(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168915
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】周波数多重型非ガウス型量子状態生成器、補助光生成装置及び光量子コンピュータ
(51)【国際特許分類】
G06E 3/00 20060101AFI20241128BHJP
G06N 10/20 20220101ALI20241128BHJP
G06F 7/38 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06E3/00
G06N10/20
G06F7/38 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085962
(22)【出願日】2023-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:令和4年5月27日 掲載アドレス:https://arxiv.org/abs/2205.14061 掲載年月日:令和4年10月28日 掲載アドレス:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.add4019 掲載年月日:令和4年5月26日 掲載アドレス:https://arxiv.org/abs/2205.13097 掲載年月日:令和4年10月29日 掲載アドレス:https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/10/29/221029a.html 掲載年月日:令和4年12月11日 掲載アドレス:https://arxiv.org/abs/2212.05436 掲載年月日:令和5年3月6日 掲載アドレス:https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/03/06/230306b.html 公開年月日:令和5年3月6日 刊行物名:Applied Physics Letters,Volume 122,104001(2023)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューターの研究開発」、及び令和4年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業「光周波数コムによるマルチコア光量子コンピュータプラットフォーム」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅木 毅伺
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 貴大
(72)【発明者】
【氏名】井上 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 護
(72)【発明者】
【氏名】アサバナント ワリット
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 寛
(72)【発明者】
【氏名】福井 浩介
(72)【発明者】
【氏名】阪口 淳史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 純一
(72)【発明者】
【氏名】古澤 明
(57)【要約】
【課題】伝令付き手法における所望の量子状態生成の確率を現実的な実験系で向上させることが可能な周波数多重型非ガウス型量子状態生成器、当該周波数多重型非ガウス型状態生成器を含む補助光生成装置、並びに、当該補助光生成装置を含む光量子コンピュータを提供する。
【解決手段】本発明による周波数多重型非ガウス型量子状態生成器は、異なる周波数を有する複数の光に対して、伝令付き手法を実行する周波数多重型非ガウス型量子状態生成器であって、周波数が対称になった光子ペアを生成する第1の量子もつれ光源であって、シグナル側の光及びアイドラー側の光を含む光を出力する第1の量子もつれ光源と、第1の量子もつれ光源から出力された光を周波数に応じて複数に分岐させる周波数分岐装置と、周波数分岐装置から出力された複数の光のうち、アイドラー側の光に対して一般化測定を実行する、複数の一般化測定装置と、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数を有する複数の光に対して、伝令付き手法を実行する周波数多重型非ガウス型量子状態生成器であって、
周波数が対称になった光子ペアを生成する第1の量子もつれ光源であって、シグナル側の光及びアイドラー側の光を含む光を出力する第1の量子もつれ光源と、
前記第1の量子もつれ光源から出力された光を周波数に応じて複数に分岐させる周波数分岐装置と、
前記周波数分岐装置から出力された前記複数の光のうち、前記アイドラー側の光に対して一般化測定を実行する、複数の一般化測定装置と、
を備える、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器。
【請求項2】
前記第1の量子もつれ光源における量子もつれ生成は、周波数非縮退の光パラメトリック過程であり、
前記第1の量子もつれ光源は導波路型光パラメトリック増幅器である、請求項1に記載の周波数多重型非ガウス型量子状態生成器。
【請求項3】
請求項1に記載の周波数多重型非ガウス型量子状態生成器を備えた補助光生成装置であって、
前記周波数多重型非ガウス型量子状態生成器の出力側に配置され、非ガウス型量子状態が必要な周波数の光に対し、量子テレポーテーションを実行するテレポーテーション回路をさらに備える、補助光生成装置。
【請求項4】
前記テレポーテーション回路は、
前記周波数多重型非ガウス型量子状態生成器から出力される光と同じ周波数を有する光と、所望の補助光と同じ周波数を有する光、の間の量子もつれを生成する第2の量子もつれ光源と、
前記周波数多重型非ガウス型量子状態生成器により生成された非ガウス型量子状態と前記第2の量子もつれ光源から出力される光のうち、前記周波数多重型非ガウス型量子状態生成器から出力される光と同じ周波数を有する光とを干渉させた光の測定位相及び前記測定位相における直交位相の各々の振幅を測定する2つのホモダイン測定器と、
前記ホモダイン測定器における測定結果に基づいて、前記第2の量子もつれ光源から出力される光のうち、所望の補助光と同じ周波数を有する光に対し、位相操作及び変位操作を実行するフィードフォワード装置と、
をさらに備える、請求項3に記載の補助光生成装置。
【請求項5】
前記ホモダイン測定器は、
入力された光をローカルオシレータ光と干渉させるビームスプリッタと、
前記ローカルオシレータ光の位相を前記入力された光と同一の周波数になるように変調する位相変調器と、
前記ビームスプリッタからの2つの出力光を受光し、差分信号を出力するバランス型フォトディテクタと、
を備える、請求項4に記載の補助光生成装置。
【請求項6】
前記ホモダイン測定器は、前記非ガウス型量子状態と前記第2の量子もつれ光源から出力される光のうちの一方の光とを干渉させた前記光の測定位相成分を、予め位相敏感増幅器によって増幅する位相敏感増幅器をさらに備える、請求項4に記載の補助光生成装置。
【請求項7】
前記フィードフォワード装置は、前記第2の量子もつれ光源から出力される光のうちのもう一方の前記光に対して、コヒーレント光を干渉させることにより、前記変位操作を実行する、請求項4に記載の補助光生成装置。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一項に記載の補助光生成装置をプロセッサと組み合わせた、光量子コンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器、補助光生成装置及び光量子コンピュータに関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、量子力学特有の性質である量子エンタングルメントや量子重ね合わせ状態を巧みに利用し、従来のコンピュータの性能を凌駕するコンピュータとして期待されている。その実現方法には様々な物理系が考えられているが、その中でも光電場の直交位相振幅に量子情報をエンコードして計算を行う連続量光量子情報処理の手法(以下、光量子コンピュータという)は、現実的な誤り耐性型万能量子コンピュータを実現する有力候補として着目されている。広く研究がなされている定在波型の量子ビットでは、大規模化を行う際に空間的な多重化が必須となり、大きな障壁となっている。それに対して光量子コンピュータでは、光電場という進行波を使用するため、後述の通り時間的に多重化することが可能である。また、光量子コンピュータは、使用する光のキャリア周波数が200THz程度と高いため、装置の大部分を室温大気圧環境下に設置することができ、また、コンピュータのクロック周波数の面でも有利である。さらに、波長1550nm付近の光を使用することで、光ファイバーや変調器などの成熟した光通信の技術をそのまま流用することも可能である。
【0003】
光量子コンピュータのプロセッサは、時間領域多重クラスター状態を生成するように構成され得る。時間領域多重クラスター状態は、スクイーズド光と呼ばれる量子相関を有する光の光源(スクイーズド光源)と、光学遅延をもつ非対称干渉計と、ホモダイン検出器により生成される。このホモダイン検出器における測定位相を適切に選択することによって、様々な量子計算が実現できることが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0004】
光量子コンピュータの最終的なクロック周波数を制限するのは、スクイーズド光源から発生するスクイーズド光の帯域である。現在、波長1550nm付近では、数THzの帯域を持つスクイーズド真空場の生成に成功している(例えば、非特許文献3参照)ため、原理的にはクロックはTHzのオーダーまで向上させることは可能である。しかしながら、プロセッサのその他の部分の帯域が十GHzに制限されている(例えば、非特許文献4参照)ため、広帯域なスクイーズド光源の性能を十分に活かしきることができないという課題があった。このような課題に対し、近年では、広帯域なスペクトルを複数の周波数バンドに分割し、それぞれに対してホモダイン検出器を設置することで、独立したマルチコア光量子コンピュータが構成できることが分かっている。即ち、現在における技術でも、1つのクラスター状態生成部から、クロック周波数が数十GHzで数十コアの光量子プロセッサが構築できることになる。
【0005】
しかしながら、誤り耐性型万能量子コンピュータでは、誤り耐性を付与するために、非ガウス型量子状態と呼ばれる特殊な量子状態をプロセッサに導入する必要がある。単一光子状態などの単純な非ガウス型量子状態であれば、量子ドットなどを用いて100%に近い確率で当該量子状態を生成することができる。一方、光量子情報処理で必要となるのは、シュレディンガーの猫状態、光子数重ね合わせ状態、ゴッテスマン・キタエフ・プレスキル(以下、GKPという)状態といった非常に複雑な状態である(例えば、非特許文献5参照)。定在波を利用した物理系ではGKP量子ビットを含む非ガウス型量子状態を生成したという報告もあるが、実際に量子計算に使用するためには生成した状態を外に取り出す必要がある。対して光電場のような進行波の場合、光波束に非ガウス型状態を生成自体は困難であるが、そのまま誤り耐性のある量子ビットとして使用することができるという利点があるため、進行波型の非ガウス型量子状態生成器は誤り耐性型量子コンピュータの実現に直結する。
【0006】
現在、このような状態を生成する唯一の方法は、量子もつれ光源と光子数識別器を用いた伝令付き手法である。しかしながら、この手法では状態生成が確率的となるため、実用化にはタイミング調節機構が必須となる。そして、当該生成確率が低い場合、タイミング調節機構に対する要求性能(メモリー時間、損失など)が厳しく、実用性が失われるという課題がある。多数の非ガウス型量子状態生成器を用意し、生成に成功したもののみを光スイッチで選択する手法も実施されているが、単純な状態にしか適用できないという課題がある。また、この用途で使用する光スイッチは、多入力であり、かつ高速性(10ps程度の応答速度)と低損失性(数%未満の損失)を両立している必要があるが、一般にそのような光スイッチは存在しない。
【0007】
以下に、従来技術による光量子コンピュータの構成及び動作について、詳細に述べる。
【0008】
(従来技術による光量子コンピュータの構成)
図1は、従来技術による光量子コンピュータ100の構造を例示する図である。尚、
図1では、光量子コンピュータ100は、誤り耐性型万能量子コンピュータの形態として示されている。
図1に示される通り、従来技術による光量子コンピュータ100は、プロセッサ110と補助光生成装置120と、を含む。また、プロセッサ110は、スクイーズド光源111a-dと、非対称干渉計112と、ホモダイン検出器113a-dと、を含み、補助光生成装置120は、量子もつれ光源121と、検出器122と、を含む。
【0009】
光量子コンピュータ100では、時間領域多重化技術によって2次元クラスター状態を実現し、測定誘起型量子操作を利用して量子演算が実現される。2次元クラスター状態は、あらゆる量子計算パターンを実現できる量子もつれ状態である。十分な量子ビットの数で適切なもつれの構造を有するクラスター状態を準備することで、2次元クラスター状態に対し、個々の量子ビットを測定することにより、任意の量子演算を実施する。量子ビットの測定はホモダイン検出器113a-dによって実行され、ホモダイン検出器113a-dにおけるローカルオシレータ光の位相を選択することで、所望の測定が可能となる。
【0010】
しかしながら、プロセッサ110のようなプロセッサのみでは、上述の通り、誤り耐性のある量子計算は実現できないことが知られており、プロセッサ110に対し、誤り耐性を付与するために、外部から非ガウス型量子状態という補助光を導入する必要がある。この非ガウス型量子状態を生成する部分が補助光生成装置120である。補助光生成装置120における非ガウス型量子状態の生成は、上述の通り、確率的である。なお、誤り耐性型量子コンピュータには、本発明で着目している光方式に限らず、超伝導量子ビットやイオントラップなどいかなる方式であっても原理的に確率的な要素を含む。確率的な要素を如何に減らし、またその確率を向上させることが誤り耐性型量子コンピュータ研究の実現に向けた共通の課題である。
【0011】
(従来技術による非ガウス型量子状態の生成方法)
図2は、ガウス型状態及び非ガウス型状態のウィグナー関数を例示する図であり、(a)はガウス型状態のウィグナー関数を、(b)は非ガウス型状態のウィグナー関数を、それぞれ示している。量子状態は、ウィグナー関数という関数によって表現することができる。そして、非ガウス型量子状態とは、このウィグナー関数がガウス型ではない状態を指す。ガウス型状態の例としては、レーザー光(コヒーレント状態)や、スクイーズド光が挙げられる。一方、誤り耐性型量子計算に必要となる非ガウス型量子状態の例としては、光子数状態、シュレディンガーの猫状態、三次位相状態、GKP状態などが挙げられる。このような状態(補助光)をプロセッサ110に導入することにより、誤り耐性型計算が可能となる。
【0012】
非ガウス型量子状態は、量子もつれ光源121と検出器122を有する補助光生成装置120において、伝令付き手法によって生成することができる。ここで、量子もつれ光源121により出力される光は、2つ以上のモード間に量子的な相関がある状態である。例えば、アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン(以下、EPRという)状態はその一例であり、2つのモードの光子数が等しいという量子相関を持つ。以下では、伝令付き手法についていくつかの具体例を挙げて、詳細な説明を述べる。
【0013】
図3は、補助光生成装置120における単一光子状態の生成を概念的に表す図である。量子もつれ光源121において、量子もつれは、光パラメトリック過程や四光波混合過程によって実験的に生成することができる。ここでは周波数で非縮退の光パラメトリック過程が実行される例を挙げて考える。例えば、二次の非線形光学結晶(例えば、分極反転ニオブ酸リチウム)である導波路素子に周波数f
pの励起光を入力する場合において、当該導波路素子を適切な位相整合温度に設定すると、出力は周波数f
p/2を中心とした幅を持ったスペクトルが発生する。光パラメトリック過程ではf
p/2に対して対称な周波数の間に量子もつれが生じる。これは励起光の光子(周波数f
p)が、二つの光子(それぞれf
s、f
i)に分裂すると考えればよく、エネルギー保存則から、f
p=f
s+f
iが満たされる。ここで、二つのモードを区別するために、便宜的に周波数f
sの光をシグナル、f
iの光をアイドラーとする。アイドラー側がn光子であればシグナル側もn光子、という量子もつれが生じる。この状態は理想的なEPR状態の近似状態と考えることができる。アイドラー側に単一光子検出器である検出器122を設置し、当該検出器122において1光子が検出されたとき、シグナル側には単一光子状態が生成されるということになる。アイドラー側の検出器122を「伝令」として、シグナル側に状態が生成されるため、伝令付き手法と呼ばれている。また、アイドラー側の検出器122を光子数識別器に置き換え、その出力がnの時を伝令とすると、シグナル側にはn光子状態が生成される。
【0014】
図4は、単一光子状態よりも複雑な状態を生成する場合の補助光生成装置120の構造及び動作を概念的に示す図である。上述の通り、誤り耐性型万能量子コンピュータに必要なのは、単一光子状態よりもはるかに複雑な状態である。伝令付き手法の利点は、検出器122を工夫することによって、より複雑な状態の生成に応用できる点にある。例えば、
図4に示されるように、アイドラー側にビームスプリッタ123を配置し、超微弱光(ここでは、平均光子数が1程度のコヒーレント光を想定する)と干渉させ、その出力を検出器122で測定する。ここで、検出器122は単一光子検出器である。検出器122は、量子もつれ光源121から出力される光の光子か、超微弱光かを区別することができない。つまり、量子もつれ光源121が1光子かゼロ光子か分からないということになる。このとき、シグナル側にはゼロ光子と1光子の重ね合わせ状態である|0>+|1>という光子数重ね合わせ状態が生成される。ここで生成された状態は、三次位相状態の近似状態である。尚、
図4では、ビームスプリッタ123、超微弱光、検出器122は、1つずつの場合が描写されているが、各々の数を増やすことで、より複雑な状態も生成することが可能となる。実際、これまでには3光子までの重ね合わせ状態の生成に成功していることが知られている。そして、このような伝令付き手法を一般化することで、原理的にはシグナル側に任意の量子状態を生成することが可能となる。
【0015】
図5は、補助光生成装置120の別の形態の構造及び動作を概念的に示す図である。これまで述べてきた例では、量子もつれ光源121から出力される光は、EPR状態であるものとしていたが、当該出力される光は、EPR状態(若しくは、その近似状態)でなくともよい。
図5には、その一例として、アイドラー側の測定が、複数の超微弱光(コヒーレント状態、スクイーズド状態、若しくは非ガウス型状態)と、量子もつれ光源121とをビームスプリッタネットワーク124で干渉させ、検出器122(ここでは、複数の光子数識別器とする)で検出する形態が描写されている。このような形態を有する補助光生成装置120であっても、上記と同様に、ある光子数識別器の出力が条件を満たしたとき、シグナル側に所望の量子状態が生成される。
【0016】
非ガウス型量子状態を生成する方法としては、このような伝令付き手法以外にもいくつかの手法が存在するが、一般の量子状態を生成できる方法として現時点で知られているのは伝令付き手法のみである。
【0017】
また、上記の一般化された伝令付き手法に含まれる手法であるが、よく使用される方法として、光子引去り手法という手法も知られており、この手法は、シュレディンガーの猫状態という状態を生成するためによく使用される。シュレディンガーの猫状態は、それ単体でも量子通信や誤り訂正に使用できる非ガウス型量子状態である。また、複数のシュレディンガーの猫状態を干渉させることで、GKP量子ビットをほぼ決定論的に生成できる有用なリソース状態である。
【0018】
図6は、補助光生成装置120のさらに別の形態として、光子引去り法によりシュレディンガーの猫状態を生成する形態を概念的に示した図である。
図6に示されるような形態を有する補助光生成装置120では、まず、スクイーズド光源126において、縮退の光パラメトリック過程によりスクイーズド光が発生される。
図4、5に示されるような周波数非縮退の場合、シグナルとアイドラーは別の周波数に生成されたが、
図6に示されるような縮退の場合は同一の周波数に生成される。この出力の一部を検出器122(ここでは、光子数識別器とする)で検出する。このような形態では、検出器122側をアイドラー、残りをシグナル側と呼ぶ。光子数識別器でn光子を検出すると、シグナル側はもとのスクイーズド光からn光子が引去られた状態となる。この状態はシュレディンガーの猫状態のよい近似状態となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】W. Asavanant et al., “Time-Domain-Multiplexed Measurement-Based Quantum Operations with 25-MHz Clock Frequency”, Phys. Rev. Applied 16, 034005 (2021)
【非特許文献2】M. V. Larsen et al., “Deterministic multi-mode gates on a scalable photonic quantum computing platform”, Nat. Phys. 17, 1018 (2021)
【非特許文献3】T. Kashiwazaki et al., “Fabrication of low-loss quasi-single-mode PPLN waveguide and its application to a modularized broadband high-level squeezer”, Appl. Phys. Lett. 119, 251104 (2021)
【非特許文献4】J. F. Tasker et al., “Silicon photonics interfaced with integrated electronics for 9 GHz measurement of squeezed light”, Nat. Photon. 15, 11 (2021)
【非特許文献5】D. Gottesman et al., “Encoding a qubit in an oscillator”, Phys. Rev. A 64, 012310 (2001)
【非特許文献6】Y. Hashimoto et al., “All-Optical Storage of Phase-Sensitive Quantum States of Light”, Phys. Rev. Lett. 123, 113603 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述した伝令付き手法では、アイドラー側が条件を満たしたとき、シグナル側に所望の状態が生成される。言い換えると、これは、状態の生成が確率的になるということである。特に複雑な条件になればなるほど、状態の生成確率Pは低下する。量子計算では必要なときに必要な非ガウス型量子状態を準備しなければならず、この部分が確率的であることが問題となる。なお、誤り耐性型万能量子コンピュータでは、どの手法であっても確率的な要素は存在する。即ち、確率的な要素がある点が光方式特有の欠点ではないという点を強調しておく。例えば、誤り訂正を行わない場合(プロセッサのみを使用した量子計算を行う場合)、計算は決定論的に実行することができる。
【0021】
伝令付き手法により所望の量子状態の生成確率を向上させる手法として、これまでに提案されている手法では、多数の非ガウス型量子状態生成器を用意し、状態生成に成功したものを光スイッチで選択して利用するという手法が挙げられる。この手法はシンプルであり、N個の多重化で生成確率はNPになる。しかしながら、このような手法にはいくつかの課題があり、特に量子コンピュータ用には不向きである。
【0022】
まず、1つ目の課題として、大量の非ガウス型量子状態生成器を用意することが難しいことが挙げられる。必要なNは10や100、或いはそれ以上であり得るため、実際のハードウェアを構築するという観点では現実的でない。
【0023】
また、2つ目の課題として、光スイッチの部分が挙げられる。光スイッチとしては、多入力、高速、低ロスという要求があるが、このような条件を満たす光スイッチは現存せず、今後もしばらくは実現されることは困難であると考えられる。
【0024】
別の手法として、空間的な多重ではなく、周波数で多重化する方式もある。この場合、実験系はコンパクトになり、より現実的である。加えて、先行研究では光スイッチ部分に四光波混合過程を用いており、多入力の課題も解決している。しかしながら、四光波混合過程では、比較的単純な量子状態にしか適用できず、シュレディンガーの猫状態やGKP量子ビットに応用することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記のような課題に対して鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、伝令付き手法における所望の量子状態生成の確率を向上させることが可能な周波数多重型非ガウス型量子状態生成器、当該周波数多重型非ガウス型状態生成器を含む補助光生成装置、並びに、当該補助光生成装置を含む光量子コンピュータを提供することにある。
【0026】
このような目的を達成するため、本発明では、異なる周波数を有する複数の光に対して、伝令付き手法を実行する周波数多重型非ガウス型量子状態生成器であって、周波数が対称になった光子ペアを生成する第1の量子もつれ光源であって、シグナル側の光及びアイドラー側の光を含む光を出力する第1の量子もつれ光源と、第1の量子もつれ光源から出力された光を周波数に応じて複数に分岐させる周波数分岐装置と、周波数分岐装置から出力された複数の光のうち、アイドラー側の光に対して一般化測定を実行する、複数の一般化測定装置と、を含む、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器を提供する。
【0027】
また、本発明では、上記の周波数多重型非ガウス型量子状態生成器を含む補助光生成装置であって、当該周波数多重型非ガウス型量子状態生成器の出力側に配置され、非ガウス型量子状態が必要な周波数に対し量子テレポーテーションを実行するテレポーテーション回路をさらに含む、補助光生成装置を提供する。
【0028】
さらに、本発明では、上記の補助光生成装置をプロセッサと組み合わせた、光量子コンピュータを提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明による周波数多重型非ガウス型量子状態生成器及びそれを含む補助光生成装置を、光量子コンピュータのプロセッサと組み合わせることで、誤り耐性型万能量子計算をマルチコアかつ高クロック周波数で実現することができる。これは、量子コンピュータの他の方式では実現できないような高速かつ大規模計算を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来技術による光量子コンピュータ100の構造を例示する図である。
【
図2】ガウス型状態及び非ガウス型状態のウィグナー関数を例示する図であり、(a)はガウス型状態のウィグナー関数を、(b)は非ガウス型状態のウィグナー関数を、それぞれ示している。
【
図3】補助光生成装置120における単一光子状態の生成を概念的に表す図である。
【
図4】単一光子状態よりも複雑な状態を生成する場合の補助光生成装置120の構造及び動作を概念的に示す図である。
【
図5】補助光生成装置120の別の形態の構造及び動作を概念的に示す図である。
【
図6】補助光生成装置120のさらに別の形態として、光子引去り法によりシュレディンガーの猫状態を生成する形態を概念的に示した図である。
【
図7】本発明による補助光生成装置700の構造及び動作を概念的に示す図である。
【
図8】周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710の構成及び動作を概念的に示す図である。
【
図9】テレポーテーション回路720の構造及び動作を概念的に示す図である。
【
図10】ホモダイン測定器722aの構造および動作を概念的に示す図である。
【
図11】フィードフォワード装置723の構造と動作を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、図面を参照しながら本開示の種々の実施形態について詳細に説明する。同一又は類似の参照符号は同一又は類似の要素を示し重複する説明を省略する場合がある。材料及び数値は例示を目的としており本開示の技術的範囲の限定を意図していない。以下の説明は、一例であって本発明の一実施形態の要旨を逸脱しない限り、一部の構成を省略若しくは変形し、又は追加の構成とともに実施することができる。
【0032】
(全体構成)
図7は、本発明による補助光生成装置700の構造及び動作を概念的に示す図である。
図7に示される通り、補助光生成装置700は、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710と、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710の出力側に配置されたテレポーテーション回路720と、を含む。また、補助光生成装置700は、テレポーテーション回路720から、どの周波数に非ガウス型量子状態が生成されたかを周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710に伝達する通信路730をさらに含んでもよい。
【0033】
本発明による補助光生成装置700では、異なる周波数を有する複数の光に対して、同時に伝令付き手法が周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710により実行され、第1の非ガウス型量子状態が生成される。そして、実際に非ガウス型量子状態が必要な周波数に対し、テレポーテーション回路720において量子テレポーテーションが実行され、所望の周波数を有する第2の非ガウス量子状態が出力される。このように構成される補助光生成装置700では、1つの周波数バンドにおける非ガウス型量子状態の生成確率をPとすると、N個の周波数バンドを用いているため、所望の非ガウス型量子状態の生成確率は 1-(1-P)Nになる。したがって多重度を上げることで生成確率を向上させることができるため、上述したタイミング調節機構への要求を大幅に緩和することができる。
【0034】
(周波数多重型非ガウス型状態生成器の構成及び動作)
図8は、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710の構成及び動作を概念的に示す図である。
図8に示される通り、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710は、ある周波数f
cを対称に光子ペア(シグナル側とアイドラ側)が生成されるように構成されており、量子もつれ光源711と、量子もつれ光源711から出力された光を周波数に応じて分岐させる周波数分岐装置712と、周波数分岐装置712から出力された周波数が異なる光のペア(f
1とf
1’のペア、f
2とf
2’のペア・・・f
nとf
n’のペア)のうち、アイドラー側の各々の周波数の光(f
1’、f
2’・・・f
n’)に対して一般化測定を実行する一般化測定装置713a-cと、を含む。尚、
図8では、一般化測定装置713a-cは3つとして描写されているが、これは例示を目的としており、分岐される周波数の数に応じて任意の数が設置されてよい。
【0035】
ここで、一般化測定装置713a-cは、周波数分岐装置712から出力された周波数が異なる光のペアのうち、アイドラー側の各々の周波数の光を入力光とし、当該入力光と複数の補助入力光とを、複数のビームスプリッタにより干渉させ、干渉計の出力を複数の光子検出器(光子数識別器もしくは単一光子検出器)で検出することによって、一般化測定を実現させるように構成される(例えば、非特許文献6)。
【0036】
量子もつれ光源711における量子もつれの生成は、例えば、周波数非縮退の光パラメトリック過程であってよく、この場合は周波数2fcの励起光でパラメトリック過程を励起することで、fc±nΔfの周波数間に量子もつれが発生する(nは0以外の整数である)。以下では、fc+nΔf=fnの周波数を有する光をシグナル、fc-nΔf=fn’の周波数を有する光をアイドラーとして表記する。即ち、fnとfn’が量子もつれの関係にあることとなる。
【0037】
一般に、非線形光学結晶の非線形光学定数は低いため、光パラメトリック過程では、共振器を利用した光パラメトリック発振器が使用され得る。若しくは、超短パルスレーザーによって、バルクの非線形光学結晶を励起することも手法の一つして挙げられる。しかしながら、前者の場合、結晶の位相整合条件や共振器の制限があり、広帯域な量子もつれ光源としては適さない。一方、後者の場合、出力のビーム品質が損なわれてしまうという課題がある。そこで、量子もつれ光源711としては、共振器構造を持たない代わりに、空間的に光を閉じ込め実効的に高い非線形光学定数を得ることができる導波路型光パラメトリック増幅器が使用されることが望ましい。これらの導波路素子では分極周期を調節することで効率的な波長変換を行う疑似位相整合が行われる。
【0038】
以下では、実際に非ガウス型量子状態が必要な光の周波数(第2の非ガウス型量子状態の周波数)をf0とする。そして、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710から出力される光の周波数(第1の非ガウス型量子状態の周波数)をfnとする。周波数fnの非ガウス型量子状態は、例えば、上述した一般化測定装置713a-cにおいて、fn’の周波数で所望の測定結果が得られた際に対応するfnの周波数の非ガウス型量子状態として、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710から出力される。
【0039】
尚、このような構成を有する周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710は、マルチコア光量子コンピュータの補助光生成器として、そのまま使用することも可能である。
【0040】
(テレポーテーション回路の構成及び動作)
図9は、テレポーテーション回路720の構造及び動作を概念的に示す図である。
図9に示される通り、テレポーテーション回路720は、量子もつれ光源721と、ホモダイン測定器722a、bと、ホモダイン測定の結果に応じて位相・変位操作を実行するフィードフォワード装置723と、を含む。
【0041】
テレポーテーション回路720の量子もつれ光源721は、異なる周波数(fnとf0)の光の間で量子テレポーテーションを行うため、これら2つの光の間の量子もつれを生成する光源である。例えば、量子もつれ光源721は、周波数f0+fnの励起光でパラメトリック過程を励起するように構成され得る。この場合、当該異なる周波数の光のうち、一方は、上述した周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710から出力されるシグナル側の出力光と同じ周波数(ここでは、例としてfn)を有し、もう一方は、所望の(実際に非ガウス型量子状態が必要となる)補助光と同じ周波数を有する。
【0042】
図10は、ホモダイン測定器722aの構造および動作を概念的に示す図である。尚、図中ではホモダイン測定器722aの構造を例示しているが、ホモダイン測定器722bも同様の構造である。
図10に示される通り、ホモダイン測定器722aは、ビームスプリッタ7221と、位相変調器7222と、バランス型フォトディテクタ7223と、を含む。
【0043】
ホモダイン測定器722aに入力された測定対象光は、反射率0.5のビームスプリッタ7221によって、ローカルオシレータ光と干渉される。このとき、測定対象光とローカルオシレータ光の周波数は一致させる必要があるため、ローカルオシレータ光は光の位相を変調することができる位相変調器7222によって位相制御された上で、測定対象光と干渉される。尚、この位相を測定位相と呼ぶ。ビームスプリッタ7221から出力される2つの光は、バランス型フォトディテクタ7223で受光され、差分信号が出力される。このように構成されるホモダイン測定器722aでは、測定対象光の測定位相及び当該測定位相における直交位相の各々の振幅を測定することができる。ここでは、便宜的に、測定位相を0度とし、直交位相を90度とした場合のそれぞれの位相をX、P方向と呼ぶこととする。
【0044】
尚、上記の様な構成は、一例であり、ホモダイン測定器722aは他の構成を有してもよい。例えば、測定対象光の測定位相成分を、予め位相敏感増幅器によって増幅しておくことで、DCから100GHzという広帯域で雑音の少ない測定も可能となる。位相敏感増幅器としては、光パラメトリック増幅器などが使用できる。
【0045】
テレポーテーション回路720における量子テレポーテーションでは、周波数多重型非ガウス型量子状態生成器710により生成された非ガウス型量子状態(周波数f
n)と、量子もつれ光源721から出力される光の一方(周波数f
n)をビームスプリッタ724で干渉させたのち、その2つの出力を2つのホモダイン測定器722a、bで測定する。このとき、
図9に示されるように、一方(
図9におけるホモダイン測定器722a)ではX成分、もう一方(
図9におけるホモダイン測定器722b)ではP成分を測定するよう、それぞれの位相変調器7222でローカルオシレータ光の位相が制御される。
【0046】
図11は、フィードフォワード装置723の構造と動作を概念的に示す図である。
図11に示される通り、フィードフォワード装置723は、第1の増幅器7231と、第1の位相変調器7232と、第1のビームスプリッタ7233と、第2の増幅器7234と、第2の位相変調器7235と、第2のビームスプリッタ7236と、を含む。
【0047】
量子テレポーテーションにおいて、フィードフォワード装置723が実行することは、上述した2つのホモダイン測定器722a、bにおける測定結果に基づいて、量子もつれ状態のもう一方(周波数f0)に変位操作を行うことである。この変位操作は対象となる光に対してコヒーレント光を干渉させることで実現できる。フィードフォワード装置723に入力した入力光は、量子もつれ光源721から出力された周波数f0の光であり、ホモダイン測定をしていない側の光である。ここで、X側のホモダイン測定器(ホモダイン測定器722a)からの出力信号を変位信号Xと呼ぶ。この変位信号Xは第1の増幅器7231で適切な倍率で増幅され、第1の位相変調器7232に入力される。第1の位相変調器7232では変位光Xというコヒーレント光(周波数は入力光に等しい)の位相を、ホモダイン測定器722aの出力結果に応じて調節する。そして、第1の位相変調器7232で位相変調された変位光Xと入力光は、反射率が1に近い第1のビームスプリッタ7233で干渉する。ここで、変位光Xの位相をX方向に制御することで、入力光に対してX方向の変位操作が実現できる。変位量の調節は変位信号X、第1の増幅器7231、変位光X、第1の位相変調器7232の特性、第1のビームスプリッタ7233の反射率によって決定することができる。このX変位操作の出力として、第1のビームスプリッタ7233から出力される光を出力光Xと呼ぶ。そして、当該出力光Xに対し、続けてP側の変位操作を行う。この操作は、X変位操作と同様の操作であり、出力光Xが入力光Pに、変位光Xが、変位信号P(ホモダイン測定器722bからの出力信号)に基づいて第2の位相変調器7235で調整された変位光Pに置き換わった形式の操作となる。
【0048】
このような動作により、フィードフォワード装置723において量子テレポーテーションにより所望の非ガウス型量子状態(周波数f0)が生成され、当該所望の非ガウス型量子状態が、テレポーテーション回路720から出力される。
【0049】
尚、上述した構成は、XからPの順番で変位操作を行うものとして説明を述べたがが、当該順番は逆にすることも可能である。また、これまでの先行研究では、上述のホモダイン測定器722a、b、第1の増幅器7231、第2の増幅器7234はすべて電気信号を扱う素子であり、第1の位相変調器7232及び第2の位相変調器7235によって当該電気信号を光信号に変換するように構成されている。しかしながら、これら電気信号を全て光で行うことも可能である。例えば、上述した位相敏感増幅器の出力光のパワー、及び位相を調節し、ビームスプリッタで干渉させてもよい。このような方式では、電気信号を介さないため、広帯域なフィードフォワードも可能となる。このときの帯域は、使用する位相敏感増幅器に依存するが、10THz程度も可能である。
【0050】
このような構成を有する、本発明による補助光生成装置700は、多数の非ガウス型状態生成器を並べるのではなく、周波数多重した1つの光源から、所望の周波数の量子状態に対して、量子テレポーテーションを行うように構成されている。これにより、多重度分生成確率を向上させることができるため、従来技術による伝令付き手法に比べ、量子状態生成の確率を大幅に向上させることが可能となる。後段に必要なタイミング調節機構への要求性能を大幅に緩和させることができる。
【0051】
また、本発明による補助光生成装置700を、光量子コンピュータのプロセッサと組み合わせることで、誤り耐性型万能量子計算をマルチコアかつ高クロック周波数で実現することができる。これは、量子コンピュータの他の方式では実現できないような高速かつ大規模計算を可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上述べたした通り、本発明による非ガウス型量子状態生成器は、従来技術による伝令付き手法に比べ、量子状態生成の確率を大幅に向上させることができ、量子コンピュータのプロセッサ等への適用が見込まれる。
【符号の説明】
【0053】
100 光量子コンピュータ
110 プロセッサ
111a-d スクイーズド光源
112 非対称干渉計
113a-d ホモダイン検出器
120 補助光生成装置
121 光源
122 検出器
123 ビームスプリッタ
124 ビームスプリッタネットワーク
126 スクイーズド光源
700 補助光生成装置
710 周波数多重型非ガウス型量子状態生成器
711 量子もつれ光源
712 周波数分岐装置
713a-c 一般化測定装置
720 テレポーテーション回路
721 量子もつれ光源
722a ホモダイン測定器
722b ホモダイン測定器
723 フィードフォワード装置
724 ビームスプリッタ
730 通信路
7221 ビームスプリッタ
7222 位相変調器
7223 バランス型フォトディテクタ
7231 第1の増幅器
7232 第1の位相変調器
7233 第1のビームスプリッタ
7234 第2の増幅器
7235 第2の位相変調器
7236 第2のビームスプリッタ