(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169271
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】カーボンリサイクル方法及びCO2の吸着・変換触媒
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20241128BHJP
B01J 23/58 20060101ALI20241128BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241128BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20241128BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C25B1/23
B01J23/58 M
B01D53/62
B01D53/82
B01D53/86 243
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176973
(22)【出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2023084790
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/二酸化炭素回収と資源化の複合化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河 脩平
(72)【発明者】
【氏名】友澤 慧大
(72)【発明者】
【氏名】津野地 直
【テーマコード(参考)】
4D002
4D148
4G169
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002BA04
4D002BA06
4D002BA12
4D002DA01
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA04
4D002DA05
4D002DA06
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4G169BC75A
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4G169DA06
4G169EA01Y
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4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4K021AA09
4K021DB05
4K021DB18
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】CO2含有ガス中からCO2を分離し、100~200℃程度の低温雰囲気中でCO2の還元反応を行うことができるカーボンリサイクル方法を提供する。
【解決手段】カーボンリサイクル方法は、CO2含有ガス中のCO2を吸着し、CO含有ガスに変換する触媒として、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に、白金(Pt)、白金塩、白金錯体及び酸化白金から選ばれるいずれかの白金化合物とアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とが担持されている触媒を用い、前記触媒を100~200℃に加熱状態を維持しつつ、前記触媒に前記CO2含有ガスを導通し、前記CO2を吸着するCO2吸着工程と、前記CO2を吸着した前記触媒に還元ガスを導通し、且つ前記触媒に電荷を外部刺激として印加して、前記触媒に吸着したCO2をCO含有ガスに変換し、前記CO含有ガスを前記触媒から脱離する変換・離脱工程とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2含有ガス中のCO2をCO含有ガスに変換するカーボンリサイクル方法であって、
前記CO2を吸着し、CO含有ガスに変換する触媒として、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に、白金(Pt)、白金塩、白金錯体及び酸化白金から選ばれるいずれかの白金化合物とアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とが担持されている触媒を用い、前記触媒を100~200℃に加熱状態を維持しつつ、
前記触媒に前記CO2含有ガスを導通し、前記CO2を吸着するCO2吸着工程と、
前記CO2を吸着した前記触媒に還元ガスを導通し、且つ前記触媒に電荷を外部刺激として印加して、前記触媒に吸着したCO2をCO含有ガスに変換し、前記CO含有ガスを前記触媒から脱離する変換・離脱工程とを有することを特徴とするカーボンリサイクル方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属塩が、Li,Na,K,Rb,及びCsの少なくともいずれかの塩であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンリサイクル方法。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属塩が、Mg,Ca,Sr,及びBaの少なくともいずれかの塩であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンリサイクル方法。
【請求項4】
前記触媒が、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びナトリウム(Na)塩が担持されているものであることを特徴とする請求項1に記載のカーボンリサイクル方法。
【請求項5】
前記還元ガスとして、水素ガスを用いることを特徴とする請求項1に記載のカーボンリサイクル方法。
【請求項6】
前記触媒が充填された二本のCO2吸着・変換筒を設け、前記二本のCO2吸着・変換筒の各々の前記CO2吸着工程と前記変換・離脱工程とが交互になされ、前記CO2吸着・変換筒の一方が前記CO2吸着工程のとき、他方の前記CO2吸着・変換筒が前記変換・離脱工程となるように調整されることを特徴とする請求項1に記載のカーボンリサイクル方法。
【請求項7】
CO2含有ガス中のCO2を吸着し、還元ガス中で吸着した前記CO2をCO含有ガスに変換する触媒が、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が担持されているものであることを特徴とするCO2の吸着・変換触媒。
【請求項8】
前記アルカリ金属塩が、Li,Na,K,Rb,及びCsの少なくともいずれかの塩であることを特徴とする請求項7に記載のCO2の吸着・変換触媒。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属塩が、Mg,Ca,Sr,及びBaの少なくともいずれかの塩であることを特徴とする請求項7に記載のCO2の吸着・変換触媒。
【請求項10】
前記触媒が、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びナトリウム(Na)塩が担持されているものであることを特徴とする請求項7に記載のCO2の吸着・変換触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2含有ガス中のCO2をCO含有ガスに変換するカーボンリサイクル方法及びこのカーボンリサイクル方法に用いるCO2の吸着・変換触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)やメタン(CH4)に変換して有効利用を図ろうとするカーボンリサイクル方法が検討されている。例えば、下記特許文献1には、二酸化炭素を含む原料ガスと接触させることにより、前記二酸化炭素を還元して、一酸化炭素を含む生成ガスを製造するのに使用される酸素キャリアであって、銅(Cu)と、銅と異なる第2の元素とを含有する金属酸化物を含み、該金属酸化物は、酸化銅の結晶相と、前記第2の元素の酸化物の結晶相とを有する酸素キャリアを、二酸化炭素を含む原料ガスと接触させることにより、前記二酸化炭素を還元して、一酸化炭素を含む生成ガスを製造するガスの製造方法が提案されている。この製造方法では、二酸化炭素の還元反応を進行するには300℃以上の高温が必要である。
【0003】
また、下記特許文献2には、モリブデン三酸化物を含むMo酸化物と、前記Mo酸化物に担持された白金粒子とを具備する白金担持Mo酸化物触媒を用い、水素の存在下で、二酸化炭素の脱酸素反応を行い、一酸化炭素及びメタノールの少なくとも一方を生成させる工程を有する、一酸化炭素/メタノールの製造方法が提案されている。この製造方法では、二酸化炭素の脱酸素反応を200~300℃で進行させることができる。
【0004】
ところで、カーボンリサイクル方法でも、工業的に実施できることが大切であり、原料となるCO2の発生源が問題である。大気中でのCO2濃度は低く工業的なカーボンリサイクル方法のCO2源とはなり得ない。一方、石炭火力発電所等の工場からの排気ガス中のCO2濃度は大気中よりも高濃度であり、有効なCO2源と成り得る。しかし、工場からの排気ガス中の窒素(N2)濃度がCO2濃度よりも著しく高く、先ず、CO2を排気ガスから分離することを要する。また、石炭火力発電所等の工場からの排気ガスの有する熱量をカーボンリサイクル方法に利用することが、工業的にカーボンリサイクル方法を実施するうえで重要である。しかし、工場からの排気ガスは、含有するダスト除去やNOX除去等の種々の処理が施されてから排出され、排気ガス温度は100~200℃程度に低下しており、このような低温でもカーボンリサイクル方法を実施できることが大切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-53181号公報
【特許文献2】特開2021-186732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、CO2含有ガス中からCO2を分離し、100~200℃程度の低温雰囲気中でCO2の還元反応を行うことができるカーボンリサイクル方法及びCO2の吸着・変換触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、CO2含有ガス中のCO2をCO含有ガスに変換するカーボンリサイクル方法は、前記CO2を吸着し、CO含有ガスに変換する触媒として、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に、白金(Pt)、白金塩、白金錯体及び酸化白金から選ばれるいずれかの白金化合物とアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とが担持されている触媒を用い、前記触媒を100~200℃に加熱状態を維持しつつ、前記触媒に前記CO2含有ガスを導通し、前記CO2を吸着するCO2吸着工程と、前記CO2を吸着した前記触媒に還元ガスを導通し、且つ前記触媒に電荷を外部刺激として印加して、前記触媒に吸着したCO2をCO含有ガスに変換し、前記CO含有ガスを前記触媒から脱離する変換・離脱工程とを有することを特徴とするものである。
【0008】
前記アルカリ金属塩が、Li,Na,K,Rb,及びCsの少なくともいずれかの塩であることにより、メタン(CH4)濃度よりもCO濃度が高いCO含有ガスを得ることができる。
【0009】
前記アルカリ土類金属塩が、Mg,Ca,Sr,及びBaの少なくともいずれかの塩であることにより、前記アルカリ金属塩としてアルカリ金属塩を用いた場合に比較して、高濃度のメタン(CH4)を含有するCO含有ガスを得ることができる。
【0010】
前記触媒が、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びナトリウム(Na)塩が担持されているものであることにより、最もCO2吸着量が多く且つ高濃度のCO含有ガスを得ることができる。
【0011】
前記還元ガスとして、水素ガスを用いることが好ましい。
【0012】
前記触媒が充填された二本のCO2吸着・変換筒を設け、前記二本のCO2吸着・変換筒の各々の前記CO2吸着工程と前記変換・離脱工程とが交互になされ、前記CO2吸着・変換筒の一方が前記CO2吸着工程のとき、他方の前記CO2吸着・変換筒が前記変換・離脱工程となるように調整されることにより、工場等からの排出ガス中からCO含有ガスを連続して得ることができる。
【0013】
前記の目的を達成するためになされたCO2の吸着・変換触媒は、CO2含有ガス中のCO2を吸着し、還元ガス中で吸着した前記CO2をCO含有ガスに変換する触媒であって、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が担持されているものであることを特徴とするものである。
【0014】
前記アルカリ金属塩が、Li,Na,K,Rb,及びCsの少なくともいずれかの塩であることにより、メタン(CH4)濃度よりもCO濃度が高いCO含有ガスを得ることができる。
【0015】
前記アルカリ土類金属塩が、Mg,Ca,Sr,及びBaの少なくともいずれかの塩であることにより、前記アルカリ金属塩としてアルカリ金属塩を用いた場合に比較して、高濃度のメタン(CH4)を含有するCO含有ガスを得ることができる。
【0016】
前記触媒が、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びナトリウム(Na)塩が担持されているものであることにより、最もCO2吸着量が多く且つ高濃度のCO含有ガスを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排出ガス中のCO2を吸着する吸着工程と、吸着したCO2をCOへと変換し離脱する変換・離脱工程とを、一種類の触媒を用いて工場等からの排出ガスにより排出される排出熱を利用できる100~200℃の温度雰囲気中で実施できる。このため、カーボンリサイクル方法を工業的に実施可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るカーボンリサイクル方法を工業的に実施するための装置の一例を示す略線図である。
【
図2】本発明に係る触媒のCO
2の吸着条件及び吸着量を説明するグラフである。
【
図3】本発明に係るカーボンリサイクル方法を実験するための実験装置の略線図である。
【
図4】
図3に示す実験装置を用いて得た、触媒の種類によるCO
2から変換したCO生成速度とCH
4生成速度とを測定した結果を示すグラフである。
【
図5】
図3に示す実験装置を用いて得た、Pt-Na-TiO
2触媒のTiO
2の種類を変更したときのCO生成速度とCH
4生成速度とを測定した結果を示すグラフである。
【
図6】
図3に示す実験装置を用いて得た、Pt-Na-TiO
2-1触媒による吸着工程及び変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図7】
図3に示す実験装置を用いて得た、Pt-Na-TiO
2-2触媒による吸着工程及び変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図8】
図3に示す実験装置を用いて得た、Pt-Na-TiO
2-3触媒による吸着工程及び変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図9】
図3に示す実験装置を用いて得た、Pt-Na-TiO
2-2触媒を用いて変換・離脱工程でのH
2濃度を変更したときのCO,CO
2の生成量変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図10】
図3に示す実験装置を用いて得た、Pt-TiO
2触媒による吸着工程及び変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図11】
図3に示す実験装置を用いて得た、Na-TiO
2触媒による吸着工程及び変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図12】
図3に示す実験装置において、電荷の印加を停止した状態として、Pt-Na-TiO
2-2触媒を用いて吸着工程及び変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で用いる触媒は、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に、白金(Pt)、白金塩、白金錯体及び酸化白金から選ばれるいずれかの白金化合物とアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩とが担持されているものである。
酸化チタン(TiO2)粒子は、ルチル型とアナターゼ型とのどちらか一方、或いはルチル型とアナターゼ型とが混合されていてもよい。TiO2粒子の粒径は8~15μmであることが好ましい。特に、TiO2粒子は、この粒径内において、細かく且つ比表面積が大きなものが、CO2の吸着量が多くなり好ましい。このようなTiO2粒子の表面には、白金(Pt)、白金塩、白金錯体及び酸化白金から選ばれるいずれかの白金化合物とアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩とが担持されている。白金化合物とアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩との各々は、TiO2粒子の表面に互いに独立して担持されていてもよく、TiO2粒子の表面に担持された白金化合物上にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が担持されていてもよい。
【0020】
ここで、TiO2粒子の表面に、白金化合物とアルカリ金属塩とが担持されている触媒を用いた場合、CO濃度がCH4濃度よりも著しく高濃度の混合ガスを得ることができる。アルカリ金属塩としては、Li,Na,K,Rb,及びCsの少なくともいずれかの塩が好適であり、Na塩であると一層好適である。このアルカリ金属塩としては、Li,Na,K,Rb,及びCsの塩のいずれかの塩を複数用いてもよい。
また、TiO2粒子の表面に、白金化合物とアルカリ土類金属塩とが担持されている触媒を用いた場合、アルカリ金属塩が担持されている触媒を用いた場合よりも、CH4濃度が高濃度の混合ガスを得ることができる。アルカリ土類金属塩としては、Mg,Ca,Sr,及びBaの少なくともいずれかの塩が好適である。アルカリ土類金属塩の範疇では、Ca塩とすることにより、CO濃度とCH4濃度との合計濃度が高い混合ガスを得ることができる。このアルカリ土類金属塩としては、Mg,Ca,Sr,及びBaの塩のいずれかの塩を複数用いてもよい。
【0021】
TiO2粒子の表面に担持された白金化合物の担持量は、全触媒量に対して0.1~10質量%が好ましく、更に好ましくは0.5~5質量%、特に好ましくは3~5質量%である。また、TiO2粒子の表面に担持された、アルカリ金属塩の場合の担持量は、全触媒量に対して1~15質量%が好ましく、更に好ましくは1~7質量%、特に好ましくは5~7質量%であり、アルカリ土類金属塩の場合の担持量は、全触媒量に対して1~15質量%が好ましく、更に好ましくは1~7量%、特に好ましくは5~7質量%である。
【0022】
このような触媒のうち、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金(Pt)及びナトリウム(Na)塩が担持されているものであることにより、最もCO2吸着量が多く且つ高濃度のCO含有ガスを得ることができ好ましい。
【0023】
本発明で用いる触媒の調製方法は、テトラアンミン白金硝酸塩等の水溶性の白金錯体とアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の硝酸塩との水溶液に、酸化チタン粉末を浸し、撹拌しながらホットプレート上で水を蒸発させた。次いで、得られた粉末を500℃で3時間焼成することで触媒を得ることができる。このような含浸法の他に、酸化チタン粒子の表面に白金とアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を高分散に担持できるのであれば他の方法であってもよい。
【0024】
このようにして得られた触媒を用いたカーボンリサイクル方法は、CO2含有ガスを100~200℃に加熱されている触媒に導通し、CO2を触媒に吸着する吸着工程の後、100~200℃の加熱状態を維持して、CO2を吸着した触媒に還元ガスを導通しつつ、触媒に電荷を外部刺激として印加して、触媒に吸着したCO2をCO含有ガスに変換し、CO含有ガスを触媒から脱離する変換・離脱工程を経由してCO含有ガスを得る方法である。
【0025】
本発明に係るカーボンリサイクル方法の吸着工程では、触媒とCO2含有ガスとの接触時間としては5~10分程度でよく、その温度を100~200℃とすることが必要である。100℃未満では、吸着工程後の変換・離脱工程での反応が不利となり、且つ副生する水で触媒が濡れてしまうおそれがあり、200℃を超える温度では触媒のCO2の吸着が不利となり、エネルギー的にも不利である。
【0026】
ところで、このカーボンリサイクル方法において、触媒として、酸化チタン(TiO2)粒子の表面に白金化合物のみが担持されている触媒を用いた場合、CO2の吸着工程では、若干のCO2を吸着するものの、100~200℃の変換・離脱工程では、COに変換され難い。また、触媒として、酸化チタン(TiO2)粒子の表面にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩のみが担持されている触媒を用いた場合も、CO2の吸着工程では、CO2を吸着できるものの脱離され易く、且つ100~200℃の変換・離脱工程では、COに変換され難い。
【0027】
本発明に係るカーボンリサイクル方法では、触媒に供給するCO2含有ガスとしては、石炭火力発電所等から発生する排気ガスであって、ダスト除去やNOX除去等が施されており、実質的にCO2及びN2から成る排気ガスが好ましい。特に、温度が100~200℃の排気ガスは、吸着工程において、触媒が載置されている空間を加熱する外部加熱を省略又は軽減でき好適である。吸着工程を通過したガスは、CO2が吸着されて実質的にN2のみからなるガスであるから、そのまま大気に放出してもよく、或いはガス中の残存CO2を除去すべく、ゼオライト等の市販されているCO2吸着剤を通過してから大気に放出してもよい。
【0028】
このように吸着工程でCO2を吸着した触媒を変換・離脱工程に供給し、還元ガスの雰囲気下で100~200℃に加熱しつつ、触媒に外部刺激としての電荷を印加して、触媒に吸着したCO2をCO含有ガスに変換し触媒から離脱する。
この還元ガスとしては水素ガスが好ましく、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーを用いて得られた水素ガスを好適に用いることができる。還元ガスと触媒との接触時間は20~30分程度でよい。また、触媒に印加する電荷は直流電流であり、3~15mA、0.1~1kVとすることが好ましい。ここで、触媒に電荷を印加しなかった場合、触媒に吸着したCO2をCO含有ガスに変換することができない。
また、変換・離脱工程では、触媒が載置されている雰囲気温度を100~200℃とすることを要する。雰囲気温度が100℃未満の場合、触媒に吸着されたCO2をCOに変換する還元速度が遅くなり、200℃を超える場合、COへの還元速度は飽和となっており、エネルギー的にも不利である。
変換・離脱工程では、吸着工程を経由した触媒が100~200℃に加熱されており、その熱を利用できるものの、導入される還元ガスの温度が100℃未満であるから、外部加熱により触媒の雰囲気を100~200℃とすることが必要となることがある。このような、変換・離脱工程では、還元ガスの導入当初は触媒からCO2が離脱するが、次第にCOが生成し、離脱するCO2よりも多くなり、最終的にCOとCH4との合計量がCO2量よりも多い混合ガスを得ることができる。尚、この変換・離脱工程から排出されるCO含有ガス中には、CO及びCH4の他に、上述したように触媒から離脱したCO2、CO2とH2との還元反応によるH2O、還元ガスとして供給したH2の残余分が含まれている。
【0029】
本発明に係るカーボンリサイクル方法では、TiO2粒子の表面に、白金化合物とアルカリ金属塩とが担持されている触媒を用いた場合、CO濃度がCH4濃度よりも著しく高濃度の混合ガスを得ることができる。アルカリ金属塩としては、Li,Na,K,Rb,Csのいずれかの塩を好適に用いることができる。特に、TiO2粒子の表面に、白金化合物とナトリウム(Na)塩が担持されている触媒を用いることにより、最もCO2吸着量が多く且つCO量がCH4量よりも多いCO含有ガスを得ることができ好ましい。
【0030】
一方、TiO2粒子の表面に、白金化合物とアルカリ土類金属塩とが担持されている触媒を用いた場合、COとCH4との混合ガスを得ることができるが、アルカリ金属塩が担持されている触媒を用いたときよりも、CH4量が多い混合ガスを得ることができる。アルカリ土類金属塩としては、Mg,Ca,Sr,Baのいずれかの塩を好適に用いることができる。就中、Ca塩を用いることにより、CO量とCH4量との合計量が多い混合ガスを得ることができる。
【0031】
このようなカーボンリサイクル方法によれば、石炭火力発電所等から発生する排気ガス中よりCO2を吸着して分離し、吸着したCO2からCOとCH4とを含有する混合ガスを得ることができる。この混合ガスは、COとCH4とに分離し、化学品や燃料油等の原料に用いることができる。また、カーボンリサイクル方法で用いる触媒は、一連のCO2の吸着工程と還元ガス中でのCO含有ガスの変換・離脱工程とを終了した後、再度、CO2の吸着工程とCO含有ガスの変換・離脱工程とを実施できる。
【0032】
上述したカーボンリサイクル方法は、
図1に示す装置で工業的に実施可能である。
図1に示す装置では、上述した触媒が充填された二本のCO
2吸着・変換筒10a,10bの各々に加熱用のヒータ12a,12bが設けられている。更に、CO
2吸着・変換筒10a,10bの各々に充填されている触媒に刺激用の電荷を付す直流電源14a,14bと、触媒層内の電極と直流電源14a,14bとを接続する回路の途中にスイッチ16a,16bが設けられている。また、石炭火力発電所等から発生する排気ガスと、還元ガスとしてのH
2ガスとをCO
2吸着・変換筒10a,10bの各々に供給する供給路の途中に四方弁18が設けられている。この四方弁18により、
図1(a)に示すように、CO
2吸着・変換筒10aに排気ガスを供給すると共に、CO
2吸着・変換筒10bにH
2ガスを供給できる。また、
図1(b)に示すように、四方弁18を切り替えることにより、CO
2吸着・変換筒10bに排気ガスを供給すると共に、CO
2吸着・変換筒10aにH
2ガスを供給できる。
【0033】
CO
2吸着・変換筒10a,10bの各々からの排出ガスの流路の途中に四方弁20が設けられている。この四方弁20により、
図1(a)に示すように、CO
2吸着・変換筒10aからの排出ガスは、ゼオライト等のCO
2吸着剤が充填された吸着塔22を経由して大気中に排気され、CO
2吸着・変換筒10bからはCO及びCH
4を含む混合ガスが排出される。また、
図1(b)に示すように、四方弁20を切り替えることにより、CO
2吸着・変換筒10aからはCO及びCH
4を含む混合ガスが排出され、CO
2吸着・変換筒10bからの排出ガスは吸着塔22を経由して大気中に排気される。この吸着塔22には、CO
2吸着・変換筒10a,10bの故障等で排気ガスの処理ができない場合、或いは排気ガス量がCO
2吸着・変換筒10a,10bの処理量を上回る場合等に、排気ガスを直接供給するバイパス24が設けられている。このバイパス24に自動弁26が設けられており、吸着塔22への排気ガス量を調整できる。
【0034】
図1(a)に示す、CO
2吸着・変換筒10a(以下、筒10aと称する。)は、石炭火力発電所等からの排気ガスが四方弁18を介して供給されて排気ガス中のCO
2を触媒に吸着するCO
2の吸着工程を実施している。この際に、排気ガスの有する熱量により筒10aの内温を100~200℃に保持できるとき、ヒータ12aは使用しなくてもよい。但し、排気ガスのみでは筒10aの内温を100~200℃に保持できないとき、ヒータ12aを用いて不足する熱量を補充して筒10aの内温を100~200℃に保持する。筒10aからの排出ガスには、筒10a内で触媒に排気ガス中の多くのCO
2が吸着されているものの、排気ガス中のCO
2を完全に吸着し難いことから、CO
2が残留していることがある。このため、筒10aからの排出ガスは四方弁20を経由して吸着塔22で残留CO
2が吸着されてから大気中に放出される。尚、
図1に示す筒10aは、排気ガス中のCO
2の吸着工程を実施しているから、触媒に刺激用の電荷を付すことを要せずスイッチ16aはOFF状態にある。
【0035】
図1(a)において、CO
2の吸着工程を実施している筒10aに対し、CO
2吸着・変換筒10b(以下、筒10bと称する。)では、CO
2の吸着工程で触媒に吸着したCO
2をCO含有ガスに変換し離脱する変換・離脱工程を実施している。筒10bには、H
2ガスが四方弁18を経由して供給され、筒10b内を還元雰囲気としている。更に、筒10bの内温を100~200℃に維持すべくヒータ12bにより加熱している。CO
2の吸着工程で触媒は100~200℃に加熱されているものの、H
2ガスは室温で供給されているからである。また、筒10b内の触媒に刺激用の電荷を付すべく、筒10b内の触媒内の電極と直流電源14bとを接続する回路の途中のスイッチ16bをONとする。筒10bからは、CO及びCH
4を含有する混合ガスが排出され、化学品や燃料油等の原料に用いることができる。
【0036】
図1(a)に示す筒10aのCO
2の吸着工程及び筒10bの変換・離脱工程が終了したとき、筒10aを変換・離脱工程とすると共に、筒10bをCO
2の吸着工程とするように、
図1(b)に示すように四方弁18,20を切り替え、筒10aにH
2ガスを供給して筒10a内を還元ガス雰囲気とすると共に、筒10bにCO
2含有の排気ガスを供給する。同時に、筒10aのヒータ12aをONとして、筒10aの内温を100~200℃に維持し、筒10a内の触媒内の電極と直流電源14aとを接続する回路の途中のスイッチ16aをONとする。また、筒10bでは、ヒータ12bをOFFとし、筒10b内の触媒内の電極と直流電源14bとを接続する回路の途中のスイッチ16bをOFFとする。
図1(b)に示す状態では、筒10bからの排出ガスは四方弁20を経由して吸着塔22で残留CO
2が吸着されてから大気中に放出され、筒10aからは、CO及びCH
4を含有する混合ガスが排出される。
【0037】
図1(a)に示すように、筒10aがCO
2吸着工程のとき、筒10bが変換・離脱工程であり、筒10aのCO
2吸着工程及び筒10bの変換・離脱工程が終了したとき、
図1(b)に示すように筒10aが変換・離脱工程を開始し、同時に、筒10bがCO
2吸着工程を開始する。このように、筒10a,10bのCO
2吸着工程と変換・離脱工程とを交互に実施することにより、石炭火力発電所等からの排気ガスを連続処理可能である。尚、排気ガス量が変動し、筒10a,10bの排気ガス処理能力が不足したとき、自動弁26を開き排気ガスの一部を直接吸着塔22に供給し、排気ガス中のCO
2を吸着剤に吸着させてから大気中に放出する。
【実施例0038】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
(触媒の調製)
Pt-M-TiO2触媒として下記のものを調製した。
【0040】
(I)M:アルカリ金属
(1)Pt-Na-TiO2触媒
(a)Pt-Na-TiO2-1
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17(アナターゼとルチルとの混合、比表面積:50m2 /g))を担体として用い、Ptが3質量%,Naが5質量%となるように,含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に、所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸ナトリウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃,3時間焼成した。
【0041】
(b)Pt-Na-TiO2-2
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-7 (アナターゼ単独、比表面積:270m2/g))を用いた他は、Pt-Na-TiO2-1と同様にして調製した。
【0042】
(c)Pt-Na-TiO2-3
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-16 (ルチル単独、比表面積:110m2/g))を用いた他は、Pt-Na-TiO2-1と同様にして調製した。
【0043】
(2)Pt-Li-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Liが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に,所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸リチウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃,3時間焼成した。
【0044】
(3)Pt-K-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Kが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に,所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸カリウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃,3時間焼成した。
【0045】
(4)Pt-Rb-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Rbが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に、所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸ルビジウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後,得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから,焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0046】
(5)Pt-Cs-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Csが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に、所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸セシウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃,3時間焼成した。
【0047】
(II)M:アルカリ土類金属
(1)Pt-Mg-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Mgが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に,所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸マグネシウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0048】
(2)Pt-Ca-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Caが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に、所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸カルシウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0049】
(3)Pt-Sr-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Srが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に、所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸ストロンチウムを溶解させた水溶液を加え,撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0050】
(4)Pt-Ba-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-17)を担体として用い、Ptが3質量%、Baが5質量%となるように、含浸法により共担持した。酸化チタン粉末に、所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸バリウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0051】
(III)比較例
(1)Pt-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-7)を担体として用い、Ptが3質量%となるように、含浸法により担持した。酸化チタン粉末に,所定量のテトラアンミン白金硝酸塩と硝酸バリウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後,得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから,焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0052】
(2)Na-TiO2触媒
触媒学会参照触媒部会提供の酸化チタン(JRC-TIO-7)を担体として用い、Naが5質量%となるように、含浸法により担持した。酸化チタン粉末に,所定量の硝酸ナトリウムを溶解させた水溶液を加え、撹拌しながらホットプレート上で蒸発乾固させた。その後、得られた粉末を70℃で一晩乾燥させてから、焼成炉を用いて空気中で500℃、3時間焼成した。
【0053】
実施例1
(CO
2吸着量)
示差熱―熱重量分析装置を用いてCO
2吸着量を測定した。調製した触媒5mgを充填した装置内に、
図2(a)に示すようにN
2ガスを1000ml/minで流しつつ、室温30℃から400℃に加熱して30分間保持し、触媒中の有機物等を除去した後、150℃に保持してCO
2を5vol%混合したCO
2混合N
2ガス(流量:400ml/min)を60分間流して、触媒にCO
2を吸着させてからN
2ガスに切り替えた。CO
2混合ガス導入前後の重量変化量から触媒のCO
2の吸着量を求めた。
図2(b)に重量変化から換算した触媒のCO
2吸着量の経時変化を示す。装置内にCO
2混合N
2ガスが流されたとき、
図2(b)に示すようにCO
2吸着量が急激に増加して一定値(
図2(b)に「Adsorption capacity」と示す。)を保持した後、CO
2混合N
2ガスを停止しN
2ガスを流し始めると同時に、
図2(b)に示すようにCO
2吸着量が徐々に低下して略一定値(
図2(b)に「DesorbedCO
2」と示す。)になる。触媒に付着していたCO
2の脱離であると推察される。従って、触媒に吸着したCO
2の真の吸着量は、「Adsorption capacity」から「Desorbed CO
2」を引いた差分(
図2(b)に「RemainingCO
2」と示す。)である。
【0054】
調製した触媒の各々について、
図2(a)(b)に示す方法によりCO
2の真の吸着量を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0055】
【表1】
表1から明らかなように、Pt-Na-TiO
2触媒が最もCO
2吸着量が多かった。また、Pt-Na-TiO
2触媒でも、比表面積の大きいTiO
2担体を用いた触媒(Pt-Na-TiO
2-2,Pt-Na-TiO
2-3)のCO
2吸着量が多くなった。
尚、比較例であるPt-TiO
2触媒及びNa-TiO
2触媒は、CO
2は吸着するものの、脱離するCO
2量が多い。
【0056】
実施例2
図3の概略図に示す実験装置を用いて、実施例1で調製した触媒にCO
2の吸着工程及び変換・離脱工程を通過させて、変換・離脱工程から排出される混合ガスの組成を測定した。
【0057】
(実験装置)
図3に示すように、ヒータで加熱可能とした円筒中に充填した触媒中に電極を挿入し、電源Vから直流電源を印加可能とした。電源から電極に至る配線の途中にスイッチを設け、触媒に刺激を与えるときにスイッチをONにして、触媒に電荷を印加した。この円筒の一端から、CO
2、H
2、アルゴン(Ar)の各ガスを導入可能とし、円筒の他端から排出されるガスをサンプルとして採取して分析した。
【0058】
(実験条件)
図3に示す実験装置を用い、円筒内をヒータで加熱して150℃に保持しつつ、CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程を実施した。吸着工程と変換・離脱工程との間には、アルゴン(Ar)のみを流し、変換・離脱工程では、スイッチをONにして、触媒に5mA、0.15kVの電荷を外部刺激として印加した。その実験条件を下記表2に示し、その結果を
図4に示す。
【0059】
【0060】
図4(a)はPt-M-TiO
2触媒として、担体としてのTiO
2をJRC-TIO-17(アナターゼとルチルとの混合、比表面積:50m
2 /g)を用い、Mとして、アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)を用いたときの変換・離脱工程で2分後に排出された混合ガス中のCOの生成速度及びCH
4の生成速度を示すものであり、
図4(b)はPt-M-TiO
2触媒として、担体としてのTiO
2をJRC-TIO-17(アナターゼとルチルとの混合、比表面積:50m
2 /g)を用い、Mとして、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)を用いたときの変換・離脱工程で2分後に排出された混合ガス中のCOの生成速度及びCH
4の生成速度を示すものである。
図4(a)(b)から明らかなように、アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)を用いたときの混合ガス中のCOの生成速度がCH
4の生成速度よりも大である。一方、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)を用いたときの混合ガス中では、CH
4の生成速度がアルカリ金属を用いたときよりも大である。特に、アルカリ金属としてNaを用いたときの混合ガス中のCOの生成速度は最も大である。
【0061】
実施例3
Pt-Na-TiO
2触媒として、担体としてのTiO
2を比表面積が50m
2 /gの酸化チタン粉末(JRC-TIO-17:アナターゼとルチルとの混合)を用いたPt-Na-TiO
2-1、比表面積が270m
2/gの酸化チタン粉末(JRC-TIO-7:アナターゼ単独)を用いたPt-Na-TiO
2-2、比表面積が110m
2/gの酸化チタン粉末(JRC-TIO-16:ルチル単独)を用いたPt-Na-TiO
2-3を用いて、実施例2と同様にして変換・離脱工程で2分後に排出された混合ガス中のCOの生成速度及びCH
4の生成速度を求め、
図5に示す。
図5から明らかなように、CO及びCH
4の生成速度はPt-Na-TiO
2-1触媒<Pt-Na-TiO
2-2触媒≒Pt-Na-TiO
2-3であり、比表面積が大の酸化チタン粉末を用いることにより、CO及びCH
4の生成速度が大きくなる。前掲の表1に示すように、Pt-Na-TiO
2-2触媒及びPt-Na-TiO
2-3触媒のCO
2吸着量がPt-Na-TiO
2-1触媒よりもCO
2吸着量が多くなるからであると推察される。
【0062】
実施例4
図3に示す実験装置を用い、Pt-Na-TiO
2-1触媒(TiO
2:アナターゼとルチルとの混合、比表面積50m
2 /g)、Pt-Na-TiO
2-2触媒(TiO
2:アナターゼ単独、比表面積270m
2/g)、又はPt-Na-TiO
2-3触媒(TiO
2:ルチル単独、比表面積:110m
2/g)を充填した円筒内をヒータで加熱して150℃に保持しつつ、CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程を2回実施した。吸着工程と変換・離脱工程との間には、アルゴン(Ar)のみを流し、変換・離脱工程では、スイッチをONにして、触媒に5mA、0.15kVの電荷を外部刺激として印加した。その実験条件を下記表3に示す。CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程の各々でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定し、その結果を
図6~
図8に示す。また、各触媒について、第1回目と第2回目とのCO生成量及びCO
2脱離量を下記表4に併せて示す。尚、いずれの触媒においても、CH
4は生成しなかった。
【0063】
【0064】
【0065】
図6~
図8の各図の(a)は第1回目の吸着工程でのCOの生成積算量の経時変化を示すグラフであり、殆どCOは生成しない。
図6~
図8の各図の(b)は第1回目の変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を示すグラフである。
図7(b)では、当初CO
2の生成量がCOの生成量と同程度であるが、後半ではCOの生成積算量がCO
2の生成積算量よりも多くなる。CO
2の生成積算量は変換・離脱工程の中間から略一定値であることから、当初のCO
2の生成は触媒に付着していたCO
2が触媒から脱離するためであると推察される。いずれの触媒でもCH
4は生成されていない。また、
図6~
図8の各図の(c)は第2回目の吸着工程でのCOの生成積算量の経時変化を示すグラフであり、
図6~
図8の各図の(a)に示す第1回目と略同様である。
図6~
図8の各図の(d)は第2回目の変換・離脱工程でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を示すグラフであり、第1回目と略同様である。第1回目及び第2回目においても、表4に示すように、CO生成量及びCO
2脱離量は殆ど同じである。
このようにCO
2の吸着工程と変換・離脱工程とを繰り返しても、Pt-Na-TiO
2-1触媒、Pt-Na-TiO
2-2触媒、Pt-Na-TiO
2-3触媒は、いずれも1回目と2回目とで略同程度の性能を呈することができる。
また、担体として用いたTiO
2の比表面積が、Pt-Na-TiO
2-1触媒よりも大きいPt-Na-TiO
2-2触媒及びPt-Na-TiO
2-3触媒は、吸着したCO
2のCOへの変換量がPt-Na-TiO
2-1触媒よりも多い。特に、担体として用いたTiO
2の比表面積が最も大きいPt-Na-TiO
2-2触媒の吸着したCO
2のCOへの変換量が最も多い。
【0066】
実施例5
Pt-Na-TiO
2-2触媒を用い実施例4の第1回目の変換・離脱工程(H
2-1)及び第2回目の変換・離脱工程(H
2-2)において、水素濃度を下記表5のように変更した他は実施例4と同様にしてCO
2の吸着工程及び変換・離脱工程を2回実施した。第2回目の変換・離脱工程(H
2-2)でのCO,CO
2の生成積算量を測定し、その結果を
図9に示す。
【0067】
【0068】
図9から明らかなように、変換・離脱工程において水素濃度が高くなるに伴ってCO生成量が増加する。高濃度の水素雰囲気では触媒から脱離するCO
2がCOに変換されるものと推察される。
【0069】
比較例1
実施例4において、触媒をPt-TiO
2触媒又はNa-TiO
2触媒に変更した他は実施例4と同様にして、充填した円筒内をヒータで加熱して150℃に保持しつつ、CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程を2回実施した。吸着工程と変換・離脱工程との間には、アルゴン(Ar)のみを流し、変換・離脱工程では、スイッチをONにして、触媒に5mA、0.15kVの電荷を外部刺激として印加した。CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程の各々でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定し、Pt-TiO
2触媒についての結果を
図10に、Na-TiO
2触媒についての結果を
図11に示す。また、各工程でのCO生成量及びCO
2の脱離量を下記表6に示す。
【0070】
【0071】
Pt-TiO2触媒及びNa-TiO2触媒は、表1に示すようにCO2は吸着するものの、COへの変換能はない。
【0072】
比較例2
Pt-Na-TiO
2-2触媒を用い実施例4において、
図3に示すスイッチをOFFにして外部刺激としての電荷を触媒に印加しなかった他は、実施例4と同様にして、充填した円筒内をヒータで加熱して150℃に保持しつつ、CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程を2回実施した。吸着工程と変換・離脱工程との間には、アルゴン(Ar)のみを流した。CO
2の吸着工程及び変換・離脱工程の各々でのCO,CH
4,CO
2の生成積算量の経時変化を測定し、結果を
図12に示す。また、各工程でのCO生成量及びCO
2の脱離量を下記表7に示す。
【0073】
【0074】
触媒に外部刺激としての電荷を印加しないと、触媒に吸着したCO2は全くCOに変換されなかった。