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特開2024-16951光無線通信システム、信号処理装置、無線通信装置、光無線通信方法、信号処理方法及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016951
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】光無線通信システム、信号処理装置、無線通信装置、光無線通信方法、信号処理方法及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20240201BHJP
【FI】
H04B10/2575 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119264
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡間 遼
(72)【発明者】
【氏名】可児 淳一
(72)【発明者】
【氏名】原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 稜
(72)【発明者】
【氏名】永妻 忠夫
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AB13
5K102AD15
5K102AH14
5K102AH18
5K102AH24
5K102PH22
5K102PH49
5K102RD26
(57)【要約】
【課題】光により受信した信号を無線送信する装置の内部構成を簡易化する。
【解決手段】信号処理装置は、第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成部と、生成された偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とを合波した信号光を無線通信装置へ出力する合波部とを備える。無線通信装置は、合波部から受信した信号光を、第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離部と、第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光をそれぞれ第一周波数と第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理装置と無線通信装置とを有する光無線通信システムであって、
前記信号処理装置は、
第一周波数の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部が生成した前記偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波部とを備え、
前記無線通信装置は、
前記合波部から受信した前記信号光を、第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離部と、
前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換部とを備える、
光無線通信システム。
【請求項2】
前記無線通信装置は、
第三アンテナが受信した無線信号を中間周波数の第一受信信号に変換し、第四アンテナが受信した無線信号を前記中間周波数の第二受信信号に変換する周波数変換部と、
前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記周波数変換部が変換した前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調し、変調により生成された中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記信号処理装置に送信する変調部とを備え、
前記信号処理装置は、
前記変調部から受信した前記偏波多重多値位相変調信号を前記第一周波数の光を用いて復調する復調部を備える、
請求項1に記載の光無線通信システム。
【請求項3】
前記第一アンテナ及び前記第二アンテナはそれぞれ前記電気信号をテラヘルツ帯により無線送信し、
前記第三アンテナ及び前記第四アンテナはそれぞれテラヘルツ帯の前記無線信号を受信する、
請求項2に記載の光無線通信システム。
【請求項4】
第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部が生成した前記偏波多重多値位相変調信号と、前記第一周波数との差周波数が無線通信装置から送信される無線信号の周波数である第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波部と、
二つの異なるアンテナにより受信した無線信号をそれぞれ中間周波数の第一受信信号及び第二受信信号に変換し、前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調して生成した中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記無線通信装置から受信し、受信した前記偏波多重多値位相変調信号を前記第一周波数の光を用いて復調する復調部と、
を備える信号処理装置。
【請求項5】
信号処理装置から第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とが合波された信号光を受信し、受信した前記信号光を第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離部と、
前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換部と、
第三アンテナが受信した無線信号を中間周波数の第一受信信号に変換し、第四アンテナが受信した無線信号を前記中間周波数の第二受信信号に変換する周波数変換部と、
前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記周波数変換部が変換した前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調し、変調により生成された中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記信号処理装置に送信する変調部と、
を備える無線通信装置。
【請求項6】
信号処理装置と無線通信装置とを有する光無線通信システムにおける光無線通信方法であって、
前記信号処理装置が、第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成ステップと、
前記信号処理装置が、前記偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波ステップと、
前記無線通信装置が、前記合波ステップにおいて出力された前記信号光を受信し、受信した前記信号光を第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離ステップと、
前記無線通信装置が、前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換ステップと、
を有する光無線通信方法。
【請求項7】
第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成ステップと、
前記偏波多重多値位相変調信号と、前記第一周波数との差周波数が無線通信装置から送信される無線信号の周波数である第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波ステップと、
二つの異なるアンテナにより受信した無線信号をそれぞれ中間周波数の第一受信信号及び第二受信信号に変換し、前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調して生成した中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記無線通信装置から受信し、受信した前記偏波多重多値位相変調信号を前記第一周波数の光を用いて復調する復調ステップと、
を有する信号処理方法。
【請求項8】
信号処理装置から第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とが合波された信号光を受信し、受信した前記信号光を第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離ステップと、
前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換ステップと、
第三アンテナが受信した無線信号を中間周波数の第一受信信号に変換し、第四アンテナが受信した無線信号を前記中間周波数の第二受信信号に変換する周波数変換ステップと、
前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調し、変調により生成された中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記信号処理装置に送信する変調ステップと、
を有する無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光無線通信システム、信号処理装置、無線通信装置、光無線通信方法、信号処理方法及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広く普及を始めている5G(第5世代移動通信システム)などの高速無線アクセスシステムでは、多数のユーザ端末を収容するため、Centralized Radio Access network(C-RAN)構成と称するNW(ネットワーク)構成が用いられている。図6は、C-RAN構成の無線通信システムの例を示す図である。C-RAN構成では、狭いエリアを収容する無線信号の送受信器を備えた張出局を多数配置し、それら張出局を大規模な基地局で収容して、スケジューリング処理等を実施する。
【0003】
C-RAN構成は、多数配置される張出局を簡易な構成とし、集約局に機能を集中させるという機能分担を特徴とする。現在では、張出局にアンテナだけでなく、信号処理機能や復号機能を持たせて一部処理を張出局が実施し、残りの処理を集約局が実施する構成が検討されている。このC-RAN構成をさらに拡張する方式としてアナログRoF方式がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
図7は、RoF方式の光無線通信システムを示す図である。下り通信では、集約局側の無線信号処理部が無線信号を生成し、光送信器は生成された無線信号をそのままE/O(電気光)変換したのち、光信号をファイバ伝送させる。張出局は、伝搬後の光信号を光受信器によりO/E(光電気)変換することで、そのままアンテナ部から無線信号を送信できる。上り通信でも同様に、張出局の光送信器は、アンテナ部が受信した無線信号を光信号に変換したのち、その光信号を集約局までファイバ伝送させる。この方式を用いることにより、張出局から信号処理機能を除去することができる。
【0005】
テラヘルツ帯は、一般的に約100GHz(ギガヘルツ)~10THz(テラヘルツ)までの周波数帯を示す。現在の所、テラヘルツ帯には、電波法による周波数の割り当てがなされていない。テラヘルツ帯は、その高いキャリア周波数と広い周波数帯とから、高速無線通信を期待できる方式として6G(第6世代移動通信システム)などの将来の高速無線通信システムの候補技術となっている。これまで、テラヘルツ領域は、電波領域(<100GHz)や光波領域(>10THz)と比較して、技術面や応用面で未開の領域であった。これは、テラヘルツ波を効率よく発生する技術が確立していなかったことが原因の一つであるといえる。
【0006】
しかし、近年では技術の進展により、テラヘルツ波を効率よく発生させる技術が多く報告されている。テラヘルツ波を発生させる方法は、二つのアプローチに大別される。一つ目は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)集積回路等の電子回路を用いて局部発振信号と中間周波数帯の変調信号をミキサに入力し、周波数変換を行うことで、電気領域でテラヘルツ波を発生させる方法である(例えば、非特許文献2参照)。二つ目は、GaSe(ガリウムセレナイド)等の非線形光学結晶に2波長を入力し、非線形光学効果の一つである差周波発生によってテラヘルツ波を発生させる方法である(例えば、非特許文献3参照)。また二つ目のアプローチには、異なる波長(周波数)の二つの光を3dB(デシベル)に入力し、その光ビートを単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD:Uni-Traveling carrier Photodiode)に入射することで、光電変換により光領域でテラヘルツ波を発生させる方法もある(例えば、非特許文献4参照)。このように、複数の方式において徐々にテラヘルツ信号の生成手法が提案されてきており、システム化の検討も進み始めている。
【0007】
図8は、現在検討されている集約局と張出局間の通信(例えば、非特許文献5参照)を示す図である。図8では、前述の集約局と張出局間との通信に、コアネットワーク等で実用化されているデジタルコヒーレント受信方式(例えば、非特許文献6参照)を利用したトランシーバを活用する。すなわち、集約局に、DSP(デジタル信号プロセッサ:Digital Signal Processer)を搭載した2芯デジタルコヒーレントトランシーバを配置する。2芯デジタルコヒーレントトランシーバは、一般的なデジタルコヒーレント方式のトランシーバである。
【0008】
下り通信では、集約局の2芯デジタルコヒーレントトランシーバが偏波多重光信号を送信する。張出局の偏波多重コヒーレントレシーバ(DP-Coh.Rx:Dual polarization Coherent receive)は、集約局から受信した偏波多重光信号を電気のベースバンド(BB)信号に変換する。張出局は、前述の電子回路を用いて生成した局部発振(LO:Local oscillator)信号により、BB信号の偏波多重光信号をテラヘルツ帯に変換し、X偏波及びY偏波の各偏波に対応するアンテナを介して送信する。上り通信では、張出局は、ユーザ端末から各アンテナにより受信したテラヘルツ帯の信号を同様にLO信号によってベースバンドにダウンコンバートしたのち、偏波多重マッハツェンダー変調器(DP-MZN:Dual polarization Mach-Zehnder modulator)により光信号に変換して集約局に送信する。これにより、既存のデジタルコヒーレントトランシーバを活用して高速信号を送受信することができるとともに、張出局における信号処理を除去できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本電信電話株式会社、“アナログRoFを活用した多様な高周波数帯無線システムの効率的収容”、NTT技術ジャーナル、2020年3月、p.15-17、[online]、[令和4年6月6日検索]、インターネット、<URL: https://journal.ntt.co.jp/wp-content/uploads/2020/05/JN20200315.pdf>
【非特許文献2】M. Fujishima, "Study on sub-terahertz-band wireless system with fiber-optic speed", Impact, vol. 2020, no. 1, pp. 41-43, Feb. 2020
【非特許文献3】Zhiming Huang, Jinxing Lu, Jingguo Huang, Bingbing Wang, Yun Hou, Xuemin Shen, Junhao Chu, "Terahertz generation from DFG and TPG configurations", 2011 International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves, 2011.
【非特許文献4】H. Ito, T. Furuta, F. Nakajima, K. Yoshino, and T. Ishibashi, "Photonic Generation of Continuous THz Wave Using Uni-Traveling-Carrier Photodiode", Journal of Lightwave Technology, Vol.23, No.12, pp.4016-4021, 2005.
【非特許文献5】C. Castro, R. Elschner, T. Merkle, C. Schubert and R. Freund, "100 Gb/s Real-Time Transmission over a THz Wireless Fiber Extender Using a Digital-Coherent Optical Modem", 2020 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC), 2020
【非特許文献6】OIF, "OIF-IC-TROSA-01.0", 2019年8月,[令和4年6月6日検索], インターネット, <URL: https://www.oiforum.com/wp-content/uploads/OIF-IC-TROSA-01.0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の技術では、張出局に、複雑な構成のデジタルコヒーレント受信器が必要である。加えて、張出局は、受信した信号をベースバンド信号に一度変換するため、アンテナとコヒーレント受信器間、および、アンテナと変調器間で、偏波ごとにI,Qの双方に分離した信号を扱わなくてはならない。従って、張出局に、アンプなどの必要な電気素子の数が増加する。
【0011】
上記事情に鑑み、本発明は、光により受信した信号を無線送信する装置の内部構成を簡易化することができる光無線通信システム、信号処理装置、無線通信装置、光無線通信方法、信号処理方法及び無線通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、信号処理装置と無線通信装置とを有する光無線通信システムであって、前記信号処理装置は、第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部が生成した前記偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波部とを備え、前記無線通信装置は、前記合波部から受信した前記信号光を、第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離部と、前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換部とを備える。
【0013】
本発明の一態様は、第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部が生成した前記偏波多重多値位相変調信号と、前記第一周波数との差周波数が無線通信装置から送信される無線信号の周波数である第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波部と、二つの異なるアンテナにより受信した無線信号をそれぞれ中間周波数の第一受信信号及び第二受信信号に変換し、前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調して生成した中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記無線通信装置から受信し、受信した前記偏波多重多値位相変調信号を前記第一周波数の光を用いて復調する復調部と、を備える信号処理装置である。
【0014】
本発明の一態様は、信号処理装置から第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とが合波された信号光を受信し、受信した前記信号光を第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離部と、前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換部と、第三アンテナが受信した無線信号を中間周波数の第一受信信号に変換し、第四アンテナが受信した無線信号を前記中間周波数の第二受信信号に変換する周波数変換部と、前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記周波数変換部が変換した前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調し、変調により生成された中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記信号処理装置に送信する変調部と、を備える無線通信装置である。
【0015】
本発明の一態様は、信号処理装置と無線通信装置とを有する光無線通信システムにおける光無線通信方法であって、前記信号処理装置が、第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成ステップと、前記信号処理装置が、前記偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波ステップと、前記無線通信装置が、前記合波ステップにおいて出力された前記信号光を受信し、受信した前記信号光を第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離ステップと、前記無線通信装置が、前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換ステップと、を有する光無線通信方法である。
【0016】
本発明の一態様は、第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する信号生成ステップと、前記偏波多重多値位相変調信号と、前記第一周波数との差周波数が無線通信装置から送信される無線信号の周波数である第二周波数の光とを合波した信号光を前記無線通信装置へ出力する合波ステップと、二つの異なるアンテナにより受信した無線信号をそれぞれ中間周波数の第一受信信号及び第二受信信号に変換し、前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調して生成した中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記無線通信装置から受信し、受信した前記偏波多重多値位相変調信号を前記第一周波数の光を用いて復調する復調ステップと、を有する信号処理方法である。
【0017】
本発明の一態様は、信号処理装置から第一周波数の光の偏波多重多値位相変調信号と第二周波数の光とが合波された信号光を受信し、受信した前記信号光を第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する分離ステップと、前記第一偏波の信号光及び前記第二偏波の信号光をそれぞれ前記第一周波数と前記第二周波数との差周波数の電気信号に変換し、変換された前記第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された前記第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する光電変換ステップと、第三アンテナが受信した無線信号を中間周波数の第一受信信号に変換し、第四アンテナが受信した無線信号を前記中間周波数の第二受信信号に変換する周波数変換ステップと、前記第一周波数から前記中間周波数だけ離れた第三周波数の光を、前記第一受信信号及び前記第二受信信号を用いて変調し、変調により生成された中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を前記信号処理装置に送信する変調ステップと、を有する無線通信方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、光により受信した信号を無線送信する装置の内部構成を簡易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態による光無線通信システムの構成を示す図である。
図2】同実施形態による無線端末の構成を示す図である。
図3】第2の実施形態による光無線通信システムの構成を示す図である。
図4】第2の実施形態の変形例による光無線通信システムの構成を示す図である。
図5】第2の実施形態の変形例による光無線通信システムの構成を示す図である。
図6】C-RAN構成の無線通信システムの例を示す図である。
図7】RoF方式の光無線通信システムの例を示す図である。
図8】集約局と張出局間の通信を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施形態の光無線通信システムは、集約局と、無線アンテナを有する張出局とが通信する構成である。集約局から無線端末への方向の下り通信のため、集約局は、光コヒーレント送受信器(TRx)が生成した周波数f1の光信号と、局部発振光源が出力した周波数f2の光とを合波して張出局に送信する。張出局は、これら2波長の光の差周波に相当するテラヘルツ信号を送出する光電変換器を実装する。また、無線端末から集約局への方向の上り通信のため、張出局は、無線端末から受信したテラヘルツ信号をIF(中間周波数:Intermediate frequency)帯に変換する。張出局は、変換されたIF帯の信号を、集約局の光コヒーレント送受信器が用いる局部発振光源の発振波長に対してIF帯周波数だけ離れた信号光波長を用いて集約局に送信する。これにより、集約局に既存の光コヒーレント送受信器を用いつつ、張出局の構成を簡易し、小型化及び経済化を図ることができる。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による光無線通信システム100の構成図である。光無線通信システムは、集約局側装置200と、張出局側装置300とを備える。同図では張出局側装置300を1台のみ示しているが、1台の集約局側装置200に複数台の張出局側装置300が接続され得る。光無線通信システム100は、集約局側装置200と張出局側装置300とが2芯ファイバを介して同一波長の送受信号を通信するシステムである。
【0023】
集約局側装置200と、張出局側装置300とは、伝送路401及び伝送路402とにより接続される。伝送路401及び伝送路402はそれぞれ、2芯ファイバの異なるコアである。伝送路401及び伝送路402はそれぞれ、異なるファイバでもよい。ここでは、張出局側装置300は、無線区間でテラヘルツ通信を行うことを想定するが、無線区間は任意の周波数帯でもよい。
【0024】
集約局側装置200は、デジタルコヒーレント送受信器(TRx)210と、局部発振光源220と、光合分波部230とを備える。デジタルコヒーレントTRx210には、既存の一般的な2芯のデジタルコヒーレントTRxを用いることができる。デジタルコヒーレントTRx210は、DP(偏波多重:Dual Polarization)-QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相変位変調)、DP-16QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交位相振幅変調)などの偏波多重の多値位相変調信号を送受信する。デジタルコヒーレントTRx210は、光源211と、光スプリッタ212と、DSP213と、複数のデジタルアナログ変換部(DAC:Digital Analog Converter)214と、偏波多重IQ変調器215と、偏波ダイバーシティ受信器216と、複数のアナログデジタル変換器(ADC:Analog Digital Converter)217とを備える。複数のDAC214をDACs214と記載し、複数のADC217をADCs217と記載する。
【0025】
光源211は、光源周波数f1の光を出力する。光スプリッタ212は、光源211が出力した光を2分岐する。光スプリッタ212は、分岐した一方の光を偏波多重IQ変調器215に出力し、分岐したもう一方の光を偏波ダイバーシティ受信器216に出力する。DSP213は、デジタル信号のXI、XQ、YI、YQ成分の下り信号を生成し、DACs214に出力する。XI成分及びXQ成分はそれぞれ、X偏波の同相(I)成分及び直交(Q)成分であり、YI成分及びYQ成分はそれぞれ、Y偏波の同相(I)成分及び直交(Q)成分である。X偏波とY偏波とは直交する。DACs214は、DSP213が生成したXI、XQ、YI、YQ成分の各下り信号をデジタル信号からアナログ信号に変換して偏波多重IQ変調器215に出力する。偏波多重IQ変調器215は、光スプリッタ212から入力した光を、DACs214が出力したXI、XQ、YI、YQ成分のアナログ信号を用いて変調し、光信号の偏波多重多値位相変調信号を生成する。偏波多重IQ変調器215は、生成した下りの偏波多重多値位相変調信号を光合分波部230に出力する。
【0026】
偏波ダイバーシティ受信器216は、張出局側装置300が出力したIF信号の偏波多重多値位相変調信号を伝送路402から入力する。偏波ダイバーシティ受信器216は、偏波多重多値位相変調信号を、光スプリッタ212から入力した光信号を用いて復調し、上り信号のXI、XQ、YI、YQ成分を得る。偏波ダイバーシティ受信器216は、復調により得られたXI、XQ、YI、YQ成分の電気信号をADCs217に出力する。ADCs217はそれぞれ、入力したXI、XQ、YI、YQ成分の各電気信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換してDSP213に出力する。DSP213は、ADCs217から受信した各成分の上り信号に復号等の受信処理を行ってデータを得る。
【0027】
局部発振光源220は、発振周波数f2の局発光を発生する。発振周波数f2は、光源211の光源周波数f1に対し、張出局側装置300における送信無線周波数fcだけ離れた周波数である。光合分波部230は、デジタルコヒーレントTRx210が出力した信号光周波数f1の偏波多重多値位相変調信号である下り信号と、局部発振光源220が出力した周波数f2の局発光とを合波した信号光を伝送路401に出力する。
【0028】
集約局側装置200が複数の張出局側装置300と接続される場合、集約局側装置200は、各張出局側装置300に対応したデジタルコヒーレントTRx210、局部発振光源220及び光合分波部230の組を備える。なお、一つの局部発振光源220を、複数の張出局側装置300それぞれに対応した光合分波部230と共通で用いてもよい。
【0029】
張出局側装置300は、光受信部310と、アンテナ部320と、アンテナ部330と、光送信部340とを備える。光受信部310は、偏波分離素子311と、光電変換素子312-1と、光電変換素子312-2とを備える。アンテナ部320は、アンテナ321-1とアンテナ321-2とを備える。アンテナ部330は、アンテナ331-1と、アンテナ331-2とを備える。光送信部340は、ミキサ341-1と、ミキサ341-2と、発振器342と、逓倍器343と、光源344と、偏波多重IQ変調器345とを備える。
【0030】
偏波分離素子311は、伝送路401を伝送した信号光を入力し、入力した信号光を直交するX偏波の信号光とY偏波の信号光とに分離する。偏波分離素子311は、X偏波の信号光を光電変換素子312-1に出力し、Y偏波の信号光を光電変換素子312-2に出力する。光電変換素子312-1及び光電変換素子312-2は、前述のUTC-PDや、共鳴トンネルダイオードである。光電変換素子312-i(i=1,2)は、入力した信号光に合波されている周波数λ1の光信号を、入力した信号光に合波されている周波数λ2の光との間の差周波数|λ2-λ1|に相当する周波数fcを含む周波数帯の電気信号に変換する。変換後の周波数帯は、例えば、テラヘルツ帯である。光電変換素子312-iは、周波数変換された電気信号を、アンテナ321-iに出力する。アンテナ321-iは、光電変換素子312-iから入力した電気信号を無線送信する。
【0031】
アンテナ321-i(i=1,2)は、無線信号を受信し、受信した無線信号をミキサ341-iに出力する。アンテナ321-1が受信する無線信号は、テラヘルツ波のX偏波の多値位相変調信号であり、アンテナ321-2が受信する無線信号は、テラヘルツ波のY偏波の多値位相変調信号である。発振器342は、周波数fdの局部発振信号(LO:Local Oscillation Signal)を出力する。逓倍器343は、発振器342が出力した周波数fdの局部発振信号を、A逓倍(Aは1以上の整数)した周波数Afdの局部発振信号に変換して、ミキサ341-1及び341-2に出力する。集約局側装置200のデジタルコヒーレントTRx210が有する光源211の周波数Afdは、光源周波数f1に対し、P[GHx]離れた周波数である。
【0032】
ミキサ341-i(i=1,2)は、アンテナ331-iから入力した信号を、逓倍器343から入力した周波数Afdの局部発振信号によりダウンコンバートして、周波数Pを含むIF帯の信号に変換する。ミキサ341-iは、ダウンコンバートした信号を偏波多重IQ変調器345に出力する。光源344は、周波数f3の光を発生する。周波数f3と、集約局側装置200のデジタルコヒーレントTRx210が有する光源211の光源周波数f1との差周波はPである。偏波多重IQ変調器345は、光源344から入力した光を、ミキサ341-1から入力された信号と、ミキサ341-2から入力された信号とにより変調してIF帯の偏波多重多値位相変調信号を生成する。偏波多重IQ変調器345は、生成した多値位相変調信号を伝送路402に出力する。
【0033】
なお、張出局側装置300が逓倍器343を設けず、ミキサ341-1、ミキサ341-2においてダウンコンバートに用いられる周波数の光を発振器342が直接送出してもよい。また、十分な送信強度を確保するため、張出局側装置300は、偏波分離素子311の前段に光増幅器を有してもよく、アンテナ321-1、321-2の前段に電気増幅器を有してもよい。また、ミキサ341-1、341-2の後段に、偏波多重IQ変調器345の変調振幅に合わせて、電気の増幅器が配置されてもよい。
【0034】
光無線通信システム100は、以下のように下り通信を行う。集約局側装置200の光スプリッタ212は、光源211が出力した周波数f1の光を分岐する。DSP213は、XI、XQ、YI、YQ成分の下り信号を生成する。DACs214は、生成されたXI、XQ、YI、YQ成分の各下り信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。偏波多重IQ変調器215は、光スプリッタ212から入力した光を、DACs214が出力したXI、XQ、YI、YQ成分のアナログ信号を用いて変調し、偏波多重多値位相変調信号を生成する。光合分波部230は、偏波多重IQ変調器215が生成した周波数f1の偏波多重多値位相変調信号と、局部発振光源220が出力した周波数f2の局発光とを合波した信号光を伝送路401に出力する。
【0035】
張出局側装置300の偏波分離素子311は、伝送路401を伝送した信号光を入力する。偏波分離素子311は、入力した信号光をX偏波の信号光とY偏波の信号光とに分離し、それぞれを光電変換素子312-1、312-2に出力する。光電変換素子312-1は、X偏波の信号光を、周波数fcを含む周波数帯の電気信号に変換する。同様に、光電変換素子312-2は、Y偏波の信号光を、周波数fcを含む周波数帯の電気信号に変換する。周波数fcは、信号光に合波されている周波数λ1の光信号と周波数λ2の光との間の差周波数|λ2-λ1|に相当する。アンテナ321-1、321-2はそれぞれ、光電変換素子312-1、312-2から入力したテラヘルツ帯の電気信号を無線送信する。
【0036】
光無線通信システム100は、以下のように上り通信を行う。張出局側装置300のアンテナ321-1は、テラヘルツ波のX偏波の多値位相変調信号である無線信号を受信すし、アンテナ321-2は、テラヘルツのY偏波の多値位相変調信号である無線信号を受信する。逓倍器343は、発振器342が出力した周波数fdの局部発振信号をA逓倍(Aは1以上の整数)し、ミキサ341-1及び341-2に出力する。ミキサ341-1、341-2はそれぞれ、アンテナ331-1、331-2から入力した信号を、逓倍器343から入力した局部発振信号によりダウンコンバートして、周波数Pを含むIF帯の信号に変換する。偏波多重IQ変調器345は、光源344から入力した周波数f3の光を、ミキサ341-1から入力された信号と、ミキサ341-2から入力された信号とにより変調してIF帯の偏波多重多値位相変調信号を生成する。偏波多重IQ変調器345は、生成した多値位相変調信号を伝送路402に出力する。
【0037】
集約局側装置200の偏波ダイバーシティ受信器216は、張出局側装置300が出力した偏波多重多値位相変調信号を伝送路402から入力する。偏波ダイバーシティ受信器216は、偏波多重多値位相変調信号を、光スプリッタ212から入力した周波数f1の光を用いて復調し、XI、XQ、YI、YQ成分の電気信号を得る。ADCs217はそれぞれ、XI、XQ、YI、YQ成分の各電気信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。DSP213は、デジタル信号に変換された各成分の上り信号に受信処理を行ってデータを得る。
【0038】
上記のように、下り通信を行う際、集約局側装置200の局部発振光源220は、デジタルコヒーレントTRx210が出力する光信号の周波数f1に対して、張出局側装置300が送信する無線信号の周波数fcだけ離れた発振周波数f2で発光する。この時、周波数f1に対する周波数差fcの符号は、正負どちらの値を用いてもよい。すなわち、f2=f1-fcでもよく、f2=f1+fcでもよい。張出局側装置300の光電変換素子312-1、312-2は、この周波数差fcに対応する周波数帯の電気信号を出力し、アンテナ321-1、321-2から送信する。本実施形態の構成によれば、張出局側装置300にコヒーレント受信器のような複雑な機器を配置することなく、光信号をテラヘルツ帯信号に変換できる。
【0039】
また、上り通信では、張出局側装置300のアンテナ331-1、331-2で受信した任意の周波数の無線信号を、ミキサ341-1、341-2によってIF帯にダウンコンバートし、偏波多重IQ変調器345により変調してIF帯で集約局側装置200に伝送する。張出局側装置が無線により受信した信号をBB帯にダウンコンバートする従来方式では、偏波多重IQ変調器に入力する信号として、各偏波に対応するIQ信号が必要となる。一方、本実施形態では張出局側装置300から集約局側装置200までIF帯伝送のため、張出局側装置300は、X、Y偏波それぞれに対応する信号のみを偏波多重IQ変調器に入力すればよい。よって、要求される電気素子が従来技術の半分となる。一方、IF帯に相当する電気帯域が必要となる。
【0040】
本実施形態を実現するにあたって、重要となるのが信号波長の設定である。下り通信では、前述の通りテラヘルツ周波数に相当する周波数差fcを光源211が出力する光と、局部発振光源220が出力する局発光との間に設け、光電変換素子312-1、312-2の特性によりテラヘルツ帯に変換する。上り通信では、前述の通り、張出局側装置300から集約局側装置200へはIF帯での信号の送信を想定している。この時、一般的なデジタルコヒーレント受信用TRxでは、ベースバンド信号受信を前提としている。しかし、図1に示すようにIF帯信号を送信した場合、光区間では光中心波長f3からIF周波数P[GHx]分離れた位置に変調スペクトルが発生する。したがって、デジタルコヒーレントTRx210を対向に配置する構成のように、張出局側装置300の光源周波数f3と、集約局の光源周波数f1とが一致している場合は受信することができない。
【0041】
そこで、本実施形態では、集約局側装置200の光源周波数f1に対し、±P[GHz]離れた発振波長で張出局側装置300の光源344を動作させる。これにより、偏波ダイバーシティ受信器216は、IF帯に存在する変調スペクトルを、光源の波長差を利用してBB信号に変更する。これにより、IF帯信号を集約局側装置200の構成を変えることなく受信可能となる。このとき、受信後のDSP213で補償可能な周波数オフセット量以下となるような波長制御精度が必要となる。図1に示す構成では、変調スペクトルのうち上側、もしくは、下側のスペクトルのみを利用するため、SN(信号/ノイズ非)が低下する。これを回避するため、偏波多重IQ変調器345は、SSB(Single side band)変調をかけてもよい。
【0042】
図2は、本実施形態における無線端末500の構成例を示す図である。無線端末500は、アンテナ511-1、アンテナ511-2、ミキサ512-1、ミキサ512-2、発振器513、逓倍器514、複数のアナログデジタル変換器(ADC)515、DSP531、複数のデジタルアナログ変換器(DAC)551、ミキサ552-1、ミキサ552-2、発振器553、逓倍器554、アンテナ555-1、アンテナ555-2を有する。複数のADC515を、ADCs515と記載し、複数のDAC551を、DACs551と記載する。
【0043】
アンテナ511-i(i=1,2)は、張出局側装置300のアンテナ321-iが送信したテラヘルツ波の無線信号を受信し、受信した無線信号をミキサ512-iに出力する。発振器513は、局部発振信号を出力する。逓倍器514は、発振器513が出力した局部発振信号を、逓倍した周波数の局部発振信号に変換して、ミキサ512-1及び512-2に出力する。ミキサ512-i(i=1,2)は、アンテナ511-iから入力した受信信号を、逓倍器514から入力した局部発振信号によりダウンコンバートして、ADCs515に出力する。ADCs515は、ミキサ512-1から入力した受信信号及びミキサ512-2から入力した受信信号をそれぞれ、デジタル信号からアナログ信号に変換してDSP531に出力する。DSP531は、ADCs515から入力した受信信号に受信処理を行って、集約局側装置200が送信したデータを得る。
【0044】
また、DSP531は、アンテナ555-1及びアンテナ555-2のそれぞれから送信する上りの送信信号を生成し、DACs551に出力する。DACs551は、DSP531から入力した送信信号をそれぞれデジタル信号からアナログ信号に変換する。DACs551は、アンテナ555-i(i=1,2)から送信する送信信号をミキサ552-iに出力する。発振器553は、局部発振信号を出力する。逓倍器554は、発振器553が出力した局部発振信号を、逓倍した周波数の局部発振信号に変換して、ミキサ552-1及び552-2に出力する。ミキサ552-1及びミキサ552-2は、DACs551から入力した信号を、逓倍器554から入力した局部発振信号によりアップコンバートして、無線信号の周波数帯の送信信号に変換する。ミキサ552-i(i=1,2)は、アップコンバートした送信信号をアンテナ555-iに出力する。アンテナ555-iは、ミキサ552-iから入力した送信信号を無線送信する。
【0045】
上記のように、無線端末500は、張出局側装置300から受信した無線信号を、任意の周波数に変換したのち、AD(アナログデジタル)変換する。送信時も同様に、無線端末500は、任意の周波数の送信信号をDA(デジタルアナログ)変換した後、ミキサ552-1、552-2により無線信号の周波数帯に変換する。
【0046】
なお、集約局側装置200が送受信する信号のフォーマットは光のトランシーバにおける信号フォーマットに準拠するため、無線端末500に、同様の機能を有するDSPを搭載する必要がある。
【0047】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の光無線通信システムは、第1の実施形態において説明した通り、光の発振周波数を制御することにより、任意の周波数帯の電気信号を生成及び受信する。したがって、発振周波数の設定が重要となる。一般的に、デジタルコヒーレント送受信器は波長変更機能を有する。そこで、第2の実施形態では、外部情報伝達経路から与えられた無線区間の周波数に基づいて、各種光源の周波数を設定可能とする。第2の実施形態を、上述した第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0048】
図3は、第2の実施形態の光無線通信システム101の構成図である。図3において、図1に示す第1の実施形態による光無線通信システム100と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。光無線通信システム101は、集約局側装置201と張出局側装置301とを備える。張出局側装置301及び無線端末501は、第1の実施形態の無線端末500及び張出局側装置300と同様に無線通信する。さらに、集約局側装置201及び張出局側装置301は、無線端末501と制御信号伝達経路600により接続される。
【0049】
集約局側装置201が、図1に示す第1の実施形態の集約局側装置200と異なる点は、周波数制御部250をさらに備える点である。周波数制御部250は、無線区間周波数情報を取得する。無線区間周波数情報は、張出局側装置301と無線端末501との間の無線区間に使用される周波数を示す。例えば、周波数制御部250は、無線端末501から制御信号伝達経路600を介して無線区間周波数情報を受信する。あるいは、周波数制御部250は、無線端末501とは異なる外部装置から外部情報伝達経路を介して無線区間周波数情報を受信してもよく、予め無線区間周波数情報を保持してもよい。この場合、集約局側装置201は、無線端末501と接続されていなくてもよい。周波数制御部250は、受信した無線区間周波数情報が示す下りの無線区間の周波数fcを用いて、自装置のデジタルコヒーレントTRx210が出力する信号の周波数f1と、局部発振光源220の発振周波数f2とを決定する。すなわち、周波数制御部250は、fc=|f1-f2|となるように周波数f1及び発振周波数f2を決定する。なお、周波数f1又は発振周波数f2は固定でもよい。周波数制御部250は、決定した周波数f1をデジタルコヒーレントTRx210に設定し、決定した発振周波数f2を局部発振光源220に設定する。
【0050】
張出局側装置301が、図1に示す第1の実施形態の張出局側装置300と異なる点は、周波数制御部350をさらに備える点である。周波数制御部350は、無線区間周波数情報と、集約局側装置周波数情報との一方又は両方を取得する。集約局側装置周波数情報は、集約局側装置201のデジタルコヒーレントTRx210が有する光源211の周波数f1、及び、局部発振光源220の発振周波数f2を示す。なお、集約局側装置周波数情報は、局部発振光源220の発振周波数f2の情報を含まなくてもよい。例えば、周波数制御部350は、無線端末501から制御信号伝達経路600を介して無線区間周波数情報を受信する。あるいは、周波数制御部350は、無線端末501とは異なる外部装置から外部情報伝達経路を介して無線区間周波数情報を受信してもよく、予め無線区間周波数情報を保持してもよい。この場合、張出局側装置301は、無線端末501と接続されていなくてよい。また、周波数制御部350は、外部装置から外部情報伝達経路を介して集約局側装置周波数情報を受信してもよい。あるいは、周波数制御部350は、集約局側装置周波数情報を受信する代わりに、集約局側装置201の周波数制御部250と同様のアルゴリズムにより無線区間周波数情報に基づいて光源211の周波数f1、及び、局部発振光源220の発振周波数f2を算出してもよい。
【0051】
周波数制御部350は、光源211の周波数f1と、上りの無線区間の周波数とに基づいて、発振器342の周波数fd及び光源344の周波数f3を決定する。すなわち、周波数制御部350は、周波数f1と周波数f3との差周波が、周波数Afdと上りの無線区間の周波数とに基づいて得られる無線信号のダウンコンバート後の周波数Pとなるように周波数fd及び周波数f3を決定する。周波数制御部350は、決定した周波数fdを発振器342に設定し、周波数f3を光源344に設定する。なお、周波数制御部350は、光送信部340からの送信周波数を外部から取得し、送信周波数に基づいて周波数fd及び周波数f3を光送信部340に設定してもよい。
【0052】
無線端末501が、図2に示す第1の実施形態の無線端末500と異なる点は、制御信号送信部560をさらに備える点である。制御信号送信部560は、集約局側装置201及び張出局側装置301に、制御信号伝達経路600を介して無線区間周波数情報を送信する。
【0053】
図4は、第2の実施形態の変形例の光無線通信システム102の構成図である。図4において、図1に示す第1の実施形態による光無線通信システム100と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。光無線通信システム102は、集約局側装置202と、張出局側装置302とを備える。集約局側装置202が、図1に示す第1の実施形態の集約局側装置200と異なる点は、周波数制御部260をさらに備える点である。また、張出局側装置302が、図1に示す第1の実施形態の張出局側装置300と異なる点は、周波数制御部360をさらに備える点である。張出局側装置302の周波数制御部260と、張出局側装置302の周波数制御部360とは、制御情報伝達経路601を介して制御情報を送受信する。
【0054】
集約局側装置202の周波数制御部260は、図3に示す集約局側装置201の周波数制御部250と同様に無線区間周波数情報を取得し、無線区間周波数情報が示す無線区間の周波数fcを用いて、自装置のデジタルコヒーレントTRx210が出力する信号の周波数f1と、局部発振光源220の発振周波数f2とを決定する。周波数制御部260は、制御情報伝達経路601を介して、張出局側装置302の周波数制御部360へ制御情報を通知する。制御情報は、集約局側装置周波数情報、又は、無線区間周波数情報及び集約局側装置周波数情報である。張出局側装置302の周波数制御部360は、受信した制御情報を用いて、図3に示す張出局側装置301の周波数制御部350と同様の処理を行う。
【0055】
なお、制御情報の伝達経路として、例えば参考文献1に記載のように、外部強度変調器を用いて制御情報を主信号に重畳し、張出局側装置の受信器で選択受信するAMCC(Auxiliary Management and Control Channel)信号を利用してもよい。
【0056】
(参考文献1)Ryo Igarashi, Ryo Koma, Kazutaka Hara, Kazuaki Honda, Jun-ichi Kani, and Tomoaki Yoshida, "Simultaneous Reception of ASK-based AMCC Signals and QPSK Signals with Single Coherent Receiver", 2021 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC), 2021
【0057】
図5は、第2の実施形態の変形例の光無線通信システム103の構成図である。図5において、図1に示す第1の実施形態による光無線通信システム100と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。光無線通信システム103は、集約局側装置203と、張出局側装置303とを備える。集約局側装置203と、張出局側装置303とは、AMCC信号により制御信号を送受信する。AMCC信号は、低周波の信号であり、主信号に重畳されて伝送される。
【0058】
集約局側装置203が、図1に示す第1の実施形態の集約局側装置200と異なる点は、周波数制御部270及び強度変調器271をさらに備える点である。周波数制御部270は、図3に示す集約局側装置201の周波数制御部240と同様の処理を行う。ただし、周波数制御部270は、張出局側装置302に送信する制御情報を強度変調器271に出力する。強度変調器271は、周波数制御部270から入力した制御情報を設定したAMCC信号を、光合分波部230が出力した信号光に重畳する。強度変調器271は、AMCC信号が重畳された信号光を伝送路401に出力する。制御情報は、無線区間周波数情報、又は、無線区間周波数情報及び集約局側装置周波数情報である。
【0059】
張出局側装置303が、図1に示す第1の実施形態の張出局側装置300と異なる点は、光合分波部371と、AMCC信号受信部372と、周波数制御部373とをさらに備える点である。光合分波部371は、伝送路401を伝送した信号光を入力し、波長により分波する。光合分波部371は、AMCC信号が設定されている波長の信号光をAMCC信号受信部372に出力し、主信号が設定されている波長の信号光を光受信部310に出力する。AMCC信号受信部372は、光合分波部371から入力した信号光からAMCC信号を検出し、AMCC信号に設定されている制御情報を周波数制御部373に出力する。周波数制御部373は、AMCC信号受信部372から入力した制御情報を用いて、図3に示す張出局側装置301の周波数制御部350と同様の処理を行う。
【0060】
上述した集約局側装置201、集約局側装置202、集約局側装置203、張出局側装置301、張出局側装置302、及び、張出局側装置303はそれぞれ、バスで接続されたプロセッサやメモリや補助記憶装置などを備え、プロセッサがプログラムを実行することによって周波数制御部250、周波数制御部260、周波数制御部270、周波数制御部350、周波数制御部360、及び、周波数制御部373の機能を実現してもよい。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)である。なお、周波数制御部250、周波数制御部260、周波数制御部270、周波数制御部350、周波数制御部360、及び、周波数制御部373の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。周波数制御部250、周波数制御部260、周波数制御部270、周波数制御部350、周波数制御部360、及び、周波数制御部373のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。周波数制御部250、周波数制御部260、周波数制御部270、周波数制御部350、周波数制御部360、及び、周波数制御部373のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0061】
上述の実施形態によれば、光無線通信システムは、信号処理装置と無線通信装置とを有する。例えば、信号処理装置は、実施形態の集約局側装置200、201、202、203に対応し、無線通信装置は、実施形態の張出局側装置300、301、302、303に対応する。信号処理装置は、信号生成部と、合波部とを備える。例えば、信号生成部が、実施形態の偏波多重IQ変調器215に対応し、合波部は、実施形態の光合分波部230に対応する。信号生成部は、第一周波数f1の光の偏波多重多値位相変調信号を生成する。合波部は、信号生成部が生成した偏波多重多値位相変調信号と第二周波数f2の光とを合波した信号光を無線通信装置へ出力する。無線通信装置は、分離部と、光電変換部とを備える。例えば、分離部は、実施形態の偏波分離素子311に対応し、光電変換部は、実施形態の光電変換素子312-1、312-2に対応する。分離部は、合波部から受信した信号光を、第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光に分離する。光電変換部は、第一偏波の信号光及び第二偏波の信号光をそれぞれ第一周波数f1と第二周波数f2との差周波数fcの電気信号に変換し、変換された第一偏波の電気信号を第一アンテナから無線送信し、変換された第二偏波の電気信号を第二アンテナから送信する。例えば、第一アンテナ、及び、第二アンテナは、実施形態のアンテナ331-1、331-2に対応する。
【0062】
前記無線通信装置は、周波数変換部と、変調部とをさらに備えてもよい。例えば、周波数変換部は、実施形態のミキサ341-1、341-2に対応し、変調部は、実施形態の偏波多重IQ変調器345に対応する。周波数変換部は、第三アンテナが受信した無線信号を中間周波数Pの第一受信信号に変換し、第四アンテナが受信した無線信号を中間周波数Pの第二受信信号に変換する。変調部は、第一周波数f1から中間周波数Pだけ離れた第三周波数f3の光を、周波数変換部が変換した第一受信信号及び第二受信信号を用いて変調し、変調により生成された中間周波数の偏波多重多値位相変調信号を信号処理装置に送信する。信号処理装置は、復調部を備える。例えば、復調部は、実施形態の偏波ダイバーシティ受信器216に対応する。復調部は、変調部から受信した偏波多重多値位相変調信号を第一周波数f1の光を用いて復調する。
【0063】
第一アンテナ及び第二アンテナはそれぞれ、電気信号をテラヘルツ帯により無線送信し、第三アンテナ及び第四アンテナはそれぞれテラヘルツ帯の無線信号を受信してもよい。
【符号の説明】
【0064】
100、101、102、103 光無線通信システム
200、201、202、203 集約局側装置
210 デジタルコヒーレント送受信器
211 光源
212 光スプリッタ
214 デジタルアナログ変換部
215 偏波多重IQ変調器
216 偏波ダイバーシティ受信器
217 アナログデジタル変換器
220 局部発振光源
230 光合分波部
240、250、260、270 周波数制御部
271 強度変調器
300、301、302、303 張出局側装置
310 光受信部
311 偏波分離素子
312-1、312-2 光電変換素子
320 アンテナ部
321-1、321-2 アンテナ
330 アンテナ部
331-1、331-2 アンテナ
340 光送信部
341-1、341-2 ミキサ
342 発振器
343 逓倍器
344 光源
345 偏波多重IQ変調器
350、360、373 周波数制御部
371 光合分波部
372 AMCC信号受信部
401、402 伝送路
500、501 無線端末
511-1、511-2、555-1、555-2 アンテナ
512-1、512-2、552-1、552-2 ミキサ
513、553 発振器
514、554 逓倍器
515 アナログデジタル変換器
551 デジタルアナログ変換器
560 制御信号送信部
600 制御信号伝達経路
601 制御情報伝達経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8