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特開2024-128392光ファイバのモード群遅延特性を評価するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128392
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】光ファイバのモード群遅延特性を評価するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
G01M11/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037341
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正治
(57)【要約】
【課題】本開示は、数モード光ファイバの群遅延時間を安価な測定器で簡易に測定可能にすることを目的とする。
【解決手段】本開示は、光時間領域反射測定装置で測定された光ファイバでの後方散乱波形を用いて前記光ファイバの群遅延を評価する評価装置であって、前記光ファイバは、被測定光ファイバと各モードの群速度が既知の参照ファイバとが縦続接続された光ファイバであり、前記後方散乱波形は、前記光ファイバの双方向での後方散乱波形を含み、前記双方向での後方散乱波形を用いて求められる前記参照ファイバでの規格化構造不整損失成分を用いて、前記被測定光ファイバにおける群遅延時間を算出する機能部を備える、評価装置である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光時間領域反射測定装置で測定された光ファイバでの後方散乱波形を用いて前記光ファイバの群遅延を評価する評価装置であって、
前記光ファイバは、被測定光ファイバと各モードの群速度が既知の参照ファイバとが縦続接続された光ファイバであり、
前記後方散乱波形は、前記光ファイバの双方向での後方散乱波形を含み、
前記双方向での後方散乱波形を用いて求められる前記参照ファイバでの規格化構造不整損失成分を用いて、前記被測定光ファイバにおける群遅延時間を算出する機能部を備える、
評価装置。
【請求項2】
前記光ファイバは、2本の前記参照ファイバを含み、
前記後方散乱波形は、第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、を含み、
前記機能部は、次式を用いて、前記被測定光ファイバにおける前記第1のモードの群遅延時間τを算出する、
請求項1に記載の評価装置。
【数CL1】
ただし、パラメータは以下のとおりである。
z:前記光ファイバの前記一端からの距離
:第1の前記参照ファイバにおける任意の距離
:第2の前記参照ファイバにおける任意の距離
ν:前記光ファイバ中の前記第1のモードの群速度
τ:前記第1のモードの群遅延時間
n1:前記第1のモードの構造不整損失成分
【請求項3】
前記光ファイバは、2本の前記参照ファイバを含み、
前記後方散乱波形は、
第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードと異なる第2のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの前記第2のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、
前記第2のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの前記第2のモードの後方散乱波形、
を含み、
前記評価装置は、次式を用いて、前記被測定光ファイバにおけるモード間の群遅延時間差Δτを算出する機能部を備える、
請求項1に記載の評価装置。
【数CL2】
ただし、パラメータは以下のとおりである。
z:前記光ファイバの前記一端からの距離
:第1の前記参照ファイバにおける任意の距離
:第2の前記参照ファイバにおける任意の距離
τ:前記第1のモードの群遅延時間
τ:前記第2のモードの群遅延時間
n1:前記第1のモードの構造不整損失成分
n2:前記第2のモードの構造不整損失成分
【請求項4】
前記光ファイバは、2本の前記参照ファイバを含み、
前記後方散乱波形は、
第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの第1のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときに前記光ファイバで前記第1のモードと異なる第2のモードに結合した前記第2のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの第1のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときに前記光ファイバで前記第2のモードに結合した前記第2のモードの後方散乱波形、
を含み、
前記評価装置は、次式を用いて、前記被測定光ファイバにおけるモード間の群遅延時間差Δτを算出する機能部を備える、
請求項1に記載の評価装置。
【数CL3】
ただし、パラメータは以下のとおりである。
z:前記光ファイバの前記一端から距離
:第1の前記参照ファイバにおける任意の距離
:第2の前記参照ファイバにおける任意の距離
τ:前記第1のモードの群遅延時間
τ:前記第2のモードの群遅延時間
n1:前記第1のモードの構造不整損失成分
n2:前記第2のモードの構造不整損失成分
【請求項5】
被測定光ファイバと各モードの群速度が既知の参照ファイバとが縦続接続された光ファイバに試験光パルスを入射したときの後方散乱波形を測定する光時間領域反射測定装置と、
前記光時間領域反射測定装置で測定された後方散乱波形を取得する、請求項1から4のいずれかに記載の評価装置と、
を備えるシステム。
【請求項6】
光時間領域反射測定装置で測定された光ファイバでの後方散乱波形を用いて前記光ファイバの群遅延を評価する評価装置が実行する評価方法であって、
前記光ファイバは、被測定光ファイバと各モードの群速度が既知の参照ファイバとが縦続接続された光ファイバであり、
前記後方散乱波形は、前記光ファイバの双方向での後方散乱波形を含み、
前記双方向での後方散乱波形を用いて求められる前記参照ファイバでの規格化構造不整損失成分を用いて、前記被測定光ファイバにおける群遅延時間を算出する、
評価方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の評価装置に備わる各機能部としてコンピュータを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバのモード群遅延特性を評価するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ1本当たりの伝送容量を拡大するために、マルチコアファイバおよびフューモードファイバを用いた空間多重システム(SDM)が注目されている。これらのファイバを用いたSDMシステムにおいて、群遅延特性は重要な光学特性である。
【0003】
上記のファイバ技術の実用化のためには、ファイバの群遅延特性を簡単に評価する技術が必要である。したがって、群遅延特性を簡単に評価する技術を確立することにより、種々のファイバおよびフューモードファイバ(マルチコアファイバ、フューモードファイバ)の光学特性評価に反映できる。
【0004】
光ファイバの群遅延特性は、被測定ファイバに基本モード及び高次モードを選択的あるいは同時に励振して、被測定光ファイバの出射端における基本モードと高次モード間 の伝搬時間差をサンプリングオシロスコープ等により直接測定するパルス法がある。非特許文献1では、試験光パルスを被試験光ファイバの中心軸に対して軸ずれさせた状態で入射することにより被試験光ファイバに基本モード及び高次モードを同時に励振し、各モードで出射される試験光パルスの伝搬時間差から群遅延時間差を測定するパルス法が開示されている。
【0005】
非特許文献2では、周波数掃引法による群遅延時間特性の測定方法が開示されている。非特許文献3では、モード間の群遅延差の評価法として干渉法とフーリエ変換とを用いた測定法が開示されている。また、干渉法による測定法もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P. F. Kolesar and D. J. Mazzarese, “ Understanding multimode bandwidth and differential mode delay measurements and their applications,” Proc. of the 51st IWCS, pp 453-460, 2002.
【非特許文献2】S. Ohno et. al., “High-resolution measurement of differential mode delay of few-mode fiber using phase reference technique for swept-frequency interferometry,” Optical Fiber technology, vol. 40, pp. 56-61, 2018.
【非特許文献3】R. Miyazaki et al.,” Technique for simultaneously measuring differential group delay of each core in a few mode multi-core fiber,” in Proc. OECC2018, Jeju, Korea, P2-02, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載のパルス法では、パルス光源、サンプリングオシロスコープ等の高価な装置が必要である。また、非特許文献2に記載の周波数掃引法では、周波数掃引光源や高速・広帯域な受光器が必要である。非特許文献3の方法は、モード間の干渉波形を得るために被試験光ファイバの群遅延時間差に応じて適切な長さの被試験光ファイバを準備する必要があるため、測定が複雑である。
【0008】
つまり、数モード光ファイバの群遅延時間を安価な測定器で簡易に測定することができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、安価に実現可能な光時間領域反射測定装置(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)および被測定ファイバに接続されたパラメータが既知の2本の参照ファイバを用いて、基本モードの双方向の後方散乱波形を測定する。本開示では、基本モードを所望なモードに変換するモード変換器を用いて、所望なモードを被測定ファイバに入射し、所望なモードの双方向後方散乱波形も測定する。評価装置は、双方向での基本モードおよび所望なモードの後方散乱光を処理することで、基本モードおよび所望なモードの群遅延時間を測定する。
【0010】
本開示は、この構成を用いた群遅延時間評価法により、所望なモードの群遅延時間、基本モードと所望なモード間の群遅延時間差を測定できる。本測定法は、2本のファイバパラメータが既知の参照ファイバを利用することで、測定精度を向上できる(相対測定法)。
【0011】
本開示のシステムは、光時間領域反射測定装置と、前記光時間領域反射測定装置で測定された後方散乱波形を取得し、本開示の評価方法を実行する本開示の評価装置と、を備える。
【0012】
本開示では、光時間領域反射測定装置は、被測定光ファイバと各モードの群速度が既知の参照ファイバとが縦続接続された光ファイバに試験光パルスを入射したときの後方散乱波形を測定する。前記光ファイバは、2本の前記参照ファイバを含む。
【0013】
本開示の評価装置は、前記光時間領域反射測定装置で測定された光ファイバでの後方散乱波形を用いて前記光ファイバの群遅延を評価する。
【0014】
具体的には、前記後方散乱波形は、前記光ファイバの双方向での後方散乱波形を含み、本開示の評価装置は、前記双方向での後方散乱波形を用いて求められる前記参照ファイバでの第1の規格化構造不整損失成分を用いて、前記被測定光ファイバにおける群遅延時間を算出する機能部を備える。
【0015】
前記後方散乱波形は、第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの第1のモードの後方散乱波形、前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、を含んでいてもよい。このとき、前記機能部は、式(b1)を用いて、前記被測定光ファイバにおける前記第1のモードの群遅延時間τを算出する。
【0016】
前記後方散乱波形は、第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードと異なる第2のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの前記第2のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの前記第1のモードの後方散乱波形、
前記第2のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの前記第2のモードの後方散乱波形、
を含んでいてもよい。
このとき、本開示の評価装置は、式(e1)を用いて、前記被測定光ファイバにおけるモード間の群遅延時間差Δτを算出する機能部を備える。
【0017】
前記後方散乱波形は、
第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときの前記光ファイバでの第1のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの一端に入射したときに前記光ファイバで前記第1のモードと異なる第2のモードに結合した前記第2のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときの前記光ファイバでの第1のモードの後方散乱波形、
前記第1のモードの試験光パルスを前記光ファイバの他端に入射したときに前記光ファイバで前記第2のモードに結合した前記第2のモードの後方散乱波形、
を含んでいてもよい。
このとき、本開示の評価装置は、式(e2)を用いて、前記被測定光ファイバにおけるモード間の群遅延時間差Δτを算出する機能部を備える。
【0018】
本発明の評価装置はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。本開示のプログラムは、本開示に係る評価装置に備わる各機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであり、本開示に係る評価装置が実行する評価方法に備わる各手順をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0019】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、数モード光ファイバにおける所望モードの群遅延時間を安価な測定装置で簡易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示のシステム構成例を示す。
図2】本開示の方法の一例を示す。
図3】測定結果の一例を示す。
図4】測定結果の一例を示す。
図5】測定結果の一例を示す。
図6】本開示の方法の一例を示す。
図7】測定結果の一例を示す。
図8】測定結果の一例を示す。
図9】測定結果の一例を示す。
図10】測定結果の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(測定系)
図1に、本開示のシステム構成例を示す。本開示のシステムは、本開示の評価装置は、参照ファイバ11及び12、OTDR13、モードカップラー(本開示ではMCと略記することがある。)14、評価装置15、を備える。評価装置15はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0024】
モードカップラー14は、OTDR13からの光パルスのモードを変換可能な任意のモード変換器である。モードカップラー14は、所望のモードの光を光ファイバ100に入射し、所望のモードの光ファイバ100の後方散乱光をOTDR13に出力する。本実施形態では、LP01モードとLP11モードの光がモードカップラー14に入力される例を示す。
【0025】
OTDR13は、モードカップラー14から出力されたモードの後方散乱波形を測定する。ここで、本実施形態では、OTDR13の接続を光ファイバ端100Aから光ファイバ端100Bに繋ぎ変え、双方向での後方散乱波形を測定する。評価装置15は、後方散乱波形を用いて、被測定ファイバ10の群遅延時間を測定する。
【0026】
本開示では、OTDR13の測定対象である光ファイバ100に、参照ファイバ11及び12が含まれる。参照ファイバ11及び12は、いずれも測定対象の伝搬モードを伝搬可能なフューモードファイバであり、群速度、群遅延、モードフィールド径、比屈折率差等の光学特性を定めるパラメータが既知である。ただし、参照ファイバ11及び12の群速度は異なる。
【0027】
本実施形態では、光ファイバ端100Aに参照ファイバ11及び12に被測定ファイバ10が順に接続され、光ファイバ端100Bに被測定ファイバ10が接続される例を示すが、この接続順位は任意である。また本開示は、1本の被測定ファイバ10に限らず、被測定ファイバ10が任意の数のn本であっても適用可能である。以下、理解が容易になるよう、被測定ファイバ10が1本である例について説明する。
【0028】
OTDR13を用いて双方向で基本モードを入射したときの基本モードおよび所望なモードに結合する後方散乱光を処理することで、基本モードおよび所望なモードの群遅延時間を測定する。
【0029】
本実施形態におけるパラメータは以下のとおりである。
L:光ファイバ端100Aから光ファイバ端100Bまでの長さである。
z:光ファイバ端100Aからの距離である。
α(z):レーリー散乱損失である。
ΔT:試験光パルスのパルス幅である。
Pa:A端から入射する試験光パルスのパワーである。
ν(z):光ファイバ中のLP01モードの群速度である。
(z):LP01モードの後方散乱の捕獲率である。
α:LP01モードの光ファイバ損失である。
ν(z):光ファイバ中のLPmnモードの群速度である。
(z):LPmnモードの後方散乱の捕獲率である。
α:LPmnモードの光ファイバ損失である。
:光ファイバ端100Bから入射する試験光パルスのパワーである。
:光学特性を定めるパラメータが既知である第1の参照ファイバ11上の位置である。
:光学特性を定めるパラメータが既知である第2の参照ファイバ12上の位置である。
【0030】
(第1の実施形態)
図2に、本実施形態の測定方法の一例を示す。本実施形態の測定方法は、手順S11~S15を順に備える。手順S11~S14の順序は任意である。以下、具体的に説明する。
【0031】
(手順S11)
モードカップラー14を光ファイバ端100Aに接続し、OTDR13をモードカップラー14のLP01モードのポートに接続する。OTDR13が試験光パルスをLP01モードのポートに出力すると、LP01モードの試験光パルスが光ファイバ端100Aに入射される。LP01モードの試験光パルスは光ファイバ100で反射または散乱され、光ファイバ100での後方散乱光はモードカップラー14に出射される。モードカップラー14は光ファイバ100での後方散乱光のうちのLP01モードをLP01モードのポートに出力する。これにより、LP01モードの後方散乱光がOTDR13で測定される。
【0032】
OTDR13で得られるLP01モードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
(z)=Pν(z)ΔTB(z)α(z)exp[-2αz] (1)
【0033】
(手順S12)
モードカップラー14を光ファイバ端100Aに接続し、OTDR13をモードカップラー14のLPmnモードのポートに接続する。OTDR13が試験光パルスをLPmnモードのポートに出力すると、LPmnモードの試験光パルスが光ファイバ端100Aに入射される。LPmnモードの試験光パルスは光ファイバ100で反射または散乱され、光ファイバ100での後方散乱光はモードカップラー14に出射される。モードカップラー14は光ファイバ100での後方散乱光のうちのLPmnモードをLPmnモードのポートから出力する。これにより、LPmnモードの後方散乱光がOTDR13で測定される。
【0034】
OTDR13で得られるLPmnモードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
(z)=Pν(z)ΔTB(z)α(z)exp[-2αz] (2)
【0035】
(手順S13)
モードカップラー14を光ファイバ端100Bに接続し、手順S11と同様に、LP01モードの後方散乱光をOTDR13で測定する。OTDR13で得られるLP01モードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
(L-z)=Pν(z)ΔTB(z)α(z)exp[-2α(L-z)]
(3)
【0036】
(手順S14)
モードカップラー14を光ファイバ端100Bに接続し、手順S12と同様に、LPmnモードの後方散乱光をOTDR13で測定する。OTDR13で得られるLPmnモードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
(L-z)=Pν(z)ΔTB(z)α(z)exp[-2α(L-z)]
(4)
【0037】
(手順S15)
本実施形態ではz=zで規格化した規格化構造不整損失成分を用いて、各パラメータを評価する。そこで、まずは構造不整損失成分および規格化構造不整損失成分を算出する。
【0038】
及びPのデシベル表示をS及びSとすると、LP01モードの構造不整損失成分I(dB)は、式(1)および式(3)を用いて次式で表される。
【数11】
【0039】
式(11)で得られるI(z)の波形をI(z)で規格化することで、zの構造不整損失成分で規格化したLP01モードの規格化構造不整損失成分In1(dB)が求められる。In1(z)は、次式で求めることができる。
【数12】
【0040】
及びPのデシベル表示をS及びSとすると、LPmnモードの構造不整損失成分I(dB)は、式(2)および式(4)を用いて次式で表される。
【数13】
【0041】
式(13)で得られるI(z)の波形をI(z)で規格化することで、zの構造不整損失成分で規格化したLPmnモードの規格化構造不整損失成分In2(dB)が求められる。In2(z)は、次式で求めることができる。
【数14】
【0042】
(a)評価装置15は、次式を用いて、LP01モードの群速度νを算出することができる。
【数a1】
【0043】
ここで、ν(z)及びν(z)は既知である。またLP01モードの規格化構造不整損失成分In1(z)は式(12)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LP01モードの群速度νを算出することができる。
【0044】
(b)評価装置15は、次式を用いて、LP01モードの群遅延τを算出することができる。
【数b1】
【0045】
ここで、τ(z)及びτ(z)は既知である。またLP01モードの規格化構造不整損失成分In1(z)は式(12)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LP01モードの群遅延τを算出することができる。
【0046】
(c)評価装置15は、次式を用いて、LPmnモードの群速度νを算出することができる。
【数c1】
【0047】
ここで、ν(z)及びν(z)は既知である。またLPmnモードの規格化構造不整損失成分In2(z)は式(14)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LPmnモードの群速度νを算出することができる。
【0048】
(d)評価装置15は、次式を用いて、LPmnモードの群遅延τを算出することができる。
【数d1】
【0049】
ここで、τ(z)及びτ(z)は既知である。またLPmnモードの規格化構造不整損失成分In2(z)は式(14)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LPmnモードの群遅延τを算出することができる。
【0050】
(e)評価装置15は、次式を用いて、LP01とLPmnモード間の群遅延時間差Δτを算出する。
【数e1】
【0051】
図3から図5に、参照ファイバ11、参照ファイバ12、被試験光ファイバ10の順で直列に接続された光ファイバの群遅延および群遅延時間差を測定した結果の一例を示す。同図において、距離が0~1km,1~4km,4~7km区間はそれぞれ、参照ファイバ11、参照ファイバ12、被試験光ファイバ10の区間である。図3は、LP01モードの波長1.55μmの群遅延分布の一例である。図4はLP11モードの波長1.55μmの群遅延分布の一例である。図5は、波長1.55μmにおけるLP01とLP11モードの群遅延時間差(DGD)分布の一例である。
【0052】
図5の破線Lは、評価装置15の算出結果の一例である。評価装置15において、z=0.5km、z=1.5kmでの参照ファイバ12の屈折率分布を用いて、式e1を計算した。この結果、破線Lのように、z=4~7kmにおける被測定光ファイバ10での群遅延時間差Δτ(z)を演算処理によって導出できていることが分かる。
【0053】
(第2の実施形態)
図6に、本実施形態の測定方法の一例を示す。本実施形態では、結合したモードの後方散乱光を測定するために、マルチチャンネルOTDR13を用いる。本実施形態の測定方法は、手順S21~S25を順に備える。手順S21~S24の順序は任意である。以下、具体的に説明する。
【0054】
(手順S21)
モードカップラー14を光ファイバ端100Aに接続し、OTDR13をモードカップラー14のLP01モードのポートに接続する。OTDR13が試験光パルスをLP01モードのポートに出力すると、LP01モードの試験光パルスが光ファイバ端100Aに入射される。LP01モードの試験光パルスは光ファイバ100で反射または散乱され、光ファイバ100での後方散乱光はモードカップラー14に出射される。モードカップラー14は光ファイバ100での後方散乱光のうちのLP01モードをLP01モードのポートに出力する。これにより、LP01モードの後方散乱光がOTDR13で測定される。
【0055】
OTDR13で得られるLP01モードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
(z)=Pν(z)ΔTB(z)α(z)exp[-2αz] (5)
【0056】
(手順S22)
モードカップラー14を光ファイバ端100Aに接続し、OTDR13をモードカップラー14のLP01モード及びLPmnモードのポートに接続する。OTDR13が試験光パルスをLP01モードのポートに出力すると、LP01モードの試験光パルスが光ファイバ端100Aに入射される。LP01モードの試験光パルスは光ファイバ100で反射または散乱され、光ファイバ100での後方散乱光はモードカップラー14に出射される。モードカップラー14は光ファイバ100での後方散乱光のうちのLPmnモードをLPmnモードのポートから出力する。これにより、LPmnモードの後方散乱光がOTDR13で測定される。
【0057】
OTDR13で得られるLP01モードに結合したLPmnモードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
【数6】
【0058】
(手順S23)
モードカップラー14を光ファイバ端100Bに接続し、手順S21と同様に、LP01モードの後方散乱光をOTDR13で測定する。OTDR13で得られるLP01モードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
(L-z)=Pν(z)ΔTB(z)α(z)exp[-2α(L-z)]
(7)
【0059】
(手順S24)
モードカップラー14を光ファイバ端100Bに接続し、手順S22と同様に、LPmnモードの後方散乱光をOTDR13で測定する。OTDR13で得られるLP01モードに結合したLPmnモードの後方散乱光強度Pは次式で表される。
【数8】
【0060】
(手順S25)
本実施形態ではz=zで規格化した構造不整損失成分を用いて、各パラメータを評価する。そこで、まずは構造不整損失成分および規格化構造不整損失成分を算出する。
【0061】
及びPのデシベル表示をS及びSとすると、LP01モードの構造不整損失成分I(dB)は、式(5)および式(7)を用いて次式で表される。
【数21】
【0062】
式(21)で得られるI(z)の波形をI(z)で規格化することで、zの構造不整損失成分で規格化したLP01モードの規格化構造不整損失成分In1(dB)が求められる。In1(z)は、次式で求めることができる。
【数22】
【0063】
及びPのデシベル表示をS及びSとすると、LPmnモードの構造不整損失成分I(dB)は、式(6)および式(8)を用いて次式で表される。
【数23】
【0064】
式(23)で得られるI(z)の波形をI(z)で規格化することで、zの構造不整損失成分で規格化したLPmnモードの規格化構造不整損失成分In2(dB)が求められる。In2(z)は、次式で求めることができる。
【数24】
【0065】
(a)評価装置15は、次式を用いて、LP01モードの群速度νを算出することができる。
【数a2】
【0066】
ここで、ν(z)及びν(z)は既知である。またLP01モードの規格化構造不整損失成分In1(z)は式(22)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LP01モードの群速度νを算出することができる。
【0067】
(b)評価装置15は、次式を用いて、LP01モードの群遅延τを算出することができる。
【数b2】
【0068】
ここで、τ(z)及びτ(z)は既知である。またLP01モードの規格化構造不整損失成分In1(z)は式(22)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LP01モードの群遅延τを算出することができる。
【0069】
(c)評価装置15は、次式を用いて、LPmnモードの群速度νを算出することができる。
【数c2】
【0070】
ここで、ν(z)、ν(z)、ν(z)及びν(z)は既知である。またLPmnモードの規格化構造不整損失成分In2(z)は式(24)を用いて算出することができる。このため、本実施形態は、LPmnモードの群速度νを算出することができる。
【0071】
(d)評価装置15は、次式を用いて、LPmnモードの群遅延τを算出することができる。
【数d2】
【0072】
(e)評価装置15は、次式を用いて、LP01とLPmnモード間の群遅延時間差Δτを算出する。
【数e2】
【0073】
図7から図10に、被試験光ファイバ10、参照ファイバ12、参照ファイバ11の順で直列に接続された光ファイバの群遅延および群遅延時間差を測定した結果の一例を示す。同図において、距離が0~3km,3~6km,6~7km区間はそれぞれ、被試験光ファイバ10、参照ファイバ12、参照ファイバ11の区間である。図7は、LP01およびLP11モードの波長1.55μmの群速度分布の一例である。図8は、波長1.55μmにおけるLP01とLP11モード間の群遅延時間差分布特性の一例である。図9は、LP01モードの波長1.55μmの群遅延特性の一例である。図10は、LP11モードの波長1.55μmの群遅延特性の一例である。
【0074】
図8図10の実線Lは、評価装置15の算出結果の一例である。評価装置15において、z=6.5km、z=3.5kmでの参照ファイバ12のパラメータを用いて、式e2を計算した。この結果、図8の実線Lのように、z=0~3kmにおける被測定光ファイバ10での群遅延時間差Δτ(z)を演算処理によって導出できていることが分かる。
【0075】
(第1の実施形態における数式の導出)
LP01モードの規格化構造不整損失成分In1(dB)は、式(12)と同様、光学特性が既知である第2の参照ファイバ12上の位置zを用いて、次式で表される。
【数31】
【0076】
式(12)と式(31)の比を算出することで、次式が得られる。
【数32】
したがって
【数33】
【0077】
一般的に、光ファイバ長手方向でのνおよびαの変化は、Bの変化に対して小さいため、上式から以下の近似式が得られる。
【数34】
【0078】
また、νおよびαはBに相関があるパラメータであるため、以下の式が成り立つとみなす。
【数35】
【0079】
LPmnモードの規格化構造不整損失成分In2(dB)も同様である。
【数36】
したがって
【数37】
【0080】
一般的に、光ファイバ長手方向でのvおよびαの変化は、Bの変化に対して小さいため、上式から以下の近似式が得られる。
【数38】
【0081】
また、νおよびαはBに相関があるパラメータであるため、以下の式が成り立つとみなす。
【数39】
【0082】
(第2の実施形態における数式の導出)
LP01モードの規格化構造不整損失成分In1(dB)は、式(22)と同様、光学特性が既知である第2の参照ファイバ12上の位置zを用いて、次式で表される。
【数41】
【0083】
式(22)と式(41)の比を算出することで、次式が得られる。
【数42】
したがって
【数43】
【0084】
上記の式を満足する条件は以下のとおりである。
【数44】
【0085】
(LPmnモードの群遅延時間)
LP01モードと結合したLPnmモードに関する双方向OTDR波形より、z=zの値で規格化した構造不整損失成分は、次式で記述できる。
【数51】
【0086】
また、式(51)は、z=z1においても成り立つので次式が得られる。
【数52】
【0087】
この2つの式から、In2(z)/In2(z)を計算すると次式が得られる。
【数53】
式(53)は、ν(z)、B(z)およびα(z)を満足する条件である。LP01モードと同様、式(53)を満足するν(z)、B(z)およびα(z)の関係を求めると以下が得られる。
【数54】
【数55】
【0088】
式(55)より、ν(z)を求める。式(55)から次式が得られる。
【数56】
【0089】
式(56)より、ν(z)は次式のように得られる。
【数57】
【0090】
LP01モードの群速度ν(z)は次式のように求まる。
【数58】
【0091】
式(58)を式(57)に代入すると、ν(z)は次式のように求まる。
【数59】
【0092】
また、式(59)より、τ(z)=1/ν(z)およびτ(z)=1/ν(z)の関係を用いると、以下の関係式が得られる。
【数59-1】
この関係より、式(56)は次式のように書き直せる。
【数60】
【0093】
したがって、次式が得られる。
【数61】
【0094】
ここで、式(b1)及び式(b2)を式(11)に代入すると、群遅延τ(z)は、次式のように求まる。
【数62】
【符号の説明】
【0095】
11、12:参照ファイバ
13:OTDR
14:モードカップラー
15:評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10