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特開2024-164665数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164665
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G02B6/02 481
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080314
(22)【出願日】2023-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】今田 諒太
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 悠途
(72)【発明者】
【氏名】森 崇嘉
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB05
2H250AB07
2H250AB08
2H250AB09
2H250AB10
2H250AC63
2H250AC65
2H250AC66
2H250AC67
2H250AC93
2H250AC94
2H250AC95
2H250AC96
2H250AC97
2H250AE72
2H250AE73
2H250AH46
2H250AH50
(57)【要約】
【課題】群遅延広がり(GDS)を低減し信号処理負荷の増大を抑制できる、数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法を提供する。
【解決手段】数モードマルチコア光ファイバは、それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア、第2コア、及び、第3コアを少なくとも有するコア領域と、コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、コア領域を包含するように配置されたクラッド領域と、を備える。数モードマルチコア光ファイバの曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、第1コア及び第2コアの間における隣接する相異なる光波モードの間での実効屈折率差が0となっている。数モードマルチコア光ファイバの断面において、第1コアと第2コアを結ぶ線を一辺とする正三角形の、一辺にはない頂点から、一辺の垂直方向に一辺に向かって所定シフト量だけ移動した位置に、第3コアが配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア、第2コア、及び、第3コアを少なくとも有するコア領域と、
前記コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、前記コア領域を包含するように配置されたクラッド領域と、
を備える数モードマルチコア光ファイバであって、
前記数モードマルチコア光ファイバの曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、前記第1コア及び前記第2コアの間における隣接する相異なる光波モードの間での実効屈折率差が0となっており、
前記数モードマルチコア光ファイバの断面において、前記第1コアと前記第2コアを結ぶ線を一辺とする正三角形の、前記一辺にはない頂点から、前記一辺の垂直方向に前記一辺に向かって所定シフト量だけ移動した位置に、前記第3コアが配置され、
前記頂点に前記第3コアが配置される場合における前記第1コアと前記第2コアの間の結合係数と比較して、前記第1コアと前記第2コアの間の結合係数が10倍以上となるよう、前記所定シフト量が定められている、数モードマルチコア光ファイバ。
【請求項2】
前記第1コア及び前記第2コアがそれぞれ伝搬する光波モードの数をN(Nは2以上の整数)とし、
前記曲げ半径をRとし、
前記第1コア及び前記第2コアの間の距離をΛとし、
前記第1コアを伝搬するK番目の光波モードの実効屈折率をn、前記第2コアを伝搬する(K+1)番目の光波モードの実効屈折率をnK+1(ここで、Kは1以上N未満の整数)とし、
前記曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、前記実効屈折率差Δnは、
【数1】
を満たす、請求項1に記載の数モードマルチコア光ファイバ。
【請求項3】
前記所定シフト量をSとして、
【数2】
を満たす、請求項2に記載の数モードマルチコア光ファイバ。
【請求項4】
前記第1コア及び前記第3コアの間、又は、前記第2コア及び前記第3コアの間における、コア間の距離、L番目の光波モードの結合係数、及び、伝搬定数を、それぞれ、Λ、κ、βとして、
【数3】
を満たす、請求項2に記載の数モードマルチコア光ファイバ。
【請求項5】
前記第1コア、前記第2コア、及び、前記第3コアの半径をaとして、
【数4】
を満たす、請求項4に記載の数モードマルチコア光ファイバ。
【請求項6】
それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア、第2コア、及び、第3コアを少なくとも有するコア領域と、
前記コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、前記コア領域を包含するように配置されたクラッド領域と、
を備える数モードマルチコア光ファイバの設計方法であって、
前記数モードマルチコア光ファイバの曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、前記第1コア及び前記第2コアの間における隣接する相異なる光波モードの間での実効屈折率差を0に設定し、
前記数モードマルチコア光ファイバの断面において、前記第1コアと前記第2コアを結ぶ線を一辺とする正三角形の、前記一辺にはない頂点から、前記一辺の垂直方向に前記一辺に向かって所定シフト量だけ移動した位置に、前記第3コアを配置し、
前記頂点に前記第3コアが配置される場合における前記第1コアと前記第2コアの間の結合係数と比較して、前記第1コアと前記第2コアの間の結合係数が10倍以上となるよう、前記所定シフト量を定める、数モードマルチコア光ファイバの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムでは、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズにより伝送容量が制限される。非特許文献1~3は、これらの制限を緩和する空間多重技術として、1本の光ファイバ中に複数のコアを有するマルチコアファイバを用いた並列伝送、及び、コア内に複数の伝搬モードが存在するマルチモードファイバを用いたモード多重伝送を開示している。
【0003】
非特許文献2は、受信端においてクロストークを補償することが可能なMIMO技術を開示している。
【0004】
非特許文献4は、光通信システムで十分な伝送品質を担保するため、パワーペナルティを1dB以下にすべく、マルチコアファイバを用いた伝送において信号品質の劣化の原因となるコア間のクロストークを-26dB以下とすべきことを開示している。
【0005】
非特許文献5は、各コアの構造が単一のモードを伝搬する構造であるシングルモードマルチコアファイバにおいて、モード間でランダムな結合を誘起させるようコア構造及びコア間隔を調整することを開示している。
【0006】
非特許文献6は、各コアで複数のモードが伝搬するよう設計された数モードマルチコアファイバにおいて、隣接コア間の同一LPモード間でランダムな結合を誘起させる構造を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Takara et al., "1.01-Pb/s (12 SDM/222 WDM/456 Gb/s) Crosstalk-managed Transmission with 91.4-b/s/Hz Aggregate Spectral Efficiency," in ECOC2012, paper Th.3.C.1 (2012)
【非特許文献2】T. Sakamoto et al., "Differential Mode Delay Managed Transmission Line for WDM-MIMO System Using Multi-Step Index Fiber," J. Lightwave Technol. vol. 30, pp. 2783-2787 (2012).
【非特許文献3】Y. Sasaki et al., “Large-effective-area uncoupled few-mode multi-core fiber,” ECOC2012, paper Tu.1.F.3 (2012).
【非特許文献4】T. Ohara et al., “Over-1000-Channel Ultradense WDM TransmissionWith Supercontinuum Multicarrier Source,” IEEE J. Lightw. Technol., vol. 24, pp.2311-2317 (2006)
【非特許文献5】T. Sakamoto, T. Mori, M. Wada, T. Yamamoto, F. Yamamoto, and K. Nakajima, "Fiber Twisting- and Bending-Induced Adiabatic/Nonadiabatic Super-Mode Transition in Coupled Multicore Fiber," J. Lightwave Technol. 34, 1228-1237 (2016).
【非特許文献6】T. Sakamoto, T. Mori, M. Wada, T. Yamamoto, F. Yamamoto and K. Nakajima, "Coupled Few-Mode Multicore Fiber With Low Differential Mode Delay Characteristics," J. Lightwave Technol. 35, 1222-1227 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献2に開示されるMIMO技術によれば、コア間距離が小さくクロストークが-26dBよりも大きい場合であっても、信号処理によりパワーペナルティを1dB未満とすることができる。そのため、空間利用効率を向上させることができる。しかしながら、伝送路中で発生する複数の信号光間の群遅延差(DMD)に起因する群遅延広がり(GDS)が大きいと、伝送路のインパルス応答幅が大きくなり、信号処理負荷の増大を招いてしまう。
【0009】
非特許文献5に開示される技術は、各コアの構造が単一のモードを伝搬する構造であるシングルモードマルチコアファイバにおいて、モード間でランダムな結合を誘起することで、GDSを距離の平方根に比例して大きくなるようにできる。その結果、長距離伝送(100km以上)においてGDSを大幅に低減させることができる。
【0010】
非特許文献6に開示される技術によれば、各コアで複数のモードが伝搬するよう設計された数モードマルチコアファイバにおいて、各コアでLP01モードとLP11モードが伝搬するようコア構造が設計される。非特許文献6によれば、隣接コア間の同LPモード間でランダムな結合が観測されているが、異なるLPモード間での結合は生じていない。
【0011】
ここで、非特許文献2に記載の通り、同一コアを伝搬する異なるLPモード間のDMDは光ファイバの屈折率分布を制御することで低減することが可能である。しかし、精密な屈折率分布の制御が必要であり、製造誤差によりDMDを0とすることは困難である。特に通信波長帯全域にわたって、同一コアを伝搬する異なるLPモード間のDMDを0とすることは極めて困難である。
【0012】
また、同一コア内の異なるLPモード間でランダムな結合を誘起する技術はこれまで報告されていない。そのため、数モードマルチコアファイバにおけるGDSは、距離に比例して大きくなり、長距離伝送においてはGDSの増加に伴う信号処理負荷が増大するという課題がある。
【0013】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、群遅延広がり(GDS)を低減し信号処理負荷の増大を抑制できる、数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係る数モードマルチコア光ファイバは、それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア、第2コア、及び、第3コアを少なくとも有するコア領域と、コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、コア領域を包含するように配置されたクラッド領域と、を備える。数モードマルチコア光ファイバの曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、第1コア及び第2コアの間における隣接する相異なる光波モードの間での実効屈折率差が0となっている。数モードマルチコア光ファイバの断面において、第1コアと第2コアを結ぶ線を一辺とする正三角形の、一辺にはない頂点から、一辺の垂直方向に一辺に向かって所定シフト量だけ移動した位置に、第3コアが配置される。頂点に第3コアが配置される場合における第1コアと第2コアの間の結合係数と比較して、第1コアと第2コアの間の結合係数が10倍以上となるよう、所定シフト量が定められている。
【0015】
また、本開示の一態様に係る数モードマルチコア光ファイバの設計方法は、それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア、第2コア、及び、第3コアを少なくとも有するコア領域と、コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、コア領域を包含するように配置されたクラッド領域と、を備える数モードマルチコア光ファイバに係る。数モードマルチコア光ファイバの曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、第1コア及び第2コアの間における隣接する相異なる光波モードの間での実効屈折率差を0に設定する。数モードマルチコア光ファイバの断面において、第1コアと第2コアを結ぶ線を一辺とする正三角形の、一辺にはない頂点から、一辺の垂直方向に一辺に向かって所定シフト量だけ移動した位置に、第3コアを配置する。頂点に第3コアが配置される場合における第1コアと第2コアの間の結合係数と比較して、第1コアと第2コアの間の結合係数が10倍以上となるよう、所定シフト量を定める。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、群遅延広がり(GDS)を低減し信号処理負荷の増大を抑制できる、数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバの構造を示す断面図である。
図2図2は、数モードマルチコア光ファイバにおける実効屈折率の分布を示す模式図である。
図3図3は、シフト量を示す模式図である。
図4図4は、シフト量と結合係数の関係を示す図である。
図5A図5Aは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第1の例を示す図である。
図5B図5Bは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第2の例を示す図である。
図6A図6Aは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第3の例を示す図である。
図6B図6Bは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第4の例を示す図である。
図6C図6Cは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第5の例を示す図である。
図7図7は、隣接コア間の距離と、隣接コア間における同種のモードのクロストークの関係を示す図である。
図8図8は、隣接コア間のクロストークを変化させた時のインパルス応答形状を示す図である。
図9図9は、クロストークと相関係数の間の関係を示す図である。
図10図10は、クロストークと標準偏差の間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本開示の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0019】
[1.数モードマルチコア光ファイバの構成]
図1は、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバの構造を示す断面図である。図1では、数モードマルチコア光ファイバFBの延在する方向(中心軸の方向)に直交する断面での断面図が示されている。数モードマルチコア光ファイバFBは、コア領域と、クラッド領域30と、を備える。
【0020】
コア領域は、それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア11、第2コア12、及び、第3コア13を少なくとも有する。以下では、第1コア11、第2コア12、及び、第3コア13の役割に着目して、第1コア11及び第2コア12を第1種コア、第3コア13を第2種コアとして参照する。
【0021】
第1コア11、第2コア12、第3コア13は、同一のコア構造を有していてもよい。図1では、第1コア11、第2コア12、第3コア13が、それぞれ1個ずつ配置される例が示されている。なお、数モードマルチコア光ファイバFBが有するコアの数、及び、配置は、図1に示す例に限定されない。例えば、数モードマルチコア光ファイバFBは、2個以上の任意の個数のコアを有するものであってもよい。また、数モードマルチコア光ファイバFBにおいて、複数のコアは、円環状に配置されていてもよいし、三角格子状、正方格子状の配置で配置されていてもよい。
【0022】
数モードマルチコア光ファイバFB内を伝搬する光線は、コア領域(第1コア11、第2コア12、第3コア13)における全反射の繰り返しによって伝搬する。ここで、光線の傾きは任意の値が許されるものではなく、特別の角度を有する光線のみが伝搬可能となる。このような光線の形態を光波モードと呼ぶ。コア領域を伝搬可能な光波モードは、例えば電磁界解析によって求めることができる。
【0023】
例えば、光波モードには、直線偏光モード(LPモード:Linearly Polarized mode)が存在する。直線偏光モードは、「LPml」の形式で表現される。ここで、「m」は、コア領域を伝搬する光線の横方向電界の強度分布の角度方向の変化の様子を示すモード次数であり、「l」は、コア領域を伝搬する光線の横方向電界の強度分布の半径方向の変化の様子を示すモード次数である。
【0024】
本実施形態では、コア領域は、少なくとも2個以上の光波モードを有するものとする。例えば、コア領域は、「LP01」および「LP11」を光波モードとして有する。コア領域が有する光波モードは、ここに挙げた例に限定されない。
【0025】
クラッド領域30は、コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、コア領域を包含するように配置される。すなわち、数モードマルチコア光ファイバFBの延在する方向(中心軸の方向)に直交する断面において、クラッド領域30は、第1コア11、第2コア12、第3コア13を包含する。
【0026】
コア領域の屈折率とクラッド領域30の屈折率の関係を実現するため、ゲルマニウム(Ge)やアルミニウム(Al)、リン(P)などの屈折率を増加させる不純物を、石英ガラスに添加することで実現してもよい。また、フッ素(F)、ボロン(B)などの屈折率を低減させる不純物を、石英ガラスに添加することで実現してもよい。
【0027】
なお、以下の説明のため、第1コア11、第2コア12、第3コア13の半径を「a」とする。また、第1コア11及び第2コア12の間の距離(コアの中心間の距離)を、「Λ」とする。
【0028】
[2.実効屈折率の分布]
図2は、数モードマルチコア光ファイバにおける実効屈折率の分布を示す模式図である。図2では、縦軸に、実効屈折率を示し、横軸に、径方向の位置を示す。図2では、上段に数モードマルチコア光ファイバFBが曲がっていない状態の実効屈折率、下段に数モードマルチコア光ファイバFBが曲がっていない状態の実効屈折率が示されている。ここでは簡単のため、第1種コア(第1コア11、第2コア12)のみを明示している。
【0029】
例えば、図1において数モードマルチコア光ファイバFBの中心軸を通る断面における実効屈折率の分布は、図2のように示される。例えば、K番目の光波モードの実効屈折率が「n」、(K+1)番目の光波モードの実効屈折率が「nK+1」、であるとする。また、第1コア11及び第2コア12が、数モードマルチコア光ファイバFBの中心軸を挟んで互いに点対称な位置に配置されており、数モードマルチコア光ファイバFBの曲げ半径を「R」とする。
【0030】
数モードマルチコア光ファイバFBが曲がった状態の各光波モードの実効屈折率は、曲り方向に対して外側のコアにおいて屈折率が上昇し、内側のコアにおいて屈折率が減少する。例えば、図2の下段で示すような傾斜を有する実効屈折率の分布と等価とみなすことができる。図2では、第1コア11は曲り方向に対して内側のコアであり、第2コア12は曲り方向に対して外側のコアである。
【0031】
このとき、第1コア11におけるK番目の光波モードの実効屈折率は、次の数式1によって表される。
【数1】
【0032】
また、第2コア12における(K+1)番目の光波モードの実効屈折率は、次の数式2によって表される。
【数2】
【0033】
異なる光波モードの間で結合を生じさせるには、隣接する相異なる光波モードの間の実効屈折率差「Δn」が重要なパラメータとなる。実効屈折率差は、一方のコアの実効屈折率を基準として、次の数式3によって表される。
【数3】
【0034】
数式3は、数式1と数式2の差の絶対値を算出することで得られる。なお、差に含まれる高次の項は微小量であるため、計算の過程で省略している。
【0035】
数式3から明らかなように、実効屈折率差は、第1種コアの中心間の距離「Λ」と、数モードマルチコア光ファイバFBの曲げ半径「R」によって決定される。
【0036】
光波モードの結合においては、K番目及び(K+1)番目のモード間で数式3を満たしていれば、光波モード「LP01」及び「LP11」間以外の結合にも同様に適用できる。つまり、第1コア11及び第2コア12を、光波モード「LP21」「LP02」が伝搬する場合や、それ以上の高次モードが伝搬する構造においても同じである。
【0037】
実効屈折率差が0であることを、位相整合条件を満たすという。位相整合条件は、一般的な光カプラなどの光デバイスや、WDMカプラなどでも設計事項として用いられている。しかしながら、本開示が対象とするような数モードマルチコア光ファイバFBの場合、位相整合条件を満たしていても、コア間の距離が大きいと結合係数が小さくなるため、想定しているファイバ長において、光波モード間での十分な結合が生じない。
【0038】
本開示は、群遅延広がり(GDS)を低減するように、第1種コア及び第2種コアの位置が調整されていることを特徴とする。
【0039】
[3.シフト量の設定]
図3は、シフト量を示す模式図である。図3では、第1コア11、第2コア12は、それぞれ位置P1、位置P2に配置されているものとする。第1種コア(第1コア11及び第2コア12)同士を結ぶ線を一辺とする正三角形の、当該一辺にはない頂点(位置P3)から、当該一辺の垂直方向に当該一辺に向かって所定シフト量Sだけ移動した位置PMに、第2種コア(第3コア13)が配置されている。
【0040】
図4は、シフト量と結合係数の関係を示す図である。図4では、第1種コア間における光波モード「LP01」「LP11」の間の結合係数が、所定シフト量Sに依存して変化する様子が示されている。
【0041】
ここで、第1種コア(第1コア11及び第2コア12)、第2種コア(第3コア13)の半径が8.2μm、各コアの比屈折率差が0.33%、第1種コアの中心間の距離「Λ」を42.5μmとして、結合係数の計算結果を示している。なお、数式3に示す実効屈折率差が0となるよう、曲げ半径「R」を調整している。
【0042】
図4によれば、所定シフト量Sが、例えば15μmから22μmとなることで結合係数が1桁以上増加していることが分かる。また、所定シフト量Sが、22μmから更に増加すると、結合係数が更に増加し、光波モード間での結合が促進することがわかる。
【0043】
このように、所定シフト量Sが22μmとなる点は、結合係数が急増する変曲点である。変曲点よりも大きな所定シフト量Sにおいて、結合係数が10倍以上に増加する有意な効果が生じる。つまり、変曲点よりも大きな所定シフト量Sにおいて、光波モード間での結合が促進する。
【0044】
したがって、有意な効果を得るために、所定シフト量Sが満たすべき条件は、次の数式4で表される。
【数4】
【0045】
所定シフト量Sの下限値である「0.52」は、「22μm/42.5μm」によって得られる。また、所定シフト量Sの上限値は、第1コア11、第3コア13、第2コア12が同一直線状に並ぶ条件から得られる。
【0046】
[4.コアの配置の例]
次に、結合係数が10倍以上となる所定シフト量Sを有するコア配置を示す。図5Aは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第1の例を示す図である。図5Bは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第2の例を示す図である。
【0047】
図5Aでは、円環状に6個のコアを配置し、図5Bでは、円環状に8個のコアを配置している。
【0048】
図5A図5Bによれば、それぞれのコアが、第1種コア及び第2種コアの両方に相当し得る。例えば、図5A図5Bにおいて、第2種コアである第3コア13として示されたコアに隣接するコアは、第1種コアとなる。図5Aにおいて、「S/Λ≒0.58」、図5Bにおいて、「S/Λ≒0.65」となる。したがって、円環状にコアを配置した場合、6コアの配置、及び、8コアの配置は、上述した数式4を満たすことが分かる。
【0049】
図6Aは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第3の例を示す図である。図6Bは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第4の例を示す図である。図6Cは、本開示の実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバにおけるコアの配置の第5の例を示す図である。
【0050】
図6Aでは、5個のコアが配置されており、中心のコアが第2種コアに相当し、当該コアを挟む両側のコアが第1種コアに相当する。したがって、第1種コア、第2種コアが同一直線上に並び、上述した数式4を満たすことが分かる。
【0051】
図6Bでは、7個のコアが配置されており、同一直線状に並ぶ3個のコアについて、上述した数式4を満たすことが分かる。図6Cでは、12個のコアのコアが配置されており、同一直線状に並ぶ3個のコアについて、上述した数式4を満たすことが分かる。
【0052】
その他、三角格子状に配置された19個のコアなどの多層三角格子配置であっても、最外周のコアが第1種コアのみに該当する以外は、全てのコアが第1種コア又は第2種コアに相当し、上述した数式4を満たすことが分かる。
【0053】
[5.コア間のクロストーク]
上述した数式3によって定義された実効屈折率差が0となる位相整合条件が満たされるか否かは、数モードマルチコア光ファイバFBに加わる曲げ半径に依存する。
【0054】
国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)の光ファイバ勧告によれば、一般的な光ファイバの曲げ損失規格は曲げ半径30mm以上で規定されており、それ以下の曲げ半径では損失が増加してしまう。また、同じくITU-Tの勧告に記載の遮断波長測定法によれば、試験時の曲げ半径条件として、光ファイバの曲げ半径を実効的に曲げ半径140mmとすることが広く知られている。
【0055】
したがって、数モードマルチコア光ファイバFBの曲げ半径の条件としては30~140 mmとすることが妥当である。
【0056】
これまで、非隣接コア間隔「Λ」で離れた第1コア11と第2コア12のコア間における異なるモード間の結合条件を議論した。一方、隣接コア(例えば、第1コア11と第3コア13、又は、第2コア12と第3コア13)において同モード間で結合が生じることが必要であるため、以下にその条件を述べる。図7は、隣接コア間の距離と、隣接コア間における同種のモードのクロストークの関係を示す図である。図7では、隣接コアの半径が7.5μm、比屈折率差が0.30%であるときの隣接コア間距離(隣接コアの中心間の距離)と基本モードの隣接コア間のクロストークの関係を計算した結果が示されている。
【0057】
隣接コア間距離が36μm以上の領域では、同LPモード間の結合量が非常に小さくなる(例えば、-20dB/km以下)となる。そのため、全てのLPモードが結合する数モードマルチコア光ファイバFBを実現することができない。
【0058】
なお、高次モードについては、基本モードよりも隣接コア間のクロストーク量が大きくなるため、ここでは最悪条件となる基本モードのクロストークが所望の値以上となることだけを確認すればよい(例えば、文献“ITU-T Recommendation G.652 Characteristics of a single-mode optical fibre and cable”、文献“ITU-T Recommendation G.650.1 Definitions and test method for linear, deterministic attributes of single-mode fibre and cable”を参照)。
【0059】
[6.インパルス応答形状]
図8は、隣接コア間のクロストークを変化させた時のインパルス応答形状を示す図である。光増幅器で挟まれた中継区間が一般に40km以上であることを鑑み、伝送距離40kmである時に、コア間クロストークを変化させた時のインパルス応答形状を計算した。
【0060】
コア間の群遅延差(DMD)は仮に1ns/kmとしている。ここで、パルス幅はインパルス応答に対して十分小さいものを入力しており、出力波形はすべてのコアからの出力光を加算したものを示している。ここで、クロストークが-20dB/kmの場合の両端に存在するピーク波形が入力パルス幅と同じとなる。
【0061】
クロストークが-20dB/kmである場合には、両端に大きな強度を示すパルスが存在し、その幅は40nsと、累積DMD(1ns/km×40km)と同じ値となっている。クロストークが-10dB/kmである場合には、両端のパルス強度が低下しているものの、インパルス応答幅は累積DMDと同じである。
【0062】
一方で、クロストークが-5dB/km以上である場合には、インパルス応答形状がガウシアン形状となっている。コア間結合が強い場合はインパルス応答形状がガウス形状となることはよく知られている。クロストークが-3dB/kmである場合は同様にガウス形状であるが、その幅がさらに小さくなっていることわかる。
【0063】
文献「R. Ryf, N. K. Fontaine, B. Guan, R.-J. Essiambre, S. Randel, A. H. Gnauck, S. Chandrasekhar, A. Adamiecki, G.Raybon, B, Ercan, R.P. Scott, S. J. Ben Yoo, T. Hayashi, T. Nagashima, and T. Sasaki, “1705-km transmission over coupled-core fibre supporting 6 spatial modes,” ECOC, paper PD. 3.2 (2014).」によれば、インパルス応答形状がガウス形状となると、そのインパルス応答幅は距離の平方根に比例する。
【0064】
インパルス応答幅が距離に比例する非結合型のファイバと比較すると、インパルス応答幅が距離の平方根に比例するため、特に長距離伝送においてインパルス応答幅を低減できる。そこで、インパルス応答幅がガウシアンとなるクロストークを計算した。
【0065】
図9は、クロストークと相関係数の間の関係を示す図である。図9では、インパルス応答形状をガウス波形でフィッティングした場合の相関係数を算出した結果を示す。図9より、クロストークが-10dB/km以上となる場合に、インパルス応答は理想的なガウス波形と相関係数が95%以上の形状となる。
【0066】
図10は、クロストークと標準偏差の間の関係を示す図である。図10では、インパルス応答波形のガウスフィッティングにより得られる標準偏差との関係を示す。図10より、クロストークが大きくなればなるほどインパルス応答幅が小さくなることがわかる。
【0067】
これらの結果から、コア間で-10dB/kmより大きいクロストークが得られると、インパルス応答幅を大きく低減できる。したがって、-10dB/km以上のクロストークが得られるように、隣接コア間距離「Λ」を設計すればよい。Λは、隣接するコア間(例えば、第1コア11と第3コア13の間、又は、第2コア12と第3コア13の間)におけるコア間の距離である。隣接コア間のクロストーク量「XT」は、次の数式5によって計算できる。
【数5】
【0068】
よって、-10dB/km以上のクロストークを得るための、隣接コア間距離「Λ」の条件は、次の数式6によって表される。
【数6】
【0069】
ここで、κ、βは、それぞれ、隣接するコア間(例えば、第1コア11と第3コア13の間、又は、第2コア12と第3コア13の間)におけるL番目の光波モードの結合係数及び伝搬定数である。κは、各モードの実効屈折率、電界分布から算出することが可能であり(文献 “岡本著 光導波路の基礎、コロナ社 ISBN 4-339-00602-5”を参照)、マルチコアファイバにおいてはコア間クロストーク量を算出するために用いられている。
【0070】
なお、数式6に登場する数モードマルチコア光ファイバFBの曲げ半径「R」は、前述した数モードマルチコア光ファイバFBの実効的な曲げ半径である140mmとすれば、クロストークの最悪条件における値を算出できる。
【0071】
ただし、隣接するコア同士が接触しないという条件から、次の数式7を満たす必要がある。
【数7】
【0072】
非特許文献5に記載の通り、コアが近接することでインパルス応答幅が大きくなる現象があるため、経験的には、数式7よりも厳しい条件である次の数式8を満たす必要がある。
【数8】
【0073】
以上より、隣接コア間距離「Λ」及び非隣接コア間距離「Λ」が所望の条件を満たし、第1、第2及び第3コアの位置関係が本開示の条件に合致していることで、全てのコア及びモードが結合する光ファイバが実現できる。
【0074】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法は、それぞれ2以上の複数の光波モードを伝搬する、第1コア、第2コア、及び、第3コアを少なくとも有するコア領域と、コア領域の屈折率未満の屈折率を有し、コア領域を包含するように配置されたクラッド領域と、を備える数モードマルチコア光ファイバに係る。
【0075】
数モードマルチコア光ファイバの曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、第1コア及び第2コアの間における隣接する相異なる光波モードの間での実効屈折率差を0に設定する。数モードマルチコア光ファイバの断面において、第1コアと第2コアを結ぶ線を一辺とする正三角形の、一辺にはない頂点から、一辺の垂直方向に一辺に向かって所定シフト量だけ移動した位置に、第3コアを配置する。
【0076】
頂点に第3コアが配置される場合における第1コアと第2コアの間の結合係数と比較して、第1コアと第2コアの間の結合係数が10倍以上となるよう、所定シフト量を定める。
【0077】
これにより、群遅延広がり(GDS)を低減し信号処理負荷の増大を抑制できる、数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法を提供できる。特に、同一コア内の異なるLPモード間でランダムな結合を誘起することができ、GDSを低減できる。さらに、インパルス応答幅が低減され、信号処理負荷の増大を抑制できる。
【0078】
また、本実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法において、曲げ半径が30~140mmの範囲内のいずれかの値である場合に、実効屈折率差Δnは、
【数9】
を満たすものであってもよい。
【0079】
ここで、第1コア及び第2コアがそれぞれ伝搬する光波モードの数をN(Nは2以上の整数)とし、曲げ半径をRとし、第1コア及び第2コアの間の距離をΛとしている。また、第1コアを伝搬するK番目の光波モードの実効屈折率をn、第2コアを伝搬する(K+1)番目の光波モードの実効屈折率をnK+1(ここで、Kは1以上N未満の整数)としている。
【0080】
これにより、使用環境において想定される光ファイバの曲げ半径の範囲内で、位相整合条件が満たされ、群遅延広がり(GDS)を低減し信号処理負荷の増大を抑制できる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法において、所定シフト量をSとして、
【数10】
を満たすものであってもよい。
【0082】
これにより、光波モード間の結合係数が10倍以上に増加する有意な効果が生じる。つまり、光波モード間での結合が促進させることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法において、第1コア及び第3コアの間、又は、第2コア及び第3コアの間における、コア間距離、L番目の光波モードの結合係数、及び、伝搬定数を、それぞれΛ、κ、βとして、
【数11】
を満たすものであってもよい。
【0084】
これにより、コア間で-10dB/kmより大きいクロストークが得られ、インパルス応答幅を大きく低減できる。
【0085】
さらに、本実施形態に係る数モードマルチコア光ファイバ、及び、数モードマルチコア光ファイバの設計方法において、第1コア、第2コア、及び、第3コアの半径をaとして、
【数12】
を満たすものであってもよい。
【0086】
これにより、コア同士を離すことができる。その結果、近接したコアの配置に起因してインパルス応答幅が大きくなる現象を抑制することができる。
【0087】
以上、実施形態に沿って本開示の内容を説明したが、本開示はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述および図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0088】
本開示はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示によれば、群遅延広がり(GDS)を低減し信号処理負荷の増大を抑制できる、数モードマルチコア光ファイバを提供でき、数モードマルチコア光ファイバは、光伝送システムにおける伝送媒体として利用できる。
【符号の説明】
【0090】
11 第1コア
12 第2コア
13 第3コア
30 クラッド領域
FB 数モードマルチコア光ファイバ
P1~P3,PM 位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10