(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134862
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ガス圧縮装置およびガス回収システム
(51)【国際特許分類】
F04B 27/02 20060101AFI20240927BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20240927BHJP
G01R 33/035 20060101ALI20240927BHJP
A61B 5/245 20210101ALN20240927BHJP
【FI】
F04B27/02 A
F25B9/00 A
F25B9/00 311
G01R33/035
A61B5/245
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045283
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 良浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一郎
【テーマコード(参考)】
2G017
3H076
4C127
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB03
2G017AC01
2G017AD32
3H076AA03
3H076BB04
3H076BB28
3H076BB50
3H076CC02
3H076CC31
4C127AA03
4C127AA10
(57)【要約】
【課題】生体磁気計測システム等に対してノイズの影響を低減することができるガス圧縮装置およびガス回収システムを提供する。
【解決手段】ヘリウムガスを圧縮する複数の圧縮機14Ac1~14Ac4を含む圧縮機14Ac(ガス圧縮装置)であって、複数の圧縮機14Ac1~14Ac4は、少なくともヘリウムガスを圧縮するためのピストン34-1~ピストン34-4の運動方向が反平行となる圧縮機の組を含むことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮する複数の圧縮機を含むガス圧縮装置であって、
前記複数の圧縮機は、少なくともガスを圧縮するための可動部の運動方向が反平行となる圧縮機の組を含むガス圧縮装置。
【請求項2】
前記組に対応する圧縮機は、交流電源から供給される入力電圧の極性が一致し、かつ物理的に互いに点対称の配置とした請求項1に記載のガス圧縮装置。
【請求項3】
前記複数の圧縮機は、それぞれ
前記可動部としてのピストンと、
前記入力電圧によって磁界を形成することにより前記ピストンに力を及ぼすコイルと、
前記ピストンの軸方向の一端に接続された弾性体と、
前記入力電圧に対して半波整流を行う整流素子と、
を備え、
前記ピストンは、前記磁界から受ける力と、前記弾性体から受ける応力とによって往復運動を行う請求項2に記載のガス圧縮装置。
【請求項4】
前記複数の圧縮機は、直列に接続された請求項1~3のいずれか一項に記載のガス圧縮装置。
【請求項5】
前記複数の圧縮機は、レシプロ式の圧縮機である請求項1~3のいずれか一項に記載のガス圧縮装置。
【請求項6】
前記複数の圧縮機は、磁気シールドで囲まれた請求項1~3のいずれか一項に記載のガス圧縮装置。
【請求項7】
前記ガスは、ヘリウムガスである請求項1~3のいずれか一項に記載のガス圧縮装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のガス圧縮装置と、
前記ガス圧縮装置により圧縮された前記ガスを回収して保管するガス回収部と、
を有するガス回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧縮装置およびガス回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳磁(MEG:Magneto-encephalography)データ、および脳波(EEG:Electro-encephalography)データ等の生体信号を測定および解析する生体磁気計測システムで用いられる超電導量子干渉素子(SQUID
:Superconducting Quantum Interference Device)は、超電導状態を保つために冷媒として液体ヘリウムが使われる。このような液体ヘリウムは使用中に一部蒸発してしまうため、当該蒸発したヘリウム(以下、ヘリウムガスと称する場合がある)を再凝縮することによって高価なヘリウムを液体状態に戻して再利用するヘリウム再凝縮システムが必要となる。
【0003】
一般に、ヘリウム再凝縮システムでは、脳磁データ等の計測(以下、単に脳磁計測と称する)時の冷凍機のノイズの影響をなくすために、脳磁データ等の計測時には冷凍機をオフにし、その間の蒸発したヘリウムは、気体のままストレージタンクへコンプレッサ(圧縮機)により圧縮して蓄える。そして、脳磁計測を行わない時間帯に冷凍機をオンにし、ストレージタンクに蓄えたヘリウムガスを再凝縮する方式としている。一般に、冷凍機による再凝縮を効率的に行うために、ヘリウムガスには高い純度が求められる。これは、不純物が混入した純度の落ちたヘリウムガスは、冷凍機の再凝縮効率を下げるためである。そこで、ヘリウムガスをハンドリング(循環および昇圧等の処理)するコンプレッサ(圧縮機)には、構造が単純で堅牢なオイルフリーの電磁ピストン方式のリニアコンプレッサが良く使われてきた。生体磁気計測システムのデュワ等から蒸発したヘリウムガスをストレージタンクへ蓄える回収系についても、不純物の混入を可能な限り抑えることが望まれる。
【0004】
このような、ヘリウム再凝縮システムに使用されるリニアコンプレッサとして、コアレスコイルの駆動電流の流れる方向に略直交する方向に磁場を形成するマグネットおよびヨークを備え、コアレスコイルは、互いに同軸的にかつコイル軸方向に離間して配置された、一対のコイルからなり、それぞれ逆位相の駆動電流を供給することにより、磁束を互いに打ち消し合い、ヨーク内部で発生する鉄損を大幅に軽減して効率を上げるものが開示されている(例えば特許文献1)。また、ヘリウム再凝縮システムに使用されるに使用される圧縮機として、蒸発により発生したヘリウムガスを回収するための回収ラインに、直列に接続された複数の圧縮機を設けることにより、ヘリウムガスを効率よく回収するものが開示されている(例えば特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の蒸発したヘリウムガスを回収する装置では、生体磁気計測システムでの計測に対して圧縮機の駆動による磁場ノイズの影響が考慮されていないという問題がある。そのため、ヘリウムガスを回収する装置が発生する磁場ノイズが、脳磁計等の生体磁気計測システムに対して計測へノイズとして混入してしまう問題があった。また、このようなヘリウムガスを回収する装置による磁場ノイズの影響を低減するために、当該装置を含むヘリウム再凝縮システムを、生体磁気計測システムから一定の距離だけ離隔しなければならず、設置の自由度が制限されるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体磁気計測システム等に対してノイズの影響を低減することができるガス圧縮装置およびガス回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ガスを圧縮する複数の圧縮機を含むガス圧縮装置であって、前記複数の圧縮機は、少なくともガスを圧縮するための可動部の運動方向が反平行となる圧縮機の組を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体磁気計測システム等に対してノイズの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る生体磁気計測システムの全体構成の概略の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの多段に構成された圧縮機の概略構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの圧縮機の内部構成の概略の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、ヘリウム再凝縮システムで用いられる多段の圧縮機の動作によるノイズについて説明する図である。
【
図6】
図6は、ヘリウム再凝縮システムの複数の圧縮機に磁気シールドを施した構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るヘリウム再凝縮システムの複数の圧縮機の配置および電気回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係るガス圧縮装置およびガス回収システムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0011】
(生体磁気計測システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る生体磁気計測システムの全体構成の概略の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る生体磁気計測システム100の全体構成について説明する。
【0012】
図1に示す生体磁気計測システム100は、被検者110の臓器である脳の脳磁データ、脳波データ等を測定するシステムである。生体磁気計測システム100は、
図1に示すように、脳機能測定装置101と、情報処理装置102と、を含む。
【0013】
脳機能測定装置101は、測定対象である被検者110の臓器である脳の脳磁データを測定するための測定装置である。脳機能測定装置101は、
図1に示すように、被検者110の頭部が挿入されるデュワ1と、デュワ1の内部に配置された複数の磁気センサ2と、を備えている。
【0014】
デュワ1は、被検者110の頭部のほぼ全域を取り囲むヘルメット型のセンサ収納型デュワである。デュワ1は、液体ヘリウムを用いた極低温環境の真空断熱装置である。デュワ1は、その内部に脳磁測定用の多数の磁気センサ2が配置されている。
【0015】
磁気センサ2は、超電導量子干渉素子(SQUID)を用いたセンサである。
【0016】
脳機能測定装置101は、磁気センサ2からから生体信号としての脳磁データを収集し、当該生体信号を情報処理装置102に出力する。脳磁データは、神経細胞の電気的な活動(シナプス伝達の際にニューロンの樹状突起で起きるイオン電荷の流れ)により生じた微小な磁場変動を表わす。
【0017】
情報処理装置102は、脳波計で測定された生体信号としての脳波データ、および複数の磁気センサ2からの生体信号としての脳磁データを解析する装置である。例えば、情報処理装置102は、脳波計で測定された脳波データ、および脳機能測定装置101から受信した脳磁データの波形を、時間軸上に表示する。
【0018】
図1に示すヘリウム再凝縮システム10は、デュワ1内の液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収して、生体磁気計測システム100で再利用できるように再凝縮するためのシステムである。なお、ヘリウム再凝縮システム10は、本発明の「ガス回収システム」の一例である。
【0019】
(ヘリウム再凝縮システムの全体構成)
図2は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの全体構成の一例を示す図である。
図2を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の全体構成について説明する。
【0020】
ヘリウム再凝縮システム10は、
図2に示すように、冷凍機11と、ガス回収部13と、ガス回収管14と、ガス供給管15と、循環用配管16と、制御部19と、を備える。
【0021】
冷凍機11は、ガス供給管15から供給されたヘリウムガスを冷却して再凝縮させ、再凝縮した液体ヘリウムをデュワ1へ戻すパルス管冷凍機である。冷凍機11は、冷却部21と、受部22と、保温部23と、移送管24と、駆動系循環部25と、温度センサ26と、を有する。
【0022】
冷却部21は、ガス供給管15から供給されたヘリウムガスを冷却して再凝縮させる部材である。冷却部21は、本体部21Aと、円筒状の第1シリンダ部21Bと、円筒状の第2シリンダ部21Cと、円板状の第1コールドステージ21Dと、円板状の第2コールドステージ21Eと、を備える。
【0023】
本体部21Aは、冷却部21の最上部に配置された、冷却部21の基部である。第1シリンダ部21Bは、本体部21Aから下方に延びて設けられたシリンダである。第2シリンダ部21Cは、第1シリンダ部21Bよりも下方に延びて設けられたシリンダ。第1コールドステージ21Dは、第1シリンダ部21Bと第2シリンダ部21Cとの間に設けられた、冷熱を発生する円板状の部材である。第2コールドステージ21Eは、第2シリンダ部21Cの下端に設けられた、冷熱を発生する円板状の部材である。
【0024】
受部22は、上端が開放し、下端に底22Aを有する皿状の部材である。受部22は、冷却部21の直下に配置され、冷却部21で再凝縮された液体ヘリウムを受ける。
【0025】
保温部23は、例えば、ステンレスまたはガラス繊維強化樹脂により筒状に形成され、内部の温度を保つように真空断熱されたクライオスタットである。保温部23は、上端が開放し、下端に底23Aを有する。保温部23は、内部に冷却部21および受部22が収容され、冷却部21の外周を間隔を空けて囲むように設けられている。保温部23は、上端が冷却部21の本体部21Aにより密閉される。保温部23の底23Aは、移送管24の外周を間隔を空けて囲むように移送管24と共に下方に延びて形成されている。
【0026】
移送管24は、受部22で受けた液体ヘリウムを、脳機能測定装置101のデュワ1へ移送するための管である。移送管24の上端24aは、受部22の底22Aに接続され、移送管24と受部22とが連通している。移送管24は、受部22の底22Aから下方に延び、保温部23の内部を通って下端24bが下方に向けて設けられている。移送管24の下端24bは、脳機能測定装置101のデュワ1に接続されている。
【0027】
駆動系循環部25は、冷却部21を駆動する部材である。駆動系循環部25は、圧縮機25Aと、バルブモータ25Bとを有する。
【0028】
圧縮機25Aは、ヘリウムガス等の圧縮ガスを圧縮し、バルブモータ25Bへ圧縮ガスを供給する圧縮機である。圧縮機25Aは、例えば水冷または空冷により排熱する。バルブモータ25Bは、冷却部21の本体部21Aに対し、圧縮ガスを間欠供給するように開閉を切り替えるモータである。
【0029】
駆動系循環部25は、バルブモータ25Bの切り替えにより圧縮機25Aと冷却部21との間で圧縮ガスを循環させることによって、冷却部21を起動させ、第1コールドステージ21Dおよび第2コールドステージ21Eで冷熱を発生させる。
【0030】
温度センサ26は、保温部23の内部に収容された冷却部21の温度を計測するセンサである。
【0031】
このように構成された冷凍機11では、その駆動時に、保温部23の内部に収容された冷却部21にヘリウムガスが供給される。冷却部21に供給されたヘリウムガスは、第1コールドステージ21Dおよび第2コールドステージ21Eで発生する冷熱により冷却されることにより、凝縮して液体ヘリウムとなり、受部22の底22Aに至り滴下して纏められる。受部22の底22Aに纏められた液体ヘリウムは、移送管24を経由して、脳機能測定装置101のデュワ1の内部のヘリウム槽に供給される。これによって、脳機能測定装置101のデュワ1の液体ヘリウムが保持される。そして、デュワ1の内部の液体ヘリウムは外部からの熱侵入によって徐々に蒸発してヘリウムガスとなる。
【0032】
ガス回収部13は、デュワ1で蒸発したヘリウムガスを回収し、蓄えて保管するための圧力容器である。
【0033】
ガス回収管14は、デュワ1とガス回収部13との間を接続する配管である。ガス回収管14は、第1ガス回収管14Aと、第2ガス回収管14Bと、を有する。
【0034】
第1ガス回収管14Aは、一端14Aaがデュワ1に接続され、他端14Abがガス回収部13に接続されている。また、第1ガス回収管14Aには、デュワ1からガス回収部13に蒸発ガスを送るために、コンプレッサである圧縮機14Acが設けられている。また、第1ガス回収管14Aには、ヘリウムガスの流通経路を開閉するために、圧縮機14Acよりも一端14Aa側に、流量調整弁である第1開閉弁14Adが設けられている。圧縮機14Acおよび第1開閉弁14Adは、制御部19により制御される。
【0035】
第2ガス回収管14Bは、第1ガス回収管14Aの途中と、冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。第2ガス回収管14Bは、一端14Baが第1ガス回収管14Aの一端14Aaと第1開閉弁14Adとの間に接続され、他端14Bbが保温部23に接続されている。本実施形態では、第2ガス回収管14Bは、他端14Bbがガス供給管15の一部を介して保温部23に接続されている。第2ガス回収管14Bは、ヘリウムガスの流通経路を開閉するため、流量調整弁である第2開閉弁14Bcが設けられている。第2開閉弁14Bcは、制御部19により制御される。また、第2ガス回収管14Bは、第2開閉弁14Bcよりも他端14Bb側に排気弁14Bdが設けられている。排気弁14Bdは、制御部19により制御される。排気弁14Bdは、第2ガス回収管14Bおよびガス供給管15の一部を介して、保温部23に接続されている。
【0036】
ガス供給管15は、ガス回収部13と、冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。ガス供給管15は、一端15aがガス回収部13に接続され、他端15bが冷凍機11の保温部23に接続されている。ガス供給管15には、ガス回収部13から冷却部21にガス回収部13で保管されたヘリウムガスを送るため、ポンプ15cが設けられている。また、ガス供給管15には、ポンプ15cよりも他端15b側に、ヘリウムガスの流通経路を開閉するための流量調整弁である開閉弁15dが設けられている。また、ガス供給管15には、ポンプ15cよりも一端15a側に、ヘリウムガスの流通経路を開閉するための流量調整弁である開閉弁15eが設けられている。ポンプ15c、開閉弁15dおよび開閉弁15eは、制御部19により制御される。
【0037】
循環用配管16は、ガス回収管14の途中と、ガス供給管15の途中とを接続する配管である。循環用配管16は、一端16aがガス回収管14の第1開閉弁14Adと第2開閉弁14Bcとの間に接続され、他端16bがガス供給管15の開閉弁15eとポンプ15cとの間に接続されている。循環用配管16は、デュワ1から冷却部21に直接ヘリウムガスを送るバイパス経路として機能する。
【0038】
制御部19は、ヘリウム再凝縮システム10全体を制御し、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置等を備えた演算装置である。制御部19は、冷凍機11の圧縮機25Aと、ガス回収管14の圧縮機14Ac、第1開閉弁14Ad、第2開閉弁14Bcおよび排気弁14Bd、ならびに、ガス供給管15のポンプ15c、開閉弁15dおよび開閉弁15eの動作を制御する。また、制御部19は、冷凍機11の温度センサ26により計測された温度を取得する。ガス回収管14の第1開閉弁14Adおよび第2開閉弁14Bcは、制御部19の制御によって開度が調整され、ガス回収管14におけるヘリウムガスの流量を調整する。
【0039】
以上のようなヘリウム再凝縮システム10においては、生体磁気計測システム100で計測を行っていない夜間等においてガス回収部13で回収されたヘリウムガスをガス供給管15を経由して冷凍機11へ送り、冷凍機11でヘリウムガスを冷却して再凝縮させ、再凝縮した液体ヘリウムをデュワ1へ戻す。また、生体磁気計測システム100で計測を行っている場合には、冷凍機11をオフ状態にし、圧縮機14Acを駆動させることによって、デュワ1で蒸発したヘリウムガスを、ガス回収管14を介してガス回収部13に回収し、蓄えて保管する。ここで、圧縮機14Acの駆動により発生するノイズが与える生体磁気計測システム100での計測に対する影響が問題となる。以下、本実施形態における圧縮機14Acの駆動により発生するノイズを低減することができる構成および動作について詳述する。
【0040】
(多段に構成された圧縮機の概略構成)
図3は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの多段に構成された圧縮機の概略構成の一例を示す図である。
図3を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の多段に構成された圧縮機14Acの概略構成について説明する。
【0041】
圧縮機14Acは、上述のように、デュワ1からガス回収部13に蒸発ガスを送るためのコンプレッサであり、電磁的にピストンがシリンダ内を往復するレシプロ式のリニアコンプレッサである。
【0042】
圧縮機14Acに要求されるヘリウムガスの流量は、デュワ1の蒸発量を賄いきれる以上、すなわちデュワ1の液体ヘリウムの蒸発量と同等以上の流量である。圧縮機14Acに要求される昇圧可能な圧力を、ガスバックと比較したときの優位性等の点から、例えば常圧の10倍の約1[MPa]とすれば、ガス回収部13の体積はガスバックと比較して1/10で済むことになる。上述の流量および吐出圧力を備える圧縮機を簡便に得る方法として、
図3のように、圧縮機14Acを複数の圧縮機で構成する方法がある。すなわち、圧縮機14Acは、例えば、直列に接続された圧縮機14Ac1~14Ac4を有する。上述の流量の要求を満たす4つの圧縮機14Ac1~14Ac4を直列に接続することにより圧縮機14Acを構成することにより、その段数により昇圧可能な圧力を設計することができ、大規模な圧縮機を用意することなく、簡便で効率的な圧縮機を構成することができる。なお、圧縮機14Acは、本発明の「ガス圧縮装置」の一例である。
【0043】
なお、流量の要求を満たす圧縮機ではなく、吐出圧力の要件を満たす圧縮機を複数個並列に接続することにより、圧縮機14Acを構成するものとしてもよい。また、圧縮機14Ac1~14Ac4は、必ずしも同一型式の圧縮機である必要はないが、制御性およびメンテナンス性を考慮すると、同一型式の圧縮機であることが望ましい。
【0044】
また、圧縮機14Ac1~14Ac4は、故障時またはメンテナンス時に備えて、それぞれを個別にバイパスできるようなバイパスライン14Af1~14Af4が備えられているものとしてもよい。この場合、バイパスライン14Af1~14Af4には、ヘリウムガスの流通を開閉するための流量調整弁14Ae1~14Ae4がそれぞれ設けられている。
【0045】
なお、
図3に示す圧縮機14Acの例では、圧縮機14Ac1~14Ac4の4つの圧縮機で構成されているが、他の台数の圧縮機で構成されていてもよい。また、圧縮機14Ac1~14Ac4の全体を示して「圧縮機14Ac」と称する場合もあり、圧縮機14Ac1~14Ac4のうち任意の圧縮機を示す場合も「圧縮機14Ac」と称する場合があるものとする。
【0046】
(圧縮機の内部構成の概略)
図4は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの圧縮機の内部構成の概略の一例を示す図である。
図4を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の圧縮機14Acを構成する圧縮機14Ac1~14Ac4の内部構成の概略について説明する。なお、
図4では圧縮機14Ac1~14Ac4の任意の圧縮機を「圧縮機14Ac」と称して説明する。
【0047】
圧縮機14Acは、交流電源である商用電源50から電源の供給を受け、ヘリウムガスの圧縮動作を行う。ガス回収部13に蓄えられたヘリウムガスは、生体磁気計測システム100で計測を行わない時間帯(例えば17時から翌日の9時までの間等)に冷却部21へ送られ、再凝縮してデュワ1へと戻される。この時間帯に、計測時にガス回収部13に蓄えられたヘリウムガスをすべて液体ヘリウムへと再凝縮するために必要な冷却能力を冷却部21は有している。しかし、ヘリウムガスの循環経路内にヘリウムガス以外の空気または水分等の不純物が存在する場合、それらは冷却部21に付着して、冷却部21の熱交換効率を悪化させ、冷却能力を低下させるため、極力不純物の混入を低減させる必要がある。そこで、ヘリウム再凝縮システム10においてヘリウムガスを昇圧させるための圧縮機14Acとしては、例えばオイルフリーのコンプレッサを用いる。オイルフリーのコンプレッサは、潤滑剤がないため、その堅牢性および気密性を保つために潤滑性のあるテフロン(登録商標)等をピストンに使った単純な構造を有する。以下、圧縮機14Acの内部構成の概略を説明する。
【0048】
圧縮機14Acは、
図4に示すように、ダイオード31と、コイル32と、ばね33と、ピストン34と、を備えている。電気的な構成としては、商用電源50、ダイオード31、コイル32、そして商用電源50の順で、電気的に接続されている。
【0049】
ダイオード31は、商用電源50から供給される交流電流のうち、正・負どちらかの方向にのみ流れるように整流することによって、半波整流回路を構成する整流素子である。
【0050】
コイル32は、ダイオード31により半波整流され、ダイオード31に電流が流れるときに電流が流れ、巻き数に応じた内部を貫く磁束を発生させる電気部品である。コイル32により発生した磁束により磁界が生じ、当該磁界によって磁性体を含むピストン34が引き寄せられる。
【0051】
ばね33は、一端が圧縮機14Acのシリンダ内に固定され、他端がピストン34の一端に接続され、コイル32に発生した磁界によりばね33側に引き寄せられたピストン34を、コイル32に磁界が発生していないときに応力によって押し戻す弾性体である。
【0052】
ピストン34は、一端がばね33に接続され、コイル32に発生した磁界によりばね33側に引き寄せられる力(磁界によりピストン34に及ぼす力)と、収縮したばね33により発生する応力とによって、コイル32の軸に沿って往復運動を行う、磁性体を含む可動部である。具体的には、コイル32に電流が流れた場合(コイル32が励磁している場合)には、ピストン34はコイル32により発生した磁界によってばね33側に引き寄せられ、コイル32に電流が流れていない場合(コイル32が励磁していない場合)には、ピストン34は収縮したばね33により発生する応力によってばね33側とは反対方向に押し戻されることを繰り返すことにより、コイル32の軸に沿って往復運動を行う。この場合、ばね33の応力により押し戻されることにより、ピストン34のばね33が接続された側とは反対側の面でヘリウムガスを圧縮し、圧縮したヘリウムガスを外部へ吐出することができる。
【0053】
(本実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの圧縮機の配置構成および効果)
図5は、ヘリウム再凝縮システムで用いられる多段の圧縮機の動作によるノイズについて説明する図である。
図5を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の圧縮機14Ac1~14Ac4の配置および効果について説明する。
【0054】
図4で上述した圧縮機14Acのダイオード31、コイル32、ばね33およびピストン34は、
図5に示すように、圧縮機14Ac1~14Ac4におけるそれぞれダイオード31-1~31-4、コイル32-1~32-4、ばね33-1~33-4およびピストン34-1~34-4に対応する。したがって、ダイオード31-1~31-4、コイル32-1~32-4、ばね33-1~33-4およびピストン34-1~34-4について、任意のものを示す場合、または総称する場合、それぞれ単に「ダイオード31」、「コイル32」、「ばね33」および「ピストン34」と称するものとする。
図5に示すように、本実施形態において、圧縮機14Ac1~14Ac4のうち、圧縮機14Ac1および圧縮機14Ac2は、商用電源50から入力される交流電圧の極性が一致している状態で、物理的に向きを反転して(点対称にして)ピストン34-1およびピストン34-2の運動方向が反平行となるように配置されている。また、圧縮機14Ac3および圧縮機14Ac4も、商用電源50から入力される交流電圧の極性が一致している状態で、物理的に向きを反転して(点対称にして)ピストン34-3およびピストン34-4の運動方向が反平行となるように配置されている。ここで、物理的に向きを反転するとは、各圧縮機14Acを構成する各部品の配置関係が点対称の関係となるように配置することを示す。
【0055】
これによって、圧縮機14Ac1および圧縮機14Ac2の組、および圧縮機14Ac3および圧縮機14Ac4の組それぞれの全体として、ピストン34の運動方向については反平行となるため、ピストン34の往復運動の振動が抑制され、かつ、ピストン34の往復運動による変動磁場が抑制される。また、商用電源50から入力される交流電圧の極性が一致し、かつ物理的に向きが反転した(点対称とした)圧縮機14Acの組の各コイル32が発生させる磁場の変動が同位相で、かつ磁場の方向も反平行となるため、双極子のように生体磁気計測システム100からの距離に応じて磁場ノイズが急峻に減衰する。なお、これらは半波整流を利用する圧縮機でも、半波整流を利用しない圧縮機でも成り立つ。
【0056】
なお、
図5に示す例では、ヘリウム再凝縮システム10が圧縮機14Acを4つ(圧縮機14Ac1~14Ac4)備え、すべての圧縮機14Acそれぞれに対して、物理的に向きを反転して(点対称にして)ピストン34の運動方向が反平行となるように配置される圧縮機14Acが存在する構成を示したが、これに限定されない。すなわち、複数の圧縮機14Acのうち、商用電源50から入力される交流電圧の極性が一致している状態で、物理的に向きを反転して(点対称にして)ピストン34の運動方向が反平行となるように配置された組が少なくとも1組以上あるものとしてもよい。これよって、上述のピストン34の運動方向については反平行となるため、ピストン34の往復運動の振動が抑制され、かつ、ピストン34の往復運動による変動磁場が抑制されるという効果を奏する。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の圧縮機14Acでは、ガスを圧縮する複数の圧縮機(例えば圧縮機14Ac1~14Ac4)を含み、複数の圧縮機は、少なくともガスを圧縮するためのピストン34の運動方向が反平行となる圧縮機の組を含むものとしている。具体的には、当該組に対応する圧縮機は、商用電源50から供給される入力電圧の極性が一致し、かつ物理的に互いに点対称の配置としている。これによって、ピストン34の運動方向については反平行となるため、ピストン34の往復運動の振動が抑制され、かつ、ピストン34の往復運動による変動磁場が抑制されため、生体磁気計測システム100等に対してノイズの影響を低減することができる。例えば、病院内等の配置の制限がある環境であっても、生体磁気計測システム100に対するノイズの影響を低減したヘリウム再凝縮システム10を実現できるため、当該環境でも対応することができる。
【0058】
なお、
図6に示すように、圧縮機14Ac1および14Ac2に対して、それぞれを囲う磁気シールド14Ag1および14Ag2を施してもよい。これによって、より効果的に磁場ノイズを抑制することができる。また、これにより、生体磁気計測システム100に対するヘリウム再凝縮システム10の設置の制限をなくし、ヘリウム再凝縮システム10を導入することができる。また、圧縮機14Ac3および14Ac4に対しても、それぞれを囲う磁気シールドを施してもよいのは言うまでもない。また、圧縮機14Ac1~14Ac4それぞれ別個に磁気シールドを施すことに限定されるものではなく、例えば、圧縮機14Ac1~14Ac4で構成される多段の圧縮機14Ac全体に対して磁気シールドを施すものとしてもよい。
【0059】
(変形例)
変形例に係るヘリウム再凝縮システム10について、上述の実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10と相違する点を中心に説明する。なお、本変形例に係る生体磁気計測システム100およびヘリウム再凝縮システム10の構成は、上述の実施形態で説明した構成と同様である。
【0060】
図7は、変形例に係るヘリウム再凝縮システムの複数の圧縮機の配置および電気回路の一例を示す図である。
図7を参照しながら、本変形例に係るヘリウム再凝縮システム10についてノイズを低減することができることについて説明する。
【0061】
図7に示すように、本変形例において、圧縮機14Ac1~14Ac4のうち、圧縮機14Ac1および圧縮機14Ac2は、商用電源50から入力される交流電圧の極性が一致している状態で、物理的に向きを反転して(点対称にして)ピストン34-1およびピストン34-2の運動方向が反平行となるように配置されている。また、圧縮機14Ac3および圧縮機14Ac4も、商用電源50から入力される交流電圧の極性が一致している状態で、物理的に向きを反転して(点対称にして)ピストン34-3およびピストン34-4の運動方向が反平行となるように配置されている。さらに、圧縮機14Ac1および圧縮機14Ac2それぞれのピストン34-1およびピストン34-2の運動方向と、圧縮機14Ac3および圧縮機14Ac4それぞれのピストン34-3およびピストン34-4の運動方向とが、互いに直交するように配置されている。
【0062】
これによって、特に回転を伴うロータリーポンプまたはスクロールポンプ等の圧縮機について配置の方向を
図7に示すように多軸化することが振動の抑制に有効であるほか、コイル32-1~32-4から生じる磁場についても双極子から四重極子のような高次にすることにより、より急峻に磁場を減衰させることができる。
【0063】
なお、
図7に示す圧縮機14Ac1~14Ac4に対して、上述の
図6に示したような磁気シールドを施してもよい。これによって、より効果的に磁場ノイズを抑制することができる。
【0064】
本発明の態様は、以下の通りである。
<1>ガスを圧縮する複数の圧縮機を含むガス圧縮装置であって、
前記複数の圧縮機は、少なくともガスを圧縮するための可動部の運動方向が反平行となる圧縮機の組を含むガス圧縮装置である。
<2>前記組に対応する圧縮機は、交流電源から供給される入力電圧の極性が一致し、かつ物理的に互いに点対称の配置とした前記<1>に記載のガス圧縮装置である。
<3>前記複数の圧縮機は、それぞれ
前記可動部としてのピストンと、
前記入力電圧によって磁界を形成することにより前記ピストンに力を及ぼすコイルと、
前記ピストンの軸方向の一端に接続された弾性体と、
前記入力電圧に対して半波整流を行う整流素子と、
を備え、
前記ピストンは、前記磁界から受ける力と、前記弾性体から受ける応力とによって往復運動を行う前記<2>に記載のガス圧縮装置である。
<4>前記複数の圧縮機は、直列に接続された前記<1>~<3>のいずれか一項に記載のガス圧縮装置である。
<5>前記複数の圧縮機は、レシプロ式の圧縮機である前記<1>~<4>のいずれか一項に記載のガス圧縮装置である。
<6>前記複数の圧縮機は、磁気シールドで囲まれた前記<1>~<5>のいずれか一項に記載のガス圧縮装置である。
<7>前記ガスは、ヘリウムガスである前記<1>~<6>のいずれか一項に記載のガス圧縮装置である。
<8>前記<1>~<7>のいずれか一項に記載のガス圧縮装置と、
前記ガス圧縮装置により圧縮された前記ガスを回収して保管するガス回収部と、
を有するガス回収システムである。
【符号の説明】
【0065】
1 デュワ
2 磁気センサ
10 ヘリウム再凝縮システム
11 冷凍機
13 ガス回収部
14 ガス回収管
14A 第1ガス回収管
14Aa 一端
14Ab 他端
14Ac 圧縮機
14Ac1~14Ac4 圧縮機
14Ad 第1開閉弁
14Ae1~14Ae4 流量調整弁
14Af1~14Af4 バイパスライン
14Ag1、14Ag2 磁気シールド
14B 第2ガス回収管
14Ba 一端
14Bb 他端
14Bc 第2開閉弁
14Bd 排気弁
15 ガス供給管
15a 一端
15b 他端
15c ポンプ
15d 開閉弁
15e 開閉弁
16 循環用配管
16a 一端
16b 他端
19 制御部
21 冷却部
21A 本体部
21B 第1シリンダ部
21C 第2シリンダ部
21D 第1コールドステージ
21E 第2コールドステージ
22 受部
22A 底
23 保温部
23A 底
24 移送管
24a 上端
24b 下端
25 駆動系循環部
25A 圧縮機
25B バルブモータ
26 温度センサ
31、31-1~31-4 ダイオード
32、32-1~32-4 コイル
33、33-1~33-4 ばね
34、34-1~34-4 ピストン
50 商用電源
100 生体磁気計測システム
101 脳機能測定装置
102 情報処理装置
110 被検者
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2002-339863号公報
【特許文献2】特開2021-080966号公報