(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162549
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】発光装置および発光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02255 20210101AFI20241114BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20241114BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20241114BHJP
G02B 3/06 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/02253
H01S5/024
G02B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078150
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】浪江 貴史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼鶴 一真
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA08
5F173MA10
5F173MC01
5F173MC12
5F173MD07
5F173ME23
5F173ME32
5F173ME33
5F173ME44
5F173MF03
5F173MF23
5F173MF27
5F173MF28
5F173MF33
5F173MF34
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】複数の発光装置を用いた発光モジュールにおいて、複数の発光装置から出射された複数のレーザビームの光軸の間隔を縮めることが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、実装面を有する基板と、前記実装面によって支持される半導体レーザ素子と、前記実装面によって支持され、第1反射面を有する第1ミラー部材と、支持部材によって前記第1ミラー部材と離隔して支持され、第2反射面を有し、前記第2反射面の少なくとも一部は前記第1反射面の少なくとも一部の上方に位置する、第2ミラー部材と、を備え、前記半導体レーザ素子は、前記第1反射面に向けてレーザビームを第1方向に出射するように配置され、前記第1反射面は、前記レーザビームを反射してその進行方向を第2方向に変化させ、前記第2反射面は、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを反射してその前記進行方向を第3方向に変化させる。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する基板と、
前記実装面によって支持される半導体レーザ素子と、
前記実装面によって支持される第1ミラー部材であって、前記実装面に対して傾斜し、斜め上方を向く第1反射面を有する第1ミラー部材と、
支持部材によって前記第1ミラー部材と離隔して支持される第2ミラー部材であって、第2反射面を有し、前記第2反射面の少なくとも一部は前記第1反射面の少なくとも一部の上方に位置する、第2ミラー部材と、
を備え、
前記半導体レーザ素子は、前記第1反射面に向けてレーザビームを第1方向に出射するように配置され、
前記第1反射面は、前記レーザビームを反射して前記レーザビームの進行方向を前記基板の前記実装面から離れる第2方向に変化させ、
前記第2反射面は、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを反射して前記レーザビームの前記進行方向を、前記第1方向に延びる直線および前記第2方向に延びる直線の両方を含む平面に交差する第3方向に変化させる、発光装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記基板の前記実装面に対向する対向面、および前記対向面の反対側に位置する上面を有し、前記半導体レーザ素子および前記第1ミラー部材の上方に位置するカバーであり、
前記第2ミラー部材は、前記カバーの前記上面によって支持されており、
前記カバーは、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを透過させる、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2ミラー部材の下面と前記カバーの前記上面との間には、樹脂層が存在している、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記カバーの前記対向面のうち、少なくとも、前記レーザビームが透過する部分の周囲に遮光膜を有する、請求項2または3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記基板の前記実装面と前記カバーの前記対向面との間に位置し、かつ前記レーザビームの光路上に位置する速軸コリメートレンズを備え、
前記速軸コリメートレンズは、前記半導体レーザ素子から出射された前記レーザビームを速軸方向にコリメートする、請求項2または3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2反射面から前記第3方向に離れて位置する遅軸コリメートレンズを備え、
前記遅軸コリメートレンズは、前記第2反射面で反射された前記レーザビームを遅軸方向にコリメートし、
前記第2反射面で反射された前記レーザビームの遅軸方向は、前記半導体レーザ素子から出射された前記レーザビームの遅軸方向に交差する、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2反射面は曲面状の反射面であり、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを遅軸方向にコリメートした状態で前記第3方向に反射し、
前記第2反射面で反射された前記レーザビームの遅軸方向は、前記半導体レーザ素子から出射された前記レーザビームの遅軸方向に交差する、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記基板は、熱伝導率が10W/m・K以上2000W/m・K以下である材料から形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記基板の前記実装面の周囲に位置し、前記カバーを支持する枠体を備え、
前記半導体レーザ素子は、前記基板、前記枠体、および前記カバーによって封止されている、請求項2または3に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第3方向において並んで配置され、段階的に前記第1方向と同じ方向または反対の方向にシフトするように配置される複数の発光装置であって、各々が請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置である複数の発光装置と、
前記複数の発光装置の各々から前記レーザビームが前記第3方向に出射されて得られる複数のレーザビームを結合する集光レンズと、
を備える、発光モジュール。
【請求項11】
前記複数の発光装置は同一平面に配置される、請求項10に記載の発光モジュール。
【請求項12】
一方向において位置が互いに異なるように配置される複数の第1発光装置であって、各々が前記一方向に対して平行な方向に第1レーザビームを出射する請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置である複数の第1発光装置と、
他の方向において位置が互いに異なるように配置される複数の第2発光装置であって、各々が前記他の方向に対して平行な方向に第2レーザビームを出射する請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置である複数の第2発光装置と、
第3反射面を有し、前記第3反射面は、前記複数の第1発光装置の各々から前記第1レーザビームが出射されて得られる複数の第1レーザビームを反射する、第3ミラー部材と、
第4反射面を有し、前記第4反射面は、前記複数の第2発光装置の各々から前記第2レーザビームが出射されて得られる複数の第2レーザビームを反射する、第4ミラー部材と、
前記第3反射面で反射された前記複数の第1レーザビーム、および前記第4反射面で反射された前記複数の第2レーザビームを結合する集光レンズと、
を備える、発光モジュール。
【請求項13】
前記複数の第2発光装置の各々における前記第2レーザビームの偏光方向は、前記複数の第1発光装置の各々における前記第1レーザビームの偏光方向と同じであり、
前記複数の第1レーザビームの光路上または前記複数の第2レーザビームの光路上に位置する1/2波長板と、
前記1/2波長板を通過した前記複数の第1レーザビームおよび前記1/2波長板を通過しない前記複数の第2レーザビーム、または前記1/2波長板を通過しない前記複数の第1レーザビームおよび前記1/2波長板を通過した前記複数の第2レーザビームを混合して前記集光レンズに向ける偏光ビームスプリッタと、
をさらに備える、請求項12に記載の発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置および発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の半導体レーザ素子から出射された複数のレーザビームを結合してレーザビームの出力を高める発光モジュールが開発されている。特許文献1は、そのような発光モジュールの例を開示している。
【0003】
各々が半導体レーザ素子を収容する複数の半導体レーザパッケージを配列して発光モジュールを製造する場合、個々の半導体レーザパッケージの構成によって発光モジュールの小型化に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の半導体レーザパッケージを用いた発光モジュールにおいて、発光モジュールの小型化が求められている。以下において、半導体レーザパッケージのように、半導体レーザ素子を用いてレーザビームを出射する構造を「発光装置」と称する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発光装置は、ある実施形態において、実装面を有する基板と、前記実装面によって支持される半導体レーザ素子と、前記実装面によって支持される第1ミラー部材であって、前記実装面に対して傾斜し、斜め上方を向く第1反射面を有する第1ミラー部材と、支持部材によって前記第1ミラー部材と離隔して支持される第2ミラー部材であって、第2反射面を有し、前記第2反射面の少なくとも一部は前記第1反射面の少なくとも一部の上方に位置する、第2ミラー部材と、を備え、前記半導体レーザ素子は、前記第1反射面に向けてレーザビームを第1方向に出射するように配置され、前記第1反射面は、前記レーザビームを反射して前記レーザビームの進行方向を前記基板の前記実装面から離れる第2方向に変化させ、前記第2反射面は、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを反射して前記レーザビームの前記進行方向を、前記第1方向に延びる直線および前記第2方向に延びる直線の両方を含む平面に交差する第3方向に変化させる。
【0007】
本開示の発光モジュールは、ある実施形態において、前記第3方向において並んで配置され、段階的に前記第1方向と同じ方向または反対の方向にシフトするように配置される複数の発光装置であって、各々が上記の発光装置である複数の発光装置と、前記複数の発光装置の各々から前記レーザビームが前記第3方向に出射されて得られる複数のレーザビームを結合する集光レンズと、を備える。
【0008】
本開示の発光モジュールは、ある実施形態において、一方向において位置が互いに異なるように配置される複数の第1発光装置であって、各々が前記一方向に対して平行な方向に第1レーザビームを出射する上記の発光装置である複数の第1発光装置と、他の方向において位置が互いに異なるように配置される複数の第2発光装置であって、各々が前記他の方向に対して平行な方向に第2レーザビームを出射する上記の発光装置である複数の第2発光装置と、第3反射面を有し、前記第3反射面は、前記複数の第1発光装置の各々から前記第1レーザビームが出射されて得られる複数の第1レーザビームを反射する、第3ミラー部材と、第4反射面を有し、前記第4反射面は、前記複数の第2発光装置の各々から前記第2レーザビームが出射されて得られる複数の第2レーザビームを反射する、第4ミラー部材と、前記第3反射面で反射された前記複数の第1レーザビーム、および前記第4反射面で反射された前記複数の第2レーザビームを結合する集光レンズと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態によれば、複数の発光装置を用いた発光モジュールにおいて、発光モジュールの小型化が可能な発光装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本開示の例示的な実施形態1による発光モジュールの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の例示的な実施形態1による発光モジュールの構成を模式的に示す上面図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の例示的な実施形態1による発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2E】
図2Eは、
図2Aに示す発光装置から第2ミラー部材、遅軸コリメートレンズ、およびカバーを省略した構成の上面図である。
【
図2F】
図2Fは、
図2Aに示す発光装置から第2ミラー部材および遅軸コリメートレンズを省略した構成の、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図2G】
図2Gは、
図2Aに示す発光装置から第2ミラー部材および遅軸コリメートレンズを省略した構成の、YZ平面に対して平行な他の断面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態1による発光装置の変形例1の構成を模式的に示す+Z方向から見た側面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態1による発光装置の変形例2の構成を模式的に示す+Z方向から見た側面図である。
【
図4】
図4は、本開示の例示的な実施形態2による発光モジュールの構成を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2による発光モジュールの変形例を模式的に示す上面図である。
【
図6B】
図6Bは、レーザ光源の、YZ平面に対して平行な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態による発光装置、および複数の発光装置を備える発光モジュールを説明する。複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を示す。
【0012】
さらに、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するために例示しているのであって、本発明を以下に限定しない。また、構成要素のサイズ、材質、形状、その相対的配置などの記載は、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図している。各図面が示す部材の大きさおよび位置関係は、理解を容易にするために誇張している場合がある。
【0013】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形または四角形などの多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取りなどの加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶ。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶ。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書および特許請求の範囲で記載される“多角形”の解釈に含まれる。
【0014】
本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等がなす角度が0°以上5°以下の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等がなす角度が90°から±5°の範囲にある場合を含む。
【0015】
(実施形態1)
[発光モジュール]
まず、
図1Aおよび
図1Bを参照して、本開示の実施形態1による発光モジュールの構成例を説明する。
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、本開示の例示的な実施形態1による発光モジュールの構成を模式的に示す斜視図および上面図である。
図1Aおよび
図1Bに示す発光モジュール200Aは、以下に説明するように高出力のレーザビームを出射する。
【0016】
これらの図では、参考のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が模式的に示されている。X軸の矢印の方向を+X方向と称し、その反対方向を-X方向と称する。±X方向を区別しない場合、単にX方向と称する。Y方向およびZ方向についても同様である。本明細書では、説明のわかりやすさのために、+Y方向を「上方」と称し、-Y方向を「下方」と称する。このことは、発光モジュールの使用時における向きを制限するわけではなく、発光モジュールの向きは任意である。
【0017】
発光モジュール200Aは、
図1Aおよび
図1Bに示すように、支持基体60Aと、集光レンズ70Aと、複数の発光装置100と、を備える。発光モジュール200Aは、さらに、
図1Aおよび
図1Bに示すように、光ファイバ80と、光ファイバ80を支持する支持部材82と、を備えてもよい。
【0018】
支持基体60Aは支持面62を有する。支持面62は、集光レンズ70Aおよび複数の発光装置100を直接支持し、支持部材82を介して光ファイバ80を支持する。支持面62は、他の部材を介して集光レンズ70Aおよび/または複数の発光装置100を支持してもよい。支持面62はXZ平面に対して平行である。支持面62を、複数の発光装置100を支持する第1領域と、集光レンズ70Aおよび光ファイバ80を支持する第2領域とに分ける場合、第1および第2領域は同一平面に位置していてもよいし、位置していなくてもよい。
【0019】
図1Aおよび
図1Bに示す例において、発光装置100の数は3個であるが、この数に限定されない。発光装置100の数は2個であってもよいし、4個以上であってもよい。発光装置100の数が増加するほど、発光モジュール200Aにおいて高出力のレーザビームを得ることが可能になる。
【0020】
支持基体60Aは、例えば、AlN、SiN、SiC、およびアルミナからなる群から選択されるセラミックスから形成され得る。支持基体60Aは、例えば、Cu、Al、およびAgなどからなる群から選択される少なくとも1つの金属材料から形成され得る。支持基体60Aは、例えば、Cu、Al、およびAgなどからなる群から選択される少なくとも1つの金属材料中にダイヤモンド粒子が分散した金属マトリクス複合材料から形成され得る。
【0021】
支持基体60Aは、Cu、Al、およびAgなどからなる群から選択される金属材料から形成され、かつ、単一の部材からなることが好ましい。金属材料はセラミックスよりも放熱性に優れており、また柔らかいので加工しやすいからである。
【0022】
支持基体60Aは、複数の発光装置100が配置される支持台として機能する。支持基体60Aは、さらに、複数の発光装置100から発せられる熱を外部に伝えて発光装置100の過度な温度上昇を低減するヒートシンクとしても機能し得る。その場合、支持基体60Aの内部に液冷のための1または複数の流路を設けてもよい。液冷に用いる液体としては、例えば水を用いることができる。また、支持基体60Aの表面に空冷のためのフィン構造を設けてもよい。あるいは、別途用意したヒートシンク上に支持基体60Aを配置する場合、支持基体60Aは、複数の発光装置100から発せられる熱を当該ヒートシンクに伝えるヒートスプレッダとしても機能し得る。
【0023】
複数の発光装置100は、X方向において、並んで配置され、Z方向における位置が互いに異なるように同一平面である支持面62に配置される。
図1Aおよび
図1Bに示す例において、複数の発光装置100は、+X方向において、並んで配置され、段階的に-Z方向にシフトするように支持面62に配置される。シフトする方向は、-Z方向ではなく、その反対方向である+Z方向でもよい。あるいは、複数の発光装置100は、X方向において、並んで配置され、Z方向に不規則に配置されてもよい。
【0024】
各発光装置100の構造の詳細については後述するが、各発光装置100は内部に半導体レーザ素子を備える。支持面62に対して平行なXZ平面において、各発光装置100の寸法が最も大きい方向はZ方向であり、各発光装置100の寸法が最も小さい方向はX方向である。各発光装置100の半導体レーザ素子から出射されたレーザ光は、各発光装置100の外部に取り出される。その結果、各発光装置100は、半導体レーザ素子が収容された空間の上方から、
図1Bに示すように、レーザビームLを+X方向に出射する。
図1Bに示す太線の矢印は、レーザビームLの進行方向を表す。レーザビームLは、XY平面およびXZ平面においてコリメートされたビームであり、レーザビームLの光軸はビームの中心軸である。レーザビームLの出射方向は、XZ平面において各発光装置100の寸法が最も大きい方向に交差し、より具体的には直交する。
【0025】
各々がそのような構成を有する複数の発光装置100を上記のように配置することにより、レーザビームLの進行方向を前方として、最も前方にある発光装置100以外の各発光装置100から出射されたレーザビームLは、
図1Bに示すように、より前方に配置された発光装置100の上方を、より前方に配置された発光装置100に当たることなく進行する。
【0026】
したがって、各レーザビームLが干渉しないように、複数の発光装置100を各発光装置100の高さを変えて配置する必要はない。
図1Aおよび
図1Bに示すように、支持基体60Aの支持面62に段差を設けなくても、複数の発光装置100を同一平面に配置できる。また、最も前方にある発光装置100以外の各発光装置100から出射されたレーザビームLは、より前方に配置された発光装置100の上方を進行するように配置されるので、発光モジュール200Aを小型化することができ、複数のレーザビームLの光軸の間隔も狭くすることができる。複数のレーザビームLは、複数の発光装置100の各々からレーザビームLが出射されて得られる。本明細書において、「複数のレーザビームLの光軸の間隔」は、複数のレーザビームLのうち、互いに隣接する任意の2つのレーザビームLの光軸の間隔を意味する。支持面62を高さの基準として、複数のレーザビームLの光軸の高さは互いに等しい。本明細書において、「複数のレーザビームLの光軸の高さは互いに等しい」とは、複数のレーザビームLの光軸の高さのうち、最も高い光軸の高さと最も低い光軸の高さとの差が1mm以内であることを意味する。
【0027】
複数の発光装置100は同一平面に配置されるので、複数の発光装置100から発せられ、支持基体60Aが配置される平面に伝わる熱の量のばらつきを低減することができる。支持基体60Aが、支持面62の下方に、X方向に延びる流路を内部に備える場合、当該流路に液体を流すことによって複数の発光装置100の冷却の程度のばらつきを低減することができる。したがって、発光モジュール200Aでは、複数の発光装置100からの放熱効率を向上させることができる。
【0028】
さらに、複数のレーザビームLの光軸の間隔は狭いので、それに合わせて、複数のレーザビームLがすべて入射する集光レンズ70AのZ方向における寸法を小さくすることができる。
【0029】
集光レンズ70Aは、
図1Aに示すように、平板部分72と、平板部分から突出した球面状の凸レンズ部分74と、を有する。凸レンズ部分74はX方向に対して平行な光軸を有し、その光軸に対して平行に入射する光を自身の焦点に収束させる。集光レンズ70Aは、凸レンズ部分74の焦点が光ファイバ80の光入射端80aにほぼ一致するように配置される。集光レンズ70Aは、
図1Bに示すように、+X方向に進行する複数のレーザビームLを、光ファイバ80の光入射端80aに収束させる。このようにして、集光レンズ70Aは、複数のレーザビームLを結合して光ファイバ80に入射させることができる。光ファイバ80は、集光レンズ70Aによって結合された複数のレーザビームLを導波して光出射端80bから出射する。
【0030】
単一の集光レンズ70Aの代わりに、速軸集光レンズおよび遅軸集光レンズを用いてもよい。速軸集光レンズはY方向に一様な断面形状を有するシリンドリカルレンズであり、遅軸集光レンズはZ方向に一様な断面形状を有するシリンドリカルレンズである。速軸集光レンズおよび遅軸集光レンズを用いる例については後述する。
【0031】
集光レンズ70Aは、例えば、ガラス、シリコン、石英、合成石英、サファイア、透明セラミックス、シリコーン樹脂、およびプラスチックからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。
【0032】
以上のように、発光モジュール200Aは、光ファイバ80の光出射端80bから、複数のレーザビームLが結合された結合光を出射する。結合光の出力は、概略的に、各発光装置100から出射されたレーザビームLの出力に発光装置100の数および結合効率を乗算した値に等しい。したがって、発光装置100の数を増加させれば、結合光の出力を高めることができる。
【0033】
発光モジュール200Aにおいて、複数のレーザビームLのうち、一部または全部のレーザビームLの進行方向が設計上の+X方向からずれる場合、ずれの角度が数度程度であっても、複数のレーザビームLは効果的に結合せず、結合光の出力が低下する可能性がある。
【0034】
発光装置100は、後述するように、発光装置100から外部に出射されたレーザビームLの進行方向と、設計上の進行方向である+X方向とのずれを低減することを可能にする。レーザビームLの進行方向と、設計上の進行方向とがなす角度は、例えば1°以下であることが好ましく、0.1°以下であることがより好ましい。
【0035】
[発光装置]
以下に、
図2Aおよび
図2Bを参照して、本開示の実施形態1による発光装置の構成例を説明する。
図2Aは、本開示の例示的な実施形態1による発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示す発光装置の分解斜視図である。実施形態1において、
図2Aおよび
図2Bに示す発光装置100は
図1Aおよび
図1Bに示す発光モジュール200Aに採用されているが、より一般的な空間結合型の発光モジュールに採用されてもよい。なお、発光装置100を、発光モジュールに採用せずに、照明装置のような他の装置に採用してもよい。
【0036】
発光装置100は、
図2Bに示すように、基板10と、レーザ光源20と、第1ミラー部材30aと、第2ミラー部材30bと、を備える。発光装置100は、さらに、
図2Bに示すように、遅軸コリメートレンズ30cと、枠体40と、複数のワイヤ41と、カバー50と、を備えてもよい。第1ミラー部材30aは第1反射面32aを有し、第2ミラー部材30bは第2反射面32bを有する。レーザ光源20は、半導体レーザ素子22を有するチップオンサブマウント(Chip on Submount)型の半導体レーザ光源である。発光装置100は、ツェナーダイオードのような保護素子および/またはサーミスタのような内部温度を測定するための温度測定素子をさらに備えてもよい。
【0037】
図2Cは、
図2Aに示す発光装置100の他の分解斜視図である。
図2Cにおいて、
図2Bに示す複数のワイヤ41は省略されている。
図2Dは、
図2Cに示す発光装置100に含まれる枠体40を下方から見た斜視図である。
図2Eは、
図2Aに示す発光装置100から第2ミラー部材30b、遅軸コリメートレンズ30c、およびカバー50を省略した構成の上面図である。
図2Fおよび
図2Gは、
図2Aに示す発光装置100から第2ミラー部材30bおよび遅軸コリメートレンズ30cを省略した構成の、YZ平面に対して平行な断面図である。
図2Fの断面図はレーザ光源20を横切る一方、
図2Gの断面図はレーザ光源20を横切らない。
図2Hは、
図2Aに示す発光装置100の+Z方向から見た側面図である。
【0038】
実施形態1による発光装置100において、
図2Fに示すように、レーザ光源20から+Z方向に出射されたレーザビームLは、第1反射面32aで+Y方向に反射される。第1反射面32aで+Y方向に反射されたレーザビームLは、
図2Hに示すように、第2反射面32bで+X方向に反射される。そのような構成により、発光装置100は、半導体レーザ素子22が収容された空間の上方からレーザビームLを出射することができる。レーザビームLの出射方向は、XZ平面において発光装置100の寸法が最も大きい方向に交差し、より具体的には直交する。その結果、前述したように、複数の発光装置100を、同一平面上に、複数のレーザビームLの光軸の間隔が縮まるように配置することが可能になる。
【0039】
さらに、実施形態1による発光装置100において、第2ミラー部材30bの位置および向きを適切に調整することにより、発光装置100から外部に出射されたレーザビームLと、設計上の進行方向である+X方向とのずれを低減することができる。その結果、発光モジュール200Aにおいて、+X方向に進行する複数のレーザビームLを集光レンズ70Aによって効果的に結合させて高出力の結合光を出力することが可能になる。
【0040】
本明細書において、レーザ光源20から出射されたレーザビームLの進行方向を「第1方向」とも称し、第1反射面32aで反射されたレーザビームLの進行方向を「第2方向」とも称し、第2反射面32bで反射されたレーザビームLの進行方向を「第3方向」とも称する。実施形態1において、第1方向は+Z方向であり、第2方向は+Y方向であり、第3方向は+X方向であるが、これらの3つの方向に限定されない。第1方向および第2方向は互いに交差していれば、互いに直交してもよいし、直交しなくてもよい。第3方向は第1方向に延びる直線および第2方向に延びる直線の両方を含む平面に交差していれば、当該平面に直交してもよいし、直交しなくてもよい。
【0041】
以下に、発光装置100の各構成要素を説明する。
【0042】
<基板10>
基板10は、
図2Cに示すように、実装面12および下面14を有する。実装面12の法線方向は+Y方向である。本明細書において、面の法線方向とは、面の垂直方向であって、当該面を有する物体から離れる方向を意味する。
図2Cに示す例において、基板10は矩形の平板形状を有するが、この形状に限定されない。基板10は、例えば、多角形、円形または楕円形の平板形状を有してもよい。基板10の下面14は、支持基体60Aの支持面62に、例えば、はんだ材のような無機接合部材を介して接合される。
【0043】
基板10は、例えば、熱伝導率が10W/m・K以上2000W/m・K以下である材料から形成され得る。そのような高い熱伝導率を有する基板10により、駆動時にレーザ光源20から発せられる熱を、基板10を介して
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aに効果的に伝えることができる。基板10は、例えば、支持基体60Aと同じ材料から形成され得る。基板10のX方向における寸法は、例えば1mm以上10mm以下であり、Y方向における寸法は、例えば0.1mm以上5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば1mm以上20mm以下であり得る。
【0044】
<レーザ光源20>
レーザ光源20は、
図2Cに示すように、基板10の実装面12によって支持されている。レーザ光源20は、サブマウント21と、サブマウント21によって支持される端面出射型の半導体レーザ素子22と、レンズ支持部材23と、速軸コリメートレンズ24と、を備える。半導体レーザ素子22は、サブマウント21を介して、基板10の実装面12によって支持されている。半導体レーザ素子22は、第1反射面32aに向けてレーザビームLを出射するように配置される。レンズ支持部材23は、半導体レーザ素子22を跨ぐ形状を有する。レンズ支持部材23は、端面によって速軸コリメートレンズ24を支持する。レーザ光源20の構成要素を発光装置100の構成要素として扱ってもよい。
【0045】
半導体レーザ素子22は、出射面からレーザビームLを出射する。当該出射面はX方向に延び、XY平面に対して平行な平面である。その場合、半導体レーザ素子22から+Z方向に出射されたレーザビームLは、YZ平面において相対的に速く広がり、XZ平面において相対的に遅く広がる。レーザビームLの速軸方向はY方向に対して平行であり、遅軸方向はX方向に対して平行である。半導体レーザ素子22から出射されたレーザビームLは、XY平面においてY方向が長軸でありX方向が短軸である楕円形状を有する。
【0046】
速軸コリメートレンズ24は、その焦点が半導体レーザ素子22の出射面内の発光点の中心にほぼ一致するように配置される。速軸コリメートレンズ24は、半導体レーザ素子22から+Z方向に出射されたレーザビームLをYZ平面において速軸方向にコリメートする。本明細書において、「コリメートする」とは、レーザビームLを平行光にすることだけではなく、レーザビームLの広がり角を低減することも意味する。
【0047】
上記のことから、レーザ光源20は、速軸コリメートレンズ24からレーザビームLを+Z方向に出射する。レーザ光源20から出射されるレーザビームLは、YZ平面においてコリメートされているが、XZ平面においてコリメートされていない。レーザ光源20の具体的な構成について後述する。
【0048】
レーザ光源20に含まれる半導体レーザ素子22は、
図2Fに示すように、基板10、枠体40、およびカバー50によって封止されている。この封止は気密封止であることが好ましい。気密封止による効果は、半導体レーザ素子22から出射されたレーザビームLの波長が短くなるほど高くなる。気密封止されず、半導体レーザ素子22の出射面が外気に接している構成では、レーザビームLの波長が短くなるほど、集塵によって動作中に出射面の劣化が進行していく可能性が高くなるからである。
【0049】
なお、端面出射型の半導体レーザ素子22の代わりに、VCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)素子のような面発光型の半導体レーザ素子を用いてもよい。面発光型の半導体レーザ素子は、当該半導体レーザ素子から出射されたレーザビームが+Z方向に進行するように配置される。
【0050】
<第1ミラー部材30aおよび第2ミラー部材30b>
第1ミラー部材30aは、
図2Cに示すように、基板10の実装面12によって支持されている。第1ミラー部材30aは、X方向に一様な断面形状を有する。当該断面形状は概略的に三角形である。第1ミラー部材30aは、下面と、背面と、下面および背面を繋ぐ斜面とを有する。下面はXZ平面に対して平行であり、背面はXY平面に対して平行である。当該斜面の法線方向は、YZ平面に対して平行な方向であって、+Y方向と鋭角をなし、かつ-Z方向と鋭角をなす方向である。第1ミラー部材30aの下面と斜面とがなす角度は45°であるが、この角度に限定されず例えば30°以上60°以下であってもよい。
【0051】
第1ミラー部材30aは、上記の斜面に、平面状の第1反射面32aを有する。第1反射面32aは基板10の実装面12に対して傾斜し、斜め上方を向く。本明細書において、斜め上方とは、+Y方向と30°以上60°以下の角度をなす方向を意味する。第1反射面32aがレーザ光源20から出射されたレーザビームLを受けることができ、かつ、第1反射面32aの法線方向が+Y方向と30°以上60°以下の角度をなす方向であれば、第1反射面32aの法線方向は、YZ平面に対して平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0052】
第1反射面32aは、
図2Fに示すように、レーザ光源20から出射されたレーザビームLを反射してレーザビームLの進行方向を、基板10の実装面12から離れる方向に変化させる。基板10の実装面12から離れる方向であるレーザビームLの進行方向と、実装面12の法線方向とがなす角度は、例えば、0°以上5°以下であり得る。当該角度には5°の許容範囲があるので、第1ミラー部材30aの位置および向きを、第2ミラー部材30bの位置および向きほど厳密に調整する必要はない。
【0053】
第2ミラー部材30bは、
図2Bに示すように、カバー50の上面52によって第1ミラー部材30aと離隔して支持されている。第2ミラー部材30bは、Z方向に一様な断面形状を有する。当該断面形状は概略的に台形である。第2ミラー部材30bは、上面と、下面と、上面および下面を繋ぐ斜面とを有する。上面および下面の各々は、XZ平面に対して平行である。下面のZ方向における寸法は、上面のZ方向における寸法に等しい。一方で、下面のX方向における寸法は、上面のX方向における寸法よりも小さい。斜面の法線方向は、XY平面に対して平行な方向であって、+X方向と鋭角をなし、かつ-Y方向と鋭角をなす方向である。第2ミラー部材30bの上面と斜面とがなす角度は45°であるが、この角度に限定されず例えば30°以上60°以下であってもよい。第2ミラー部材30bの上面と斜面とがなす角度は、第1ミラー部材30aの下面と斜面とがなす角度に等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
第2ミラー部材30bは、上記の斜面に、平面状の第2反射面32bを有する。第2反射面32bの少なくとも一部は、第1反射面32aの少なくとも一部の上方に位置する。第2反射面32bは、第1反射面32aで反射されたレーザビームLを反射して、
図2Hに示すように、レーザビームLの進行方向を+X方向に変化させる。第2反射面32bで+X方向に反射されたレーザビームLの進行方向は、レーザ光源20から+Z方向に出射されたレーザビームLの進行方向に交差し、より具体的には直交する。
【0055】
第2反射面32bで反射されたレーザビームLについては、その進行方向が変化するとともに、その形状は、YZ平面においてY方向が長軸でありZ方向が短軸である楕円形状になる。
図1Bに示す例において、複数の発光装置100は、段階的に-Z方向にシフトするように配置されている。この例において、第2反射面32bで反射されたレーザビームLの形状は、YZ平面においてZ方向が短軸の楕円形状である。したがって、少ないシフト量で複数の発光装置100を配置することができ、その結果、発光モジュール200Aを小型化することが可能になる。
【0056】
レーザ光源20から出射されたレーザビームLは、第1反射面32aおよび第2反射面32bでこの順に反射される。その結果、前述したように、発光装置100は、半導体レーザ素子22が収容された空間の上方からレーザビームLを出射することができる。レーザビームLの出射方向は、XZ平面において発光装置100の寸法が最も大きい方向に交差し、より具体的には直交する。
【0057】
第2ミラー部材30bの下面と、カバー50の上面52との間には、
図2Hに示すように、第1樹脂層34aが存在している。第1樹脂層34aは、第2ミラー部材30bの下面を硬化前の樹脂を介してカバー50の上面52に接触させた状態で、樹脂を硬化することによって形成される。樹脂は、例えば、加熱することによって硬化される熱硬化性樹脂、または紫外線もしくは可視光の照射によって硬化される光硬化性樹脂であり得る。樹脂を硬化する前には以下のアクティブアライメントが行われる。すなわち、レーザ光源20にレーザビームLを出射させた状態で、第2反射面32bがレーザビームLの進行方向を+X方向に変化させるように、第2ミラー部材30bの位置および向きが適切に調整される。そのような調整は、発光装置100を、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aの支持面62に配置した後、第2ミラー部材30bを保持装置によって保持しながら行われ得る。このようにして、発光装置100から外部に出射されたレーザビームLの進行方向と、設計上の進行方向である+X方向とのずれを低減することができる。
【0058】
樹脂を硬化する前に、Y軸またはZ軸を回転軸として第2ミラー部材30bを回転させてその向きを調整することにより、レーザビームLの進行方向を調整することができる。Z軸を回転軸として第2ミラー部材30bを回転させることにより、レーザビームLの進行方向を上下に変化させることができる。Y軸を回転軸として第2ミラー部材30bを回転させることにより、レーザビームLの進行方向を正面方向として、レーザビームLの進行方向を左右に変化させることができる。
【0059】
さらに樹脂を硬化する前に、第2ミラー部材30bのX方向における位置を調整することにより、レーザビームLの光軸の高さを調整することができる。第2ミラー部材30bを+X方向にシフトさせることにより、レーザビームLの光軸の高さを小さくし、第2ミラー部材30bを-X方向にシフトさせることにより、レーザビームLの光軸の高さを大きくすることができる。
【0060】
実施形態1による発光装置100とは異なり、第2ミラー部材30bの位置および向きを調整せずにカバー50の上面52に固定した構成では、第2反射面32bで反射されたレーザビームLの進行方向が必ずしも+X方向に対して平行でない場合がある。その場合でも、第2ミラー部材30bと遅軸コリメートレンズ30cとの間にウェッジを配置することにより、第2反射面32bで反射されたレーザビームLの進行方向を+X方向に向けることができる。ウェッジは、遅軸コリメートレンズ30cから出射したレーザビームLが入射できる位置に配置してもよい。
【0061】
ウェッジは、互いに反対側に位置する光入射面および光反射面を有する。当該光入射面の法線方向は-X方向に対して平行であり、当該光出射面の法線方向は、XY平面に対して平行な方向であって、+X方向と鋭角をなし、かつ+Y方向または-Y方向と鋭角をなす方向である。互いに平行ではない光入射面および光入射面での屈折に起因して、ウェッジは、自身を透過するレーザビームLの進行方向を変化させることができる。しかしながら、ウェッジを用いる場合、レーザビームLの進行方向を+X方向に向けるために、光出射面の法線方向が互いに異なる複数のウェッジを用意し、当該複数のウェッジから、光出射面の法線方向が適切な方向であるウェッジを選択する必要がある。
【0062】
これに対して、実施形態1による発光装置100では、第2ミラー部材30bを適切な位置および向きに配置することにより、第2反射面32bで反射されたレーザビームLの進行方向を+X方向に向けることができる。実施形態1による発光装置100では、上面と斜面とがなす角度が互いに異なる複数の第2ミラー部材30bを用意し、当該複数の第2ミラー部材30bから適切な角度の第2ミラー部材30bを選択する必要はない。
【0063】
図2Bおよび
図2Cに示すミラー部材30a、30bは、例えば、斜面を有する台と、当該斜面上に別途形成される反射面とを備え得る。台は、例えば、ガラス、石英、合成石英、サファイア、セラミックス、プラスチック、シリコン、金属、シリコーン樹脂、および誘電体材料からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。反射面は、例えば、誘電体多層膜および金属材料などの反射性材料から形成され得る。この反射面が、
図2Bおよび
図2Cに示す反射面32a、32bに相当する。
【0064】
あるいは、ミラー部材30a、30bは、例えば、斜面を有する台を備え、当該台は上記の反射性材料から形成されていてもよい。この場合、当該台の斜面が、反射面32a、32bに相当する。
【0065】
<遅軸コリメートレンズ30c>
遅軸コリメートレンズ30cは、
図2Bに示すように、カバー50の上面52によって支持されている。遅軸コリメートレンズ30cは、
図2Hに示すように、第2反射面32bから+X方向に離れて位置する。遅軸コリメートレンズ30cは、Z方向に一様な断面形状を有するシリンドリカルレンズである。遅軸コリメートレンズ30cは、その焦点が
図2Fに示す半導体レーザ素子22の出射面内の発光点の中心にほぼ一致するように支持されている。ただし、レーザビームLは第1反射面32aおよび第2反射面32bでこの順に反射されるので、焦点の位置の調整は、レーザビームLの光路が直線ではなく折れ線であることおよび/または光学的距離を考慮した上で行われる。
【0066】
第1反射面32aで+Y方向に反射されたレーザビームLは、YZ平面においてコリメートされているが、XY平面においてコリメートされていない。したがって、第2反射面32bで+X方向に反射されたレーザビームLは、
図2Hに示すように、XY平面において広がりながら進行する。
図2Hに示す破線によって囲まれた領域は、レーザビームLの進行方向に対して垂直な任意の平面においてレーザビームLの強度がそのピーク強度の1/e
2以上である領域である。eは自然対数の底である。
【0067】
遅軸コリメートレンズ30cは、第2反射面32bで反射されたレーザビームLをXY平面において遅軸方向にコリメートする。第2反射面32bで反射されたレーザビームLの遅軸方向は、
図2Hに示すようにY方向に対して平行である。これに対して、
図2Fに示すレーザ光源20から出射されたレーザビームLの遅軸方向は、X方向に対して平行である。すなわち、第2反射面32bで反射されたレーザビームLの遅軸方向は、レーザ光源20から出射されたレーザビームLの遅軸方向に交差し、より具体的には直交する。
【0068】
遅軸コリメートレンズ30cの下面と、カバー50の上面52との間には、
図2Hに示すように、第2樹脂層34bが存在している。第2樹脂層34bは、遅軸コリメートレンズ30cの下面をカバー50の上面52に硬化前の樹脂を介して接触させた状態で、樹脂を硬化することによって形成される。樹脂を硬化する前には以下のアクティブアライメントが行われる。すなわち、レーザ光源20にレーザビームLを出射させた状態で、遅軸コリメートレンズ30cがレーザビームLを遅軸方向にコリメートするように、遅軸コリメートレンズ30cの位置および向きが適切に調整される。そのような調整は、発光装置100を、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aの支持面62に配置した後、遅軸コリメートレンズ30cを保持装置によって保持しながら行われ得る。
【0069】
遅軸コリメートレンズ30cは、第2反射面32bから+X方向に離れて位置していれば、必ずしもカバー50によって支持される必要はない。発光装置100は、枠体40よりも+X方向に位置する支持台を備えてもよく、当該支持台によって遅軸コリメートレンズ30cが支持されていてもよい。
【0070】
あるいは、
図1Aおよび
図1Bに示す発光モジュール200Aにおいて、発光装置100から出射されたレーザビームLの進行方向を前方として、最も前方の発光装置100以外の各発光装置100の遅軸コリメートレンズ30cを、1つ前方の発光装置100のカバー50または1つ前方の発光装置100の第2ミラー部材30bによって支持してもよい。最も前方の発光装置100の遅軸コリメートレンズ30cは、上記の支持台によって支持してもよい。
【0071】
<枠体40>
枠体40は、
図2Bに示すように基板10の実装面12の周囲に位置し、
図2Aに示すようにカバー50を支持する。枠体40は、
図2Bに示すように、レーザ光源20および第1ミラー部材30aを囲む。枠体40は、
図2Cに示すように、内側面から内側に突出した突出部43を有する。
図2Eに示す例において、突出部43は、サブマウント21の両側面および背面に向けて突出している。突出部43は、さらに、サブマウント21の正面に向けて突出していてもよい。また、突出部43は、両側面にのみ突出していてもよい。サブマウント21の正面は、半導体レーザ素子22の出射面と同じ側に位置し、サブマウント21の背面は、半導体レーザ素子22の出射面とは反対側に位置する。サブマウント21の両側面は、サブマウント21の正面および背面を繋ぐ。
【0072】
枠体40は、
図2Cに示すように、第1上面42aと、第2上面42bとを有する。第2上面42bは突出部43の上面であり、第1上面42aよりも下方に位置し、上面視で第1上面42aによって囲まれる。
図2Eに示すように、第2上面42bは概略的にU字形状を有する。
【0073】
第1上面42aには、第1接合領域46a、および第1接合領域46aを囲む外側領域47が設けられている。第1接合領域46aおよび外側領域47の各々は概略的に矩形環状の形状を有する。第1接合領域46aは、カバー50および枠体40を、はんだ材のような無機接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。外側領域47は、カバー50を接合する無機接合部材が外側領域47を越えて流れ出る可能性を低減する。第1接合領域46aおよび外側領域47は、
図2Eに示すように、上面視で、レーザ光源20および第1ミラー部材30aを囲む。第1上面42aには、さらに、第1接合領域46aおよび外側領域47よりも-Z方向において、互いに電気的に絶縁された第1導電領域48aおよび第2導電領域48bが設けられている。
【0074】
第2上面42bには、互いに電気的に絶縁された第3導電領域48cおよび第4導電領域48dが設けられている。第3導電領域48cは、
図2Gに示すように、内部配線45を介して第1導電領域48aに電気的に接続されている。同様に、第4導電領域48dは、他の内部配線を介して第2導電領域48bに電気的に接続されている。
【0075】
図2Gに示す例において、内部配線45は、第1導電領域48aに接触し、Y方向に延びる複数の第1部分と、第3導電領域48cに接触し、Y方向に延びる複数の第2部分とを備える。第1部分の数は複数である必要はなく、1個であってもよい。第2部分の数についても同様である。内部配線45は、さらに、複数の第1部分および複数の第2部分に接触し、Z方向に延びる第3部分を備える。ただし、内部配線45のうち、第1および第2部分の形状は、
図2Gに示す例に限定されない。枠体40が複数の層から形成された積層構造を有する場合、第1および第2部分の形状は直線状ではなく、階段状であってもよい。
【0076】
図2Eに示すように、上面視で、レーザ光源20および第1ミラー部材30aは、第3導電領域48cのZ方向に延びる部分と、第4導電領域48dのZ方向に延びる部分との間に位置する。第3導電領域48cは、
図2Bに示す複数のワイヤ41のうち、一部のワイヤ41を介して、半導体レーザ素子22に電気的に接続されている。第4導電領域48dは、サブマウント21の上面および
図2Bに示す残りのワイヤ41を介して、半導体レーザ素子22に電気的に接続されている。したがって、第1導電領域48aと第2導電領域48bとの間に電圧を印加することにより、レーザ光源20に給電することができる。
【0077】
枠体40は、さらに、
図2Dに示すように、第1下面44aと、第2下面44bとを有する。第2下面44bは突出部43の下面を部分的に有し、第1下面44aよりも上方に位置し、-Y方向から見る下面視で第1下面44aによって囲まれる。第2下面44bは、概略的に矩形環状の形状を有する。
図2Cに示す基板10の一部または全部は、第1下面44aと第2下面44bとの段差によって囲まれた空間に収容される。枠体40を透過して見たとき、第2下面44bの外周は、上面視で、基板10の実装面12の外周を囲み、第2下面44bの内周は、上面視で、基板10の実装面12の外周によって囲まれる。
【0078】
第1下面44aの全体には、第2接合領域46bが設けられている。第2接合領域46bは、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aおよび枠体40を、はんだ材のような無機接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。第2下面44bの全体には、第3接合領域46cが設けられている。第3接合領域46cは、基板10の実装面12の周縁領域に、ろう材のような無機接合部材を介し接合される。第3接合領域46cは、基板10および枠体40を、無機接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。ろう材の融点は、はんだ材の融点よりも高い。したがって、ろう材を加熱して基板10および枠体40を接合し、次に、はんだ材を加熱して基板10およびレーザ光源20を接合する場合、はんだ材に加えられる熱が原因で基板10および枠体40の接合が外れる可能性を低減できる。
【0079】
図2Dに示す例において、第1下面44aの全体に第2接合領域46bが設けられているが、第1下面44aの一部に第2接合領域46bが設けられていてもよい。同様に、
図2Dに示す例において、第2下面44bの全体に第3接合領域46cが設けられているが、第2下面44bの一部に第3接合領域46cが設けられていてもよい。あるいは、第1下面44aに第2接合領域46bが設けられていなくてもよいし、第2下面44bに第3接合領域46cが設けられていなくてもよい。第1下面44aに第2接合領域46bが設けられていない場合、枠体40および支持基体60Aは接合されず、基板10の下面14のみで、基板10および支持基体60Aが接合される。
【0080】
図2Fに示す例において、枠体40の第1下面44aは、基板10の下面14と同一平面に位置する。枠体40の第1下面44aは、基板10の下面14よりも上方に位置していてもよい。あるいは、基板10および支持基体60Aを、無機接合部材を介して接合する際に妨げにならないのであれば、枠体40の第1下面44aは、基板10の下面14よりも下方に位置していてもよい。
【0081】
枠体40は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aと同様に、前述のセラミックスから形成され得る。枠体40のX方向における寸法は、例えば3mm以上15mm以下であり、Y方向における最大の寸法は、例えば1mm以上5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば3mm以上30mm以下であり得る。
【0082】
接合領域46a~46c、外側領域47、および導電領域48a~48dは、例えば、Ag、Cu、W、Au、Ni、Pt、およびPdなどからなる群から選択される少なくとも1つの金属材料から形成され得る。接合領域46a、外側領域47、および導電領域48a~48dは、例えば、上面42a、42bの全体に金属膜を設け、当該金属膜をエッチングによってパターニングすることにより、形成され得る。
【0083】
内部配線45の配線抵抗値は、5mΩ以下であることが好ましく、1mΩ以下であることがより好ましい。内部配線45は導電性の材料から形成される。内部配線45の材料はCuWであることが好ましい。その場合、基板10の材料は例えばCuであり、枠体40の材料は例えばAlNであり得る。
【0084】
<カバー50>
カバー50は、
図2Bに示すように、上面52および下面54を有する。カバー50の下面54は基板10の実装面12に対向し、カバー50の上面52はカバー50の下面54の反対側に位置する。本明細書において、カバー50の下面54を「対向面」とも称する。カバー50は、半導体レーザ素子22および第1ミラー部材30aの上方に位置する。
【0085】
カバー50は、基板10および枠体40とともにレーザ光源20を封止する封止部材として機能する。カバー50は、さらに、第2ミラー部材30bおよび遅軸コリメートレンズ30cを支持する支持部材として機能する。
【0086】
カバー50は、第1反射面32aで反射されたレーザビームLを透過させる。より具体的には、カバー50は、
図2Cに示すように透光部分56を有し、透光部分56は、第1反射面32aで反射されたレーザビームLを透過させる。
【0087】
カバー50は、下面54のうち、レーザビームLが透過する透光部分56の少なくとも周囲に遮光膜58を有する。
図2Cに示す例において、透光部分56は矩形形状を有するが、この形状に限定されない。透光部分56の形状は、例えば、円形であってもよいし、楕円形であってもよい。
【0088】
あるいは、カバー50は、下面54のうち、透光部分56の少なくとも周囲の一部に遮光膜58を有していてもよい。例えば、透光部分56の端の一部が下面54の端の一部に一致する場合、遮光膜58は、下面54のうち、以下の領域の少なくとも一部に設けられ得る。当該領域は、下面54において、透光部分56の端のうち、上記の一部以外の残りの部分に隣接する領域である。
【0089】
遮光膜58は、発光装置100の内部で生じるレーザビームL以外の迷光が発光装置100の外部に漏れる可能性を低減する。遮光膜58は、さらに、
図2Hに示す樹脂層34a、34bを紫外線または可視光の照射によって形成する際に、紫外線または可視光がレーザ光源20に到達する可能性を低減する。遮光膜58は、さらに、発光装置100の外部に出射されたレーザビームLの戻り光がレーザ光源20に到達する可能性を低減する。紫外線もしくは可視光または戻り光による照射を低減できれば、レーザ光源20は損傷しにくくなる。
【0090】
図2Cに示す例において、遮光膜58は、下面54のうち、透光部分56以外の領域の全体に設けられている。そのように設けられた遮光膜58は、上記の迷光が発光装置100の外部に漏れる可能性、および上記の紫外線もしくは可視光または上記の戻り光がレーザ光源20に到達する可能性をさらに低減する。
【0091】
カバー50のうち、レーザビームLを透過させる透光部分56は、レーザビームLに対して、例えば60%以上の透過率を有し、好ましくは80%以上の透過率を有し得る。カバー50のうち、残りの部分はそのような透光性を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0092】
カバー50は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す集光レンズ70Aと同様に、前述の透光性材料から形成され得る。カバー50のX方向における寸法は、例えば3mm以上15mm以下であり、Y方向における寸法は、例えば0.1mm以上1.5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば1mm以上20mm以下であり得る。
【0093】
遮光膜58は、例えば、接合領域46a~46c、外側領域47、および導電領域48a~48dと同様に、前述の金属材料から形成され得る。遮光膜58は、接合領域46a~46c、外側領域47、および導電領域48a~48dと同様に、例えば、カバー50の下面54の全体に金属膜を設け、当該金属膜をエッチングによってパターニングすることにより、形成され得る。
【0094】
遮光膜58の周縁領域は、枠体40の第1上面42aに設けられた第1接合領域46aに、はんだ材のような無機接合部材を介して接合される。遮光膜58が上記の金属材料から形成される場合、遮光膜58は、カバー50および枠体40を、無機接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。
【0095】
なお、
図2Aから
図2Cに示す例において、カバー50は平板形状を有するが、この形状に限定されない。発光装置100から枠体40が除去された構成において、基板10は平板形状を有し、カバー50は下部が開放された箱形状を有していてもよい。そのような形状の場合、基板10およびカバー50は、カバー50の下面を基板10の実装面12の周縁領域によって支持するように接合される。あるいは、発光装置100において、カバー50は下部が開放された箱形状を有していてもよい。そのような形状の場合、枠体40およびカバー50は、カバー50の下面を枠体40の第1上面42aによって支持するように接合される。
【0096】
以上のことから、実施形態1による発光装置100は、半導体レーザ素子22が収容された空間の上方からレーザビームLを出射することができる。レーザビームLの出射方向は、XZ平面において各発光装置100の寸法が最も大きい方向に交差し、より具体的には直交する。その結果、前述したように、複数の発光装置100を、複数の発光装置100から出射された複数のレーザビームLの光軸の間隔が縮まるように配置することができる。
【0097】
さらに、実施形態1による発光装置100において、発光装置100から外部に出射されたレーザビームLの進行方向と、設計上の進行方向である+X方向とのずれを低減することができる。その結果、
図1Aおよび
図1Bに示す発光モジュール200Aにおいて、複数のレーザビームLを集光レンズ70Aによって効果的に結合して光ファイバ80に入射させることができる。
【0098】
発光装置100は、例えば、以下のようにして製造され得る。最初の工程において、基板10、レーザ光源20、第1ミラー部材30a、第2ミラー部材30b、遅軸コリメートレンズ30c、枠体40、複数のワイヤ41、およびカバー50が用意される。次の工程において、枠体40が基板10に接合される。次の工程において、レーザ光源20および第1ミラー部材30aが、基板10の実装面12に設けられる。次の工程において、レーザ光源20に給電するための複数のワイヤ41が設けられる。次の工程において、カバー50が枠体40に接合される。次の工程において、第2ミラー部材30bの下面をカバー50の上面52に硬化前の樹脂を介して接触させた状態で、アクティブアライメントが行われる。次の工程において、樹脂を硬化して第2ミラー部材30bとカバー50との間に第1樹脂層34aが形成される。次の工程において、遅軸コリメートレンズ30cの下面をカバー50の上面52に硬化前の樹脂を介して接触させた状態で、アクティブアライメントが行われる。次の工程において、樹脂を硬化して遅軸コリメートレンズ30cとカバー50との間に第2樹脂層34bが形成される。
【0099】
(発光装置100の変形例)
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照して、実施形態1による発光装置100の変形例1および変形例2をそれぞれ説明する。
図3Aは、実施形態1による発光装置100の変形例1の構成を模式的に示す+Z方向から見た側面図である。
図3Aに示す発光装置110が実施形態1による発光装置100とは異なる点は、発光装置110が、
図2Aに示す遅軸コリメートレンズ30cを備えず、かつ
図2Aに示す第2ミラー部材30bの代わりに
図3Aに示す第2ミラー部材30dを備えることである。
【0100】
第2ミラー部材30dは、Z方向において一様な断面形状を有する。第2ミラー部材30dは、
図3Aに示すように、曲面状の第2反射面32dを有する。第2反射面32dのXY平面における曲線は、例えば放物線であり得る。第2ミラー部材30dは、放物線の焦点が
図2Fに示す半導体レーザ素子22の出射面内の発光点の中心にほぼ一致するように、カバー50の上面52によって支持されている。その結果、第2反射面32dは、第1反射面32aで反射されてXY平面において広がりながら+Y方向に進行するレーザビームLを、
図3Aに示すように、XY平面において遅軸方向にコリメートした状態で+X方向に反射する。第2反射面32dのXY平面における曲線が放物線であれば、レーザビームLの広がりを低減するだけでなく、レーザビームLを平行光にすることができる。ただし、
図2Fに示すようにレーザビームLは第1反射面32aで反射されるので、焦点の位置の調整は、レーザビームLの光路が直線ではなく折れ線であることおよび/または光学的距離を考慮した上で行われる。
【0101】
発光装置110において、第2反射面32dで反射されたレーザビームLはコリメートされているので、遅軸コリメートレンズ30cを別途設ける必要はない。したがって、発光装置110では、部品の数を少なくすることができる。なお、レーザビームLを平行光にする必要がなく、レーザビームLの広がりを低減すればよいのであれば、第2反射面32dのXY平面における曲線は放物線でなくてもよい。
【0102】
図3Bは、実施形態1による発光装置100の変形例2の構成を模式的に示す+Z方向から見た側面図である。
図3Bに示す発光装置120が実施形態1による発光装置100とは異なる点は、発光装置120が、枠体40およびカバー50の代わりに、支持部材36bと、支持台36cとを備えることである。レーザ光源20を封止する必要がないのであれば、枠体40およびカバー50を設ける必要はない。支持部材36bはレーザ光源20よりも-X方向に配置され、第2ミラー部材30bを第1ミラー部材30aと離隔して支持する。支持台36cは、レーザ光源20よりも+X方向に配置され、遅軸コリメートレンズ30cを支持する。
【0103】
発光装置120では、支持部材36bおよび支持台36cの位置および向きを調整することにより、第2ミラー部材30bおよび遅軸コリメートレンズ30cの位置および向きをそれぞれ適切に調整できる。発光装置100とは異なり、カバー50上で第2ミラー部材30bおよび遅軸コリメートレンズ30cの位置および向きを調整する必要がないので、第2ミラー部材30bおよび遅軸コリメートレンズ30cの位置および向きの調整が容易である。
【0104】
(実施形態2)
以下に、
図4を参照して、本開示の実施形態2による発光モジュールの構成例を説明する。
図4は、本開示の例示的な実施形態2による発光モジュールの構成を模式的に示す上面図である。
図4に示す発光モジュール200Bは、以下に説明するように、実施形態1による発光モジュール200Aよりも高出力のレーザビームを出射する。
図4に示す発光モジュール200Bは、以下の4つの点で実施形態1による発光モジュール200Aとは異なる。
【0105】
第1の点は、発光モジュール200Bが、
図1Aおよび
図1Bに示す複数の発光装置100の代わりに、複数の発光装置100aと、複数の発光装置100bと、複数の発光装置100cと、複数の発光装置100dとを備えることである。各発光装置100a~100dは、発光装置100と同じ構造を有する。
図4に示す例において、発光装置100aの数は3個であるが、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。発光装置100b~100dの数についても同様である。
【0106】
第2の点は、発光モジュール200Bが、ミラー部材92a~92dと、1/2波長板94と、偏光ビームスプリッタ96とを備えることである。ミラー部材92aは反射面93aを有し、ミラー部材92bは反射面93bを有し、ミラー部材92cは反射面93cを有し、ミラー部材92dは反射面93dを有する。
【0107】
第3の点は、発光モジュール200Bが、
図1Aおよび
図1Bに示す集光レンズ70Aの代わりに集光レンズ70Bを備えることである。集光レンズ70Bは、速軸集光レンズ70aと、遅軸集光レンズ70bとを含む。速軸集光レンズ70aは、Y方向に一様な断面形状を有するシリンドリカルレンズであり、遅軸集光レンズ70bは、Z方向に一様な断面形状を有するシリンドリカルレンズである。速軸集光レンズ70aはX方向に対して平行な光軸を有し、その光軸に対して平行に入射する光をXZ平面において自身の焦点に収束させる。遅軸集光レンズ70bはX方向に対して平行な光軸を有し、その光軸に対して平行に入射する光をXY平面において自身の焦点に収束させる。集光レンズ70Bの材料は、集光レンズ70Aの材料と同じである。
【0108】
第4の点は、発光モジュール200Bが、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aの代わりに支持基体60Bを備えることである。支持基体60Bが支持する部品の数は、支持基体60Aが支持する部品の数よりも多い。したがって、支持基体60BのX方向における寸法は、支持基体60AのX方向における寸法よりも大きく、支持基体60BのZ方向における寸法は、支持基体60AのZ方向における寸法よりも大きい。支持基体60Bの材料は、支持基体60Aの材料と同じである。
【0109】
複数の発光装置100aは、X方向において、並んで配置され、Z方向における位置が互いに異なるように支持面62に配置される。
図4に示す例において、複数の発光装置100aは、-X方向において、並んで配置され、段階的に+Z方向にシフトするように支持面62に配置される。シフトする方向は、+Z方向ではなく、その反対方向である-Z方向でもよい。あるいは、複数の発光装置100aは、X方向において、並んで配置され、Z方向に不規則に配置されてもよい。複数の発光装置100bの配置については、複数の発光装置100aの配置と同様である。複数の発光装置100bは、Z方向において複数の発光装置100aに隣接している。本明細書において、複数の発光装置100aまたは複数の発光装置100bが配置される方向を「一方向」とも称する。
【0110】
複数の発光装置100cは、Z方向において、並んで配置され、X方向における位置が互いに異なるように支持面62に配置される。
図4に示す例において、複数の発光装置100cは、+Z方向において、並んで配置され、段階的に+X方向にシフトするように支持面62に配置される。シフトする方向は、+X方向ではなく、その反対方向である-X方向でもよい。あるいは、複数の発光装置100cは、Z方向において、並んで配置され、X方向に不規則に配置されてもよい。複数の発光装置100dの配置については、複数の発光装置100cの配置と同様である。複数の発光装置100dは、X方向において複数の発光装置100cに隣接している。本明細書において、複数の発光装置100cまたは複数の発光装置100dが配置される方向を「他の方向」とも称する。
【0111】
各発光装置100aは-X方向にレーザビームLaを出射する。レーザビームLaの進行方向は、複数の発光装置100aが配置される方向に対して平行である。同様に、各発光装置100bは-X方向にレーザビームLbを出射する。レーザビームLbの進行方向は、複数の発光装置100bが配置される方向に対して平行である。
【0112】
各発光装置100cは+Z方向にレーザビームLcを出射する。レーザビームLcの進行方向は、複数の発光装置100cが配置される方向に対して平行である。同様に、各発光装置100dは+Z方向にレーザビームLdを出射する。レーザビームLdの進行方向は、複数の発光装置100dが配置される方向に対して平行である。
【0113】
レーザビームLa、Lbの偏光方向は、レーザビームLc、Ldの偏光方向と同じである。すなわち、レーザビームLc、Ldの偏光方向と支持面62とがなす角度は、レーザビームLa、Lbの偏光方向と支持面62とがなす角度と同じである。以下では、レーザビームLa~Ldの偏光方向が支持面62に対して平行である場合を仮定する。
【0114】
支持面62を高さの基準として、複数の発光装置100aの各々からレーザビームLaが-X方向に出射されて得られる複数のレーザビームLaの光軸の高さは互いに等しい。複数の発光装置100bの各々からレーザビームLbが-X方向に出射されて得られる複数のレーザビームLbの光軸の高さについても同様である。複数の発光装置100cの各々からレーザビームLcが+Z方向に出射されて得られる複数のレーザビームLcの光軸の高さについても同様である。複数の発光装置100dの各々からレーザビームLdが+Z方向に出射されて得られる複数のレーザビームLdの光軸の高さについても同様である。複数のレーザビームLa~Ldの光軸の高さは互いに等しい。
【0115】
反射面93aは、複数のレーザビームLaを反射して複数のレーザビームLaの進行方向を+Z方向に変化させる。反射面93bは、複数のレーザビームLbを反射して複数のレーザビームLbの進行方向を+Z方向に変化させる。反射面93cは、複数のレーザビームLcを反射して複数のレーザビームLcの進行方向を+X方向に変化させる。反射面93dは、複数のレーザビームLdを反射して複数のレーザビームLdの進行方向を+X方向に変化させる。
【0116】
本明細書において、レーザビームLaまたはレーザビームLbを「第1レーザビーム」とも称し、第1レーザビームを反射するミラー部材92aまたはミラー部材92bを「第3ミラー部材」とも称し、第3ミラー部材の反射面を「第3反射面」とも称する。同様に、レーザビームLcまたはレーザビームLdを「第2レーザビーム」とも称し、第2レーザビームを反射するミラー部材92cまたはミラー部材92dを「第4ミラー部材」とも称し、第4ミラー部材の反射面を「第4反射面」とも称する。
【0117】
1/2波長板94は複数のレーザビームLa、Lbの光路上に位置し、複数のレーザビームLa、Lbの偏光方向を90°回転させる。複数のレーザビームLa、Lbの偏光方向は、複数のレーザビームLc、Ldの偏光方向に直交する。
【0118】
偏光ビームスプリッタ96は、P偏光を透過させ、S偏光を反射する。前述したように、各発光装置100a~100dから出射されたレーザビームLa~Ldの偏光方向が支持面62に対して平行である場合、1/2波長板94を通過した複数のレーザビームLa、LbはS偏光であり、1/2波長板94を通過しない複数のレーザビームLc、LdはP偏光である。したがって、偏光ビームスプリッタ96は、1/2波長板94を通過した複数のレーザビームLa、Lbを反射し、1/2波長板94を通過しない複数のレーザビームLc、Ldを透過させる。その結果、偏光ビームスプリッタ96は、1/2波長板94を通過した複数のレーザビームLa、Lbおよび1/2波長板94を通過しない複数のレーザビームLc、Ldを混合して集光レンズ70Bに向ける。混合された複数のレーザビームLa~Ldは+X方向に進行する。
【0119】
各発光装置100a~100dから出射されたレーザビームLa~Ldの偏光方向が支持面62に対して垂直である場合、1/2波長板94は複数のレーザビームLc、Ldの光路上に位置し、複数のレーザビームLc、Ldの偏光方向を90°回転させる。1/2波長板94を通過しない複数のレーザビームLa、LbはS偏光であり、1/2波長板94を通過した複数のレーザビームLc、LdはP偏光である。偏光ビームスプリッタ96は、1/2波長板94を通過しない複数のレーザビームLa、Lbを反射し、1/2波長板94を通過した複数のレーザビームLc、Ldを透過させる。その結果、偏光ビームスプリッタ96は、1/2波長板94を通過しない複数のレーザビームLa、Lbおよび1/2波長板94を通過した複数のレーザビームLc、Ldを混合して集光レンズ70Bに向ける。混合された複数のレーザビームLa~Ldは+X方向に進行する。
【0120】
集光レンズ70Bに含まれる速軸集光レンズ70aは、その焦点が光ファイバ80の光入射端80aにほぼ一致するように配置される。遅軸集光レンズ70bの配置についても同様である。速軸集光レンズ70aおよび遅軸集光レンズ70bは、+X方向に進行する複数のレーザビームLa~Ldを光ファイバ80の光入射端80aに収束させる。このようにして、集光レンズ70Bは、複数のレーザビームLa~Ldを結合して光ファイバ80に入射させることができる。光ファイバ80は、集光レンズ70Bによって結合された複数のレーザビームLa~Ldを導波して光出射端80bから出射する。
【0121】
以上のように、発光モジュール200Bは、光ファイバ80の光出射端80bから、複数のレーザビームLa~Ldが結合された結合光を出射する。発光モジュール200Bでは、
図1Aおよび
図1Bに示す発光モジュール200Aよりも、発光装置100a~100dの数を増加させることができる。発光装置100a~100dの数を増加させれば結合光の出力を高めることができるので、発光モジュール200Bは、発光モジュール200Aよりも高出力のレーザビームを出射することができる。
【0122】
さらに、発光モジュール200Bでは、複数の発光装置100aについて、レーザビームLaの進行方向を前方として、最も前方にある発光装置100a以外の各発光装置100aから出射されたレーザビームLaは、
図4に示すように、より前方に配置された発光装置100aに当たることなく進行する。したがって、各レーザビームLaが干渉しないように、複数の発光装置100aの各々の高さを変えて配置する必要はない。
図4に示すように、支持基体60Bの支持面62に段差を設けなくても、複数の発光装置100aを同一平面上に、複数のレーザビームLaの光軸の間隔が縮まるように配置することができる。複数の発光装置100aは同一平面に配置されるので、複数の発光装置100aから発せられ、支持基体60Bが配置される平面に伝わる熱の量のばらつきを低減することができる。複数の発光装置100b、複数の発光装置100c、および複数の発光装置100dについても同様である。
【0123】
(発光モジュール200Bの変形例)
以下に、
図5を参照して、実施形態2による発光モジュール200Bの変形例を説明する。
図5は、実施形態2による発光モジュール200Bの変形例を模式的に示す上面図である。
図5に示す発光モジュール210Bは、以下の点で実施形態2による発光モジュール200Bとは異なる。複数の発光装置100aについて、最も前方の発光装置100a以外の各発光装置100の遅軸コリメートレンズ30cは、1つ前方の発光装置100のカバー50によって支持されている。この遅軸コリメートレンズ30cは、第2ミラー部材30bによって支持されてもよい。最も前方の発光装置100aは支持台36cをさらに備え、最も前方の発光装置100aの遅軸コリメートレンズ30cは支持台36cによって支持されている。複数の発光装置100b、複数の発光装置100c、および複数の発光装置100dについても同様である。
【0124】
発光モジュール210Bでは、発光モジュール200Bと比較し、複数の発光装置100aについて、複数の遅軸コリメートレンズ30c以外の構成要素を配置した後、複数の遅軸コリメートレンズ30cを配置しやすい。したがって、各遅軸コリメートレンズ30を適切な位置および向きに調整しやすい。複数の発光装置100b、複数の発光装置100c、および複数の発光装置100dについても同様である。
【0125】
[レーザ光源20の構成]
次に、
図6Aおよび
図6Bを参照して、
図2Cに示すレーザ光源20の構成の例を説明する。
図6Aは、レーザ光源20の分解斜視図である。
図6Bは、レーザ光源20の、YZ平面に対して平行な断面図である。以下に、レーザ光源20の各構成要素を説明する。
【0126】
サブマウント21は、
図6Aに示すように、XZ平面に対して平行である上面21s1および下面21s2を有する。上面21s1および下面21s2の各々には金属膜が設けられている。上面21s1に設けられた金属膜は、半導体レーザ素子22およびレンズ支持部材23をサブマウント21に無機接合部材で接合する際に、接合強度を向上させる。上面21s1に設けられた金属膜は、さらに、半導体レーザ素子22に電力を供給することに用いてもよい。下面21s2に設けられた金属膜は、
図2Cに示す基板10およびレーザ光源20を、無機接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。上面21s1および下面21s2の各々に設けられた金属膜は、駆動時に半導体レーザ素子22で発せられる熱を、サブマウント21を介して基板10に伝えることにも役立つ。サブマウント21は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aと同様に、前述のセラミックス、金属材料、または金属マトリクス複合材料から形成され得る。
【0127】
半導体レーザ素子22は、
図6Aに示すように、サブマウント21の上面21s1によって支持されている。半導体レーザ素子22はZ方向に交差する2つの端面の一方に出射面22eを有し、出射面22eからレーザビームを+Z方向に出射する。レーザビームは、+Z方向に進行するにつれてYZ平面およびXZ平面において異なる速さで広がる。レーザビームは、YZ平面において相対的に速く広がり、XZ平面において相対的に遅く広がる。レーザビームのスポットは、コリメートしない場合、ファーフィールドで、XY平面においてY方向が長軸でありX方向が短軸である楕円形状を有する。
【0128】
半導体レーザ素子22は、可視領域における紫色、青色、緑色もしくは赤色のレーザビーム、または不可視領域における赤外もしくは紫外のレーザビームを出射し得る。紫色光の発光ピーク波長は、400nm以上420nm以下の範囲内にあることが好ましく、400nm以上415nm以下の範囲内にあることがより好ましい。青色光の発光ピーク波長は、420nmより大きく495nm以下の範囲内にあることが好ましく、440nm以上475nm以下の範囲内にあることがより好ましい。緑色光の発光ピーク波長は、495nmより大きく570nm以下の範囲内にあることが好ましく、510nm以上550nm以下の範囲内にあることがより好ましい。赤色光の発光ピーク波長は、605nm以上750nm以下の範囲内にあることが好ましく、610nm以上700nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0129】
紫色、青色および緑色のレーザビームを出射する半導体レーザ素子22としては、窒化物半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体材料としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色のレーザビームを出射する半導体レーザ素子22としては、例えば、InAlGaP系、GaInP系、GaAs系、およびAlGaAs系の半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。
【0130】
レンズ支持部材23は、
図6Aに示すように、サブマウント21の上面21s1によって支持されている。レンズ支持部材23は、2つの柱状部分23aと、2つの柱状部分23aの間に位置し、2つの柱状部分23aを連結する連結部分23bとを有する。2つの柱状部分23aは半導体レーザ素子22の両側に位置し、連結部分23bは半導体レーザ素子22の出射面22e側の上方に位置する。レンズ支持部材23は、2つの柱状部分23aの端面23asによって速軸コリメートレンズ24を支持する。レンズ支持部材23は、半導体レーザ素子22を跨ぐように位置し、半導体レーザ素子22から出射されたレーザビームが速軸コリメートレンズ24に入射することを妨げない。
【0131】
レンズ支持部材23は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す支持基体60Aと同様に、前述のセラミックスから形成され得る。レンズ支持部材23は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す集光レンズ70Aと同様に、前述の透光性材料から形成され得る。レンズ支持部材23は、例えば、コバールおよびCuWからなる群から選択される少なくとも1つの合金から形成され得る。レンズ支持部材23は、例えばSiから形成され得る。
【0132】
速軸コリメートレンズ24は、
図6Aに示すように、例えば、X方向に一様な断面形状を有するシリンドリカルレンズであり得る。速軸コリメートレンズ24は、光入射側に平面を有し、光出射側に凸曲面を有する。当該凸曲面は、YZ平面において曲率を有する。速軸コリメートレンズ24の焦点は、半導体レーザ素子22の出射面22e内の発光点の中心にほぼ一致する。
図6Bに示すように、速軸コリメートレンズ24は、半導体レーザ素子22の出射面22eから+Z方向に出射されたレーザビームをYZ平面において速軸方向にコリメートする。
図6Bに示す破線によって囲まれた領域は、レーザビームの強度がそのピーク強度の1/e
2倍以上である領域を表す。速軸コリメートレンズ24は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す集光レンズ70Aと同様に、前述の透光性材料から形成され得る。
【0133】
レーザビームLが大きく広がる前にレーザビームLをコリメートするために、速軸コリメートレンズ24は、
図2Fに示すように、半導体レーザ素子22の出射面22eの近傍であって、基板10の実装面12とカバー50の下面54との間に位置し、かつレーザビームLの光路上に位置する。速軸コリメートレンズ24は、基板10、枠体40、およびカバー50によって形成される封止空間の内部に配置されるので、発光装置100を小型にすることが可能になる。
【0134】
速軸コリメートレンズ24の代わりに、半導体レーザ素子22から出射されたレーザビームLを、YZ平面だけでなくXZ平面においてもコリメートするコリメートレンズを用いてもよい。その場合、
図2Aに示す発光装置100において、遅軸コリメートレンズ30cを設ける必要はない。
【0135】
本開示は、以下の項目に記載の発光装置を含む。
【0136】
[項目1]
実装面を有する基板と、
前記実装面によって支持される半導体レーザ素子と、
前記実装面によって支持される第1ミラー部材であって、前記実装面に対して傾斜し、斜め上方を向く第1反射面を有する第1ミラー部材と、
支持部材によって前記第1ミラー部材と離隔して支持される第2ミラー部材であって、第2反射面を有し、前記第2反射面の少なくとも一部は前記第1反射面の少なくとも一部の上方に位置する、第2ミラー部材と、
を備え、
前記半導体レーザ素子は、前記第1反射面に向けてレーザビームを第1方向に出射するように配置され、
前記第1反射面は、前記レーザビームを反射して前記レーザビームの進行方向を前記基板の前記実装面から離れる第2方向に変化させ、
前記第2反射面は、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを反射して前記レーザビームの前記進行方向を、前記第1方向に延びる直線および前記第2方向に延びる直線の両方を含む平面に交差する第3方向に変化させる、発光装置。
【0137】
[項目2]
前記支持部材は、前記基板の前記実装面に対向する対向面、および前記対向面の反対側に位置する上面を有し、前記半導体レーザ素子および前記第1ミラー部材の上方に位置するカバーであり、
前記第2ミラー部材は、前記カバーの前記上面によって支持されており、
前記カバーは、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを透過させる、項目1に記載の発光装置。
【0138】
[項目3]
前記第2ミラー部材の下面と前記カバーの前記上面との間には、樹脂層が存在している、項目2に記載の発光装置。
【0139】
[項目4]
前記カバーは、前記カバーの前記対向面のうち、少なくとも、前記レーザビームが透過する部分の周囲に遮光膜を有する、項目2または3に記載の発光装置。
【0140】
[項目5]
前記基板の前記実装面と前記カバーの前記対向面との間に位置し、かつ前記レーザビームの光路上に位置する速軸コリメートレンズを備え、
前記速軸コリメートレンズは、前記半導体レーザ素子から出射された前記レーザビームを速軸方向にコリメートする、項目2から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【0141】
[項目6]
前記第2反射面から前記第3方向に離れて位置する遅軸コリメートレンズを備え、
前記遅軸コリメートレンズは、前記第2反射面で反射された前記レーザビームを遅軸方向にコリメートし、
前記第2反射面で反射された前記レーザビームの遅軸方向は、前記半導体レーザ素子から出射された前記レーザビームの遅軸方向に交差する、項目1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【0142】
[項目7]
前記第2反射面は曲面状の反射面であり、前記第1反射面で反射された前記レーザビームを遅軸方向にコリメートした状態で前記第3方向に反射し、
前記第2反射面で反射された前記レーザビームの遅軸方向は、前記半導体レーザ素子から出射された前記レーザビームの遅軸方向に交差する、項目1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【0143】
[項目8]
前記基板は、熱伝導率が10W/m・K以上2000W/m・K以下である材料から形成されている、項目1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【0144】
[項目9]
前記基板の前記実装面の周囲に位置し、前記カバーを支持する枠体を備え、
前記半導体レーザ素子は、前記基板、前記枠体、および前記カバーによって封止されている、項目2から5のいずれか1項、または項目2を引用する項目6から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【0145】
[項目10]
前記第3方向において並んで配置され、段階的に前記第1方向と同じ方向または反対の方向にシフトするように配置される複数の発光装置であって、各々が項目1から9のいずれか1項に記載の発光装置である複数の発光装置と、
前記複数の発光装置の各々から前記レーザビームが前記第3方向に出射されて得られる複数のレーザビームを結合する集光レンズと、
を備える、発光モジュール。
【0146】
[項目11]
前記複数の発光装置は同一平面に配置される、項目10に記載の発光モジュール。
【0147】
[項目12]
一方向において位置が互いに異なるように配置される複数の第1発光装置であって、各々が前記一方向に対して平行な方向に第1レーザビームを出射する項目1から9のいずれか1項に記載の発光装置である複数の第1発光装置と、
他の方向において位置が互いに異なるように配置される複数の第2発光装置であって、各々が前記他の方向に対して平行な方向に第2レーザビームを出射する項目1から9のいずれか1項に記載の発光装置である複数の第2発光装置と、
第3反射面を有し、前記第3反射面は、前記複数の第1発光装置の各々から前記第1レーザビームが出射されて得られる複数の第1レーザビームを反射する、第3ミラー部材と、
第4反射面を有し、前記第4反射面は、前記複数の第2発光装置の各々から前記第2レーザビームが出射されて得られる複数の第2レーザビームを反射する、第4ミラー部材と、
前記第3反射面で反射された前記複数の第1レーザビーム、および前記第4反射面で反射された前記複数の第2レーザビームを結合する集光レンズと、
を備える、発光モジュール。
【0148】
[項目13]
前記複数の第2発光装置の各々における前記第2レーザビームの偏光方向は、前記複数の第1発光装置の各々における前記第1レーザビームの偏光方向と同じであり、
前記複数の第1レーザビームの光路上または前記複数の第2レーザビームの光路上に位置する1/2波長板と、
前記1/2波長板を通過した前記複数の第1レーザビームおよび前記1/2波長板を通過しない前記複数の第2レーザビーム、または前記1/2波長板を通過しない前記複数の第1レーザビームおよび前記1/2波長板を通過した前記複数の第2レーザビームを混合して前記集光レンズに向ける偏光ビームスプリッタと、
をさらに備える、項目12に記載の発光モジュール。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示の発光装置は、特に複数のレーザビームを結合して高出力のレーザビームを実現するために用いられ得る。また、本開示の発光装置は、例えば、高出力のレーザ光源が必要とされる産業用分野、例えば各種材料の切断、穴あけ、局所的熱処理、表面処理、金属の溶接、3Dプリンティングに利用され得る。
【符号の説明】
【0150】
10:基板 12:実装面 14:下面 20:レーザ光源 21:サブマウント 21s1 :サブマウントの上面 21s2:サブマウントの下面 22:半導体レーザ素子 22e:出射面 23:レンズ支持部材 23a:柱状部分 23as:端面 23b:連結部分 24:速軸コリメートレンズ 30a:第1ミラー部材 30b、30d:第2ミラー部材 30c:遅軸コリメートレンズ 32a:第1反射面 32b、32d:第2反射面 34a:第1樹脂層 34b:第2樹脂層 36b:支持部材 36c:支持台 40:枠体 41:ワイヤ 42a:第1上面 42b:第2上面 43:突出部 44a:第1下面 44b:第2下面 45:内部配線 46a:第1接合領域 46b:第2接合領域 46c:第3接合領域 47:外側領域 48a:第1導電領域 48b:第2導電領域 48c:第3導電領域 48d:第4導電領域 50:カバー 52:カバーの上面 54:カバーの下面 56:透光部分 58:遮光膜 60A、60B:支持基体 62:支持面 70A、70B:集光レンズ 70a:速軸集光レンズ 70b:遅軸集光レンズ 72:平板部分 74:凸レンズ部分 80:光ファイバ 80a:光入射端 80b:光出射端 82:支持部材 92a~92d:ミラー部材 93a~93d:反射面 94:1/2波長板 96:偏光ビームスプリッタ 100、100a~100d、110:発光装置 200A、200B:発光モジュール L、La~Ld:レーザビーム