(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161834
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20241113BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076919
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
(72)【発明者】
【氏名】行森 大貴
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 香帆
(72)【発明者】
【氏名】奥田 綾乃
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AK17
4J036DC40
4J036JA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低誘電特性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ基を有するポリシロキサンと、式(1)-11、式(1)-12、式(1)-13又は式(1)-14で表される基を有する特定構造の化合物とを含む、硬化性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有するポリシロキサンと、下記式(1)で示された化合物とを含む、硬化性組成物。
【化1】
式中、Gは、有機基を表し、Xは、下記の一般式(1)-11、一般式(1)-12、一般式(1)-13又は一般式(1)-14で表される基を表す。
【化2】
式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよい。*は、炭素原子と結合する結合手を表す。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、不飽和炭素結合を含む官能基を有する、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
光ラジカル発生剤を更に含む、請求項2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、下記式(I)で示される構造単位、及び、下記式(II)で示される構造単位を含む、請求項2記載の硬化性組成物。
【化3】
式中、R
Aは、水素原子、水酸基、アルコキシ基、又は、炭化水素基を表し、R
Bは、エポキシ基を含む官能基を表す。
【化4】
式中、R
Cは、水素原子、水酸基、アルコキシ基、又は、炭化水素基を表し、R
Dは、不飽和二重結合を含む官能基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、フォトリソグラフィ法による微細加工が行われている。フォトリソグラフィ法は、シリコンウエハや銅張積層板等の基材上に感光性組成物からなる層を形成し、所定のパターンで光照射(露光)後、現像液にて未露光部又は露光部のいずれかを溶解除去し、パターンを形成する方法である。
【0003】
半導体装置を構成し、フォトリソグラフィ法に用いられる樹脂材料には、高い絶縁性能、薬品安定性、金属への密着性等が要求される。このような特性を満たすフォトリソグラフィ法に使用可能な材料として、ポリシロキサンが挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、フォトリソグラフィにより微細なパターン形成が可能な、特定の構造を有するポリシロキサン化合物及び光ラジカル発生剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体デバイス等の発展に伴い、微細な回路においても伝送損失を少なくするため低誘電特性を備えた硬化物を形成可能な組成物が求められているが、従来技術に係るポリシロキサンは、低誘電特性に劣る場合があった。
【0007】
そこで本発明は、低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な、ポリシロキサンを含有する硬化性組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のポリシロキサンと、特定の化合物とを組み合わせて配合した硬化性組成物によって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0009】
本発明のある形態は、エポキシ基を有するポリシロキサンと、下記式(1)で示された化合物とを含む、硬化性組成物である。
【化1】
(式中、Gは、有機基を表し、Xは、下記の一般式(1)-11、一般式(1)-12、一般式(1)-13又は一般式(1)-14で表される基を表す。)
【化2】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよい。*は、炭素原子と結合する結合手を表す。)
【0010】
前記ポリシロキサンは、不飽和炭素結合を含む官能基を有することが好ましい。
前記硬化性組成物は、光ラジカル発生剤を更に含むことが好ましい。
前記ポリシロキサンが、下記式(I)で示される構造単位、及び、下記式(II)で示される構造単位を含むことが好ましい。
【化3】
(式中、R
Aは、水素原子、水酸基、アルコキシ基、又は、炭化水素基を表し、R
Bは、エポキシ基を含む官能基を表す。)
【化4】
(式中、R
Cは、水素原子、水酸基、アルコキシ基、又は、炭化水素基を表し、R
Dは、不飽和二重結合を含む官能基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本開示において使用可能である。
【0013】
本開示において、「不飽和炭素結合」は、特に断らない限り、エチレン性またはアセチレン性の炭素間多重結合(二重結合または三重結合)を示す。
【0014】
本開示において、ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めたものである。GPCにおいては、Shodex K-805Lをカラムとして使用し、カラム温度を40℃、流量を1mL/min、溶離液をクロロホルム、標準物質をポリスチレンとする。
【0015】
本開示において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
【0016】
以下、硬化性組成物の成分について説明し、次いで、硬化性組成物の使用方法及び用途について説明する。
【0017】
<<<<硬化性組成物の成分>>>>
本開示の硬化性組成物は、特定の構造を有するポリシロキサンと、特定の化合物(塩基増殖剤)と、を含む。
本開示の硬化性組成物は、光ラジカル発生剤を含むことが好ましい。
また、本開示の硬化性組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0018】
<<<ポリシロキサン>>>
本開示に係るポリシロキサンは、エポキシ基を有する。このようなポリシロキサンを後述する塩基増殖剤と硬化反応させることで、低誘電特性等に優れた硬化物が得られる。
【0019】
エポキシ基を有するポリシロキサンは、好ましくは、後述する式(I)で示される構造単位を含むものが挙げられる。
【0020】
本開示に係るポリシロキサンは、不飽和炭素結合を含む官能基を有することが好ましい。ポリシロキサンが不飽和炭素結合を含むことで、光硬化可能となる。このようなポリシロキサンによれば、前述したエポキシ基による反応と光硬化反応との2つの硬化反応を実施することが可能となり、硬化性樹脂組成物がフォトリソグラフィによるパターン形成が可能であり、かつ低誘電特性等に優れた硬化物を得ることができる。
【0021】
エポキシ基及び不飽和炭素結合を含む官能基を有するポリシロキサンの具体的な構造としては、下記式(I)で示される構造単位、及び、下記式(II)で示される構造単位を含むものが挙げられる。
【0022】
【化5】
式中、R
Aは、水素原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数は、1~10、1~5、又は、1~3であることが好ましい。)、又は、炭化水素基(炭素数は、1~10、1~5、又は、1~3であることが好ましい。)を表し、R
Bは、エポキシ基を含む官能基を表す。
【0023】
式(I)のRBにおいて、エポキシ基は、側鎖末端に存在することが好ましい。より具体的には、RBは、下記式(I-1)で示された官能基であることが好ましく、下記式(I-2)で示された官能基であることがより好ましい。
【0024】
【0025】
式中、Rb1は、単結合、又は、ヘテロ原子(例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭化水素基(炭素数は、1~20、1~10、又は、1~5であることが好ましい。)を表す。
【0026】
【化7】
式中、R
b2は、炭化水素基(炭素数は、1~10、1~5、又は、2~5であることが好ましい。)を表し、R
b3は、炭化水素基(炭素数は、1~10、1~5、又は、1~3であることが好ましい。)を表す。
【0027】
【化8】
式中、R
Cは、水素原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数は、1~10、1~5、又は、1~3であることが好ましい。)、又は、炭化水素基(炭素数は、1~10、1~5、又は、1~3であることが好ましい。)を表し、R
Dは、不飽和二重結合を含む官能基を表す。
【0028】
式(II)のRDにおいて、不飽和炭素結合は、側鎖末端に存在することが好ましい。より具体的には、RDは、下記式(II-1)で示された官能基であることが好ましく、下記式(II-2)で示された官能基であることがより好ましい。
【0029】
【化9】
式中、R
d1は、単結合、又は、ヘテロ原子(例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭化水素基(炭素数は、1~10、1~5、又は、2~4であることが好ましい。)を表し、R
d2は、水素原子、又は、炭化水素基(炭素数は、1~5、又は、1~2であることが好ましい。)を表す。
【0030】
【化10】
式中、R
d3は、炭化水素基(炭素数は、1~10、1~5、又は、2~4であることが好ましい。)を表し、R
d2は、水素原子、又は、メチル基を表す。
【0031】
式(I)及び式(II)で示された構造単位を有するポリシロキサンは、式(I)で示された構造単位と式(II)で示された構造単位のシロキサン結合、式(I)で示した構造単位同士のシロキサン結合、及び、式(II)で示された構造単位同士のシロキサン結合等によって伸長した構造を有する。ポリシロキサンは、式(I)で示された構造単位と式(II)で示された構造単位とが所定の規則で配列されているブロック共重合体の形態であってもよいし、式(I)で示された構造単位と式(II)で示された構造単位とがランダムに配列されているランダム共重合体の形態であってもよい。
【0032】
本開示に係るポリシロキサンは、式(I)で示された構造単位、及び、式(II)で示された構造単位以外の構造を含んでいてもよい。ポリシロキサンに占める式(I)で示された構造単位の含有量、或いは、ポリシロキサンに占める式(I)で示された構造単位及び式(II)で示された構造単位の合計の含有量は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は、99質量%以上であることが好ましい。ポリシロキサンが、式(I)で示された構造単位及び式(II)で示された構造単位の両方を含む場合、式(I)で示された構造単位の繰り返し数xに対する式(II)で示された構造単位の繰り返し数yの比(y/x)は、0.05/0.95~0.70/0.30、又は、0.10/0.90~0.60/0.40であることが好ましい。
【0033】
別の表現によれば、本開示に係る好ましいポリシロキサンは、下記式(III)で示された構造を有する。
【0034】
【0035】
RA、RB、RC、及び、RDは、前述した通りである。x及びyは、ポリシロキサンの重量平均分子量等に応じて任意の値とすることができる。xに対するyの比(y/x)は、0.05/0.95~0.70/0.30、又は、0.10/0.90~0.60/0.40であることが好ましい。なお、式(III)は、ブロック共重合体のみを意味するものではなく、ランダム共重合体であるものも含まれる。
【0036】
ポリシロキサンは、網目構造を有していてもよい。例えば、式(I)及び式(II)で示された構造単位を有するポリシロキサンの一部において、式(I)のRA部分、及び/又は、式(II)のRC部分がシロキサン結合で置換され、別の構造単位と結合している網目構造を有していてもよい。
【0037】
ポリシロキサンの重量平均分子量は、2,000以上、又は、10,000以上であることが好ましく、また、50,000以下、35,000以下、又は、25,000以下であることが好ましい。また、ポリシロキサンの多分散指数(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.5~5.0であることが好ましく、1.5~2.0であることがより好ましい。
【0038】
<<ポリシロキサンの製造方法>>
<原料/モノマー>
エポキシ基を有するポロシロキサンは、例えば、下記式(I-A)で示されたシラン成分(A)を含むモノマーを重合させることで製造可能である。
また、エポキシ基及び不飽和二重結合を含む官能基を有するポロシロキサンは、例えば、下記式(I-A)で示されたシラン成分(A)と、下記式(II-A)で示されたシラン成分(B)とを含むモノマーを重合させることで製造可能である。
【0039】
【0040】
式中、R101は、水素原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数は、例えば、1~10、1~5、又は、1~3である。)または炭化水素基(炭素数は、例えば、1~10、1~5、又は、1~3である。)を表し、R102、R103は、各々独立して、水酸基又はアルコキシ基を表し、RBは、エポキシ基を含む官能基を表し、式(I)におけるRBと同様である。
【0041】
【0042】
式中、R201は、水素原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数は、例えば、1~10、1~5、又は、1~3である。)または炭化水素基(炭素数は、例えば、1~10、1~5、又は、1~3である。)を表し、R202、R203は、各々独立して、水酸基又はアルコキシ基を表し、RDは、不飽和二重結合を含む官能基を表し、式(II)におけるRDと同様である。
【0043】
これらのモノマーを用いてポリシロキサンを合成する方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、各シラン成分(又は、各シラン成分と各シラン成分の部分加水分解物との混合物)と、必要に応じて水と、を含む合成用組成物を調製し、触媒の存在下で、必要に応じて加熱しながら各シラン成分を縮合反応させることでポリシロキサンを合成することができる。また、必要に応じて触媒の除去(例えば、中和)やポリシロキサンの蒸留等を行ってもよい。
式(I-A)で示されたシラン成分(A)を原料として用いることで、エポキシ基を含む構造単位からなる繰り返し構造を有する好ましいポリシロキサンが得られる。
また、式(I-A)で示されたシラン成分(A)と、式(II-A)で示されたシラン成分(B)とを原料として用いることで、エポキシ基を含む構造単位と、不飽和二重結合を含む官能基を有する構造単位とからなる繰り返し構造を有する好ましいポリシロキサンが得られる。この際、シラン成分(A)と、シラン成分(B)と、のモル比率を変更することで、得られるポリシロキサンの構造単位の比率(y/x)を調整することができる。
【0044】
触媒としては、特に限定されず、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸等)や無機酸(塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等)等を用いることができる。
【0045】
なお、合成用組成物は、必要に応じて、有機溶媒を含んでいてもよい。
【0046】
エポキシ基を有するポリシロキサンは、ポリシロキサンの側鎖を、エポキシ基を含む官能基で変性させることで製造してもよい。また、不飽和二重結合を含む官能基を有するポリシロキサンは、ポリシロキサンの側鎖を、不飽和二重結合を含む官能基で変性させることで製造してもよい。
【0047】
<<<塩基増殖剤>>>
塩基増殖剤は、国際公開第2020/045458号に開示されたものを用いることができる。より具体的には、塩基増殖剤は、下記式(1)で示された構造を有する化合物である。
【0048】
【化14】
式中、Gは、有機基を表し、Xは、下記の一般式(1)-11、一般式(1)-12、一般式(1)-13又は一般式(1)-14で表される基を表す。
【0049】
【化15】
式中、R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23、R
24、R
31、R
32、R
33、R
41、R
42、R
43及びR
44は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。R
11、R
12及びR
13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
21、R
22、R
23及びR
24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
31、R
32及びR
33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよく、R
41、R
42、R
43及びR
44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、2種以上の炭化水素基が相互に結合して環を形成していてもよい。*は、カルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0050】
一般式(1)で表される化合物は、X中の窒素原子とカルボニル基の炭素原子とが結合して形成されているカルボン酸アミド結合を有する化合物である。
また、一般式(1)で表される化合物は、構造中に存在するカルボニル基とXとの間の結合が特定の条件下で切断され、カルボニル基の炭素原子と結合していたX中の窒素原子が、水素原子と結合した構造の塩基性化合物(本明細書中では、単に「塩基」ともいう。)を生じるという特性を有する。本特性については後述する。
【0051】
一般式(1)で表される化合物は、後述するように、塩基の作用で塩基を発現する塩基変換作用を有すると共に、水酸基などと反応して塩基を生成する塩基増殖作用を有する。
【0052】
一般式(1)において、Gは、有機基である。
有機基としては、特に制限されるものではなく、構成原子として炭素原子を含む1価の基または2価の基の中から適宜選択することができ、炭素原子を含む2価の基であることが好ましい。炭素原子を含む1価の基として本開示では、隣接するカルボニル基とエステル構造又はアミド構造を形成する有機基を利用することができる。有機基が、隣接するカルボニル基とエステル構造又はアミド構造を形成する有機基である場合、例えば、隣接するカルボニル基とエステル構造又はアミド構造を形成する部分以外が、炭化水素基等を有する置換基であってもよい。
【0053】
有機基が、隣接するカルボニル基とエステル構造又はアミド構造を形成する有機基である場合、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-Aで表される化合物及び下記一般式(1)-Bで表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
【0054】
【0055】
式中、R1は有機基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表す。Xは、それぞれ独立に、上記の一般式(1)-11、一般式(1)-12、一般式(1)-13又は一般式(1)-14で表される基を表す。R2及びR3の少なくとも一方は、有機基を表し、R2及びR3が有機基である場合、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0056】
一般式(1)中のG、一般式(1)-A中のR1、又は一般式(1)-B中のR2~R3おける有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
ここで「炭化水素基が置換基を有する」とは、炭化水素基を構成する1個以上の水素原子が、水素原子以外の基(置換基)で置換されているか、又は炭化水素基を構成する1個以上の炭素原子が、若しくは前記炭素原子がこれに結合している1個以上の水素原子とともに、炭素原子又は1個以上の水素原子が結合している炭素原子とは異なる基(置換基)で置換されていることを意味する。そして、水素原子及び炭素原子がともに置換基で置換されていてもよい。
【0057】
前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基(アリール基)のいずれでもよく、1個以上の水素原子が芳香族炭化水素基で置換された脂肪族炭化水素基であってもよいし、環状の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが縮環してなる多環状の炭化水素基であってもよい。
前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましい。
【0058】
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0059】
環状のアルキル基としては、炭素数が3~20であることが好ましい。
環状のアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられ、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、アルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
【0060】
また、前記不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。
環状の不飽和脂肪族炭化水素基の場合、単環状及び多環状のいずれでもよく、不飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は2~20が好ましい。
不飽和脂肪族炭化水素基の例としては、上記のアルキル基中の炭素原子間の1個以上の単結合(C-C)が、不飽和結合である二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)で置換されてなる基が挙げられる。
【0061】
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら不飽和結合は二重結合のみでもよいし、三重結合のみでもよく、二重結合及び三重結合が混在していてもよい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の位置は特に限定されない。
【0062】
前記不飽和脂肪族炭化水素基で好ましいものとしては、例えば、前記不飽和結合が1個のものに相当する、直鎖状又は分岐鎖状のものであるアルケニル基及びアルキニル基、並びに環状のものであるシクロアルケニル基及びシクロアルキニル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0063】
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6~20であることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、前記アルキル基で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
【0064】
前記炭化水素基のうち、1個以上の水素原子が芳香族炭化水素基(アリール基)で置換された脂肪族炭化水素基としては、例えば、水素原子の置換数が1であるものであれば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチル基(フェネチル基)等のアリールアルキル基(アラルキル基)が挙げられる。
【0065】
前記炭化水素基において、1個以上の水素原子が置換される置換基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、酸素原子(-O-)、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH)等が挙げられる。
【0066】
前記炭化水素基において、水素原子を置換する前記置換基は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、すべての水素原子が前記置換基で置換されていてもよい。
前記炭化水素基において、水素原子を置換する前記置換基が2個以上である場合、これら置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0067】
置換基である前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基等、前記アルキル基が酸素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基等、前記アリール基が酸素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0068】
置換基である前記ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等、アミノ基(-NH2)の2個の水素原子が、前記アルキル基で置換されてなる1価の基が挙げられる。前記ジアルキルアミノ基において、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
置換基である前記ジアリールアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、フェニル-1-ナフチルアミノ基等、アミノ基の2個の水素原子が、前記アリール基で置換されてなる1価の基が挙げられる。前記ジアリールアミノ基において、窒素原子に結合している2個のアリール基は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
置換基である前記アルキルアリールアミノ基としては、例えば、メチルフェニルアミノ基等、アミノ基の2個の水素原子のうち、1個の水素原子が前記アルキル基で置換され、1個の水素原子が前記アリール基で置換されてなる1価の基が挙げられる。
【0069】
置換基である前記アルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基(アセチル基)等、前記アルキル基がカルボニル基(-C(=O)-)に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールカルボニル基としては、例えば、フェニルカルボニル基(ベンゾイル基)等、前記アリール基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基であるヘテロアリールカルボニル基としては、えば、イミダゾリルカルボニル基、ピラゾリルカルボニル基、ピラジニルカルボニル基等、芳香族複素環基(ヘテロアリール基)とカルボニル基とが結合してなる1価の基が挙げられる。
【0070】
置換基である前記アルキルオキシカルボニル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基(メトキシカルボニル基)等、前記アルコキシ基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基)等、前記アリールオキシ基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0071】
置換基である前記アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基等、前記アルキル基がカルボニルオキシ基(-C(=O)-O-)の炭素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールカルボニルオキシ基としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基等、前記アリール基がカルボニルオキシ基の炭素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0072】
置換基である前記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基等、前記アルキル基が硫黄原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
置換基である前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基等、前記アリール基が硫黄原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0073】
置換基である前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子(-F)、塩素原子(-Cl)、臭素原子(-Br)、ヨウ素原子(-I)が挙げられる。
【0074】
置換基である前記ハロアルキル基としては、前記アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてなる基が挙げられる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子としては、置換基であるハロゲン原子として例示した上記のものが挙げられる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数は、特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数が2個以上である場合、これら複数個のハロゲン原子は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。ハロアルキル基は、アルキル基中のすべての水素原子がハロゲン原子で置換されたパーハロアルキル基であってもよい。
ハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
前記炭化水素基において、水素原子を置換する前記置換基の数は、置換可能な水素原子の数にもよるが、1~4個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1又は2個であることが特に好ましい。
【0076】
前記炭化水素基において、1個以上の炭素原子が、又は前記炭素原子がこれに結合している1個以上の水素原子とともに置換される置換基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が挙げられる。
【0077】
前記炭化水素基において、炭素原子又は水素原子が結合している炭素原子を置換する前記置換基は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、すべての炭素原子が単独で若しくは前記炭素原子に結合している水素原子とともに、置換基で置換されていてもよい。
前記炭化水素基において、炭素原子又は水素原子が結合している炭素原子を置換する前記置換基が2個以上である場合、これら置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0078】
ヘテロ原子で置換されている前記炭化水素基のうち、芳香族炭化水素基、すなわち、芳香族複素環基(ヘテロアリール基)としては、各種の芳香族複素環化合物から、その環骨格を構成する炭素原子又はヘテロ原子に結合している1個の水素原子を除いてなる基が挙げられる。
前記芳香族複素環化合物で好ましいものとしては、含硫黄芳香族複素環化合物(芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の硫黄原子を有する化合物)、含窒素芳香族複素環化合物(芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の窒素原子を有する化合物)、含酸素芳香族複素環化合物(芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の酸素原子を有する化合物)、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される互いに異なる2個のヘテロ原子を、芳香族複素環骨格を構成する原子として有する化合物が挙げられる。
【0079】
前記含硫黄芳香族複素環化合物としては、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン等が挙げられる。
前記含窒素芳香族複素環化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン等が挙げられる。
前記含酸素芳香族複素環化合物としては、例えば、フラン、ベンゾフラン(1-ベンゾフラン)、イソベンゾフラン(2-ベンゾフラン)等が挙げられる。
【0080】
上述の互いに異なる2個のヘテロ原子を、芳香族複素環骨格を構成する原子として有する化合物としては、例えば、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0081】
前記炭化水素基において、炭素原子又は水素原子が結合している炭素原子を置換する前記置換基の数は、置換可能な炭素原子にもよるが、1~3個であることが好ましく、1又は2個であることがより好ましい。
【0082】
上記のうち、一般式(1)におけるGとしては、アルキル基の1個の水素原子がカルボニル基で置換されたアルコキシ基、又はアリール基の1個の水素原子が置換基で置換された置換アリール基(好ましくは、ヘテロアリールカルボニル基で置換されたフェニル基)が挙げられる。
Gがアルコキシ基である化合物の場合には、一般式(1)-Aで表される化合物が好適である。
【0083】
一般式(1)-A及び一般式(1)-B中のR1~R3における有機基としては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基であることがより好ましい。
ここでの置換基は、炭化水素基が有するものとして説明した上記置換基と同様である。
中でも、R1及びR2が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基であって、かつ、R3が水素原子である場合が好ましく、R1及びR2が置換基を有していてもよいアルキル基であって、かつ、R3が水素原子である場合がより好ましい。
【0084】
一般式(1)におけるGとしては、炭素原子を含む2価の基を有することが好ましく、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。置換基を有していてもよい炭化水素基は上記したものと同様の炭化水素基を挙げることができ、特に芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0085】
一般式(1)におけるGが2価の基である場合には、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-Cで表される化合物であることが好ましい。
【0086】
【0087】
式(1)-Cに含まれる2つのXは、各々異なる構造を有する基であってもよいし、同一の構造を有する基であってもよい。
【0088】
次に、上記の一般式(1)、一般式(1)-A、一般式(1)-B及び一般式(1)-CにおけるXについて説明する。
Xは、上記の一般式(1)-11、一般式(1)-12、一般式(1)-13又は一般式(1)-14で表される基である。
また、符号*を付した結合は、Xの結合先である炭素原子、すなわち、一般式(1)中の、Gが結合しているカルボニル基中の炭素原子に対して形成されている。
一般式(1)-11、一般式(1)-12、一般式(1)-13又は一般式(1)-14において、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基である。
【0089】
すなわち、一般式(1)-11におけるR11、R12及びR13(以下、「R11~R13」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一般式(1)-12におけるR21、R22、R23及びR24(以下、「R21~R24」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一般式(1)-13におけるR31、R32及びR33(以下、「R31~R33」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
同様に、一般式(1)-14におけるR41、R42、R43及びR44(以下、「R41~R44」と略記することがある)は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0090】
R11~R13、R21~R24、R31~R33、及びR41~R44における前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基(アリール基)のいずれでもよく、1個以上の水素原子が芳香族炭化水素基で置換された脂肪族炭化水素基であってもよいし、環状の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが縮環してなる多環状の炭化水素基であってもよい。
【0091】
前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。
【0092】
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。
【0093】
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0094】
環状のアルキル基は、炭素数が3~20であることが好ましい。
環状のアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられ、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが挙げられる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、アルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
【0095】
また、不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。
環状の不飽和脂肪族炭化水素基の場合、単環状及び多環状のいずれでもよく、不飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は2~20であることが好ましい。
不飽和脂肪族炭化水素基の例としては、上記のアルキル基中の炭素原子間の1個以上の単結合(C-C)が、不飽和結合である二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)で置換されてなる基が挙げられる。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これら不飽和結合は二重結合のみでもよいし、三重結合のみでもよく、二重結合及び三重結合が混在していてもよい。
前記不飽和脂肪族炭化水素基において、不飽和結合の位置は特に限定されない。
【0096】
前記不飽和脂肪族炭化水素基で好ましいものとしては、例えば、前記不飽和結合が1個のものに相当する、直鎖状又は分岐鎖状のものであるアルケニル基及びアルキニル基、並びに環状のものであるシクロアルケニル基及びシクロアルキニル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0097】
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6~20であることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基、前記アルキル基等で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
【0098】
一般式(1)-11中、R11、R12及びR13のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している炭素原子(イミダゾール骨格を構成している炭素原子)とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、R11~R13のうちの2種のみ又はすべて(3種)が炭化水素基であり、いずれか2種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R11~R13のすべて(3種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがある。そして、いずれの場合もこれら炭化水素基は、炭素原子同士が相互に結合するものとする。
【0099】
2種以上の炭化水素基が相互に結合する場合、その結合する炭素原子の位置(結合位置)は特に限定されない。例えば、結合する炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状である場合には、結合位置は炭化水素基の末端の炭素原子であってもよいし、炭化水素基のイミダゾール骨格を構成している炭素原子に直接結合している、いわゆる根元の炭素原子であってもよく、これら末端及び根元間の中間位置の炭素原子であってもよい。一方、結合する炭化水素基が環状であるか、又は鎖状構造及び環状構造の両方を有する場合には、結合位置は根元の炭素原子であってもよいし、それ以外の炭素原子であってもよい。
【0100】
R11~R13のうちの2種の炭化水素基が相互に結合する場合、それによって形成される環は、単環状及び多環状のいずれでもよい。一般式(1)-11で表される基は、イミダゾール骨格と、これら炭化水素基の相互の結合によって形成される環と、が縮環した構造を有する。
【0101】
一般式(1)-12中、R21、R22、R23及びR24のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している窒素原子と、この窒素原子に結合している炭素原子(3個の窒素原子がともに結合している同一の炭素原子)とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、上述のようにR11~R13のいずれかの炭化水素基が相互に結合する場合と同様のことを意味する。例えば、このように結合するのには、R21~R24のうちの2種のみ、3種のみ又はすべて(4種)が炭化水素基であり、いずれか2種又は3種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R21~R24のすべて(4種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがあり、炭化水素基同士の結合の仕方も、R11~R13の場合と同じである。
【0102】
一般式(1)-13中、R31、R32及びR33のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している窒素原子又は炭素原子と、この窒素原子に結合している炭素原子、又は炭素原子に結合している窒素原子とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、上述のようにR11~R13のいずれかの炭化水素基が相互に結合する場合と同様のことを意味する。例えば、このように結合するのには、R31~R33のうちの2種のみ又はすべて(3種)が炭化水素基であり、いずれか2種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R31~R33のすべて(3種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがあり、炭化水素基同士の結合の仕方も、R11~R13の場合と同じである。
【0103】
一般式(1)-14中、R41、R42、R43及びR44のうちの2種以上が炭化水素基である場合、これら炭化水素基は相互に結合して、これら炭化水素基が結合している窒素原子と、この窒素原子に結合している炭素原子(3個の窒素原子がともに結合している同一の炭素原子)とともに、環を形成していてもよい。ここで、「2種以上の炭化水素基が相互に結合する」とは、上述のようにR11~R13のいずれかの炭化水素基が相互に結合する場合と同様のことを意味する。例えば、このように結合するのには、R41~R44のうちの2種のみ、3種のみ又はすべて(4種)が炭化水素基であり、いずれか2種又は3種の炭化水素基のみが相互に結合する場合と、R41~R44のすべて(4種)が炭化水素基であり、これらすべての炭化水素基が相互に結合する場合とがあり、炭化水素基同士の結合の仕方も、R11~R13の場合と同じである。
【0104】
また、一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1)-1で表される化合物(以下、「化合物(1)-1」ともいう。)、下記一般式(1)-2で表される化合物(以下、「化合物(1)-2」ともいう。)、下記一般式(1)-3で表される化合物(以下、「化合物(1)-3」ともいう。)、及び下記一般式(1)-4で表される化合物(以下、「化合物(1)-4」ともいう。)に分類される。
【0105】
【0106】
一般式(1)-1~一般式(1)-4において、G、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R41、R42、R43及びR44は、既述と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0107】
化合物(1)-1で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-1Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-1A」と略記することがある)、及び下記一般式(1)-1Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-1B」と略記することがある)が挙げられる。
【0108】
【0109】
一般式(1)-1A及び一般式(1)-1B中、Gは前記と同じであり;R11’、R12’及びR13’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R011は炭化水素環である。
一般式(1)-1A及び一般式(1)-1B中、R11’、R12’及びR13’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
【0110】
R11’、R12’及びR13’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。すなわち、化合物(1)-1Aは、R11’、R12’及びR13’がいずれの基であっても、一般式(1)-1A中に記載されているイミダゾール骨格が縮環した構造を有しない。
R11’、R12’及びR13’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0111】
一般式(1)-1B中、R011は炭化水素環である。すなわち、一般式(1)-1Bにおいて、R011は、イミダゾール骨格中の隣接する2個の炭素原子を、このイミダゾール骨格と共有して、このイミダゾール骨格と縮環している炭化水素環(環状の炭化水素基)である。
化合物(1)-1Bは、化合物(1)-1のうち、炭化水素基であるR12及びR13が相互に結合して環を形成しているものである。
R011は、単環状及び多環状のいずれでもよく、シクロヘキサン環等の飽和脂肪族炭化水素環、又はベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0112】
化合物(1)-1Aで好ましいものとしては、例えば、R11’、R12’及びR13’の少なくとも1種が水素原子であるものが挙げられる。
化合物(1)-1Bで好ましいものとしては、例えば、R011が芳香族炭化水素環であるものが挙げられる。
【0113】
化合物(1)-2で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-2Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-2A」ともいう。)、下記一般式(1)-2Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-2B」ともいう。)、下記一般式(1)-2Cで表される化合物(以下、「化合物(1)-2C」ともいう。)、下記一般式(1)-2Dで表される化合物(以下、「化合物(1)-2D」ともいう。)、及び下記一般式(1)-2Eで表される化合物(以下、「化合物(1)-2E」ともいう。)が挙げられる。
【0114】
【0115】
一般式(1)-2A~一般式(1)-2Eにおいて、Gは前記と同じであり;R21’、R22’、R23’及びR24’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R021、R022及びR023は、それぞれ独立に含窒素環である。
【0116】
一般式(1)-2A~一般式(1)-2Eにおいて、R21’、R22’、R23’及びR24’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R21’、R22’、R23’及びR24’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。
R21’、R22’、R23’及びR24’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0117】
一般式(1)-2Bにおいて、R021は含窒素環である。なお、本明細書において「含窒素環」とは、炭素原子及び水素原子以外に窒素原子を有する環状構造を意味する。すなわち、一般式(1)-2Bにおいて、R021は、この一般式中に記載されているカルボニル基の炭素原子に結合している窒素原子と、R23’が結合している窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R021は、単環状及び多環状のいずれでもよく、通常は、脂肪族含窒素環である。
化合物(1)-2Bは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR21及びR22が相互に結合して環を形成しているものである。
【0118】
一般式(1)-2Cにおいて、R022は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-2Cにおいて、R022は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、R21’及びR24’がともに結合していない1個の窒素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R022は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-2Cは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR22及びR23が相互に結合して環を形成しているものである。
【0119】
一般式(1)-2Dにおいて、R023は含窒素環である。すなわち、一般式(1)-2Dにおいて、R023は、この一般式中に記載されている3個の窒素原子のうち、R21’が結合していない2個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R023は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-2Dは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR23及びR24が相互に結合して環を形成しているものである。
【0120】
一般式(1)-2Eにおいて、R021及びR023は含窒素環であり、R021は一般式(1)-2B中のR021と同じであり、R023は一般式(1)-2D中のR023と同じである。
化合物(1)-2Eは、化合物(1)-2のうち、炭化水素基であるR21及びR22が相互に結合して環を形成し、炭化水素基であるR23及びR24が相互に結合して環を形成しているものである。
化合物(1)-2Aで好ましいものとしては、例えば、R21’、R22’、R23’及びR24’がすべてアルキル基又はアリール基であるものが挙げられる。
化合物(1)-2Cで好ましいものとしては、例えば、R022が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-2Dで好ましいものとしては、例えば、R023が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-2Eで好ましいものとしては、例えば、R023が脂肪族含窒素環であるもの(R021及びR023がともに脂肪族含窒素環であるもの)が挙げられる。
【0121】
化合物(1)-3で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-3Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-3A」ともいう。)、下記一般式(1)-3Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-3B」ともいう。)、下記一般式(1)-3Cで表される化合物(以下、「化合物(1)-3C」ともいう。)、及び下記一般式(1)-3Dで表される化合物(以下、「化合物(1)-3D」ともいう。)が挙げられる。
【0122】
【0123】
一般式(1)-3A~一般式(1)-3Dにおいて、Gは前記と同じであり;R31’、R32’及びR33’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R031、R032及びR033は、それぞれ独立に含窒素環である。
【0124】
一般式(1)-3A~一般式(1)-3Dにおいて、R31’、R32’及びR33’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R31’、R32’及びR33’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。
R31’、R32’及びR33’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0125】
一般式(1)-3Bにおいて、R031は含窒素環である。
すなわち、一般式(1)-3Bにおいて、R031は、この一般式中に記載されている2個の窒素原子のうち、R31’が結合していない1個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R031は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-3Bは、化合物(1)-3のうち、炭化水素基であるR32及びR33が相互に結合して環を形成しているものである。
【0126】
一般式(1)-3Cにおいて、R032は含窒素環である。
すなわち、一般式(1)-3Cにおいて、R032は、この一般式中に記載されている2個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R032は、単環状及び多環状のいずれでもよく、脂肪族含窒素環及び芳香族含窒素環のいずれでもよい。
化合物(1)-3Cは、化合物(1)-3のうち、炭化水素基であるR31及びR33が相互に結合して環を形成しているものである。
【0127】
一般式(1)-3Dにおいて、R033は含窒素環である。
すなわち、一般式(1)-3Dにおいて、R033は、この一般式中に記載されている2個の窒素原子のうち、R33’が結合していない1個の窒素原子と、これら2個の窒素原子の間に位置する1個の炭素原子を、環骨格の構成原子とする環構造(含窒素環式基)である。R033は、単環状及び多環状のいずれでもよく、通常は、脂肪族含窒素環である。
化合物(1)-3Dは、化合物(1)-3のうち、炭化水素基であるR31及びR32が相互に結合して環を形成しているものである。
【0128】
化合物(1)-3Aで好ましいものとしては、例えば、R31’、R32’及びR33’の少なくとも1種が水素原子であるものが挙げられる。
化合物(1)-3Bで好ましいものとしては、例えば、R031が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-3Cで好ましいものとしては、例えば、R032が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
【0129】
化合物(1)-4で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)-4Aで表される化合物(以下、「化合物(1)-4A」ともいう。)、下記一般式(1)-4Bで表される化合物(以下、「化合物(1)-4B」ともいう。)、下記一般式(1)-4Cで表される化合物(以下、「化合物(1)-4C」ともいう。)、下記一般式(1)-4Dで表される化合物(以下、「化合物(1)-4D」ともいう。)、及び下記一般式(1)-4Eで表される化合物(以下、「化合物(1)-4E」ともいう。)が挙げられる。
【0130】
【0131】
一般式(1)-4A~一般式(1)-4Eにおいて、Gは前記と同じであり;R41’、R42’、R43’及びR44’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であり;R041、R042及びR043は、それぞれ独立に含窒素環である。
【0132】
一般式(1)-4A~一般式(1)-4Eにおいて、R41’、R42’、R43’及びR44’は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基である。
R41’、R42’、R43’及びR44’における前記炭化水素基は、相互に結合して環を形成することがない点以外は、上述のR11~R13における前記炭化水素基と同じである。
一般式(1)-4A~(1)-4Eにおいて、R41’、R42’、R43’及びR44’は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0133】
化合物(1)-4Aで好ましいものとしては、例えば、R41’、R42’、R43’及びR44’がすべてアルキル基又はアリール基であるものが挙げられる。
化合物(1)-4Bで好ましいものとしては、例えば、R041が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-4Dで好ましいものとしては、例えば、R043が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
化合物(1)-4Eで好ましいものとしては、例えば、R041及びR043が脂肪族含窒素環であるものが挙げられる。
【0134】
一般式(1)で表される化合物の中でも、化合物(1)-1A、化合物(1)-2E、化合物(1)-3A及び化合物(1)-4Aがより好ましく、更に好ましくは化合物(1)-1Aである。
【0135】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1)-Dで示された化合物等が挙げられる。但し、本開示においては、以下の化合物に制限されるものではない。
【0136】
【0137】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、エステル構造又はアミド構造を形成する公知の手法を用いて製造することができる。
【0138】
一例として、式(1)-Dにおけるtpa-4E2MImは、テレフタル酸ジクロリド(tpa-CL)と、2-エチル-4-メチルイミダゾール(4E2MIm)とを、無水の有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン等)の存在下で混合することで製造することができる。また、式(1)-Dにおけるtpa-2UdImは、テレフタル酸ジクロリド(tpa-CL)と、2-ウンデシルイミダゾール(2UdIm)とを、無水の有機溶媒(例えば、アセトン等)の存在下で加熱還流させることで製造することができる。
【0139】
塩基増殖剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0140】
エポキシ基を有するポリシロキサンと塩基増殖剤とを含む硬化性組成物を硬化させる場合、組成物中で塩基増殖剤から生成された塩基(tpa-4E2MImにおいては、4E2MImに対応する部位)が、ポリシロキサンが有するエポキシ基に作用し、エポキシ基との反応物としてポリシロキサンの骨格中に取り込まれる。そして、塩基とのエポキシ基との反応物由来の水酸基又はポリシロキサン由来の水酸基が塩基増殖剤に作用し、塩基増殖剤からの塩基の生成、及び、塩基増殖剤の残部と水酸基との反応(tpa-4E2MImにおいては、テレフタル酸に対応する部位と水酸基とのエステル化物の形成)が生じる。このようにしてエポキシ基由来の硬化反応が進むと共に、得られるポリシロキサンの硬化物に含まれる水酸基数の増加が抑制される。
従来の硬化剤を用いてエポキシ基を有するポリシロキサンを硬化させた場合には、ポリシロキサン由来の水酸基に加えて、硬化反応の進行に伴って生成する水酸基の存在により低誘電特性を得ることが困難であった。この点、本開示の塩基増殖剤では上述の通り硬化反応後の水酸基数の増加を抑制することができるため、所定のポリシロキサンと、塩基増殖剤とを含む本開示の硬化性組成物によれば、優れた低誘電特性等を有する硬化物が得られる。
【0141】
硬化性組成物中の塩基増殖剤の含有量は、硬化性組成物中のポリシロキサンの含有量を100質量部とした場合に、1.0~20.0質量部、又は、5.0~15.0質量部であることが好ましい。
【0142】
<<<光ラジカル発生剤>>>
光ラジカル発生剤は、光照射(露光)によってラジカルを発生する化合物であり、発生したラジカルにより、ポリシロキサンの有する不飽和二重結合をラジカル重合させ、露光部の硬化性(現像液耐性等)を高めることができる。
【0143】
光ラジカル発生剤としては、公知慣用の光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、α-ケトール系、芳香族スルホニルクロリド系、光活性オキシム系、ベンゾイン系、ベンジル系、ベンゾフェノン系、ケタール系、チオキサントン系、アシルフォスフィンオキシド系等が挙げられる。
【0144】
ベンゾインエーテル系光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル 、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソイン等が挙げられる。
【0145】
アセトフェノン系光ラジカル発生剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシル フェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0146】
α-ケトール系光ラジカル発生剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロ ピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0147】
芳香族スルホニルクロリド系光ラジカル発生剤としては、例えば、2-ナフタレンスル ホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシム等が挙げられる。
【0148】
ベンゾイン系光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン等が挙げられる。
【0149】
ベンジル系光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンジル等が挙げられる。
【0150】
ベンゾフェノン光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0151】
ケタール系光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0152】
チオキサントン系光ラジカル発生剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0153】
アシルフォスフィンオキシド系光ラジカル発生剤としては、例えば、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-n-ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-t-ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキシド、ビス(2-メトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2-メトキシベンゾイル)(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジエトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジエトキシベンゾイル)(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジブトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(2,4-ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルエチルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジイソプロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2-メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-4-メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジエチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,3,5,6-テトラメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキシド、2,6-ジメチトキシベンゾイル-2,4,6-トリメチ ルベンゾイル-n-ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4 -ジブトキシフェニルホスフィンオキシド、1,10-ビス[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド]デカン、トリ(2-メチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0154】
これらの光ラジカル発生剤は、1種のみが使用されてもよいし、2種以上が使用されてもよい。
【0155】
硬化性組成物中の光ラジカル発生剤の含有量は、硬化性組成物中のポリシロキサンを100質量部とした場合に、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0156】
<<<その他の成分>>>
本開示の硬化性組成物は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、シリカ等の無機充填材、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン等の過酸化物、マレイミド樹脂、スチレン系エラストマー等の樹脂及びポリマー成分、増感剤、接着助剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、密着剤、着色剤、繊維、シランカップリング剤、難燃性剤、セルロースナノファイバー、分散剤、熱硬化触媒、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、密着性付与剤、有機溶剤等を含んでもよい。これらの成分は、用途等に応じて適宜の量を配合すればよい。
【0157】
<<<<硬化性組成物の使用方法>>>>
本実施形態に係る硬化性組成物は、例えば、熱硬化による絶縁層の形成や熱光硬化によるネガ型のフォトリソグラフィ法に好適に用いることができる。以下、本実施形態に係る硬化性組成物をネガ型のフォトリソグラフィ法に適用してパターン膜を製造する方法を説明する。
【0158】
まず、ステップ1として、基材上に硬化性組成物を塗布、乾燥して樹脂層を形成する、或いは基材上にドライフィルムをラミネートして硬化性組成物からなる樹脂層を転写する。硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、従来、硬化性組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。
【0159】
塗膜の乾燥方法としては、送風乾燥、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥条件は、特に限定されないが、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、60~130℃で1~30分の条件で行うことができる。
【0160】
基材については、特に制限はなく、シリコンウエハ等の半導体基材、配線基板、各種樹脂や金属などからなる基材に広く適用できる。
【0161】
次に、ステップ2として、基材上に形成した樹脂層を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接パターン状に、光照射(露光)する。なお、ドライフィルムをラミネートする方法においては、フィルム材料を剥離して露光する。フィルム材料が光透過性を有する場合は、樹脂層上にフィルム材料を残した状態で露光し、その後にフィルム材料を剥離してもよい。露光では、光ラジカル重合開始剤を活性化させることができる波長の光を用いる。具体的には、最大吸収波長が350~410nmの範囲にあるものが好ましい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
【0162】
次いで、ステップ3として、樹脂層を現像液で処理する。これにより、樹脂層の未露光部分を除去してパターン膜を形成することができる。現像後は、必要に応じて樹脂層をリンス液により洗浄してもよい。
【0163】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。
【0164】
現像液は、硬化性組成物の主成分であるポリシロキサンを溶解する溶剤を用いることができ、回路等の腐食を防止するために、有機溶剤とすることが好ましい。例えば、クロロホルム、塩化メチレン、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の溶剤を用いることができる。現像液は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0165】
また、現像液には、現像速度を調整する観点から、上記した有機溶剤以外の溶剤を組みわせることができ、必要に応じて、界面活性剤等を適当量含有してもよい。
【0166】
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0167】
また、必要に応じて、ステップ4として、パターン膜を加熱してもよい。加熱温度は、特に限定されないが、例えば、100~220℃で30~120分程度の加熱等である。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0168】
<<<<用途>>>>
本開示に係る硬化性組成物は、種々の用途に用いることができる。特に、本開示に係る硬化性組成物を用いて得られる硬化物は低誘電特性に優れることから、電子部品を構成する材料として好ましく使用可能である。より具体的には、本開示に係る硬化性組成物を用いて得られる硬化物は、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等の電子部品における絶縁材料として好ましく使用可能である。
【実施例0169】
以下、実施例により、硬化性組成物を具体的に説明するが、本発明は以下には限定されない。
【0170】
<<<硬化性組成物>>>
<<原料>>
<ポリシロキサン>
下記式で示される、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、及び、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(APTS)をモノマーとして用いた。
【0171】
【0172】
GPTSとAPTSとのモル比が等量となるようにし、塩酸を触媒として、無水メタノール下で部分加水分解及び縮合反応させ、下記式で示されるGPTS0.5-APTS0.5を得た。
【0173】
【0174】
得られたGPTS0.5-APTS0.5は、重量平均分子量が21,000であり、多分散指数(重量平均分子量/数平均分子量)が1.7であった。
【0175】
<塩基増殖剤>
テレフタル酸ジクロリドと2-エチル-4-メチルイミダゾールとを原料とし合成される、tpa-2E4MImを用いた。
【0176】
<光ラジカル発生剤>
光ラジカル発生剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤であるOmnirad 819(IGM Resin社製)を用いた。
【0177】
<<硬化性組成物の調製>>
<実施例1>
GPTS0.5-APTS0.5(80mg)をクロロホルム(0.37g)に溶解させ、tpa-2E4MIm(9.0mg)とOmnirad 819(5.1mg)とを添加し、実施例1に係る硬化性組成物のワニスを調製した。
【0178】
<<<評価>>>
<<誘電特性>>
厚さ18μm銅箔の光沢面に、各硬化性組成物を乾燥後の膜厚が30μmになるようにアプリケーターにて塗布し、熱風式循環式乾燥炉で90℃5分乾燥した。次いで、イナートオーブンで220℃、1h硬化した後、銅箔をエッチングすることで各組成物からなる硬化物(硬化膜)を得た。
【0179】
作製した硬化膜を長さ80mm、幅45mmに切断したものを試験片として、SPDR(Split Post Dielectric Resonator)共振器法により比誘電率Dkを測定した。測定器には、キーサイトテクノロジー合同会社製のベクトル型ネットワークアナライザE5071C、SPDR共振器、計算プログラムはQWED社製のものを用いた。条件は、周波数10GHz、測定温度25℃とした。
【0180】
参考例として、一般に低誘電性に優れるとされる活性エステル樹脂(EPICLON HPC-8000-65T)を用いてエポキシ樹脂(HP-7200)を硬化させた硬化膜の誘電特性を測定した。
【0181】
実施例1に係る硬化膜の誘電率Dkは2.52であった。一方で、参考例に係る硬化膜は、誘電率Dkは3.4であった。以上の結果から、実施例1に係る硬化膜は、優れた誘電特性を有することが理解される。
【0182】
<<現像性>>
実施例1に係る硬化性組成物のワニスを、シリコンウエハ上に、スピンコーターを用いて乾燥後の膜厚が約3μmとなるように塗布し、ホットプレートで60℃3分間乾燥させ、各硬化性組成物からなる樹脂層を形成した。その後、樹脂層を形成したシリコンウエハを2.5×15cmの形状に裁断し、感光性及び現像性の試験用サンプルとした。各試験サンプルの樹脂層に、波長365nmの光を積算光量として、200mJ/cm2照射し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMA)に20秒間浸漬させて現像した。その後、ホットプレートで170℃15分間加熱処理を行い、試験サンプルを熱硬化した後、パターンの確認を行い、ライン/スペースが5μm/5μmのパターンが形成できていることを確認した。