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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013232
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】測距装置及び測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20200101AFI20240124BHJP
   G01S 17/894 20200101ALN20240124BHJP
【FI】
G01S17/10
G01S17/894
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117423
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2022114866
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋
(72)【発明者】
【氏名】岩口 尭史
(72)【発明者】
【氏名】羅 文彬
(72)【発明者】
【氏名】佐川 立昌
(72)【発明者】
【氏名】長原 一
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA13
5J084AD01
5J084BA36
5J084BA40
5J084CA05
5J084EA02
(57)【要約】
【課題】従来よりもノイズに頑健な測距装置等を提供する。
【解決手段】測距装置100は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、光源部40と、光源部40が出射した光が対象物200で反射された反射光を受光する受光素子と、受光素子が反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップとを有する受光部60と、光源部40の発光タイミング、並びに、第1タップ、第2タップ及び第3タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部20とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、
光源部と、
前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップとを有する受光部と、
前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える
測距装置。
【請求項2】
前記擬似乱数を用いた変調は、ガロア体を用いた変調である
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記ガロア体を用いた変調では、ガロア体として、前記受光部が有するタップの数と同数の位数のガロア体における擬似乱数が用いられる
請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記ガロア体を用いた変調では、ガロア体として、前記受光部が有するタップの数より大きい位数のガロア体における擬似乱数が用いられる
請求項2に記載の測距装置。
【請求項5】
前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップのそれぞれは、一期間をオンとする第1状態、一期間をオフとする第2状態、及び、一期間内においてオン及びオフの一方から他方へ切り替わる第3状態とを有し、
前記信号生成部は、前記擬似乱数に基づいて、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップのうちの一のタップにおいて、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうちの一の状態の出現確率を、他のタップと異ならせるように当該一のタップの制御信号を生成する
請求項4に記載の測距装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、前記基本信号に第1擬似乱数を用いて変調を加えた第1信号と、前記基本信号に前記第1擬似乱数と異なる第2擬似乱数を用いて変調を加えた第2信号とを時間方向に多重化することで、前記発光タイミングのための前記制御信号を生成し、かつ、前記第1信号に基づく第1の受光信号と、前記第2信号に基づく第2の受光信号とを時間方向に多重化することで、前記露光タイミングのための制御信号を生成する
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項7】
前記測距装置が配置される空間には、他の測距装置が配置されており、
前記受光部が受光した外乱光に基づいて、当該外乱光を出射するために用いられた擬似乱数を特定し、特定された擬似乱数から前記他の測距装置を識別する信号処理部を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項8】
前記第1タップ、前記第2タップ、及び、前記第3タップのそれぞれに蓄積された電荷量を用いた比に基づいて、前記距離を算出する算出部を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項9】
前記基本信号は、単一周波数の信号である
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項10】
前記発光タイミングのための制御信号の基本信号は、パルス状の信号であり、
前記露光タイミングのための制御信号の基本信号は、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップで位相が異なる台形形状の信号である
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項11】
高周波ノイズが存在する環境下において測定された距離の二乗平均平方根誤差は、100mm以下である
請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項12】
TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、
光源部と、
前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ及び第2タップとを有する受光部と、
前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ及び前記第2タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える
測距装置。
【請求項13】
TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置で実行される測距方法であって、
前記測距装置は、
光源部と、
前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップとを有する受光部とを備え、
前記測距方法は、
前記光源部の発光タイミング、前記受光素子の露光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップへの電荷の振り分けのそれぞれを制御するための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する
測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置及び測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物までの距離を測定する測距装置として、光の飛行時間を利用したTOF(Time Of Flight)方式の測距装置が知られている。特許文献1には、スペクトラム拡散信号が光パルスの変調基準周波数に印加される測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-522979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測距装置では、測定される距離がより外乱ノイズの影響を受けないことが望まれる。つまり、よりノイズに頑健な測距装置が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりもノイズに頑健な測距装置及び測距方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る測距装置は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、光源部と、前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子、及び、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップを有する受光部と、前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える。
【0007】
本発明の一形態に係る測距方法は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置で実行される測距方法であって、前記測距装置は、光源部と、前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子、及び、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップを有する受光部とを備え、前記測距方法は、前記光源部の発光タイミング、前記受光素子の露光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップへの電荷の振り分けのそれぞれを制御するための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態によれば、従来よりもノイズに頑健な測距装置等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る測距装置の機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る受光部の画素の回路構成の一部を示す図である。
図3図3は、各種信号の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る検出信号及び距離の算出方法の一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態1に係る測距装置の動作を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、距離の測定結果の比較を示す第1図である。
図7B図7Bは、距離の測定結果の比較を示す第2図である。
図8図8は、比較例の測距装置の測定結果を示す図である。
図9図9は、実施の形態1に係る測距装置の測定結果を示す図である。
図10図10は、実施の形態1の変形例に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
図11図11は、実施の形態1の変形例に係る測距装置の動作を示すフローチャートである。
図12図12は、実施の形態1の変形例に係る測距装置の測定結果を示す図である。
図13図13は、実施の形態2に係る受光部の画素の回路構成の一部を示す図である。
図14図14は、実施の形態2に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
図15図15は、実施の形態2に係る検出信号及び距離の算出方法の一例を示す図である。
図16図16は、実施の形態2に係る測距装置の動作を示すフローチャートである。
図17A図17Aは、比較例の測距装置の測定結果を示す図である。
図17B図17Bは、実施の形態2に係る測距装置の測定結果を示す第1図である。
図18図18は、実施の形態2に係る測距装置の測定結果を示す第2図である。
図19図19は、動作例1に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
図20A図20Aは、図19のタイミングチャートを用いてシミュレーションして得られたグラフを示す図である。
図20B図20Bは、図19のタイミングチャートを用いて実際に測定して得られたグラフを示す図である。
図21図21は、動作例2に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
図22A図22Aは、図21のタイミングチャートを用いてシミュレーションして得られたグラフを示す図である。
図22B図22Bは、図21のタイミングチャートを用いて実際に測定して得られたグラフを示す図である。
図23図23は、動作例3に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
図24図24は、図23のタイミングチャートを用いて得られたグラフを示す図である。
図25図25は、追加で行った第1距離計測の様子を示す図である。
図26A図26Aは、従来手法における距離計測結果を示す図である。
図26B図26Bは、擬似乱数変調を用いた手法における距離計測結果を示す図である。
図27A図27Aは、図3の(b)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いた場合の距離計測結果を示す図である。
図27B図27Bは、図3の(f)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いた場合の距離計測結果を示す図である。
図28図28は、基本信号の違いによる距離計測の比較結果を示す図である。
図29A図29Aは、図3の(b)に示す基本信号を用いた場合のコーディング曲線を説明するための図である。
図29B図29Bは、図3の(f)に示す基本信号を用いた場合のコーディング曲線を説明するための図である。
図30図30は、追加で行った第2距離計測の様子を示す図である。
図31A図31Aは、従来手法における距離計測結果を示す図である。
図31B図31Bは、擬似乱数変調を用いた手法における距離計測結果を示す図である。
図32A図32Aは、ノイズがない環境において、図3の(d)に示す基本信号を用いた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図32B図32Bは、ノイズがない環境において、図3の(b)に示す基本信号を用いた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図32C図32Cは、ノイズがない環境において、図3の(f)に示す基本信号を用いた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図32D図32Dは、ノイズがない環境において、基本信号に対してDSSS変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図32E図32Eは、ノイズがない環境において、図3の(d)に示す基本信号に対して擬似乱数変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図32F図32Fは、ノイズがない環境において、図3の(b)に示す基本信号に対して擬似乱数変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図32G図32Gは、ノイズがない環境において、図3の(f)に示す基本信号に対して擬似乱数変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33A図33Aは、ノイズがある環境において、図3の(d)に示す基本信号を用いた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33B図33Bは、ノイズがある環境において、図3の(b)に示す基本信号を用いた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33C図33Cは、ノイズがある環境において、図3の(f)に示す基本信号を用いた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33D図33Dは、ノイズがある環境において、基本信号に対してDSSS変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33E図33Eは、ノイズがある環境において、図3の(d)に示す基本信号に対して擬似乱数変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33F図33Fは、ノイズがある環境において、図3の(b)に示す基本信号に対して擬似乱数変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図33G図33Gは、ノイズがある環境において、図3の(f)に示す基本信号に対して擬似乱数変調を加えた場合の距離推定精度の評価結果を示す図である。
図34図34は、距離推定精度の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係る測距装置は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、光源部と、前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップとを有する受光部と、前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える。
【0011】
これにより、測距装置は、基本信号を擬似乱数によりランダムに変調するため、低周波及び高周波の外乱光の影響を抑制することができる。また、受光部が3タップを有することで、太陽光等の定常な外乱光(環境光)の影響も抑制することができる。よって、本発明によれば、低周波及び高周波の外乱光、並びに、定常な外乱光それぞれの影響を抑制することができるので、従来よりもノイズに頑健な測距装置を実現することができる。
【0012】
また、例えば、前記擬似乱数を用いた変調は、ガロア体を用いた変調であってもよい。
【0013】
これにより、ガロア体を用いた変調により生成された制御信号を用いて第1タップ、第2タップ及び第3タップが制御されることで、第1タップ、第2タップ及び第3タップに定常な外乱光を受光した場合の電荷も蓄積させることができる。つまり、第1タップ、第2タップ及び第3タップには、反射光及び定常な外乱光の受光量に応じた電荷が蓄積される。この場合、第1タップ、第2タップ及び第3タップそれぞれから出力される出力信号(検出信号)により定常な外乱光の影響が除去可能であるので、測距装置は、定常な外乱光の影響を抑制することができる。よって、本発明によれば、従来よりもノイズに頑健な測距装置を実現することができる。
【0014】
また、例えば、前記ガロア体を用いた変調では、ガロア体として、前記受光部が有するタップの数と同数の位数のガロア体における擬似乱数が用いられてもよい。
【0015】
これにより、タップ数とガロア体の位数とが同数であるので、タップがオン、オフ及び移行状態の3つの状態を取り得る場合、第1タップ、第2タップ及び第3タップのそれぞれにおいて、オン、オフ及び移行状態の出現確率を等しくすることができる。つまり、オン、オフ及び移行状態のときの受光量を均等に距離の測定結果に寄与させることができる。よって、オン、オフ及び移行状態の出現確率を等しくして距離を測定する場合にも、従来よりもノイズに頑健な測距装置を実現することができる。
【0016】
また、例えば、前記ガロア体を用いた変調では、ガロア体として、前記受光部が有するタップの数より大きい位数のガロア体における擬似乱数が用いられてもよい。
【0017】
これにより、タップ数より位数が大きいガロア体が用いられることで、例えば、第1タップ、第2タップ及び第3タップの制御の自由度が増す。これは、従来よりもノイズに頑健な測距装置を実現することにつながり得る。
【0018】
また、例えば、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップのそれぞれは、一期間をオンとする第1状態、一期間をオフとする第2状態、及び、一期間内においてオン及びオフの一方から他方へ切り替わる第3状態とを有し、前記信号生成部は、前記擬似乱数に基づいて、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップのうちの一のタップにおいて、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうちの一の状態の出現確率を、他のタップと異ならせるように当該一のタップの制御信号を生成してもよい。
【0019】
これにより、タップがオン、オフ及び移行状態の3つの状態を取り得る場合、第1タップ、第2タップ及び第3タップの少なくとも1つにおいて、オン、オフ及び移行状態の出現確率を他のタップと異ならせることができる。例えば、オン、オフ及び移行状態のうち優先させたい状態の受光量を距離の測定結果により大きく寄与させることができる。よって、オン、オフ及び移行状態の出現確率を異ならせて距離を測定する場合にも、従来よりもノイズに頑健な測距装置を実現することができる。
【0020】
また、例えば、前記信号生成部は、前記基本信号に第1擬似乱数を用いて変調を加えた第1信号と、前記基本信号に前記第1擬似乱数と異なる第2擬似乱数を用いて変調を加えた第2信号とを時間方向に多重化することで、前記発光タイミングのための前記制御信号を生成し、かつ、前記第1信号に基づく第1の受光信号と、前記第2信号に基づく第2の受光信号とを時間方向に多重化することで、前記露光タイミングのための制御信号を生成してもよい。
【0021】
これにより、測距装置の測定可能な距離範囲を広げることができ、かつ、距離の精度を高めることができる。
【0022】
また、例えば、前記測距装置が配置される空間には、他の測距装置が配置されており、前記受光部が受光した外乱光に基づいて、当該外乱光を出射するために用いられた擬似乱数を特定し、特定された擬似乱数から前記他の測距装置を識別する信号処理部を備えてもよい。
【0023】
これにより、測距装置を用いて他の測距装置の識別を行うことができる。また、測距装置と、他の測距装置とが擬似乱数を用いて光源部から光を出射している場合、当該光は互いに無相関であるので、例えば、当該測距装置は、他の測距装置が出射する光(外乱光)の影響を受けにくい。よって、他の測距装置が外乱光を出射する環境下でも、ノイズに頑健な測距装置を実現することができる。
【0024】
また、例えば、前記第1タップ、前記第2タップ、及び、前記第3タップのそれぞれに蓄積された電荷量を用いた比に基づいて、前記距離を算出する算出部を備えてもよい。
【0025】
これにより、信号処理部は、各タップに蓄積された電荷量を用いた比、具体的には電荷量に応じた検出信号を用いた比により距離を算出することができる。つまり、信号処理部は、受光部からの検出信号を用いて直接距離を算出することができる。よって、測距装置は、例えば、A/D(Analog/Digital)変換して距離を算出する場合に比べて、AD変換時に発生するノイズの影響を受けずに、距離を算出することができる。
【0026】
また、例えば、前記基本信号は、単一周波数の信号であってもよい。
【0027】
これにより、測距装置は、基本信号の周波数を変更し複数回の測定を行うことなく距離を算出することができる。よって、測距装置は、距離の算出を、より高速で行うことができる。
【0028】
また、例えば、前記発光タイミングのための制御信号の基本信号は、パルス状の信号であり、前記露光タイミングのための制御信号の基本信号は、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップで位相が異なる台形形状の信号であってもよい。
【0029】
これにより、距離に対応する各タップへの制御信号の入力値を繋ぎ三次元空間中に可視化したコーディング曲線をより長くすることができるので、ノイズにより頑健な測距装置を実現することができる。
【0030】
また、例えば、高周波ノイズが存在する環境下において測定された距離の二乗平均平方根誤差は、100mm以下であってもよい。
【0031】
これにより、二乗平均平方根誤差が100mmであるので、精度のよい距離計測を行うことができる。
【0032】
本発明の一態様に係る測距装置は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、光源部と、前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ及び第2タップとを有する受光部と、前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ及び前記第2タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える。
【0033】
これにより、測距装置は、基本信号を擬似乱数によりランダムに変調するため、低周波及び高周波の外乱光の影響を抑制することができる。よって、本発明によれば、従来よりもノイズに頑健な測距装置を実現することができる。
【0034】
本発明の一態様に係る測距方法は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置で実行される測距方法であって、前記測距装置は、光源部と、前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップとを有する受光部とを備え、前記測距方法は、前記光源部の発光タイミング、前記受光素子の露光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップへの電荷の振り分けのそれぞれを制御するための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する。
【0035】
これにより、上記の測距装置と同様の効果を奏する。
【0036】
なお、これらの全般的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の非一時的記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。プログラムは、記録媒体に予め記憶されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0037】
以下、実施の形態等について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0038】
なお、以下で説明する実施の形態等は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態等で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態等における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0039】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0040】
また、本明細書において、直交、同じ等の要素間の関係性を示す用語、及び、正弦波状、矩形状等の形状を示す用語、並びに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(例えば、10%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。
【0041】
また、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数又は順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0042】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態に係る測距装置について、図1図9を参照しながら説明する。本実施の形態では、2タップ(又は3タップ)方式の測距装置に、ランダム符号化を適用する例について説明する。
【0043】
[1-1.測距装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る測距装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0044】
図1に示すように、測距装置100は、対象物200に対して光を出射し、その光が対象物200で反射した反射光を受光して、対象物200までの距離を測定する。測距装置100は、TOF(Time Of Flight)方式により対象物200までの距離を測定する装置である。測距装置100は、TOFカメラとも称される。測距装置100は、自動運転車両に搭載される測距装置、生体認証装置、エンターテイメントを含むAR(Augmented Reality:拡張現実)/MR(Mixed Reality:複合現実)での形状計測等において用いられる。また、測距装置100は、リアルタイムで形状計測を行うための装置としても用いられてもよい。なお、距離は、測距装置100から対象物200までの距離である。
【0045】
測距装置100は、制御部10と、信号生成部20と、光源制御部30と、光源部40と、受光制御部50と、受光部60と、信号処理部70とを備える。
【0046】
制御部10は、測距装置100の各構成要素を制御する制御装置である。制御部10は、例えば、測距装置100が搭載される物体からの制御信号、ユーザの操作部(図示しない)への操作等に基づいて、光源部40及び受光部60を制御するための制御信号を信号生成部20に生成させる。なお、操作部は、例えば、ボタン、タッチパネル等である。
【0047】
信号生成部20は、光源部40の発光タイミング及び受光部60の露光タイミング等のそれぞれを制御するための制御信号を生成する。信号生成部20は、光源部40及び受光部60のそれぞれに、ランダム性を有する制御信号を生成する。
【0048】
信号生成部20は、基本信号に擬似乱数(ビット列)を用いた変調を加えることで制御信号を生成する。基本信号は、対象物200までの距離測定を実現可能な信号であり、例えば、単一の周波数の信号が用いられる。本実施の形態では、基本信号として「double ramp」と呼ばれる信号(図3の(d)を参照)を用いる。また、本実施の形態では、擬似乱数を用いた変調として、DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum:直接スペクトラム拡散)変調を用いる。つまり、擬似乱数の生成にDSSSを用いる。DSSSは、PN(Pseudo random Noise:擬似ランダム雑音)拡散とも称され、擬似ランダム雑音としてM系列符号を用いることができる。
【0049】
なお、M系列とは0及び1の2値をランダムに並べた乱数であり、所定の長さのシフトレジスタと排他的論理和とを用いてフィードバックすることにより生成される。また、擬似乱数は、変調信号(変調符号)とも称される。
【0050】
信号生成部20が生成する制御信号は、スペクトラム拡散された、「1」及び「0」のビットがほとんどランダムに並んだ信号となる。制御信号がランダム性を有していることで、低周波及び高周波の外乱光が距離の測定に与える影響を抑制することができる。つまり、低周波及び高周波の外乱光に頑健な測距装置100を実現することができる。
【0051】
なお、擬似乱数の生成方法は上記に限定されず、既知のいかなる方法が用いられてもよい。また、以下において、光源部40を制御するための制御信号を発光制御信号とも記載し、受光部60を制御するための制御信号を露光制御信号とも記載する。
【0052】
光源制御部30は、信号生成部20からの制御に従い、光源部40から光を出射させる。光源制御部30は、信号生成部20からの発光制御信号に基づいて光源部40の各発光素子に電力を供給するタイミングを制御することにより、光源部40による発光を制御する。
【0053】
光源部40は、光源制御部30からの制御により光を出射する。光源部40は、例えば、発光素子としてLED(Light Emitting Diode)素子を有していてもよいし、レーザ素子を有していてもよいし、その他の発光素子を有していてもよい。また、光源部40が出射する光の波長は、所望の距離が測定可能な波長であれば特に限定されない。
【0054】
受光制御部50は、信号生成部20からの制御に従い、受光部60に反射光を受光させる。受光制御部50は、信号生成部20からの露光制御信号に基づいて受光部60に電力を供給するタイミングを制御することにより、受光部60による受光(露光)を制御する。受光制御部50は、例えば、露光制御信号に基づいて、受光部60の転送トランジスタ63a及び63b(図2を参照)のゲート電極に当該ゲート電極をオン、オフさせるためのゲート信号(電圧)を出力する。受光制御部50は、転送トランジスタ63a及び63bの一方をオンさせている間、転送トランジスタ63a及び63bの他方をオフさせるように、転送トランジスタ63a及び63bのゲート電極にゲート信号を出力する。
【0055】
受光部60は、光源部40からの光が対象物200で反射した反射光を受光することで受光量に応じた検出信号を出力する。受光部60は、フォトダイオード62(図2を参照)等の受光素子を有する。受光部60は、例えば、受光素子が二次元状に配列されたCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)センサである。なお、検出信号は、電荷の蓄積量の応じた1つの電圧値を示す信号である。
【0056】
図2は、本実施の形態に係る受光部60の画素61の回路構成の一部を示す図である。図2では、画素61の回路構成のうち、反射光を受光してから電荷が蓄積されるまでに要する構成要素のみを図示している。
【0057】
図2に示すように、受光部60の画素61は、回路構成として、フォトダイオード62と、第1タップ61aと、第2タップ61bとを有する。画素61は、1つのフォトダイオード62で発生した電荷が第1タップ61a及び第2タップ61bのいずれかに振り分けられるように構成される。第1タップ61aに蓄積された電荷量に応じた検出信号、及び、第2タップ61bに蓄積された電荷量に応じた検出信号は、別々に信号処理部70に出力される。なお、上記の振り分けとは、タップごとに蓄積された電荷を読み出し可能なように電荷を振り分けることを意味する。また、別々に出力とは、例えば、異なるタイミング又は異なる信号線により出力されることを意味する。
【0058】
第1タップ61aは、転送トランジスタ63aと、FD(Floating Diffusion)部64aとを有し、FD部64aに蓄積された電荷量に応じた検出信号を出力する。
【0059】
第2タップ61bは、転送トランジスタ63bと、FD部64bとを有し、FD部64bに蓄積された電荷量に応じた検出信号を出力する。
【0060】
転送トランジスタ63a及び63bの導電型は同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、転送トランジスタ63a及び63bのうち一方の導電型がn型であり、転送トランジスタ63a及び63bのうち他方の導電型がp型である場合、共通のゲート信号を用いて転送トランジスタ63a及び63bのオン、オフを制御することができる。なお、導電型は、n型及びp型であることに限定されない。
【0061】
なお、画素61は、さらにフォトダイオード62に接続される第3タップ(図示しないが、例えば、図13に示す第3タップ61c)を有していてもよい。第3タップは、例えば、太陽光、照明光等の定常な環境光(大域光)による電荷を蓄積するためのタップである。この場合、信号生成部20は、第3タップを制御するためのゲート信号をさらに生成する。当該ゲート信号は、光源部40から出射され対象物200で反射された反射光を受光しないタイミング、例えば光源部40が光を出射する前のタイミングで第3タップをオンするゲート信号である。なお、第3タップを制御する制御信号は、例えば、擬似乱数によりランダム符号化されていない信号である。
【0062】
図1を再び参照して、信号処理部70は、受光部60から供給される検出信号に基づいて、測距装置100から対象物200までの距離を算出する算出部として機能する。信号処理部70は、第1タップ61aからの検出信号と、第2タップ61bからの検出信号とを用いた比を算出し、算出された比に基づいて当該距離を算出する。
【0063】
信号処理部70は、第1タップ61aからの検出信号が示す電荷量をQ2、第2タップ61bからの検出信号が示す電荷量をQ3、第3タップからの検出信号が示す電荷量をQ1とし、発光期間をT0とすると、反射光の飛行時間ΔTを、以下の(式1)により算出する。
【0064】
(Q3-Q1)/((Q2-Q1)+(Q3-Q1))=ΔT/T0 ・・・(式1)
【0065】
なお、発光期間T0は、例えば、所定期間(例えば、1フレーム期間)における複数の発光それぞれの発光期間の累積期間であるが、これに限定されない。また、本明細書において、飛行時間ΔTを遅延時間とも記載する。
【0066】
信号処理部70は、受光部60から出力された検出信号(アナログ信号)の信号強度から直接距離を算出するが、例えば、デジタル信号処理により距離を算出してもよい。
【0067】
ここで、測距装置100における各種信号について、図3図5を参照しながら説明する。まずは、基本信号等について、図3を参照しながら説明する。図3は、各種信号の一例を示す図である。図3では、発光制御信号及び露光制御信号の基本信号と、基本信号ごとの距離及び信号強度の関係とを示す。出力信号は、受光部60が信号処理部70に出力する検出信号である。図3の(a)及び(b)に示す各グラフは、横軸が時間を示し、縦軸が信号強度を示し、図3の(c)に示すグラフは、横軸が深さ(距離)を示し、縦軸が信号強度を示す。縦軸は、信号強度の最大値を1とした値である。また、深さは、光の往復時間(飛行時間ΔT)と同義である。
【0068】
また、図3では、3タップ方式の場合の基本信号を示している。実線(M1(t)、D1(t)及びF1(t))は、第1タップ61aに対する信号を示し、破線(M2(t)、D2(t)及びF2(t))は、第2タップ61bに対する信号を示し、一点鎖線(M3(t)、D3(t)及びF3(t))は、第3タップに対する信号を示している。例えば、実線M1(t)は、第1タップ61aに電荷を蓄積するための光を光源部40に出射させるための基本信号であり、破線M2(t)は、実線M1(t)の基本信号により光源部40から出射された光が対象物200で反射された反射光により生成された電荷を第1タップ61aに蓄積するための基本信号を示す。
【0069】
なお、図3では、信号同士が重なる場合、実線を優先して図示している。また、図3では、(a)~(f)までの6種類の基本信号を例示しているが、この6種類に限定されず、他の形状の信号が用いられてもよい。
【0070】
図3の(a)は、発光制御信号の基本信号が3タップで同位相の正弦波状の信号であり、露光制御信号の基本信号が3タップで位相が異なる正弦波状の信号である場合を示している。この場合、出力信号は、3タップそれぞれにおいて、対象物200までの距離に応じた、正弦波状の波形上のいずれかの値(図3の(a)の「距離に対する出力信号」に示される正弦波状の波形上のいずれかの値)を示す信号となる。
【0071】
図3の(b)は、発光制御信号の基本信号が3タップで同位相の矩形波状の信号であり、露光制御信号の基本信号が3タップで位相が異なる矩形波状の信号である場合を示している。この場合、出力信号は、3タップそれぞれにおいて、対象物200までの距離に応じた、三角波状の波形上のいずれかの値を示す信号となる。
【0072】
図3の(c)は、発光制御信号の基本信号が、第1タップ61aでは所定期間(2τ)の半分のタイミングで1から0へ遷移するランプ方式の信号であり、第2タップ61bでは強度が0.5の信号であり、第3タップでは強度が0の信号であり、露光制御信号の基本信号が、第1タップ61aでは所定期間(2τ)の半分のタイミングで1から0へ遷移するランプ方式の信号であり、第2タップ61b及び第3タップでは強度が1の信号である場合を示している。この場合、出力信号は、対象物200までの距離に応じて、第1タップ61aでは右下がりの直線上のいずれかの値を示す信号となり、第2タップ61bでは強度が1を示す信号となり、第3タップでは外乱光がない場合、0を示す信号となる。
【0073】
図3の(d)は、発光制御信号の基本信号が、第1タップ61a及び第2タップ61bでは所定期間(2τ)の半分のタイミングで1から0へ遷移するランプ方式の信号であり、第3タップでは強度が0の信号であり、露光制御信号の基本信号が、第1タップ61aでは所定期間(2τ)の半分のタイミングで1から0へ遷移するランプ方式の信号であり、第2タップ61bでは所定期間(2τ)の半分のタイミングで0から1へ遷移するランプ方式の信号であり、第3タップでは強度が1の信号である場合を示している。この場合、出力信号は、対象物200までの距離に応じて、第1タップ61aでは右下がりの直線上のいずれかの値を示す信号となり、第2タップ61bでは右上がりの直線上のいずれかの値を示す信号となり、第3タップでは外乱光がない場合、0を示す信号となる。
【0074】
図3の(e)は、発光制御信号の基本信号が3タップで同位相のパルス状の信号であり、露光制御信号の基本信号が3タップで位相が異なる正弦波状の信号である場合を示している。この場合、出力信号は、3タップそれぞれにおいて、対象物200までの距離に応じた、正弦波状の波形上のいずれかの値を示す信号となる。
【0075】
図3の(f)は、発光制御信号の基本信号が3タップで同位相のパルス状の信号であり、露光制御信号の基本信号が3タップで位相が異なる台形波状の信号である場合を示している。この場合、出力信号は、3タップそれぞれにおいて、対象物200までの距離に応じた、台形波状の波形上のいずれかの値を示す信号となる。
【0076】
次に、発光制御信号及び露光制御信号について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。
【0077】
図4の(a)は、第1タップ61aに対する露光制御信号であり、具体的には転送トランジスタ63aのゲート電極に供給されるゲート信号を示す。図4の(a)は、フォトダイオード62が露光し、かつ、第1タップ61aが電荷を蓄積するタイミング及び期間を示すとも言える。言い換えると、信号生成部20は、擬似乱数を用いて、フォトダイオード62の露光期間及び露光周期、並びに、第1タップ61aへの電荷の蓄積期間及び蓄積周期を変化させる。露光期間及び露光周期を露光態様とも記載する。
【0078】
図4の(b)は、第2タップ61bに対する露光制御信号であり、具体的には転送トランジスタ63bのゲート電極に供給されるゲート信号を示す。図4の(b)は、フォトダイオード62が露光し、かつ、第2タップ61bが電荷を蓄積するタイミング及び期間を示すとも言える。言い換えると、信号生成部20は、擬似乱数を用いて、フォトダイオード62の露光期間及び露光周期、並びに、第2タップ61bへの電荷の蓄積期間及び蓄積周期を変化させる。
【0079】
図4の(c)は、光源部40を制御するための発光制御信号であり、具体的には光源部40の発光素子に供給される信号を示す。図4の(c)は、光源部40が発光するタイミング及び発光期間を示すとも言える。言い換えると、信号生成部20は、擬似乱数を用いて、光源部40の発光期間及び発光周期を変化させる。発光期間及び発光周期を発光態様とも記載する。
【0080】
図4の(a)~(c)に示す信号はそれぞれ、擬似乱数を用いた変調に基づく信号である。擬似乱数を用いて変調された信号は、複数の周波数を含む信号となる。複数の周波数を含むとは、所定期間内(例えば1フレーム内)に複数の発光期間及び複数の発光周期を含むことを意味する。なお、図4では、図4の(a)~(c)の対応する任意の3箇所を破線で示している。
【0081】
図4の(a)及び(c)に示すように、第1タップ61aを制御する露光制御信号と光源部40を制御する発光制御信号とは、同一の信号である。つまり、第1タップ61aのオン、オフと光源部40のオン、オフとが同期しており、第1タップ61aは、光源部40が発光するとオンとなり、光源部40が消灯するとオフとなる。信号生成部20は、光源部40を制御する発光制御信号と同じ信号を用いて第1タップ61aを制御する。
【0082】
図4の(b)及び(c)に示すように、第2タップ61bを制御する露光制御信号と光源部40を制御する発光制御信号とは、オン、オフが反転した信号である。つまり、第2タップ61bは、光源部40が発光するとオフとなり、光源部40が消灯するとオンとなる。信号生成部20は、光源部40を制御する発光制御信号からオン、オフが反転した露光制御信号を用いて第2タップ61bを制御する。
【0083】
このような制御信号により光源部40及び受光部60が制御されることで、測距装置100から近い位置にある対象物200からの反射光により生成される電荷は主に第1タップ61aに蓄積され、測距装置100から遠い位置にある対象物200からの反射光により生成される電荷は主に第2タップ61bに蓄積される。
【0084】
次に、検出信号及び距離の算出方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る検出信号及び距離の算出方法の一例を示す図である。図5に示す一点鎖線の枠は、測距装置100が測定対象とする距離範囲を示す。
【0085】
図5の(a)は、第1タップ61a及び第2タップ61bから出力される検出信号それぞれにおける、対象物200までの距離と、検出信号の信号強度との関係を示す図である。図5の(a)の横軸は距離を示しており、縦軸は信号強度(sensor output)を示す。また、図5の(a)に示す「tap1」は第1タップ61aからの検出信号を示しており、「tap2」は第2タップ61bからの検出信号を示している。図5の(a)に示す関係は、測距装置100を用いて距離ごとに対象物200を測定することで得られる。
【0086】
図5の(a)に示すように、第1タップ61a及び第2タップ61bからの検出信号はそれぞれ、距離「0」を基準に左右反転した形状を有する。
【0087】
図5の(b)は、第1タップ61a及び第2タップ61bから出力される検出信号の信号強度の比と、対象物200までの距離との関係を示す図である。図5の(b)の横軸は距離を示しており、縦軸は信号強度の比(ratio)を示す。図5の(b)に示す信号強度の比と、対象物200までの距離との関係は、予め取得可能である。当該関係は、環境光の影響が除外されたものであってもよい。
【0088】
図5の(b)に示す左右方向の破線は、対象物200までの距離を測定したときに得られる1つの比を示している。一点鎖線の枠内における、検出信号の比(破線)と、比及び距離の関係を示すグラフ(実線)との交点が対象物200までの距離となる。
【0089】
[1-2.測距装置の動作]
続いて、上記のように構成される測距装置100の動作について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施の形態に係る測距装置100の動作(測距方法)を示すフローチャートである。
【0090】
図6に示すように、信号生成部20は、基本信号と変調信号(DSSS)とから、発光制御信号及び露光制御信号を生成する(S11)。信号生成部20は、発光制御信号を光源制御部30に出力し、露光制御信号を受光制御部50に出力する。
【0091】
次に、光源制御部30は、発光制御信号に基づいて、光源部40を発光させる(S12)。ステップS12では、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えた発光制御信号に基づいて、光源部40の発光態様が制御される。これにより、光源部40から発光周期及び発光期間がランダムな光が出射される。
【0092】
次に、受光制御部50は、露光制御信号に基づいて受光部60を制御することで、反射光を受光させる(S13)。露光制御信号には、第1タップ61aを制御するための制御信号と、第2タップ61bを制御するための制御信号とが含まれ、受光制御部50は、露光制御信号に基づいて、第1タップ61a及び第2タップ61bのオン、オフを制御する。
【0093】
ステップS13では、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えた露光制御信号に基づいて、受光部60の露光態様が制御される。具体的には、ステップS13では、フォトダイオード62の露光態様、並びに、第1タップ61a及び第2タップ61bへの電荷の振り分けが制御される。ステップS13では、第1タップ61a及び第2タップ61bに対応する露光タイミングが制御されるとも言える。また、測距装置が第3タップを備える場合、ステップS13では、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップに対応する露光タイミングが制御されるとも言える。
【0094】
そして、受光制御部50は、所定期間(例えば、予め定められた1フレーム期間)の露光が終わると、第1タップ61aに蓄積された電荷量に応じた検出信号、及び、第2タップ61bに蓄積された電荷量に応じた検出信号をそれぞれ信号処理部70に出力させる。
【0095】
次に、信号処理部70は、2つの検出信号を用いた比に基づいて対象物200までの距離を算出する(S14)。これにより、測距装置100は、対象物200までの距離を得ることができる。
【0096】
[1-3.実験結果]
続いて、測距装置100のノイズ耐性(外乱光の影響の受け難さ)について、図7A図9を参照しながら説明する。図7Aは、距離の測定結果の比較を示す第1図である。図7Bは、距離の測定結果の比較を示す第2図である。図7A及び図7Bは、比較例の測距装置と、本実施の形態に係る測距装置100とで、対象物200を測定した結果を示す。対象物200は、測距装置100から約60cmの位置に置かれた板状の第1対象物と、第1対象物の上方であって測距装置100から約90cmの位置に置かれた板状の第2対象物とを測定した結果を示している。図7Aは、距離画像を示し、図7Bは、図7Aに示す直線に含まれる画素61ごとの距離測定結果を示す。また、図7A及び図7Bでは、高周波ノイズとして、100MHzの外乱光を出射した場合(with noise)と、100MHzの外乱光を出射していない場合(w/o noise)とで実験を行っている。
【0097】
なお、比較例の測距装置は、一定間隔でパルス光を出射する3タップ方式の測距装置(TOFカメラ)である。つまり、比較例の測距装置は、擬似乱数を用いた変調を行わず、基本信号をそのまま用いて光源部及び受光部を制御する測距装置である。
【0098】
図7Aの(a)及び(b)と、図7Bとに示すように、高周波ノイズを発生させていない場合、比較例の測距装置と測距装置100とで同様の結果となっている。
【0099】
図7Aの(c)及び(d)と、図7Bとに示すように、高周波ノイズを発生させている場合、比較例の測距装置では、特に第1対象物までの距離が大きくズレているが、測距装置100では、高周波ノイズを発生させていない場合と同様の結果となっている。つまり、測距装置100は、高周波ノイズの影響を受けにくい。
【0100】
次に、高周波ノイズを与えた場合の距離算出のシミュレーション結果について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、比較例の測距装置の測定結果を示す図である。図9は、本実施の形態に係る測距装置100の測定結果を示す図である。図8及び図9では、高周波ノイズとして、100MHzの外乱光を出射した場合の測定結果を示す。
【0101】
図8の(a)は、横軸が遅延時間(例えば、距離に相当)を示しており、縦軸が反射光(又は外乱光)の明るさ(例えば、信号強度に相当)を示している。図8の(a)に示す「tap0」は、環境光の明るさと、遅延時間との関係を示しており、「tap1」及び「tap2」は、反射光を含む光の明るさと遅延時間との関係を示している。図8の(a)に示す明るさと遅延時間との関係、つまり信号強度と、対象物200までの距離との関係は、測定により取得可能である。また、図8の(b)は、反射光を含む光により生成された電荷を蓄積するタップからの2つの検出信号それぞれから、環境光により生成された電荷を蓄積するタップからの検出信号を減算し、減算された当該2つの検出信号の比をとったグラフを示す。また、遅延時間は、光の飛行時間と同義である。
【0102】
図8の(a)に示すように、比較例の測距装置では、各信号が波打っており、その結果、図8の(b)に示すように比のグラフも波打っている(例えば、図8の(b)に示す枠内を参照)。これは、比較例の測距装置の測定結果が、高周波ノイズの影響を受けていることを示している。このような場合、正確な距離を測定することが困難である。
【0103】
一方、測距装置100は、図9の(a)に示すように信号が波打っておらず、その結果、図9の(b)に示すように比のグラフも波打っておらず、直線状である(例えば、図9の(b)に示す枠内を参照)。これは、本実施の形態に係る測距装置100の測定結果が、高周波ノイズの影響をあまり受けていないことを示している。このような場合、正確な距離を測定することができる。
【0104】
なお、図9の(a)に示す「tap0」は第1タップ61aを示し、「tap1」は第2タップ61bを示す。
【0105】
(実施の形態1の変形例)
以下、本変形例に係る測距装置について、図10図12を参照しながら説明する。本変形例では、周波数(周波数帯)の異なる複数の信号を多重化することにより、制御信号を生成する例について説明する。以下では、3つの信号を多重化する例について説明するが、多重化される信号の数は2以上であればよい。なお、TOF方式の測距において、制御信号の周波数を高くすると、測定レンジが狭くなり距離の精度が高くなる傾向があり、周波数を低くすると、測定レンジが広くなり距離の精度が低くなる傾向がある。
【0106】
本変形例に係る測距装置の構成は、画素以外は実施の形態1に係る測距装置100と同じであってもよく、以下では画素以外は測距装置100の符号を用いて説明する。
【0107】
図10は、本変形例に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
【0108】
図10に示すように、発光制御信号は、複数の発光期間及び複数の発光周期を含む第1周波数の信号である第1信号(破線)、複数の発光期間及び複数の発光周期を含む第2周波数の信号である第2信号(実線)、及び、複数の発光期間及び複数の発光周期を含む第3周波数の信号である第3信号(一点鎖線)が時間的に多重化されて生成される。第1信号、第2信号及び第3信号に含まれる複数の発光期間及び複数の発光周期は、互いに異なる発光期間及び発光周期を含んでおり、発光制御信号における第1信号、第2信号及び第3信号は互いに異なる信号である。
【0109】
また、図10に示すように、露光制御信号は、複数の露光期間及び複数の露光周期を含む第1周波数の信号である第1信号(破線)、複数の露光期間及び複数の露光周期を含む第2周波数の信号である第2信号(実線)、及び、複数の露光期間及び複数の露光周期を含む第3周波数の信号である第3信号(一点鎖線)が時間的に多重化されて生成される。第1信号、第2信号及び第3信号に含まれる複数の露光期間及び複数の露光周期は、互いに異なる露光期間及び露光周期を含んでおり、露光制御信号における第1信号、第2信号及び第3信号は互いに異なる信号である。
【0110】
なお、露光制御信号における第1信号は、発光制御信号における第1信号に基づく信号であり、第1の受光信号の一例である。また、露光制御信号における第2信号は、発光制御信号における第2信号に基づく信号であり、第2の受光信号の一例である。また、露光制御信号における第3信号は、発光制御信号における第3信号に基づく信号であり、第3の受光信号の一例である。
【0111】
図10の例では、第1周波数、第2周波数及び第3周波数の順に周波数が低くなる例を示しているが、周波数の並びはこれに限定されない。また、多重化とは、1つ目の信号の後に2つ目の信号を時間的につなげることを意味する。また、図10の例では、発光制御信号と露光制御信号とは、位相がズレた信号である。
【0112】
第1信号、第2信号及び第3信号のそれぞれは、擬似乱数で変調された信号である。信号生成部20は、例えば、第1基本信号に第1擬似乱数(第1変調信号)を用いて変調を加えた第1信号と、第2基本信号に第1擬似乱数と異なる第2擬似乱数(第2変調信号)を用いて変調を加えた第2信号と、第3基本信号に第1擬似乱数及び第2擬似乱数と異なる第3擬似乱数(第3変調信号)を用いて変調を加えた第3信号とを生成する。なお、第1基本信号~第3基本信号は、同一の信号であってもよいし、互いに異なる信号であってもよい。
【0113】
このような第1信号、第2信号及び第3信号は、互いに無相関な信号である。言い換えると、第1信号、第2信号及び第3信号のそれぞれは、発光周期又は露光周期、及び、発光期間又は露光期間が互いに異なる信号である。そのため、第1信号、第2信号及び第3信号を用いて測距する場合、互いの光による混信が生じにくい。つまり、第1信号、第2信号及び第3信号を多重化しても、距離の測定への影響は少ない。なお、擬似乱数を用いた変調を行っていない場合、例えば、第1信号が第2信号の露光に影響を与えてしまうので、正確な距離を測定することが困難である。
【0114】
そのため、時間t1~t2の間において、発光制御信号は第2信号であり、露光制御信号は第1信号であるが信号同士に相関関係がないので、光源部40の発光が受光部60の受光に与える影響は少ない。時間t3~t4の間においても同様である。また、時間t1以前、時間t2~t3の間、時間t4以降において、発光制御信号及び露光制御信号は同じ周波数の信号(例えば、同じ波形の信号)であるので、光源部40の発光による反射光を受光部60が受光することができる。
【0115】
このように、本変形例に係る測距装置では、基本信号と擬似乱数とにより生成された複数の信号を時間方向に多重化することで、任意の発光及び露光を実現することができる。また、信号を多重化することにより、マルチパス問題の解消、光通信への利用も可能となる。また、従来であれば複数の周波数の信号による測定を周波数ごとに行っているが、本変形例のようにランダム符号化された信号を多重化することにより、複数の周波数の信号での測定結果を1回の測定で取得することができる。
【0116】
なお、本明細書において、「無相関」及び「相関関係がない」との表現は、相関関係が全くないことに限定されず、実質的に相関関係がない、及び、所定以下の小さな相関関係を有することも含まれる。
【0117】
信号処理部70において、第1信号、第2信号及び第3信号のそれぞれに対して評価(距離の算出)が行われることで、広い測定レンジを高精度で同時に測定することができる。
【0118】
なお、図10の露光制御信号は、以下に示す2つのタップのうちの一方のタップの制御信号を示しており、他方のタップの制御信号は、当該一方のタップの制御信号のオン、オフを反転した信号となる。
【0119】
本変形例に係る受光部60の画素の回路構成は、実施の形態1の受光部60の画素61の回路構成と同様であり、説明を省略する。なお、画素61は、さらにフォトダイオード62に接続される第3タップ(図示しないが、例えば、図13に示す第3タップ61c)を有していてもよい。第3タップは、例えば、太陽光、照明光等の定常な環境光(大域光)による電荷を蓄積するためのタップである。
【0120】
画素61は、回路構成として、1つのフォトダイオード62で発生した電荷が第1タップ61a及び第2タップ61bのいずれかに振り分けられるように構成される。例えば、図10に示す露光制御信号における第1信号~第3信号によりフォトダイオード62で発生した電荷が第1タップ61a及び第2タップ61bの一方に蓄積され、図10に示す露光制御信号における第1信号~第3信号が反転した信号によりフォトダイオード62で発生した電荷が第1タップ61a及び第2タップ61bの他方に蓄積される。
【0121】
そして、第1タップ61a及び第2タップ61bに蓄積された電荷量に応じた検出信号が、別々に信号処理部70に出力される。
【0122】
画素61は、さらにフォトダイオード62に接続され、定常な環境光による電荷を蓄積するためのタップを有していてもよい。
【0123】
上記のように構成される測距装置の動作について、図11を参照しながら説明する。図11は、本変形例に係る測距装置の動作(測距方法)を示すフローチャートである。
【0124】
図11に示すように、信号生成部20は、基本信号と複数の変調信号(DSSS)とから、多重化した発光制御信号及び露光制御信号を生成する(S21)。信号生成部20は、例えば、図10に示すような発光制御信号及び露光制御信号を生成する。信号生成部20は、発光制御信号を光源制御部30に出力し、露光制御信号を受光制御部50に出力する。
【0125】
次に、光源制御部30は、発光制御信号に基づいて、光源部40を発光させる(S22)。これにより、光源部40から発光周期及び発光期間が互いにランダムな第1信号、第2信号及び第3信号のそれぞれに対応する光が出射される。
【0126】
次に、受光制御部50は、露光制御信号に基づいて受光部60を制御することで、変調された信号ごとに反射光を受光させる(S23)。露光制御信号には、第1タップ61a及び第2タップ61bを制御するための信号が含まれ、受光制御部50は、露光制御信号に基づいて、第1タップ61a及び第2タップ61bのオン、オフを独立して制御する。なお、受光制御部50は、例えば、第1タップ61a及び第2タップ61bにおいて、2つのタップが同時にオンしないように制御してもよい。ステップS23では、第1タップ61a及び第2タップ61bに対応する露光タイミングが制御されるとも言える。
【0127】
そして、受光制御部50は、所定期間(例えば、予め定められた1フレーム期間)の露光が終わると、第1タップ61a及び第2タップ61bのそれぞれに蓄積された電荷量に応じた検出信号を、別々に信号処理部70に出力させる。
【0128】
次に、信号処理部70は、変調された信号ごとに対象物200までの距離を算出する(S24)。信号処理部70は、第1タップ61a及び第2タップ61bのそれぞれの検出信号に基づいて、対象物200までの距離を算出する。
【0129】
図12は、本変形例に係る測距装置の測定結果を示す図である。図12は、高周波ノイズとして、100MHzの外乱光を出射していない場合の測定結果を示す。図12の(a)は、横軸が遅延時間(例えば、距離に相当)を示し、縦軸が反射光の明るさ(例えば、信号強度に相当)を示す。図12の(a)では、第1タップ61aから取得した検出信号と遅延時間との関係を実線(tap0)で示し、第2タップ61bから取得した検出信号と遅延時間との関係を破線(tap1)で示している。
【0130】
また、図12の(b)の実線(「multiplex」)は、図12の(a)のtap0とtap1との比を取ったものであり、この値が光源信号(光源制御信号)と、検出信号とのズレ、すなわち距離を表している。なお、図12の(b)中の3つの破線等(「sequence1」から「sequence3」)は、図10の第1信号から第3信号までに対応するものであり、仮に多重化されなかった場合に計算される比の値である。
【0131】
図12の(b)に示すように、「sequence1」から「sequence3」に変化するに伴い、信号のズレの有効範囲(0以上の比の範囲)が拡大していることが分かる。これに対して、図12の(b)実線に示すように、中心付近(遅延時間0nsec)から遅延時間がプラスに向かうときの傾きが急であるので、多重化前の「sequence1」から「sequence3」に比べて、距離分解能が高く、その結果、測距装置の測定精度が高いことがわかる。
【0132】
また、図12の(a)及び(b)に示すように、測定レンジも第1信号のみを用いた「sequence1」の場合に比べて拡大している。
【0133】
このように、本変形例に係る測距装置では、周波数(周波数帯)が異なる複数の信号を多重化し、多重化された信号に基づいて発光及び露光を制御することで、距離の測定精度の向上及び測定レンジの拡大を両立することができる。
【0134】
また、本変形例に係る測距装置を、TOF信号の識別に利用することもできる。測距装置は、例えば、他の測距装置から出射された測距のための光(外乱光)を受光し、受光した光に基づいて、当該光の出射を制御する発光制御信号の生成に、どの擬似乱数系列が用いられたかを特定する。他の測距装置で用いられる擬似乱数系列は、例えば、本変形例に係る測距装置で用いられるM系列でシードが異なるものであってもよいし、M系列とは異なる系列であってもよい。
【0135】
そして、測距装置は、擬似乱数系列、及び、製品の種別、メーカ等が対応付けられたテーブルと、特定された擬似乱数系列とに基づいて、他の装置の種別、メーカ等を特定することができる。つまり、信号処理部70は、特定された擬似乱数から他の測距装置を識別することができる。なお、測距装置と他の測距装置とは、例えば、同じ空間内に配置されていてもよいし、互いに異なる空間に配置されていてもよい。
【0136】
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係る測距装置について、図13図18を参照しながら説明する。本実施の形態では、3タップ方式の測距装置に、ガロア体GF(q)を用いたランダム符号化を適用する例について説明する。ガロア体とは、要素数が有限の集合であり、有限体とも称される。GF(q)は、計算結果に対してmod qを計算することで生成される。なお、「q」は位数である。
【0137】
[2-1.測距装置の構成]
本実施の形態に係る測距装置の構成は、画素以外は実施の形態1に係る測距装置100と同じであってもよく、以下では画素以外は測距装置100の符号を用いて説明する。図13は、本実施の形態に係る受光部60の画素161の回路構成の一部を示す図である。
【0138】
図13に示すように、受光部60の画素161は、回路構成として、フォトダイオード62と、第1タップ61aと、第2タップ61bと、第3タップ61cとを有する。画素161は、1つのフォトダイオード62で発生した電荷が第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cに振り分けられるように構成される。そして、第1タップ61a第2タップ61b及び第3タップ61cに蓄積された電荷量に応じた検出信号のそれぞれが、別々に信号処理部70に出力される。
【0139】
第3タップ61cは、転送トランジスタ63cと、FD部64cとを有する。
【0140】
また、本実施の形態では、信号生成部20は、擬似乱数を用いた変調としてガロア体を用いた変調を用いて基本信号を変調する。信号生成部20は、例えば、ガロア体を用いた変調において、3つの要素のガロア体GF(3)を用いて基本信号を変調する。つまり、ガロア体の位数qは、測距装置のタップ数と同じ数である。この場合、擬似乱数として、3つの要素のガロア体GF(3)における擬似乱数が用いられる。また、本実施の形態では、基本信号として「single ramp」と呼ばれる信号(図3の(c)を参照)を用いるが、これに限定されない。
【0141】
なお、ガロア体GF(q)の位数qは、測距装置のタップ数より大きい値であってもよい。例えば、ガロア体として、例えばガロア体GF(5)等が用いられてもよい。ガロア体GF(3)を3タップ方式に用いる場合、3タップのそれぞれにおいて、オン、オフ及び遷移部分の出現確率は1/3となる。オンは一期間の全てがオンとなる第1状態であり、オフは一期間の全てがオフとなる第2状態であり、遷移部分は、一期間内においてオン及びオフが一方から他方へ切り替わる第3状態(移行状態)である。例えば、遷移部分は、一期間の前半をオンとし、後半をオフとする、又は、その反対であるがこれに限定されない。なお、一期間とは、例えば、1フレーム内を複数に分割した1つの期間を意味しており、その長さは予め設定されている。
【0142】
例えば、露光制御信号において、距離測定に重要である遷移部分を多めに出現させ、オン及びオフは出現確率を下げたい場合がある。つまり、露光制御信号において、遷移部分の回数を増やし、それ以外のオン及びオフの回数を減らしたい場合がある。そのため、信号生成部20は、タップ数より位数qが大きいガロア体を用いて、複数のタップにおけるオン、オフ及び遷移部分の出現確率を変更させてもよい。信号生成部20は、例えば、3タップ方式の場合にガロア体GF(5)を用いて1/5の出現確率の擬似ランダム符号を生成し、そのうち3つを第1タップ61aに、1つを第2タップ61bに、1つを第3タップ61cに割り振ることで、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cそれぞれにおける遷移部分の出現確率を3/5、1/5、1/5等とすることが可能となる。
【0143】
なお、出現確率を異ならせる(例えば、高くする)対象の状態は、遷移部分であることに限定されず、オン、オフ及び遷移部分のうちの1つ又は2つであればよい。例えば、信号生成部20は、擬似乱数に基づいて、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cのうちの一のタップにおいて、第1状態、第2状態及び第3状態のうちの一の状態の出現確率を、他のタップと異ならせるように当該一のタップの制御信号を生成してもよい。
【0144】
なお、擬似乱数の生成方法は、上記に限定されず、ガロア体を用いた既知のいかなる方法が用いられてもよい。
【0145】
また、本実施の形態では、信号処理部70は、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cのそれぞれに蓄積された電荷量を用いた比に基づいて、対象物200までの距離を算出する算出部として機能する。例えば、信号処理部70は、第1タップ61aが第1状態のときに蓄積された電荷量をQ2、第2タップ61bが第2状態のときに蓄積された電荷量をQ3、第3タップ61cが第3状態のときに蓄積された電荷量をQ1とし、発光期間をT0とすると、反射光の飛行時間ΔTを、以下に示す(式2)を用いて算出する。
【0146】
(Q2-Q1)/(Q3-Q1)=ΔT/T0 ・・・(式2)
【0147】
ここで、測距装置における各種信号について、図14及び図15を参照しながら説明する。まずは、発光制御信号及び露光制御信号について、図14を参照しながら説明する。図14は、本実施の形態に係る発光制御信号及び露光制御信号の一例を示す図である。
【0148】
図14の(a)は、ドレインつまり露光しない状態の信号を示す。
【0149】
図14の(b)は、光源部40を制御するための発光制御信号であり、具体的には光源部40の発光素子に供給される信号を示す。図14の(b)に示す発光制御信号により制御されることで、光源部40は、ランダムな発光態様で発光する。信号生成部20は、1つの期間(例えば、発光期間又は消灯期間)に対して、擬似乱数系列のうちの2bitを用いて、基本信号の変調を行う。例えば、「00」である場合、オン(発光)とし、「11」である場合、オフ(消灯)とし、「10」である場合、移行状態とする。本実施の形態に係る擬似乱数系列は、オン、オフ及び移行状態の3つの状態がランダムに出現するような乱数系列である。
【0150】
図14の(c)は、第1タップ61aに対する露光制御信号であり、具体的には転送トランジスタ63aのゲート電極に供給されるゲート信号を示す。
【0151】
図14の(d)は、第2タップ61bに対する露光制御信号であり、具体的には転送トランジスタ63bのゲート電極に供給されるゲート信号を示す。
【0152】
図14の(e)は、第3タップ61cに対する露光制御信号であり、具体的には転送トランジスタ63cのゲート電極に供給されるゲート信号を示す。
【0153】
図14の(b)は、図3の(c)に示す発光制御信号の基本信号にガロア体を用いた変調を加えた制御信号である。また、図14の(c)~(e)のそれぞれは、図3の(c)に示す露光制御信号の基本信号にガロア体を用いた変調を加えた制御信号である。図14の(b)~(e)はそれぞれ、互いに異なる信号であり、かつ、互いに無相関な信号である。
【0154】
図14の(c)~(e)に示すように、本実施の形態では、第1タップ61a~第3タップ61cのそれぞれが反射光の受光及び環境光の受光を行うように制御される。言い換えると、画素161は、環境光による電荷を蓄積するための専用のタップを有していない。
【0155】
次に、検出信号及び距離の算出方法について、図15を参照しながら説明する。図15は、本実施の形態に係る検出信号及び距離の算出方法の一例を示す図である。図15は、高周波ノイズとして、100MHzの外乱光を出射していない場合の検出信号及を示す。
【0156】
図15の(a)は、第1タップ61a(tap0)、第2タップ61b(tap1)及び第3タップ61c(tap2)から出力される検出信号それぞれにおける、反射光の明るさ(luminance)と、遅延時間との関係を示す図である。図15の(a)の横軸は遅延時間(例えば、距離に相当)を示しており、縦軸は反射光の明るさ(例えば、信号強度に相当)を示す。
【0157】
図15の(a)に示すように、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cからの検出信号はそれぞれ、遅延時間に応じて互いに異なるように明るさが変化する。例えば、明るさの変化が打ち消し合うように変化する。例えば、遅延時間が30ns以上の範囲において、遅延時間が長くなると、第1タップ61aの明るさが上昇している代わりに第3タップ61cの明るさが低下している。図15の(a)に示す関係は、測距装置を用いて距離ごとに対象物200を測定することで得られる。
【0158】
図15の(b)は、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cのそれぞれから出力される検出信号の信号強度の比と、遅延時間との関係を示す図である。図15の(b)の横軸は遅延時間を示しており、縦軸は信号強度の比(ratio)を示す。図15の(b)に示す信号強度の比と、対象物200までの距離との関係は、予め取得される。
【0159】
図15の(b)に示す左右方向の破線は、対象物200までの距離を測定したときに得られる1つの比を示している。検出信号の比(破線)と、比及び遅延時間の関係を示すグラフ(実線)との交点が、現在測定した対象物200までの距離となる。本実施の形態に係る測距装置では、検出信号の比を示す直線とグラフとの交点が1点のみであるので、対象物200までの距離が一意に決まるメリットがある。
【0160】
[2-2.測距装置の動作]
続いて、上記のように構成される測距装置の動作について、図16を参照しながら説明する。図16は、本実施の形態に係る測距装置の動作(測距方法)を示すフローチャートである。
【0161】
図16に示すように、信号生成部20は、基本信号と変調信号(ガロア体GF(3))とから、発光制御信号及び露光制御信号を生成する(S31)。信号生成部20は、例えば、図14の(b)に示すような発光制御信号及び図14の(c)~(e)に示すような露光制御信号を生成する。信号生成部20は、発光制御信号を光源制御部30に出力し、露光制御信号を受光制御部50に出力する。
【0162】
次に、光源制御部30は、発光制御信号に基づいて、光源部40を発光させる(S32)。ステップS32では、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えた発光制御信号に基づいて、光源部40の発光態様が制御される。これにより、光源部40から発光周期及び発光期間が互いにランダムな光が出射される。
【0163】
次に、受光制御部50は、露光制御信号に基づいて受光部60を制御することで、反射光を受光させる(S33)。露光制御信号には、第1タップ61aを制御するための制御信号と、第2タップ61bを制御するための制御信号と、第3タップ61cを制御するための制御信号とが含まれ、受光制御部50は、露光制御信号に基づいて、第1タップ61a~第3タップ61cのオン、オフを独立して制御する。なお、受光制御部50は、第1タップ61a~第3タップ61cにおいて、2以上のタップが同時にオンしてもよいように制御する。
【0164】
ステップS33では、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えた露光制御信号に基づいて、受光部60の露光態様が制御される。具体的には、ステップS33では、フォトダイオード62の露光態様、並びに、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cへの電荷の振り分けが制御される。ステップS33では、第1タップ61a、第2タップ61b及び第3タップ61cに対応する露光タイミングが制御されるとも言える。
【0165】
そして、受光制御部50は、所定期間(例えば、予め定められた1フレーム期間)の露光が終わると、第1タップ61a~第3タップ61cのそれぞれに蓄積された電荷量に応じた検出信号を、別々に信号処理部70に出力させる。
【0166】
次に、信号処理部70は、第1タップ61a~第3タップ61cからの検出信号を用いた比に基づいて、対象物200までの距離を算出する(S34)。信号処理部70は、3つの検出信号から1つの比を算出し、当該1つの比の値に基づいて、対象物200までの距離を算出する。
【0167】
[2-3.実験結果]
続いて、本実施の形態に係る測距装置のノイズ耐性について、図17A図18を参照しながら説明する。図17Aは、比較例の測距装置の測定結果を示す図である。図17Bは、本実施の形態に係る測距装置の測定結果を示す第1図である。図17A及び図17Bは、比較例の測距装置と、本実施の形態に係る測距装置とで、対象物200を測定した距離画像を示す。対象物200は、測距装置から所定距離の位置に置かれた板状の物体である。図17A及び図17Bに示す「ノイズあり」は、高周波ノイズとして、100MHzの外乱光を出射した場合の測定結果を示している。高周波ノイズの影響がなければ、「ノイズなし」の距離画像と、「ノイズあり」の距離画像とは同一の画像となる。
【0168】
図17Aでは、「ノイズあり」と「ノイズなし」とで、右下(丸枠箇所)の距離が大きく異なっている。これは、比較例の測距装置が高周波ノイズの影響を受けていることを意味する。
【0169】
一方、図17Bでは、「ノイズあり」と「ノイズなし」とで、右下(丸枠箇所)の距離が多少異なってはいるが、比較例の測距装置ほどの大きな差はない。これは、本実施の形態に係る測距装置が比較例の測距装置より高周波ノイズの影響を受けにくいことを意味する。
【0170】
図18は、本実施の形態に係る測距装置の測定結果を示す第2図である。図18は、高周波ノイズとして、100MHzの外乱光を出射した場合の測定結果を示している。高周波ノイズの影響がなければ、図18に示すグラフは、図15に示すグラフと同一のグラフとなる。
【0171】
図18の(a)は、横軸が遅延時間(例えば、距離に相当)を示しており、縦軸が反射光(又は外乱光)の明るさ(例えば、信号強度に相当)を示している。図18の(a)に示す「tap0」~「tap2」のそれぞれは、第1タップ61a~第3タップ61cのそれぞれにおける光の明るさと遅延時間との関係を示している。また、図18の(b)は、3つのタップからの3つの検出信号の比と、遅延時間との関係を示す。
【0172】
図18の(a)に示すように、本実施の形態に係る測距装置では、信号が少ししか波打っておらず、その結果、図18の(b)に示すように比のグラフも少ししか波打っておらず、直線に近い。これは、本実施の形態に係る測距装置の測定結果が、高周波ノイズの影響を少ししか受けていないことを示している。このような場合、正確な距離を測定することができる。
【0173】
なお、実施の形態1の図8に示すように、比較例の測距装置では、各信号が波打っており、高周波ノイズの影響を受けている。本実施の形態に係る測距装置は、高周波ノイズの影響は受けるものの、比較例の測距装置に比べてその影響は大幅に抑制されている。
【0174】
(動作例1)
本動作例では、実施の形態2に係る測距装置(3TapのToF)の動作例を示す。実施の形態2に係る測距装置を用いて、図3の(b)の基本信号に、ガロア体による変調を加えた信号による動作例を、図19図20Bを用いて示す。図19は、本動作例に係る発光制御信号(図19の(a))及び露光制御信号(図19の(b))の一例を示す図である。図19は、光源部40の制御信号(emitted signal)、及び、第1タップ61a(例えば、「tap0」)、第2タップ61b(例えば、「tap1」)、及び、第3タップ61c(例えば、「tap2」)の制御信号(tap control)のタイミングチャートを示す。ここでは、矩形波の光源信号に対してそれぞれ位相を0、π/3、2π/3シフトした矩形波信号を基本波形とし、ガロア体(GF3)の3ビット信号により変調し、第1タップ61a~第3タップ61cの露光制御信号とすることで、タイミングチャートに実装した。
【0175】
図20Aは、図19のタイミングチャートを用いてシミュレーションして得られたグラフ(積分グラフ)を示す図であり、図20Bは、図19のタイミングチャートを用いて実際に測定して得られたグラフを示す図である。図20A及び図20Bは、第1タップ61a(tap0又はtap0 minus dark noise)、第2タップ61b(tap1又はtap1 minus dark noise)及び第3タップ61c(tap2又はtap2 minus dark noise)から出力される検出信号それぞれにおける、反射光の明るさ(luminance)と、遅延時間との関係を示す図である。また、図20Bは、実際のToFでディレイヤを使って計測したグラフを示す。
【0176】
図20Bに示すように、図3の(c)に示す基本信号を用いた場合よりも誤り訂正能力が高いので、図3の(b)を基本信号として用いることで、実施の形態1の2Tap方式よりも、計測がロバストになることが期待される。
【0177】
(動作例2)
本動作例では、実施の形態1の変形例に係る測距装置(2TAPのToF+多重化)の第1動作例を示す。以下では、異なる3つの信号を多重化した場合の動作例を、図21図22Bを用いて示す。図21は、本動作例に係る発光制御信号(図21の(a))及び露光制御信号(図21の(b))の一例を示す図である。図21は、光源部40の制御信号(emitted signal)、及び、3つの信号を時間多重化した各タップの制御信号(tap control)のタイミングチャートを示す。ここでは、それぞれ単位パルス長30ns、60ns、120nsからなる全長が等しい同位相のDSSS変調されたシーケンス1、シーケンス2及びシーケンス3を結合により時間的に多重化し、発光・露光の制御信号とすることで、タイミングチャートに実装した。例えば、図21の(b)のtap0が第1タップ61aに対応し、tap1が第2タップ61bに対応する。
【0178】
図22Aは、図21のタイミングチャートを用いてシミュレーションして得られたグラフを示す図であり、図22Bは、図21のタイミングチャートを用いて実際に測定して得られたグラフを示す図である。
【0179】
図22Aの(a)は、図21のタイミングチャートを用いてシミュレーションして得られたグラフ(積分グラフ)を示す図であり、横軸が遅延時間を示し、縦軸が反射光の明るさを示す。図22Aの(a)では、第1タップ61aから取得した検出信号と遅延時間との関係を実線(tap0)で示し、第2タップ61bから取得した検出信号と遅延時間との関係を破線(tap1)で示している。また、図22Aの(b)の実線(「multiplex」)は、図22Aの(a)のtap0とtap1との比を取ったものであり、この値が光源信号と、検出信号とのズレ、すなわち距離を表している。なお、図22Aの(b)中の3つの破線等(「sequence1」から「sequence3」)は、3つの信号それぞれに対応するものであり、仮に多重化されなかった場合に計算される比の値である。また、図22Aの(b)中の二点鎖線が示す「sequence sum」は、「sequence1」から「sequence3」のグラフを足し合わせたグラフである。
【0180】
図22Bは、実際のToFでディレイヤを使って計測したグラフを図23に示す。
【0181】
図22A及び図22Bに示すように、計測レンジが拡大していることが確認できる。
【0182】
また、図22Aの(b)に示す「sequence sum」のグラフは、実線とほぼ一致している。これにより、3つの信号を時間多重化した制御信号を用いて得られる測定結果が、正確な値であることを示している。
【0183】
(動作例3)
本動作例では、実施の形態1の変形例に係る測距装置(2TAPのToF+多重化)の第2動作例を示す。以下では、異なる3つの信号を、光源部40の信号からそれぞれ異なる位相でずらして多重化した場合の動作例を、図23及び図24を用いて示す。図23は、本動作例に係る発光制御信号(図23の(a))及び露光制御信号(図23の(b))の一例を示す図である。図23は、光源部40の制御信号(emitted signal)、及び、3つの信号を時間多重化した各タップの制御信号(tap control)のタイミングチャートを示す。ここでは、それぞれ光源部40に対して位相遅れが30ns、30ns、0nsの単位パルス長及び全長が等しいDSSS変調されたシーケンス1、シーケンス2及びシーケンス3を結合により時間的に多重化し、発光・露光の制御信号とすることで、タイミングチャートに実装した。例えば、図23の(b)のtap0が第1タップ61aに対応し、tap1が第2タップ61bに対応する。
【0184】
図24は、図23のタイミングチャートを用いて得られたグラフを示す図である。図24の(a)は、図23のタイミングチャートを用いてシミュレーションして得られたグラフ(積分グラフ)を示す図であり、横軸が遅延時間を示し、縦軸が反射光の明るさを示す。図24の(a)では、第1タップ61aから取得した検出信号と遅延時間との関係を実線(tap0)で示し、第2タップ61bから取得した検出信号と遅延時間との関係を破線(tap1)で示している。また、図24の(b)の実線(「multiplex」)は、図24の(a)のtap0とtap1との比を取ったものであり、この値が光源信号と、検出信号とのズレ、すなわち距離を表している。なお、図24の(b)中の3つの破線等(「sequence1」から「sequence3」)は、3つの信号それぞれに対応するものであり、仮に多重化されなかった場合に計算される比の値である。また、図24の(b)中の二点鎖線が示す「sequence sum」は、「sequence1」から「sequence3」のグラフを足し合わせたグラフである。
【0185】
図24の(a)及び(b)に示すように、制御信号の位相をずらすことで、左右対称ではない相関グラフが得られることが確認できる。
【0186】
また、図24の(b)に示す「sequence sum」のグラフは、実線とほぼ一致している。これにより、異なる3つの信号を位相でずらして多重化した制御信号を用いて得られる測定結果が、正確な値であることを示している。
【0187】
(距離計測の追加データ)
以下の実環境での距離計測を追加で行ったため、図25図34を参照しながら説明する。なお、以下では、擬似乱数を用いた変調のことを、擬似乱数変調とも記載する。また、測距装置100は、3タップ方式の測距装置であるが、2タップ方式の測距装置であってもよい。
【0188】
(1つ目の距離計測結果について)
まず、1つ目の距離計測結果について、図25図29Bを参照しながら説明する。図25は、追加で行った第1距離計測の様子を示す図である。図25では、測距装置100の構成要素のうち、光源部40及び受光部60のみを図示している。
【0189】
図25に示すように、1つ目の距離計測では、対象物体として、板410及び420を配置している。板410は、受光部60からの距離が45cmの位置に配置され、板420は、受光部60からの距離が60cmの位置に配置されている。また、板420は、板410より高い。そのため、光源部40及び受光部60の位置から板410及び420を見ると、板410の上方に板420の一部が見えることとなる。
【0190】
板410及び420は、例えば、平行に配置されており、光源部40及び受光部60の光軸は板410及び420の主面と直交するように配置されている。
【0191】
また、高周波ノイズを発生させるノイズ源としてノイズ用光源300が配置される。ノイズ用光源300は、斜め方向から板410及び420に向けて高周波ノイズを出力可能な姿勢で固定されている。高周波ノイズとしては、100MHzの外乱光が用いられる。
【0192】
次に、高周波ノイズの有無及び信号列ごとの実環境距離計測の結果について、図26A及び図26Bを参照しながら説明する。図26Aは、従来手法における距離計測結果(距離画像)を示す図である。従来手法とは、基本信号に対して擬似乱数変調を加えずに生成された制御信号を用いて距離計測を行うことを意味する。また、「ノイズなし」は、ノイズ用光源300が高周波ノイズを出力していないことを意味し、「ノイズあり」は、ノイズ用光源300が高周波ノイズを出力していることを意味する。なお、信号列とは、擬似乱数変調されていない基本信号(制御信号)(例えば、図3に示す信号)、又は、基本信号に対して擬似乱数変調した後の制御信号(例えば、図4に示す信号)を意味する。
【0193】
図26Aに示す「(a)C-Double ramp」は、図3の(d)に示す基本信号を制御信号として用いる場合を示しており、「(b)C-Square」は、図3の(b)に示す基本信号を制御信号として用いる場合を示しており、「(c)C-Hamiltonian」は、図3の(f)に示す基本信号を制御信号として用いる場合を示している。なお、「(a)C-Double ramp」を「(a)」とも記載する。
【0194】
図26Aに示すように、従来手法では、いずれもノイズありの計測結果がノイズなしの計測結果から変化している。言い換えると、従来手法では、高周波ノイズの影響を受けやすく、ノイズがある場合、正確な距離計測を行うことが困難である。
【0195】
図26Bは、擬似乱数変調を用いた手法(本発明の手法)における距離計測結果(距離画像)を示す図である。図26Bに示す「(d)DSSS」は、繰り返しのない1単位のDouble rampを基本信号とし、当該基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いる場合を示しており、「(e)PR(擬似乱数:pseudorandom number)-Double ramp」は、図3の(d)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いる場合を示しており、「(f)PR-Square」は、図3の(b)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いる場合を示しており、「(g)PR-Hamiltonian」は、図3の(f)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いる場合を示している。
【0196】
なお、「(d)DSSS」を「(d)」とも記載し、「(e)PR-Double ramp」を「(e)」とも記載し、「(f)PR-Square」を「(f)」とも記載し、「(g)PR-Hamiltonian」を「(g)」とも記載する。(d)~(g)では、擬似乱数としてM系列を用いている。また、(e)~(g)に用いる基本信号は、繰り返しのある信号(周期的な信号)である。
【0197】
図26Bに示すように、擬似乱数変調を用いた手法では、いずれもノイズありの計測結果とノイズなしの計測結果とがほぼ同じである。言い換えると、擬似乱数変調を用いた手法では、高周波ノイズの影響を受けにくく、ノイズがある場合であっても、正確な距離計測を行うことができる。
【0198】
また、擬似乱数変調を用いる手法においては、(d)>(e)>(f)>(g)の順で距離画像中のノイズが小さくなっている。これは、センサノイズの影響と考えられ、コーディング曲線が長い信号列ほど良好な計測結果が得られている。
【0199】
図27Aは、図3の(b)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いた場合の距離計測結果を示す図である。図27Aの(a)は、距離画像を示し、図27Aの(b)は、図27Aの(a)に示す直線(中央部分の上下方向の直線)に含まれる画素61ごとの距離測定結果を示す。
【0200】
図27Bは、図3の(f)に示す基本信号に擬似乱数変調を加えた制御信号を用いた場合の距離計測結果を示す図である。図27Bの(a)は、距離画像を示し、図27Bの(b)は、図27Bの(a)に示す直線(中央部分の上下方向の直線)に含まれる画素61ごとの距離測定結果を示す。
【0201】
図27Aの(a)及び図27Bの(a)の縦軸及び横軸は、画素位置(pixel index)を示し、図27Aの(b)及び図27Bの(b)の横軸は、画素位置(pixel index)を示し、縦軸は、計測された距離([mm])を示す。図27Aの(b)の横軸は、図27Aの(a)の縦軸に対応しており、図27Bの(b)の横軸は、図27Bの(a)の縦軸に対応している。
【0202】
図27A及び図27Bの一点鎖線枠に示すように、「(g)PR-Hamiltonian」の方が「(f)PR-Square」よりノイズの影響が軽減していることがわかる。
【0203】
図28は、基本信号の違いによる距離計測の比較結果を示す図である。図28は、「(g)PR-Hamiltonian」及び「(f)PR-Square」における、板410及び420までの距離と、RMSE(Root Mean Squared Error:二乗平均平方根誤差)とを示す。RMSEが小さいほど、ノイズの影響を受けていないことを意味する。
【0204】
図28に示すように、距離は、「(g)PR-Hamiltonian」及び「(f)PR-Square」のどちらの信号列も真値(450.00mm及び600.00mm)に近い値が得られている。また、距離の誤差は、「(f)PR-Square」より「(g)PR-Hamiltonian」の方が小さく、「(g)PR-Hamiltonian」の方がセンサノイズに対して頑健であると言える。
【0205】
図29Aは、図3の(b)に示す基本信号を用いた場合のコーディング曲線を説明するための図である。図29Bは、図3の(f)に示す基本信号を用いた場合のコーディング曲線を説明するための図である。コーディング曲線とは、距離に対応する各タップにおける観測値を繋ぎ三次元空間中に可視化した曲線である。
【0206】
図29A及び図29Bに示すように、図3の(f)に示す基本信号を用いた場合のコーディング曲線の方が、図3の(b)に示す基本信号を用いた場合のコーディング曲線より全長が長いことがわかる。計測された観測値が誤差を含む場合、計測点はコーディング曲線上に存在せず、真の距離に対応する計測点は一点鎖線状の楕円で囲まれた範囲にあった曖昧性を有するように推定される。図29A及び29B中の「〇」は、誤差を含む観測点を示している。図29A及び29B中の矢印線は、誤差を含む観測点が、当該楕円で囲まれた範囲のコーディング曲線上のどこか(例えば、矢印の位置のいずれか)に対応していることを示す。コーディング曲線が長いほど、この範囲に対応する距離の範囲が狭くなるため、距離推定の曖昧性は小さくなる。つまり、「(f)PR-Square」より「(g)PR-Hamiltonian」の方が距離の曖昧性が小さい。
【0207】
図27A図29Bから、コーディング曲線が長いほど、ノイズの影響が小さくなることがわかる。このことから、ノイズに対する頑健さをより有する測距装置100を実現する観点から、基本信号には、コーディング曲線が長いものが用いられるとよく、(g)>(f)>(e)>(d)の順に適していると言える。
【0208】
(2つ目の距離計測結果について)
続いて、2つ目の距離計測結果について、図30図34を参照しながら説明する。図30は、追加で行った第2距離計測の様子を示す図である。
【0209】
図30に示すように、2つ目の距離計測では、対象物体として、犬の置物430を配置している。置物430は、受光部60からの距離が50cmの位置に配置されている。置物430は、光源部40及び受光部60の正面に配置されている。
【0210】
また、高周波ノイズを発生させるノイズ源として、図25の場合と同様、ノイズ用光源300が配置される。高周波ノイズとしては、100MHzの外乱光が用いられる。
【0211】
次に、高周波ノイズの有無及び信号列ごとの実環境距離計測の結果について、図31A及び図31Bを参照しながら説明する。図31Aは、従来手法における距離計測結果(距離画像)を示す図である。図31Bは、擬似乱数変調を用いた手法における距離計測結果(距離画像)を示す図である。
【0212】
図31Aに示すように、従来手法では、いずれもノイズありの計測結果がノイズなしの計測結果から変化している。言い換えると、従来手法では、高周波ノイズの影響を受けやすく、ノイズがある場合、正確な距離計測を行うことが困難である。
【0213】
図31Bに示すように、擬似乱数変調を用いた手法では、いずれもノイズありの計測結果とノイズなしの計測結果とがほぼ同じである。言い換えると、擬似乱数変調を用いた手法では、高周波ノイズの影響を受けにくく、ノイズがある場合であっても、正確な距離計測を行うことができる。なお、図31Bからも、コーディング曲線の長い信号列ほどセンサノイズに頑健であると言える。
【0214】
次に、ノイズがない環境における距離測定精度の評価結果について、図32A図32Gを参照しながら説明する。図32A図32Gは、ノイズがない環境において、各信号列を用いた場合の距離測定精度の評価結果を示す図である。図32A図32Gそれぞれの(a)は、横軸が光源部40の発光からの遅延時間(delay[ns])を示しており、縦軸が反射光(又は外乱光)の明るさ(例えば、信号強度に相当)を示している。図32A図32Gそれぞれの(b)は、遅延時間と対象物体までの距離(depth[mm])との関係を示しており、横軸が遅延時間を示しており、縦軸が距離を示す。なお、各図において、実線と、破線等の他の線とが重なる場合、実線を優先して図示している。
【0215】
図32A図32Gに示すように、高周波ノイズが存在しないときは、すべての信号で理想的な計測信号が得られ、距離推定も正確である。理想的とは、例えば、真値に近く、かつ標準偏差が小さいことを意味する。
【0216】
次に、ノイズがある環境における距離測定精度の評価結果について、図33A図33Gを参照しながら説明する。図33A図33Gは、ノイズがある環境において、各信号列を用いた場合の距離測定精度の評価結果を示す図である。図33A図33Gそれぞれの(a)は、横軸が遅延時間を示しており、縦軸が反射光(又は外乱光)の明るさ(例えば、信号強度に相当)を示している。図33A図33Gそれぞれの(b)は、遅延時間と対象物体までの距離との関係を示しており、横軸が遅延時間を示しており、縦軸が距離を示す。なお、各グラフの幅(グレースケールで表される領域の幅)は、誤差の標準偏差を示す。
【0217】
図33A図33Cに示すように、高周波ノイズが存在するときに、従来手法((a)~(c))では計測信号に大きなノイズが含まれ、距離推定にも大きな誤差がみられる。一方、図33D図33Fに示すように、高周波ノイズが存在するときに、擬似乱数変調を用いた手法(本発明の手法)((d)~(g))では、計測信号のノイズが抑制され、距離推定に大きな影響がみられない。
【0218】
図34は、距離推定精度の比較結果を示す図である。図34は、比較評価として、図32A~33Gに示す距離推定における二乗平均平方根誤差の比較結果を示す。
【0219】
図34に示すように、擬似乱数変調を用いた手法は、従来手法より二乗平均平方根誤差が小さく、ノイズ条件下で頑健であることがわかる。また、コーディング曲線が長い(g)の精度が最も高い。
【0220】
なお、高周波ノイズが存在する環境下において、擬似乱数変調を用いた手法(本発明の手法)で算出された距離の二乗平均平方根誤差は、従来手法で算出された距離の二乗平均平方根誤差より小さければよく、例えば、100mm以下であってもよいし、50mm以下であってもよいし、25mm以下であってもよいし、10mm以下であってもよい。
【0221】
(その他の実施の形態)
以上、一つ又は複数の態様に係る測距装置等について、実施の形態等に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態等に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明に含まれてもよい。
【0222】
例えば、上記実施の形態等では、信号生成部はデジタル変調するように構成される例を示したが、アナログ変調するように構成されていてもよい。
【0223】
また、上記実施の形態1の変形例では、DSSS変調された信号を多重化する例について説明したが、ガロア体を用いて変調された信号など他の変調方法により生成された信号が多重化されてもよい。また、多重化される信号のそれぞれは、単一周波数の信号であってもよい。
【0224】
また、上記実施の形態等における測距装置は、屋内で用いられてもよいし、屋外で用いられてもよい。
【0225】
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0226】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。
【0227】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0228】
また、上記実施の形態等に係る測距装置は、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。測距装置が複数の装置によって実現される場合、当該測距装置が有する各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。測距装置が複数の装置で実現される場合、当該複数の装置間の通信方法は、特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、装置間では、無線通信及び有線通信が組み合わされてもよい。
【0229】
また、上記実施の形態等で説明した各構成要素は、ソフトウェアとして実現されても良いし、典型的には、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路(専用のプログラムを実行する汎用回路)又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて構成要素の集積化を行ってもよい。
【0230】
システムLSIは、複数の処理部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0231】
また、本発明の一態様は、図6図11及び図16のいずれかに示される測距方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。
【0232】
また、例えば、プログラムは、コンピュータに実行させるためのプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。例えば、そのようなプログラムを記録媒体に記録して頒布又は流通させてもよい。例えば、頒布されたプログラムを、他のプロセッサを有する装置にインストールして、そのプログラムをそのプロセッサに実行させることで、その装置に、上記各処理を行わせることが可能となる。
【0233】
(付記)
以上の実施の形態等の記載により、下記の技術が開示される。
【0234】
(技術1)
TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、
光源部と、
前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子、及び、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップを有する受光部と、
前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える
測距装置。
【0235】
(技術2)
前記擬似乱数を用いた変調は、ガロア体を用いた変調である
技術1に記載の測距装置。
【0236】
(技術3)
前記ガロア体を用いた変調では、ガロア体として、前記受光部が有するタップの数と同数の位数のガロア体における擬似乱数が用いられる
技術2に記載の測距装置。
【0237】
(技術4)
前記ガロア体を用いた変調では、ガロア体として、前記受光部が有するタップの数より大きい位数のガロア体における擬似乱数が用いられる
技術2に記載の測距装置。
【0238】
(技術5)
前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップのそれぞれは、一期間をオンとする第1状態、一期間をオフとする第2状態、及び、一期間内においてオン及びオフの一方から他方へ切り替わる第3状態とを有し、
前記信号生成部は、前記擬似乱数に基づいて、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップのうちの一のタップにおいて、前記第1状態、前記第2状態及び前記第3状態のうちの一の状態の出現確率を、他のタップと異ならせるように当該一のタップの制御信号を生成する
技術1~4のいずれかに記載の測距装置。
【0239】
(技術6)
前記信号生成部は、前記基本信号に第1擬似乱数を用いて変調を加えた第1信号と、前記基本信号に前記第1擬似乱数と異なる第2擬似乱数を用いて変調を加えた第2信号とを時間方向に多重化することで、前記制御信号を生成し、
前記受光部は、前記第1信号に基づく発光により受光する反射光と、前記第2信号に基づく発光により受光する反射光とにより生成される電荷を互いに異なるタップに蓄積する
技術1~5のいずれかに記載の測距装置。
【0240】
(技術7)
前記測距装置が配置される空間には、他の測距装置が配置されており、
前記受光部が受光した外乱光に基づいて、当該外乱光を出射するために用いられた擬似乱数を特定し、特定された擬似乱数から前記他の測距装置を識別する信号処理部を備える
技術1~6のいずれかに記載の測距装置。
【0241】
(技術8)
前記第1タップ、前記第2タップ、及び、前記第3タップのそれぞれに蓄積された電荷量を用いた比に基づいて、前記距離を算出する算出部を備える
技術1~7のいずれかに記載の測距装置。
【0242】
(技術9)
前記基本信号は、単一周波数の信号である
技術1~8のいずれかに記載の測距装置。
【0243】
(技術10)
前記発光タイミングのための制御信号の基本信号は、パルス状の信号であり、
前記露光タイミングのための制御信号の基本信号は、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップで位相が異なる台形形状の信号である
技術1~9のいずれかに記載の測距装置。
【0244】
(技術11)
高周波ノイズが存在する環境下において測定された距離の二乗平均平方根誤差は、100mm以下である
技術1~10のいずれかに記載の測距装置。
【0245】
(技術12)
TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置であって、
光源部と、
前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ及び第2タップを有する受光部と、
前記光源部の発光タイミング、並びに、前記第1タップ及び前記第2タップに対応する露光タイミングのための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する信号生成部とを備える
測距装置。
【0246】
(技術13)
TOF(Time Of Flight)方式により対象物までの距離を測定する測距装置で実行される測距方法であって、
前記測距装置は、
光源部と、
前記光源部が出射した光が前記対象物で反射された反射光を受光する受光素子、及び、前記受光素子が前記反射光を受光することにより発生した電荷が振り分けられる第1タップ、第2タップ及び第3タップを有する受光部とを備え、
前記測距方法は、
前記光源部の発光タイミング、前記受光素子の露光タイミング、並びに、前記第1タップ、前記第2タップ及び前記第3タップへの電荷の振り分けのそれぞれを制御するための制御信号を、基本信号に擬似乱数を用いた変調を加えることで生成する
測距方法。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明は、対象物の形状計測等を行う測距装置等に有用である。
【符号の説明】
【0248】
10 制御部
20 信号生成部
30 光源制御部
40 光源部
50 受光制御部
60 受光部
61、161 画素
61a 第1タップ
61b 第2タップ
61c 第3タップ
62 フォトダイオード
63a、63b、63c 転送トランジスタ
64a、64b、64c FD部
70 信号処理部(算出部)
100 測距装置
200 対象物
300 ノイズ用光源
410、420 板
430 置物
t1、t2、t3、t4 時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27A
図27B
図28
図29A
図29B
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図32C
図32D
図32E
図32F
図32G
図33A
図33B
図33C
図33D
図33E
図33F
図33G
図34