(8)について説明する。
【0066】
(1)置換基を有していてもよいアルキル基
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0067】
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基
アルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0068】
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基
シクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0069】
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロシクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0070】
(5)置換基を有していてもよいアリール基
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0071】
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基
ヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0072】
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基
アリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0073】
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
アリールアルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0074】
一実施形態において、Rは、官能基(1)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(1)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
別の実施形態において、Rは、官能基(2)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(2)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
さらに別の実施形態において、Rは、官能基(3)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(3)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
さらに別の実施形態において、Rは、官能基(4)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(4)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
さらに別の実施形態において、Rは、官能基(5)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(5)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
さらに別の実施形態において、Rは、官能基(6)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(6)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
さらに別の実施形態において、Rは、官能基(7)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(7)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
さらに別の実施形態において、Rは、官能基(8)であり、Rは、官能基(1)~(8)のいずれかである。R及びRがともに官能基(8)である場合、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
一実施形態において、式(I)におけるRは、n個の置換基を有していてもよいアルキル基、n個の置換基を有していてもよいアルケニル基、n個の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、n個の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、n個の置換基を有していてもよいアリール基、n個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、n個の置換基を有していてもよいアリールアルキル基又はn個の置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、好ましくは、n個の置換基を有していてもよいアルキル基、n個の置換基を有していてもよいアリール基、n個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基又はn個の置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、より好ましくは、n個の置換基を有していてもよいアリール基又はn個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、より一層好ましくは、n個の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0083】
nは、1~5の整数である。nは、好ましくは1~3、より好ましくは2又は3である。nが2又は3である場合、ケトン誘導体(I)は、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として特に有用である。
【0084】
nが2以上である場合、n個の置換基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0085】
n個の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0086】
一実施形態において、式(I)におけるRは、m個の置換基を有していてもよいアルキル基、m個の置換基を有していてもよいアルケニル基、m個の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、m個の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、m個の置換基を有していてもよいアリール基、m個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、m個の置換基を有していてもよいアリールアルキル基又はm個の置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、好ましくは、m個の置換基を有していてもよいアルキル基、m個の置換基を有していてもよいアリール基、m個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基又はm個の置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、より好ましくは、m個の置換基を有していてもよいアリール基又はm個の置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、より一層好ましくは、m個の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0087】
mは、1~5の整数である。mは、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。mが1又は2である場合、ケトン誘導体(I)は、抗糖尿病薬等の医薬品原薬の合成中間体として特に有用である。
【0088】
mが2以上である場合、m個の置換基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
m個の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0090】
n個の置換基のうち1個以上及び/又はm個の置換基のうち1個以上が電子吸引性の置換基である場合、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されやすい。ケトン誘導体(I)の二量体の生成を抑制する観点から、n個の置換基及びm個の置換基は、それぞれ独立して、電子供与性の置換基から選択されることが好ましい。
【0091】
電子供与性の置換基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、脂環式アミノ基、ヘテロアリール基等が挙げられる。ヘテロシクロアルキルオキシ基としては、例えば、テトラヒドロフラニルオキシ基等が挙げられる。ヘテロシクロアルキルチオ基としては、例えば、テトラヒドロフラニルチオ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基等が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基等が挙げられる。アリールアルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。アリールアルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基(例えば、2-チエニル基)、フリル基等が挙げられる。
【0092】
電子吸引性の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、アルキルオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、脂環式アミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、カルボキシル基、ハロアルキル基、ハロアルキルオキシ基、ハロアルキルチオ基、ハロアリール基、ハロアリールオキシ基、ハロアリールチオ基等が挙げられる。
【0093】
式(I)におけるRがn個の置換基を有するフェニル基である場合、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上に電子吸引性の置換基が結合していると、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されやすい。ケトン誘導体(I)の二量体の生成を抑制する観点から、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上には電子吸引性の置換基が結合していないことが好ましく、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち2以上には電子吸引性の置換基が結合していないことがより好ましく、ベンゼン環の2位、4位及び6位のいずれにも電子吸引性の置換基が結合していないことがより一層好ましい。ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上には電子供与性の置換基が結合していてもよい。なお、1位は、-CO-Rが結合している位置である。
【0094】
式(I)におけるRがn個の置換基を有するフェニル基である場合、ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上に電子吸引性の置換基が結合していると、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されやすい。但し、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上に電子吸引性の置換基が結合している場合と比較すると、ケトン誘導体(I)の二量体の生成は促進されにくい。ケトン誘導体(I)の二量体の生成を抑制する観点から、ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上には電子吸引性の置換基が結合していないことが好ましく、ベンゼン環の3位及び5位のいずれにも電子吸引性の置換基が結合していないことがより好ましい。ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上には電子供与性の置換基が結合していてもよい。なお、1位は、-CO-Rが結合している位置である。
【0095】
式(I)におけるRがm個の置換基を有するフェニル基である場合、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上に電子吸引性の置換基が結合していると、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されやすい。ケトン誘導体(I)の二量体の生成を抑制する観点から、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上には電子吸引性の置換基が結合していないことが好ましく、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち2以上には電子吸引性の置換基が結合していないことがより好ましく、ベンゼン環の2位、4位及び6位のいずれにも電子吸引性の置換基が結合していないことがより一層好ましい。ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上には電子供与性の置換基が結合していてもよい。なお、1位は、-CO-Rが結合している位置である。
【0096】
式(I)におけるRがm個の置換基を有するフェニル基である場合、ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上に電子吸引性の置換基が結合していると、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されやすい。但し、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上に電子吸引性の置換基が結合している場合と比較すると、ケトン誘導体(I)の二量体の生成は促進されにくい。ケトン誘導体(I)の二量体の生成を抑制する観点から、ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上には電子吸引性の置換基が結合していないことが好ましく、ベンゼン環の3位及び5位のいずれにも電子吸引性の置換基が結合していないことがより好ましい。ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上には電子供与性の置換基が結合していてもよい。なお、1位は、-CO-Rが結合している位置である。
【0097】
n個の置換基及びm個の置換基のうち1個以上(特に2個以上)が電子吸引性の置換基である場合、ケトン誘導体(I)が電子供与性の低いものとなるため、従来の方法では、目的の還元反応が進行せず、ケトン誘導体(I)の二量体が主生成物として生じる場合がある。これに対して、本発明によれば、n個の置換基及びm個の置換基のうち1個以上(特に2個以上)が電子吸引性の置換基である場合であっても、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されにくいため、二置換メタン誘導体(II)を高収率で得ることができる。
【0098】
式(I)におけるRがn個の置換基を有するフェニル基である場合を例とすると、ベンゼン環の2位、4位及び6位のうち1以上に電子吸引性の置換基(例えば、ハロゲン原子)が結合している場合、及び/又は、ベンゼン環の3位及び5位のうち1以上に電子吸引性の置換基(例えば、ハロゲン原子)が結合している場合であっても、ケトン誘導体(I)の二量体の生成が促進されにくいため、二置換メタン誘導体(II)を高収率で得ることができる。
【0099】
したがって、n個の置換基のうち1個以上が電子吸引性の置換基(例えば、ハロゲン原子)であってもよいし、n個の置換基のうち2個以上が電子吸引性の置換基(例えば、ハロゲン原子)であってもよいし、n個の置換基の全てが電子吸引性の置換基(例えば、ハロゲン原子)であってもよい。
【0100】
一実施形態において、式(I)におけるRは、2個の電子吸引性の置換基を有するフェニル基である。2個の電子吸引性の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子から選択され得る。2個の電子吸引性の置換基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。2個の電子吸引性の置換基のうち一方が結合している位置は、例えば、ベンゼン環の2位、4位及び6位から、他方が結合している位置は、例えば、ベンゼン環のベンゼン環の3位及び5位から選択され得る。一実施形態において、2個の電子吸引性の置換基が結合している位置は、ベンゼン環の2位及び5位である。
【0101】
一実施形態において、式(I)におけるRは、ベンゼン環の2位にハロゲン原子を有し、ベンゼン環の5位にハロゲン原子を有するフェニル基である。2位及び5位のハロゲン原子は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。一実施形態において、2位のハロゲン原子は、塩素原子であり、5位のハロゲン原子は、臭素原子である。
【0102】
一実施形態において、式(I)におけるRは、1個の電子供与性の置換基を有するフェニル基である。1個の電子供与性の置換基は、例えば、アルキルオキシ基から選択され得る。アルキルオキシ基は、炭素数1~6のアルキルオキシ基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキルオキシ基であることがより好ましく、エチルオキシ基であることがより一層好ましい。1個の電子供与性の置換基が結合している位置は、例えば、ベンゼン環の2位、4位及び6位から選択され得る。一実施形態において、1個の電子供与性の置換基が結合している位置は、ベンゼン環の4位である。
【0103】
一実施形態において、式(I)におけるRは、ベンゼン環の4位にアルキルオキシ基を有するフェニル基である。アルキルオキシ基は、炭素数1~6のアルキルオキシ基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキルオキシ基であることがより好ましく、エチルオキシ基であることがより一層好ましい。
【0104】
一実施形態において、式(I)におけるRは、下記式(v)で表される官能基である。
【0105】
【化6】
【0106】
式(v)において、cは、0又は1を表す。
【0107】
式(v)において、W10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。W10は、ヘテロアリーレン基であることが好ましく、硫黄原子をヘテロ原子として含む5員環のヘテロアリーレン基であることがより好ましく、チエニレンであることがより一層好ましい。
【0108】
式(v)において、X10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択されることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択されることがより一層好ましい。ヘテロシクロアルキルオキシ基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。
【0109】
10は、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基又はヘテロシクロアルキルオキシ基を有するアリール基、或いは、非置換のヘテロアリール基であることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基又はテトラヒドロフラニルオキシ基を有するフェニル基、或いは、非置換のベンゾチオフェニル基であることがより好ましい。ヘテロシクロアルキルオキシ基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。
【0110】
式(I)におけるRは、以下の式(Ar-1)、(Ar-2)又は(Ar-3)で表される官能基であることが好ましい。
【0111】
【化7】
【0112】
式(Ar-1)、(Ar-2)及び(Ar-3)において、pは、0~5の整数である。pは、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
【0113】
式(Ar-1)、(Ar-2)及び(Ar-3)において、p個のRは、それぞれ独立して、置換基群α、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基から選択され得る。p個のRは、それぞれ独立して、置換基群α、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基から選択されることが好ましい。置換基群αから選択される1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択されることがより好ましい。アリール基及びヘテロアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0114】
pが2以上である場合、p個のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0115】
式(Ar-1)において、pは、好ましくは1であり、Rは、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有するフェニル基であり、より好ましくは、フッ素原子を有するフェニル基である。非置換又は置換のフェニル基が結合している位置は、好ましくは、チオフェン環の2位である。ハロゲン原子を有するフェニル基において、ハロゲン原子が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0116】
式(Ar-2)において、pは、好ましくは0である。
【0117】
式(Ar-3)において、pは、好ましくは1であり、Rは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~3のアルキルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基は、好ましくは、テトラヒドロフラニルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0118】
一実施形態において、式(I)におけるRは、以下の式(a)、(b)、(c)又は(d)で表される官能基である。なお、「Et」はエチル基を表す。
【0119】
【化8】
【0120】
一実施形態において、式(I)におけるRは、n個の置換基を有していてもよいアリール基であり、式(I)におけるRは、m個の置換基を有していてもよいアリール基又はm個の置換基を有していてもよいヘテロアリールである。
【0121】
一実施形態において、式(I)におけるRは、n個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、式(I)におけるRは、式(Ar-1)、(Ar-2)又は(Ar-3)で表される官能基である。
【0122】
一実施形態において、式(I)におけるRは、n個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、式(I)におけるRは、式(a)、(b)、(c)又は(d)で表される官能基である。
【0123】
一実施形態において、式(I)におけるRは、n個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、式(I)におけるRは、m個の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0124】
一実施形態において、ケトン誘導体(I)は、以下の式で表される化合物である。
【0125】
【化9】
【0126】
≪二置換メタン誘導体(II)≫
二置換メタン誘導体(II)は、下記式(II)で表される。
【0127】
【化10】
【0128】
式(II)において、R及びRは、式(I)と同義である。すなわち、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。式(I)におけるR及びRに関する説明は、式(II)におけるR及びRにも適用される。
【0129】
≪二置換メタン誘導体(II)を製造する方法≫
二置換メタン誘導体(II)を製造する方法は、ケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で接触させた後、得られた反応混合物とチタン化合物とを接触させる工程を含む。
【0130】
ケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で接触させると、以下の式に示すように、ケトン誘導体(I)が還元されてアルコール体(Ia)が生成され、アルコール体(Ia)を含む反応混合物が得られる。得られた反応混合物とチタン化合物とを接触させると、以下の式に示すように、アルコール体(Ia)が還元され、二置換メタン誘導体(II)が得られる。
【0131】
【化11】
【0132】
ケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で接触させると、水素化ホウ素アルカリ金属塩と炭素数1以上5以下の一価アルコール(R100-OH[式中、R100は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。])との反応により、式:MBH(OR100)[式中、Mはアルカリ金属を表し、R100は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。]で表される還元剤が形成される。例えば、炭素数1以上5以下の一価アルコールがメタノールである場合、式:MBH(OCH)[式中、Mはアルカリ金属を表す。]で表される還元剤が形成される。形成された還元剤は、水素化ホウ素アルカリ金属塩よりも活性が高い。したがって、ケトン誘導体(I)の還元が極めて円滑に進行し、二置換メタン誘導体(II)が高収率で得られる。二置換メタン誘導体(II)の収率は、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。本発明によれば、二置換メタン誘導体(II)を定量的収率で得ることも可能である。
【0133】
ケトン誘導体(I)及び水素化ホウ素アルカリ金属塩は、それぞれ、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0134】
水素化ホウ素アルカリ金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。1種の水素化ホウ素アルカリ金属塩を単独で使用してもよいし、2種以上の水素化ホウ素アルカリ金属塩を併用してもよい。式:MBH(OR100)で表される還元剤の活性をより高める観点から、水素化ホウ素アルカリ金属塩は、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。
【0135】
水素化ホウ素アルカリ金属塩の使用量は、ケトン誘導体(I) 1モルに対して、例えば1モル以上4モル以下、好ましくは1モル以上3モル以下、より好ましくは1モル以上2.5モル以下である。水素化ホウ素アルカリ金属塩の使用量は、1種の水素化ホウ素アルカリ金属塩を使用する場合には当該1種の水素化ホウ素アルカリ金属塩の使用量を意味し、2種以上の水素化ホウ素アルカリ金属塩を使用する場合には当該2種以上の水素化ホウ素アルカリ金属塩の合計使用量を意味する。
【0136】
式:MBH(OR100)で表される還元剤の活性をより高める観点から、炭素数1以上5以下の一価アルコールは、好ましくは炭素数1以上3以下の一価アルコール、より好ましくはメタノール又はエタノール、より一層好ましくはメタノールである。1種の一価アルコールを単独で使用してもよいし、2種以上の一価アルコールを併用してもよい。
【0137】
炭素数1以上5以下の一価アルコールの使用量は、ケトン誘導体(I) 1モルに対して、例えば1モル以上10モル以下、好ましくは1モル以上5モル以下、より好ましくは1モル以上4モル以下である。一価アルコールの使用量は、1種の一価アルコールを使用する場合には当該1種の一価アルコールの使用量を意味し、2種以上の一価アルコールを使用する場合には当該2種以上の一価アルコールの合計使用量を意味する。
【0138】
炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒は、炭素数1以上5以下の一価アルコール以外の1種又は2種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、ヘキサン及びヘプタンが好ましく、ジメトキシエタン及びジクロロメタンがより好ましい。
【0139】
炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒の使用量は、カルボン酸誘導体(I) 1gに対して、例えば1mL以上100mL以下、好ましくは3mL以上50mL以下、より好ましくは4mL以上30mL以下である。
【0140】
ケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中で混合することにより、ケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを接触させることができる。
【0141】
ケトン誘導体(I)と水素化ホウ素アルカリ金属塩とを、炭素数1以上5以下の一価アルコールを含む溶媒中、例えば-10℃以上50℃以下、好ましくは0℃以上40℃以下、より好ましくは5℃以上30℃以下の温度で、例えば10分間以上8時間以下、好ましくは20分間以上3時間以下、より好ましくは20分間以上2時間以下、接触させることにより、ケトン誘導体(I)の還元に生成されたアルコール体(Ia)を含む反応混合物を得ることができる。
【0142】
チタン化合物としては、例えば、チタンが0価であるもの、チタンが2価であるもの、3価であるもの、4価であるもの等が知られているが、いずれのチタン化合物であってもよい。チタン化合物としては、例えば、塩化チタン(IV)(TiCl)、臭化チタン(IV)(TiBr)、ヨウ化チタン(IV)(TiI)、酸化チタン(IV)(TiO)、Ti(O-iPr)Cl、Ti(O-iPr)Cl、Ti(O-iPr)Cl等の4価のチタン塩又はその溶媒和物;塩化チタン(III)(TiCl)、臭化チタン(III)(TiBr)、酸化チタン(III)(Ti)等の3価のチタン塩又はその溶媒和物;塩化チタン(II)(TiCl)、酸化チタン(II)(TiO)等の2価のチタン塩又はその溶媒和物;金属Ti等の0価のチタン又はその溶媒和物が挙げられる。なお、「iPr」は、イソプロピル基を意味する。溶媒和物としては、例えば、水和物等が挙げられる。1種のチタン化合物を単独で使用してもよいし、2種以上のチタン化合物を併用してもよい。
【0143】
二置換メタン誘導体(II)の収率を高める観点から、チタン化合物は、下記式(III)で表される3価又は4価のチタン塩又はその溶媒和物であることが好ましい。
【0144】
【化12】
【0145】
式(III)において、r及びsは、r+s=3又は4を満たす0~4の整数である。
【0146】
式(III)において、Rは、ハロゲン原子を表す。Rは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0147】
式(III)において、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択されることが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより一層好ましい。
【0148】
一実施形態において、式(III)におけるRは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、式(III)におけるRは、炭素数1~6のアルキル基である。
【0149】
一実施形態において、式(III)におけるRは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、式(III)におけるRは、炭素数1~3のアルキル基である。
【0150】
二置換メタン誘導体(II)の収率を高める観点から、チタン化合物は、塩化チタン(IV)、臭化チタン(IV)、ヨウ化チタン(IV)及びそれらの溶媒和物から選択されることが好ましく、塩化チタン(IV)及びその溶媒和物から選択されることがより好ましく、塩化チタン(IV)であることがより一層好ましい。
【0151】
チタン化合物の使用量は、カルボン酸誘導体(I) 1モルに対して、例えば0.05モル以上4モル以下、好ましくは0.05モル以上3モル以下、より好ましくは0.05モル以上2.5モル以下である。チタン化合物の使用量は、1種のチタン化合物を使用する場合には当該1種のチタン化合物の使用量を意味し、2種以上のチタン化合物を使用する場合には当該2種以上のチタン化合物の合計使用量を意味する。
【0152】
アルコール体(Ia)を含む反応混合物とチタン化合物とを混合することにより、アルコール体(Ia)を含む反応混合物とチタン化合物とを接触させることができる。
【0153】
アルコール体(Ia)を含む反応混合物とチタン化合物とを、例えば0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下、より好ましくは20℃以上50℃以下の温度で、例えば0.2時間以上17時間以下、好ましくは0.2時間以上10時間以下、より好ましくは0.2時間以上8時間以下、接触させることにより、二置換メタン誘導体(II)を得ることができる。
【0154】
二置換メタン誘導体(II)は、常法に従って単離することができる。例えば、反応混合物に塩酸、水等を加えて反応をクエンチし、有機層を分離し、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液、ブライン溶液等で洗浄し、有機層をろ過し、ろ液を濃縮することにより、二置換メタン誘導体(II)を単離することができる。シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製を行ってもよい。
【0155】
二置換メタン誘導体(II)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【実施例0156】
<製造例1>
以下の反応式に従って、(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)を製造した。
【0157】
【化13】
【0158】
5-ブロモ-2-クロロ安息香酸(5.00g,21.2mmol)のクロロホルム(CHCl)(60mL)懸濁液に、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(0.015g,0.2mmol)を加えた。次いで、塩化オキサリル((COCl))(2.96g,23.3mmol)を10℃で加え、混合物を25℃で20時間撹拌した。混合物をエバポレーションし、残渣をジクロロメタン(CHCl)(20mL)に溶解させた。この溶液に、塩化チタン(IV)(TiCl)(6.04g,31.8mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液を10℃で3分かけて加え、混合物を10℃で15分間撹拌した。この溶液に、フェネトール(2.59g,21.2mmol)を8~12℃で15分かけて加え、混合物を同じ温度で3時間撹拌した。混合物に水(20mL)を加えた。水層をジクロロメタン(20mL)で抽出し、有機層を合わせて水(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥させ、エバポレーションして粗生成物(7.1g)を得た。この粗生成物を、ヘキサン(30mL)を使用する再結晶化に供して、(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)を無色の結晶性固体(5.3g,5-ブロモ-2-クロロ安息香酸からの収率:74%)として得た。
【0159】
得られた(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)の分析結果を以下に示す。なお、得られた(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)のH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルをそれぞれ図1及び2に示す。
H NMR(500MHz) δ(ppm):7.75(d,J=8.7Hz,1H),7.53-7.48(m,1H),7.46(dd,J=2.2,0.8Hz,1H),7.30(dd,J=8.6,0.7Hz,1H),6.93-6.89(m,2H),4.09(q,J=7.0Hz,1H),1.42(t,J=7.0Hz,2H).
13C NMR(125MHz) δ(ppm):192.13,163.95,140.78,133.78,132.67,131.62,131.53,130.17,128.65,120.59,114.56,64.04,14.74.
【0160】
<実施例1>
以下の反応式に従って、4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(BCEB)を製造した。
【0161】
【化14】
【0162】
(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)(100mg,0.1471mmol,1当量)のジメトキシエタン(DME)(1mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)(11mg,0.02941mmol,2当量)及びメタノール(MeOH)(9.4mg,0.2941mmol)を加え、混合物を室温(rt)で1.5時間撹拌した。この混合物に、塩化チタン(IV)(TiCl)(56mg,0.2941mmol,2当量)のジクロロメタン(DCM)(0.2mL)溶液をゆっくりと滴下し、混合物を45℃で1時間撹拌した。混合物を25℃まで冷却し、1N 塩酸(HCl)(10mL)を加え、次いで、ジクロロメタン層を分離し、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液で洗浄し、次いで、ブライン溶液で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥させ、濾過し、エバポレーションして、4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(BCEB)(94mg,BCEKからの収率:定量的収率)をハーフホワイト(half white)の固体として得た。
【0163】
得られた4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(BCEB)の分析結果を以下に示す。なお、得られた4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(BCEB)のH NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルをそれぞれ図3及び4に示す。
H NMR(500MHz) δ(ppm):7.26(ddd,J=10.1,8.1,2.3Hz,1H),7.22(d,J=8.4Hz,1H),7.09(d,J=8.7Hz,1H),6.84(d,J=8.7Hz,1H),4.01(q,J=7.0Hz,1H),3.99(s,1H),1.41(t,J=7.0Hz,1H).
13C NMR (125MHz) δ(ppm):157.73,141.44,133.63,133.17,130.95,130.62,130.46,130.04,120.55,114.69,63.49,38.30,14.98.
【0164】
<比較例1>
以下の反応式に従って、1,2-ビス(5-ブロモ-2-クロロフェニル)-1,2-ビス(4-エトキシフェニル)エタン(4)を製造した。
【0165】
【化15】
【0166】
(5-ブロモ-2-クロロフェニル)(4-エトキシフェニル)メタノン(BCEK)(1g,2.94mmol)のジメトキシエタン(DME)(10mL)溶液にNaBH(0.22g,5.82mmol)を加え、混合物を50℃で10分間攪拌した(フォーミング(foaming)が観察された)。得られた混合物を25℃に冷却し、TiCl(1,12g,1.12mmol)のジクロロメタン(DCM)(2mL)溶液を1分間かけて加え、混合物を50℃で2時間攪拌した。得られた混合物を25℃に冷却し、水(30mL)を加えて反応をクエンチした。得られた混合物をエバポレーションして有機溶媒を除去し、酢酸エチル(AcOEt)(2×15mL)で抽出した。有機層を合わせ、水(15mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、エバポレーションした。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル(AcOEt))により精製し、1,2-ビス(5-ブロモ-2-クロロフェニル)-1,2-ビス(4-エトキシフェニル)エタン(4)(0.93g,収率97%)をオフホワイトの半固体として得た。
【0167】
得られた1,2-ビス(5-ブロモ-2-クロロフェニル)-1,2-ビス(4-エトキシフェニル)エタン(4)の分析結果を以下に示す。
IR(NaCl)vmax:2925,1612,1582,1511cm-1
H NMR(500MHz) δ(ppm):7.55(s,2H),7.13-7.02(m,H),6.67(d,J=7.9Hz,4H),5.21(s,2H),3.90(q,J=7.0Hz,4H),1.34(td,J=6.9,0.8Hz,6H);
13C{H}-NMR-(125MHz) δ(ppm):157.57,142.67,132.77,132.29,131.62,131.02,130.55,129.63,120.70,114.37,77.37,77.12,76.86,63.31,50.37,14.91;
HRMS:[M+H]3027BrCl 計算値649.9723,測定値650.0461.
図1
図2
図3
図4