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特開2024-165969対話再生方法、対話再生装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165969
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】対話再生方法、対話再生装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20241121BHJP
【FI】
G06F16/90 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082602
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】光田 航
(72)【発明者】
【氏名】東中 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 邦子
(72)【発明者】
【氏名】港 隆史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和紀
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】石黒 浩
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175EA01
(57)【要約】
【課題】或る議論に関して特定の立場の意見を持つ者の考えを変容させるための支援を可能とすること。
【解決手段】或る議論のテーマに関して対立する2つの立場のうちの一方の立場を示す情報を入力し、前記一方の立場に議論が収束するように対話のシナリオを生成する議論対話生成手順と、前記シナリオに基づく対話を出力させる議論対話出力制御手順と、をコンピュータが実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る議論のテーマに関して対立する2つの立場のうちの一方の立場を示す情報を入力し、前記一方の立場に議論が収束するように対話のシナリオを生成する議論対話生成手順と、
前記シナリオに基づく対話を出力させる議論対話出力制御手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とする対話再生方法。
【請求項2】
前記議論対話生成手順は、議論における立場ごとに用意された対話のテンプレートのうち、前記一方の立場に対応するテンプレートに前記テーマの議論知識を当てはめることで前記シナリオを生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の対話再生方法。
【請求項3】
前記議論対話生成手順は、議論における或る立場に対して用意された対話のテンプレートに対して、当該立場が前記一方の立場に一致するか否かに応じて前記テンプレートに対する前記テーマの議論知識の当てはめ方を変更して、前記シナリオを生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の対話再生方法。
【請求項4】
或る議論のテーマに関して対立する2つの立場のうちの一方の立場を示す情報を入力し、前記一方の立場に議論が収束するように対話のシナリオを生成するように構成されている議論対話生成部と、
前記シナリオに基づく対話を出力させるように構成されている議論対話出力制御部と、
を有することを特徴とする対話再生装置。
【請求項5】
前記議論対話生成部は、議論における立場ごとに用意された対話のテンプレートのうち、前記一方の立場に対応するテンプレートに前記テーマの議論知識を当てはめることで前記シナリオを生成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の対話再生装置。
【請求項6】
前記議論対話生成部は、議論における或る立場に対して用意された対話のテンプレートに対して、当該立場が前記一方の立場に一致するか否かに応じて前記テンプレートに対する前記テーマの議論知識の当てはめ方を変更して、前記シナリオを生成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の対話再生装置。
【請求項7】
請求項1乃至3いずれか一項記載の対話再生方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対話再生方法、対話再生装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対話システムにおいて、人間はコンピュータと対話を行うことで種々の情報を得たり、要望を満たしたりする。また、所定のタスクを達成するだけではなく、日常会話を行う対話システムも存在し、これらによって、人間は精神的な安定を得たり、承認欲を満たしたり、信頼関係を築いたりする。対話システムの類型については非特許文献1に記載されている。
【0003】
タスク達成や日常会話ではなく、議論をコンピュータによって実現するための研究も進められている。議論は人間の価値判断を変えたり、思考を整理したりする働きがあり、人間にとって重要な役割を果たす。
【0004】
例えば、非特許文献2では、意見をノードとするグラフデータを用いて、議論対話が実現される。グラフデータは予め設定された議論のテーマ(例えば、「永住するなら田舎よりも都会がよい」)に基づき、人手で作成される。人手で作成された議論のデータを用いることで、特定の話題についての議論が可能となる。ユーザ発話をノードにマッピングし、マッピングされたノードと接続関係にあるノードをシステムの発話としてユーザに返すことで議論が行われる。また、対話システムを二体用意し、グラフに従ってノードを発話することで、二体のロボットに議論をさせることも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】河原達也、"音声対話システムの進化と淘汰 -歴史と最近の技術動向"、人工知能学会誌,Vol. 28,No. 1,pp45-51,2013
【非特許文献2】Ryuichiro Higashinakaほか、"Argumentative dialogue system based on argumentation structures"、Proceedings of The 21st Workshop on the Semantics and Pragmatics of Dialogue,pp154-155,2017
【非特許文献3】板原宏樹ほか、"ロボット間の対話に基づく合意形成が人の思考に与える影響"、情報処理学会インタラクション2022論文集,pp225-230,2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2の手法を利用することで、二体のロボットに任意の議論を生成させることが可能となるが、議論の聞き手となるユーザを説得したり、ユーザの意見を変容させたりするためには、どのように対話を構築すればよいかは明らかではない。関連する調査として、非特許文献3では、ロボット二体の議論がユーザに与える印象(例えば、ロボットの議論が公平であったか、正確であったか)を調査した結果が報告されている。しかしながら、ロボットの議論に対するユーザの印象を変化させるための知見は報告されているものの、ユーザ自身の意見を変化させるための知見は調査の対象とされておらず、明らかではない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、或る議論に関して特定の立場の意見を持つ者の考えを変容させるための支援を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで上記課題を解決するため、或る議論のテーマに関して対立する2つの立場のうちの一方の立場を示す情報を入力し、前記一方の立場に議論が収束するように対話のシナリオを生成する議論対話生成手順と、前記シナリオに基づく対話を出力させる議論対話出力制御手順と、をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0009】
或る議論に関して特定の立場の意見を持つ者の考えを変容させるための支援を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における対話再生装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における対話再生装置10の機能構成例を示す図である。
図3】議論知識を利用した議論対話シナリオ生成の一例を示す図である。
図4】議論対話シナリオの一例を示す図である。
図5】対話の出力形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前提として、対立する複数の立場(例えば、「賛成」と「反対」)が存在する議論のテーマが対象とされる。このとき、意見を変容させるユーザとして、特定の立場の意見を強く持つ者(例えば、対象のテーマに関して意見を尋ねる数値型のアンケートにおいて、特定の意見の確信度を尋ねたとき、一定の閾値以上で回答を行った者)が対象とされる。議論のテーマに関する特定の立場Xがあったとき、Xの立場の意見を強く持つユーザを対象に、本実施の形態において生成される議論を聞かせる。このとき、予め異なる立場ごとに、対話を行うロボットが用意されてもよい。議論の内容として、異なる立場で議論を開始した後、議論を通じて、Xの立場以外のロボットがXの立場のロボットに同意することで、議論の結論がXの立場になる(収束する)ようにする。このような議論をユーザに聞かせることで、ユーザが持つ意見Xの確信度を高める(アンケートにおいて、確信度のスコアを有意に上昇させる)ことが可能となる。
【0012】
対象となるユーザの選定は、アンケートを用いて特定の意見に関する確信度を具体的に尋ねることで実現が可能である。また、特定の議論のテーマに関する議論の生成は非特許文献2の手法を用いることで実現が可能である。
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態における対話再生装置10のハードウェア構成例を示す図である。図1の対話再生装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、プロセッサ104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0014】
対話再生装置10での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0015】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。プロセッサ104は、CPU若しくはGPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU及びGPUであり、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って対話再生装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態における対話再生装置10の機能構成例を示す図である。対話再生装置10は、特定の議論のテーマにおいて特定の立場の意見について強く確信を持っているユーザの意見の確信度を高める議論対話を自動的かつ多様に生成することができる装置である。
【0017】
図2において、対話再生装置10は、議論対話生成部11及び議論対話出力制御部12を有する。これら各部は、対話再生装置10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ104に実行させる処理により実現される。以下、各部について説明する。
【0018】
[議論対話生成部11]
議論対話生成部11は、或る議論のテーマTにおける特定の立場S(ユーザが強い意見を持っている立場)を示す情報と、テーマTに関する議論の知識をまとめたグラフとを入力として、テーマTに関する議論が立場Sに収束する議論対話シナリオを生成する。議論対話シナリオとは、或るテーマに関する議論として行われる対話における各発話の内容を時系列に示すデータをいう。立場Sは、例えば、テーマTに対して「賛成」の意見を有するのか「反対」の意見を有するのかのいずれかである。この場合、議論対話生成部11に対して入力される立場Sを示す情報とは、「賛成」又は「反対」を示すラベルのようなものであってもよい。
【0019】
テーマTに関する議論の知識をまとめたグラフは、予め人手によって構築(作成)される。当該グラフは、例えば、参考文献1に開示された方法を用いて構築されてもよい。議論の知識をまとめたグラフに基づく議論対話シナリオの生成方法は参考文献2で述べられており、本実施の形態でも同じ手法を利用する。なお、各参考文献の文献情報は後述される。
【0020】
図3は、議論知識を利用した議論対話シナリオ生成の一例を示す図である。図3の左側は、人手で用意された議論対話シナリオのテンプレートを示す。図3の右側は、或るテーマ(図3の例では、「自動運転に賛成か反対か」)の議論知識をまとめたグラフ(以下、単に「グラフ」という。)を表す。
【0021】
テンプレートは、議論の進行に応じた各発話の雛形を示す(各発話の雛形を時系列に示す)データであり、各発話の内容について、特定のテーマに関する議論知識に依存する部分が穴あき状態(空欄)になっているデータである。図3の例では、既に穴あき状態であった部分が埋められた状態が示されているが、図3において破線で囲まれた部分は、当初、穴あき状態であったことを示す。したがって、テンプレートは、各種のテーマに対して汎用的に利用することができる。基本的に、テンプレートの内容は、(テンプレートにとって)未知のテーマに対して賛成側の発話と、反対側の発話とによって議論が進み、いずれか一方の意見に収束するように(いずれか一方の意見に他方が同意するように)構成されている。入力される立場が賛成であるか反対であるのかはテンプレートの作成時点では未知であるため、賛成側の立場に収束するテンプレート(以下、「肯定側テンプレート」という。)と、反対側の立場に収束するテンプレート(以下、「否定側テンプレート」という。)との2つのテンプレートが予め作成される。図3のテンプレートは、Aが賛成側の立場であり、Bが反対側の立場である状況において、Aの意見に議論が収束するように構成された肯定側テンプレートの例を示す。
【0022】
図3のテンプレートは、議論の各発話について、「Part」、「U」、「Utterance」の項目を含む。「Part」は、議論の段階を示す。「U」は、各発話の通し番号(以下、「発話番号」という。)を示す。「Utterance」は、発話の内容のテンプレートである。図3では、「Utterance」に対して、既にグラフに基づいて具体的な発話内容(を示す文字列)が当てはめられている状態が示されているが、「Utterance」が、上記した穴あき状態になっている部分(以下、「穴あき部分」という。)を含む項目である。具体的には、「Utterance」は、A及びBのいずれの立場であるのかを示す記号(「A」又は「B」)と、グラフのどのノードが当てはめの候補であるのかを示す情報(以下、「当てはめ情報」という。)とが設定されている。なお、図3では、発話内容の全部の文言(発話内容)がグラフから当てはめられる例が示されているが、例えば、発話内容の一部の文言(例えば、単語に対応する部分)のみが穴あき部分であってもよい。
【0023】
一方、図3の右側のグラフは、議論知識に基づくグラフである。グラフのルートノードは特定のテーマ(「自動運転に賛成か反対か」)を示す文字列が設定されたノードである。ルートノードは当該テーマに対して賛成側又は反対側に対応する2つの子ノード(以下、「立場ノード」という。)を有する。「Support」のエッジでルートノードに接続する立場ノードは、当該テーマに対して賛成側の立場に対応する文言が設定されたノードであり、「Attack」のエッジでルートノードに接続する立場ノードは、当該テーマに対して反対側の立場に対応する文言が設定されたノードである。立場ノード以下の各階層のノードは、「Support」のエッジで接続する複数の子ノード(以下、「支持ノード」という。)と、「Attack」のエッジで接続する複数の子ノード(以下、「反論ノード」という。)を有する。各支持ノードは、親ノードの立場又は意見に対して支持を示す文言が設定されたノードである。各反論ノードは、親ノードの立場又は意見に対する反論を示す文言が設定されたノードである。なお、グラフの作成者にとって、テンプレートの内容は既知である状態が好適である。この場合、グラフの作成者は、グラフの各ノードがテンプレート(つまり、議論対話シナリオ)のどの箇所の当てはめ候補であるのかを意識して各ノードに設定する文言を決めることができ、最終的に生成される議論対話シナリオが不自然なものになる可能性を低減することができる。
【0024】
テンプレートの穴あき部分には、「<或る特定のノード>に対する支持ノード」又は「<或る特定のノード>に対する反論ノード」という内容で、穴あき部分に当てはめるべきノードが指定されている。ここで、<或る特定のノード>は、或る具体的なノードの識別情報を示す。例えば、「<或る立場ノード>に対する支持ノード」が当てはめ情報として設定されている穴あき部分については、当該立場ノードの全ての子ノードのうちの複数の支持ノードが当てはめの候補となる。議論対話生成部11は、当該複数の支持ノードの中からランダムに又は予め設定された規則に従い一つの支持ノードを選択して、選択した支持ノードに設定されている文言を当該穴あき部分に当てはめる。一方、「<或る立場ノード>に対する反論ノード」が当てはめ情報として設定されている穴あき部分については、当該立場ノードの全ての子ノードのうちの複数の反論ノードが当てはめの候補となる。議論対話生成部11は、当該複数の反論ノードの中からランダムに又は予め設定された規則に従い一つの反論ノードを選択して、選択した反論ノードに設定されている文言を当該穴あき部分に当てはめる。議論対話生成部11は、このような処理をテンプレートの全ての穴あき部分に対して実行することで、議論対話シナリオを生成することができる。
【0025】
なお、議論対話生成部11は、入力された立場Sが「賛成」である場合には、肯定側テンプレートを使用し、立場Sが「反対」である場合には、否定側テンプレートを使用する。そうすることで、議論対話生成部11は、立場Sに収束する議論対話シナリオを生成することができる。2つのテンプレートのうちのいずれが賛成側テンプレートであり、いずれが否定側テンプレートであるのかは、例えば、テンプレートを格納するファイルのファイル名等で識別可能とされてもよい。
【0026】
なお、テンプレートから見た場合、「賛成」又は「反対」は相対的な関係に過ぎない。例えば、図3のテンプレートにおいて「A」は一方の立場に過ぎず、「B」は他方の立場に過ぎない。したがって、肯定側テンプレート及び否定側テンプレートのいずれか一方のみが用意されてもよい。この場合、議論対話生成部11は、用意されたテンプレートに対応する立場が立場Sに一致するか否かに応じて当該テンプレートに対する議論知識の当てはめ方を変更して、議論対話シナリオを生成してもよい。例えば、肯定側テンプレートのみが作成されている場合、議論対話生成部11は、立場Sが「賛成」であれば、テンプレートの当てはめ情報において支持ノードが当てはめ候補として指定されている穴あき部分に対して、グラフの支持ノードに設定されている文言を当てはめればよい。立場Sが「反対」である場合、議論対話生成部11は、当該穴あき部分に対して、グラフの反論ノードに設定されている文言(つまり、当てはめが指定されている立場と逆の立場に対応するノード)を当てはめればよい。
【0027】
図4は、議論対話シナリオの一例を示す図である。図4において、括弧([])内の数字は発話番号を示す。「A」、「B」は、話者かつ議論の立場(Aは賛成、Bは反対)を示す。「A」又は「B」の後の「:」に続く文字列は、発話内容を示す。発話内容の先頭の'*'は、その発話内容は固定の(テンプレート)の文字列であることを示し、それ以外の発話内容は議論知識から埋められた発話を示す。議論対話シナリオに基づく対話は、お互いの立場が異なる状況で開始され、お互いが意見を述べた後、反対派のBが賛成派のAに同意する形で終了する。
【0028】
[議論対話出力制御部12]
議論対話出力制御部12は、議論対話生成部11が生成した議論対話シナリオに基づく対話を出力装置20に出力(再生)させるための制御を行うことで、ユーザに議論の様子を提示する。出力装置20は、例えば、テーマTにおける立場ごとに用意されてもよい。この場合、議論対話出力制御部12は、テーマTにおけるそれぞれの立場に対応する各出力装置20に、テーマTに関する議論において当該出力装置20が対応する立場における発話を出力させてもよい。出力装置20としては、任意のものを使用可能であり、例えばLINE(登録商標)のようなメッセンジャー形式の画像や、CGエージェントのように仮想空間において実体を持つものの動画を表示する表示装置や、ロボットのように現実空間において実体を持つものが出力装置20として利用されてもよい。又は、単なるスピーカが出力装置20として用いられてもよい。この場合、議論対話出力制御部12は、例えば、議論における発話の音声を音声合成技術を用いて生成し、生成した音声をスピーカに出力させればよい。
【0029】
図5は、対話の出力形態の一例を示す図である。図5では、液晶画面と、代表的なロボットの一つである二体の社会的対話ロボットCommU(登録商標)とが出力装置20として利用される場合が示されている。二体のCommU(登録商標)は異なる立場の話者として動作し、液晶画面は、各話者による発話の内容を表示する。例えば、左側のCommU(登録商標)は賛成派であり、右側のものは反対派に対応する。
【0030】
議論対話出力制御部12は、議論対話生成部11によって生成された議論対話シナリオ中の発話を、当該発話の立場に対応するCommU(登録商標)に読み上げさせると共に、当該発話を示す文字列を液晶画面に出力する。議論対話出力制御部12は、予め決めたルール(例えば、質問の発話では動作A、フィラーの発話では動作B、それ以外の発話では動作C)に従ってCommU(登録商標)の体を動かし、さらに液晶画面中の対話を更新することで、ユーザに議論対話の内容を明確に提示することが可能である。
【0031】
上述したように、本実施の形態によれば、或るテーマに関して対立する複数の立場のうちの特定の立場に対して強い意見を持つユーザと同じ立場(意見)で収束する対話を自動的に生成及び再生することができる。その結果、当該ユーザについて、自らの意見の確信度を強めることを可能とすることができる。したがって、或る議論に関して特定の立場の意見を持つ者の考えを変容させるための支援を可能とすることができる。
【0032】
なお、上記で引用した参考文献1及び2の文献情報は以下の通りである。
【0033】
[参考文献1]Kazuki Sakaiほか、"Creating large-scale argumentation structures for dialogue systems"、In Proc. of LREC, pp3975-3980,2018
[参考文献2]Kazuki Sakaiほか、"Hierarchical argumentation structure for persuasive argumentative dialogue generation"、IEICE Transactions on Information and Systems,E103.D(2):424-434,2020
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 対話再生装置
11 議論対話生成部
12 議論対話出力制御部
20 出力装置
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 プロセッサ
105 インタフェース装置
B バス
図1
図2
図3
図4
図5