(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129700
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】チオエステル誘導体の製造方法、ケトン誘導体の製造方法及びアルデヒド誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 327/26 20060101AFI20240919BHJP
C07C 49/84 20060101ALI20240919BHJP
C07C 45/61 20060101ALI20240919BHJP
C07C 49/784 20060101ALI20240919BHJP
C07C 49/813 20060101ALI20240919BHJP
C07C 255/56 20060101ALI20240919BHJP
C07C 253/30 20060101ALI20240919BHJP
C07D 333/38 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C07C327/26
C07C49/84 C
C07C45/61
C07C49/784
C07C49/813
C07C255/56
C07C253/30
C07D333/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039062
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】ムラニ シャヘーン カシム
(72)【発明者】
【氏名】タプキル サンジープ ラメシュラオ
(72)【発明者】
【氏名】ナディヴェードヒ マヘシュワラ レディ
(72)【発明者】
【氏名】内林 晃成
(72)【発明者】
【氏名】康 家傲
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006AC54
4H006AC60
4H006AD17
4H006BB25
4H006BC10
(57)【要約】
【課題】本発明は、、チオエステル誘導体、ケトン誘導体及びアルデヒド誘導体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させてチオエステル誘導体(I)を製造する方法;上記方法によりチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得た後、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とグリニャール試薬(4)と銅塩とを接触させてケトン誘導体(II)を製造する方法;上記方法によりチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得た後、パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を反応混合物と有機亜鉛試薬(5)とを接触させてケトン誘導体(II)を製造する方法;並びに、上記方法によりチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得た後、パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とシラン化合物(6)とを接触させてアルデヒド誘導体(III)を製造する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式中、W
1及びW
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるチオエステル誘導体(I)を製造する方法であって、
下記式(1):
【化2】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
2は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるエステル誘導体(1)と、
下記式(2):
【化3】
[式中、W
3は、前記と同義である。]
で表されるチオール(2)と、
下記式(3):
【化4】
[式中、R
1は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表し、X
1は、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(3)と、
を接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記工程において、前記チオール(2)と前記グリニャール試薬(3)とを接触させて、ハロゲノマグネシウムチオラートを得た後、前記ハロゲノマグネシウムチオラートと前記エステル誘導体(1)とを接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下記式(II):
【化5】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるケトン誘導体(II)を製造する方法であって、
以下の工程:
(1A)請求項1又は2に記載の方法により、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2A)前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、
下記式(4a):
【化6】
[式中、W
4は、前記と同義であり、X
2は、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(4a)、及び、
下記式(4b):
【化7】
[式中、W
4及びX
2は、前記と同義である。]
で表されるグリニャール試薬(4b)
から選択されるグリニャール試薬(4)と、
銅塩と、
を接触させて、前記ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項4】
工程(2A)において、前記グリニャール試薬(4)と前記銅塩とを接触させて、有機銅試薬を得た後、前記有機銅試薬と前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とを接触させて、前記ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
下記式(II):
【化8】
[式中、W
1及びW
4は、前記と同義である。]
で表されるケトン誘導体(II)を製造する方法であって、
以下の工程:
(1B)請求項1又は2に記載の方法により、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2B)パラジウム触媒の存在下、
前記チオエステル誘導体(I)を反応混合物と、
下記式(5a):
【化9】
[式中、W
4は、前記と同義であり、X
3は、ハロゲン原子を表す。]
で表される有機亜鉛試薬(5a)、及び
下記式(5b):
【化10】
[式中、W
4は、前記と同義であり、X
4は、カルボキシラート基を表す。]
で表される有機亜鉛試薬(5b)
から選択される有機亜鉛試薬(5)と、
を接触させて、前記ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
工程(1B)の後かつ工程(2B)の前に、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、チオール捕捉剤とを接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在する前記チオール(2)を前記チオール捕捉剤で捕捉する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
下記式(III):
【化11】
[式中、W
1は、前記と同義である。]
で表されるアルデヒド誘導体(III)を製造する方法であって、
以下の工程:
(1C)請求項1又は2に記載の方法により、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2C)パラジウム触媒の存在下、
前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、
下記式(6):
【化12】
[式中、L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
で表されるシラン化合物(6)と、
を接触させて、前記アルデヒド誘導体(III)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項8】
工程(1C)の後かつ工程(2C)の前に、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、チオール捕捉剤とを接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在する前記チオール(2)を前記チオール捕捉剤で捕捉する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオエステル誘導体の製造方法、ケトン誘導体の製造方法及びアルデヒド誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SGLT-2阻害剤は、抗糖尿病薬として有用である。なお、「SGLT-2」は、ナトリウム-グルコース共輸送担体-2を意味する。SGLT-2阻害剤としては、例えば、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)等が知られている。
【0003】
SGLT-2阻害剤の製造方法として、1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体の保護基を脱保護してカナグリフロジンを合成することが提案されている(特許文献1参照)。1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体は、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体とも称され、SGLT-2阻害剤を製造するための中間体として注目されている(特許文献1~2及び非特許文献1~3)。
【0004】
C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体の製造方法として種々の提案がされており、例えば、-78℃の超低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にアリールリチウムを作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献1及び3)、-20~-10℃の低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にArMgBr・LiCl(Arはアリール基を表す)等のターボグリニャール試薬を作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献2)、リチウムトリn-ブチルマグネサート(nBu3MgLi)から得られたマグネシウムアート錯体を用いて、-15℃程度の温度環境下、D-グルコノラクトン誘導体にアリール基を付加反応させる方法(特許文献2)等が知られている。また、ニッケル触媒存在下でチオエステル誘導体に有機亜鉛試薬を反応させることによりカップリングが起こり、ケトン誘導体が得られることが報告されている(非特許文献4及び5)。
【0005】
また、下記式(X)で表されるレムデシビル(Remdesivir)は、抗ウイルス薬として用い得る化合物である。レムデシビルは、例えば、RSウイルス、コロナウイルス等の一本鎖RNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。
【0006】
【0007】
特許文献3には、レムデシビル及びその中間体の製造方法が開示されている。特許文献3には、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)及びn-ブチルリチウム存在下、下記式(XI)で表されるラクトンと、下記式(Ar’’)で表されるブロモピラゾールとを、-78℃で反応させることにより、下記式(XII)で表されるヒドロキシヌクレオシドが得られることが記載されている。このヒドロキシヌクレオシドは、レムデシビル合成のための中間体として用いることができる。なお、「Bn」はベンジル基を表す。
【0008】
【0009】
C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体又はレムデシビル若しくはその中間体の製造に従前用いられてきた手法はいずれも、厳しい低温条件下で高価な試薬を用いて実施する必要があるため、設備コスト又はランニングコストが極めて高価となり、目的物を安価に量産することが困難である。このため、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体又はレムデシビル若しくはその中間体を工業的に効率的に製造することを可能とする、チオエステル誘導体の製造方法、ケトン誘導体の製造方法等が求められている。
【0010】
しかしながら、エステル誘導体から、直接、ケトン誘導体を製造することは、過反応の発生(グリニャール試薬が2個入ってアルコールが生成される)等の点で困難であった(非特許文献6及び7)。
【0011】
また、エステル誘導体から還元によりアルデヒド誘導体を製造する方法が知られているが、低温で行わないと、アルコール誘導体への過還元が起こる。その改良法として、チオエステル誘導体をPd/C及びトリエチルシランと接触させることにより、アルデヒド誘導体を緩和な条件下製造する方法が知られているが、一旦、チオエステル誘導体を合成及び単離する必要があった(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2010/043682号公報
【特許文献2】WO2015/012110号公報
【特許文献3】WO2012/012776号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.Med.Chem.2008,51,1145-1149
【非特許文献2】Org.Lett.2014,16,4090-4093
【非特許文献3】J.Org.Chem.1989,54,610-612
【非特許文献4】Tetrahedron Letters 2002,43,1039-1042
【非特許文献5】Chem.Eur.J.2018,24,8774-8778
【非特許文献6】Tetrahedron Letters 1981,22,3815
【非特許文献7】Organic Preparations and Procedures Int.1993,25,15
【非特許文献8】Synthesis,2002,1121-1123
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、チオエステル誘導体の新規な製造方法、ケトン誘導体の新規な製造方法及びアルデヒド誘導体の新規な製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]下記式(I):
【化3】
[式中、W
1及びW
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるチオエステル誘導体(I)を製造する方法であって、
下記式(1):
【化4】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
2は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるエステル誘導体(1)と、
下記式(2):
【化5】
[式中、W
3は、前記と同義である。]
で表されるチオール(2)と、
下記式(3):
【化6】
[式中、R
1は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表し、X
1は、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(3)と、
を接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
[2]前記工程において、前記チオール(2)と前記グリニャール試薬(3)とを接触させて、ハロゲノマグネシウムチオラートを得た後、前記ハロゲノマグネシウムチオラートと前記エステル誘導体(1)とを接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る、[1]に記載の方法。
[3]下記式(II):
【化7】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるケトン誘導体(II)を製造する方法であって、
以下の工程:
(1A)請求項1又は2に記載の方法により、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2A)前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、
下記式(4a):
【化8】
[式中、W
4は、前記と同義であり、X
2は、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(4a)、及び、
下記式(4b):
【化9】
[式中、W
4及びX
2は、前記と同義である。]
で表されるグリニャール試薬(4b)
から選択されるグリニャール試薬(4)と、
銅塩と、
を接触させて、前記ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
[4]工程(2A)において、前記グリニャール試薬(4)と前記銅塩とを接触させて、有機銅試薬を得た後、前記有機銅試薬と前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とを接触させて、前記ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る、[3]に記載の方法。
[5]下記式(II):
【化10】
[式中、W
1及びW
4は、前記と同義である。]
で表されるケトン誘導体(II)を製造する方法であって、
以下の工程:
(1B)請求項1又は2に記載の方法により、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2B)パラジウム触媒の存在下、
前記チオエステル誘導体(I)を反応混合物と、
下記式(5a):
【化11】
[式中、W
4は、前記と同義であり、X
3は、ハロゲン原子を表す。]
で表される有機亜鉛試薬(5a)、及び
下記式(5b):
【化12】
[式中、W
4は、前記と同義であり、X
4は、カルボキシラート基を表す。]
で表される有機亜鉛試薬(5b)
から選択される有機亜鉛試薬(5)と、
を接触させて、前記ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
[6]工程(1B)の後かつ工程(2B)の前に、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、チオール捕捉剤とを接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在する前記チオール(2)を前記チオール捕捉剤で捕捉する、[5]に記載の方法。
[7]下記式(III):
【化13】
[式中、W
1は、前記と同義である。]
で表されるアルデヒド誘導体(III)を製造する方法であって、
以下の工程:
(1C)請求項1又は2に記載の方法により、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2C)パラジウム触媒の存在下、
前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、
下記式(6):
【化14】
[式中、L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
で表されるシラン化合物(6)と、
を接触させて、前記アルデヒド誘導体(III)を含む反応混合物を得る工程
を含む、前記方法。
[8]工程(1C)の後かつ工程(2C)の前に、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、チオール捕捉剤とを接触させて、前記チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在する前記チオール(2)を前記チオール捕捉剤で捕捉する、[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、チオエステル誘導体の新規な製造方法、ケトン誘導体の新規な製造方法及びアルデヒド誘導体の新規な製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。本明細書に記載の2以上の実施形態を組み合わせることができ、2以上の実施形態の組み合わせも本発明に包含される。
【0018】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で用いられる用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。なお、「値A~値B」という表現は、別段規定される場合を除き、値A以上値B以下を意味する。
【0019】
ハロゲン原子
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
【0020】
アルキル基
アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12(例えば、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2)である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上であり、分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上である。
【0021】
アルケニル基
アルケニル基の炭素数は、例えば2~20、好ましくは2~15、より好ましくは2~12(例えば、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4又は2~3)である。アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素数は2以上であり、分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は3以上である。
【0022】
シクロアルキル基
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。
【0023】
ヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロシクロアルキル基の員数は、例えば3~8員、好ましくは4~7員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等が挙げられる。
【0024】
一実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基から選択される。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは、テトラヒドロフラニル基である。
【0025】
アリール基
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~14、好ましくは6~14、より好ましくは6~10の芳香族炭化水素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。
【0026】
ヘテロアリール基
ヘテロアリール基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の芳香族複素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは4~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロアリール基は、好ましくは単環式又は二環式の4~10員、好ましくは5~10員の芳香族複素環基である。
【0027】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0028】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0029】
一実施形態において、ヘテロアリール基は、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基及びピリジル基から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは、チエニル基及びベンゾチオフェニル基から選択される。
【0030】
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基は、それぞれ、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基、ハロアリール基又はハロヘテロアリール基が有するハロゲン原子の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0031】
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0032】
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基は、それぞれ、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0033】
アリールアルキル基
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0034】
アリールアルケニル基
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0035】
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アルキル基及び式:-CO-アリール基で表される基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0036】
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基は、それぞれ、式:-O-アルキル基、式:-O-ハロアルキル基、式:-O-ヘテロシクロアルキル基及び式:-O-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0037】
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-アルキル基、式:-S-ハロアルキル基、式:-S-ヘテロシクロアルキル基及び式:-S-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0038】
アルキルオキシカルボニル基
アルキルオキシカルボニル基は、式:-CO-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0039】
アミノ基
アミノ基は、式:-NH2で表される基(1級アミノ基)である。
【0040】
モノアルキルアミノ基
モノアルキルアミノ基は、式:-NH(-Q1)[式中、Q1は、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q1で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0041】
ジアルキルアミノ基
ジアルキルアミノ基は、式:-N(-Q2)(-Q3)[式中、Q2及びQ3は、それぞれ独立して、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q2又はQ3で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0042】
脂環式アミノ基
脂環式アミノ基は、例えば、5又は6員環の脂環式アミノ基であり、5又は6員環の脂環式アミノ基としては、例えば、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジン-1-イル基、ピラゾリジン-1-イル基、イミダゾリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基等が挙げられる。脂環式アミノ基は、脂環式アミノ基の結合手を有する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択されるヘテロ原子(例えば、1個のヘテロ原子)を含んでいてもよい。脂環式アミノ基は、好ましくは、モルホリノ基である。
【0043】
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アミノ基、式:-CO-モノアルキルアミノ基、式:-CO-ジアルキルアミノ基及び式:-CO-脂環式アミノ基で表される基であり、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及び脂環式アミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0044】
ヒドロキシアルキル基
ヒドロキシアルキル基は、1個以上の水素原子がヒドロキシで置換されたアルキル基である。アルキルに関する説明は、上記の通りである。ヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ヒドロキシアルキル基におけるヒドロキシの位置及び個数は特に限定されない。ヒドロキシの個数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1または2個、より一層好ましくは1個である。ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、1,2-ジヒドロキシエチル、1,2-ジヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0045】
1以上の置換基
1以上の置換基は、好ましくは1~3個の置換基、より好ましくは1個又は2個の置換基を意味する。
【0046】
置換基群α
置換基群αは、以下の置換基で構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アミノカルボニル基
(α-11)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-12)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-13)脂環式アミノカルボニル基
(α-14)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-15)保護基で保護されていてもよいチオール基
(α-16)ヒドロキシアルキル基
(α-17)アルキルカルボニル基
【0047】
置換基群β
置換基群βは、以下の置換基で構成される。
(β-1)式(i)で表される置換基
(β-2)式(ii)で表される置換基
【0048】
以下、置換基群α及びβについて説明する。
【0049】
(α-5)において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0050】
(α-6)において、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、より一層好ましくは1である。
【0051】
(α-14)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
ヒドロキシ基保護基は、目的の反応を行う際にはヒドロキシ基を保護することができ、目的の反応の終了後にはヒドロキシ基から脱離させることができるものであることが好ましい。ヒドロキシ基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。
【0052】
アルキルカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基が挙げられる。置換基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキルオキシ基、炭素数2~11(好ましくは炭素数2~9、より好ましくは炭素数2~7、より好ましくは炭素数2~5)のアルキルオキシカルボニル基等から選択され得る。1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。アルキルカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~5のアルキルカルボニル基、より好ましくは、アセチル基又はピバロイル基であり、より一層好ましくは、アセチル基である。
【0053】
アリールカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基等が挙げられる。
【0054】
アリールアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、トリチル基等が挙げられる。アリールアルキル型保護基は、好ましくは、ベンジル基である。
【0055】
アルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であり、より一層好ましくは、メチル基である。
【0056】
アリールアルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数9~13のアリールアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数10~14のアリールアルキルオキシプロピル基等のアリールアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アリールアルキルオキシアルキル型保護基は、例えば、1以上の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はメチルオキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、より好ましくはベンジルオキシメチル基である。
【0057】
アルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数4~10のアルキルオキシプロピル基等のアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキルオキシアルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、より好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチルオキシ基又はエチルオキシ基を有していてもよい炭素数2~6のアルキルオキシメチル基、より一層好ましくは、メチルオキシメチル基である。
【0058】
シリル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。シリル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基、より好ましくは、炭素数1~5のアルキル基及びフェニル基から選択される官能基を有するシリル基、より一層好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0059】
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルケニルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。オキシカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~6のアルキルオキシカルボニル基、炭素数3~6のアルケニルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基、より好ましく、メチルオキシメチル基、アリルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0060】
アセタール型保護基としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0061】
アリール型保護基としては、例えば、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0062】
保護基で保護されたヒドロキシ基は、式:-O-Qで表される基であることが好ましい。Qは、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールアルキル基を表す。式:-O-Qで表される基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。Qは、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、エチル基、テトラヒドロフラニル基、アセチル基又はベンジル基であることがより好ましい。
【0063】
(α-15)保護基で保護されていてもよいチオール基
チオール基保護基は、目的の反応を行う際にはチオール基を保護することができ、目的の反応の終了後にはチオール基から脱離させることができるものであることが好ましい。チオール基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。これらの保護基に関する説明は、上記の通りである。
【0064】
保護基で保護されたチオール基は、式:-S-Qで表される基であることが好ましい。Qに関する説明は、上記の通りである。
【0065】
【0066】
式(i)において、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基又は保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基を表す。保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基は、上記式:-O-Qで表される基であることが好ましい。aは、0以上3以下である。
【0067】
【0068】
式(ii)において、V10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。アルキレン基及びハロアルキレン基の炭素数は、それぞれ、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。アリーレン基及びハロアリーレン基の炭素数は、それぞれ、4~14であることが好ましく、6~14であることがより好ましい。ヘテロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基の炭素数は、それぞれ、4~14であることが好ましい。V10は、アルキレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがより好ましい。
【0069】
式(ii)において、bは、0又は1を表す。bは、1であることが好ましい。
【0070】
式(ii)において、W10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。W10は、ヘテロアリーレン基であることが好ましく、硫黄原子をヘテロ原子として含む5員環のヘテロアリーレン基であることがより好ましく、チエニレンであることがより一層好ましい。
【0071】
式(ii)において、cは、0又は1を表す。cは、1であることが好ましい。
【0072】
式(ii)において、X10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され得る。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択されることがより好ましい。ヘテロシクロアルキルオキシ基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0073】
X10は、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基又はヘテロシクロアルキルオキシ基を有するアリール基、或いは、非置換のヘテロアリール基であることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基又はテトラヒドロフラニルオキシ基を有するフェニル基、或いは、非置換のベンゾチオフェニル基であることがより好ましい。ヘテロシクロアルキルオキシ基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。
【0074】
≪チオエステル誘導体(I)≫
チオエステル誘導体(I)は、下記式(I)で表される。
【0075】
【0076】
式(I)において、W1及びW3は、それぞれ独立して、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。
【0077】
以下、官能基(1)~(8)について説明する。
【0078】
(1)置換基を有していてもよいアルキル基
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0079】
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基
アルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0080】
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基
シクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0081】
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロシクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0082】
(5)置換基を有していてもよいアリール基
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0083】
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基
ヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0084】
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基
アリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0085】
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
アリールアルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。
【0086】
官能基(1)としては、例えば、下記式(iii)で表される官能基が挙げられる。
【0087】
【0088】
式(iii)において、R14、R15及びR16は、それぞれ独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールアルキル基を表す。R14及びR16は、同一の置換基であることが好ましく、R15は、R14及びR16とは異なる種類の置換基であることが好ましい。R14及びR16は、それぞれ、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、アセチル基又はベンジル基であることが好ましく、ベンジル基であることがより好ましい。R15は、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、アセチル基又はベンジル基であることがより好ましく、アセチル基であることがより一層好ましい。
【0089】
式(iii)において、dは、1以上5以下である。dは、2又は3であることが好ましい。
【0090】
官能基(5)(すなわち、置換基を有していてもよいアリール基)において、アリール基の結合手を有する炭素原子(すなわち、-CO-と結合する炭素原子)の両隣に位置する炭素原子は、置換基を有さないことが好ましい。残りの炭素原子は、置換基を有していてもよい。
【0091】
官能基(6)(すなわち、置換基を有していてもよいヘテロアリール基)において、ヘテロアリール基の結合手を有する炭素原子(すなわち、-CO-と結合する炭素原子)の両隣に位置する炭素原子又はヘテロ原子は、置換基を有さないことが好ましい。残りの炭素原子又はヘテロ原子は置換基を有していてもよい。
【0092】
一実施形態において、官能基(1)~(8)における1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基からなる群(以下「置換基群α1」という。)から選択され、より好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基からなる群(以下「置換基群α2」という。)から選択され、より一層好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基からなる群(以下「置換基群α3」という。)から選択される。
【0093】
一実施形態において、W1は、官能基(1)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(1)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
一実施形態において、W1は、官能基(2)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(2)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0095】
一実施形態において、W1は、官能基(3)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(3)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0096】
一実施形態において、W1は、官能基(4)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(4)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0097】
一実施形態において、W1は、官能基(5)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(5)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0098】
一実施形態において、W1は、官能基(6)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(6)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0099】
一実施形態において、W1は、官能基(7)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(7)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0100】
一実施形態において、W1は、官能基(8)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW3がともに官能基(8)である場合、W1及びW3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0101】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W3は、置換基を有していてもよいアルキル基である。W1は、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。W3は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~16のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~14のアルキル基である。
【0102】
W1が、置換基を有していてもよいアリール基であり、W3が、置換基を有していてもよいアルキル基であるチオエステル誘導体(I)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Me」はメチル基を表す。
【0103】
【0104】
上記具体例において、W1に対応するフェニル基における置換基の数、位置及び種類は変更可能である。置換基の数は、1以上、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0105】
上記具体例において、W3に対応するドデシル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0106】
上記具体例において、W3に対応するドデシル基は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0107】
一実施形態において、W1及びW3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。W1は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。W3は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~16のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~14のアルキル基である。
【0108】
W1及びW3が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であるチオエステル誘導体(I)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0109】
【0110】
上記具体例において、W1に対応するイソプロピル基及びtert-ブチル基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0111】
上記具体例において、W1に対応するイソプロピル基及びtert-ブチル基は、それぞれ、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0112】
上記具体例において、W3に対応するドデシル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0113】
上記具体例において、W3に対応するドデシル基は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0114】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、W3は、置換基を有していてもよいアルキル基である。W1は、例えば、置換基を有していてもよいチエニル基である。W3は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~18のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~16のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~14のアルキル基である。
【0115】
W1が、置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、W3が、置換基を有していてもよいアルキル基であるチオエステル誘導体(I)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Me」はメチル基を表す。
【0116】
【0117】
上記具体例において、W1に対応するチエニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0118】
上記具体例において、W3に対応するドデシル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0119】
上記具体例において、W3に対応するドデシル基は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0120】
≪ケトン誘導体(II)≫
ケトン誘導体(II)は、下記式(II)で表される。
【0121】
【0122】
式(II)におけるW1は、式(I)におけるW1と同義である。
【0123】
式(II)において、W4は、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。官能基(1)~(8)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、W4にも適用される。
【0124】
一実施形態において、W1は、官能基(1)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(1)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0125】
一実施形態において、W1は、官能基(2)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(2)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0126】
一実施形態において、W1は、官能基(3)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(3)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0127】
一実施形態において、W1は、官能基(4)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(4)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0128】
一実施形態において、W1は、官能基(5)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(5)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0129】
一実施形態において、W1は、官能基(6)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(6)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0130】
一実施形態において、W1は、官能基(7)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(7)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0131】
一実施形態において、W1は、官能基(8)であり、W4は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)又は(6)、より一層好ましくは官能基(5)である。W1及びW4がともに官能基(8)である場合、W1及びW4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0132】
W4は、下記式(iv)で表される官能基であることが好ましい。一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、下記式(iv)で表される官能基である。
【0133】
【0134】
式(iv)において、Y10は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。アリーレン基の炭素数は、4~14であることが好ましく、6~14であることがより好ましい。ヘテロアリーレン基の炭素数は、4~14であることが好ましい。アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され得る。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより好ましい。アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0135】
Y10は、置換基を有するアリーレン基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基を有するアリーレン基であることがより好ましく、フッ素原子、塩素原子又はメチル基を有するフェニレン基であることがより好ましい。
【0136】
Y10は、式(II)中の-CO-と結合する炭素原子の両隣に位置する炭素原子は置換基を有さず、残りの炭素原子は置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、式(II)中の-CO-と結合する炭素原子の両隣に位置する炭素原子若しくはヘテロ原子は置換基を有さず、残りの炭素原子若しくはヘテロ原子は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基であることが好ましい。Y10は、式(II)中の-CO-と結合する炭素原子に対してオルト位には置換基を有さず、メタ位及び/又はパラ位には置換基を有していてもよいフェニレン基であることがより好ましい。
【0137】
式(iv)において、V10、W10、X10、b及びcは、それぞれ、式(ii)と同義である。
【0138】
あるいは、W4は、下記式(vi)で表される官能基であることが好ましい。一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、下記式(vi)で表される官能基である。
【0139】
【0140】
式(vi)において、R41及びR42は、それぞれ独立して、水素原子又はアミノ基の保護基を表す。アミノ基の保護基としては、カルバメート系、アシル系、アミド系、スルホンアミド系、フタロイル基等、いずれの保護基を用いてもよい。カルバメート系の保護基としては、例えば、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。アシル系の保護基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。アミド系の保護基としては、例えば、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。スルホンアミド系の保護基としては、例えば、p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基等が挙げられる。アミノ基の保護基は、アシル系又はアミド系の保護基であることが好ましい。アミノ基の保護基は、ピバロイル基又はトリフルオロアセチル基であることがより好ましい。R41及びR42は、互いに結合してフタロイル基等のアミノ基の保護基を形成していてもよい。Arが式(vi)の構造を有していると、レムデシビルの中間体として好適に用いることができる。
【0141】
式(II)におけるW4は、ケトン誘導体(II)をSGLT-2阻害剤又はその誘導体の製造原料として用いる観点から、SGLT-2阻害剤が有する官能基と同一であるか、SGLT-2阻害剤が有する官能基を誘導化した官能基であることが好ましい。
【0142】
ここで、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)及びダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)をはじめとするSGLT-2阻害剤は、下記式(A)で表される官能基を有する。
【0143】
したがって、式(II)におけるW4は、下記式(A)で表される官能基であることが好ましい。一実施形態において、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、下記式(A)で表される官能基である。
【0144】
【0145】
式(A)において、dは、0~4の整数を表す。dは、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。dが2以上である場合、d個のRaは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0146】
式(A)において、d個のRaは、それぞれ独立して、置換基群αから選択され得る。d個のRaは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ及びハロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択されることがより好ましい。
【0147】
式(A)において、Ar’は、下記式(v)で表される官能基である。
【0148】
【0149】
式(v)において、W10、X10及びcは、それぞれ、式(ii)と同義である。
【0150】
式(A)において、Ar’は、以下の式(Ar’-1)、(Ar’-2)又は(Ar’-3)で表される官能基であることが好ましい。
【0151】
【0152】
式(Ar’-1)、(Ar’-2)及び(Ar’-3)において、pは、0~5の整数である。pは、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
【0153】
式(Ar’-1)、(Ar’-2)及び(Ar’-3)において、p個のRbは、それぞれ独立して、置換基群α、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基から選択され得る。p個のRbは、それぞれ独立して、置換基群α、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基から選択されることが好ましい。置換基群αから選択される1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択されることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択されることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択されることがより好ましい。アリール基及びヘテロアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。
【0154】
pが2以上である場合、p個のRbは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0155】
式(Ar’-1)において、pは、好ましくは1であり、Rbは、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有するフェニル基であり、より好ましくは、フッ素原子を有するフェニル基である。非置換又は置換のフェニル基が結合している位置は、好ましくは、チオフェン環の2位である。ハロゲン原子を有するフェニル基において、ハロゲン原子が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0156】
式(Ar’-2)において、pは、好ましくは0である。
【0157】
式(Ar’-3)において、pは、好ましくは1であり、Rbは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~3のアルキルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基は、好ましくは、テトラヒドロフラニルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0158】
d=1である場合、式(A)で表される官能基は、下記式(B)で表される官能基であることが好ましい。
【0159】
【0160】
式(B)において、Ra及びAr’は、式(A)と同義である。
【0161】
式(A)又は(B)で表される官能基は、下記式(Ar-1)、(Ar-2)、(Ar-3)又は(Ar-4)で表される官能基であることが好ましい。なお、「Et」は、エチル基を表す。
【0162】
【0163】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、式(Ar-1)で表される官能基である。
【0164】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、式(Ar-2)で表される官能基である。
【0165】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、式(Ar-3)で表される官能基である。
【0166】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4は、式(Ar-4)で表される官能基である。
【0167】
W1が、置換基を有していてもよいアリール基であり、W4が、式(Ar-4)で表される官能基であるケトン誘導体(II)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基を表す。
【0168】
【0169】
上記具体例において、W1に対応するフェニル基における置換基の数、位置及び種類は変更可能である。置換基の数は、1以上、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0170】
一実施形態において、W1及びW4は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基である。
【0171】
W1及びW4が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基であるケトン誘導体(II)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Me」はメチル基、「Ph」はフェニル基を表す。
【0172】
【0173】
上記具体例において、W1に対応するフェニル基における置換基の数、位置及び種類は変更可能である。置換基の数は、1以上、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0174】
上記具体例において、W4に対応するフェニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0175】
≪アルデヒド誘導体(III)≫
アルデヒド誘導体(III)は、下記式(III)で表される。
【0176】
【0177】
式(III)におけるW1は、式(I)におけるW1と同義である。
【0178】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基である。
【0179】
W1が、置換基を有していてもよいアリール基であるアルデヒド誘導体(III)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Me」はメチル基を表す。
【0180】
【0181】
上記具体例において、W1に対応するフェニル基における置換基の数、位置及び種類は変更可能である。置換基の数は、1以上、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0182】
≪エステル誘導体(1)≫
エステル誘導体(1)は、下記式(1)で表される。
【0183】
【0184】
式(1)におけるW1は、式(I)におけるW1と同義である。
【0185】
式(1)において、W2は、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。官能基(1)~(8)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、W2にも適用される。
【0186】
一実施形態において、W1は、官能基(1)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(1)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0187】
一実施形態において、W1は、官能基(2)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(2)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0188】
一実施形態において、W1は、官能基(3)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(3)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0189】
一実施形態において、W1は、官能基(4)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(4)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0190】
一実施形態において、W1は、官能基(5)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(5)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0191】
一実施形態において、W1は、官能基(6)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(6)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0192】
一実施形態において、W1は、官能基(7)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(7)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0193】
一実施形態において、W1は、官能基(8)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より好ましくは官能基(1)である。W1及びW2がともに官能基(8)である場合、W1及びW2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0194】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W2は、置換基を有していてもよいアルキル基である。W1は、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。W2は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。
【0195】
W1が、置換基を有していてもよいアリール基であり、W2が、置換基を有していてもよいアルキル基であるエステル誘導体(1)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基を表す。
【0196】
【0197】
上記具体例において、W1に対応するフェニル基における置換基の数、位置及び種類は変更可能である。置換基の数は、1以上、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0198】
上記具体例において、W2に対応するエチル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0199】
上記具体例において、W2に対応するエチル基は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0200】
一実施形態において、W1及びW2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基である。W1及びW2は、それぞれ独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。
【0201】
W1及びW2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基であるエステル誘導体(1)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Et」はエチル基を表す。
【0202】
【0203】
上記具体例において、W1に対応するイソプロピル基及びtert-ブチル基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0204】
上記具体例において、W1に対応するイソプロピル基及びtert-ブチル基は、それぞれ、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0205】
上記具体例において、W2に対応するエチル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0206】
上記具体例において、W2に対応するエチル基は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0207】
一実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、W2は、置換基を有していてもよいアルキル基である。W1は、例えば、置換基を有していてもよいチエニル基である。W2は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、より一層好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である。
【0208】
W1が、置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、W2が、置換基を有していてもよいアルキル基であるエステル誘導体(1)の具体例として、以下の化合物が挙げられる。なお、「Et」はエチル基を表す。
【0209】
【0210】
上記具体例において、W1に対応するチエニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0211】
上記具体例において、W2に対応するエチル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0212】
上記具体例において、W2に対応するエチル基は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0213】
≪チオール(2)≫
チオール(2)は、下記式(2)で表される。
【0214】
【0215】
式(2)におけるW3は、式(I)におけるW3と同義である。
【0216】
チオール(2)としては、例えば、エタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、tert-ブチルメルカプタン、チオフェノール等が挙げられる。チオール(2)は、好ましくは、ドデカンチオールである。
【0217】
≪グリニャール試薬(3)≫
グリニャール試薬(3)は、下記式(3)で表される。
【0218】
【0219】
式(3)において、R1は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より好ましくは1~6、より好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。アリールアルキル基は、好ましくは、ベンジル基である。アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0220】
式(3)において、X1は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択されることが好ましく、塩素原子及び臭素原子から選択されることがより好ましく、塩素原子であることがより一層好ましい。
【0221】
R1がアルキル基であるグリニャール試薬(3)としては、例えば、アルキルマグネシウムブロミド、アルキルマグネシウムクロリド、アルキルマグネシウムヨージド等が挙げられる。
【0222】
アルキルマグネシウムブロミドとしては、例えば、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、n-プロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムブロミド、イソブチルマグネシウムブロミド、sec-ブチルマグネシウムブロミド、tert-ブチルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0223】
アルキルマグネシウムクロリドとしては、例えば、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、n-プロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、イソブチルマグネシウムクロリド、sec-ブチルマグネシウムクロリド、tert-ブチルブチルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
【0224】
アルキルマグネシウムヨージドとしては、例えば、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-プロピルマグネシウムヨージド、イソプロピルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、sec-ブチルマグネシウムヨージド、tert-ブチルブチルマグネシウムヨージド等が挙げられる。
【0225】
R1がアリール基であるグリニャール試薬(3)としては、例えば、アリールマグネシウムブロミド、アリールマグネシウムクロリド、アリールマグネシウムヨージド等が挙げられる。
【0226】
アリールマグネシウムブロミドとしては、例えば、フェニルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0227】
アリールマグネシウムクロリドとしては、例えば、フェニルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
【0228】
アリールマグネシウムヨージドとしては、例えば、フェニルマグネシウムヨージド等が挙げられる。
【0229】
R1がアリールアルキル基であるグリニャール試薬(3)としては、例えば、アリールアルキルマグネシウムブロミド、アリールアルキルマグネシウムクロリド、アリールアルキルマグネシウムヨージド等が挙げられる。
【0230】
アリールアルキルマグネシウムブロミドとしては、例えば、ベンジルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0231】
アリールアルキルマグネシウムクロリドとしては、例えば、ベンジルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
【0232】
アリールアルキルマグネシウムヨージドとしては、例えば、ベンジルマグネシウムヨージド等が挙げられる。
【0233】
グリニャール試薬(3)は、好ましくは、イソプロピルマグネシウムクロリドである。
【0234】
≪グリニャール試薬(4)≫
グリニャール試薬(4)は、グリニャール試薬(4a)及び(4b)から選択される。
【0235】
グリニャール試薬(4a)は、下記式(4a)で表される。
【0236】
【0237】
グリニャール試薬(4b)は、下記式(4b)で表される。
【0238】
【0239】
式(4a)及び(4b)におけるW4は、式(II)におけるW4と同義である。
【0240】
式(4a)及び(4b)において、X2は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択されることが好ましく、塩素原子及び臭素原子から選択されることがより好ましく、塩素原子であることがより一層好ましい。
【0241】
グリニャール試薬(4)として、グリニャール試薬(4a)又は(4b)のいずれか一方を使用してもよいし、グリニャール試薬(4a)及び(4b)の両方を使用してもよい。両方を使用する場合、両者の混合物を反応系に添加してもよいし、両者を別々に反応系に添加してもよい。
【0242】
グリニャール試薬(4b)は、ターボグリニャール試薬と呼ばれる。グリニャール試薬(4b)は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、グリニャール試薬(4b)は、不活性化ガス(例えば、窒素、アルゴン等)に置換した反応容器において、塩化リチウム(LiCl)の存在下、マグネシウムと、式:W4X2[式中、W4及びX2は、前記と同義である。]で表されるハロゲン有機化合物とを、有機溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0243】
≪銅塩≫
銅塩としては、例えば、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銅(II)(CuCl2)、臭化銅(II)(CuBr2)、ヨウ化銅(II)(CuI2)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酢酸銅(I)(CuOAc)、酢酸銅(II)(Cu(OAc)2)、ピバル酸銅(I)(CuOPiv)、ピバル酸銅(II)(Cu(OPiv)2)、硫酸銅(I)(Cu2SO4)、硫酸銅(II)(CuSO4)、シアン化銅(I)(CuCN)、3-メチルサリチル酸銅(I)、メシチレン銅(I)(MesCu)、イソプロポキシ銅(I)(i-PrOCu)、硫黄(S)を含む銅塩等が挙げられる。1種の銅塩を単独で使用してもよいし、2種以上の銅塩を組み合わせて使用してもよい。
【0244】
硫黄(S)を含む銅塩としては、例えば、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)(CuTC)等が挙げられる。Sは、Cuとの親和性が高く、銅塩において、SがCuに配位し易い。この配位により、Cuが活性化され、収率が高まる。
【0245】
銅塩に含まれる銅原子の価数は、通常1価又は2価であるが、好ましくは1価である。銅原子の価数が1価である銅塩は、触媒作用が優れている。銅原子の価数が1価である銅塩のうち、CuCN、CuCl、CuI、CuBr、CuOAc及びCuTCは、触媒作用が特に優れている。したがって、銅塩は、CuCN、CuCl、CuI、CuBr、CuOAc及びCuTCから選択されることが好ましく、CuI、CuBr及びCuTCから選択されることがより好ましい。
【0246】
≪有機亜鉛試薬(5)≫
有機亜鉛試薬(5)は、有機亜鉛試薬(5a)及び(5b)から選択される。
【0247】
有機亜鉛試薬(5a)は、下記式(5a)で表される。
【0248】
【0249】
有機亜鉛試薬(5b)は、下記式(5b)で表される。
【化43】
【0250】
有機亜鉛試薬(5)として、有機亜鉛試薬(5a)又は(5b)のいずれか一方を使用してもよいし、有機亜鉛試薬(5a)及び(5b)の両方を使用してもよい。両方を使用する場合、両者の混合物を反応系に添加してもよいし、両者を別々に反応系に添加してもよい。
【0251】
式(5a)及び(5b)におけるW4は、式(II)におけるW4と同義である。
【0252】
式(5a)において、X3は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択されることが好ましく、塩素原子及び臭素原子から選択されることがより好ましく、臭素原子であることがより一層好ましい。
【0253】
有機亜鉛試薬(5a)は、公知の手法に従って製造することができる。例えば、有機亜鉛試薬(5a)は、式:W4MgX3で表されるグリニャール試薬と、式:Zn(X3)2で表されるハロゲン化亜鉛と、塩化リチウム(LiCl)とを有機溶媒中で接触させることにより製造することができる。
【0254】
式(5b)において、X4は、カルボキシラート基を表す。カルボキシラート基は、式:-O-C(=O)-R10で表される基である。R10は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。アルキル基は、例えば、メチル基、t-ブチル基等である。R10がt-ブチル基である場合、X4はピバラート基である。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。アルキル基及びアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基及びアリール基がそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択され得る。置換基群αから1以上の置換基が選択されるとともに、置換基群βから1以上の置換基が選択されてもよい。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0255】
有機亜鉛試薬(5b)は、公知の手法に従って製造することができる。例えば、有機亜鉛試薬(5b)は、式:W4MgX3で表されるグリニャール試薬と、式:Zn(OCOR10)2で表される亜鉛カルボキシラートと、塩化リチウム(LiCl)とを有機溶媒中で接触させることにより製造することができる。
【0256】
ハロゲン化亜鉛及び亜鉛カルボキシラートの使用量は、それぞれ、グリニャール試薬 1モルに対して、例えば1モル以上2モル以下、好ましくは1モル以上1.5モル以下である。
【0257】
塩化リチウムの使用量は、グリニャール試薬 1モルに対して、例えば1モル以上2モル以下、好ましくは1モル以上1.5モル以下である。
【0258】
有機亜鉛試薬(5a)又は(5b)の製造に使用される有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。1種の有機溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の有機溶媒の混合溶媒を使用してもよい。有機溶媒は、THF、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン又はこれらの2種以上の混合溶媒であることが好ましく、THF、トルエン又はこれらの混合溶媒であることがより好ましい。
【0259】
グリニャール試薬とハロゲン化亜鉛又は亜鉛カルボキシラートと塩化リチウムとを、有機溶媒中、例えば20℃以上60℃以下、好ましくは30℃以上50℃以下の温度で、例えば0.5時間以上3時間以下、好ましくは0.5時間以上2時間以下、接触させることにより、有機亜鉛試薬(5)を得ることができる。グリニャール試薬とハロゲン化亜鉛又は亜鉛カルボキシラートと塩化リチウムとの接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0260】
≪シラン化合物(6)≫
シラン化合物(6)は、下記式(6)で表される。
【0261】
【0262】
式(6)において、L1、L2及びL3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3である。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。アルキル基及びアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基及びアリールがそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0263】
一実施形態において、L1、L2及びL3のうちの1個が置換基を有していてもよいアルキル基であり、残りの2個が置換基を有していてもよいアリール基である。
【0264】
一実施形態において、L1、L2及びL3のうちの2個が置換基を有していてもよいアルキル基であり、残りの1個が置換基を有していてもよいアリール基である。
【0265】
一実施形態において、L1、L2及びL3の全てが置換基を有していてもよいアルキル基である。
【0266】
一実施形態において、L1、L2及びL3の全てが置換基を有していてもよいアリール基である。
【0267】
L1、L2及びL3のうちの1個以上が置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、2個以上が置換基を有していてもよいアルキル基であることがより好ましく、3個すべてが置換基を有していてもよいアルキル基であることがより一層好ましい。
【0268】
L1、L2及びL3のうちの1個以上がアルキル基である場合、式:-Si-L1(-L2)(-L3)で表される基は、アルキルシリル基である。アルキルシリル基としては、例えば、tert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)、メチルジフェニルシリル基(MDPS)等のモノアルキルシリル基;ジメチルフェニルシリル基等のジアルキルシリル基;トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、ジメチルイソプロピルシリル基(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル基(DEIPS)、ジメチルテキシルシリル基(TDS)、tert-ブチルジメチルシリル基(TBS)、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、ジ-tert-ブチルメチルシリル基(DTBMS)等のトリアルキルシリル基が挙げられる。
【0269】
シラン化合物(6)としては、例えば、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリフェニルシラン、ジメチルフェニルシラン、tert-ブチルジメチルシラン等が挙げられる。シラン化合物(6)は、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン及びトリフェニルシランから選択されることが好ましく、トリエチルシラン及びトリイソプロピルシランから選択されることがより好ましい。
【0270】
≪チオール捕捉剤(チオールスカベンジャー)≫
チオール捕捉剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基を不活性化する化合物である。
【0271】
チオール捕捉剤としては、例えば、シリル化剤、アルキル化剤、ベンジル化剤、アリル化剤、アセチル化剤、ピバロイル化剤、メシル化剤、p-トルエンスルホニル化剤、トリフルオロメタンスルホニル化剤、ジフェニルホスホリル化剤等が挙げられる。
【0272】
シリル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をシリル化する化合物である。
【0273】
シリル化剤としては、例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0274】
【0275】
式(7)において、L4、L5及びL6は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3である。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。アルキル基及びアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基及びアリールがそれぞれ有し得る置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。一実施形態において、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択され、好ましくは、置換基群α1から選択され、より好ましくは、置換基群α2から選択され、より一層好ましくは、置換基群α3から選択される。
【0276】
一実施形態において、L4、L5及びL6のうちの1個が置換基を有していてもよいアルキル基であり、残りの2個が置換基を有していてもよいアリール基である。
【0277】
一実施形態において、L4、L5及びL6のうちの2個が置換基を有していてもよいアルキル基であり、残りの1個が置換基を有していてもよいアリール基である。
【0278】
一実施形態において、L4、L5及びL6の全てが置換基を有していてもよいアルキル基である。
【0279】
一実施形態において、L4、L5及びL6の全てが置換基を有していてもよいアリール基である。
【0280】
L4、L5及びL6のうちの1個以上が置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、2個以上が置換基を有していてもよいアルキル基であることがより好ましく、3個すべてが置換基を有していてもよいアルキル基であることがより一層好ましい。
【0281】
L4、L5及びL6のうちの1個以上がアルキル基である場合、式:-Si-L4(-L5)(-L6)で表される基は、アルキルシリル基である。アルキルシリル基としては、例えば、tert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)、メチルジフェニルシリル基(MDPS)等のモノアルキルシリル基;ジメチルフェニルシリル基等のジアルキルシリル基;トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、ジメチルイソプロピルシリル基(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル基(DEIPS)、ジメチルテキシルシリル基(TDS)、tert-ブチルジメチルシリル基(TBS)、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、ジ-tert-ブチルメチルシリル基(DTBMS)等のトリアルキルシリル基が挙げられる。これらのうち、トリアルキルシリル基が好ましく、TMSがより好ましい。
【0282】
式(7)において、L7は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択されることが好ましく、塩素原子及び臭素原子から選択されることがより好ましく、塩素原子であることがより一層好ましい。
【0283】
式(7)で表される化合物としては、例えば、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリイソプロピルシラン、tert-ブチルジメチルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン等が挙げられる。これらのうち、トリメチルシリルクロリドが好ましい。
【0284】
アルキル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をアルキル化する化合物である。アルキル化剤としては、例えば、ヨードメタン、ヨードエタン等が挙げられる。
【0285】
ベンジル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をベンジル化する化合物である。ベンジル化剤としては、例えば、ベンジルブロミド、ベンジルクロリド等が挙げられる。
【0286】
アリル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をアリル化する化合物である。アリル化剤としては、例えば、アリルクロリド等が挙げられる。
【0287】
アセチル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をアセチル化する化合物である。アセチル化剤としては、例えば、アセチルクロリド等が挙げられる。
【0288】
ピバロイル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をピバロイル化する化合物である。ピバロイル化としては、例えば、ピバロイルクロリド等が挙げられる。
【0289】
メシル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をメシル化する化合物である。メシル化剤としては、例えば、メシルクロリド等が挙げられる。
【0290】
p-トルエンスルホニル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をp-トルエンスルホニル化する化合物である。p-トルエンスルホニル化剤としては、例えば、p-トルエンスルホニルクロリド等が挙げられる。
【0291】
トリフルオロメタンスルホニル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をトリフルオロメタンスルホニル化する化合物である。トリフルオロメタンスルホニル化剤としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルクロリド等が挙げられる。
【0292】
ジフェニルホスホリル化剤は、チオール中のチオール基と反応してチオール基をジフェニルホスホリル化する化合物である。ジフェニルホスホリル化剤としては、例えば、ジフェニルホスホリルクロリド等が挙げられる。
【0293】
≪パラジウム触媒≫
パラジウム触媒としては、例えば、パラジウム炭素(Pd/C)、パラジウムブラック、水酸化パラジウム炭素、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、酸化パラジウム等の0価又は2価のパラジウム触媒が挙げられる。これらのうち、パラジウム炭素(Pd/C)が好ましい。
【0294】
パラジウム触媒は、担体に担持されていてもよい。担体としては、例えば、活性炭、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらのうち、活性炭が好ましい。
【0295】
≪第1の方法≫
第1の方法は、チオエステル誘導体(I)を製造する方法に関する。
【0296】
第1の方法は、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させて、チオエステル誘導体(I)を含む混合物を得る工程を含む。
【0297】
第1の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を、緩和な反応条件下、高収率に製造することができる。チオエステル誘導体(I)の収率は、例えば40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。チオエステル誘導体(I)を定量的収率で得ることも可能である。
【0298】
エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)とを、例えば-30℃以上120℃以下、好ましくは5℃以上80℃以下、より好ましくは10℃以上60℃以下の温度で、例えば5分間以上17時間以下、好ましくは5分間以上8時間以下、より好ましくは5分間以上30分間以下、接触させることにより、チオエステル誘導体(I)を得ることができる。エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0299】
チオール(2)の使用量は、エステル誘導体(1) 1モルに対して、例えば0.5モル以上2モル以下、好ましくは0.8モル以上1.5モル以下、より好ましくは1モル以上1.5モル以下である。チオールの使用量は、1種のチオールを使用する場合には当該1種のチオールの使用量を意味し、2種以上のチオールを使用する場合には当該2種以上のチオールの合計使用量を意味する(以下同様)。
【0300】
グリニャール試薬(3)の使用量は、エステル誘導体(1) 1モルに対して、例えば0.5モル以上4モル以下、好ましくは0.8モル以上3モル以下、より好ましくは1モル以上2モル以下である。グリニャール試薬の使用量は、1種のグリニャール試薬する場合には当該1種のグリニャール試薬の使用量を意味し、2種以上のグリニャール試薬を使用する場合には当該2種以上のグリニャール試薬の合計使用量を意味する(以下同様)。
【0301】
グリニャール試薬(3)の使用量は、チオール(2) 1モルに対して、例えば0.5モル以上3モル以下、好ましくは0.5モル以上2モル以下、より好ましくは0.5モル以上1モル以下である。
【0302】
エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)とを溶媒中で混合することにより、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させることができる。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。1種の有機溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の有機溶媒の混合溶媒を使用してもよい。有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、THF、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン又はこれらの2種以上の混合溶媒であることが好ましく、THF、トルエン又はこれらの混合溶媒であることがより好ましい。
【0303】
溶媒の使用量は、エステル誘導体(1) 1gに対して、例えば1mL以上200mL以下、好ましくは1mL以上100mL以下、より好ましくは3mL以上20mL以下である。溶媒の使用量は、1種の溶媒を使用する場合には当該1種の溶媒の使用量を意味し、2種以上の溶媒を使用する場合には当該2種以上の溶媒の合計使用量を意味する。
【0304】
エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させてチオエステル誘導体(I)を得る工程において、チオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させて、ハロゲノマグネシウムチオラートを得た後、ハロゲノマグネシウムチオラートとエステル誘導体(1)とを接触させて、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得ることが好ましい。これにより、チオエステル誘導体(I)の収率を高めることができる。
【0305】
チオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させると、下記式に示すように、炭化水素(R1H)とハロゲノマグネシウムチオラート(X1MgSW3)とが生成すると考えられる。そして、生成したハロゲノマグネシウムチオラートとエステル誘導体(1)とを接触させると、チオエステル誘導体(I)が生成すると考えられる。
【0306】
【0307】
ハロゲノマグネシウムチオラートとエステル誘導体(1)との接触は、例えば、チオール(2)とグリニャール試薬(3)とを接触させて、ハロゲノマグネシウムチオラートを含む反応混合物を得た後、ハロゲノマグネシウムチオラートを含む反応混合物とエステル誘導体(1)とを混合することにより行うことができる。この際、ハロゲノマグネシウムチオラートを含む反応混合物に、エステル誘導体(1)を添加して混合してもよいし、エステル誘導体(1)に、ハロゲノマグネシウムチオラートを含む反応混合物を添加して混合してもよい。
【0308】
チオエステル誘導体(I)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。例えば、HCl水溶液等のクエンチ液を反応混合物に添加して反応をクエンチし、酢酸エチル等の有機溶媒を加えて有機層を分取し、有機層を飽和NaHCO3水溶液、ブライン水溶液等の洗浄液で洗浄し、ろ過し、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法で精製することにより、チオエステル誘導体(I)を単離することができる。
【0309】
チオエステル誘導体(I)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【0310】
≪第2の方法≫
第2の方法は、ケトン誘導体(II)を製造する方法に関する。
【0311】
第2の方法は、以下の工程:
(1A)第1の方法により、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2A)チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、グリニャール試薬(4a)及び(4b)から選択されるグリニャール試薬(4)と、銅塩とを接触させて、ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る工程
を含む。
【0312】
第2の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を経由して、ケトン誘導体(II)を、緩和な反応条件下、高収率に製造することができる。ケトン誘導体(II)の収率は、例えば40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。ケトン誘導体(II)を定量的収率で得ることも可能である。
【0313】
また、第2の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を経由して、ケトン誘導体(II)を、ワンポット反応で製造することができる。
【0314】
工程(1A)により、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物が得られる。工程(1A)で得られた反応混合物は、工程(2A)で使用される。
【0315】
以下、工程(2A)について説明する。
【0316】
チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とグリニャール試薬(4)と銅塩とを、例えば-10℃以上100℃以下、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは20℃以上50℃以下の温度で、例えば0.5時間以上72時間以下、好ましくは1時間以上24時間以下、より好ましくは2時間以上4時間以下、接触させることにより、ケトン誘導体(II)を得ることができる。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とグリニャール試薬(4)と銅塩との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0317】
グリニャール試薬(4)の使用量は、工程(1A)で使用されるエステル誘導体(1) 1モルに対して、例えば0.5モル以上3モル以下、好ましくは0.8モル以上2モル以下、より好ましくは1モル以上2モル以下である。グリニャール試薬の使用量は、1種のグリニャール試薬する場合には当該1種のグリニャール試薬の使用量を意味し、2種以上のグリニャール試薬を使用する場合には当該2種以上のグリニャール試薬の合計使用量を意味する。
【0318】
銅塩の使用量は、グリニャール試薬(4) 1モルに対して、例えば1モル以上2モル以下、好ましくは0.7モル以上0.8モル以下である。銅塩の使用量は、1種の銅塩する場合には当該1種の銅塩の使用量を意味し、2種以上の銅塩を使用する場合には当該2種以上の銅塩の合計使用量を意味する。
【0319】
チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とグリニャール試薬(4)と銅塩との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。1種の有機溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の有機溶媒の混合溶媒を使用してもよい。有機溶媒の具体例は、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触に使用される有機溶媒と同様である。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物は、通常、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触に使用された溶媒を含む。したがって、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、グリニャール試薬(4)及び銅塩を添加して混合することにより、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とグリニャール試薬(4)と銅塩とを溶媒中で接触させることができる。この際、グリニャール試薬(4)及び銅塩の混合物を、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に添加することが好ましい。グリニャール試薬(4)及び銅塩の混合物は、後述する有機銅試薬を含むことが好ましい。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、グリニャール試薬(4)及び銅塩を添加して混合する際、追加の溶媒を加えてもよい。
【0320】
工程(2A)において、グリニャール試薬(4)と銅塩とを接触させて、有機銅試薬を得た後、有機銅試薬とチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とを接触させて、ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得ることが好ましい。これにより、ケトン誘導体(II)の収率を高めることができる。
【0321】
有機銅試薬とチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物との接触は、例えば、グリニャール試薬(4)と銅塩とを接触させて、有機銅試薬を含む反応混合物を得た後、有機銅試薬を含む反応混合物と、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とを混合することにより行うことができる。この際、有機銅試薬を含む反応混合物に、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を添加して混合してもよいし、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、有機銅試薬を含む反応混合物を添加して混合してもよい。
【0322】
ケトン誘導体(II)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。例えば、HCl水溶液等のクエンチ液を反応混合物に添加して反応をクエンチし、酢酸エチル等の有機溶媒を加えて有機層を分取し、有機層を飽和NaHCO3水溶液、ブライン水溶液等の洗浄液で洗浄し、ろ過し、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法で精製することにより、ケトン誘導体(II)を単離することができる。
【0323】
ケトン誘導体(II)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【0324】
≪第3の方法≫
第3の方法は、ケトン誘導体(II)を製造する方法に関する。
【0325】
第3の方法は、以下の工程:
(1B)第1の方法により、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2B)パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、有機亜鉛試薬(5)とを接触させて、ケトン誘導体(II)を含む反応混合物を得る工程
を含む。
【0326】
第3の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を経由して、ケトン誘導体(II)を、緩和な反応条件下、高収率に製造することができる。ケトン誘導体(II)の収率は、例えば40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。ケトン誘導体(II)を定量的収率で得ることも可能である。
【0327】
また、第3の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を経由して、ケトン誘導体(II)を、ワンポット反応で製造することができる。
【0328】
工程(1B)により、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物が得られる。工程(1B)で得られた反応混合物は、工程(2B)で使用される。
【0329】
以下、工程(2B)について説明する。
【0330】
パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と有機亜鉛試薬(5)とを、例えば-10℃以上100℃以下、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは20℃以上60℃以下の温度で、例えば0.5時間以上24時間以下、好ましくは1時間以上8時間以下、より好ましくは1時間以上6時間以下、接触させることにより、ケトン誘導体(II)を得ることができる。パラジウム触媒の存在下でのチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と有機亜鉛試薬(5)との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0331】
パラジウム触媒の使用量は、工程(1B)で使用されるエステル誘導体(1)の物質量(モル)を基準として、例えば0.0001モル%以上0.5モル%以下、好ましくは0.0005モル%以上0.3モル%以下、より好ましくは0.001モル%以上0.1モル%以下である。
【0332】
有機亜鉛試薬(5)の使用量は、工程(1B)で使用されるエステル誘導体(1) 1モルに対して、例えば1モル以上4モル以下、好ましくは1モル以上3モル以下、より好ましくは1モル以上2モル以下である。有機亜鉛試薬の使用量は、1種の有機亜鉛試薬を使用する場合には当該1種の有機亜鉛試薬の使用量を意味し、2種以上の有機亜鉛試薬を使用する場合には当該2種以上の有機亜鉛試薬の合計使用量を意味する。
【0333】
パラジウム触媒の存在下でのチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と有機亜鉛試薬(5)との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。1種の有機溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の有機溶媒の混合溶媒を使用してもよい。有機溶媒の具体例は、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触に使用される有機溶媒と同様である。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物は、通常、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触に使用された溶媒を含む。したがって、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、パラジウム触媒及び有機亜鉛試薬(5)を添加して混合することにより、パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と有機亜鉛試薬(5)とを溶媒中で接触させることができる。パラジウム触媒及び有機亜鉛試薬(5)は、同時に又は順次、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に添加することができる。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、パラジウム触媒及び有機亜鉛試薬(5)を添加して混合する際、追加の溶媒を加えてもよい。
【0334】
工程(1B)の後かつ工程(2B)の前に、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、チオール捕捉剤とを接触させて、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在するチオール(2)をチオール捕捉剤で捕捉することが好ましい。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中には、未反応のチオール(2)が存在し得る。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在する未反応のチオール(2)は、パラジウム触媒(例えば、パラジウム炭素(Pd/C))の触媒毒となる。チオール捕捉剤が未反応のチオール(2)中のチオール基と反応してチオール基を不活性化することにより、未反応のチオール(2)が無毒化され、ケトン誘導体(II)の収率を高めることができる。
【0335】
チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とチオール捕捉剤とを、例えば-20℃以上60℃以下、好ましくは0℃以上40℃以下、より好ましくは0℃以上35℃以下の温度で、例えば0.05時間以上5時間以下、好ましくは0.1時間以上2時間以下、より好ましくは0.1時間以上1時間以下、接触させることにより、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在するチオール(2)をチオール捕捉剤で捕捉することができる。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とチオール捕捉剤との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0336】
チオール捕捉剤は、工程(1B)で使用されるチオール(2) 1モルに対して、例えば1モル以上3モル以下、好ましくは1モル以上2モル以下、より好ましくは1モル以上1.5モル以下である。
【0337】
チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とチオール捕捉剤との接触は、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、チオール捕捉剤を添加して混合することにより行うことができる。
【0338】
ケトン誘導体(II)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。例えば、HCl水溶液等のクエンチ液を反応混合物に添加して反応をクエンチし、酢酸エチル等の有機溶媒を加えて有機層を分取し、有機層を飽和NaHCO3水溶液、ブライン水溶液等の洗浄液で洗浄し、ろ過し、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法で精製することにより、ケトン誘導体(II)を単離することができる。
【0339】
ケトン誘導体(II)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【0340】
≪第4の方法≫
第4の方法は、アルデヒド誘導体(III)を製造する方法に関する。
【0341】
第4の方法は、以下の工程:
(1C)第1の方法により、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物を得る工程;並びに
(2C)パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、シラン化合物(6)とを接触させて、アルデヒド誘導体(III)を含む反応混合物を得る工程
を含む。
【0342】
第4の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を経由して、アルデヒド誘導体(III)を、緩和な反応条件下、高収率に製造することができる。アルデヒド誘導体(III)の収率は、例えば30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0343】
また、第4の方法によれば、エステル誘導体(1)から、チオエステル誘導体(I)を経由して、アルデヒド誘導体(III)を、ワンポット反応で製造することができる。
【0344】
工程(1C)により、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物が得られる。工程(1C)で得られた反応混合物は、工程(2C)で使用される。
【0345】
以下、工程(2C)について説明する。
【0346】
パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とシラン化合物(6)とを、例えば-20℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上50℃以下、より好ましくは0℃以上40℃以下の温度で、例えば0.05時間以上48時間以下、好ましくは0.1時間以上48時間以下、より好ましくは0.5時間以上24時間以下、接触させることにより、アルデヒド誘導体(III)を得ることができる。パラジウム触媒の存在下でのチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とシラン化合物(6)との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0347】
パラジウム触媒の使用量は、工程(1C)で使用されるエステル誘導体(1)の物質量(モル)を基準として、例えば0.01モル%以上50モル%以下、好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上10モル%以下である。
【0348】
シラン化合物(6)の使用量は、工程(1C)で使用されるエステル誘導体(1) 1モルに対して、例えば1モル以上5モル以下、好ましくは1モル以上4モル以下、より好ましくは1モル以上3モル以下である。シラン化合物の使用量は、1種のシラン化合物を使用する場合には当該1種のシラン化合物の使用量を意味し、2種以上のシラン化合物を使用する場合には当該2種以上のシラン化合物の合計使用量を意味する。
【0349】
パラジウム触媒の存在下でのチオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とシラン化合物(6)との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。1種の有機溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の有機溶媒の混合溶媒を使用してもよい。有機溶媒の具体例は、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触に使用される有機溶媒と同様である。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物は、通常、エステル誘導体(1)とチオール(2)とグリニャール試薬(3)との接触に使用された溶媒を含む。したがって、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、パラジウム触媒及びシラン化合物(6)を添加して混合することにより、パラジウム触媒の存在下、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とシラン化合物(6)とを溶媒中で接触させることができる。パラジウム触媒及びシラン化合物(6)は、同時に又は順次、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に添加することができる。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、パラジウム触媒及びシラン化合物(6)を添加して混合する際、追加の溶媒を加えてもよい。
【0350】
工程(1C)の後かつ工程(2C)の前に、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物と、チオール捕捉剤とを接触させて、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在するチオール(2)をチオール捕捉剤で捕捉することが好ましい。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中には、未反応のチオール(2)が存在し得る。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在する未反応のチオール(2)は、パラジウム触媒(例えば、パラジウム炭素(Pd/C))の触媒毒となる。チオール捕捉剤が未反応のチオール(2)中のチオール基と反応してチオール基を不活性化することにより、未反応のチオール(2)が無毒化され、アルデヒド誘導体(III)の収率を高めることができる。
【0351】
チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とチオール捕捉剤とを、例えば-20℃以上60℃以下、好ましくは-10℃以上40℃以下、より好ましくは0℃以上30℃以下の温度で、例えば0.05時間以上5時間以下、好ましくは0.1時間以上2時間以下、より好ましくは0.1時間以上1時間以下、接触させることにより、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物中に存在するチオール(2)をチオール捕捉剤で捕捉することができる。チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とチオール捕捉剤との接触は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下又は窒素雰囲気下)で行うことができる。
【0352】
チオール捕捉剤は、工程(1C)で使用されるチオール(2) 1モルに対して、例えば1モル以上3モル以下、好ましくは1モル以上2モル以下、より好ましくは1モル以上1.5モル以下である。
【0353】
チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物とチオール捕捉剤との接触は、チオエステル誘導体(I)を含む反応混合物に、チオール捕捉剤を添加して混合することにより行うことができる。
【0354】
アルデヒド誘導体(III)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。例えば、HCl水溶液等のクエンチ液を反応混合物に添加して反応をクエンチし、酢酸エチル等の有機溶媒を加えて有機層を分取し、有機層を飽和NaHCO3水溶液、ブライン水溶液等の洗浄液で洗浄し、ろ過し、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法で精製することにより、アルデヒド誘導体(III)を単離することができる。
【0355】
アルデヒド誘導体(III)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【実施例0356】
以下、本発明の実施例について説明する。以下の実施例において、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「i-Pr」はイソプロピル基、「t-Bu」はtert-ブチル基、「Ph」はフェニル基、「THF」はテトラヒドロフラン、「EtOAc」は酢酸エチル、「CuTC」はチオフェン-2-カルボン酸銅(I)を表す。
【0357】
<実施例1A~1C>
以下の反応式に従って、化合物2a(S-ドデシル 4-メトキシベンゾチオエート)を製造した。
【0358】
【0359】
グリニャール試薬(RMgX)として、実施例1Aではi-PrMgClを、実施例1BではPhMgBrを、実施例1Cではt-BuMgBrを使用した。
【0360】
(1)実施例1A
第1のシュレンク管を窒素置換した後、シリンジを使用してTHF(2.5mL)を加え、次いで、1-ドデカンチオール(0.3mL,1.25mmol,1.20当量)を加えた。第1のシュレンク管を氷浴に浸けて1℃に冷却した後、第1のシュレンク管内の混合物を攪拌しながら、シリンジを使用して、第1のシュレンク管内の混合物にi-PrMgCl(1.3mmol,1.25当量)(2MのTHF溶液として0.65mL)を滴下により加えた。第1のシュレンク管内の混合物は白色懸濁液となった。
【0361】
第1のシュレンク管とは別の第2のシュレンク管を窒素置換した後、シリンジを使用してTHF(2.0mL)を加え、次いで、化合物1a(4-メトキシ安息香酸エチル)(0.17mL,1.04mmol,1当量)を加えた。第2のシュレンク管を氷浴に浸けて1℃に冷却した後、第2のシュレンク管内の化合物1aのTHF溶液に、上記で調製した第1のシュレンク管内の混合物を、第1のシュレンク管の洗浄に使用したTHF(1.0mL×2)とともに、カニューレを使用して加えた。次いで、第2のシュレンク管を65℃のオイルバスに、攪拌及び還流しながら、1時間浸けておいた。その間、第2のシュレンク管内の混合物は、最初は白色懸濁液であったが、18分後にはピンク色の透明な溶液となった。反応の進行はTLCによりモニターした。第2のシュレンク管を氷浴に浸け、攪拌しながら、第2のシュレンク管内の混合物に1M HCl水溶液(6.5mL)を滴下により加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物にEtOAc(20mL)を加え、分液を行った。分離した水層にEtOAc(20mL)を加え、再度分液を行った。有機層を合わせ、飽和NaHCO3水溶液(6.5mL)及びブライン水溶液(6.5mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、ろ液をエバポレーションし、残渣を真空ポンプで濃縮し、液体状の粗化合物(444.5mg)を得た。粗化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン=3:97)で精製し、無色透明液体状の化合物2a(333.6mg,収率95%)を得た。
【0362】
得られた化合物2aの融点(Mp)、赤外分光(IR)分析結果及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp:29-31℃;
IR(neat):νmax=2925,2854,1659,1603,1579,1509,1464,1419,1308,1260,1214,1168,1113,1033,914,837,794,645,621cm-1;
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):7.95(d,J=9Hz,2H),6.92(d,J=8.7Hz,2H),3.86(s,3H),3.04(t,J=7.5Hz,2H),1.69-1.62(m,2H),1.45-1.26(m,18H),0.88(t,J=6.8Hz,3H).
【0363】
(2)実施例1B
グリニャール試薬(RMgX)として、i-PrMgCl(1.3mmol,1.25当量)(2MのTHF溶液として0.65mL)に代えて、PhMgBr(1.3mmol,1.25当量)(2MのTHF溶液として0.65mL)を使用した点を除き、実施例1Aと同様の操作を行い、化合物2a(350mg,定量的収率)を得た。得られた化合物2aの融点(Mp)、赤外分光(IR)分析結果及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1Aと同様であった。
【0364】
(3)実施例1C
グリニャール試薬(RMgX)として、i-PrMgCl(1.3mmol,1.25当量)(2MのTHF溶液として0.65mL)に代えて、t-BuMgBr(1.3mmol,1.25当量)(2MのTHF溶液として0.65mL)を使用した点を除き、実施例1Aと同様の操作を行い、化合物2a(339mg,収率97%)を得た。得られた化合物2aの融点(Mp)、赤外分光(IR)分析結果及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1Aと同様であった。
【0365】
<実施例2A>
以下の反応式に従って、化合物2a(S-ドデシル 4-メトキシベンゾチオエート)を製造した。
【0366】
【0367】
攪拌子を入れた第1のシュレンク管をフレームドライして窒素置換し、セプタムで蓋をした後、シリンジを使用して1-ドデカンチオール(0.313mmol,1.25当量)を加え、次いで、THF(0.64mL)を加えた。第1のシュレンク管を氷浴に浸けて冷却した後、第1のシュレンク管内の混合物を攪拌しながら、第1のシュレンク管内の混合物に、シリンジを使用して、i-PrMgClのTHF溶液(0.313mmol,1.25当量)を滴下により加えた。滴下後、氷浴を除いた。
【0368】
撹拌子を入れた第2のシュレンク管をフレームドライして窒素置換した後、シリンジを使用して、化合物1a(4-メトキシ安息香酸エチル)(0.25mmol,1当量)を加え、次いで、THF(0.4mL)を加えた。第2のシュレンク管を氷浴に浸けて冷却した後、第2のシュレンク管内の化合物1aのTHF溶液に、上記で調製した第1のシュレンク管内の混合物を、第1のシュレンク管の洗浄に使用したTHF(2×0.3mL)とともに、カニュレーションにより加えた。第2のシュレンク管を、窒素置換したバルーン付きのジムロートに接続し、40℃のオイルバスに、攪拌及び還流しながら、4時間浸けておいた。反応の進行はTLCによりモニターした。第2のシュレンク管を氷浴に浸け、攪拌しながら、反応混合物に1M HCl水溶液(1.7mL)を滴下により加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物にEtOAc(9mL)を加え、分液を行った。分離した水層にEtOAc(9mL)を加え、再度分液を行った。有機層を合わせ、飽和NaHCO3水溶液(1.7mL)及びブライン水溶液(1.7mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、残渣を真空引きして、粗化合物を得た。粗化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン=3:97)で精製し、化合物2a(72mg,収率94%)を得た。得られた化合物2aの融点(Mp)、赤外分光(IR)分析結果及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1Aと同様であった。
【0369】
<実施例2B>
以下の反応式に従って、化合物2b(S-ドデシル ベンゾチオエート)を製造した。
【0370】
【0371】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1b(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2b(52mg,収率75%)を得た。
【0372】
得られた化合物2bの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):7.97(d,J=7.2Hz,2H),7.54(t,J=7.4Hz,1H),7.42(t,J=7.8Hz,2H),3.07(t,J=7.4,2H),1.71-1.64(m,2H),1.46-1.27(m,18H),0.88(t,J=7Hz,3H).
【0373】
<実施例2C>
以下の反応式に従って、化合物2c(S-ドデシル 4-メチルベンゾチオエート)を製造した。
【0374】
【0375】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1c(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2c(56mg,収率77%)を得た。
【0376】
得られた化合物2cの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.87(d,J=8.0,2H),7.24(d,J=8.0,2H),3.05(t,J=7.5,2H),2.40(s,3H),1.69-1.63(m,2H),1.44-1.26(m,18H),0.88(t,J=7.0Hz,3H).
【0377】
<実施例2D>
以下の反応式に従って、化合物2d(S-ドデシル 4-クロロベンゾチオエート)を製造した。
【0378】
【0379】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1d(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2d(72.8mg,収率94%)を得た。
【0380】
得られた化合物2dの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.90(dd,J=2.0,6.5Hz,2H),7.41(dd,J=1.8,6.3Hz,2H),3.07(t,J=7.0Hz,2H),1.69-1.63(m,2H),1.44-1.26(m,18H),0.88(t,J=7.3Hz,3H).
【0381】
<実施例2E>
以下の反応式に従って、化合物2e(S-ドデシル 2-メチルプロパンチオエート)を製造した。
【0382】
【0383】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1e(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2e(61mg,収率79%)を得た。
【0384】
得られた化合物2eの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):2.85(t,J=7.6Hz,2H),2.78-2.68(m,1H),1.59-1.52(m,2H),1.37-1.26(m,18H),1.19(d,J=6.8Hz,6H),0.88(t,J=6.8Hz,3H).
【0385】
<実施例2F>
以下の反応式に従って、化合物2f(S-ドデシル 2,2-ジメチルプロパンチオエート)を製造した。
【0386】
【0387】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1f(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2f(54mg,収率83%)を得た。
【0388】
得られた化合物2fの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm):2.82(t,J=7.4Hz,2H),1.59-1.50(m,2H),1.37-1.25(m,18H),1.23(s,9H),0.88(t,J=7.1Hz,3H).
【0389】
<実施例2G>
以下の反応式に従って、化合物2g(S-ドデシル チオフェン-2-カルボチオエート)を製造した。
【0390】
【0391】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1g(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2g(70mg,収率99%)を得た。
【0392】
得られた化合物2gの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3) δ(ppm):7.79(dd,J=0.9,3.9Hz,1H),7.59(dd,J=1.2,5.1Hz,1H),7.10(dd,J=3.9,4.8,1H),3.06(t,J=7.2,2H),1.72-1.62(m,2H),1.43-1.26(m,18H),0.88(t,J=6.8Hz).
【0393】
<実施例2H>
以下の反応式に従って、化合物2h(S-ドデシル(4-トリフルオロメチル)ベンゾチオエート)を製造した。
【0394】
【0395】
化合物1a(0.25mmol,1当量)に代えて、化合物1h(0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例2Aと同様の操作を行い、化合物2h(82mg,収率96%)を得た。
【0396】
得られた化合物2hの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):8.06(d,J=8.5Hz,2H),7.70(d,J=8.0,2H),3.09(t,J=7.5Hz,2H),1.71-1.65(m,2H),1.45-1.25(m,18H),0.87(t,J=6.8Hz,3H).
【0397】
<実施例2I>
以下の反応式に従って、化合物2a(S-ドデシル 4-メトキシベンゾチオエート)を製造した。
【0398】
【0399】
第1のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、フレームドライし、冷却した。第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(762mg,3.76mmol)を加え、次いで、THF(7.0mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgCl(2MのTHF溶液,1.9mL,3.76mmol)を滴下により加えた。
【0400】
第2のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、フレームドライし、冷却した。第2のシュレンクフラスコに、化合物1i(4-メトキシ安息香酸メチル)(500mg,3.01mmol)を加え、次いで、THF(3mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコ内の反応混合物に、第2のシュレンクフラスコ内の溶液を、第2のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(2×1mL)とともに、氷冷下、シリンジを使用して滴下により加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の完了をTLCによりモニターした後、反応混合物を室温まで冷却した。得られた反応混合物に1M HCl水溶液(15mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物をEtOAc(25mL)で抽出し、次いで、飽和NaHCO3水溶液(2×15mL)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(2×20mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:n-ヘキサン=5:95)で精製して、化合物2a(897mg,収率96%)を白色の固体として得た。得られた化合物2aの融点(Mp)、赤外分光(IR)分析結果及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1Aと同様であった。
【0401】
<実施例3A>
以下の反応式に従って、化合物3a(4-メトキシフェニルフェニルケトン)を製造した。
【0402】
【0403】
第1のシュレンクフラスコを、N2雰囲気下、フレームドライし、冷却した。第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(0.313mmol,1.25当量)を加え、次いで、THF(0.64mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(0.313mmol,1.25当量)を滴下により加えた。
【0404】
第2のシュレンクフラスコを、N2雰囲気下、フレームドライし、冷却した。第2のシュレンクフラスコに、化合物1(4-メトキシ安息香酸メチル)(41.5mg,0.25mmol,1当量)を加え、次いで、THF(0.4mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(2×0.3mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を40℃で4時間撹拌した。反応の完了後、得られたチオエステル誘導体のTHF溶液を以下のケトン合成に使用した。
【0405】
CuTC(47.7mg,0.25mmol,1当量)のTHF懸濁液(0.64mL)に、PhMgBrのTHF溶液(0.52MのTHF溶液,0.625mL,0.325mmol)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した。得られた反応混合物を、上記チオエステル誘導体(0.250mmol)のTHF溶液に5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応を1M HCl水溶液(1mL)によりクエンチした。クエンチ後の反応混合物に、EtOAc(10mL)を加え、次いで、1M HCl水溶液(5mL×3)及びブライン水溶液(5mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:n-ヘキサン=1:70から1:5)で精製して、化合物3a(42.2mg,収率80%)を無色の油状物として得た。
【0406】
得られた化合物3aの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):7.82(d,J=8.8Hz,2H),7.76(d,J=6.9Hz,2H),7.56(t,J=7.3Hz,1H),7.47(t,J=7.7Hz,2H),6.96(d,J=8.8Hz,2H),3.89(s,3H);
13C{1H} NMR(100MHz,CDCl3) δ(ppm):195.7,163.4,138.5,132.7,132.0,130.4,129.8,128.3,113.7,55.6.
【0407】
<実施例3B>
化合物1(4-メトキシ安息香酸メチル)に代えて、4-フルオロ安息香酸メチル(38.5mg,0.25mmol,1当量)を使用した点を除き、実施例3Aと同様の操作を行い、下記式で表される4-フルオロフェニルフェニルケトン(50mg,定量的収率)を無色の油状物として得た。
【0408】
【0409】
得られた4-フルオロフェニルフェニルケトンの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):7.83(m,2H),7.77(d,J=7.3Hz,2H),7.59(t,J=7.4Hz,1H),7.49(t,J=7.8Hz,2H),7.16(t,J=8.6Hz,2H);
13C{1H} NMR(100MHz,CDCl3) δ(ppm):195.2,165.3(d,JC-F=252Hz),137.5,133.8(d,JC-F=3Hz),132.6(d,JC-F=9Hz),132.4,129.8,128.3,115.4(d,JC-F=22Hz);
19F{1H} NMR(376MHz,CDCl3) δ(ppm):106.0.
【0410】
<実施例3C>
以下の反応式に従って、化合物3c(フェニル(p-トリル)メタノン)を製造した。
【0411】
【0412】
第1、第2及び第3のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させ、冷却した。第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(253mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。
【0413】
第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(2MのTHF溶液,1.04mL,1.25当量)を5分間かけて滴下により加えた。
【0414】
第2のシュレンクフラスコに、4-メチル安息香酸メチル(250mg,1当量)を加え、次いで、THF(2.7mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(2.0mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応の完了後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0415】
第3のシュレンクフラスコに、CuTC(333mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(4.3mL)を加えた。CuTCのTHF懸濁液に、PhMgBrのTHF溶液(1MのTHF溶液,1.75mL,1.3当量)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した後、第3のシュレンクフラスコ内の混合物を、第2のシュレンクフラスコに5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M HCl水溶液(6mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物を珪藻土を通じて濾過し、次いで、濃縮した。残渣に、EtOAc(60mL)を加え、次いで、混合物を1M HCl水溶液(30mL×3)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(30mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3c(293.3mg,収率90%)を白色の固体として得た。
【0416】
得られた化合物3cの融点(Mp)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp=54-57℃;
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.78(dd,J=8.0,1.5Hz,2H),7.72(d,J=8.0Hz,2H),7.56(tt,J=7.5,1.5Hz,1H),7.46(dd,J=8.0,7.5Hz,2H),7.27(d,J=8.0Hz,2H),2.43(s,3H);
13C{1H} NMR(125MHz,CDCl3) δ(ppm):196.61,143.36,138.03,134.96,132.28,130.42,130.04,129.09,128.32,21.77.
【0417】
<実施例3D>
以下の反応式に従って、化合物3d((4-クロロフェニル)(フェニル)メタノン)を製造した。
【0418】
【0419】
第1、第2及び第3のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させ、冷却した。
【0420】
第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(253mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(2MのTHF溶液,0.63mL,1.25当量)を5分間かけて滴下により加えた。
【0421】
第2のシュレンクフラスコに、4-クロロ安息香酸メチル(170mg,1当量)を加え、次いで、THF(1.6mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(1.2mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応の完了後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0422】
第3のシュレンクフラスコに、CuTC(238mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。CuTCのTHF懸濁液に、PhMgBrのTHF溶液(1MのTHF溶液,1.3mL,1.3当量)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した後、第3のシュレンクフラスコ内の混合物を、第2のシュレンクフラスコに5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M HCl水溶液(4mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物を珪藻土を通じて濾過し、次いで、濃縮した。残渣に、EtOAc(40mL)を加え、次いで、混合物を1M HCl水溶液(20mL×3)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3d(194.2mg,収率90%)を白色の固体として得た。
【0423】
得られた化合物3dの融点(Mp)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp=73-76℃;
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.78-7.74(m,4H),7.60(tt,J=7.5,1.0Hz,1H),7.51-7.44(m,4H);
13C{1H} NMR(125MHz,CDCl3) δ(ppm):195.6,139.0,137.3,135.9,132.8,131.6,130.0,128.7,128.5.
【0424】
<実施例3E>
以下の反応式に従って、化合物3e(4-ベンゾイルベンゾニトリル)を製造した。
【0425】
【0426】
第1、第2及び第3のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させ、冷却した。
【0427】
第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(253mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(2MのTHF溶液,0.63mL,1.25当量)を5分間かけて滴下により加えた。
【0428】
第2のシュレンクフラスコに、4-シアノ安息香酸メチル(161mg,1当量)を加え、次いで、THF(1.6mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(1.2mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応の完了後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0429】
第3のシュレンクフラスコに、CuTC(238mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。CuTCのTHF懸濁液に、PhMgBrのTHF溶液(1MのTHF溶液,1.3mL,1.3当量)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した後、第3のシュレンクフラスコ内の混合物を、第2のシュレンクフラスコに5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M HCl水溶液(4mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物を珪藻土を通じて濾過し、次いで、濃縮した。残渣に、EtOAc(40mL)を加え、次いで、混合物を1M HCl水溶液(20mL×3)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3e(186.4mg,収率90%)を白色の固体として得た。
【0430】
得られた化合物3eの融点(Mp)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp=112-115℃;
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.88(d,J=8.5Hz,2H),7.81-7.78(m,4H),7.65(tt,J=7.5,1.0Hz,1H),7.52(dd,J=8.0,7.5Hz,2H);
13C{1H} NMR(125MHz,CDCl3) δ(ppm):195.1,141.3,136.4,133.4,132.3,130.3,130.2,128.7,118.1,115.7.
【0431】
<実施例3F>
以下の反応式に従って、化合物3f(フェニル(4-(トリフルオロメチル)フェニル)メタノン)を製造した。
【0432】
【0433】
第1、第2及び第3のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させ、冷却した。
【0434】
第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(253mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(2MのTHF溶液,0.63mL,1.25当量)を5分間かけて滴下により加えた。
【0435】
第2のシュレンクフラスコに、4-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(204mg,1当量)を加え、次いで、THF(1.6mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(1.2mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応の完了後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0436】
第3のシュレンクフラスコに、CuTC(238mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。CuTCのTHF懸濁液に、PhMgBrのTHF溶液(1MのTHF溶液,1.3mL,1.3当量)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した後、第3のシュレンクフラスコ内の混合物を、第2のシュレンクフラスコに5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M HCl水溶液(4mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物を珪藻土を通じて濾過し、次いで、濃縮した。残渣に、EtOAc(40mL)を加え、次いで、混合物を1M HCl水溶液(20mL×3)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3f(218.5mg,収率87%)を白色の固体として得た。
【0437】
得られた化合物3fの融点(Mp)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp=114-118℃;
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.89(d,J=8.0Hz,2H),7.81(dd,J=8.5,1.5Hz,2H),7.75(d,J=8.0Hz,2H),7.63(tt,J=7.5,1.5Hz,1H),7.50(dd,J=8.5,7.5Hz,2H);
13C{1H} NMR(125MHz,CDCl3) δ(ppm):195.6,140.8,136.8,133.8(q,2JC-F=32.5Hz),133.2,130.2,130.20,128.6,125.4(q,3JC-F=7.5Hz),123.8(q,1JC-F=271.2Hz);
19F NMR(471MHz,CDCl3) δ(ppm):-62.89.
【0438】
<実施例3G>
以下の反応式に従って、化合物3g((4-ブロモフェニル)(フェニル)メタノン)を製造した。
【0439】
【0440】
第1、第2及び第3のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させ、冷却した。
【0441】
第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(253mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(2MのTHF溶液,0.63mL,1.25当量)を5分間かけて滴下により加えた。
【0442】
第2のシュレンクフラスコに、4-ブロモ安息香酸メチル(215mg,1当量)を加え、次いで、THF(1.6mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(1.2mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応の完了後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0443】
第3のシュレンクフラスコに、CuTC(238mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。CuTCのTHF懸濁液に、PhMgBrのTHF溶液(1MのTHF溶液,1.3mL,1.3当量)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した後、第3のシュレンクフラスコ内の混合物を、第2のシュレンクフラスコに5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M HCl水溶液(4mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物を珪藻土を通じて濾過し、次いで、濃縮した。残渣に、EtOAc(40mL)を加え、次いで、混合物を1M HCl水溶液(20mL×3)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3g(230.0mg,収率88%)を白色の固体として得た。
【0444】
得られた化合物3gの融点(Mp)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp=80-82℃;
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.77(dd,J=8.0,1.5Hz,2H),7.67(d,J=8.5Hz,2H),7.64-7.50(m,3H),7.48(dd,J=8.0,7.5Hz,2H);
13C{1H} NMR(125MHz,CDCl3) δ(ppm):195.7,137.2,136.4,132.8,131.7,131.7,130.0,128.5,127.6.
【0445】
<実施例3H>
以下の反応式に従って、化合物3h((4-ヨードフェニル)(フェニル)メタノン)を製造した。
【0446】
【0447】
第1、第2及び第3のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させ、冷却した。
【0448】
第1のシュレンクフラスコに、1-ドデカンチオール(253mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgClのTHF溶液(2MのTHF溶液,0.63mL,1.25当量)を5分間かけて滴下により加えた。
【0449】
第2のシュレンクフラスコに、4-ヨード安息香酸メチル(262mg,1当量)を加え、次いで、THF(1.6mL)を加えた。第2のシュレンクフラスコに、第1のシュレンクフラスコ内の溶液を、第1のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(1.2mL)とともに、氷冷下、カニュレーションにより加えた。次いで、混合物を50℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応の完了後、反応混合物を室温まで冷却した。
【0450】
第3のシュレンクフラスコに、CuTC(238mg,1.25当量)を加え、次いで、THF(2.6mL)を加えた。CuTCのTHF懸濁液に、PhMgBrのTHF溶液(1MのTHF溶液,1.3mL,1.3当量)を5分間かけて滴下により加えた。混合物を10分間撹拌した後、第3のシュレンクフラスコ内の混合物を、第2のシュレンクフラスコに5分間かけて滴下により加えた。混合物を30℃で4時間撹拌した。反応混合物に1M HCl水溶液(4mL)を加え、反応をクエンチした。クエンチ後の反応混合物を珪藻土を通じて濾過し、次いで、濃縮した。残渣に、EtOAc(40mL)を加え、次いで、混合物を1M HCl水溶液(20mL×3)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3h(231.2mg,収率75%)を白色の固体として得た。
【0451】
得られた化合物3hの融点(Mp)及び核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
Mp=99-101℃;
1H NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):7.84(d,J=8.5Hz,2H),7.77(dd,J=8.0,1.0Hz,2H),7.60(tt,J=7.5,1.0Hz,1H),7.52(d,J=8.5Hz,2H),7.48(dd,J=8.0,7.5Hz,2H);
13C{1H} NMR(125MHz,CDCl3) δ(ppm):196.0,137.7,137.2,136.9,132.8,131.6,130.1,128.5,100.3.
【0452】
<実施例4>
以下の反応式に従って、化合物3((4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)(4-メトキシフェニル)メタノン)を製造した。
【0453】
【0454】
有機亜鉛試薬の調製
アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させたシュレンク管に、切削片状マグネシウム(289mg,12.09mmol,4.00当量)を加えた後、THF(0.5mL)を加え、さらに、1,2-ジブロモエタン(13μL)を加え、2分間撹拌した。次いで、4-ブロモ-1-クロロ-2-(4-エトキシベンジル)ベンゼン(1.95g,6.02mmol,2.00当量)のTHF溶液(0.5mL×3)をゆっくりと加えた。添加の完了後、反応混合物を室温(rt)で30分間撹拌した。次いで、反応混合物を、LiCl(255mg,6.02mmol,2当量)及びZnBr2(1.36g,6.02mmol,2当量)のTHF溶液(1mL)の入った別のシュレンク管に、アルゴン雰囲気下、室温で移した。次いで、反応混合物を40℃で1時間撹拌し、以下の工程に使用した。
【0455】
化合物3の調製
アルゴン雰囲気下、オーブン乾燥させたシュレンク管に、C12H25SH(0.9mL,3.77mmol,1.25当量)を加え、3mLのTHFを加えて溶解させ、0℃まで冷却した。次いで、i-PrMgCl(1.88mL,3.77mmol,1.25当量)を2分間かけて滴下により加えた。得られた溶液を同温度で5分間撹拌し、次いで、化合物1(4-メトキシ安息香酸メチル)(500mg,3.01mmol,1.00当量)のTHF溶液(0.5mL×3)をゆっくりと加えた。添加の完了後、反応混合物を45℃まで加温し、2時間撹拌した。反応の完了をTLCにより確認した後、反応混合物を室温まで冷却し、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)(0.48mL,3.77mmol,1.25当量)を加え、15分間撹拌した。次いで、反応混合物をトルエン(TL)(5mL)で希釈し、乾燥した10% Pd/C(160mg,0.15mmol,5mol%)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(0.2mL)を加え、5分間撹拌した。上記で調製した有機亜鉛試薬を加え、室温で3時間撹拌した。反応の完了をTLCにより確認した後、反応混合物をEtOAc(25mL)で希釈し、反応を1N HCl水溶液(10mL)でクエンチし、セライトベッドを通じて濾過し、セライトベッドをEtOAc(10mL×3)で十分に洗浄した。次いで、濾液を分液漏斗に移し、有機層を分離し、飽和NaHCO3水溶液(10mL)で洗浄し、次いで、ブライン水溶液(10mL)で洗浄し、無水Na2SO4を使用して乾燥させ、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。得られた褐色の半固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:EtOAc=95:5)で精製して、化合物3(1.13g,化合物1からの収率:定量的収率)を淡褐色の固体として得た。
【0456】
得られた化合物3の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz) δ(ppm):7.77-7.74(m,2H),7.59(d,J=2.1Hz,1H),7.54(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),7.45(d,J=8.2Hz,1H),7.11(d,J=8.6Hz,2H),6.95-6.91(m,2H),6.83-6.80(m,2H),4.08(s,2H),3.99(q,J=7.0Hz,2H),3.88(s,3H),1.39(t,J=7.0Hz,3H).
13C NMR(125MHz) δ(ppm):194.44,163.41,157.65,139.52,138.22,136.87,132.57,132.37,130.87,129.94,129.89,129.50,128.97,114.65,113.69,77.40,77.14,76.89,63.48,55.60,38.44,14.96.
【0457】
<実施例5>
以下の反応式に従って、化合物4(4-メトキシベンズアルデヒド)を製造した。
【0458】
【0459】
第1のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、フレームドライし、冷却した。第1のフラスコに、1-ドデカンチオール(702mg,3.47mmol)を加え、次いで、THF(7mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコを氷水で冷却し、i-PrMgCl(2MのTHF溶液,1.73mL,3.47mmol)を滴下により加えた。
【0460】
第2のシュレンクフラスコを、アルゴン雰囲気下、フレームドライし、冷却した。第2のシュレンクフラスコに、化合物1(4-メトキシ安息香酸メチル)(500mg,2.77mmol)を加え、次いで、THF(3mL)を加えた。第1のシュレンクフラスコ内の反応混合物に、第2のシュレンクフラスコ内の溶液を、第2のシュレンクフラスコの洗浄に使用したTHF(2×1mL)とともに、氷冷下、シリンジを使用して滴下により加えた。次いで、混合物を40℃で4時間撹拌した。反応の完了をTLCによりモニターした後、反応混合物を室温まで冷却した。得られた反応混合物に、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)(0.11mL,0.89mmol)を加え、15分間撹拌した。10mol% Pd/C(160mg,0.17mmol)及びトリエチルシラン(0.67mL,4.16mmol)をそれぞれ加えた。混合物を24時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を、セライトを通じて濾過した。得られた混合物に、EtOAc(25mL)を加え、次いで、1M HCl水溶液(5mL×1)及びブライン水溶液(15mL×2)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:n-ヘキサン=2:8)で精製して、化合物4(136mg,収率40%)を褐色の油状物として得た。
【0461】
得られた化合物4の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl3,30℃) δ(ppm):9.87(s,1H,CHO),7.82(d,J=8.5Hz,2H,ArH),6.99(d,J=8.5Hz,2H,ArH),3.87(s,3H,OCH3).
【0462】
<比較例>
ドデカンチオール(504mg、2.49mmol)及びi-PrMgCl(2MのTHF溶液,1.25mL、2.49mmol)を使用した点、並びに、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)を使用しなかった点を除き、実施例4と同様の操作を行ったところ、チオエステル誘導体の生成は確認されたが、目的のアルデヒド誘導体(化合物4)は全く得られなかった。