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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136657
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二色性色素及びその液晶組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 225/36 20060101AFI20240927BHJP
   C09B 1/54 20060101ALI20240927BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20240927BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240927BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07C225/36 CSP
C09B1/54
C09K19/60 F
G02F1/13 500
G02F1/137 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047841
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川北 健人
(72)【発明者】
【氏名】東條 健太
(72)【発明者】
【氏名】佐原 豪
【テーマコード(参考)】
2H088
4H006
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA10
2H088GA13
2H088JA06
2H088KA06
2H088KA20
2H088KA26
2H088MA02
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB64
4H006AB99
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BP60
4H006BR80
4H006BT30
4H006BU48
(57)【要約】
【課題】二色比が高い二色性色素として利用可能な新規な化合物を提供すること
【解決手段】下記一般式(1)

で表される化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、
、A、A3及びA4はそれぞれ独立して
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CHは-N=に置き換えられてもよい。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、又はフェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、
、Z2、Z3及びZ4はそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、-CH-CH-OCO-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-NR-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-により置き換えられてもよい。)を表し、
は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
は酸素原子又は硫黄原子を表し、
nは1~3の整数を表し、
mは0~3の整数を表し、
2及びA4が複数存在する場合、複数のA2及びA4は互いに同一であっても異なっていてもよく、
2及びZ4が複数存在する場合、複数のZ2及びZ4は互いに同一であっても異なっていてもよく、
3が複数存在する場合、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよく、
ただし、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。)
で表される化合物。
【請求項2】
下記式(1A)
【化2】

[式中、A~A、Z~Z、R、R及びXは前記と同義である。]
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Aが前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基であり、
前記Aが前記1,4-シクロへキシレン基、前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記Aが前記1,4-フェニレン基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
前記Zが-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
前記Aが前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基であり、
前記Aが前記1,4-シクロへキシレン基、前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基であり、
前記Aが前記1,4-フェニレン基であり、
前記Zが-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合であり、
前記Z及び前記Zがいずれも単結合である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
前記R及び前記Rがそれぞれ独立して、前記炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
前記A及び前記Aがいずれも前記1,4-フェニレン基であり、
前記Aが前記1,4-シクロへキシレン基又は前記1,4-フェニレン基であり、
前記Zが-CHCH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合であり、
前記Z及び前記Zがいずれも単結合であり、
前記R及び前記Rがそれぞれ独立して、炭素原子数1~10の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の化合物を含有する、液晶組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶組成物から形成される液晶層と、電極と、該液晶層及び該電極を支持する基材と、を備える液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、液晶組成物及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶材料は、TVやスマートフォンに代表される文字や画像、映像を表示させる各種表示素子に利用されるだけではなく、光の透過を調節する調光素子としての利用に関しても実用化されつつある。液晶材料には目的に応じて種々の性能を有する色素化合物が用いられる(例えば特許文献1)。
【0003】
液晶材料の中でも、二色性色素を含む液晶材料は、偏光板が不要になり、低コストで透過率の高い調光素子を得ることができることから、調光素子用の材料として期待されている。
【0004】
近年、建材や運輸の分野において、空間の快適性と利便性向上のため、外光の透過度合いを調節するスマートウィンドウ・スマートガラス用途の調光素子として、いわゆる高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶素子やゲストホスト型液晶素子が注目されており、液晶層での光の透過/散乱度合いを印加電圧によって調整することができる。
【0005】
しかし、それぞれの調光素子に用いられる二色性色素を含有する液晶材料においては、その構成する成分によって、調光素子への使用に適さないものがあり、更なる性能の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5578419号明細書
【特許文献2】国際公開第2022/138418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スマートウィンドウやスマートガラスには、快適性向上の目的や使用環境によって、高い遮光性が求められる。そのため液晶材料に用いられる二色性色素の要求特性の一つとして高い二色比が挙げられる。
【0008】
本発明の課題の一つは、二色比が高い二色性色素として利用可能な新規な化合物及び当該化合物を含む液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のいくつかの側面は、下記[1]~[10]を提供する。
【0010】
[1]
下記式(1)
【化1】

[式中、
、A、A3及びA4はそれぞれ独立して
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CHは-N=に置き換えられてもよい。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、又はフェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、
、Z2、Z3及びZ4はそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、-CH-CH-OCO-又は単結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-NR-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-により置き換えられてもよい。)を表し、
は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
は酸素原子又は硫黄原子を表し、
nは1~3の整数を表し、
mは0~3の整数を表し、
2及びA4が複数存在する場合、複数のA2及びA4は互いに同一であっても異なっていてもよく、
2及びZ4が複数存在する場合、複数のZ2及びZ4は互いに同一であっても異なっていてもよく、
3が複数存在する場合、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよく、
ただし、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。)
で表される化合物。
[2]
下記式(1A)
【化2】

[式中、A~A、Z~Z、R、R及びXは前記と同義である。]
で表される、[1]に記載の化合物。
[3]
前記Aが前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基であり、
前記Aが前記1,4-シクロへキシレン基、前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基である、[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
前記Aが前記1,4-フェニレン基である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]
前記Zが-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合である、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]
前記Aが前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基であり、
前記Aが前記1,4-シクロへキシレン基、前記1,4-フェニレン基、前記ナフタレン-2,6-ジイル基、又は前記チオフェン-2,5-ジイル基であり、
前記Aが前記1,4-フェニレン基であり、
前記Zが-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合であり、
前記Z及び前記Zがいずれも単結合である、[1]~[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]
前記R及び前記Rがそれぞれ独立して、前記炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物。
[8]
前記A及び前記Aがいずれも前記1,4-フェニレン基であり、
前記Aが前記1,4-シクロへキシレン基又は前記1,4-フェニレン基であり、
前記Zが-CHCH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合であり、
前記Z及び前記Zがいずれも単結合であり、
前記R及び前記Rがそれぞれ独立して、炭素原子数1~10の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の化合物を含有する、液晶組成物。
[10]
[9]に記載の液晶組成物から形成される液晶層と、電極と、該液晶層及び該電極を支持する基材と、を備える液晶素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二色比が高い二色性色素として利用可能な新規な化合物及び当該化合物を含む液晶組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
<化合物>
本発明の一実施形態は、下記式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)」ともいう。)である。ただし、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。
【化3】
【0014】
式(1)中、A、A、A3及びA4はそれぞれ独立して下記の基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)からなる群より選ばれる基を表す。
【0015】
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CHは-N=に置き換えられてもよい。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、又はフェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=はそれぞれ独立して-N=に置き換えられてもよい。)
【0016】
基(a)の具体例としては、1,4-シクロへキシレン基(無置換の1,4-シクロへキシレン基)が挙げられる。基(b)の具体例としては1,4-フェニレン基(無置換の1,4-フェニレン基)が挙げられる。基(c)の具体例としてはナフタレン-2,6-ジイル基(無置換のナフタレン-2,6-ジイル基)が挙げられる。基(d)の具体例としてはチオフェン-2,5-ジイル基が挙げられる。
【0017】
2及びA4が複数存在する場合、複数のA2及びA4は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
、A、A3及びA4はそれぞれ独立して1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、又はチオフェン-2,5-ジイル基であってよい。
【0019】
は1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基又はチオフェン-2,5-ジイル基であることが好ましく、1,4-フェニレン基であることがより好ましい。
【0020】
は1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、又はチオフェン-2,5-ジイル基であることが好ましく、1,4-シクロへキシレン基、又は1,4-フェニレン基であることがより好ましい。
【0021】
は1,4-フェニレン基であることが好ましい。
【0022】
式(1)中、Z、Z2、Z3及びZ4はそれぞれ独立して、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、-CH-CH-OCO-又は単結合を表す。Zは-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合であることが好ましく、-CHCH-、-CH-CH-OCO-又は単結合であることがより好ましい。Zは単結合であることが好ましい。Z3は-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合であってよく、単結合であることが好ましい。Zは単結合であることが好ましい。
【0023】
2及びZ4が複数存在する場合、複数のZ2及びZ4は互いに同一であっても異なっててもよい。
【0024】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-NR-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-により置き換えられてもよい。)を表す。ここで、Rは水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられてもよく、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよい。)を表す。R3が複数存在する場合、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
及びRで表されるアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは2~16であり、より好ましくは4~12である。なお、上記炭素数は、アルキル基中の一部が上述したいずれかの基に置き換えられている場合には、置換基中の炭素原子数を含めた総炭素原子数を意味する。
【0026】
及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基(置換されたものも含む)であることが好ましく、炭素原子数1~20の無置換の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であることがより好ましい。中でも、R及びRの両方が炭素原子数1~20の無置換の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であることが好ましい。
【0027】
炭素原子数1~20の無置換の直鎖状若しくは分岐状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。
【0028】
式(1)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。Xは酸素原子であることが好ましい。
【0029】
式(1)中、nは1~3の整数を表す。nは1~2であることが好ましく、1であることがより好ましい。式(1)中、mは0~3の整数を表す。mは0~2、又は0~1であってよく、0であることが好ましい。
【0030】
化合物(1)は、二色比がより高くなることから、nが1で、mが0である下記式(1A)で表される化合物であることが好ましく、nが1で、mが0で、Z及びZがいずれも単結合である下記式(1A’)で表される化合物であることがより好ましい。
【化4】

【化5】
【0031】
式(1A)及び式(1A’)中、A~A、Z~Z、R、R及びXは上記と同義である。
【0032】
化合物(1)は、式(1A’)で表され、Aが1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、又はチオフェン-2,5-ジイル基であり、Aが1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、又はチオフェン-2,5-ジイル基であり、Aが1,4-フェニレン基であり、Zが-CHCH-、-COO-、-CH=CH-、-CH-CH-OCO-、又は単結合である、化合物であることが好ましい。すなわち、化合物(1)は下記式(1A-1)~(1A-22)で表される化合物であることが好ましい。この場合二色性がより優れたものとなる。
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
式(1A-1)~(1A-22)中、X、R及びRは上記と同義である。
【0036】
式(1A-1)~(1A-22)中のR及びRはいずれも上述した炭素原子数1~30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であることが好ましく、上述した炭素原子数1~20の無置換の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であることがより好ましい。
【0037】
化合物(1)は、式(1A-1)、式(1A-9)又は式(1A-19)で表される化合物であることが好ましい。化合物(1)の好適な具体例は下記式(1A-1a)、式(1A-9a)又は式(1A-19a)で表される化合物である。
【化8】
【0038】
化合物(1)の用途としては、例えば、液晶材料、調光材料が挙げられる。
【0039】
化合物(1)は高い二色比を有する傾向があることから、高い二色比を有する二色性色素として液晶材料用途に好適である。化合物(1)の二色比が高くなる要因はこれに限定されないが、例えば、剛直な環骨格が増加することで遷移双極子モーメントの方向に分子が伸長し、分子形状が棒状に近づいたためと推察される。
【0040】
化合物(1)の二色比は例えば3~20であってよく、5~12であってよい。二色比の測定方法は後述する実施例に記載されるとおりである。
【0041】
化合物(1)は600~750nmの間に極大吸収波長を有する傾向がある。化合物(1)は、600nm以上であり、かつ、700nm以下、650nm以下、625nm以下の間に極大吸収波長を有する化合物であってよい。極大吸収波長は後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0042】
(化合物の製造方法)
化合物(1)は、例えば、次に示す工程1~2を含む方法によって製造することができる。
【0043】
工程1は、下記式(x1)で表される化合物(化合物x1)と、式:HN-A-Z-[A-Z-Rで表される化合物とを反応させて、下記式(x2)で表される化合物(化合物x2)を得る工程である。ここで、A3、A4、Z、Z、m及びRは、式(1)におけるものと同義である。
【化9】

式中、Xa1及びXa2はそれぞれ独立してハロゲン原子を示す。ハロゲン原子は臭素原子であってよい。
【0044】
【化10】
【0045】
工程1で行われる反応条件及び後処理条件は、化合物x1、及び、式:HN-A-Z-[A-Z-Rで表される化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。例えば、化合物x1と、式:HN-A-Z-[A-Z-Rで表される化合物と、を含む反応混合物中でこれらを反応することによって化合物x2を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて、溶媒、塩基、及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含むことができる。溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ノルマルペンタノール、ノルマルヘキサノール、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン、1,4-ジオキサン、エチレングリコール等が挙げられる。塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジン、トリエチルアミン等が挙げられる。触媒としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム、銅粉、酢酸銅一水和物、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅五水和物、塩化スズ等が挙げられる、これら溶媒、塩基及び触媒は二種類以上を併用してもよい。当該反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、100℃以上であってよく、100~180℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分以上、又は40分以上であってよく、120時間以下、または80時間以下であってよい。後処理は、例えば、化合物x2を析出させること、析出した化合物x2を洗浄すること、洗浄後の化合物x2を乾燥(例えば、減圧乾燥)させること等を含む方法によって行うことができる。化合物x2の析出は、例えば、メタノール、エタノール、水等、及びこれらの混合溶媒を反応混合物に添加することによって行うことができる。化合物x2の洗浄は、例えば、メタノール、エタノール、HCl水溶液(例えば、5w/w%HCl水溶液)等を用いて行うことができる。
【0046】
工程2は化合物x2と、式:X-A-Z-[A-Z-Rで表される化合物とを反応させて、化合物(1)を得る工程である。ここで、X、A、A、Z、Z、n及びRは式(1)におけるものと同義である。
【0047】
工程2で行われる反応条件及び後処理条件は、化合物x2及び式:X-A-Z-[A-Z-Rで表される化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。例えば、化合物x2と、式:X-A-Z-[A-Z-Rで表される化合物と、を含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物x3を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて溶媒、塩基及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含むことができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程1で例示した各種の溶媒、塩基、触媒を用いることができる。反応は、窒素雰囲気下で行われてもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、80℃以上あってよく、80~160℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、1時間以上、又は5時間以上であってよく、1~10時間、又は5~8時間であってよい。後処理は、例えば、化合物(1)を析出させること、析出した化合物(1)を洗浄すること、洗浄後の化合物(1)を乾燥(例えば、減圧乾燥)させること等を含む方法によって行うことができる。化合物x3の析出は、例えば、メタノール、エタノール、水等、及びこれらの混合溶媒の溶媒を反応混合物に添加することによって行うことができる。化合物x3の洗浄は、例えば、メタノール、エタノール、HCl水溶液(例えば、1w/w%HCl水溶液)等を用いて行うことができる。
【0048】
化合物(1)中のZ1が-CH-CH-OCO-である場合、化合物(1)は、上記工程1と、下記に示す工程3及び工程4とを含む方法によっても製造することができる。
【0049】
工程3は、化合物x2と、式:HX-A-CH-CH-OHで表される化合物とを反応させて、式(x3)で表される化合物(化合物x3)を得る工程である。ここで、X及びAは式(1)におけるものと同義である。
【化11】
【0050】
工程3で行われる反応条件及び後処理条件は、化合物x2、及び式:HX-A-CH-CH-OHで表される化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。例えば、化合物x2と、式:HX-A-CH-CH-OHで表される化合物と、を含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物x3を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて溶媒、塩基及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含むことができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程1で例示した各種の溶媒、塩基、触媒を用いることができる。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、70℃以上であってよく、70~140℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、30分以上、又は2時間以上であってよく、30分~12時間、又は2~4時間であってよい。後処理は、例えば、化合物x3を析出させて粗生成物を得ること、粗生成物をシリカゲルカラム等を用いて精製すること等を含む方法によって行うことができる。化合物x3の析出は、例えば、メタノール、エタノール、水、及びこれらの混合溶媒等の溶媒を反応混合物に添加することによって行うことができる。
【0051】
工程4は、化合物x3と、式:HO-C(=O)-[A-Z-Rで表される化合物とを反応させて化合物(1)を得る工程である。ここで、A、Z、n及びRは式(1)におけるものと同義である。
【0052】
工程4で行われる反応条件及び後処理条件は、化合物x3、式:HO-C(=O)-[A-Z-Rで表される化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。例えば、化合物x3と、式:HO-C(=O)-[A-Z-Rで表される化合物と、を含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(1)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて酸および/または溶媒をさらに含むことができる。酸としては、例えば、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸一水和物等が挙げられる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。反応は、縮合反応により生じる水を除去しながら行われてもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、溶媒の還流温度であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、20時間以上、45時間以上又は70時間以上であってよく、100時間以下、90時間以下又は80時間以下であってよい。後処理は、例えば、反応混合物に塩基を含む水溶液を加えて中和すること、化合物(1)を含む有機層を脱水すること、脱水後の有機層を減圧濃縮して粗生成物を得ること、粗生成物をシリカゲルカラム等を用いて精製すること等を含む方法によって行うことができる。中和する際に加えられる塩基を含む水溶液は、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液であってよい。化合物(1)を含む有機層の脱水は、例えば、硫酸マグネシウム等を用いて行うことができる。
【0053】
<液晶組成物>
本発明の一実施形態は、化合物(1)を含有する液晶組成物である。当該液晶組成物は化合物(1)及び液晶成分を含有し、これらの成分以外のその他の成分を更に含有していてもよい。
【0054】
化合物(1)の含有量は、電圧OFF時の遮光性、耐光性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上又は1質量部以上であってよい。化合物(1)の含有量は、二色性色素の溶解性、電圧ON時の透明性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、15質量部以下、8質量部以下又は5質量部以下であってよい。これらの観点から、化合物(1)の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.1~15質量部、0.5~8質量部又は1~5質量部であってよい。
【0055】
液晶組成物は、化合物(1)以外の二色性色素を含有してもよい。液晶組成物に含まれる二色性色素の種類は、1~6種であってよく、1~5種又は1~4種であってもよい。複数種の二色性色素を用いる場合には、該複数種の二色性色素が互いに異なる吸収波長を有していることが好ましい。これにより黒色など所望の色に調整することが可能になる。液晶組成物は、500~600nmの間に極大吸収波長を有する赤色色素化合物、及び、400~500nmの間に極大吸収波長を有する黄色色素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含んでいてよく、当該赤色色素化合物及び当該黄色色素化合物の両方を更に含むことが好ましい。
【0056】
二色性色素の含有量(総量)は、電圧OFF時の遮光性、耐光性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.2質量部以上、0.5質量部以上又は1.0質量部以上であってよい。二色性色素の含有量(総量)は、二色性色素の溶解性、電圧OFF時の透明性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、15質量部以下、13質量部以下又は10質量部以下であってよい。これらの観点から、二色性色素の含有量(総量)は、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.2~15質量部、0.5~15質量部又は0.3~13質量部であってよい。
【0057】
(液晶成分)
液晶成分は、1種又は2種以上の液晶化合物からなる成分である。液晶成分は化合物(2を含む。化合物(2)は、例えば、非重合性液晶化合物であり、下記式(2)で表される。
【0058】
【化12】
【0059】
式(2)中、
11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
11、A12及びA13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCF-、-CFO-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
11は0~3の整数を表し、
11及びZ11が複数存在する場合、複数のA11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0060】
11は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基又は炭素原子数2~5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基又は炭素原子数2~3のアルケニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基が特に好ましい。
【0061】
11は、信頼性を重視する場合にはアルキル基であることが好ましい。R11は、ネマチック相を安定化させるためには、炭素原子及び酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0062】
12は、好ましくはフッ素原子、シアノ基又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)である。
【0063】
11、A12及びA13はそれぞれ独立して、上記の基(a3)及び基(b3)からなる群より選ばれる基を表すことが好ましい。中でも、A13は基(b3)であることが好ましく、下記式(b3-1)で表される構造の基であることがより好ましい。
【0064】
【化13】
【0065】
i3、Ri4及びRi5はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。式(b3-1)中の*がR12への結合手を表し、波線がZ12への結合手を表す。
【0066】
13が基(b3)であるとき、屈折率異方性(Δn)を大きくすることが求められる場合には、A11及びA12は芳香族であることが好ましい。また、応答速度を改善するためには、A11及びA12は脂肪族であることが好ましい。これらの観点から、A11及びA12はそれぞれ独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、又は、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基若しくは2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)を表すことが好ましい。
【0067】
中でもA11及びA12は、それぞれ独立して下記の構造のいずれかを表すことがより好ましい。
【0068】
【化14】
【0069】
上記構造中の波線で表される結合手がR11側の結合手であり、*で表される結合手がR12側の結合手である。
【0070】
11及びA12は、それぞれ独立して下記の構造のいずれかを表すことがさらに好ましい。なお、下記構造中の波線及び*は上記と同義である。
【0071】
【化15】
【0072】
11は、0、1又は2であることが好ましい。Δεの改善に重点を置く場合、n11は0又は1であることが好ましい。転移温度(Tni)を重視する場合には、n11は1又は2であることが好ましい。
【0073】
上記化合物(2)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、化合物(2)を、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又は9種組み合わせて用いてよく、10種以上組み合わせて用いてもよい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率などの所望の性能に応じて組み合わせて使用する。
【0074】
液晶組成物が重合性化合物及び重合開始剤を更に含む場合、化合物(2)の含有量は、散乱性、低電圧駆動の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、25質量%以上、35質量%以上又は45質量%以上であってよい。化合物(2)の含有量は、散乱性、信頼性の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。これらの観点から、化合物(2)の含有量は、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、25~80質量%、35~70質量%又は45~60質量%であってよい。
【0075】
上記化合物(2)は、25℃における誘電率異方性(Δε)が正の液晶化合物(いわゆるp型液晶化合物)又は誘電率異方性(Δε)がほぼ0の液晶化合物(いわゆるノンポーラ型液晶化合物)である。
【0076】
一実施形態では、化合物(2)として、式(2)中のR12がシアノ基である化合物(以下、「シアン系液晶化合物」という。)を用いることが好ましい。
【0077】
シアン系液晶化合物において、式(2)中のZ11及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-であることが好ましく、単結合又は-COO-であることがより好ましい。
【0078】
シアン系液晶化合物において、式(2)中のR11の炭素原子数は、好ましくは2~7であり、より好ましくは2~5である。
【0079】
シアン系液晶化合物において、式(2)中のn11は0又は1であることが好ましい。
【0080】
シアン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(vi-1)~(vi-11)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化16】
【0082】
上記式(vi-1)~(vi-11)中、R51は炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数1~10のアルコキシ基を表し、Y11~Y64は、それぞれ独立して水素原子、又はフッ素原子を表す。Y11~Y64は、全て水素原子を表してもよく、その中の1つ以上がフッ素原子を表してもよい。
【0083】
シアン系液晶化合物のより具体的な例としては、下記式(vi-A)~(vi-G)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【化17】
【0085】
上記式(vi-A)~(vi-G)中、R511は炭素原子数2~7のアルキル基、又は炭素原子数2~7のアルコキシ基を表し、好ましくは2~5のアルキル基、又は炭素原子数2~5のアルコキシ基を表す。
【0086】
シアン系液晶化合物のさらに具体的な例としては、下記式(2C-1)~(2C-18)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化18】
【0088】
【化19】
【0089】
【化20】
【0090】
【化21】
【0091】
【化22】
【0092】
上記シアン系液晶化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
シアン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよい。シアン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、100質量%以下、97質量%以下又は95質量%以下であってよい。
【0094】
一実施形態では、上記シアン系液晶化合物と、シアン系液晶化合物に該当しない化合物とを組み合わせて用いてもよい。シアン系液晶化合物に該当しない化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
シアン系液晶化合物に該当しない化合物としては、例えば、化合物(2)のうち、式(2)中のR12が炭素原子数1~10のアルキル基(置換されたものも含む)であり、式(2)中のZ12が-COO-である化合物が挙げられる。このような化合物の具体例としては、下記式(2M-1)~(2M-3)で表される化合物のうちの1種以上を用いることが好ましい。
【0096】
【化23】
【0097】
シアン系液晶化合物に該当しない化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上又は60質量%以上であってよい。シアン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0098】
液晶成分は、化合物(2)以外の液晶化合物を含有してもよい。化合物(2)以外の液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、10質量%以下であることが好ましい。
【0099】
液晶成分(液晶化合物全体)の転移温度(Tni)は、95℃以上であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましく、130~140℃であることがさらに好ましい。ここで、転移温度(Tni)は、液晶成分(液晶相)がネマチック相から等方相へ相転移する温度(上限温度)を意味する。転移温度(Tni)が高いほど高温でもネマチック相を維持することができ、駆動温度範囲を広く取ることができる。
【0100】
液晶成分の25℃、589nmにおける屈折率異方性(Δn)は、0.15~0.35であることが好ましく、0.18~0.32であることが好ましく、0.20~0.30であることがより好ましい。
【0101】
(重合性成分)
液晶組成物は、重合性成分を含んでいても含んでいなくてもよい。重合性成分は、1種又は2種以上の重合性化合物からなる成分である。重合性成分を含む場合、液晶組成物中の重合性化合物は、重合して液晶成分を分散するポリマーネットワークを構成する。上記液晶組成物によれば、重合性化合物を重合させることにより、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶を形成することができる。したがって、上記液晶組成物は、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶形成性組成物ということができる。また、上記液晶組成物は、ホストとなる液晶成分とゲストとなる二色性色素を含有することから、ゲスト-ホスト(GH)型液晶材料ということもできる。
【0102】
重合性化合物は、重合性基を有する化合物であり、ラジカル重合性、カチオン重合性又はアニオン重合性を有する。重合性化合物は、好ましくは(メタ)アクリレートである。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0103】
(重合開始剤)
重合開始剤は、重合性化合物を重合させるために用いる。重合開始剤は、重合を光照射によって行う場合に使用される、光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、重合性化合物の重合性に対応した活性種を発生するものを使用すればよく、例えば、光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、公知慣用のものを使用できる。
【0104】
(添加剤成分)
液晶組成物には、実用的な電気光学特性、及び、液晶素子を作製した際に密着性が損なわれない範囲で、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、顔料、粒子径が1μm未満の粒子、キラル化合物、あるいは、配向材料を添加することができる。これらの中でも、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、粒子径が1μm未満の粒子及び顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの添加剤としては、公知慣用のものを使用でき、例えば、国際公開第2022/138418号に記載されている化合物を同様の添加量で用いることができる。
【0105】
<液晶層>
本発明の他の一実施形態は、上記実施形態の液晶組成物から形成される液晶層である。液晶組成物が重合性成分を含む場合、この液晶層は、上記二色性色素と、上記重合性化合物由来のポリマーネットワークと、上記化合物(2)を含む液晶成分と、を含む。ポリマーネットワークは、上記重合性成分の重合体(重合性成分として例示した各重合性化合物をモノマー単位として含む重合体)で構成される。液晶組成物中の重合性成分の総量に対する上記第1~第4成分の含有量は、液晶層中の重合体の総量(全質量)に対する各成分に由来するモノマー単位の含有量として読み替えることができる。また、液晶組成物の総量に対する上記重合性成分の含有量は、液晶層の総量に対する重合体の含有量として読み替えることができる。
【0106】
上記液晶層は、ポリマーネットワークと液晶成分とを含むことから、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶からなる層(高分子分散型液晶層)ということができる。高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶層は、例えば、ポリマーの3次元ネットワーク構造中に液晶成分が連続層をなす構造、液晶成分のドロップレットがポリマー中に分散している構造、又は両者が混在する構造を有する。高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶層は、液晶成分がポリマー成分内にカプセル状に閉じ込められた構造、液晶成分の連続相中にポリマー成分の3次元ネットワーク構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶成分の連続相中にポリマー成分の3次元ネットワーク構造が形成された構造を有することが好ましい。カプセル状の液晶成分の平均粒径、及び、ポリマー成分の3次元ネットワーク構造の平均空隙間隔は、それぞれ、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が最も好ましく、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が最も好ましい。上記液晶層において、液晶成分とポリマーネットワークとは互いに相分離するため、液晶層は相分離液晶層ということもできる。
【0107】
液晶層は、例えば、基材上に液晶組成物を塗布することを含む方法によって得ることができる。液晶組成物が重合性成分を含む場合、液晶成分を塗布した後に重合性成分を重合させることを更に含んでいてよい。
【0108】
<液晶素子及び調光素子>
本発明の他の一実施形態は、液晶層と、電極と、該液晶層及び該電極を支持する基材と、を少なくとも備える液晶素子である。この液晶素子は、液晶層が上記実施形態の液晶層(高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶層)であることから、いわゆる高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶素子である。
【0109】
上記液晶素子は、例えば、電圧無印加時には、重合性化合物由来のポリマーネットワークとその空隙に存在する液晶分子(液晶成分)によって光散乱状態とすることができる。一方、電圧印加時には、基材に対して液晶分子が垂直に配向することによって、光透過状態とすることができる。このように、上記液晶素子は電圧印加の有無により光の透過状態を変化させられる。特に、上記液晶層は、電圧印加時に液晶分子とともに配向する二色性色素を含むことから、電圧無印加時に二色性色素の吸収波長に応じた色を発現でき、複数の二色性色素を組み合わせることで、電圧無印加時に遮光状態とすることもできる。このため、上記液晶素子は、調光機能が求められる装置に組み込んで用いる液晶調光素子や、映像表示用ディスプレイに用いられる液晶表示素子として利用することができる。
【0110】
液晶素子は、例えば、建材、調光ガラス、車載向けのスマートウィンドウ又はOLEDディスプレイにおける調光ユニット等に用いることが好ましい。液晶素子は、従来の高分子分散型液晶表示素子と同様な用途に用いることができるほか、特に透過型ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等にも好ましく用いることができる。より具体的には、窓、天窓、屋根、壁、仕切り、間仕切り、扉等の建築用調光素子、扉、窓、ドア、ヘルメット、サンルーフ等の輸送用調光素子、サングラス、眼鏡、サンバイザー、時計、鏡、反射板等の装飾用調光素子、フレキシブル液晶表示素子、反射型液晶表示素子、透明液晶表示素子、可変式拡散フィルム等のディスプレイ用部材等の物品に用いることができる。
【実施例0111】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「部」は「質量部」を意味する。
【0112】
<二色性色素の準備>
[二色性色素Aの合成]
【化24】

以下の方法で、上記式で表される化合物(二色性色素A)を合成した。
【0113】
(1-アミノ-2-ブロモ-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン(以下「化合物a1」ともいう。)の合成)
【化25】

1-アミノ-2,4-ジブロモアントラキノン(5.00g)、酢酸ナトリウム(1.55g)、p-ブチルアニリン(17.4g)を100mLナスフラスコ中150℃で1時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール(20mL)を加え析出した固体をろ取し、メタノール、5w/w%HCl水溶液で順次洗浄、減圧乾燥することで化合物a1(5.59g, 収率94%)を得た。
H-NMR(400MHz、CDCOCD):δ(ppm)=11.94(1H,s)、8.37-8.32(2H,m)、7.88-7.85(3H,m)、7.34-7.28(4H,m)、2.67(2H,t)、1.69-1.61(2H,m)、1.45-1.35(2H,m)、0.95(3H,t)
【0114】
(1-アミノ-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)-2-(4-(2-ヒドロキシエチル)フェノキシ)アントラセン-9,10-ジオンの合成)
【化26】

30mLナスフラスコに、化合物a1(2.03g)、チロソール(10.2g)、炭酸カリウム(750mg)、酢酸銅一水和物(105mg)、イソブタノール(2mL)を加え、105℃で3時間反応させた。得られた反応物を250mL 20%メタノール水溶液中に加えて終夜室温下で攪拌し、ろ取することで粗生成物を得た。組成物をシリカゲルカラム(トルエン/酢酸エチル=4:1)で精製し目的物(0.47g, 収率21%)を得た。
H-NMR(400MHz、CDCOCD):δ(ppm)=12.42(1H,s)、8.40-8.34(2H,m)、7.87-7.81(2H,m)、7.37(2H,d)、7.26-7.05(6H,m)、6.81(1H,s)、3.79-3.72(2H,m)、3.69(1H,t)、2.84(2H,t)、2.57(2H,t)、1.61-1.52(2H,m)、1.39-1.29(2H,m)、0.93(3H,t)
【0115】
(二色性色素Aの合成)
【化27】

ディーンスターク装置を装着した100mLナスフラスコに、1-アミノ-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)-2-(4-(2-ヒドロキシエチル)フェノキシ)アントラセン-9,10-ジオン(470mg)、4-ブチル安息香酸(3.30g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(50mg)、トルエン(50mL)を加え、縮合により生じた水を除去しつつ72時間加熱還流した。得られた反応液を1%炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で4回洗浄した後、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(トルエン/酢酸エチル=20:1)で精製し目的物(380mg、収率61%)を得た。
MS m/z:666[M
相転移温度:Cr 146 Iso
H-NMR(400MHz、CDCOCD):δ(ppm)=12.42(1H,s)、8.39-8.33(2H,m)、7.92(2H,d)、7.86-7.80(2H,m)、7.49(2H,d)、7.34(2H,d)、7.24(2H,d)、7.14-7.05(4H,m)、6.81(1H,s)、4.51(2H,t)、3.13(2H,m)、2.70(2H,t)、2.52(2H,t)、1.67-1.58(2H,m)、1.57-1.48(2H,m)、1.42-1.26(4H,m)、0.96-0.87(6H,m)
【0116】
[二色性色素Bの合成]
【化28】

以下の方法で、上記式で表される化合物(二色性色素B)を合成した。
【0117】
30mLナスフラスコに、化合物a1(1.51g)、4-(trans-4-アミルシクロヘキシル)フェノール(2.49g)、炭酸カリウム(556mg)、NMP(6.0g)を加え、窒素雰囲気中120℃で6時間反応させた。得られた反応物にMeOH(30mL)を追加し、析出した固体をろ取し、MeOH、1%HCl水溶液で洗浄し目的物(1.90g, 収率92%)を得た。
MS m/z:614[M
相転移温度:Cr 175 Iso
H-NMR(400MHz、CDCOCD):δ(ppm)=12.42(1H,s)、8.40-8.34(2H,m)、7.87-7.81(2H,m)、7.37(2H,d)、7.18(2H,d)、7.12(2H,d)、7.06(2H,d)、6.74(1H,s)、2.59-2.52(3H,m)、1.90(4H,t)、1.61-1.46(4H,m)、1.42-1.24(11H,m)、1.17-1.05(2H,m)、0.97-0.89(6H,m)
【0118】
[二色性色素Cの合成]
【化29】

以下の方法で、上記式で表される化合物(二色性色素C)を合成した。
二色性色素Bの合成において、4-(trans-4-アミルシクロヘキシル)フェノールの代わりに4-(4-メチルフェネチル)フェノール(1.42g)としたほかは同様の手順で合成を行い、目的物(1.75g、収率90%)を得た。
MS m/z:580[M
相転移温度:Cr 143 Iso
H-NMR(400MHz、CDCOCD):δ(ppm)=12.40(1H,s)、8.40-8.34(2H,m)、7.94(2H,d)、7.86-7.79(2H,m)、7.48(2H,d)、7.33(2H,d)、7.21(2H,d)、7.13-7.05(4H,m)、6.77(1H,s)、2.66(4H,m)、2.50(3H,s)、2.24(2H,m)、1.57-1.48(2H,m)、1.42-1.26(2H,m)、0.92(3H,t)
【0119】
[二色性色素Dの合成]
【化30】

以下の方法で、上記式で表される化合物(二色性色素D)を合成した。
【0120】
乾燥窒素雰囲気下、化合物a1(90.0g)、4-ブチルフェノール(90.1g)、水酸化カリウム(33.7g)及びピリジン(800mL)を混合し、110℃にて22時間攪拌した。室温まで冷却した後、トルエン(3000mL)及び水(1000mL)を加え分液した。有機層に10%塩酸(900mL)を加え分液した後、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(600mL)を加えて中和し分液した。有機層を飽和食塩水(1000mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去し、有機溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ジクロロメタン及びヘキサン溶媒で再沈殿することで、1-アミノ-2-(4-ブチルフェノキシ)-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン(66.9g、収率64%)を得た。
MS m/z:518[M
相転移温度:Cr 139 Iso
H-NMR (400MHz、CDCl、TMS内部標準)δ(ppm)=12.33(s,1H),8.36(dt,J=7.0,1.6Hz,2H),7.68-7.75(m,2H),7.16-7.19(m,2H),6.95-7.03(m,6H),6.79(s,1H),2.59(t,J=7.8Hz,2H),2.53(t,J=7.8Hz,2H),1.50-1.62(m,4H),1.29-1.40(m,4H),0.91-0.97(m,6H)
【0121】
上記二色性色素A~Dの吸収波長、及び二色性色素A~Dの二色比を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
(二色比及び吸収波長評価)
二色比及び吸収波長評価は、二色性色素をガラス製テストパネル中に封止して行った。このテストパネルのセル厚は3.5μm、水平配向膜としてAL1051を用いた。具体的には下記手順で評価を実施した。
下記組成(下記構造式中の単位「%」は「質量%」を意味する。)を有する液晶組成物H100質量部に対して、極大吸収波長を測定する二色性色素を1.0質量部添加して溶解させ、測定試料を調製した。次に、ITO電極を有し、当該ITO電極上に水平配向用配向膜を備えた2cm×2cmのガラス基板を2枚用いて、ITO電極層をセルの内側として、プラスチック粒子によりセル厚3.5μmに調整した注入口を備えたセルを作製した。当該セルに、試料を注入し、注入口を封止材で塞ぐことにより、試験用のテストパネル(素子)を作製した。
液晶組成物Hの組成:
【化31】
【0124】
(二色比計算方法)
透過率計の光源として直線偏光を用い、前記テストパネルの配向方向が直線偏光と平行になるときの極大吸収波長における透過率をA0、テストパネルを回転させ配向方向が直線偏光と直交する時の極大吸収波長における透過率をA90とした時、R=A0/A90の式から二色比(R)を算出した。
【0125】
(吸収波長評価方法)
スペクトルメーター(大塚電子社製、「LCD-5200」)を用いて、25℃、電圧無印加の条件下、前記テストパネルを用いて、350~750nmの間の吸収スペクトルを測定することにより、二色性色素の極大吸収波長を求めた。