(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135291
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポリ(ヒドロキシアルカン酸)及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20240927BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20240927BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240927BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G81/00
C08G18/42 083
C08L67/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045910
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 翔
(72)【発明者】
【氏名】土肥 知樹
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 英知
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎二
(72)【発明者】
【氏名】田村 正則
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J031
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CF181
4J002FD010
4J002FD060
4J002GG00
4J029AA01
4J029AA02
4J029AB01
4J029AB02
4J029AB04
4J029AB05
4J029AB07
4J029AC01
4J029AD01
4J029AD10
4J029AE03
4J029EA05
4J029JC361
4J029JC451
4J029KH05
4J031AA49
4J031AB04
4J031AC07
4J031AD01
4J031AF11
4J034BA03
4J034DA01
4J034DA05
4J034DB04
4J034DB08
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA06
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、不飽和基(分解物)を僅かしか含まず、末端基がヒドロキシ基やカルボキシル基などの反応性基であるため、更なる化学変性を行うことができ、用途を広げることができるポリ(ヒドロキシアルカン酸)及びその製造方法を提供することができる。及びその製造方法を提供することができる。
【解決手段】本発明のポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸単位で構成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含む。前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の末端基は、ヒドロキシ基及びカルボキシル基であり、前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、前記不飽和結合を有する単位をポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位に対して0.2モル%以下の割合で含む。前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の数平均分子量が1,000~20,000であり、前記ヒドロキシアルカン酸のアイソタクシチーが98.0~100%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸単位で構成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)であって、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の末端基は、ヒドロキシ基及びカルボキシル基であり、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、不飽和結合を有する単位をポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位に対して0.2モル%以下の割合で含み、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の数平均分子量が1,000~20,000であり、
前記ヒドロキシアルカン酸のアイソタクシチーが98.0~100%であることを特徴とするポリ(ヒドロキシアルカン酸)。
【請求項2】
前記不飽和結合を有する単位が、不飽和結合を有するカルボン酸単位である、請求項1に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)。
【請求項3】
前記ヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシ酪酸であり、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)である、請求項1に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を製造する方法であって、
ホスフィンおよびスルホン酸からなる触媒を用いて、少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸をエステル化反応させる工程を含むことを特徴とする、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法。
【請求項5】
更に、アセトンを用いる洗浄工程を含む、請求項4に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いてなるアミド化物。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いてなるポリウレタン。
【請求項8】
請求項1~3の何れか1項に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含む、樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂組成物の樹脂硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂硬化物からなる、シート又はフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの大量廃棄による地球環境悪化の社会課題に対し、あらゆる状況下(海水、淡水、土壌、コンポスト)で生分解性を有する樹脂を材料とした、サステナブルな製品群(包装材料、フィルム)の需要が高まっている。
上述する全ての環境下で生分解性を示す樹脂として、細菌によって産生されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が挙げられる。しかしながらPHAの構造制御には、細菌の遺伝子操作が必要であり、所望の物性に対応した樹脂開発には多大な時間と労力を要する。
PHAを対応するモノマーから化学重合によってポリマーを合成する場合、樹脂構造の自由度は高くなるものの、モノマーが熱分解を受けやすく重合停止を起こす課題がある。
また、重合停止を起こしたPHAは、反応性官能基を失っているため、更なる化学変性が行えず用途が限定される。そのため、分解物の量を抑制したPHA系合成樹脂が必要である。
【0003】
特許文献1には、3-ヒドロキシ酪酸の環状2量体を開環重合して得られる高アイソタクチックのポリ(3-ヒドロキシ酪酸)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、得られたポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の不飽和基量及び末端構造に関する指定がない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、不飽和基(分解物)を僅かしか含まず、末端基がヒドロキシ基やカルボキシル基などの反応性基であるため、更なる化学変性を行うことができ、用途を広げることができるポリ(ヒドロキシアルカン酸)及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の内容は、以下の実施態様[1]~[10]を含む。
[1] 少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸単位で構成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)であって、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の末端基は、ヒドロキシ基及びカルボキシル基であり、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、不飽和結合を有する単位をポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位に対して0.2モル%以下の割合で含み、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の数平均分子量が1,000~20,000であり、
前記ヒドロキシアルカン酸のアイソタクシチーが98.0~100%であることを特徴とするポリ(ヒドロキシアルカン酸)。
[2] 前記不飽和結合を有する単位が、不飽和結合を有するカルボン酸単位である、[1]に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)。
[3] 前記ヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシ酪酸であり、
前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)である、[1]又は[2]に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)。
[4] [1]~[3]の何れかに記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を製造する方法であって、
ホスフィンおよびスルホン酸からなる触媒を用いて、少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸をエステル化反応させる工程を含むことを特徴とする、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法。
[5] 更に、アセトンを用いる洗浄工程を含む、[4]に記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法。
[6][1]~[3]の何れかに記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いてなるアミド化物。
[7] [1]~[3]の何れかに記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いてなるポリウレタン。
[8] [1]~[3]の何れかに記載のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含む、樹脂組成物。
[9] [8]に記載の樹脂組成物の樹脂硬化物。
[10] [9]に記載の樹脂硬化物からなる、シート又はフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不飽和基(分解物)を僅かしか含まず、末端基がヒドロキシ基やカルボキシル基などの反応性基であるため、更なる化学変性を行うことができ、用途を広げることができるポリ(ヒドロキシアルカン酸)及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
「~」は「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。
【0011】
(ポリ(ヒドロキシアルカン酸))
本発明の一実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)(本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸))は、少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸単位で構成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)である。前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の末端基がヒドロキシ基とカルボキシル基である。前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、不飽和結合を有する単位をポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位に対して0.2モル%以下の割合で含む。前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の数平均分子量が1,000~20,000である。また、前記ヒドロキシアルカン酸のアイソタクシチーが98.0~100%である。
【0012】
「ヒドロキシアルカン酸単位」(あるいは、「ヒドロキシアルカン酸由来の構成単位」)とは、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)中におけるヒドロキシアルカン酸の1残基を意味し、具体的にはヒドロキシアルカン酸のヒドロキシ基中の水素原子とカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造を意味する。本実施形態にかかるヒドロキシアルカン酸は、3-ヒドロキシ酪酸であることが好ましい。
「不飽和結合を有する単位」(あるいは、「不飽和結合を有する化合物由来の構成単位」)とは、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)中におけるヒドロキシアルカン酸単位以外の構成単位であって、不飽和結合を有する化合物の1残基を意味し、例えば、不飽和結合を有する化合物が不飽和結合を有するカルボン酸である場合、不飽和結合を有する単位は、この不飽和結合を有するカルボン酸のカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造を意味する。本実施形態にかかる不飽和結合を有する単位が、クロトン酸などの不飽和結合を有するカルボン酸単位であってもよい。
【0013】
「ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位」とは、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を構成する全てのモノマー由来の構成単位のモル数の総和を意味する。また、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、ヒドロキシアルカン酸単位と不飽和結合を有する単位とを含む場合、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位が、ヒドロキシアルカン酸単位と不飽和結合を有する単位との総和である。ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、不飽和結合を有する単位をポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位に対して0.2モル%以下の割合で含み、0.18モル%以下の割合で含むことが好ましく、0.15モル%以下の割合で含むことがより好ましく、0.1モル%以下の割合で含むことが更に好ましい。また、0.0001モル%以上の割合で含んでも良く、0.001モル%以上の割合で含んでも良く、0.01モル%の割合で含んでも良い。不飽和結合を有する単位を0.2モル%以下の割合で含むと、更なる化学変性を行う際に実質無視することができ、用途を広げることができる。
本実施形態において、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、不飽和結合を有する単位を実質的に含まなくてもよい。本発明において、「不飽和結合を有する単位を実質的に含まない」とは、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)が、不飽和結合を有する単位をポリ(ヒドロキシアルカン酸)の全構成単位に対して0.01モル%未満、若しくは0.001モル%未満、あるいは0.001モル%未満の割合で含んでも良い趣旨である。
【0014】
本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)とは、ヒドロキシアルカン酸単位が連続してエステル結合したポリ(ヒドロキシアルカン酸)であり、具体的にはヒドロキシアルカン酸のヒドロキシ基中の水素原子とカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造が、連続してエステル結合したポリ(ヒドロキシアルカン酸)である。前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の末端基がヒドロキシ基とカルボキシル基である。
【0015】
[ヒドロキシアルカン酸]
本実施形態に係るヒドロキシアルカン酸(HA)としては、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン酸(2-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸(2-ヒドロキシ吉草酸)、3-ヒドロキシペンタン酸、5-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル-ペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、9-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのC1-6アルキル基を有していてもよいヒドロキシC2-15アルカン酸、12-ヒドキシステアリン酸、リシノール酸などが挙げられる。
【0016】
なお、ヒドロキシアルカン酸(HA)としては、対応するラクトンであってもよい。ラクトンとしては、例えば、β-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、β-ジメチルプロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ジメチルブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどのジC1-12アルキル基を有していてもよいC3-15ラクトンなどが挙げられる。
【0017】
これらのヒドロキシアルカン酸及びラクトンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシアルカン酸のうち、生分解性の点から、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロパン酸、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸などのヒドロキシC3-10アルカン酸(3-ヒドロキシ酪酸以外のヒドロキシC3-10アルカン酸単位)又は対応するラクトンが好ましい。
【0018】
本実施形態に係るヒドロキシアルカン酸(HA)が3-ヒドロキシ酪酸(3HB)であることが好ましい。
本発明の3-ヒドロキシ酪酸は、ラセミ体、(R)体、(S)体のいずれをも用いることができる。高い生分解性、機械物性及び融点の発現を兼備できるため、(R)体を用いることが特に好ましい。
【0019】
特に制限されないが、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の好適な一例としては、例えば下記式(1)、式(2)等が挙げられる。
【0020】
【化1】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。oは、正の整数を表す。)
【0021】
上記式(1)において、o個のヒドロキシアルカン酸単位のRが同じでも異なっても良い。各ヒドロキシアルカン酸単位のRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表してもよい。Rは水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0022】
【化2】
(式(2)中、R
1、R
2は異なり、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0023】
上記式(2)において、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1~3の水素原子またはアルキル基を表すことがより好ましい。R1、R2のうち、1つがメチル基であることが更に好ましい。
【0024】
[不飽和結合を有する化合物]
本実施形態に係る不飽和結合を有する化合物として、上記ヒドロキシアルカン酸と反応して、前記ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の一単位になる化合物であれば、特に限定されない。不飽和結合を有する単位化合物としては、例えば、不飽和結合を有するカルボン酸、不飽和結合を有するアルコール等が挙げられる。
不飽和結合を有するカルボン酸としては、例えば、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、エイコサジエン酸、ミード酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸が挙げられる。
不飽和結合を有するアルコールとしては、例えば、アリルアルコール、クロチルアルコール(2-ブテン-1-オール)、シンナミルアルコール(3-フェニル-2-プロペン―1-オール)、メタリルアルコール(2-メチル-2-プロペン-1-オール)、3-ブテン-2-オール、2-シクロヘキセン-1-オール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オールが挙げられる。
【0025】
[ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の構造と物性]
「アイソタクシチー」
本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、アイソタクシティー(立体規則性)の高いものが好ましい。アイソタクシチーは好ましくは98%以上であり、より好ましくは99%以上である。アイソタクシチーが98%であると、高い結晶性を示し高い融点や力学特性といった機能が発現する。
アイソタクシチーは、後述の実施例で記載する方法で評価することができる。
【0026】
「数平均分子量」
本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の数平均分子量(Mn)が、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることが更に好ましい。また、20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましく、10,000以下であることが更に好ましい。
1,000以上である場合、連続したヒドロキシアルカン酸に由来する結晶性によって高い融点や力学特性といった機能が発現する。20,000以下である場合、適度な溶解性を示し、更なる化学変性を行うことが容易となる。
【0027】
(ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法)
本発明の一実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法(本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の製造方法、または、本実施形態の製造方法をいうことがある。)は、特に限定されなく、例えば、少なくとも1種のヒドロキシアルカン酸から、ホスフィンおよびスルホン酸からなる触媒を用いて、脱水エステル化反応をさせる方法が挙げられる。
【0028】
[ヒドロキシアルカン酸]
本実施形態の製造方法に用いるヒドロキシアルカン酸は、前述の本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)に関して説明した[ヒドロキシアルカン酸]において、説明したものと同じであり、その好ましい例も同じである。
【0029】
[ホスフィン]
本実施形態の製造方法に用いるホスフィンは、トリフェニルホスフィン、ポリマー担持トリフェニルホスフィン(PB-PPh3)、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のトリアルキルホスフィン等のホスフィンが挙げられる。本実施形態の製造方法に用いるホスフィンは、安全性と取扱い易さの観点から、トリアリールホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィンまたはポリマー担持トリフェニルホスフィン(PB-PPh3)がより好ましい。
ホスフィンの使用量は、ヒドロキシアルカン酸100モルに対して、0.001モル以上であることが好ましく、0.05モル以上であることがより好ましく、0.01モル以上であることがさらに好ましく、また、10モル以下であることが好ましく、6モル以下であることがより好ましく、5.5モル以下であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の製造方法において、上記ホスフィンの添加方法は特に限定がなく、一括で添加してもよく、数回で添加してもよい。また、ヒドロキシアルカン酸及び後述のスルホン酸との添加順についても特に限定がなく、他の原料と先に混合してから混合物を反応させてもよく、他の原料を先に反応させて反応中若しくは反応後の混合物に上記ホスフィンを添加してもよい。
反応を制御しやすいなどの観点から、先にヒドロキシアルカン酸及び後述のスルホン酸と混合してから、この混合物を反応させる方法が好ましい。
【0031】
[スルホン酸]
本実施形態の製造方法に用いるスルホン酸としては、例えば、有機スルホン酸系化合物が挙げられる。有機スルホン酸系化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタリン-α-スルホン酸、ナフタリン-β-スルホン酸等の芳香族スルホン酸が挙げられる。中でも、有機溶媒への溶解性とポリ(ヒドロキシアルカン酸)との親和性の観点から、芳香族スルホン酸が好ましく、p-トルエンスルホン酸がより好ましい。
本実施形態の製造方法において、上記スルホン酸の添加方法は特に限定がなく、一括で添加してもよく、数回で添加してもよい。
【0032】
スルホン酸に使用量は、ヒドロキシアルカン酸100モルに対して、0.001モル以上であることが好ましく、0.05モル以上であることがより好ましく、0.01モル以上であることがさらに好ましく、また、10モル以下であることが好ましく、6モル以下であることがより好ましく、5.5モル以下であることがさらに好ましい。
【0033】
[その他の触媒]
本実施形態の製造方法において、その他の触媒と併用してもよい。その他の触媒としては、例えば、金属触媒、塩基触媒、酸触媒(スルホン酸を除く)などが挙げられる。
前記金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物などが挙げられる。
前記塩基触媒としては、例えば、第三級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)など)が挙げられる。
前記酸触媒としては、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩化水素(又は塩酸)、硝酸、リン酸など)、有機酸などが挙げられる。
【0034】
[反応条件]
本実施形態の製造方法において、上記エステル化反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンメシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1-4アルキルセロソルブアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本実施形態の製造方法において、例えば、ハロゲン化炭化水素類を用いることが好ましく、1,2-ジクロロエタン(DCE)等のジクロロエタンを用いることがより好ましい。
【0035】
反応雰囲気は、大気であってもよく、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行ってもよく、合成反応圧力は、常圧下又は減圧下で行ってもよい。またエステル化反応で生成する水などを反応系外に留出しつつ、行うことで反応が進行しやすくなる。
本実施形態の製造方法において、例えば、窒素雰囲気中で行うことが好ましい。
【0036】
合成反応温度と反応時間は、使用する原料の種類などによって適宜に選択することができる。例えば、80~100℃の温度で、10~50時間反応してもよい。
【0037】
[精製工程]
本実施形態の製造方法は、更に、精製工程を含むことが好ましい。
上記精製工程としては、アセトンなどの有機溶剤を用いて、上記方法で合成したポリ(ヒドロキシアルカン酸)の粗生成物を洗浄・遠心分離する工程などが挙げられる。洗浄・遠心分離する工程は、1~5回で回繰り返してもよい。
【0038】
(ポリアミド)
本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の応用例として、例えば、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いて得られる、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)由来のポリアミド(「本実施形態に係るポリアミド」ということがある。)が挙げられる。
本実施形態に係るポリアミドは、例えば、以下の方法で合成することができる。
第一工程:本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いて、ヒドロキシ末端へアジピン酸を導入して末端アジピン酸型ポリ(ヒドロキシアルカン酸)を得る工程;
第二工程:前記末端アジピン酸型ポリ(ヒドロキシアルカン酸)と両末端アミン型ポリブチレンサクシネート(PBS)などのジアミンとを反応させてポリアミドを形成する工程。
【0039】
(ポリウレタン)
本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の応用例として、例えば、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いて得られる、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)由来のポリウレタン(「本実施形態に係るポリウレタン」ということがある。)が挙げられる。
本実施形態に係るポリウレタンは、例えば、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)とポリイソシアネートを反応させて得られる。必要に応じて、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)以外のポリオールや鎖伸長剤、鎖停止剤、架橋剤を併用してもよい。前記ポリウレタンを得るための本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、ポリエステルポリオールであることが好ましい。
具体的には、本実施形態に係るポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートを反応することにより得られ、ポリオールとして、少なくとも本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)が用いられる。従って、ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートの反応により得られる反応生成物であり、ポリウレタンは、ポリオール由来の構成単位及びポリイソシアネート由来の構成単位を有し、少なくとも本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)由来の構成単位を有する。
【0040】
鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪族ポリオール化合物が好ましく、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0041】
前記ポリウレタン合成に用いる全ポリオール100質量%中の本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の含有量は、好ましくは10~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
【0042】
ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートがより好ましい。
【0043】
得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することもできる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノヒドロキシ化合物、並びにアミノ基を有するモルホリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
得られるポリウレタンの耐熱性や強度を上げる目的で、必要に応じて3個以上の活性水素基やイソシアネート基を持つ架橋剤を使用することができる。
【0045】
本実施形態に係るポリウレタンは、公知のポリウレタンの製造方法により得ることができる。具体的には、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと前記鎖伸長剤とを仕込み、反応させることによって製造する方法が挙げられる。これらの反応は、例えば、50~100℃の温度で、3~10時間行うことが好ましい。また、反応は、有機溶剤中で行ってもよい。
【0046】
有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;などを用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
本実施形態に係るポリウレタン100質量%中の本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)由来の構成単位の含有量は、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~98質量%である。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、ポリウレタン中の各構成単位の含有量は、NMRにより測定される。
【0048】
本実施形態に係るポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、下限は5,000以上でもよく、6,000以上でもよく、7,000以上でもよく、8,000以上でもよく、10,000以上でもよく、上限は1,000,000以下でもよく、500,000以下でもよく、100,000以下でもよく、500,000以下でもよく、15,000以下でもよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。
ポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、5,000~1,000,000でもよく、6,000~500,000でもよく、7,000~100,000でもよく、8,000~500,000でもよく、10,000~15,000でもよい。
上記範囲であれば、効果がより好適に得られる傾向がある。なお、本明細書において、ポリウレタンの数平均分子量(Mn)はGPCにより測定される値である。
【0049】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物として、前述の本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)、ポリウレタンを含む熱可塑性樹脂組成物、または、熱硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0050】
<熱可塑性樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物が、熱可塑性樹脂組成物である場合、例えば、必要に応じて、更に、他の樹脂、結晶化核剤、熱安定剤、加水分解防止剤、その他の添加剤などを含んでも良い。
【0051】
[結晶化核剤]
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物に用いられる結晶化核剤は、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等のバイオマス資源由来の熱可塑性樹脂に用いられる結晶化核剤であれば、どのようなものでもよい。例えば、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好ましく用いられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いてもよい。
【0052】
[熱安定剤及び加水分解防止剤]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂組成物の熱安定剤として、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤を含み、加水分解防止剤としてカルボジイミド化合物系加水分解防止剤、例えば、ポリカルボジイミド樹脂(商品名:カルボジライト、日清紡ケミカル株式会社製)などを含んでいることが好ましい。添加する熱安定剤及び加水分解防止剤は、上記3種の添加剤のうちから選択される一つでもよいが、上記2種の熱安定剤及び加水分解防止剤は、それぞれ機能が異なっており、それぞれの添加剤がともに加えられたものが好ましい。熱安定剤及び加水分解防止剤の添加量は、種類により異なるが、一般的には、それぞれ熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、0.1質量部から5質量部程度が好ましい。
【0053】
[その他の添加剤]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、更にシリコーン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、有機リン系難燃剤、金属酸化物系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を添加することが好ましい。これにより、難燃性が向上して延焼が抑制できるとともに、生分解性樹脂組成物の流動性が向上するため、より優れた成形性を確保することができる。
【0054】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、充填剤を添加することができる。充填剤としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト、カオリン等を挙げることができる。これらの充填剤が結晶核となることにより、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)の結晶化が促進され、成形体の衝撃強度および耐熱性が向上する。また、成形体の剛性も大きくできる。
【0055】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、可塑剤、相溶化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を適宜配合することもできる。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。相溶化剤は、共重合体Aと共重合体Bの相溶化剤として機能するものであれば特に制限はない。相溶化剤としては、無機充填剤、グリシジル化合物、酸無水物をグラフト若しくは共重合した高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いてもよい。これらの混練により、耐熱性、曲げ強度、衝撃強度、難燃性等も改善されるため、更にノートパソコン、携帯電話等を代表とする電子機器用筐体等の成形体への適用が促進される。
【0056】
また、充填剤として、従来公知の各種フィラーを配合することも出来る。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤なども添加することができる。そのフィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これらは一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
【0057】
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物中、通常1~80重量%であり、好ましくは3~70重量%、より好ましくは5~60重量%である。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物として使用することも出来る。有機系フィラーの添加量は、全組成物中、通常、0.01~70重量%である。
【0058】
組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することも出来る。
【0059】
<熱硬化性樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である場合、例えば、他の樹脂、水酸基、カルボキシル基等の反応性基を有する本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を熱硬化性樹脂主剤として含み、更に、前記反応性基と熱反応しうるイソシアネート硬化剤やポリアミン硬化剤等の硬化剤を含む。
【0060】
本実施形態にかかる硬化剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのイソシアネート基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、及びこのアロファネート化合物;これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート体;これらのポリイソシアネートに由来するビゥレット体;トリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した各種のポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネート等の多官能イソシアネートや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン、ピペラジンあるいは、炭素原子数が2~6のアルキル鎖を有するN-アミノアルキルピペラジン等のポリエチレンポリアミンや、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン、もしくはIPDA)等のアミン化合物が挙げられる。
【0061】
<樹脂組成物の硬化物>
本実施形態の樹脂組成物の硬化物は、前述の熱可塑性樹脂組成物としての樹脂組成物、又は前述の熱硬化性樹脂組成物としての樹脂組成物の硬化物である。
【0062】
本明細書中のポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、弾性繊維、ウレタン原料、自動車部品、スポーツ用品など、広範囲な用途に使用できる。生分解性に優れた本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いるので、前記用途の製品は、優れた生分解性を有する。
【0063】
本明細書中のポリウレタンは、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、防振材、制振材、自動車部品、スポーツ用品、繊維処理剤、バインダーなど、広範囲な用途に使用できる。生分解性に優れた本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いるので前記用途の製品は、優れた生分解性を有する。
【0064】
本明細書中の樹脂組成物は、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、防振材、制振材、自動車部品、スポーツ用品、繊維処理剤、バインダーなど、広範囲な用途に使用できる。生分解性に優れた本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を用いるので、前記用途の製品は、優れた生分解性を有する。
【0065】
(コーティング剤)
コーティング剤は、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
【0066】
コーティング剤は、種々の基材上に適用できる。コーティング剤の用途の一例について説明する。
コーティング剤は、例えば、食品包装容器の基材の表面コートに用いられる。基材としては、例えば、スチレン系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム等のプラスチックフィルム、またはこれらの積層体などが挙げられる。基材としては、例えば、紙、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等が挙げられる。コーティング剤は、生分解性の基材に対して好適に用いられる。生分解性の基材とは、例えば、紙、ポリエステル系のフィルム、ポリオレフィン系のフィルム、デンプン系フィルム等が挙げられる。
コーティング剤は、インキ、または接着剤等として用いることができる。
【0067】
(インキ)
インキは、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)と、着色剤とを含有し、更に必要に応じて、顔料分散剤、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
インキは、例えば、印刷インキである。
インキは、例えば、水性インキであってもよいし、水を含有しないインキ(溶剤系インキ)であってもよい。
【0068】
(接着剤)
接着剤は、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、硬化剤、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
接着剤は、上記の各種基材にラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用接着剤組成物としても使用可能である。
そのような接着剤は、例えば、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)と、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを含有する2液硬化型接着剤や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる1液型接着剤が使用できる。これらの接着剤は溶剤型、無溶剤型、水性型、アルコール型接着剤を必要に応じて使用できる。
【0069】
(シート)
シートは、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含有する樹脂組成物を用いてなる。樹脂組成物は、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
シートとしては、例えば、無延伸シート、二軸延伸シート、発泡シートなどが挙げられる。
シートの用途としては、特に限定されないが、例えば、食品包装用容器、建設材料、家庭電化製品、雑貨など幅広く用いることができる。
【0070】
(フィルム)
フィルムは、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含有する樹脂組成物を用いてなる。樹脂組成物は、本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)の他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
フィルムとしては、例えば、無延伸フィルム、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルムなどが挙げられ、例えば、フィルム原材料のペレットを押出機で溶融後、T-ダイやインフレーション法により成膜することで作製できる。T-ダイ法の場合、ロールの速度差で縦延伸を、テンターを用いて横延伸を行うことにより二軸延伸フィルムが得られる。
【0071】
(積層体)
積層体は、本実施形態のシート及びフィルムから選ばれる少なくとも1種を有し、更に必要に応じて印刷層、樹脂フィルムなどのその他の構成を有する。
積層体は、例えば、本実施形態のシート及びフィルムから選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に、機械強度や耐薬性の向上付与などのためにフィルムやシートを貼り合わせて得られる。具体的には、シートやフィルムの表面側及び裏面側の少なくともいずれかにポリスチレン系インフレーションフィルムを熱ラミネーションしたり、オレフィン系フィルム(CPP)を、接着剤を用いて貼り合わせたりして得られる。
使用される接着剤としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の接着剤であってもよいし、公知の接着剤であってもよい。
【0072】
(成形体)
成形体は、本実施形態のシート、フィルム及び積層体から選ばれる少なくとも1種を成形して得られる。
成形体は、例えば、本実施形態のシート、フィルム及び積層体を熱成形して得られる。熱成形方法としては、例えば、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等が挙げられ、特に熱源に赤外線ヒーターを用いた間接加熱成形を好ましく用いることができる。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0074】
(原料)
p-トルエンスルホン酸(p-TsOH):(一水和物、富士フィルムワコーケミカル)
ポリマー担持トリフェニルホスフィン(PB-PPh3):(3mmol/gあるいは1.6mmol/g、シグマアルドリッチ)
1,2-ジクロロエタン(DCE):(富士フィルムワコーケミカル)
アセトン:(富士フィルムワコーケミカル)
コハク酸:(富士フィルムワコーケミカル)
1,4-ブタンジオール:(富士フィルムワコーケミカル)
N,N-ジメチルアミノピリジン:(富士フィルムワコーケミカル)
ジクロロメタン:(東京化成工業)
1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・ HCl):(Applo Scientific Limited)
γ-(Boc-アミノ)酪酸(Boc-GABA):(東京化成工業)
N,N-ジメチルアミノピリジン:(富士フィルムワコーケミカル)
トリフルオロ酢酸(TFA):(富士フィルムワコーケミカル)
クロロホルム:(富士フィルムワコーケミカル)
炭酸水素ナトリウム:(富士フィルムワコーケミカル)
アジピン酸:(富士フィルムワコーケミカル)
N,N-ジイソプロピルエチルアミン:(東京化成工業)
7-アザ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt):(東京化成工業)
ポリ((R)-3-ヒドロキシ酪酸)(Mn 40,0000,Aldrich社製)
【0075】
(評価方法)
[1H-NMRスペクトルの測定]
測定装置:JEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」
磁場強度:400MHz
溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:10mg/1.0mL
【0076】
[ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の不飽和基含有率の算出]
ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の不飽和基含有率は、1H-NMRスペクトルのデータを用いて、クロトノイル成分のビニル水素の信号(5.8ppm)の積分強度(V)に対するメチル基水素の信号(1.1ppm)の積分強度(M)から、以下の式(A)に基づき算出した。
不飽和基含有率=3×V/M (A)
【0077】
[ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の残存ヒドロキシ基の算出]
ヒドロキシ基α位水素の信号(4.2ppm)の積分強度(H)に対するメチル基水素の信号の積分強度(M)から、以下の式(B)に基づき算出した。
残存ヒドロキシ基含有率=3×H/M (B)
【0078】
<ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の重合度の算出>
エステル結合α位の水素の信号(5.2ppm)の積分強度(E)、残存ヒドロキシ基の信号の積分強度(H)、クロトノイル基のビニル水素の信号の積分強度(V)から、以下の式(C)に基づき算出した。
重合度=(V+H+E)/(V+H) (C)
【0079】
<タクシチーの算出>
1H-NMRスペクトルのデータを用いて、下記に示す式(D)及び式(E)に基づき算出した。
ポリ((R)-3-ヒドロキシ酪酸)のタクティシチーは、イソタクティック成分のメチル基の信号(d 1.27, d, J = 6.41 Hz)の積分強度(I)に対するシンジオタクチック成分の信号(d 1.31, d)の積分強度(S)から、以下の式に基づき算出した。
アイソタクシー=I/(I+S) (D)
シンジオタクシチー=S/(I+S) (E)
【0080】
<数平均分子量(Mn)の測定>
実施例及び比較例において樹脂の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
測定装置: システムコントローラー Waters 600 Controller
送液ポンプ Waters Model Code 60F
RI(示差屈折計)検出器 Waters 2414
オートサンプラー Waters 717plus Autosampler
【0081】
データ処理:Waters Empower3
測定条件
測定条件:カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム(CHCl3)
流速 1.0ml/分
標準:ポリスチレン
カラム: Shodex GPC LF-G 1本
Shodex GPC LF-804 4本
試料:樹脂固形分換算で0.4質量%のクロロホルム溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0082】
(実施例1)
「ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の合成」
反応管に、p-トルエンスルホン酸(p-TsOH)(12mg,63mmol)、ポリマー担持トリフェニルホスフィン(PB-PPh3)(3mmol/g;18mg,54mmol)をはかり入れた。ここに、(R)-3-ヒドロキシ酪酸(400mg,3.85mmol)を入れた。反応容器内を窒素置換した。窒素気流下、1,2-ジクロロエタン(DCE)(0.5mL)をシリンジで加えた。反応管を100℃に加熱、攪拌した。22時間後、p-トルエンスルホン酸(24mg,126mmol)、PB-PPh3(3mmol/g;36mg,108 mmol)、DCE(0.5mL)を加えて再び加熱、攪拌した。22時間後、p-TsOH(24mg,126mmol)、PB-PPh3(3mmol/g;36mg,108mmol)、DCE(0.5mL)を加えて再び加熱、攪拌した。3日後に、DCE(0.5mL)を加えて18時間攪拌後、加熱を停止した。反応混合物を室温まで冷却し、濃縮して白色固体を得た。これにアセトン(15mL)を加えて、得られた懸濁液をポリプロピレン製遠沈管に移した。超音波照射を行った後に、遠心分離(6,000rpm,5分)により固体を沈降させて上澄みをデカンテーションで除いた。アセトン洗浄・遠心分離工程を3回繰り返したのちに、減圧下乾燥させることにより、本実施形態のエステル(ポリ(3-ヒドロキシ酪酸))として、(R)-3HBオリゴマー(306mg)を白色固体として得た。
【0083】
得られた3HBオリゴマーを上記の方法で1H-NMRスペクトルを行った。その結果は、以下に示す。
<ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の1H-NMRスペクトル>
1H-NMR (CDCl3,1% TFA) d 1.27 (d, J = 6.41 Hz, 3H, CH3), 2.59 (dd, J = 15.8, 5.04 Hz, 1H, CHH), 2.69 (dd, J = 15.8, 7.79 Hz, 1H, CHH), 5.24-5.34 (m, 1H, CH).
【0084】
1H-NMR分析により、上記の算出方法で不飽和基量0.1%、残存ヒドロキシ基0.4%、重合度200と算出した。
1H-NMR分析により、上記の算出方法で、タクティシチーは、アイソタクシチー=99.5%、シンジオタクシチー=0.5%と算出した。
GPC分析により、Mn8,993、Mw15,960、Mw/Mn1.79と決定した。
【0085】
(合成例1)
「両末端アミン型PBSの合成」
100 mL ナスフラスコに、コハク酸(2.00g,16.94 mmol)、1,4-ブタンジオール(1.68g,18.63mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(0.87g,7.11mmol)、ジクロロメタン(53mL)を加え完全に溶解させたのち、0 ℃に冷却してから 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)、(10.23g,53.35mmol)を加え、0℃ で0.5h、室温で3h攪拌した。反応後、溶液に純水5mLを加え、エバポレーターで濃縮後、残渣にアセトン(200mL)および純水(50mL)を加えたところ析出物が確認された。沈殿物をろ過で回収し、アセトン(100mL)、純水(100mL)、アセトン(100mL)で順次洗浄し、45℃で真空乾燥することで白色固体を得た(収量2.09g,収率68%)。
【0086】
100mL ナスフラスコに、上の白色固体(m=11.9,2.00g,16.94mmol)、Boc-GABA(0.39g,1.91mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(0.07g,0.56mmol)、ジクロロメタン(18mL)加え、0 に冷却した。0℃でEDCI-HCl(0.80g,4.16 mmol)を加え、室温で2.5h攪拌したのちに、純水18mLを加えた。反応液をエバポレーターで濃縮することで得られた沈殿物をメタノール(100mL×2),純水(100mL)洗浄し、減圧下乾燥することで白色固体 (2.02g,収率95%)を得た。
1H-NMR分析において、Boc基由来の信号と、PBS主鎖由来の信号の面積強度比より重合度=11.7 と算出した。
GPC分析により、Mn4,100、Mw5,600、Mw/Mn1.38と決定した。
【0087】
100mLナスフラスコに、上の白色固体(1.90g,0.78 mmol)、クロロホルム19mL を加えて溶解させた後0℃に冷却した。あらかじめ冷蔵庫で0℃に冷却したTFA(19mL)を反応液に加え、室温で5h攪拌した。反応液を飽和食塩水(100mL)とクロロホルム(100mL)で分配し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(100mLx2)で洗浄した。有機層を1M HClaq.(100mLx2)、飽和食塩水(100mLx2)で洗浄し、エバポレーターで濃縮した。白色固体をアセトン(100mL)、純水(100mL)で洗浄し、45℃で真空乾燥することで両末端アミン型PBSを白色固体として得た(収量1.36g,収率75%)。
前駆体のBocアミノ基末端の1H-NMR信号が消失したことから、反応の完結を確認した。1H-NMR分析により重合度=12.4と概算した。
【0088】
(実施例2)
「ポリアミドの合成」
(I)3HBオリゴマーのヒドロキシ末端へのアジピン酸の導入
p-トルエンスルホン酸(p-TsOH)(50mg,252mmol)、ポリマー担持トリフェニルホスフィン(PB-PPh3)(3mmol/g;18mg,54mmol)、(R)-3-ヒドロキシ酪酸(400mg,3.85mmol)を用いる以外は、実施例1と同様にして。本実施形態のエステル(ポリ(3-ヒドロキシ酪酸))として、(R)-3HBオリゴマーを白色固体として得た。
1H-NMR分析により、上記の算出方法で不飽和基量0.04%と算出した。
1H-NMR分析により、上記の算出方法で、タクティシチーは、アイソタクシチー=99.0%、シンジオタクシチー=1.0%と算出した。
GPC分析により、Mn1,613、Mw2,962、Mw/Mn1.84と決定した。
上記(R)-3HBオリゴマー、PB-PPh3(3mmol/g;18mg, 54mmol)、DCE(0.5mL)、アジピン酸(200mg)を用いて、上記重合反応と同様の操作で反応を行った。22時間後、反応溶液を室温に戻したのちに、濃縮して白色固体を得た。これを、アセトン(20mL)懸濁、超音波、遠心分離を3回繰り返し、得られた固体を減圧することで溶媒を留去した。得られた固体に対し、クロロホルム(20mL)を加えて不溶分を綿栓ろ過により除去した。ろ液を濃縮し、末端アジピン酸型3HBオリゴマー(125mg;Mn3,964、Mw5,329、Mw/Mn1.34)を得た。
1H-NMR分析において、アジピン酸に由来するメチレン骨格がd 1.6(m,4H,CH2CH2CH2CH2)、d 2.25 (m,2H,COCH2CH2)、およびd 2.32 (m,2H,CH2CH2CO)に観測された。
アジピン酸部のメチレンと、3HBのエステル部メチンとの信号強度比(4:33.4)から、重合度を33、分子量を3,000と概算した。
【0089】
(II)マルチブロック共重合化
10mLナスフラスコに、本実施例で得た末端にアジピン酸を導入した末端アジピン酸型3HBオリゴマー(0.03g,0.01 mmol)、合成例1で得た両末端アミン型PBS(0.02g,0.01mmol)、ジクロロメタン(0.5mL)を加えて、無色透明溶液を得た。7-アザ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt)(0.003g,0.03mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1drop,0.01g,0.1 mmol)、EDCI HCl (0.005g,0.03mmol)を順次加えて、室温で7.5h攪拌した。反応液をメタノール(50mL)に滴下し、上澄液を濾別し白色固体を得た。これをメタノールおよび純水で順次洗浄し、45℃で減圧下乾燥することで、ポリアミドとして白色繊維状固体を得た(収量0.03g,収率67%)。
GPC分析により、Mn 22,921,Mw 61,241,Mw/Mn 2.67と決定した。
【0090】
(比較例1)
「ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の合成」
窒素導入管、温度計、撹拌子、dean-starkトラップ備えた100mL三口フラスコに、(R)-3-ヒドロキシ酪酸400mg(3.85mmol)、p-トルエンスルホン酸0.010g(0.05mmol)、トルエン1mLを加え、内温100℃で17時間加熱を行った。反応液を室温まで冷却し、メタノール100mLを加えて固体を析出させ、ろ過を行うことでポリ(3-ヒドロキシ酪酸)を得た。
1H-NMR分析により、不飽和基量0.8%と算出した。
GPC分析により、Mn4,200、Mw7,200、Mw/Mn 1.73と決定した。
【0091】
「ポリアミドの合成」
比較例1で得られたポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(不飽和基量:0.8%)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行ったが、反応が進行せず、ポリアミドは得られなかった。
【0092】
(比較例2)
Aldrich社から購入したポリ((R)-3-ヒドロキシ酪酸)を用いた以外、実施例2と同様の操作を行ったが反応が進行せず、ポリアミドは得られなかった。上記ポリ((R)-3-ヒドロキシ酪酸)の物性は、以下に示す。
アイソタクシチー=100%、シンジオタクシチー=0%。Mn 403,000、Mw 769,000、Mw/Mn 1.91。不飽和基量=0%。
【0093】
(考察)
比較例1のポリ(3-ヒドロキシ酪酸)は、反応が進行せず、ポリアミドが得られなかった理由について、末端がクロトノイル基となったため、アジピン酸が反応することができないため、両末端ジカルボン酸型になることができず、共重合化しなかったと考えられる。
比較例2のポリ(3-ヒドロキシ酪酸)は、反応が進行せず、ポリアミドが得られなかった理由について、分子量が大きく、活性な末端がほとんど存在しないためと考えられる。
本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、不飽和基(分解物)を僅かしか含まず、末端基がヒドロキシ基やカルボキシル基などの反応性基であるため、更なる化学変性を行うことができ、用途を広げることができる。本実施形態のポリ(ヒドロキシアルカン酸)を含む樹脂組成物は、サステナブルな製品群(包装材料、フィルム)などの種々の用途に使用することが期待される。