(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154537
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】レーザ光源およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02325 20210101AFI20241024BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20241024BHJP
B23K 1/005 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01S5/02325
H01S5/0225
B23K1/005 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068396
(22)【出願日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山下 利章
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA08
5F173MA10
5F173MC26
5F173MC30
5F173ME66
5F173ME85
5F173MF03
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】高出力化に適したレーザ光源およびそのようなレーザ光源の製造方法を提供する。
【解決手段】レーザ光源は、主面を有するサブマウントと、サブマウントの主面に支持され、レーザビームを出射する端面を有する半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子の端面に対向して配置される光学部材と、サブマウントの主面に支持され、光学部材を支持する支持部材と、支持部材と光学部材とを接合する接合部材と、を備える。支持部材は、非金属材料から形成されている本体であって、接合部材を介して光学部材に接合される前面と、前面の反対側の背面と、サブマウントに支持される下面と、下面の反対側の上面と、前面、背面、下面および上面と交わる2つの側面と、を有する本体と、上面に設けられた第1金属膜と、を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するサブマウントと、
前記サブマウントの前記主面に支持され、レーザビームを出射する端面を有する半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子の前記端面に対向して配置される光学部材と、
前記サブマウントの前記主面に支持され、前記光学部材を支持する支持部材と、
前記支持部材と前記光学部材とを接合する接合部材と、
を備え、
前記支持部材は、
非金属材料から形成されている本体であって、
前記接合部材を介して前記光学部材に接合される前面と、
前記前面の反対側の背面と、
前記サブマウントに支持される下面と、
前記下面の反対側の上面と、
前記前面、前記背面、前記下面および前記上面と交わる2つの側面と、
を有する本体と、
前記上面に設けられた第1金属膜と、
を有する、レーザ光源。
【請求項2】
前記本体は、一対の柱状部と、前記一対の柱状部の上部を連結する連結部とを備え、
前記本体の前記前面は、前記一対の柱状部の前面と、前記連結部の前面とを含み、
前記本体の前記背面は、前記一対の柱状部の背面と、前記連結部の背面とを含み、
前記本体の前記下面は、前記一対の柱状部の下面を含み、
前記本体の前記上面は、前記一対の柱状部の上面と、前記連結部の上面とを含み、
前記本体の前記2つの側面は、前記一対の柱状部の外側面を含む、請求項1に記載のレーザ光源。
【請求項3】
前記第1金属膜は、少なくとも前記一対の柱状部の前記上面に設けられている、請求項2に記載のレーザ光源。
【請求項4】
前記支持部材は、前記本体の前記背面または前記本体の前記側面に設けられた第2金属膜をさらに有する、請求項2に記載のレーザ光源。
【請求項5】
前記第2金属膜は、少なくとも前記一対の柱状部の前記背面に設けられており、
前記2つの側面には金属膜が設けられていない、請求項4に記載のレーザ光源。
【請求項6】
前記第2金属膜は、前記2つの側面に設けられており、
前記一対の柱状部の前記背面には金属膜が設けられていない、請求項4に記載のレーザ光源。
【請求項7】
前記支持部材は、前記連結部の下面に設けられた第3金属膜および/または、前記一対の柱状部の内側面に設けられた第4金属膜をさらに有する、請求項2から6のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【請求項8】
前記支持部材は、前記本体の前記前面に設けられた第5金属膜をさらに有し、
前記第1金属膜および/または前記第2金属膜は、Tiから形成されており、
前記第5金属膜は、Ti、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造を有する、請求項4から6のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【請求項9】
前記支持部材は、前記本体の前記前面に設けられた第5金属膜をさらに有し、
前記第5金属膜は、Al、PdおよびAuまたはNi、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【請求項10】
前記第1金属膜の面積は、前記本体の上面の面積の20%以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【請求項11】
半導体レーザ素子および支持部材が接合されたサブマウントと、光学部材と、を用意する工程と、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程と、
を備え、
前記支持部材は、非金属材料から形成されている本体であって、
前記光学部材に接合される前面と、
前記前面の反対側の背面と、
前記サブマウントと接合される下面と、
前記下面の反対側の上面と、
前記前面、前記背面、前記下面および前記上面と交わる2つの側面と、
を有する本体と、
前記上面に設けられた第1金属膜と、
前記背面または前記側面の一方に設けられた第2金属膜と、
を有し、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記背面または前記側面のうち、前記第2金属膜が設けられていない他方にレーザ光を照射し、前記光学部材と前記支持部材との間に配置された接合材を溶融または焼結することを含む、レーザ光源の製造方法。
【請求項12】
前記第2金属膜は、前記背面に設けられ、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記側面にレーザ光を照射し、前記接合材を溶融または焼結することを含む、請求項11に記載のレーザ光源の製造方法。
【請求項13】
前記第2金属膜は、前記側面に設けられ、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記背面にレーザ光を照射し、前記接合材を溶融または焼結することを含む、請求項11に記載のレーザ光源の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光源およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端面出射型の半導体レーザ素子と、レンズ部材と、レンズ部材を支持するレンズ支持部と、半導体レーザ素子を支持するサブマウントとを有するレーザ光源が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光源のさらなる高出力化が求められている。
【0005】
本開示は、高出力化に適したレーザ光源およびそのようなレーザ光源の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のレーザ光源は、例示的な実施形態において、主面を有するサブマウントと、前記サブマウントの前記主面に支持され、レーザビームを出射する端面を有する半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子の前記端面に対向して配置される光学部材と、前記サブマウントの前記主面に支持され、前記光学部材を支持する支持部材と、前記支持部材と前記光学部材とを接合する接合部材と、を備え、前記支持部材は、非金属材料から形成されている本体であって、前記接合部材を介して前記光学部材に接合される前面と、前記前面の反対側の背面と、前記サブマウントに支持される下面と、前記下面の反対側の上面と、前記前面、前記背面、前記下面および前記上面と交わる2つの側面と、を有する本体と、前記上面に設けられた第1金属膜と、を有する。
【0007】
本開示のレーザ光源の製造方法は、例示的な実施形態において、半導体レーザ素子および支持部材が接合されたサブマウントと、光学部材と、を用意する工程と、前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程と、を備え、前記支持部材は、非金属材料から形成されている本体であって、前記光学部材に接合される前面と、前記前面の反対側の背面と、前記サブマウントと接合される下面と、前記下面の反対側の上面と、前記前面、前記背面、前記下面および前記上面と交わる2つの側面と、を有する本体と、前記上面に設けられた第1金属膜と、前記背面または前記側面の一方に設けられた第2金属膜と、を有し、前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記背面または前記側面のうち、前記第2金属膜が設けられていない他方にレーザ光を照射し、前記光学部材と前記支持部材との間に配置された接合材を溶融または焼結することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の実施形態によれば、高出力化に適したレーザ光源およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の製造方法を説明するための模式的な図である。
【
図1C】
図1Cは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図1D】
図1Dは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図1E】
図1Eは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の他の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の構成例を模式的に示す図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の構成例を模式的に示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の構成例を模式的に示す図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の製造方法を説明するための模式的な図である。
【
図5】
図5は、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の構成例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の例示的な実施形態によるレーザ光源の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態による発光装置を説明する。複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を示す。
【0011】
以下は、本発明の技術思想を具体化するために例示しているのであって、本発明を以下に限定しない。また、構成要素のサイズ、材質、形状、その相対的配置などの記載は、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図している。各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、理解を容易にするなどのために誇張している場合がある。
【0012】
また、本明細書または特許請求の範囲において、ある構成要素に関し、これに該当する構成要素が複数あり、それぞれを区別して表現する場合に、その構成要素の頭に“第1”、“第2”と付記して区別することがある。本明細書と特許請求の範囲とで区別する対象や観点が異なる場合、本明細書と特許請求の範囲との間で、同一の付記が、同一の対象を指さない場合がある。
【0013】
[レーザ光源]
(実施形態1)
図1Aを参照して、本開示の実施形態1によるレーザ光源の例を説明する。
図1Aは、本開示の実施形態1によるレーザ光源100Aの構成例を示す模式的な分解斜視図である。
【0014】
図1Aに示されるように、レーザ光源100Aは、サブマウント10と、半導体レーザ素子20と、光学部材40と、支持部材30Aと、支持部材30Aと光学部材40とを接合する接合部材52とを備える。サブマウント10は、主面10s1を有する。半導体レーザ素子20は、サブマウント10の主面10s1に支持されており、レーザビームを出射する端面20eを有する。光学部材40は、半導体レーザ素子20の端面20eに対向して配置されている。支持部材30Aは、サブマウント10の主面10s1に支持されており、光学部材40を支持する。支持部材30Aは、非金属材料から形成されている本体32と、第1金属膜34aとを有する。支持部材30Aの本体32は、接合部材52を介して光学部材40に接合される前面32fと、前面32fの反対側の背面32rと、サブマウント10に支持される下面32bと、下面32bの反対側の上面32tと、前面32f、背面32r、下面32bおよび上面32tと交わる2つの側面32s1および32s2とを有する。第1金属膜34aは、本体32の上面32tに設けられている。支持部材30Aの本体32は、光を透過、散乱、または吸収する非金属材料から形成されており、例えばセラミックスから形成されている。
【0015】
レーザ光源100Aが高出力化に適している理由を、レーザ光源100Aの製造方法を説明しながら説明する。
図1Bは、レーザ光源100Aの製造方法を説明するための模式的な図である。
【0016】
まず、半導体レーザ素子20および支持部材30Aが接合されたサブマウント10と、光学部材40とを用意する。
【0017】
続いて、
図1Bに示されるように、光学部材40と、支持部材30Aとを接合する。
図1Bに示す白抜きの矢印は、加熱用のレーザ光(以下、「加熱レーザ光」と称する。)の入射方向を模式的に表す。支持部材30Aと光学部材40とを接合する工程において、例えば、加熱レーザ光で支持部材30Aの本体32の側面32s1および32s2を照射する。これにより、本体32の前面32fと光学部材40との間に配置された接合材に本体32を介して熱が伝わり、接合材が溶融または焼結され、支持部材30Aと光学部材40とを接合する接合部材52が形成される。
【0018】
高出力のレーザ光源において、支持部材を支持するサブマウントは高い放熱性を有する必要がある。しかしながら、サブマウントの放熱性が高いと、加熱レーザ光を照射したとき、支持部材からサブマウントを介した放熱が促進され、光学部材と支持部材との接合工程における、加熱レーザ光の熱利用効率は低下することになる。加熱レーザ光の熱利用効率の低下を補うために加熱レーザ光の出力を上げると、接合材に過度の熱が加わり、接合材が突沸する場合がある。接合材が突沸すると、飛散し、光学部材に付着する場合がある。光学部材において、半導体レーザ素子20から出射したレーザ光が照射される位置に接合材が付着すると、接合材はレーザ光を吸収して発熱し、光学部材を焼損させる場合もある。これに対して、レーザ光源100Aは、支持部材30Aに第1金属膜34aを有することによって、以下で説明するように、加熱レーザ光の熱の利用効率を向上させることができる。このため、放熱性の高いサブマウント10を用いても、加熱レーザ光の出力の増加を抑えつつ、支持部材30Aと光学部材40とを接合することができる。加熱レーザ光の出力の増加が抑えられているため、接合材の飛散は抑制される。レーザ光源100Aは、放熱性の高いサブマウント10を用いることが可能であるので、出力を高めることが可能であり、高出力化に適している。
【0019】
加熱レーザ光を照射したとき、加熱レーザ光が本体32の表面で散乱されることによって、光学部材40と支持部材30Aとの接合工程における、加熱レーザ光の熱利用効率が低下し得る。本体32が例えばアルミナで形成されていると、加熱レーザ光が、表面に形成されている結晶粒界によって散乱される。支持部材30Aが第1金属膜34aを有することによって、本体32の表面で散乱された加熱レーザ光を第1金属膜34aに吸収させることができる。したがって、加熱レーザ光から接合材に伝えられる熱の利用効率が向上する。
【0020】
第1金属膜34aは、単層であってもよいし、複数の層を含む積層構造を有していてもよい。第1金属膜34aが単層である場合、第1金属膜34aは、加熱レーザ光の吸収率が高い金属から形成されていることが好ましい。例えば、加熱レーザ光の吸収率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。加熱レーザ光の吸収率が高い場合、加熱レーザ光から接合材に伝えられる熱の利用効率を向上させる効果が高い。例えば、加熱レーザ光を出射する光源としてYAGレーザ光源(波長1064nm)を用いる場合、第1金属膜34aは、例えば、Tiから形成されることが好ましい。Tiは、YAGレーザ光の吸収率が高く、熱の利用効率を向上させることができるからである。なお、第1金属膜34aで吸収された加熱レーザ光は熱に変わるため、加熱レーザ光の吸収率が低い金属から第1金属膜34aが形成されていても、第1金属膜34aを有さない場合と比較して、加熱レーザ光から接合材に伝えられる熱の利用効率を向上させることができる。第1金属膜34aが複数の層を含む場合、複数の層のうち本体32に最も近い層は、加熱レーザ光の吸収率が高い金属から形成されていることが好ましい。例えば、第1金属膜34aは、Ti膜を含む積層構造を有していてもよい。第1金属膜34aは、例えば、Ti、PdおよびAuをこの順で積層して形成された積層構造(Ti/Pd/Au)を有していてもよい。そのような第1金属膜34aは、本体32側から順に、Ti膜、Pd膜およびAu膜を含む。または、第1金属膜34aは、Ti、PtおよびAuをこの順で積層して形成された積層構造(Ti/Pt/Au)を有してもよい。そのような第1金属膜34aは、本体32側から順に、Ti膜、Pt膜およびAu膜を含む。第1金属膜34aが複数の層を含む場合、下地層(本体32側の層)として、Cr、Ti、Niなどの層を有し、中間層として、Pt、Pd、Ruなどの層を有してもよい。なお、第1金属膜34aの材料は上記の例に限られず、例えば加熱レーザ光の波長によって適宜選択され得る。
【0021】
レーザ光源100Aの製造工程において、光学部材40と支持部材30Aとを接合する工程において照射される加熱レーザ光のパワー密度は、例えば10kW/cm
2以上10000kW/cm
2以下であり得る。加熱レーザ光の照射時間は、例えば1ms以上50ms以下であり得る。加熱レーザ光の波長は特に制限がなく、紫外線、青色光、緑色光、赤色光、赤外光などを用いることができる。例えば、加熱レーザ光を出射する光源としてYAGレーザ光源(波長1064nm)を用いることができる。また、加熱レーザ光で支持部材30Aの側面32s1および32s2を照射する際、
図1Bに示す太線の矢印によって表されるように、支持部材30Aと光学部材40とが、半導体レーザ素子20の端面20eから出射されるレーザ光L1の光軸(点線)に対して平行な1つの軸に沿って互いに反対の方向から加圧されることにより、接合部材52を介して支持部材30Aと光学部材40とが接合される。
【0022】
第1金属膜34aは、例えば物理堆積法(例えば、スパッタリングまたは蒸着)によって形成される。第1金属膜34aは、めっき加工によって形成されてもよい。第1金属膜34aの厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下である。例えば、第1金属膜34aの厚さが0.5μm未満であると、支持部材30Aの本体32の表面状態によっては、第1金属膜34aが均一に形成されない場合がある。製造コストを削減する観点からは、第1金属膜34aの厚さが小さいことが好ましい。
【0023】
図1C、
図1Dおよび
図1Eを参照して、支持部材30Aの本体32の形状の例を説明する。
図1Cは、レーザ光源100Aの構成例を示す模式的な分解斜視図であり、支持部材30Aの本体32の前面32f側から見た斜視図である。
図1Dは、支持部材30Aを本体32の背面32r側から見た斜視図である。
図1Eは、支持部材30Aの各面を模式的に示す図である。
図1Cおよび
図1Dに示されるように、支持部材30Aの本体32は、一対の柱状部32A1および32A2と、一対の柱状部32A1および32A2の上部を連結する連結部32Bとを備える。
図1Dに示す一点鎖線は、一対の柱状部32A1および32A2と、連結部32Bとの境界の例を表す。支持部材30Aの本体32の前面32fは、
図1Cに示されるように、一対の柱状部32A1および32A2の前面32A1fおよび32A2fと、連結部32Bの前面32Bfとを含む。本体32の背面32rは、
図1Dに示されるように、一対の柱状部32A1および32A2の背面32A1rおよび32A2rと、連結部32Bの背面32Brとを含む。本体32の下面32bは、一対の柱状部32A1および32A2の下面32A1bおよび32A2bを含む。本体32の上面32tは、
図1Dに示されるように、一対の柱状部32A1および32A2の上面32A1tおよび32A2tと、連結部32Bの上面32Btとを含む。本体32の2つの側面32s1および32s2(
図1A参照)は、
図1Cおよび
図1Dに示されるように、一対の柱状部32A1および32A2の外側面32A1soおよび32A2soを含む。
【0024】
図1Cに示されるように、支持部材30Aは、本体32の前面32fに設けられた金属膜34e(「第5金属膜34e」ということがある。)をさらに有する。第5金属膜34eは、支持部材30Aと、支持部材30Aと光学部材40を接合するための接合部材52との間に設けられ得る。このような場合、第5金属膜34eによって、支持部材30Aと光学部材40の接合強度が向上される。第5金属膜34eは、上述した第1金属膜34aと同様の方法で形成され得る。第5金属膜34eは、本体32の前面32fの半分以上の領域を覆っていてもよい。第5金属膜34eは、本体32の前面32fのうち、光学部材40と接合される部分を含む領域にのみ設けられていてもよい。
【0025】
第5金属膜34eは、例えば、Ti、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造(Ti/Pd/Au)を有する。第1金属膜34aがTiから形成されている場合、第1金属膜34aを形成するためのTi膜と同じTi膜から、第5金属膜34eを構成するTi層が形成される。第5金属膜34eは、Ti層の上にさらに、Pd層およびAu層をこの順で積層させることによって得られる。このような場合、製造工程および製造コストを削減することができる。
【0026】
あるいは、第5金属膜34eは、第1金属膜34aと異なる金属から形成されてもよい。第5金属膜34eが複数の層を含む場合、複数の層のうち本体32に最も近い層は、加熱レーザ光の吸収率が第1金属膜34aよりも低い金属、または、加熱レーザ光の反射率が第1金属膜34aよりも高い金属から形成されていてもよい。このような場合、光学部材40と支持部材30Aとの接合工程において、支持部材30A全体への入熱を多くすることができるが、加熱レーザ光は、第5金属膜34eで吸収され難い、または第5金属膜34eで反射されやすいので、接合材への急激な入熱を抑制することができる。このため、接合材が過度に加熱されて飛散することを抑制することができる。また、第1金属膜34aなどのように、加熱レーザ光が照射されない面および/または他の部材との接合に寄与しない面に金属膜を設けることで、本体32の前面32f以外の面で熱を吸収しやすくなり、接合材への入熱を抑制する効果が向上する。加熱レーザ光の吸収率が低い金属(または加熱レーザ光の反射率が高い金属)としては、例えば、加熱レーザ光を出射する光源としてYAGレーザ光源(波長1064nm)を用いる場合、AlまたはNiが挙げられる。第5金属膜34eは、例えば、Al、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造(Al/Pd/Au)またはNi、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造(Ni/Pd/Au)を有してもよい。第5金属膜34eが単層である場合、第5金属膜34eは、加熱レーザ光の吸収率が第1金属膜34aよりも低い金属、または、加熱レーザ光の反射率が第1金属膜34aよりも高い金属から形成され得る。
【0027】
図1Eに示されるように、支持部材30Aは、一対の柱状部32A1および32A2の下面32A1bおよび32A2bに設けられた金属膜34f(「第6金属膜34f」ということがある。)をさらに有する。第6金属膜34fは、支持部材30Aと、サブマウント10との間に設けられ得る。支持部材30Aと、サブマウント10とは、接合部材によって接合されるが、第6金属膜34fによって、支持部材30Aとサブマウント10の接合強度が向上される。支持部材30Aとサブマウント10を接合するための接合部材は、接合部材52と同様の材料から形成され得る。
【0028】
第6金属膜34fは、上述した第1金属膜34aと同様の方法および同様の材料で形成され得る。第6金属膜34fは、例えば、第5金属膜34eと同じ材料から形成され、第5金属膜34eと同じ積層構造を有していてもよい。
【0029】
第6金属膜34fの面積および形状は、一対の柱状部32A1および32A2の下面32A1bおよび32A2bの一部に形成される例に限定されず、適宜変更され得る。第6金属膜34fは、一対の柱状部32A1および32A2の下面32A1bおよび32A2bのほぼ全面に設けられていてもよい。第6金属膜34fの面積が小さい場合、加熱レーザ光が照射されたとき、サブマウント10への放熱が抑制されるので、加熱レーザ光から接合材に伝えられる熱の利用効率の低下が抑制される。ただし、第6金属膜34fの面積が、一対の柱状部32A1および32A2の下面32A1bおよび32A2bの面積に対して小さ過ぎると、支持部材30Aとサブマウント10の接合強度が十分に得られない場合があるので、第6金属膜34fの面積は、支持部材30Aとサブマウント10の接合強度が得られる程度に大きいことが好ましい。例えば、下面32A1bまたは32A2bに設けられている第6金属膜34fの面積は、下面32A1bまたは32A2bの面積に対して、それぞれ70%以上であることが好ましい。
【0030】
実施形態1では、支持部材30Aの本体32の前面32fおよび本体32の背面32rは、XY平面に平行な面であり、支持部材30Aの本体32の下面32bおよび本体32の上面32tは、XZ平面に平行な面であり、支持部材30Aの本体32の2つの側面32s1および32s2は、YZ平面に平行な面である。したがって、一対の柱状部32A1および32A2の前面32A1fおよび32A2f、連結部32Bの前面32Bf、一対の柱状部32A1および32A2の背面32A1rおよび32A2r、ならびに、連結部32Bの背面32Brは、XY平面に平行な面である。一対の柱状部32A1および32A2の下面32A1bおよび32A2b、連結部32Bの下面32Bb、一対の柱状部32A1および32A2の上面32A1tおよび32A2t、ならびに、連結部32Bの上面32Btは、XZ平面に平行な面である。一対の柱状部32A1および32A2の外側面32A1soおよび32A2soは、YZ平面に平行な面である。一対の柱状部32A1および32A2の内側面32A1siおよび32A2siも、YZ平面に平行な面である。ただし、図示される例は、本開示の実施形態によるレーザ光源が有する支持部材の一例に過ぎず、支持部材の形状は適宜変更され得る。
【0031】
レーザ光源100Aにおいては、第1金属膜34aは、支持部材30Aの本体32の上面32tの一部にのみ形成されている。この例では、第1金属膜34aは、少なくとも一対の柱状部32A1および32A2の上面32A1tおよび32A2tに設けられている。この例では、連結部32Bの上面32Btには金属膜が設けられていない。第1金属膜34aの面積および形状は、一対の柱状部32A1および32A2の上面32A1tおよび32A2tの一部に形成される例に限定されず、適宜変更され得る。第1金属膜34aは、本体32の上面32tのうち、加熱レーザ光が照射される位置(ここでは、本体32の2つの側面32s1および32s2)に近い領域を含む領域に形成されていることが好ましい。例えば、本体32の上面32tのほぼ全面に物理堆積法により金属膜を形成した後、金属膜を所望の形状にパターニングすることで、上面32tの一部にのみ形成された第1金属膜34aを得ることができる。あるいは、マスク等を用いて、本体32の上面32tの所望の領域にのみ金属膜を形成することによって、第1金属膜34aを形成してもよい。加熱レーザ光の熱利用効率を向上させる観点から、第1金属膜34aの面積は、上面32tの面積の例えば20%以上であり、例えば50%以上であることが好ましい。
【0032】
図2は、本実施形態によるレーザ光源の他の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
図2に示されるレーザ光源100A1は、支持部材30A1の本体32の上面32tに設けられた第1金属膜34aが、上面32tのほぼ全面を覆うように形成されている点において、支持部材30Aを有するレーザ光源100Aと異なる。レーザ光源100A1は、レーザ光源100Aと同様の理由で、高出力化に適している。レーザ光源100A1は、第1金属膜34aの面積がレーザ光源100Aよりも大きいので、レーザ光源100Aよりも効果的に加熱レーザ光の熱利用効率を向上させることができる。
【0033】
(実施形態2)
図3Aを参照して、本開示の実施形態2によるレーザ光源が有する支持部材の例を説明する。
図3Aは、実施形態2によるレーザ光源が有する支持部材30Bの各面を模式的に示す図である。なお、実施形態2によるレーザ光源の、光学部材40側から見た分解斜視図は、
図1Aに示したレーザ光源100Aの分解斜視図と同じであるので図示を省略する。
図3Aに示されるように、支持部材30Bは、本体32の背面32rに設けられた第2金属膜34b1をさらに有する点において、レーザ光源100Aが有する支持部材30Aと異なる。第2金属膜34b1は、上述した第1金属膜34aと同様の方法および同様の材料で形成され得る。
【0034】
支持部材30Bを有するレーザ光源は、レーザ光源100Aと同様の理由で、高出力化に適している。支持部材30Bを有するレーザ光源においては、支持部材30Bが、第1金属膜34aに加えて、第2金属膜34b1を有することによって、加熱レーザ光の熱利用効率をいっそう向上させることができる。ここでは、加熱レーザ光が照射される本体32の側面32s1および32s2には金属膜が設けられていない。第2金属膜34b1は、本体32の背面32rの少なくとも一部に設けられていればよい。この例では、第2金属膜34b1は、少なくとも一対の柱状部32A1および32A2の背面32A1rおよび32A2rに設けられており、連結部32Bの背面32Brには金属膜が設けられていない。
【0035】
第2金属膜34b1の面積および形状は、適宜変更され得る。例えば、第2金属膜34b1は、本体32の背面32rの半分以上の領域を覆っていてもよい。すなわち、第2金属膜34b1の面積は、背面32rの面積の50%以上であってもよい。第2金属膜34b1は、本体32の背面32rのうち、加熱レーザ光が照射される位置(ここでは、本体32の2つの側面32s1および32s2)に近い領域を含む領域に形成されていることが好ましい。あるいは、
図3Bに示される例のように、第2金属膜34b1は、背面32rのほぼ全面に形成されていてもよい。
【0036】
(実施形態3)
図4Aおよび
図4Bを参照して、本開示の実施形態3によるレーザ光源の例を説明する。
図4Aは、実施形態3によるレーザ光源100Cの構成例を示す模式的な分解斜視図である。
図4Bは、レーザ光源100Cが有する支持部材30Cの各面を模式的に示す図である。支持部材30Cは、支持部材30Bが有する、背面32rに設けられた第2金属膜34b1に代えて、本体32の2つの側面32s1および32s2に設けられた第2金属膜34b2を有する。図示される例では、第2金属膜34b2は、一対の柱状部32A1および32A2の外側面32A1soおよび32A2soに設けられている。第2金属膜34b2は、上述した第1金属膜34aと同様の方法および同様の材料で形成され得る。
【0037】
図4Cは、レーザ光源100Cの製造方法を説明するための模式的な上面図である。上述したように、実施形態1によるレーザ光源100Aの製造方法においては、光学部材40と支持部材30Aとを接合する工程において、支持部材30Aの側面32s1および32s2に加熱レーザ光を照射することによって、光学部材40と支持部材30Aとの間に配置された接合材を溶融または焼結する。これに対して、本実施形態によるレーザ光源100Cの製造方法は、
図4Cに示されるように、光学部材40と支持部材30Cとを接合する工程において、支持部材30Cの背面32rに加熱レーザ光を照射することによって、光学部材40と支持部材30Cとの間に配置された接合材を溶融または焼結する点において、レーザ光源100Aの製造方法と異なる。
図4Cに示す白抜きの矢印は、加熱レーザ光の入射方向を模式的に表す。この例では、加熱レーザ光は、一対の柱状部32A1および32A2の背面32A1rおよび32A2rに照射される。
【0038】
レーザ光源100Cは、レーザ光源100Aと同様の理由で、高出力化に適している。
【0039】
上述した製造方法で製造されるレーザ光源100Cにおいて、支持部材30Cは、加熱レーザ光が照射される本体32の背面32rには金属膜が設けられていないことが好ましい。この例では、
図4Bに示されるように、加熱レーザ光が照射される、一対の柱状部32A1および32A2の背面32A1rおよび32A2rには、金属膜が設けられていない。この場合、加熱レーザ光が照射されない、連結部32Bの背面32Brには、金属膜が設けられていてもよい。
【0040】
第2金属膜34b2の面積および形状は適宜変更され得る。第2金属膜34b2は、少なくとも本体32の側面32s1または32s2の一方の一部に設けられていればよい。
【0041】
(実施形態4)
図5を参照して、本開示の実施形態4によるレーザ光源が有する支持部材の例を説明する。
図5は、実施形態4によるレーザ光源が有する支持部材30Dの各面を模式的に示す図である。なお、実施形態4によるレーザ光源の、光学部材40側から見た分解斜視図は、
図1Aに示すレーザ光源100Aの分解斜視図と同じであるので図示を省略する。
図5に示されるように、支持部材30Dは、連結部32Bの下面32Bbに設けられた第3金属膜34cをさらに有する点において、レーザ光源100Aが有する支持部材30Aと異なる。第3金属膜34cは、上述した第1金属膜34aと同様の方法および同様の材料で形成され得る。支持部材30Dを有するレーザ光源は、レーザ光源100Aと同様の方法で製造される。支持部材30Dを有するレーザ光源は、レーザ光源100Aと同様の理由で、高出力化に適している。
【0042】
(実施形態5)
図6を参照して、本開示の実施形態5によるレーザ光源の例を説明する。
図6は、実施形態5によるレーザ光源100Eを模式的に示す分解斜視図である。レーザ光源100Eが有する支持部材30Eは、一対の柱状部32A1および32A2の内側面32A1siおよび32A2siに設けられた第4金属膜34dをさらに有する点において、レーザ光源100Aが有する支持部材30Aと異なる。第4金属膜34dは、上述した第1金属膜34aと同様の方法および同様の材料で形成され得る。支持部材30Eを有するレーザ光源は、レーザ光源100Aと同様の方法で製造される。支持部材30Eを有するレーザ光源は、レーザ光源100Aと同様の理由で、高出力化に適している。
【0043】
上述した実施形態1~5は適宜組み合わせてもよい。
【0044】
本開示のレーザ光源が有する支持部材は、非金属材料から形成された本体が有する面のうち、加熱レーザ光が照射される面および他の部材と接合される面以外の面のいずれか少なくとも1つに設けられた金属膜(上面に設けられた第1金属膜を含む)を有する。このような金属膜を有することによって、加熱レーザ光の熱の利用効率が向上される。加熱レーザ光の熱の利用効率を向上させるための金属膜は、具体的には、支持部材の本体が有する面のうち、例えば、光学部材と接合される前面、前面の反対側の背面、サブマウントと対向する下面、下面の反対側の上面、および2つの側面のうち、加熱レーザ光が照射される面(側面または背面)と、他の部材と接合される面(前面および下面)とを除く面の少なくとも一部に設けられる。このような金属膜の面積の総和は、加熱レーザ光から接合材に伝えられる熱の利用効率を向上させる観点から、大きいことが好ましい。一方で、支持部材の本体が有する面のうち、他の部材と接合される面(前面および下面)には、支持部材を他の部材と接合するための金属膜が設けられている。支持部材を他の部材と接合するための金属膜の面積は、他の部材との接合強度が担保される範囲で、小さいことが好ましい。なお、支持部材の本体が有する面のうち、少なくとも、加熱レーザ光が照射される面(側面または背面)には、金属膜が設けられておらず、非金属材料から形成された本体の面が露出されている。
【0045】
以下に、サブマウント10、半導体レーザ素子20、支持部材30、接合部材52、および光学部材40について、材料、形状、およびサイズ等の詳細を説明する。
【0046】
[サブマウント10]
サブマウント10は、例えば直方体であり得る。サブマウント10の一部または全体は、例えば、AlN、SiC、アルミナ、CuW、Cu、Cu/AlN/Cuの積層構造、ダイヤモンド、および金属マトリクス複合材料(Metal Matrics Compound:MMC)からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。MMCは、例えば、Cu、AgまたはAlからなる群から選択される少なくとも1つとダイヤモンドを含む。あるいは、サブマウント10の一部または全体は、他の一般的な材料から形成されていてもよい。なかでも、サブマウント10は、AlNまたはダイヤモンドから形成されることが好ましい。AlNからなるサブマウント10の熱伝導率は、例えば150[W/m・K]以上230[W/m・K]以下であり得、ダイヤモンドからなるサブマウント10の熱伝導率は、例えば1200[W/m・K]以上2000[W/m・K]以下であり得る。そのような熱伝導率により、サブマウント10は、駆動時に半導体レーザ素子20から発せられる熱を、レーザ光源を収容するパッケージに効率的に伝えることができる。サブマウント10の熱膨張率は、例えば2×10-6[1/K]以上2×10-5[1/K]以下であり得る。そのような熱膨張率により、サブマウント10の上に半導体レーザ素子20を接合材で接合させる場合に加えられる熱によってサブマウント10が変形することを抑制できる。サブマウント10のX方向におけるサイズは、例えば1mm以上3mm以下であり、Y方向におけるサイズは、例えば0.1mm以上0.5mm以下であり、Z方向におけるサイズは、例えば1mm以上6mm以下である。サブマウント10のサイズは、半導体レーザ素子20のサイズや出力に対して設計される。半導体レーザ素子20のサイズが大きくなれば、半導体レーザ素子20の出力が大きくなるため、サブマウント10のサイズを大きくし、放熱性を向上させることが好ましい。
【0047】
サブマウント10は、XZ平面に平行な主面10s1と、主面10s1の反対側の下面10s4と、光学部材40側に位置し、前面10s2とを有する。サブマウント10の主面10s1および下面10s4には、めっき加工を施すことにより、厚さが例えば0.5μm以上10μm以下である金属膜が形成されていてもよい。サブマウント10の主面10s1に形成される金属膜は、サブマウント10と半導体レーザ素子20とを接合部材を介して接合する際、および半導体レーザ素子20に電力を供給する際に役立つ。サブマウント10の下面10s4に形成される金属膜は、サブマウント10とサブマウント10を支持する基体とを接合部材を介して接合する際に役立つ。
【0048】
[半導体レーザ素子20]
半導体レーザ素子20は、可視領域における紫色、青色、緑色もしくは赤色のレーザビーム、または不可視領域における赤外もしくは紫外のレーザビームを出射し得る。紫色の発光ピーク波長は、350nm以上420nm以下の範囲内にあることが好ましく、400nm以上415nm以下の範囲内にあることがより好ましい。青色光の発光ピーク波長は、420nmより大きく495nm以下の範囲内にあることが好ましく、440nm以上475nm以下の範囲内にあることがより好ましい。緑色光の発光ピーク波長は、495nmより大きく570nm以下の範囲内にあることが好ましく、510nm以上550nm以下の範囲内にあることがより好ましい。紫色、青色および緑色のレーザビームを出射するレーザダイオードとしては、窒化物半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体材料としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色光の発光ピーク波長は、605nm以上750nm以下の範囲内にあることが好ましく、610nm以上700nm以下の範囲内にあることがより好ましい。赤色のレーザビームを出射するレーザダイオードとしては、例えば、InAlGaP系、GaInP系、GaAs系およびAlGaAs系の半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。
【0049】
半導体レーザ素子20のX方向におけるサイズは例えば50μm以上500μm以下であり、Y方向におけるサイズは例えば20μm以上150μm以下であり、Z方向におけるサイズは例えば50μm以上4mm以下であり得る。フェイスダウン実装において、半導体レーザ素子20の端面20eとサブマウント10の前面10s2とのZ方向における距離は、例えば2μm以上50μm以下であり得る。
【0050】
半導体レーザ素子20の上面および下面の各々には、電極が設けられている。半導体レーザ素子20の前述した半導体積層構造のうち、p型クラッド層に電気的に接続された電極を「p側電極」と称し、n型基板に電気的に接続された電極を「n側電極」と称する。p側電極とn側電極とに電圧を印加して閾値以上の電流を流すことにより、半導体レーザ素子20は、端面20eからレーザビームを出射する。レーザビームは広がりを有し、端面20eに対して平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。FFPとは、端面20eから離れた位置における出射光の形状や光強度分布である。この光強度分布において、ビーム中心の光強度のピークパワーに対して1/e2以上の強度を有する光を、主要部分の光とする。eは自然対数の底である。
【0051】
半導体レーザ素子20から出射されるレーザビームのFFPの形状は楕円形状である。当該楕円形状のうち、長軸は、半導体積層構造の積層方向に対して平行であり、短軸は、端面20eが延びる方向に対して平行である。端面20eが延びる方向をFFPの水平方向、積層方向をFFPの垂直方向とする。
【0052】
また、FFPの光強度分布に基づいて、光強度分布の半値全幅に相当する角度を、その半導体レーザ素子20から出射されるレーザビームの広がり角とする。FFPのうち、垂直方向および水平方向の軸は、それぞれ速軸および遅軸と呼ばれている。
【0053】
[支持部材30A~30E]
支持部材30A~30Eを総称して支持部材30という。支持部材30の本体32は、非金属材料(例えばセラミックス)から形成されており、例えば、AlN、SiC、アルミナ、ガラス、Si、ジルコニアなどから形成され得る。本体32の一対の柱状部32A1および32A2の各々のX方向におけるサイズは、0.05mm以上1mm以下であり、Y方向におけるサイズは、例えば0.5mm以上3mm以下であり、Z方向におけるサイズは、例えば0.2mm以上1mm以下であり得る。
【0054】
支持部材30の本体32の熱伝導率は、例えば、光学部材40の熱伝導率よりも高く、サブマウント10の熱伝導率以下である。このような熱伝導率の大小関係により、接合部材52に加えられた熱が本体32を介してサブマウント10に放熱しやすくなり、光学部材40の熱による劣化を抑制することができる。サブマウント10の下面10s4がヒートシンクに接触している場合、加熱レーザ光の熱は、支持部材30の本体32からサブマウント10を介してヒートシンクに伝えられる。したがって、光学部材40を支持部材30に接合する工程の際に、光学部材40を歩留まりよく支持部材30に接合することができる。
【0055】
[接合部材52]
接合部材52は、例えば焼結が可能な材料から形成され得る。焼結では、金属の粒子または金属の粉末を当該金属の融点よりも低い温度で加熱して焼き固めることにより、部材同士が接合される。焼結温度は、粒子を組成する金属の融点よりも低く、例えば120℃以上300℃以下であり得る。焼結温度が接合材の接合温度に相当する。
【0056】
焼結が可能な材料は、例えば、Ag粒子、Cu粒子、Au粒子、およびその他の貴金属粒子からなる群から選択される少なくとも1種類の金属粒子と、有機バインダとを含む金属ペーストであり得る。有機バインダを含む金属ペーストは柔軟性を有するので、支持部材30と光学部材40との接合の際、光学部材40の位置を微調整することができる。
【0057】
光学部材40の位置を微調整する必要がないのであれば、接合部材52は、はんだ付けまたはろう付けが可能な材料から形成されていてもよい。はんだ付けまたはろう付けでは、はんだ材またはろう材を昇温によって溶融し、降温によって固化させることにより、部材同士が接合される。はんだ材の溶融温度は、例えば180℃以上300℃以下であり得る。ろう材の溶融温度は、例えば500℃以上900℃以下であり得る。はんだ材またはろう材の溶融温度が接合材の接合温度に相当する。はんだ材またはろう材を溶融することによって接合部材52を形成する場合は、焼結可能な材料を焼結することによって接合部材52を形成する場合と比較して、接合温度が高いため、接合材が突沸し、飛散する可能性を低減することができる。
【0058】
はんだ付けが可能な接合材は、例えばAuSn、SnCu、SnAg、およびSnAgCuからなる群から選択される少なくとも1つのはんだ材であり得る。ろう付けが可能な接合材は、例えば、金ろう材、錫ろう材、および銀ろう材からなる群から選択される少なくとも1つのろう材であり得る。
【0059】
接合部材52の厚さ(すなわち、接合部材52のZ方向の長さ)は、例えば1μm以上30μm以下であり得る。これにより、接合強度を高めることができる。また、接合を短時間で終えることができる。
【0060】
なお、図示される例において、接合部材52の平面形状(すなわち、接合部材52のXY平面における形状)は矩形であるが、矩形に限定されない。接合部材52の平面形状は、例えば円であってもよいし、楕円であってもよい。
【0061】
[光学部材40]
光学部材40は、例えば、ガラス、石英、合成石英、サファイア、および透光性セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。あるいは、光学部材40は、他の一般的な材料から形成され得る。
【0062】
光学部材40は、速軸コリメートレンズ(FACレンズ)または遅軸コリメートレンズ(SACレンズ)などのコリメートレンズであってもよい。光学部材40がコリメートレンズである場合、半導体レーザ素子20の端面20eに近い位置にコリメートレンズを設けることができる。結果、半導体レーザ素子20から出射されるレーザビームが広がる前にレーザビームをコリメートできるため、光学部材40を小型化することができる。
【0063】
光学部材40のうち、支持部材30の一対の柱状部32A1および32A2に対向する面には、例えば、めっき加工、蒸着などを施すことにより、金属膜が形成され得る。このような金属膜の材料は、上述した第1金属膜34aの材料と同じであってよい。
【0064】
光学部材40のX方向におけるサイズは、例えば、支持部材30のX方向におけるサイズに等しくてもよいし、支持部材30のX方向におけるサイズよりも大きくてもよいし小さくてもよい。ただし、光学部材40のX方向におけるサイズは、支持部材30の柱状部32A1と柱状部32A2とが互いに対向する面のX方向における距離よりも大きい。光学部材40のY方向における最大のサイズは、例えば0.2mm以上3mm以下であり、Z方向における最大のサイズは、例えば0.2mm以上3mm以下であり得る。
【0065】
本開示は、以下の項目に記載のレーザ光源およびレーザ光源の製造方法を含む。
【0066】
[項目1]
主面を有するサブマウントと、
前記サブマウントの前記主面に支持され、レーザビームを出射する端面を有する半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子の前記端面に対向して配置される光学部材と、
前記サブマウントの前記主面に支持され、前記光学部材を支持する支持部材と、
前記支持部材と前記光学部材とを接合する接合部材と、
を備え、
前記支持部材は、
非金属材料から形成されている本体であって、
前記接合部材を介して前記光学部材に接合される前面と、
前記前面の反対側の背面と、
前記サブマウントに支持される下面と、
前記下面の反対側の上面と、
前記前面、前記背面、前記下面および前記上面と交わる2つの側面と、
を有する本体と、
前記上面に設けられた第1金属膜と、
を有する、レーザ光源。
【0067】
[項目2]
前記本体は、一対の柱状部と、前記一対の柱状部の上部を連結する連結部とを備え、
前記本体の前記前面は、前記一対の柱状部の前面と、前記連結部の前面とを含み、
前記本体の前記背面は、前記一対の柱状部の背面と、前記連結部の背面とを含み、
前記本体の前記下面は、前記一対の柱状部の下面を含み、
前記本体の前記上面は、前記一対の柱状部の上面と、前記連結部の上面とを含み、
前記本体の前記2つの側面は、前記一対の柱状部の外側面を含む、項目1に記載のレーザ光源。
【0068】
[項目3]
前記第1金属膜は、少なくとも前記一対の柱状部の前記上面に設けられている、項目2に記載のレーザ光源。
【0069】
[項目4]
前記支持部材は、前記本体の前記背面または前記本体の前記側面に設けられた第2金属膜をさらに有する、項目2に記載のレーザ光源。
【0070】
[項目5]
前記第2金属膜は、少なくとも前記一対の柱状部の前記背面に設けられており、
前記2つの側面には金属膜が設けられていない、項目4に記載のレーザ光源。
【0071】
[項目6]
前記第2金属膜は、前記2つの側面に設けられており、
前記一対の柱状部の前記背面には金属膜が設けられていない、項目4に記載のレーザ光源。
【0072】
[項目7]
前記支持部材は、前記連結部の下面に設けられた第3金属膜および/または、前記一対の柱状部の内側面に設けられた第4金属膜をさらに有する、項目2から6のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【0073】
[項目8]
前記支持部材は、前記本体の前記前面に設けられた第5金属膜をさらに有し、
前記第1金属膜および/または前記第2金属膜は、Tiから形成されており、
前記第5金属膜は、Ti、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造を有する、項目4から7のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【0074】
[項目9]
前記支持部材は、前記本体の前記前面に設けられた第5金属膜をさらに有し、
前記第5金属膜は、Al、PdおよびAuまたはNi、PdおよびAuをこの順に積層して形成された積層構造を有する、項目1から7のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【0075】
[項目10]
前記第1金属膜の面積は、前記本体の上面の面積の20%以上である、項目1から6のいずれか1項に記載のレーザ光源。
【0076】
[項目11]
半導体レーザ素子および支持部材が接合されたサブマウントと、光学部材と、を用意する工程と、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程と、
を備え、
前記支持部材は、非金属材料から形成されている本体であって、
前記光学部材に接合される前面と、
前記前面の反対側の背面と、
前記サブマウントと接合される下面と、
前記下面の反対側の上面と、
前記前面、前記背面、前記下面および前記上面と交わる2つの側面と、
を有する本体と、
前記上面に設けられた第1金属膜と、
前記背面または前記側面の一方に設けられた第2金属膜と、
を有し、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記背面または前記側面のうち、前記第2金属膜が設けられていない他方にレーザ光を照射し、前記光学部材と前記支持部材との間に配置された接合材を溶融または焼結することを含む、レーザ光源の製造方法。
【0077】
[項目12]
前記第2金属膜は、前記背面に設けられ、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記側面にレーザ光を照射し、前記接合材を溶融または焼結することを含む、項目11に記載のレーザ光源の製造方法。
【0078】
[項目13]
前記第2金属膜は、前記側面に設けられ、
前記光学部材と前記支持部材とを接合する工程は、前記背面にレーザ光を照射し、前記接合材を溶融または焼結することを含む、項目11に記載のレーザ光源の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示のレーザ光源およびその製造方法は、加工、プロジェクタ、ディスプレイ、および照明器具など種々の用途に用いられるレーザ光源に適用され得る。
【符号の説明】
【0080】
10:サブマウント、20:半導体レーザ素子、30A~30E:支持部材、32:本体、34a~34f:金属膜、40:光学部材、52:接合部材、100A、100A1、100C、100E:レーザ光源